JPH07143845A - 加工チーズ類およびその製造方法 - Google Patents

加工チーズ類およびその製造方法

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JPH07143845A
JPH07143845A JP5061256A JP6125693A JPH07143845A JP H07143845 A JPH07143845 A JP H07143845A JP 5061256 A JP5061256 A JP 5061256A JP 6125693 A JP6125693 A JP 6125693A JP H07143845 A JPH07143845 A JP H07143845A
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Naoyuki Hanawa
尚之 塙
Hiroshi Kondo
浩 近藤
Tsuguaki Nishitani
紹明 西谷
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 溶融塩をいっさい使用することなく、しかも
加熱乳化条件を限定することなく、加熱殺菌、乳化して
もナチュラルチーズ本来の風味、組織、熱溶融性等を保
持しえる乳化された保存性の良好な加工チーズを得る。
さらに、加熱殺菌、乳化しても組織が均一でなめらかな
展延特性を有する保存性の良好なチーズスプレッドを得
る。 【構成】 レンネット等の凝乳酵素を添加しないで製造
したチーズ、もしくはこれにレンネット等の凝乳酵素を
添加した従来のナチュラルチーズを加えたものを、その
ままか、もしくはスプレッドタイプの場合は加水して、
加熱しながら攪拌し乳化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は乳化された加工チーズも
しくは殺菌乳化された加工チーズおよびそれらを製造す
る方法、さらに乳化されたチーズスプレッドもしくは殺
菌乳化されたチーズスプレッドおよびそれらを製造する
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ナチュラルチーズに溶融塩を加え
水蒸気加熱下で加熱乳化したプロセスチーズ、チーズに
副原料を添加したチーズ分の比較的少ないチーズフー
ド、チーズに水および溶融塩や、乳化安定剤等を加えて
乳化して塗りやすくしたチーズスプレッド等のチーズ類
は、いずれも溶融塩や乳化安定剤、乳化条件を特定して
水等を加えて加熱乳化して均一な組織を造り上げてい
た。しかし、最近は健康意識の高まりから、低ナトリウ
ム化、低リン化商品の開発が望まれるようになった。こ
のため、ナトリウムやリンを添加しないチーズ類の開発
が課題となっていた。溶融塩を使用しないチーズの製造
方法としては、pHおよび水分を特定することにより均
一な組織の殺菌チーズを得る方法(特公平2−3193
3号公報)、加水して高水分にし、最終の乳化温度を従
来の乳化温度より下げて60〜80℃で乳化し、組織を
均一にする方法(特公平2−59702号公報)が知ら
れている。しかしながら、これらの方法により得られた
チーズは、ナチュラルチーズ特有の風味や、熱溶融性等
の特性を生かした組織の均一な乳化チーズではあるが、
pHや水分、乳化温度等を制限しなければならず、常温
でパン等の食品に塗ることができる展延性(スプレッダ
ビリティspreadability)を有するものではなかった。そ
こで、スプレッダビリティを持たせるには、チーズをや
わらかくして均一に乳化する必要があり、このため水や
食用油脂を添加して、やわらかくし、さらに溶融塩を添
加して加熱乳化し組織を均一にしていた。このように組
織の均質な、加工チーズや乳化されたチーズスプレッド
を得るには、溶融塩や乳化安定剤を添加するか、pHや
加水、製品水分、乳化温度を特定する等、複雑な条件を
採用しなければならなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、溶融塩を添
加することなく加熱乳化、殺菌しても、風味、組織、熱
溶融性等のナチュラルチーズの特性を有する保存性の良
好な加工チーズおよびその製造方法を提供することを課
題とする。さらに溶融塩を使用することなく、チーズを
やわらかくして、しかも組織を均一に乳化でき、なめら
かで、パン等の食品に容易に塗ることができる展延特性
を備えた保存性の良好な乳化されたチーズスプレッドお
よびその製造方法を提供することを課題とする。
【0004】本発明の目的は、溶融塩をいっさい使用す
ることなく、しかも加熱乳化条件を限定することなく、
加熱殺菌、乳化してもナチュラルチーズ本来の風味、組
織、熱溶融性等を保持しえる加工チーズを得ることにあ
る。さらにもう一つの目的は、溶融塩をいっさい使用し
ないで組織が均一でなめらかな展延性を有する保存性の
良好な乳化されたチーズスプレッドを得ることにある。
本発明は、殺菌しても乳化が良好であるから、保存性を
も目的とする場合は、殺菌することができる。本発明に
おいて、特に保存性を目的としない場合は、殺菌する必
要がないことはいうまでもない。したがって、殺菌する
ことなく乳化された加工チーズおよび乳化されたチーズ
スプレッドを得ることも、本発明の第三の目的である。
そしてその特徴は、レンネット等の凝乳酵素を添加しな
いで製造したチーズ、もしくは、これにレンネット等の
凝乳酵素を添加した従来のナチュラルチーズを加えた混
合物を、そのままか、もしくはスプレッドタイプの場合
は加水して、加熱しながら攪拌し、乳化することを特徴
とする。このようにして得られたチーズは、ナチュラル
チーズ特有の風味を有し、組織が均一でなめらかな、し
かも、加水して加熱乳化した場合は常温で容易にパン等
の食品に塗ることができる展延特性を有する、油分分離
や離水のない保存性の良好なチーズである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明を具体的に説明す
る。本発明者らは、溶融塩無添加チーズに関する研究の
過程において、凝乳酵素無添加チーズを用いると極めて
乳化性がよく、溶融塩を加えなくても、乳化可能である
ことがわかり、さらに多量の水を加えてもなお、乳化可
能で展延特性を有することを見いだした。ナチュラルチ
ーズの製造に用いられる凝乳酵素としては、牛胃粘膜レ
ンネット、微生物レンネット、植物レンネットなどがあ
げられる。本発明では、これらを単にレンネットとい
う。また凝乳酵素無添加ナチュラルチーズ、もしくは凝
乳酵素添加ナチュラルチーズをそれぞれ単に凝乳酵素無
添加チーズ、凝乳酵素添加チーズという。
【0006】本発明で、凝乳酵素無添加チーズを製造す
るには、原料とする乳をUF(限外濾過)濃縮する。本
発明で用いる乳は特に牛乳に限定する必要はない。濃縮
は、2倍以上、好ましくは5倍以上がよい。濃縮倍率の
上限をあえて特定する必要はない。このように濃縮した
乳に、乳酸菌スターターを乳に対し、通常ナチュラルチ
ーズの製造に使用する量、たとえば0.5〜2%(本発
明の%は、すべて重量%を意味する)、好ましくは1%
程度添加し、通常の条件で発酵させる。たとえば32〜
38℃、好ましくは34℃程度で、15〜20時間、好
ましくは18時間程度、発酵させる。もちろん原料とす
る乳に脱脂乳を用いてもよいし、乳脂肪を調整したもの
を用いてもよく、原料とする乳を目的とするチーズに応
じて他の粉乳、乳クリーム等の乳原料を加えて調整する
のは自由である。このようにして発酵させた乳を必要に
応じて水分調整する。水分調整は、乳酸菌が死滅しない
程度の温度、たとえば48℃以下、望ましくは43℃以
下の温度で、脱水、または水分蒸発させる。水分除去
は、常圧、真空等いずれでもよい。これを熟成させたも
のがUFチーズである。
【0007】こうようにして得られた凝乳酵素無添加ナ
チュラルチーズは、水分が35〜50%である。このよ
うな本発明で用いる凝乳酵素無添加ナチュラルチーズに
は、パラκ−カゼイン−グリコマクロペプチド(glyco-
macro-peptide 、以下これをGMPと略する )が存在
し、このGMP−パラκ−カゼインの結合が切れていな
いことが重要である。したがって、このような結合が切
れていないカゼインの形態を構成しているチーズであれ
ば、他に限定する理由はない。しかしながらこのような
カゼイン形態を有するチーズとしては、効率よく得られ
る上記のUFチーズを用いるとよい。本発明は、このよ
うなカゼイン形態をなした状態で製造したナチュラルチ
ーズを、必須原料として用いるところに最大の特徴があ
り、本発明の主要部をなすものである。
【0008】このようなカゼイン形態、すなわち前記し
たGMP−パラκ−カゼインの結合が切れていないチー
ズであるか否かを確認する方法は、現在の技術では、以
下に説明する方法で確認できる。その確認方法は、チー
ズ1gに蒸留水100gを加え、ホモゲナイザーにかけ
る。得られたホモジェネートを10,000Gで遠心分
離する。次いで上清を除いて得られた沈殿を、同様にし
て3回洗浄する。このようにして得られた沈殿のタンパ
ク質量を分析してカゼインのモル濃度を計算する。さら
に、沈殿を水中に分散させ、凝乳酵素によりGMPを分
離し、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により
定量する。GMPのモル濃度をカゼインのモル濃度で除
した値が、0.2以下であれば、そのチーズは、凝乳酵
素を使用している。
【0009】もちろん、この凝乳酵素無添加ナチュラル
チーズだけでも加熱乳化殺菌した加工チーズを調製でき
る。しかし、凝乳酵素無添加ナチュラルチーズに従来の
凝乳酵素を添加して製造したナチュラルチーズを混合し
て、本発明の加熱乳化殺菌した加工チーズを調製するこ
ともできる。もとより本発明の目的からして、従来の凝
乳酵素を添加したナチュラルチーズの使用限度は、チー
ズ中、ほぼ80%である。すなわち、凝乳酵素無添加ナ
チュラルチーズの含量がほぼ20%(ほぼ20%とは、
下限が18〜20%をいう)でも本発明の乳化された加
工チーズを調製できることがわかった。これも新しい知
見である。つまり凝乳酵素無添加ナチュラルチーズが、
ほぼ20%含まれていれば残りは通常のチーズであって
も、溶融塩の添加なしに乳化可能である。したがって、
これらチーズの混合物中、凝乳酵素無添加ナチュラルチ
ーズの含有量が、約20〜100%未満、凝乳酵素を添
加した従来のナチュラルチーズが、約80%以下であれ
ば本発明の目的を達成できる。特に望ましい範囲を強い
て述べれば、それぞれ約30〜約80%、約20〜約7
0%である。この凝乳酵素無添加ナチュラルチーズ約3
0〜約80%は、よりナチュラルチーズの風味を強調す
るための使用率であるから、その残りの従来の凝乳酵素
添加のナチュラルチーズが約20〜約70%になるだけ
である。凝乳酵素無添加ナチュラルチーズがほぼ20%
未満では離水を生じ、良好な組織が得られない。凝乳酵
素添加の従来のナチュラルチーズを使用する主たる理由
は、ナチュラルチーズ本来の風味と組織をより好ましく
するためである。したがってこのような従来のナチュラ
ルチーズは、必要に応じて上記の範囲内で適宜使用す
る。
【0010】本発明で殺菌を行うには、加熱、誘電加
熱、紫外線等による物理的手段、薬剤等による化学的手
段、電子線等の照射による電気的手段、遺伝子組み換
え、細胞融合技術等により微生物を選択的に不活化する
生物学的手段などいずれを用いてもよい。しかし加熱に
よる手段が一般的である。加熱殺菌は加熱乳化の条件を
殺菌条件に併せてもよいし、乳化の前または後に殺菌し
てもよい。殺菌の効果は、加熱による場合は加熱温度と
保持時間によって決まるが、加熱温度の影響が大きい。
殺菌する場合の加熱温度と保持時間は、前記したように
60℃程度でも、保持時間を長くすれば目的は達成され
るので、本発明では、この温度に加熱することも殺菌を
意味する。またこのことは、処理操作が実質的に同じで
あるので、乳化することをも意味することになるので、
殺菌は加熱によると効率的である。しかしながら、殺菌
をさらに効率的に行うには、おおむね80℃で5分間以
上の条件で行うとよい。目的によって加熱温度と時間は
適宜設定する。
【0011】第一の目的である乳化された加工チーズを
調製するには、スプレッドタイプを目的としないので、
特に水分調整が必要なとき以外は加水しない。このよう
に加熱乳化して殺菌された加工チーズを目的とする場合
は、前記したように凝乳酵素無添加チーズと凝乳酵素添
加チーズを混合するときはチーズ中、凝乳酵素無添加ナ
チュラルチーズが、約20〜100%未満、凝乳酵素を
添加した従来のナチュラルチーズが、約80%以下であ
れば本発明の第一の目的を達成できる。乳化に際して用
いる装置は、上記した通常のプロセスチーズの製造に用
いる乳化釜が使用できる。たとえばステファン乳化釜、
ケトル、クッカー、サーモシリンダー等があげられる。
これら凝乳酵素無添加のナチュラルチーズ等を主原料と
したものを所定量、乳化装置に投入する。次いで溶融塩
を添加することなく攪拌しながら加熱して乳化する。加
熱はチーズ中の脂肪が溶解する温度であればよい。通常
はその温度は60℃以上である。殺菌を併せて行う場合
は、60℃程度でも保持時間を長くすればよいが、80
℃以上、5分間加熱するのが望ましい。乳化温度の上限
は、タンパク質が変性しない温度であればよい。特に長
期保存の目的も併せて達成する場合は、上限の加熱温度
と時間は、約100℃、3分間で、乳化装置は、完全に
密閉できるものがよい。攪拌の方法は特に限定しない。
通常の方法で乳化できる。乳化後適宜容器に充填する。
また長期保存を目的とするときは容器に充填密封して冷
却し製品とする。このようにして得られたチーズは、ナ
チュラルチーズ特有の風味を有し、組織が均一でなめら
かで、熱溶融性等のナチュラルチーズ特有の性質を有
し、しかも油分分離や離水のない保存性の良好な乳化さ
れた加工チーズである。
【0012】第二の目的であるチーズズプレッドを得る
には、上記したチーズの使用範囲内で、溶融塩を添加す
ることなく加水し、攪拌しながら加熱して乳化する。具
体的には、これら凝乳酵素無添加のナチュラルチーズ等
を主原料としたものを所定量、乳化装置に投入する。次
いで加水する。加水は、目的とする硬さの最終製品(水
分値50〜60%)の水分値に応じて適宜加減する。本
発明では添加する水の量は、チーズ100部に対して、
10〜60部、好ましくは20〜50部がよい。好適範
囲としての観点からは20部未満では、得られるチーズ
が硬くなり展延性が劣るようになる。また60部を越え
ると水分が高くなりすぎ冷却しても液状を呈してスプレ
ッドに適しなくなる。乳化に際して用いる装置は、通
常、プロセスチーズの製造に用いる乳化釜を使用する。
たとえばステファン乳化釜、ケトル、クッカー、サーモ
シリンダー等があげられる。次いで溶融塩を添加するこ
となく攪拌しながら加熱して乳化する。加熱はチーズ中
の脂肪が溶解する温度であればよい。通常はその温度は
60℃以上である。殺菌を併せて行う場合は、60℃程
度でも保持時間を長くすればよいが、75℃以上、5分
間が望ましい。特に長期保存の目的も併せて達成する場
合は、上限の加熱温度と時間は、約121℃、15分間
程度で、乳化装置も保存性を特に重視するときは完全な
密閉式のものがよい。この上限の加熱温度は、滅菌条件
であるから、滅菌することも可能である。乳化後適宜容
器に充填する。また長期保存を目的とするときは容器に
充填密封して冷却し製品とする。このようにして得られ
た乳化されたチーズスプレッドは、通常水分が約52〜
60%で、ナチュラルチーズ特有の風味を有し、組織が
均一でなめらかな、しかも、冷蔵庫から取り出した直後
でも、また常温でも容易にパン等の食品に塗ることがで
きる展延特性を有する、油分分離や離水のない保存性の
良好なチーズスプレッドである。
【0013】本発明の第三の目的である特に殺菌を必要
としない乳化された加工チーズおよび乳化されたチーズ
スプレッドを得るには、乳化時の加熱温度のみ脂肪が溶
解する60℃程度にするだけで充分に本発明の第三の目
的は達成される。乳化のためには、必ずしも殺菌条件を
具備する必要はないのである。その他の手段は、それぞ
れ上記に説明した第一の目的、第二の目的と同様に操作
する。
【0014】
【作用】このように溶融塩を添加することなく、簡単に
ナチュラルチーズを乳化でき、良好な風味、組織を有す
る乳化された加工チーズや乳化されたチーズスプレッド
がどうしてできるのか、その作用機作は、明らかではな
いが、次のように考えられる。ここでは凝乳酵素をレン
ネットを例として説明する。通常、ゴーダチーズ、チェ
ダーチーズなどのナチュラルチーズは原料となる乳に乳
酸菌スターターや塩化カルシウムとともにレンネットを
添加し乳中のタンパク質であるカゼインをカード化して
製造する。この際、レンネットはκ−カゼインの親水基
であるGMPを遊離し、カゼインの疎水性を高める。こ
れにより、カゼインは互いに凝集し、ゲル化し、ホエー
分離を起こすようになる。こうして得られたチーズは疎
水性が高く、水には溶解しない性質を示す。このよう
に、ナチュラルチーズはレンネットを添加してカードを
形成しホエーを分離してカードを成形し加塩して熟成し
製造する。したがって、このようなナチュラルチーズを
加熱してもなお、組織を均一でなめらかなものに(乳
化)するためには溶融塩を添加する。これがプロセスチ
ーズといわれるものである。しかしこのように乳化して
得られたものは、ナチュラルチーズに特有の風味や組織
特性は失われてしまう。そこで、レンネットを添加しな
いナチュラルチーズとしては、UF(限外濾過)濃縮乳
に加塩し乳酸菌スターターを添加して発酵させ、水分を
減じて濃縮し熟成させてUFチーズを製造する。このよ
うにして得られたチーズは、乳化が良好で、離水や油分
分離が全くみられず、しかも組織がなめらかである。こ
れはおそらくUFチーズ中の乳タンパク質であるカゼイ
ンがGMPと結合しGMPがそのまま親水基として存在
し、カゼイン全体が界面活性剤として作用するため乳化
剤のような働きを奏し、乳化機能を発現するためと考え
られる。このような凝乳酵素無添加チーズがチーズ混合
物中に、ほぼ20%含有されていれば、加熱しても、加
水しても、殺菌してもその乳化作用が発現するものと考
えられる。
【0015】
【実施例】以下に実施例を示して、本発明を具体的に説
明する。
【0016】(実施例)脱脂乳100kgを限外濾過濃
縮(以下、UF濃縮という)し、UF濃縮脱脂乳約20
kgを得た。これに乳脂肪分50%の乳クリーム9.8
kgを混合し、80℃に加熱後、ホモミキサーで乳化
し、濃縮乳を得た。この濃縮乳10kgに乳酸菌スター
ターカルチャー100g、食塩100gを添加し、34
℃で18時間培養した。これをバットに分注し40℃で
固形分が50〜60%の範囲になるまで濃縮した。これ
を合成樹脂フィルムで包装し、1ヵ月間、温度10℃、
相対湿度80%で熟成させてレンネット無添加ナチュラ
ルチーズを得た。一方、レンネットを添加した従来のナ
チュラルチーズは、レンネットを3g添加したほかは、
上記と同様に操作しレンネット添加ナチュラルチーズを
得た。これらのチーズおよびレンネット添加のニュージ
ーランド産チェダーチーズ、レンネット添加の国産ゴー
ダチーズを原料チーズとして表1に示す組み合わせと割
合で、溶融塩を添加しないで使用し、#1〜#9まで実
施した。まず、これらの原料ナチュラルチーズ100部
に対し、水25部を加え、密閉雰囲気下の乳化釜中で攪
拌しながら80℃まで加熱し、乳化した。次いでプラス
チック製カップに充填し密封して冷却後、風味、組織、
油分分離、離水、展延性、および保存性を評価した。な
お、#8と#9は水を添加しなかった。保存性は、乳化
時の加熱温度を80℃で、5分間保持し、充填密封冷却
後は10℃で食品として不適となるまで保存して評価し
たが、良好なものは、4カ月までの評価で打ち切り、そ
れ以後は中止し、保存月数で表した。それ以外は、上記
と同じ操作で実施した。評価結果を表1に示す。 (表の説明) (1)表中のニュジーランド産のチェダーチーズおよび
国産のゴーダチーズは、いずれもレンネットが添加され
ているものである。 (2)表中の数字は、使用割合(部)を示し、添加する
水はチーズ100 に対する部である。 (3)表中、「- 」もしくは「0 」は、使用しなかった
ことを示す。 (4)表の評価結果中、 「−」 は、離水または油分分離がまったくなく、良好 「+」 は、離水または油分分離が明らかに認められ不
良 「++」は、離水または油分分離が多量に認められ、不
良 を示す。 (5)表の評価結果中、風味、展延性は、それぞれ、 〔風味〕 〔展延性〕 「◎」 は、良好 非常に塗りやすく、良好 「○」 は、ほぼ良好 塗りやすく、良好 「×」 は、不良 塗りにくく、チーズが途切れて、不良 の尺度で評価した。
【0017】
【表1】
【0018】(6)表の評価結果中、「※」は、他の評
価項目で不良のため、評価しなかったことを示し、また
#8、#9の「〓」は、スプレッドを目的としないので
評価しなかった。 (7)最終的には、表中の総合評価により、本発明の目
的が達成されたか否かを評価し、「適」が、目的を達成
したことを示し、「不適」が、目的を達成できなかった
ことを示す。 以上のようにして得られたチーズを評価した結果は、#
1では、離水等は全くなくなめらかで好ましい風味、展
延性のスプレッド組織を有していた。#2は、離水が多
量に発生し、不均質で粗い組織となっていた。#1と#
2のレンネット添加の有無が明らかに得られたチーズの
組織に影響していた。また、従来のチーズをそのまま加
水し乳化した#3と#4は、多量の離水を生じ、組織も
粗く、製品として不適であった。#5および#6は、溶
融塩無添加であるにもかかわらず、離水がなく、なめら
かな組織でしかも展延性良好でナチュラルチーズらしい
スプレッドで好ましい風味を有していた。#7のレンネ
ット無添加チーズ10%の場合、多少離水が抑えられた
が、本発明の目的は達成できなかった。#8の溶融塩も
水もまったく加えない乳化された加工チーズは、やや加
熱時の粘度が高かったが、離水や油分分離が全くみられ
ず、組織がなめらかで良好であった。#9のレンネット
を添加した従来のナチュラルチーズのみで水を加えない
で調製したチーズは、#2と同様、組織がざらついたま
まで乳化できなかった。本発明品の保存性をあらわす保
存月数は、いずれも4ヵ月以上であった。以上のごと
く、レンネット等の凝乳酵素無添加ナチュラルチーズを
少なくともほぼ20%使用すれば、風味、組織、展延性
や熱溶融性、保存性の良好な乳化された加工チーズや乳
化されたチーズスプレッドが得られることがわかった。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、凝乳酵素無添加ナチュ
ラルチーズを少なくともほぼ20%使用して溶融塩を添
加することなく乳化することにより、風味、組織、保存
性ともに良好な乳化された加工チーズを得ることができ
る。
【0020】また、本発明によれば、凝乳酵素無添加ナ
チュラルチーズを少なくともほぼ20%を使用し、溶融
塩を添加することなく加水して加熱乳化することによ
り、風味、組織、展延性、保存性ともに良好なチーズス
プレッドが簡単な製造条件で得られる利点がある。
【0021】そして溶融塩をいずれも使用しないので、
ナトリウムやリンを低減した健康的な食品を得ることが
できる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 凝乳酵素無添加チーズ、または凝乳酵素
    無添加チーズと凝乳酵素添加チーズの混合物を加熱乳化
    してなる加工チーズ。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の混合物中の凝乳酵素無添
    加チーズの含有量が20〜100%未満である加工チー
    ズ。
  3. 【請求項3】 凝乳酵素無添加チーズが限外濾過濃縮乳
    を用いて製造したチーズである請求項1または2記載の
    加工チーズ。
  4. 【請求項4】 乳を限外濾過濃縮したものに乳酸菌スタ
    ーターを加えて発酵させ、熟成して得た凝乳酵素無添加
    チーズか、またはこの凝乳酵素無添加チーズに凝乳酵素
    添加チーズを加えた混合物を、加熱乳化もしくは加熱乳
    化し殺菌することを特徴とする加工チーズの製造方法。
  5. 【請求項5】 凝乳酵素無添加チーズ、または凝乳酵素
    無添加チーズと凝乳酵素添加チーズの混合物に、加水し
    加熱乳化してなるチーズスプレッド。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の混合物中の凝乳酵素無添
    加チーズの含有量が20〜100%未満であるチーズス
    プレッド。
  7. 【請求項7】 凝乳酵素無添加チーズが限外濾過濃縮乳
    を用いて製造したチーズである請求項5または6記載の
    チーズスプレッド。
  8. 【請求項8】 乳を限外濾過濃縮したものに乳酸菌スタ
    ーターを加えて発酵させ、熟成して得た凝乳酵素無添加
    チーズか、またはこの凝乳酵素無添加チーズに凝乳酵素
    添加チーズを加えた混合物に、加水し加熱乳化もしくは
    加熱乳化し殺菌することを特徴とするチーズスプレッド
    の製造方法。
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