JPH07139550A - 自動車用オルタネータ - Google Patents

自動車用オルタネータ

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JPH07139550A
JPH07139550A JP5286662A JP28666293A JPH07139550A JP H07139550 A JPH07139550 A JP H07139550A JP 5286662 A JP5286662 A JP 5286662A JP 28666293 A JP28666293 A JP 28666293A JP H07139550 A JPH07139550 A JP H07139550A
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賢二 山元
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Abstract

(57)【要約】 【目的】回転軸支持用の転がり軸受の昇温に伴う機能劣
化を防止しながら、それに関するコストアップを必要最
小限に抑えること。 【構成】オルタネータの回転軸2の支持用の二つの転が
り軸受3,3において、転動体3cは窒化けい素を主体
とするセラミックスで、外輪3aは焼き戻し温度が20
0〜380℃に設定された浸炭鋼で、内輪3bは一般的
な軸受鋼(SUJ−2など、但し焼戻し温度185℃)
で、それぞれ形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車用オルタネータ
(交流発電機)に係り、特にその内部で熱影響を受けや
すい回転軸支持用の転がり軸受を改良したものに関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車用オルタネータに用いる回
転軸支持用の転がり軸受としては、特殊なものを採用し
ておらず、軸受構成要素の各素材は一般的な軸受鋼や浸
炭鋼などとされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、自動車用の
オルタネータでは、通常の運転に伴って回転軸に取り付
けられてあるロータと、ケースに取り付けられてあるス
テータとで構成するモータの特にステータコイルが発熱
するので、この熱はケースから回転軸支持用の転がり軸
受や回転軸へと伝導されるようになっている。
【0004】これらの熱は、ケースの外表面やケースか
ら外部へ突出する回転軸から適宜放熱される他、プーリ
に設けられた冷却ファンにより冷却されるのであるが、
高速・高荷重回転に伴う転動体による発熱により回転軸
支持用の転がり軸受全体の温度が内・外輪の素材である
一般的な鋼の焼き戻し温度(約170〜200℃)より
も高くなるような場合がある。その場合には、回転軸支
持用の転がり軸受の内・外輪の軌道面直下の組成が変化
して硬度が著しく低下するとともに鋼の残留オーステナ
イトがマルテンサイト化するマルテンサイト変態によっ
て寸法の肥大化を伴い軸受すきまの増大をもたらす結果
となる。特にオルタネータでは、それが取り付けられる
エンジンの振動や衝撃を直接受けるために、前述のよう
に転がり軸受の内・外輪の硬度が低下することに伴って
転動体軌道に圧痕が発生しやすくなる。特に固定側とな
る外輪では負荷圏が一定であるため、振動・衝撃の影響
が大きく軌道面直下に多数の微細クラックや組織変化
(白層の生成)を生じ、軌道面が荒れる。荒れた軌道面
により高速・高荷重下ではさらに発熱の要因となり上記
現象が助長される。結果的にごく短時間のうちに剥離を
生じるなど、早期に軸受寿命に至るおそれがある。
【0005】このような場合、内・外輪を耐熱性を有す
るセラミックスで形成して機能劣化を抑制すればよいと
考えられるが、大幅なコストアップを余儀なくされるな
ど、無駄が多いと言える。しかも、セラミックスの場合
には、金属製のケースに対する線膨張係数の差が大きく
なるために、温度上昇時にはめ合い隙間がかなり大きく
なって回転軸の支持状態が不安定になることが懸念され
る。
【0006】一方、特開平4−244624号公報にみ
られるように、転動体をファインセラミックスにするこ
とにより、鋼の水素脆性による剥離発生を抑制したもの
があるが、単に転動体をセラミックスにするだけでは、
オルタネータなどに使用される小径軸受では外輪温度上
昇の抑制効果は少なく、軌道面の剥離発生を充分に抑制
できない。
【0007】本発明はこのような事情に鑑み、回転軸支
持用の転がり軸受の昇温に伴う機能劣化を防止しなが
ら、それに関するコストアップを必要最小限に抑えるこ
とを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、回転軸をケー
スに回転自在に支持する転がり軸受を有する自動車用オ
ルタネータであって、前記転がり軸受の転動体が窒化け
い素を主体とするセラミックスで形成されているととも
に、内・外輪のうち少なくとも外輪が200〜380℃
の焼き戻し温度の熱処理が施された鋼材で形成されてい
る。
【0009】
【作用】オルタネータの発熱に伴い、ケースから回転軸
支持用の転がり軸受の外輪へ熱伝導されても、外輪が焼
戻し温度を通常より高い200〜380℃に設定した鋼
よりなるので、熱的に安定となり、鋼のマルテンサイト
変態に伴う寸法の肥大化が抑制され当初の適正な軸受す
きまを維持することが可能となる。従って、特に固定側
となる外輪が振動や衝撃を受けても軸受すきまが適正で
あるため軌道面での振動や衝撃による影響が軽微であ
り、ミクロ的な塑性変形に伴う局部的な組織変化やクラ
ックの発生を抑止することができる。
【0010】そして、転動体をセラミックスにすること
により、鋼に比べ外輪に対する遠心力の影響を少なくす
ることができるとともに、外輪の接触楕円も小さくでき
るので、さらに軌道面での振動や衝撃による影響を小さ
くすることができる。ミクロ的なすべり領域も少なくな
り高速・高荷重回転に伴う軸受の熱発生が抑えられると
ともに凝着現象も発生せず、軌道面でのミクロ的な塑性
変化を抑制できる。また、熱伝導率も小さいことから、
転動体周囲のグリースの昇温を抑制できグリース寿命を
適性化することができる。
【0011】なお、外輪とケースはいずれも鋼材であっ
て線膨張係数がほとんど同じであるため、はめ合い部分
で不都合が発生しない。
【0012】
【実施例】図1および図2に本発明の一実施例を示して
いる。図1にオルタネータの縦断面図を示しており、1
はフロントブラケット1aとリアブラケット1bをボル
ト結合してなるケース、2はケース1に二つの転がり軸
受3,3を介して回転自在に支持された回転軸である。
ケース1にはコイル6が巻回されたステータ5が、ま
た、回転軸2にはコイル8が巻回されたロータ7、ポー
ル9、ファン一体型のプーリ10およびスリップリング
11がそれぞれ取り付けられている。なお、スリップリ
ング11にはブラシ12がばねによって圧接させられて
いる。
【0013】この回転軸2の支持用の二つの転がり軸受
3,3は、例えば深溝型玉軸受などとされるが、特に限
定されない。ところで、この転がり軸受3において、転
動体3cは窒化けい素を主体とするセラミックスで、外
輪3aはSAE5120材に浸炭処理を施した後、−7
5℃でサブゼロ処理を施し、焼き戻し温度が運転時のス
テータコイル(熱源)6の温度(150〜200℃)よ
りも高め例えば270℃に設定された浸炭鋼で、内輪3
bは一般的な軸受鋼(SUJ−2など、但し焼戻し温度
185℃)で、それぞれ形成されている。なお、3dは
保持器で66ナイロンや46ナイロンなどのポリアミド
樹脂やPES(ポリエーテルスルホン)樹脂でなる。こ
のような合成樹脂で形成することにより、セラミックス
製転動体3cと相まって熱の伝達を遮断し、軸受内のグ
リースの発熱を防止し軸受寿命を延長する。3eはシー
ルである。
【0014】なお、外輪3aの表面の浸炭深さは0.3
〜0.7mmで、表面硬さはHRC56.0〜60.5
となっており、内部の硬さはHRC35.0〜52.0
とされ、残留オーステナイト量は3%以下とされてい
る。内部の硬さが表面に比べ軟らかい浸炭鋼であるた
め、内部が振動や衝撃の緩衝部となり軌道面でのそれら
の影響を緩和している。内輪3bの表面硬さはHRC5
8.0〜62.0とされ、残留オーステナイト量は11
〜14%とされている。この実施例を以下において実施
例1とする。
【0015】次にこの他の実施例について説明する。こ
こでは、上記実施例1の外輪3aを次のものとしてい
る。
【0016】実施例2の外輪3aでは、SAE5120
材に浸炭処理を施した後、−196℃でサブゼロ処理を
施し、210℃で焼戻した浸炭鋼で形成されている。こ
のときの残留オーステナイト量は5.7%であった。
【0017】実施例3の外輪3aでは、SAE5120
材に浸炭処理を施した後、−60℃でサブゼロ処理を施
し、200℃で焼戻した浸炭鋼で形成されている。この
ときの残留オーステナイト量は9.8%であった。
【0018】実施例4の外輪3aでは、SUJ−2材に
845℃で焼入れ加熱、油冷後、350℃で焼戻した軸
受鋼で形成されている。このときの残留オーステナイト
量は3%以下であった。
【0019】実施例5の外輪3aでは、SUJ−2材に
845℃で焼入れ加熱、油冷後、−70℃でサブゼロ処
理を行った後、200℃で焼戻した軸受鋼で形成されて
いる。このときの残留オーステナイト量は7.9%であ
った。
【0020】なお、比較例として一般軸受(内・外輪お
よび玉をSUJ−2製、焼き戻し温度180℃)を用い
た。
【0021】上記各実施例および比較例の軸受を組み込
んだ試験機を加振台に設置し、負荷を加えると同時に、
内輪を回転させた状態で振動を加えて振動試験を行っ
た。なお、試験条件は次のとおりである。
【0022】軸受荷重(静的負荷)/動定格荷重・・・
0.22 内輪回転数・・・8000rpm 計算寿命(上記による)・・・196時間 振動加速度・・・10G(加振台上) 雰囲気温度・・・170℃ 試験時間・・・500時間 そして、剥離までの時間から疲労度を比較評価した。試
験結果を表1に示す。なお、試験の結果、外輪以外には
異常が認められなかったので、結果は外輪についてのみ
示す。
【0023】 試料 剥離までの回転時間 比較例 33〜170時間(n=15) 実施例1 500時間まで剥離せず(n=6) 実施例2 500時間まで剥離せず(n=6) 実施例3 500時間まで剥離せず(n=6) 実施例4 500時間まで剥離せず(n=6) 実施例5 500時間まで剥離せず(n=6) なお、比較例では、試験後に外輪軌道面に多数のクラッ
クと組織変化とともに、グリースの劣化が認められた
が、実施例1、2、4では、クラック、組織変化および
グリースの劣化ともに認められず、実施例3、5ではわ
ずかに組織変化が認められただけであった。このよう
に、実施例1〜5の本発明による転がり軸受の寿命が比
較例の転がり軸受に比べて大幅に向上することがわか
る。
【0024】比較例は、前述の試験において振動を与え
ない場合には、1500時間後でも剥離を生じることが
なく、また、クラックや組織変化が認められず、通常の
使用条件であれば何ら問題ないことも確認されている。
【0025】また、上記実施例では、外輪3aに特殊な
熱処理を施しているが、外輪3aに限らず内輪3bに適
用してもよい。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、外輪
を熱的に安定で寸法肥大化が抑制される素材とする一方
で転動体を熱的影響を受けずに内・外輪間の熱伝導を遮
断して外輪に対する回転遠心力の影響が少なくなるとと
もに凝着現象を生じない素材としているから、オルタネ
ータが発熱したときでも外輪軌道面での過度の発熱が抑
えられ軸受隙間が適正に維持される他、振動や衝撃を受
けても外輪の軌道面で影響が軽微で済むなど、局部的な
組織変化やクラックの発生を抑止できるようになる。ま
た、転動体周囲のグリースの昇温が抑制されることにな
るので、グリース寿命を適正化できるようになる。しか
も、外輪とケースはいずれも鋼材であって線膨張係数が
ほとんど同じであるため、はめ合い部分で不都合が発生
しない。
【0027】したがって、本発明によれば、回転軸支持
用の転がり軸受の昇温に伴う機能劣化を防止しながら、
それに関するコストアップを必要最小限に抑えることが
できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車用オルタネータの一実施例の縦
断面図。
【図2】本実施例での転がり軸受を示す上半分の縦断面
図。
【符号の説明】
1 ケース 2 回転軸 3 転がり軸受 3a 外輪 3b 内輪 3c 転動体

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転軸をケースに回転自在に支持する転
    がり軸受を有する自動車用オルタネータであって、 前記転がり軸受の転動体が窒化けい素を主体とするセラ
    ミックスで形成されているとともに、内・外輪のうち少
    なくとも外輪が200〜380℃の焼き戻し温度の熱処
    理が施された鋼材で形成されている、ことを特徴とする
    自動車用オルタネータ。
JP5286662A 1993-11-16 1993-11-16 自動車用オルタネータ Expired - Lifetime JP2992731B2 (ja)

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