JPH07146454A - コンタクトレンズ用剤の安定化方法 - Google Patents

コンタクトレンズ用剤の安定化方法

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JPH07146454A
JPH07146454A JP6211834A JP21183494A JPH07146454A JP H07146454 A JPH07146454 A JP H07146454A JP 6211834 A JP6211834 A JP 6211834A JP 21183494 A JP21183494 A JP 21183494A JP H07146454 A JPH07146454 A JP H07146454A
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久幸 中山
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章博 木元
Noriko Tsuchino
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 蛋白分解酵素を含有するコンタクトレンズ用
剤において、同酵素の水溶液の状態における分解を防止
すること。 【構成】 ピロリドン化合物を配合することを特徴とす
る蛋白分解酵素含有コンタクトレンズ用剤の安定化方
法、コンタクトレンズ用剤の製造法およびコンタクトレ
ンズ用剤。 【効果】 本発明のコンタクトレンズ用剤は液状、また
は固状製剤とすることができ、液剤は用時溶解の必要が
ない1剤型とすることができる。液状製剤および固状製
剤を水に溶解した場合において、蛋白分解酵素の活性が
長く保持され、コンタクトレンズの洗浄、保存等に有効
に使用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規かつ有用な蛋白分
解酵素の安定化方法に関する。さらに詳しく述べれば、
本発明は、ピロリドン化合物を加えることにより蛋白分
解酵素含有コンタクトレンズ用剤を安定化する方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】コンタクトレンズは、ハードコンタクト
レンズとソフトコンタクトレンズに大別され、ハードコ
ンタクトレンズは非親水性で酸素透過性が少ないと言わ
れていたが、近年酸素透過性の良いハードコンタクトレ
ンズが開発されてきた。しかしながら、これらのレンズ
は蛋白質等で汚れ易く、また酸素透過性レンズの場合は
透過性を維持するためにも日々の洗浄、殺菌、保存を行
うことが必要である。
【0003】コンタクトレンズの表面に付着した蛋白質
の汚れを除くため蛋白分解酵素が用いられ、この酵素を
含有するいろいろな洗浄剤が提案され、使用されてい
る。たとえば、蛋白分解酵素を主成分とした錠剤、顆
粒、粉末等の固形の形態で供給し、それを使用者がその
都度精製水等に溶解して使用する方法が行われてきた。
しかしながら、この方法では、固体状態の蛋白分解酵素
を使用毎に溶解しなければならないことから、コスト高
及び煩雑な手間を使用者に強いる結果となり、また溶解
後の酵素は不安定になる。コンタクトレンズ用処理液と
して、蛋白分解酵素を溶液状態で安定化させる方法も提
案されている。たとえば、特開昭63−159822号
公報、特開平1−180515号公報等において、水に
混和性の多価アルコールを含有した溶液に蛋白分解酵素
を配合させることによって、蛋白分解酵素を安定化させ
る方法が提案されている。しかし、このままでは蛋白分
解酵素は殆ど活性を示さず、水で希釈すれば活性は高ま
るが、逆に安定性が低下するという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の如き
事情に鑑みてなされたもので、溶液中における蛋白分解
酵素を安定化し、以てコンタクトレンズの洗浄、殺菌、
保存を1剤で同時に実施しえるコンタクトレンズ用液剤
を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】そして、本発明者は、蛋
白質の汚れを落とす蛋白分解酵素の安定性に着眼し、鋭
意研究を重ねた結果、意外にもピロリドン化合物を加え
ることにより蛋白分解酵素がコンタクトレンズ洗浄等に
適する溶液中で活性をそこなわず安定性を延長し得るこ
とを知り、この知見に基いてさらに研究を重ね、本発明
を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は、有効量の蛋白分解酵
素を含有する溶液に対して、ピロリドン化合物を加える
ことにより蛋白分解酵素含有コンタクトレンズ用液剤を
安定化する方法、同方法により安定化した蛋白分解酵素
含有コンタクトレンズ用液剤およびその製造法に関す
る。
【0007】本発明で使用するピロリドン化合物として
は、2−ピロリドン、D−、L−もしくはDL−ピロリ
ドンカルボン酸(すなわち2−ピロリドン−5−カルボ
ン酸);またはそれらの塩たとえば、ナトリウム塩、カ
リウム塩またはトリエタノールアミン塩のようなアミン
塩;あるいはそれらのエステル、たとえばエチルエステ
ル、のいずれでもよく、適宜に使用することができる。
また、このピロリドン化合物の使用量は、ピロリドン化
合物の種類、対象となるコンタクトレンズの種類、汚れ
の種類、程度等によって適宜に選択される。溶液中のピ
ロリドン化合物の濃度が5(W/V)%より低いと十分
な酵素安定性が得られないことから溶液状態で使用者に
提供することが困難となる。従って、通常5(W/V)
%以上、好ましくは10〜60(W/V)%程度が良
い。
【0008】また、本発明で使用する蛋白分解酵素とし
ては、たとえばトリプシン、キモトリプシンやバチルス
属等の微生物由来のプロテアーゼなどが挙げられる。そ
して、本発明において、かかる蛋白分解酵素の配合量
は、得ようとする洗浄効果に応じた有効量に基づいて、
適宜に決定されることとなるが、好ましくは10〜50
00単位/ml程度、更に好ましくは50〜1000単
位/ml程度の割合となるように決定される。その配合
量が少なすぎると、洗浄効果が不十分となるからであ
り、また酵素濃度が高すぎると、洗浄に際して、皮膚の
障害を惹起するという危険性が生じるからである。
【0009】そして、本発明により調製されるコンタク
トレンズ用剤は、蛋白分解酵素を安定化するために、通
常、pHが4〜8程度に調整されるのが望ましい。
【0010】本発明に関して、コンタクトレンズ用剤の
形態としては固状でも液状でもよく、用時液状をとりう
るものであれば特に制限はなく、たとえば液剤および長
期保存し用時溶解して用いる固形剤が挙げられる。特に
液剤の場合、本研究によると、蛋白分解酵素含有溶液に
ピロリドン化合物を配合した場合、蛋白分解酵素が水溶
液中で安定であるとともに高い酵素活性を発現すること
から、従来のグリセリンなどの多価アルコールを使用し
たコンタクトレンズ用酵素安定化溶液の場合のように使
用時に水で希釈する必要がないことから極めて有用であ
る。固形剤としては、錠剤、顆粒剤、散剤並びに凍結乾
燥品が挙げられるが、溶解の早さ並びに無菌、組成物の
均一面等を考えると凍結乾燥品が好ましい。なお、上記
のピロリドン化合物、界面活性剤および蛋白分解酵素の
配合量は、固形剤の場合には、用時の液状のコンタクト
レンズ用剤とした場合の量である。
【0011】そして、上記成分の他にも、本発明の目的
を損なわない限り、界面活性剤、保存剤、pH調整剤、
緩衝剤、キレート剤、崩壊剤、結合剤等の賦形剤並びに
他の酵素剤、たとえば脂肪分解酵素等の各種の添加剤を
更に配合することができる。
【0012】界面活性剤としては、非イオン界面活性
剤、陰イオン界面活性剤および両性界面活性剤が効果的
である。また、これらの界面活性剤は、所望により、適
宜組み合わせて使用することができる。
【0013】陰イオン界面活性剤としては、たとえばラ
ウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイル−L−グル
タミン酸トリエタノールアミン、ミリスチルサルコシン
ナトリウム等が挙げられ、また、両性界面活性剤として
は、たとえばラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2
−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエ
チルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノ
グリシン等が挙げられ、非イオン界面活性剤としては、
たとえばポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化
ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオ
キシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。かかる
界面活性剤の配合量は、コンタクトレンズや眼組織に悪
影響を与えることがなく充分な酵素安定性を得ることが
できる濃度であればよく、好ましくは0.01〜10
(W/V)%、更に好ましくは0.1〜5(W/V)%
程度の割合となるように調製される。
【0014】本発明の方法によって安定化されたコンタ
クトレンズ用剤の使用は、液状の当該コンタクトレンズ
用剤(たとえば、水溶液状の当該コンタクトレンズ用
剤)5mlに眼から脱着したコンタクトレンズ1枚を入
れ、30分以上浸漬することにより行われる。それによ
り、自然に洗浄が行われると同時に殺菌も行われる。浸
漬後、コンタクトレンズを水道水等で濯いだ後、再び装
用する。これを毎日、同一溶液にて連続1週間使用して
も問題はないことをつきとめた。
【0015】
【実施例】以下に、実験例および実施例を示し、本発明
を更に具体的に明らかにすることとするが、それらは本
発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を制
限するものではない。
【0016】〔実験例1〕 蛋白質汚れ除去試験 表1のコンタクトレンズ洗浄液の組成において、安定剤
としてDL−ピロリドンカルボン酸ナトリウムを10%
または40%としたものおよび40%グリセリンを用い
たものに塩化リゾチーム等で作製した人工汚垢を付着し
た酸素透過性ハードコンタクトレンズ(シロキサニール
メタクリレート)各2枚を浸漬し、室温で15時間放置
した後、水洗し、レンズに付着した人工汚垢が除去でき
るかどうか肉眼で観察して調べた。結果は下表のとおり
で、10%および40%DL−ピロリドンカルボン酸ナ
トリウム溶液では完全に除去されたが、40%グリセリ
ン溶液では全く除去されていないことが確認された。
【0017】 試 料 浸漬前 浸漬後 ─────────────────────────────────── 10%−DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム +++ − 40%−DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム +++ − 40%−グリセリン +++ +++ ─────────────────────────────────── +++ :レンズ表面が白く曇っている状態。 − :レンズ表面に汚垢が認められない。
【0018】なお、人工汚垢付着レンズは次のように調
製した。 塩化リゾチーム 0.1g リン酸水素二ナトリウム 0.2g 水酸化ナトリウム 適 量 精製水 適 量 全 量 100ml(pH7.2) 上記の処方で人工汚垢液を調製し、脱気した後、約60
℃にて加熱する。その中にレンズを入れ、適度にレンズ
が白濁したら取り出し、汚垢の塊を除去した後、水中で
保管した。
【0019】〔実施例1〕表1、表2に記載した各配合
成分を、混和、溶解して各種の試料を調製した。かくし
て得られた各試料について、調製直後と、30℃の温度
下に7日および14日間保存した後に、アンソンー荻原
氏変法に基づき酵素活性の測定を行い、下式によって、
酵素活性残存率(%)を算出した。それらの結果を、下
記表1、表2に示す。
【0020】
【数1】
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】表1、表2から明らかなように、蛋白分解
酵素含有溶液に、ピロリドン化合物を加えることにより
蛋白分解酵素が著しく安定化されることが認められた。
【0024】〔実施例2〕表3に記載した各配合成分を
混和、溶解して、試料を調製し、実施例1と同様にして
酵素活性残存率(%)を調べた。結果を表3に示す。表
1の資料B−6と表3の資料B−8の試験結果から明ら
かなように、ピロリドン化合物のほか陰イオン界面活性
剤および非イオン界面活性剤を加えることにより蛋白分
解酵素がさらに安定化されることが認められた。
【0025】
【表3】
【0026】〔実施例3〕 ビオプラーゼ 1500単位 ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン(30%) 0.1g 塩酸アルキルジアミノグリシン 0.03g DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%) 4.8g ホウ酸 0.03g ホウ砂 0.018g エデト酸ナトリウム 0.006g グルコン酸クロルヘキシジン 0.3mg 上記の組成のものを精製水6mlに溶解し、蛋白分解酵
素含有コンタクトレンズ用剤を調製した。実施例1と同
様にして酵素残存活性を測定した。その結果30℃、1
4日後の酵素活性残存率は95%以上で良好な洗浄力を
示した。また、脂質および蛋白質の除去試験においても
良好な結果が認められた。さらに、菌の発生を実質的に
見なかった。
【0027】〔実施例4〕 トリプシン 1400単位 ステアリン酸ポリオキシル40 0.03g 2−ピロリドン 2.1g グルコン酸クロルヘキシジン 0.6mg リン酸水素二ナトリウム 0.012g リン酸 適量 塩化ナトリウム 0.051g 上記の組成のものを精製水6mlに溶解し、蛋白分解酵
素含有コンタクトレンズ用剤を調製した。得られた試料
液について実施例3と同一の試験を行い、実施例3と同
様に良好な結果が認められた。
【0028】〔実施例5〕 ビオプラーゼ 2880単位 ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン(30%)0.2g ステアリン酸ポリオキシル40 0.06g ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(35%) 0.17g ホウ酸 0.03g エデト酸ナトリウム 0.006g DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%) 3.6g 上記の組成のものを精製水6mlに溶解後、塩酸でpH
6.0に調整し、蛋白分解酵素含有コンタクトレンズ用
剤を調製した。得られた試料液について実施例3と同一
の試験を行い、実施例3と同様に良好な結果が認められ
た。
【0029】〔実施例6〕 ビオプラーゼ 2800単位 ラウロイルサルコシンナトリウム 0.06g ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(35%) 0.17g ポリオキシエチレンラウリルエーテル 0.03g DL−ピロリドンカルボン酸エチル 1.5g ソルビン酸 0.006g ホウ酸 0.06g ホウ砂 適量 上記の組成のものを精製水6mlに溶解し、蛋白分解酵
素含有コンタクトレンズ用剤を調製した。得られた試料
液について実施例3と同一の試験を行ない、実施例3と
同様に良好な結果が認められた。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、蛋白分解酵素含有コン
タクトレンズ用剤の蛋白分解酵素を液状で安定に保つこ
とができる。以て、安定化された蛋白分解酵素含有コン
タクトレンズ用剤により洗浄、殺菌、保存を1剤で同時
に実施することができ、また浸漬放置するだけでコンタ
クトレンズの汚れが効率よく除去され、さらに液剤にお
いては使用時に水による希釈等の処理が不要であること
から、非常に簡便で操作性よく使用できる利点がある。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 9/76 C12R 1:07)

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピロリドン化合物を配合することを特徴
    とする蛋白分解酵素含有コンタクトレンズ用剤の安定化
    方法。
  2. 【請求項2】 ピロリドン化合物が、ピロリドンまたは
    ピロリドンカルボン酸またはその塩もしくはエステルで
    ある請求項1記載の安定化方法。
  3. 【請求項3】 ピロリドン化合物の濃度が5(W/V)
    %以上である請求項1または2記載の安定化方法。
  4. 【請求項4】 コンタクトレンズ用剤が液状または固状
    であり、前者のまたは後者を水に溶解した場合のpHが
    4〜8である請求項1、2または3記載の安定化方法。
  5. 【請求項5】 蛋白分解酵素が、バチルス属に属する微
    生物由来のビオプラーゼおよび動物由来のトリプシンで
    ある請求項1、2、3または4記載の安定化方法。
  6. 【請求項6】 非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性
    剤および両性界面活性剤の1以上がさらにコンタクトレ
    ンズ用剤中に配合される請求項1記載の安定化方法。
  7. 【請求項7】 界面活性剤が0.01〜10(W/V)
    %配合される請求項6記載の安定化方法。
  8. 【請求項8】 コンタクトレンズ用剤中に蛋白分解酵素
    およびピロリドン化合物を配合することを特徴とするコ
    ンタクトレンズ用剤の製造法。
  9. 【請求項9】 ピロリドン化合物がピロリドンまたはピ
    ロリドンカルボン酸またはその塩もしくはエステルであ
    る請求項8記載の製造法。
  10. 【請求項10】 ピロリドン化合物の濃度が5(W/
    V)%以上である請求項8または9記載の製造法。
  11. 【請求項11】 非イオン界面活性剤、陰イオン界面活
    性剤および両性イオン界面活性剤の1以上がさらに配合
    される請求項8記載の製造法。
  12. 【請求項12】 界面活性剤が0.01〜10(W/
    V)%配合される請求項11記載の製造法。
  13. 【請求項13】 コンタクトレンズ用剤中に蛋白分解酵
    素およびピロリドン化合物を配合してなる蛋白分解酵素
    含有コンタクトレンズ用剤。
  14. 【請求項14】 ピロリドン化合物がピロリドンまたは
    ピロリドンカルボン酸またはその塩もしくはエステルで
    ある請求項13記載のコンタクトレンズ用剤。
  15. 【請求項15】 ピロリドン化合物が5(W/V)%以
    上配合される請求項13記載のコンタクトレンズ用剤。
  16. 【請求項16】 非イオン界面活性剤、陰イオン界面活
    性剤および両性界面活性剤の1以上がさらに配合される
    請求項13記載のコンタクトレンズ用剤。
  17. 【請求項17】 界面活性剤が0.01〜10(W/
    V)%配合される請求項13記載のコンタクトレンズ用
    剤。
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