JPH0716106Y2 - 変速機の同期噛合装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は手動変速機の変速操作を円滑にするためのボル
グワーナ式の同期噛合装置に関するものである。

［従来の技術］ 従来、この種の同期噛合装置として、シンクロナイザリ
ングの内側にアウタコーン及びインナコーンを設けて同
期接触面を増大し、同期操作力を低減したダブルコーン
シンクロが知られている。このダブルコーンシンクロは
クラッチハブと一体的に回転するように変速機の主軸に
スプライ嵌合されたインナコーンブッシュに対してイン
ナコーンが回転方向に遊びをもって嵌合される。そして
スリーブの移動によってシンクロナイザリングが移動し
てクラッチハブと一体的に回転できる状態になる。更に
スリーブを移動してアウタコーンのテーパ面がインナコ
ーンのコーン面に接触するようになると、インナコーン
がアウタコーンの回転に引き摺られてそのブッシュに対
して所定の回転角だけ相対的に回転し、これによりスリ
ーブがシンクロナイザリングの外周歯及びクラッチギヤ
に円滑に噛合するようになっている。

従来、このインナコーンのインナコーンブッシュに対す
る回転方向の遊びは第３図及び第４図に示す構造により
作り出されている。すなわち第３図ではインナコーンブ
ッシュ１の外周に丸味のある歯３を設け、インナコーン
２の内周に歯３と係合する丸味のある歯４を設けてい
る。しかしこの構造は歯３及び４の各歯先面が互いに接
触するに過ぎないため、インナコーン２とインナコーン
ブッシュ１との接触面積が小さく、インナコーン２の回
転時の弛みが大きくなり同期性能を悪化させる不具合が
あった。この点を改良するため、第４図に示す構造では
インナコーン７の内周にその回転方向に幅広の凹溝９を
軸線方向に設け、インナコーンブッシュ６の外周に凹溝
９の幅より小幅のキー８を軸線方向に固着して、このキ
ー８を凹溝９内に配置させている。

［考案が解決しようとする課題］ 一般に、ダブルコーンシンクロはシンクロナイザリング
の内側にアウタコーン及びインナコーンを収容する構造
であるため、インナコーンを配置するスペースが小さ
く、インナコーンの半径方向の肉厚は大きくすることが
できない。

前述した従来の構造では両者とも歯3,4又はキー８をイ
ンナコーンのストッパとするため、必然的にインナコー
ン及びブッシュの各周面の切欠部が深くなり、インナコ
ーンの回転停止時にはストッパである歯3,4の歯元又は
凹溝９の角部に応力が集中し易い。この結果、インナコ
ーン又はインナコーンブッシュの耐久性について更に改
善する余地が残されていた。

本考案の目的は、インナコーンの回転時の弛みが小さく
同期性能を悪化させず、かつインナコーン又はインナコ
ーンブッシュの耐久性を向上し得る変速機の同期噛合装
置を提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 上記目的を達成するために、本考案は、主軸にスプライ
ン嵌合されたクラッチハブとシフタスリーブ移動時に一
体的に回転し内周にテーパ面が形成されたシンクロナイ
ザリングと、前記主軸に回転可能に嵌合された入力ギヤ
と一体的に回転するクラッチギヤに係合し外周に前記リ
ングのテーパ面に対向するコーン面と内周にテーパ面が
それぞれ形成されたアウタコーンと、前記主軸にスプラ
イン嵌合されたインナコーンブッシュと、外周に前記ア
ウタコーンのテーパ面に対向するコーン面が形成され前
記ブッシュに回転方向に遊びをもって嵌合されたインナ
コーンとを備えた変速機の同期噛合装置において、前記
インナコーンの回転方向の遊びは、前記インナコーンの
内周に周方向に幅広であってかつ周方向の両端に湾曲面
の形成された凹溝を軸線方向に設け、前記ブッシュの外
周に前記凹溝の幅より小幅のピン溝を軸線方向に設け、
前記凹溝及び前記ピン溝に囲まれる空間に前記ピン溝に
添ってピンを配置して作り出されることを特徴とする。

［作用］ アウタコーンの回転に引き摺られて回転し始めたインナ
コーンは、その凹溝の湾曲面がインナコーンブッシュの
ピン溝にあるピンに突当って停止する。

［実施例］ 次に本考案の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。

第１図に示すように、変速機の主軸10には軸受11を介し
て入力ギヤ12が回転可能に嵌合される。この入力ギヤ12
は図示しないカウンタ軸のカウンタギヤに噛合する。ま
た主軸10にはクラッチハブ13とインナコーンブッシュ14
が主軸10と一体的に回転するようにスプライン嵌合され
る。

ハブ13の外周にはスプラインと溝が形成される。このス
プラインにはシフタスリーブ16が主軸方向に摺動可能に
嵌合し、溝にはシンクロナイザキー17が組込まれる。こ
のキー17の中央にはピン18が貫通し、ピン18はスプリン
グ19によりニュートラル時にはスリーブ16の内面の溝16
aに押し付けられる。16bはシフトフォーク（図示せず）
の嵌入する外周環状溝である。シフタスリーブ16に隣接
してシンクロナイザリング21が設けられる。このリング
21の外周にはスリーブ16の摺動時にスリーブ16のスプラ
インが噛合する歯が形成され、リング21の内周にはテー
パ面が形成される。

シンクロナイザリング21の前述したインナコーンブッシ
ュ14の間にはアウタコーン22とインナコーン23の２つの
コーンが配設される。すなわちアウタコーン22はその外
周にリング21のテーパ面に対向するコーン面を有し、そ
の内周にインナコーン23の外周のコーン面に対向するテ
ーパ面を有する。アウタコーン22の入力ギヤ側の側面に
は複数の突起22aが設けられ、この突起22aは入力ギヤ12
に噛合するクラッチギヤ24側面の係合孔24aに係合する
ようになっている。

本考案の特徴のあるところは、インナコーンブッシュ14
に対するインナコーン23の回転方向の遊びを生じさせる
構造にある。

第２図に詳しく示すように、インナコーンブッシュ14の
外周にはインナコーン23が嵌合される。このインナコー
ン23の内周には凹溝26が軸線方向に設けられる。この例
では４箇所の凹溝26が等間隔に設けられる。これらの凹
溝26はインナコーンの周方向に幅広であって、周方向の
両端に湾曲面26aが形成される。またインナコーンブッ
シュ14の外周には凹溝26の幅より小幅のピン溝14aが凹
溝と同数だけ軸線方向に設けられる。凹溝26とピン溝14
aに囲まれる空間にはピン溝14aに添ってピン27が配置さ
れる。この例ではピン27の断面においてピンの上半円部
分が凹溝26内に位置し、下半円部分がピン溝14a内に位
置する。

次にこのような構成の同期噛合装置の動作を説明する。

入力ギヤ12がカウンタギヤに回転駆動され、主軸10、ハ
ブ13及びインナコーンブッシュ14が回転していない状態
において、図示しないシフトフォークによりシフタスリ
ーブ16を矢印Ａ方向にシフトすると、キー17もスリーブ
16とともに移動してシンクロナイザリング21を押すた
め、リング21のテーパ面がアウタコーン22のコーン面と
摩擦接触する。更にシストすると、アウタコーン22のテ
ーパ面がインナコーン23のコーン面と摩擦接触し、イン
ナコーン23がアウタコーン22の回転に引き摺られてイン
ナコーンブッシュ14に対して相対的に回転し始める。イ
ンナコーン23の凹溝26の湾曲面26aがインナコーンブッ
シュ14のピン27に突当るため、凹溝26の幅に相当する所
定の回転角だけ回転すると止まり同期が始まる。

このインナコーン23の停止は湾曲面26aがピン27に突当
ることにより行われるため凹溝26に応力集中は起こらな
い。

この同期によりスリーブ16がシンクロナイザリング21の
外周歯をかき分けて前進しクラッチギヤ24に係合して変
速が完了する。

［考案の効果］ 以上述べたように、本考案によれば、インナコーンのス
トッパとしてインナコーンブッシュの外周にピンを配置
し、インナコーンの内周にこのピン幅より広い幅の凹溝
を設け、かつ凹溝の周方向の両端に湾曲面を形成したの
で、第一にインナコーンの内周とインナコーンブッシュ
の外周との接触面積が広く、インナコーンの回転時の弛
みが小さい。これにより同期性能が悪化することがな
い。

また第二にインナコーンのインナコーンブッシュに対す
る相対回転の停止は凹溝の湾曲面がピンに突当ることに
よって行われるため、、従来の凹溝のような応力集中は
起こらなくなり、第三に従来の凹溝のように両端を切欠
く必要がないため、その分だけインナコーンの肉厚を大
きくでき、結果としてインナコーン及びインナコーンブ
ッシュの耐久性を向上することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案実施例変速機の同期噛合装置の断面図。 第２図はそのII−II線断面図。 第３図及び第４図は従来例のそれぞれ第２図に対応する
要部断面図。 10:主軸、12:入力ギヤ、13:クラッチハブ、14:インナコ
ーンブッシュ、14a:ピン溝、16:シフタスリーブ、21:シ
ンクロナイザリング、22:アウタコーン、23:インナコー
ン、24:クラッチギヤ、26:凹溝、26a:湾曲面、27:ピ
ン。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】主軸にスプライン嵌合されたクラッチハブ
   とシフタスリーブ移動時に一体的に回転し内周にテーパ
   面が形成されたシンクロナイザリングと、前記主軸に回
   転可能に嵌合された入力ギヤと一体的に回転するクラッ
   チギヤに係合し外周に前記リングのテーパ面に対向する
   コーン面と内周にテーパ面がぞれぞれ形成されたアウタ
   コーンと、前記主軸にスプライン嵌合されたインナコー
   ンブッシュと、外周に前記アウタコーンのテーパ面に対
   向するコーン面が形成され前記ブッシュに回転方向に遊
   びをもって嵌合されたインナコーンとを備えた変速機の
   同期噛合装置において、 前記インナコーンの内周に周方向に幅広であってかつ周
   方向の両端に湾曲面の形成された凹溝が軸線方向に設け
   られ、前記ブッシュの外周に前記凹溝の幅より小幅のピ
   ン溝が軸線方向に設けられ、前記凹溝及び前記ピン溝に
   囲まれる空間に前記ピン溝に添ってピンが配置されたこ
   とを特徴とする変速機の同期噛合装置。