JPH07158722A - プーリ間の締結力維持装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 プーリ自体に結合部を設けることにより互い
に締結力を発生させ、プーリを回転軸に固定する為の固
定ボルトの緩みを防止し、プーリ間の締結力を恒久的に
維持する。 【構成】 クランクプーリ10及びタイミングプーリ11に
結合部10a 及び11a を設ける。結合部によりプーリ間に
締結力を発生させる。これによりプーリ間の滑りが無く
なり、プーリの塗装膜の摩滅が防止されると共に、固定
ボルト12の伸びは減少しない。よって固定ボルト12の緩
みが無くなり、プーリ間の締結力は恒久的に維持され
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、エンジンの回転軸に設
けた複数のプーリ間の締結力維持装置の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の手法の一例として、クランクプー
リとタイミングプーリとの関係を用いて説明する。図７
に示すように、クランクプーリ２及びタイミングプーリ
３はクランク軸１の端部に挿入され、クランク軸終端よ
り固定ボルト４でクランク軸に固定されている。又、図
８に示す通りタイミングプーリ７を固定ボルト４で固定
し、クランクプーリ６の円盤部6aに設けた固定ボルト８
により数点でタイミングプーリ７に締結されているもの
もある。図７及び図８に図示するように、クランクプー
リとタイミングプーリの締結面は、互いに平面である。
この平面である締結面の接触面圧によって発生する摩擦
力により、クランクプーリとタイミングプーリは互いに
固定されている。又、締結面の接触面圧は固定ボルト４
の締めつけトルクに依存する。これらの例は実開昭59−
7960及び実開平 3−124061に開示されている。

【０００３】しかしながら、エンジンを運転させるにあ
たり、固定ボルト４の締めつけトルクを低下させる現象
が発生する。図７及び図８に示す通り、クランク軸１の
端部に設けられたクランクプーリ２には、補機にクラン
クの回転力を伝達するためのベルト５が掛っている。こ
のベルト５の張力により、クランクプーリ２とタイミン
グプーリ３の締結面Ａが開く。締結面が開くと接触面圧
が低下し摩擦力が低下する。

【０００４】摩擦力が低下するとクランク軸の捩れ共振
トルクを原因とする滑りを誘発し、クランクプーリ２が
固定ボルト４を緩ませる方向に回転する。更に、図９の
締結面Ａの拡大図に示すクランクプーリの塗装膜2aが、
プーリどうしの滑りにより摩滅するようになる。この塗
装膜の摩滅により、固定ボルト４又は８の伸びが減少し
て締めつけトルクが低下する。

【０００５】このトルクの低下により更にプーリ間の摩
擦力が低下し、滑りも増大する。この滑りが発生する
と、最終的にはベルト５にクランク軸１の回転力が十分
に伝達されず、エンジンの補機類を効率よく作動させる
ことができなくなる。

【発明が解決しょうとする課題】

【０００６】上記のように、クランクプーリとタイミン
グプーリの締結力は、平面である締結面の摩擦力に依存
している為、クランク軸の捩れ共振トルクを原因とする
プーリ間の滑りを抑えることができない。従って締結面
の塗装膜は摩滅し固定ボルトの締めつけトルクは低下す
る。この為、固定ボルトの締めつけトルクを増すことが
必要となり、組立時に十分な接触面圧を得る為、厳密な
締めつけトルクの管理が必要となる。

【０００７】本発明は上記問題に鑑みてなされたもので
あり、プーリ自体に結合部を設け、回転軸の捩り共振ト
ルクを原因とする滑りを防止し、プーリ間の締結力を恒
久的に維持することと、プーリの締結面の表面に鋸歯状
の滑り止めを設けることにより固定ボルトの緩みを防止
し、プーリ間の締結力を恒久的に維持することと、取り
付けの際の厳密なトルク管理を不要とすると共に、プー
リ間の締結力減少による回転力の伝達効率減少を防止す
るプーリ間の締結力維持装置に関する。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明に係る手段は、エンジンの回転軸の回転力をベ
ルトを介して補機類に伝達するプーリを、複数結合する
為のプーリ間の締結力維持装置において、プーリ自体に
結合部を設け、該結合部により一体となったプーリの結
合体を回転軸に挿入し、固定ボルトで前記プーリの結合
体を回転軸に固定する。

【０００９】そして、前記結合部はプーリの中心部に外
筒部が雄ねじであるボスを設け、前記プーリと結合する
プーリに前記雄ねじに螺合する固定ボルトに対して逆ね
じの雌ねじを設ける。

【００１０】前記結合部はプーリ間の締結面に、回転す
ることにより互いを引き込む爪を設け、且つ、前記爪で
互いを引き込む為に要する回転方向は固定ボルトの締め
込み方向と逆であり、更に他のプーリとの締結面に鋸歯
状の凹凸を設けたプーリを、締結面に塗装膜を設けた他
のプーリと共に回転軸に挿入し、固定ボルトにてプーリ
どうしを密着させ、回転軸に固定する。

【００１１】

【作用】プーリ自体に結合部を設けることにより互いに
締結力を発生するので、プーリ間の滑りが無くなる。
又、タイミングプーリの結合面に鋸歯状の凹凸を設ける
と、固定ボルトによりクランクプーリとタイミングプー
リを密着させることにより、凸部がクランクプーリ締結
面上の塗装膜を突き抜け、塗装膜下の金属面に直接当た
るとともに、塗装膜が凹部に食い込むので、点接触によ
る圧力集中と塗装膜の保持力により、滑りを無くす。

【００１２】

【実施例】以下、本願発明の一実施例について図１にお
いて説明する。図１中のクランク軸９の端部には段差9a
が設けられ、段差9a部分にクランクプーリ10及びタイミ
ングプーリ11が嵌挿される。クランクプーリ10及びタイ
ミングプーリ11の内筒部は、クランク軸の段差9a部と略
同一径である。クランクプーリ10及びタイミングプーリ
11は、段差9aにより生じたフランジ部9bに対してクラン
ク軸終端の固定ボルト12によって押しつけられ、クラン
ク軸９に固定される。これらの部品構成は図７及び８の
従来例と同様である。クランクプーリ10にはタイミング
プーリ11と接触する側にボス10が設けられ、ボス10a の
外筒部に固定ボルト12と逆ネジとなっている逆ねじ部10
b が設けられている。タイミングプーリ11には、逆ねじ
部10bと螺合する逆ねじ部11a が設けられており、クラ
ンクプーリ10とタイミングプーリ11は、逆ねじ部10b お
よび11a により互いに固定される。更に、クランク軸９
及びタイミングプーリ11の内筒部にはキー溝が設けてあ
り、キー13によりクランク軸９とタイミングプーリ11と
の回転方向の滑りを止める。

【００１３】次に本願発明の組み立て順序について説明
する。まず、クランクプーリ10とタイミングプーリ11を
逆ねじ部10b 及び11a により互いに固定し、該プーリの
結合体をクランク軸９の終端より段差9a部に挿入する。
この時、タイミングプーリ11に設けたキー溝をクランク
軸９に嵌め込まれたキー13に嵌合させる。その後クラン
ク軸終端部より固定ボルト12により前記プーリの結合体
をクランク軸９に固定する。

【００１４】このように構成したプーリの軸固定装置
は、エンジンの運転により発生するクランク軸の捩れ共
振トルクにより、クランクプーリ10が固定ボルト12を緩
ませる方向に回転しようとすると、クランクプーリ10は
キー13によりクランク軸９の回転方向に対して固定され
ている為、逆ねじ部10b 及び11a は更に締る方向の回転
力が掛かる。よって、クランクプーリ10とタイミングプ
ーリ11間の締結力は増すことになる。

【００１５】すなわち、従来プーリ間の締結力減少の原
因になっていたクランク軸の捩れ共振トルクがクランク
プーリとタイミングプーリ間の締結力増加に寄与し、常
に増し締めを行っているのと同じことになるので、プー
リ間の滑りは無くなる。

【００１６】次に第二実施例を図２〜図４に示して説明
する。第二実施例が第一実施例と異なる点は、クランク
プーリ14とタイミングプーリ15には、結合部として回転
することにより互いを引き込む爪である嵌合爪14a 及び
15a が設けられている点である。嵌合爪14a 及び15a の
形状は、固定ボルト12の締めつけ方向と反対に回転する
と、互いを引き込むように、嵌合部にテーパー加工が施
されている。その他の部分は、第一実施例と同一部分に
は同一符号を付して、その説明は省略する。

【００１７】第二実施例の場合も、クランク軸の捩れ共
振トルクによりクランクプーリ14が固定ボルト12を緩ま
せる方向に回転すると、タイミングプーリ15はキー13に
より回転方向に対して固定されている為、嵌合爪14a 及
び15a は更に締る方向の回転力が掛かり、常に増し締め
を行っていることになるので、第一実施例と同様の作用
効果を得る。

【００１８】次に第三実施例を図５及び図６に示して説
明する。第三実施例が第一実施例と異なる点は、クラン
クプーリ２は従来例と同様の形状であるが、タイミング
プーリ16の締結面16a には、フライス加工等により鋸歯
状の凹凸を形成する点である。この凹凸の大きさは、ク
ランクプーリ２の塗装膜2aの膜厚の２〜３倍程度であ
る。その他の部分は、第一実施例と同一部分には同一符
号を付してその説明は省略する。

【００１９】このように構成した第三実施例は、図６に
示す通り、組立時に固定ボルト12の締めつけトルクによ
りクランクプーリ２とタイミングプーリ16が密着する
と、タイミングプーリ16の締結面に設けた凸部16a がク
ランクプーリ２の塗装膜2aを突き抜け、直接塗装膜下の
金属面に当接する。又、塗装膜は凸部16a の形状に合わ
せて変形し、凹部16b に食い込む。すなわち、タイミン
グプーリの締結面の凸部16a がクランクプーリ２に点接
触することによる圧力集中と、凹部16b に食い込んだ塗
装膜の保持力により、クランク軸の捩れ共振トルクを原
因とする滑りは抑えられる。

【００２０】

【発明の効果】本発明はこのように構成したので、次に
列記するような効果を有する。プーリ自体に結合部を設
けることにより互いに締結力を発生させてプーリ間の滑
りを無くすので、プーリの塗装膜の摩滅が防止され固定
ボルトの伸びが一定し、固定ボルトの緩みが無くなるの
で、プーリ間の締結力を恒久的に維持する。

【００２１】プーリの結合面に鋸歯状の凹凸を設けるこ
とにより、プーリ間の滑りを無くしプーリの塗装膜の摩
滅を無くすので、固定ボルトの伸びが一定し、固定ボル
トの緩みが無くなるので、プーリ間の締結力を恒久的に
維持する。

【００２２】又、構成部品自体が、クランク軸の捩り共
振トルクを受けて固定ボルトの増し締めを行うので、組
立時において締めつけトルクの厳密な管理や、増し締め
等のメンテナンスが不要になり恒久的に回転力を補機類
に伝達できる。

【００２３】結合部は、特殊な加工技術を必要としない
で形成できる為、製造コストを抑えることができる

【００２４】新たな緩み防止用部品を付加する必要が無
くパーツ点数増加を防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示すプーリ間の締結力維持
装置の縦断側面図である。

【図２】本発明の一実施例を示す嵌合爪を用いたプーリ
間の締結力維持装置の縦断側面図である

【図３】図２のＢ−Ｂ断面におけるクランクプーリの断
面摸式図である。タイミングプーリの正面摸式図及び側
面摸式図である。

【図４】図２に示したタイミングプーリの正面摸式図
（ａ）及び側面摸式図（ｂ）である。

【図５】本発明のその他の実施例を示すプーリ間の締結
力維持装置の縦断側面図である。

【図６】図５のプーリ間の締結面Ｃ部の拡大図である。

【図７】一従来例を示す縦断側面図である。

【図８】その他の従来例を示す縦断面図である。

【図９】図７のプーリ間の締結面Ａ部の拡大図である。

【符号の説明】

９ クランク軸 9a 段差部 9b フランジ部 10 クランクプーリ 10a ボス 10b 逆ねじ部 11 タイミングプーリ 11a 逆ねじ部 12 固定ボルト 13 キー 14 クランクプーリ 14a 嵌合爪 15 タイミングプーリ 15a 嵌合爪 16 タイミングプーリ 16a 凸部 16b 凹部

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジンの回転軸の回転力をベルトを介
   して補機類に伝達するプーリを、複数結合する為のプー
   リ間の締結力維持装置において、プーリ自体に結合部を
   設け、該結合部により一体となったプーリの結合体を回
   転軸に挿入し、固定ボルトで前記プーリの結合体を回転
   軸に固定することを特徴とするプーリ間の締結力維持装
   置。
2. 【請求項２】 プーリの中心部に外筒部が雄ねじである
   ボスを設け、前記プーリと結合するプーリに前記雄ねじ
   と螺合する固定ボルトに対して逆ねじの雌ねじを設け、
   該ねじ構造を前記結合部とする請求項１に記載のプーリ
   間の締結力維持装置。
3. 【請求項３】 プーリ間の締結面に、回転することによ
   り互いを引き込む爪を設け、且つ、前記回転方向は固定
   ボルトの締め込み方向と逆である構造を前記結合部とす
   る請求項１に記載のプーリ間の締結力維持装置。
4. 【請求項４】 他のプーリとの締結面に鋸歯状の凹凸を
   設けたプーリを、締結面に塗装膜を設けた他のプーリと
   共に回転軸に挿入し、固定ボルトにてプーリどうしを密
   着させ、回転軸に固定することを特徴とするプーリ間の
   締結力維持装置。