JPH0716109Y2 - 変速機の同期装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は手動変速機の変速操作を円滑にするためのボル
グワーナ式の同期装置に関するものである。

［従来の技術］ 従来、この種の同期装置として、シンクロナイザリング
の内側にアウタコーン及びインナコーンを設けて同期接
触面を増大し、同期操作力を低減したダブルコーンシン
クロが知られている。このダブルコーンシンクロはクラ
ッチハブと一体的に回転するように変速機の主軸にスプ
ライン嵌合されたインナコーンブッシュに対してインナ
コーンが回転方向に遊びをもって嵌合される。そしてス
リーブの移動によってシンクロナイザリングが移動して
クラッチハブと一体的に回転できる状態になる。更にス
リーブを移動してアウタコーンのテーパ面がインナコー
ンのコーン面に接触するようになると、インナコーンが
アウタコーンの回転に引き摺られてそのブッシュに対し
て所定の回転角だけ相対的に回転し同期作用を開始す
る。同期後、インナコーンブッシュに対するインナコー
ンの遊びによりスリーブがシンクロナイザリングの外周
歯及びクラッチギヤの外周歯に円滑に噛合するようにな
っている。

従来、このインナコーンのインナコーンブッシュに対す
る回転方向の遊びは第３図及び第４図に示す構造により
作り出されている。すなわち第３図ではインナコーンブ
ッシュ１の外周に丸味のある歯1aを設け、インナコーン
２の内周に歯1aと係合する丸味のある歯2aを設けてい
る。また第４図に示す構造ではインナコーン２の内周に
その回転方向に幅広の凹溝３を軸線方向に設け、インナ
コーンブッシュ１の外周に凹溝３の幅より小幅のキー４
を軸線方向に固着して、このキー４を凹溝３内に配置さ
せている。

［考案が解決しようとする課題］ 前述した従来の構造では、第５図に代表して示すように
アウタコーン５がインナコーン２に接触するときに、イ
ンナコーン２が軸線方向に移動しないようにインナコー
ンブッシュ１の端面にはフランジ1bが設けられている。
このため、インナコーン２がインナコーンブッシュ１に
対して回転するときに、インナコーン２の端面2bがフラ
ンジ1bに滑り接触する。この端面2bとフランジ1bの間で
生じる摩擦抵抗によって、同期完了後のシフタスリーブ
７のシンクロナイザリング６に対するかき分け操作力、
並びにシフタスリーブ７のクラッチギヤ８に対するかき
分け操作力は比較的大きく、この操作力の低減について
なお改善する余地が残されていた。

本考案の目的は、インナコーンのインナコーンブッシュ
に対する相対回転時の回転抵抗を極めて小さくして、こ
れにより同期後のシフタスリーブのシンクロナイザリン
グに対するかき分け操作力及びシフタスリーブのクラッ
チギヤに対するかき分け操作力をより一層低減し得る変
速機の同期装置を提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 上記目的を達成するために、本考案は、主軸にスプライ
ン嵌合されたクラッチハブと、シフタスリーブ移動時に
前記ハブと一体的に回転し、内周にテーパ面が形成され
たシンクロナイザリングと、前記主軸に回転可能に嵌合
された入力ギヤと一体的に回転するクラッチギヤに係合
し、外周に前記リングのテーパ面に対向するコーン面と
内周にテーパ面がそれぞれ形成されたアウタコーンと、
前記主軸にスプライン嵌合されたインナコーンブッシュ
と、外周に前記アウタコーンのテーパ面に対向するコー
ン面が形成され、前記ブッシュに回転方向に遊びをもっ
て嵌合されたインナコーンとを備えた変速機の同期装置
において、前記インナコーンの遊びは、前記インナコー
ンの内周に周方向に幅広の凹溝を軸線方向に設け、前記
ブッシュの外周に前記凹溝の幅より小幅の球受溝を設
け、前記凹溝及び前記球受溝に囲まれる空間に鋼球を回
転可能に配置して作り出されることを特徴とする。

［作用］ インナコーンがインナコーンブッシュに対して相対回転
するときには、インナコーンブッシュの球受溝にある鋼
球の転がりによりインナコーンの回転摩擦力は著しく低
減される。

［実施例］ 次に本考案の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。

第１図に示すように、変速機の主軸10には軸受11を介し
て入力ギヤ12が回転可能に嵌合される。この入力ギヤ12
は図示しないカウンタ軸のカウンタギヤに噛合する。ま
た主軸10にはクラッチハブ13とインナコーンブッシュ14
が主軸10と一体的に回転するようにスプライン嵌合され
る。

ハブ13の外周にはスプラインと溝が形成される。このス
プラインにはシフタスリーブ16が主軸方向に摺動可能に
嵌合し、溝にはシンクロナイザキー17が組込まれる。こ
のキー17の中央にはピン18が貫通し、ピン18はスプリン
グ19によりニュートラル時にはスリーブ16の内面の溝16
aに押し付けられる。16bはシフトフォーク（図示せず）
の嵌入する外周環状溝である。シフタスリーブ16に隣接
してシンクロナイザリング21が設けられる。このリング
21の外周にはスリーブ16の摺動時にスリーブ16のスプラ
インが噛合する歯が形成され、リング21の内周にはテー
パ面が形成される。

シンクロナイザリング21と前述したインナコーンブッシ
ュ14の間にはアウタコーン22とインナコーン23の２つの
コーンが配設される。すなわちアウタコーン22はその外
周にリング21のテーパ面に対向するコーン面を有し、そ
の内周にインナコーン23の外周のコーン面に対向するテ
ーパ面を有する。アウタコーン22の入力ギヤ側の側面に
は複数の突起22aが設けられ、この突起22aは入力ギヤ12
に噛合するクラッチギヤ24側面の係合孔24aに係合する
ようになっている。

本考案の特徴あるところは、インナコーンブッシュ14に
対するインナコーン23の回転方向の遊びを生じさせる構
造にある。

第２図に詳しく示すように、インナコーンブッシュ14の
外周にはインナコーン23が嵌合される。このインナコー
ン23の内周には凹溝26が軸線方向に設けられる。この例
では４箇所の凹溝26が等間隔に設けられる。これらの凹
溝26はインナコーンの周方向に幅広であって、周方向の
両端に湾曲面26aが形成され、凹溝26の底面はブッシュ1
4の外周面と同心に形成される。

またインナコーンブッシュ14の外周には凹溝26の幅より
小幅の半筒状の球受溝14aが凹溝と同数だけ軸線方向に
設けられる。この例では凹溝26と球受溝14aに囲まれる
空間に鋼球27を２つずつ配置する。この鋼球27は半径が
球受溝14aの曲率半径より小さく球受溝14a内で回転可能
に置かれる。

この例では鋼球27の上下方向において鋼球の上半円部分
が凹溝26内に位置し、下半円部分が球受溝14a内に位置
する。また第１図に示すように、主軸10の軸線方向にお
いて鋼球27はンナコーンブッシュ14の入力ギヤ側の端面
に設けられたフランジ14bとインナコーン23のクラッチ
ハブ側の端面に設けられたフランジ23aの間に位置す
る。

次にこのような構成の同期装置の動作を説明する。

入力ギヤ12がカウンタギヤに回転駆動され、主軸10、ハ
ブ13及びインナコーンブッシュ14が回転していない状態
において、図示しないシフトフォークによりシフタスリ
ーブ16を矢印Ａ方向にシフトすると、キー17もスリーブ
16とともに移動してシンクロナイザリング21を押すた
め、リング21のテーパ面がアウタコーン22のコーン面と
摩擦接触する。更にシフトすると、アウタコーン22のテ
ーパ面がインナコーン23のコーン面と摩擦接触し、イン
ナコーン23がアウタコーン22の回転に引き摺られてイン
ナコーンブッシュ14に対して相対的に回転し始める。イ
ンナコーン23は凹溝26の湾曲面26aがインナコーンブッ
シュ14の鋼球27に突当るため、凹溝26の幅に相当する所
定の回転角だけ回転すると止まり同期が始まる。

この同期後にシフタスリーブ16のスプラインチャンファ
がシンクロナイザリング21のスプラインチャンファを滑
動するとき、及びシフタスリーブ16のスプラインチャン
ファがクラッチギヤ24のスプラインチャンファを滑動す
るときに、インナコーン23は凹溝26の幅、すなわち遊び
の分だけインナコーンブッシュ14に対して正逆転する。
ここで、インナコーン23はそのフランジ23aで鋼球27を
介してインナコーンブッシュ14のフランジ14bに押し付
けられながら回転し、このインナコーン23のインナコー
ンブッシュ14に対する相対的回転は鋼球27の転がり接触
により行われるため、インナコーンの回転摩擦力は著し
く低減され、結果としてシフタスリーブ16のかき分け操
作力が低減される。

このスリーブ16がシンクロナイザリング21の外周歯をか
き分けて前進しクラッチギヤ24に係合すると変速が完了
する。

［考案の効果］ 以上述べたように、本考案によれば、インナコーンの回
転補助部材兼回転ストッパとしてインナコーンブッシュ
の外周に鋼球を回転可能に配置し、インナコーンの内周
にこの鋼球幅より広い幅の凹溝を設け、かつ凹溝の周方
向の両端に湾曲面を形成したので、インナコーンのイン
ナコーンブッシュに対する相対回転は鋼球の転がりによ
って行われ、インナコーンの回転抵抗は極めて小さくな
る。これにより同期後のシフタスリーブのシンクロナイ
ザリングに対するかき分け操作力及びシフタスリーブの
クラッチギヤに対するかき分け操作力をより一層低減で
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案実施例変速機の同期装置の断面図。 第２図はそのII−II線断面図。 第３図は従来例の第２図に対応する要部断面図。 第４図は従来例の第５図のIV−IV線断面図。 第５図は従来例変速機の同期装置の断面図。 10:主軸、12:入力ギヤ、13:クラッチハブ、14:インナコ
ーンブッシュ、14a:球受溝、16:シフタスリーブ、21:シ
ンクロナイザリング、22:アウタコーン、23:インナコー
ン、24:クラッチギヤ、26:凹溝、26a:湾曲面、27:鋼
球。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】主軸にスプライン嵌合されたクラッチハブ
   と、シフタスリーブ移動時に前記ハブと一体的に回転
   し、内周にテーパ面が形成されたシンクロナイザリング
   と、前記主軸に回転可能に嵌合された入力ギヤと一体的
   に回転するクラッチギヤに係合し、外周に前記リングの
   テーパ面に対向するコーン面と内周にテーパ面がそれぞ
   れ形成されたアウタコーンと、前記主軸にスプライン嵌
   合されたインナコーンブッシュと、外周に前記アウタコ
   ーンのテーパ面に対向するコーン面が形成され、前記ブ
   ッシュに回転方向に遊びをもって嵌合されたインナコー
   ンとを備えた変速機の同期装置において、 前記インナコーンの内周に周方向に幅広の凹溝が軸線方
   向に設けられ、 前記ブッシュの外周に前記凹溝の幅より小幅の球受溝が
   設けられ、 前記凹溝及び前記球受溝に囲まれる空間に鋼球が回転可
   能に配置された ことを特徴とする変速機の同期装置。