JPH0713284Y2 - 一体成形型誘電体フィルタの共振周波数調整構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、例えば数100MHz域で用いられる一体成形型誘
電体フィルタに関し、特に各共振器の共振周波数を精度
よく一致させることができるようにした周波数調整構造
をもつフィルタに関する。

〔従来の技術〕

従来、数100MHz域のフィルタとして、一体成形型誘電体
フィルタがあり、これは誘電体ブロックに複数の貫通孔
を並行に形成し、該貫通孔の内周面に内導電膜を、該ブ
ロックの外側面に外導電膜をそれぞれ形成して少なくと
も一対の共振器を構成してなるものである。

ところで上記一体成形型誘電体フィルタの各共振器は、
フィルタ特性に応じた共振周波数に精度よく一致させる
ことが必要である。ところが、３段以上の上記各共振器
のうち、入，出力側端部の共振器に比べてこれの内側の
共振器の周波数が高くなる傾向がある。

そこで、従来から上記各共振器の周波数を一致させるた
めの周波数調整構造が提案されている。例えば、第７図
に示すように、誘電体ブロック31の開放側端面31a上
に、貫通孔31bの内周面に形成された内導電膜32を延長
してなる調整用電極33a,33bを形成する方法がある。こ
の方法では、この調整用電極33a,33bを、所望の共振周
波数が得られるような形状，大きさに形成することとな
る。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかしながら上記従来の周波数調整構造では、以下の問
題点がある。

上記調整用電極が形成される上記誘電体ブロックの
開放側端面は一般にその表面粗さが粗い点、及び貫通孔
の内周面に形成された内導電膜が製造方法の都合上上記
端面より上方に盛り上がってしまう場合がある点から、
上記調整用電極の寸法精度が出にくく、結局周波数の調
整精度が低い。

調整用電極と内導電膜とを貫通孔の上端コーナ部で
接続する構造であるので、該コーナ部の欠け，クラック
等によって該接続が不完全になる場合があり、その結果
周波数のばらつき,Qの悪化の問題が生じ易い。

そこで本考案の目的は、上記従来の問題点に鑑み、周波
数調整用電極の寸法精度を向上させて各周波数を整精度
よく一致させることができ、また調整用電極と内導電膜
との接続を確実にして特性を安定化できる周波数調整構
造をもつフィルタを提供する点にある。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案は、誘電体ブロックに複数の共振器を形成してな
る一体成形型誘電体フィルタの共振周波数調整構造にお
いて、誘電体ブロックの開放端側に共振周波数調整用基
板を配設するとともに、該基板を上記ケースの開放端側
に形成した支持部によって支持し、上記基板上に共振周
波数調整用電極を形成し、該各調整用電極と各共振器の
内導電膜とを結合部材を介して接続したことを特徴とす
る周波数調整構造をもつフィルタである。

〔作用〕

本考案に係る周波数調整構造によれば、誘電体ブロック
と別体の調整用基板を設け、該基板に周波数調整用電極
を形成したので、誘電体ブロックの表面粗さ，上方に盛
り上がった内導電膜等の影響を受けることはなく、しか
も電極形成に寸法精度を容易に向上できる写真印刷など
の手法を採用でき、調整用電極の寸法精度を大幅に向上
できる。その結果各共振器の周波数を精度よく一致させ
ることができる。また周波数のばらつきを大幅に低減で
き、それだけ量産性を向上できる。

また、上記調整用基板の調整用電極と誘電体ブロックの
内導電膜とを結合部材を介して接続する構造であるか
ら、上記従来構造のような誘電体ブロックの貫通孔コー
ナ部のクラック等による接続不良が生じることはなく、
特性が安定し、この点からも量産性を向上できる。

さらにまた、上記調整用基板を誘電体ブロックの収容ケ
ースの一部を利用して支持したので、上記基板の支持が
確実であり、この点からも共振周波数の調整が確実とな
る。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図について説明する。

第１図ないし第４図は本考案の一実施例による周波数調
整構造を説明するための図である。図において、１は一
体成形型誘電体フィルタであり、これは誘電体ブロック
２と、調整用基板９と、両者を電気的，機械的に結合す
る結合端子10とで構成されている。

上記誘電体ブロック２は、例えば酸化チタン系誘電体セ
ラミックスを直方体状に焼結成形してなり、これには４
つの円形の貫通孔３が一定間隔をあけて並行に形成され
ている。この貫通孔３の内周面にはAgを薄膜状に焼き付
け固定してなる内導電膜４が形成されている。また、上
記誘電体ブロック２の四側面，底面には同じくAgを焼き
付けてなる外導電膜5,短絡導電膜６がそれぞれ形成され
ている。なお、この短絡導電膜６は上記内，外導電膜4,
5を短絡させて、λ/4波長の共振モードを生じさせるも
のであり、これにより４段の共振器7a〜7dが構成されて
いる。

また、上記誘電体ブロック２の隣接する共振器7aと7b、
7bと7c及び7cと7dとの間には、結合用の空洞８ガ貫通し
て形成されている。この空洞８は横断面長方形状のもの
で、内面には導電膜は形成されておらず、セラミックス
の地肌が露出しており、この空洞８の形状、寸法によっ
て上記各共振器7a〜7dの結合度が左右される。

上記結合端子10は、金属板を円筒状に巻いてなり、この
筒状部10aの突き合わせ部には弾性が生じるように少し
隙間があけられており、また上端部には接続突起10bが
穿設され、該突起10bの両側部には支持片部10cが内方に
折り曲げ形成されている。そしてこの結合端子10の上記
筒状部10aが、上記誘電体ブロック２の貫通孔３の開放
端1a側に挿入されており、該挿入部分はその弾性によっ
て上記内導電膜４の内面に密着している。

上記調整用基板９は、例えばアルミナセラミックス系の
絶縁性基板であり、これの上面の、上記各共振器7a〜7d
の上方位置には、それぞれ矩形状の周波数調整用電極11
a〜11dが形成されている。この各電極11a〜11dは例えば
Agを写真印刷した後、焼き付け固定したものであり、上
記各共振器7a〜7dにおいて同一の共振周波数が得られる
形状，寸法に形成されている。そしてこの各周波数調整
用電極11a〜11dの略中央部には上記各結合端子10の接続
突起10bが突出しており、該突出部は調整用電極11a〜11
dに例えば半田付けによって接続されている。なお、9a,
9bは外部接続用入，出力電極である。

また本実施例の一体成形型誘電体フィルタ１はケース12
内に収容されており、このケース12に支持片12aを内方
に切り起こして形成し、該支持片12aで調整用基板９を
支持するようにしている。そして調整用基板９の両縁部
に形成されたアース部9cが上記ケース12の上端付近に半
田付けされている。

次に本実施例の作用効果について説明する。

本実施例の周波数調整構造では、調整用基板９の上面
に、各共振器7a〜7dの共振周波数を一致させることので
きる形状，寸法の調整用電極11a〜11dを形成するのであ
るが、この場合、従来の誘電体ブロックの開放端面に調
整用電極を直接形成する場合と比較して、その寸法精度
を大幅に向上できる。即ち、誘電体ブロックの開放側端
面は一般にその表面粗さが粗く、この表面粗さを研削等
で平滑に仕上げようとしても、取り扱いの困難さ，工数
増加等から経済的でない。また貫通孔の内周面に形成さ
れた内導電膜が上方に盛り上がり易く、そのため誘電体
ブロック２に直接調整用電極を形成する場合は、これの
寸法精度を高くすることは困難である。これに対して、
本実施例構造は、誘電体ブロック２と別体の調整用基板
９上に調整用電極11a〜11dを形成するのであるから、該
基板９の表面粗さを平滑にするのは容易であり、また該
電極11a〜11dの形成に際し、寸法精度を容易に向上でき
る各種の手法、例えば写真印刷を採用でき、さらに上述
の内導電膜の盛り上がりによる影響を受けることはな
い。これらの結果、調整用電極11a〜11dの寸法精度を大
幅に向上でき、各共振器7a〜7dの共振周波数を精度よく
一致させることができ、不良品の発生を抑制して量産性
を向上できる。

また、上述の従来構造では、誘電体ブロックの貫通孔の
上端コーナ部に発生するクラック等によって、内導電膜
と調整用電極との接続が不安定になり、周波数にばらつ
きが生じる問題があった。これに対して本実施例では、
結合端子10を介して内導電膜４と調整用電極11a〜11dと
を接続したので、誘電体ブロック２のクラック等の影響
を受けることはなく、接続が確実でかつ安定しており、
周波数のばらつきの問題が生じることはない。

さらにまた、本実施例では、調整用基板９上に調整用電
極をパターン形成するようにしたので、各共振器7a〜7d
及び結合端子10の形状等に起因する周波数のばらつき
を、この調整用電極11a〜11dのパターンによって吸収す
ることもできる。

また、本実施例では調整用基板９をケース12の一部を利
用して支持したので、該基板９の支持を確実に行うこと
ができ、この点からも共振周波数の調整を精度よく行う
ことができる。

なお、上記結合端子は、筒状のものに限定されるもので
はなく、各種の形状のものが採用可能であり、例えば金
属棒状のものでも良い。

また、上記実施例では周波数調整用基板の片面のみに調
整電極を形成したが、この電極は両面に形成してもよ
く、また結合用空洞を有するフィルタの場合について説
明したが、本考案は結合用空洞のないものも勿論適用で
きる。

さらにまた、上記実施例では調整用基板に、周波数調整
用電極のみを形成したが、この基板には、第５図及び第
６図に示すように、他の機能を果たす電極膜を追加形成
することもできる。

第５図（ａ）〜（ｃ）は、調整用電極11を形成するとと
もに、さらに各共振器の結合度を調整するための結合度
調整電極14a〜ｃを形成した例である。電極14b,14cはア
ースされている。なおこの第５図（ａ）〜（ｃ）の結合
度調整用電極14a〜ｃは適宜組み合わせて形成すること
もできる。

また、第６図（ａ），（ｂ）は各共振器を１つ飛びに結
合させて有極化させるための有極化用電極15a,15bを形
成した例である。なお、この第６図の電極と上記第５図
の電極とを組み合わせることも勿論可能である。

〔考案の効果〕

以上のように本考案に係る周波数調整構造によれば、誘
電体ブロックと別体の調整用基板に調整用電極を形成
し、これを結合部材を介して各共振器と接続するように
したので、調整用電極の寸法精度を向上して周波数の調
整精度を大幅に向上できる効果があり、また、調整用電
極と各共振器の内導電膜との接続を確実でかつ安定化さ
せ、特性の安定性を向上できる効果がある。さらにま
た、調整用基板を収容ケースの一部を利用して支持した
ので、支持が確実であり、共振周波数の調整精度を向上
できる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第４図は本考案の一実施例による一体成形
型誘電体フィルタの周波数調整構造を説明するための図
であり、第１図はその分解斜視図、第２図はその接続部
分を示す要部断面図、第３図（ａ），（ｂ）はそれぞれ
平面図，側面図、第４図は第３図の（ａ）のIV−IV線断
面図、第５図（ａ）〜（ｃ），第６図（ａ），（ｂ）は
それぞれ上記調整用基板に他の機能用電極を追加した状
態を示す平面図、第７図は従来の周波数調整構造を示す
斜視図である。 図において、１は一体成形型誘電体フィルタ、1aは開放
端、２は誘電体ブロック、３は貫通孔、４は内導電膜、
５は外導電膜、7a〜7dは共振器、９は調整用基板、10は
結合端子（結合部材）、11a〜11dは周波数調整用電極で
ある。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】誘電体ブロックに複数の貫通孔を並設し、
   該貫通孔の内周面に内導電膜を、誘電体ブロックの外側
   面に外導電膜をそれぞれ形成して複数の共振器を構成し
   てなる一体成形型誘電体フィルタの共振周波数調整構造
   において、上記誘電体ブロックを金属製ケース内に収容
   し、上記誘電体ブロックの開放端側に共振周波数調整用
   基板を配置するとともに、該基板を上記ケースの開放端
   側に形成した支持部によって支持し、上記基板上に共振
   周波数調整用電極を形成し、該各調整用電極と上記各共
   振器の内導電膜とを結合部材を介して電気的に接続した
   ことを特徴とする一体成形型誘電体フィルタの共振周波
   数調整構造。