JPH07118739A - 急速焼戻しによる低降伏比高張力鋼板の製造方法 - Google Patents
急速焼戻しによる低降伏比高張力鋼板の製造方法Info
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- JPH07118739A JPH07118739A JP26657793A JP26657793A JPH07118739A JP H07118739 A JPH07118739 A JP H07118739A JP 26657793 A JP26657793 A JP 26657793A JP 26657793 A JP26657793 A JP 26657793A JP H07118739 A JPH07118739 A JP H07118739A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 本発明は工業的に可能な高能率の焼戻し処理
により低降伏比の高張力鋼板の製造技術を提供するもの
である。 【構成】 NbやVを添加せず、CuやMo添加量を制
限して添加した鋼を圧延し、再加熱で720〜840℃
に加熱し、この温度よりただちに焼入れして、ミクロ組
織をマルテンサイト・フェライト主体にした鋼板を表面
のスケールを排除して、800〜1000℃に加熱した
熱処理炉に挿入し、0.3℃/秒以上の昇温速度で加熱
し、表面温度がA1 点−150℃以上、A1 点+50℃
以下の所定の温度に到達した後、ただちに炉外へ出し、
空冷〜水冷を行うことにより、低降伏比の高張力鋼板を
製造することができる。これにより、本発明法で製造し
た鋼板は耐震性が必要な大型の建築構造物への適用が可
能となった。
により低降伏比の高張力鋼板の製造技術を提供するもの
である。 【構成】 NbやVを添加せず、CuやMo添加量を制
限して添加した鋼を圧延し、再加熱で720〜840℃
に加熱し、この温度よりただちに焼入れして、ミクロ組
織をマルテンサイト・フェライト主体にした鋼板を表面
のスケールを排除して、800〜1000℃に加熱した
熱処理炉に挿入し、0.3℃/秒以上の昇温速度で加熱
し、表面温度がA1 点−150℃以上、A1 点+50℃
以下の所定の温度に到達した後、ただちに炉外へ出し、
空冷〜水冷を行うことにより、低降伏比の高張力鋼板を
製造することができる。これにより、本発明法で製造し
た鋼板は耐震性が必要な大型の建築構造物への適用が可
能となった。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は圧延後の再加熱で鋼板の
温度を720〜840℃に昇温し、この温度から焼入れ
した鋼板を急速加熱の急速焼戻しにより低降伏比(低Y
R)の高張力鋼板を製造する技術に関するもので、この
方法で製造される鋼板は耐震性が要求される建築物等へ
の適用が期待される。
温度を720〜840℃に昇温し、この温度から焼入れ
した鋼板を急速加熱の急速焼戻しにより低降伏比(低Y
R)の高張力鋼板を製造する技術に関するもので、この
方法で製造される鋼板は耐震性が要求される建築物等へ
の適用が期待される。
【0002】
【従来の技術】従来、引張強度が590N/mm2 以上の低
YR鋼の殆どは700〜850℃のオーステナイト
(γ)−フェライト(α)の2相共存域からの水冷後、
焼戻しする方法が用いられていた。例えば、特開平3−
207814にその記述があるが、この方法では、γ−
αの2相共存域で保持することにより炭素(C)のαか
らγへの濃化を促進してCを殆ど含まないαとCが濃化
したγを生成させ、水冷後に柔らかい部分と固い部分の
2相を混在させて低YR化を図っていた。しかしなが
ら、この技術では、焼戻し処理は従来と同じ方法である
ため、低YR化に限界があり、大きな問題点であった。
YR鋼の殆どは700〜850℃のオーステナイト
(γ)−フェライト(α)の2相共存域からの水冷後、
焼戻しする方法が用いられていた。例えば、特開平3−
207814にその記述があるが、この方法では、γ−
αの2相共存域で保持することにより炭素(C)のαか
らγへの濃化を促進してCを殆ど含まないαとCが濃化
したγを生成させ、水冷後に柔らかい部分と固い部分の
2相を混在させて低YR化を図っていた。しかしなが
ら、この技術では、焼戻し処理は従来と同じ方法である
ため、低YR化に限界があり、大きな問題点であった。
【0003】また、従来の焼戻し処理法は鋼板を所定の
温度に保持した炉内に長時間保持する必要があり、処理
時間が長く、製造コストの面でも問題であった。また、
特開昭58−19439では、急速加熱法が開示されて
いるが、この方法はパイプの誘導加熱法であり、厚鋼板
への適用は難しい。厚鋼板の場合、誘導加熱法は、実際
に製造される厚鋼板の厚みや幅の種類が極めて多いため
加熱用のコイルが多数必要で、コストや温度精度から、
工業的に実用化は無理な課題であった。
温度に保持した炉内に長時間保持する必要があり、処理
時間が長く、製造コストの面でも問題であった。また、
特開昭58−19439では、急速加熱法が開示されて
いるが、この方法はパイプの誘導加熱法であり、厚鋼板
への適用は難しい。厚鋼板の場合、誘導加熱法は、実際
に製造される厚鋼板の厚みや幅の種類が極めて多いため
加熱用のコイルが多数必要で、コストや温度精度から、
工業的に実用化は無理な課題であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来無理とさ
れていた高張力化と低YR化を同時に達成する鋼板の製
造技術に関するものである。本発明により製造した鋼は
低YRと高張力を兼ね備えており、耐震性が要求される
ような大型の建築物への採用に適している。
れていた高張力化と低YR化を同時に達成する鋼板の製
造技術に関するものである。本発明により製造した鋼は
低YRと高張力を兼ね備えており、耐震性が要求される
ような大型の建築物への採用に適している。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、重量%
でC:0.04〜0.20%、Si:1%以下、Mn:
0.5〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.0
10%以下、Al:0.05%以下、Mo:0.5%以
下、B:0.003%以下、Ti:0.02%以下、
N:0.006%以下及び、Ni:1%以下、Cu:
0.5%以下、Cr:0.5%以下、の一種または二種
以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる
鋼を圧延し、鋼板を再加熱で720〜840℃の温度範
囲に加熱して、この温度からただちに常温まで水冷して
焼入れを行い、ミクロ組織を主としてマルテンサイト・
フェライトの混合組織とした後、表面のスケールを排除
した後、800〜1000℃に加熱した熱処理炉に挿入
し、0.3℃/秒以上の昇温速度で加熱して、表面温度
がA1 点−150℃以上、A1 点+50℃以下の所定の
温度に到達した後、ただちに炉外へ出し、空冷〜水冷を
行うことを特徴とする靭性の優れた低降伏比高張力鋼板
の製造方法である。
でC:0.04〜0.20%、Si:1%以下、Mn:
0.5〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.0
10%以下、Al:0.05%以下、Mo:0.5%以
下、B:0.003%以下、Ti:0.02%以下、
N:0.006%以下及び、Ni:1%以下、Cu:
0.5%以下、Cr:0.5%以下、の一種または二種
以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる
鋼を圧延し、鋼板を再加熱で720〜840℃の温度範
囲に加熱して、この温度からただちに常温まで水冷して
焼入れを行い、ミクロ組織を主としてマルテンサイト・
フェライトの混合組織とした後、表面のスケールを排除
した後、800〜1000℃に加熱した熱処理炉に挿入
し、0.3℃/秒以上の昇温速度で加熱して、表面温度
がA1 点−150℃以上、A1 点+50℃以下の所定の
温度に到達した後、ただちに炉外へ出し、空冷〜水冷を
行うことを特徴とする靭性の優れた低降伏比高張力鋼板
の製造方法である。
【0006】本発明の基本となる考え方を以下に述べ
る。前述したように低YR鋼を製造する技術としてはγ
−αの2相共存域から水冷し、その後、焼戻しを行う方
法が一般的である。2相共存域からの水冷によりCを殆
ど含まないフェライト相とCを過飽和に含んだマルテン
サイト相が生成される。降伏強度(YS,YP)は主に
フェライト相の強度に依存し、引張り強さ(TS)は主
にマルテンサイト相の強度や分率に依存することが知ら
れている。YRはTSに対するYS(YP)の割合であ
るため、2相共存域からの水冷は低YR鋼製造のため、
最も適した方法と考えられていた。
る。前述したように低YR鋼を製造する技術としてはγ
−αの2相共存域から水冷し、その後、焼戻しを行う方
法が一般的である。2相共存域からの水冷によりCを殆
ど含まないフェライト相とCを過飽和に含んだマルテン
サイト相が生成される。降伏強度(YS,YP)は主に
フェライト相の強度に依存し、引張り強さ(TS)は主
にマルテンサイト相の強度や分率に依存することが知ら
れている。YRはTSに対するYS(YP)の割合であ
るため、2相共存域からの水冷は低YR鋼製造のため、
最も適した方法と考えられていた。
【0007】しかしながら、従来の方法では、その後の
焼戻し処理により前述の効果の多くが失われ、低YR化
の限界があった。焼戻し工程で生じる主な冶金現象は
固溶炭素原子がセメンタイトとして排出、微細なFe
炭化物が粗大化、固溶炭素原子がFe以外の金属元素
との炭化物として析出、変態時に生じたミクロ組織中
の多数の転位が消滅あるいは著しく減少の3点が知られ
ている。これらの現象は焼戻し温度が高いほど促進され
る。このうち、Nb,V,Cu等の析出硬化により強度
向上を図る鋼では、析出硬化を促進するため、550℃
以上の焼戻し温度が必須であった。また、析出硬化元素
を使用しない鋼でも、焼戻しの温度により強度の変化が
穏やかな550℃以上の条件での焼戻しが大部分であっ
た。
焼戻し処理により前述の効果の多くが失われ、低YR化
の限界があった。焼戻し工程で生じる主な冶金現象は
固溶炭素原子がセメンタイトとして排出、微細なFe
炭化物が粗大化、固溶炭素原子がFe以外の金属元素
との炭化物として析出、変態時に生じたミクロ組織中
の多数の転位が消滅あるいは著しく減少の3点が知られ
ている。これらの現象は焼戻し温度が高いほど促進され
る。このうち、Nb,V,Cu等の析出硬化により強度
向上を図る鋼では、析出硬化を促進するため、550℃
以上の焼戻し温度が必須であった。また、析出硬化元素
を使用しない鋼でも、焼戻しの温度により強度の変化が
穏やかな550℃以上の条件での焼戻しが大部分であっ
た。
【0008】しかしながら、焼戻し温度が高いと、マル
テンサイトやベイナイトのラスセメンタイト及びその他
の炭化物が粗大化し、強度に寄与する転位も減少する。
しかも、焼戻し温度が高いほどYSの低下よりTSの低
下が大きくなるため、YRが増加することになる。一
方、焼戻し温度が低いと過剰な炭素の固溶状態(一部マ
ルテンサイトを含む)が解消されないため、靭性が回復
しない。従って、従来の焼戻し処理は必然的に焼戻し温
度範囲が定められ、比較的高い温度でかなりの時間保持
する方法が一般的で低YR化にとって限界があった。
テンサイトやベイナイトのラスセメンタイト及びその他
の炭化物が粗大化し、強度に寄与する転位も減少する。
しかも、焼戻し温度が高いほどYSの低下よりTSの低
下が大きくなるため、YRが増加することになる。一
方、焼戻し温度が低いと過剰な炭素の固溶状態(一部マ
ルテンサイトを含む)が解消されないため、靭性が回復
しない。従って、従来の焼戻し処理は必然的に焼戻し温
度範囲が定められ、比較的高い温度でかなりの時間保持
する方法が一般的で低YR化にとって限界があった。
【0009】本発明者らの研究によれば、過剰な炭素の
固溶状態をなくし、且つ炭化物の粗大化を抑制する方法
により、従来の方法では到達できなかった低YR化を図
ることができることを見いだした。すなわち、焼戻しで
YRを増加させるNbやVの析出硬化元素は無添加で、
さらに、CuやMo量はCu−クラスター、Mo−クラ
スターとして析出硬化しない量に制限する必要がある。
このように限定した成分の鋼を圧延し、その後、再加熱
で720〜840℃の温度範囲に加熱し、この温度から
ただちに常温まで水冷して、ミクロ組織を主としてマル
テンサイト・フェライトの混合組織とした鋼板を、鋼板
の表面のスケールを排除した後、800〜1000℃に
加熱した熱処理炉に挿入し、0.3℃/秒以上の昇温速
度で加熱して、表面温度がA1 点−150℃以上A1 点
+50℃以下の所定の温度に到達した後、ただちに炉外
へ出し、空冷〜水冷して、靭性の優れた低降伏比高張力
鋼板を製造する方法である。
固溶状態をなくし、且つ炭化物の粗大化を抑制する方法
により、従来の方法では到達できなかった低YR化を図
ることができることを見いだした。すなわち、焼戻しで
YRを増加させるNbやVの析出硬化元素は無添加で、
さらに、CuやMo量はCu−クラスター、Mo−クラ
スターとして析出硬化しない量に制限する必要がある。
このように限定した成分の鋼を圧延し、その後、再加熱
で720〜840℃の温度範囲に加熱し、この温度から
ただちに常温まで水冷して、ミクロ組織を主としてマル
テンサイト・フェライトの混合組織とした鋼板を、鋼板
の表面のスケールを排除した後、800〜1000℃に
加熱した熱処理炉に挿入し、0.3℃/秒以上の昇温速
度で加熱して、表面温度がA1 点−150℃以上A1 点
+50℃以下の所定の温度に到達した後、ただちに炉外
へ出し、空冷〜水冷して、靭性の優れた低降伏比高張力
鋼板を製造する方法である。
【0010】まず、熱処理炉で鋼板を加熱する場合、鋼
板の温度は鋼板表裏面のスケールの影響が大きい。特に
本発明のように熱処理温度よりかなり高温の800〜1
000℃に保持された熱処理炉に鋼板を挿入し、熱処理
炉温度よりかなり低い温度(A1 点−150℃〜A1 点
+50℃以下)に加熱し、所定の温度に到達後ただちに
炉外へ出し空冷〜水冷する方法ではスケールの付着状態
により鋼板の到達温度が大きく左右される。すなわち、
同一鋼板内で、スケールの付着状態に差があると、熱処
理(到達)温度が異なり、鋼板内の材質の変動が大きく
なり実用には適さない。
板の温度は鋼板表裏面のスケールの影響が大きい。特に
本発明のように熱処理温度よりかなり高温の800〜1
000℃に保持された熱処理炉に鋼板を挿入し、熱処理
炉温度よりかなり低い温度(A1 点−150℃〜A1 点
+50℃以下)に加熱し、所定の温度に到達後ただちに
炉外へ出し空冷〜水冷する方法ではスケールの付着状態
により鋼板の到達温度が大きく左右される。すなわち、
同一鋼板内で、スケールの付着状態に差があると、熱処
理(到達)温度が異なり、鋼板内の材質の変動が大きく
なり実用には適さない。
【0011】また、熱処理の昇温速度は速いほど好まし
いが、このためには、熱処理炉の温度が高いほど速くな
る。しかしながら、熱処理炉の温度が高くなると鋼板の
表面と中心及び幅方向の中心と端の到達温度の差が大き
くなり材質に影響する。すなわち、熱処理炉の温度を8
00〜1000℃に保持する理由は、800℃未満で
は、昇温速度が遅く初期の目的を達しないため、100
0℃超では板厚の中心温度と表面温度の差や鋼板の端と
の温度差が100℃を超え、均一な材質が得られないた
めである。
いが、このためには、熱処理炉の温度が高いほど速くな
る。しかしながら、熱処理炉の温度が高くなると鋼板の
表面と中心及び幅方向の中心と端の到達温度の差が大き
くなり材質に影響する。すなわち、熱処理炉の温度を8
00〜1000℃に保持する理由は、800℃未満で
は、昇温速度が遅く初期の目的を達しないため、100
0℃超では板厚の中心温度と表面温度の差や鋼板の端と
の温度差が100℃を超え、均一な材質が得られないた
めである。
【0012】さらに、加熱温度(熱処理による鋼板表面
の到達温度)をA1 点−150℃以上、A1 点+50℃
以下の範囲とする理由はA1 点−150℃以下の温度で
は過剰な炭素の固溶状態がなくならないため、靭性が回
復しないためであり、A1 点+50℃以上の温度では炭
化物が粗大化し、強度が低下するだけでなく、靭性も劣
化するためである。つぎに、所定の温度に達した後、保
持をしないでただちに炉外へ出して空冷〜水冷(材質上
は水冷が好ましい)する理由は、炭化物を粗大化させず
にTSの低下を抑えて靭性の確保とともに、YRを増加
させないためである。
の到達温度)をA1 点−150℃以上、A1 点+50℃
以下の範囲とする理由はA1 点−150℃以下の温度で
は過剰な炭素の固溶状態がなくならないため、靭性が回
復しないためであり、A1 点+50℃以上の温度では炭
化物が粗大化し、強度が低下するだけでなく、靭性も劣
化するためである。つぎに、所定の温度に達した後、保
持をしないでただちに炉外へ出して空冷〜水冷(材質上
は水冷が好ましい)する理由は、炭化物を粗大化させず
にTSの低下を抑えて靭性の確保とともに、YRを増加
させないためである。
【0013】すなわち、従来の考えでは、過剰な炭素の
固溶状態の解消は焼戻し温度とその時間の積算効果とさ
れていたが、これとは全く異なり、焼戻し温度の絶対値
が支配的であることをつきとめ、炭化物の粗大化は従来
通りの積算効果である事実を明らかにし、その最適な方
法が急速加熱後、空冷〜水冷する方法であることを見い
だした。本発明鋼は焼戻し時に大きな板内温度差(〜≦
100℃)を生じるが、上述のメカニズムのため、板内
の強度の変化は少なく、実用的にも十分均質なレベルを
得ることができる。
固溶状態の解消は焼戻し温度とその時間の積算効果とさ
れていたが、これとは全く異なり、焼戻し温度の絶対値
が支配的であることをつきとめ、炭化物の粗大化は従来
通りの積算効果である事実を明らかにし、その最適な方
法が急速加熱後、空冷〜水冷する方法であることを見い
だした。本発明鋼は焼戻し時に大きな板内温度差(〜≦
100℃)を生じるが、上述のメカニズムのため、板内
の強度の変化は少なく、実用的にも十分均質なレベルを
得ることができる。
【0014】また、従来法では達することができなかっ
た低YR高張力鋼が得られるが、生産性の点からも大き
なメリットが生じる。すなわち、本発明法での焼戻し処
理時間は従来法に比較して約1/3程度に短縮でき、経
済的に大きなメリットである。本発明鋼は従来にない短
時間の焼戻し処理で、低YRの高張力鋼の製造を可能と
するものであるが、製造法とともに鋼成分が重要であ
り、以下これについて述べる。
た低YR高張力鋼が得られるが、生産性の点からも大き
なメリットが生じる。すなわち、本発明法での焼戻し処
理時間は従来法に比較して約1/3程度に短縮でき、経
済的に大きなメリットである。本発明鋼は従来にない短
時間の焼戻し処理で、低YRの高張力鋼の製造を可能と
するものであるが、製造法とともに鋼成分が重要であ
り、以下これについて述べる。
【0015】Cは強度を確保するため、重要な元素であ
り、0.04%未満では十分な強度が得られないため下
限を0.04%とした。また、0.2%を超えると溶接
性を劣化させるので上限を0.2%とした。Siは脱酸
上、鋼に含まれる元素であるが、多く添加すると溶接性
が劣化するため上限を1%とした。Mnは強度、靭性を
確保するため不可欠な元素であり、0.5%以上の添加
が有効である。しかしながら、2.0%以上では溶接性
を害するため上限を2.0%とした。
り、0.04%未満では十分な強度が得られないため下
限を0.04%とした。また、0.2%を超えると溶接
性を劣化させるので上限を0.2%とした。Siは脱酸
上、鋼に含まれる元素であるが、多く添加すると溶接性
が劣化するため上限を1%とした。Mnは強度、靭性を
確保するため不可欠な元素であり、0.5%以上の添加
が有効である。しかしながら、2.0%以上では溶接性
を害するため上限を2.0%とした。
【0016】本発明鋼において不純物であるP,Sをそ
れぞれ0.020%、0.010%以下とした。理由は
母材靭性や溶接性を劣化させないためである。Alは一
般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、0.05%を超
えるとスラブ鋳造時の表面割れが出やすくなるため上限
を0.05%とした。MoはMnとともに、本発明鋼で
は重要な元素であるが、0.5%を超えて添加しても強
度向上効果は少なく、溶接性も害するため、0.5%を
上限とした。Bは焼入れ時に、オーステナイトからフェ
ライトの変態を抑制し焼入れ性を向上させる効果があ
る。しかしながら、過度の添加はかえって焼入れ性を阻
害するため、上限を0.003%とした。
れぞれ0.020%、0.010%以下とした。理由は
母材靭性や溶接性を劣化させないためである。Alは一
般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、0.05%を超
えるとスラブ鋳造時の表面割れが出やすくなるため上限
を0.05%とした。MoはMnとともに、本発明鋼で
は重要な元素であるが、0.5%を超えて添加しても強
度向上効果は少なく、溶接性も害するため、0.5%を
上限とした。Bは焼入れ時に、オーステナイトからフェ
ライトの変態を抑制し焼入れ性を向上させる効果があ
る。しかしながら、過度の添加はかえって焼入れ性を阻
害するため、上限を0.003%とした。
【0017】TiはTiNを生成して、スラブ加熱時の
オーステナイト粒の粗大化を抑制したり、Nを固定して
Bの効果を発揮させる等の効果がある。しかしながら、
過度の添加はTiCを生成して靭性を著しく阻害するた
め、上限を0.02%とした。Nは多すぎるとBの効果
を失い、スラブ鋳造時の表面割れが出やすくなるため
0.006%以下とする。つぎに、Ni,Cu,Crを
添加する理由を述べる。これらの元素の添加はいずれも
鋼の焼入れ性を向上させ、強度や靭性を確保するため重
要な元素であるが、過度の添加は鋼の靭性や溶接性、溶
接部の靭性を害するため、それぞれその上限をNi1%
以下、Cu0.5%以下、Cr0.5%とした。
オーステナイト粒の粗大化を抑制したり、Nを固定して
Bの効果を発揮させる等の効果がある。しかしながら、
過度の添加はTiCを生成して靭性を著しく阻害するた
め、上限を0.02%とした。Nは多すぎるとBの効果
を失い、スラブ鋳造時の表面割れが出やすくなるため
0.006%以下とする。つぎに、Ni,Cu,Crを
添加する理由を述べる。これらの元素の添加はいずれも
鋼の焼入れ性を向上させ、強度や靭性を確保するため重
要な元素であるが、過度の添加は鋼の靭性や溶接性、溶
接部の靭性を害するため、それぞれその上限をNi1%
以下、Cu0.5%以下、Cr0.5%とした。
【0018】
【実施例】表1に発明鋼と比較鋼の化学成分及び鋼板の
製造条件、母材の機械的特性を示す。
製造条件、母材の機械的特性を示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】発明鋼の強度(TS)は600〜840N/
mm2 で、YRは74%以下と低く、vTrsも−67℃
以下の良好な値である。従って、本発明鋼は耐震性が問
題となる建築物への適用に最適であり、その他の構造物
への適用も可能である。これに対し比較鋼11では、鋼
板の製造法は発明鋼と同じであるが、鋼成分のMn量が
多すぎるため、強度は良好であるが、YRが高く、靭性
も不十分である。同様に、比較鋼12では、鋼板の製造
法は発明鋼と同じであるが、鋼成分のMn量が少ないた
め、TSが低く、靭性も不十分な値である。比較鋼13
では、鋼板の製造法は発明鋼と同じであるが、鋼成分の
C量が少ないため、TSが低く、靭性も不十分な値であ
る。
mm2 で、YRは74%以下と低く、vTrsも−67℃
以下の良好な値である。従って、本発明鋼は耐震性が問
題となる建築物への適用に最適であり、その他の構造物
への適用も可能である。これに対し比較鋼11では、鋼
板の製造法は発明鋼と同じであるが、鋼成分のMn量が
多すぎるため、強度は良好であるが、YRが高く、靭性
も不十分である。同様に、比較鋼12では、鋼板の製造
法は発明鋼と同じであるが、鋼成分のMn量が少ないた
め、TSが低く、靭性も不十分な値である。比較鋼13
では、鋼板の製造法は発明鋼と同じであるが、鋼成分の
C量が少ないため、TSが低く、靭性も不十分な値であ
る。
【0022】比較鋼14では、鋼板の製造法は発明鋼と
同じであるが、鋼成分のC量が多すぎるため、靭性が不
十分な値である。比較鋼15では、鋼板の製造法は発明
鋼と同じであるが、鋼成分にNbやVを添加している
が、強度が不十分な値である。比較鋼16では、鋼成分
は発明鋼と同じであるが、圧延後の水冷開始温度が高す
ぎるため、YRが高い。比較鋼17では、鋼成分は発明
鋼と同じであるが、圧延後の水冷開始温度が低すぎるた
め、強度が不十分な値である。比較鋼18では、鋼成分
は発明鋼と同じで、圧延後の水冷開始温度も発明鋼と同
じであるが、従来の焼戻し処理のため、YRが高い。
同じであるが、鋼成分のC量が多すぎるため、靭性が不
十分な値である。比較鋼15では、鋼板の製造法は発明
鋼と同じであるが、鋼成分にNbやVを添加している
が、強度が不十分な値である。比較鋼16では、鋼成分
は発明鋼と同じであるが、圧延後の水冷開始温度が高す
ぎるため、YRが高い。比較鋼17では、鋼成分は発明
鋼と同じであるが、圧延後の水冷開始温度が低すぎるた
め、強度が不十分な値である。比較鋼18では、鋼成分
は発明鋼と同じで、圧延後の水冷開始温度も発明鋼と同
じであるが、従来の焼戻し処理のため、YRが高い。
【0023】
【発明の効果】本発明は工業的に可能な高能率の焼戻し
処理により低降伏比の高張力鋼板の製造技術を提供する
ものである。本発明により製造した鋼は低降伏比と高張
力を兼ね備えており、大型の建築構造物等への適用が可
能である。
処理により低降伏比の高張力鋼板の製造技術を提供する
ものである。本発明により製造した鋼は低降伏比と高張
力を兼ね備えており、大型の建築構造物等への適用が可
能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長田 元宏 君津市君津1番地 新日本製鐵株式会社君 津製鐵所内
Claims (1)
- 【請求項1】 重量%で、 C :0.04〜0.20%、 Si:1%以下、 Mn:0.5〜2.0%、 P :0.020%以下、 S :0.010%以下、 Al:0.05%以下、 Mo:0.5%以下、 B :0.003%以下、 Ti:0.02%以下、 N :0.006%以下 及び、 Ni:1%以下、 Cu:0.5%以下、 Cr:0.5%以下、 の一種または二種以上、 残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を圧延し、鋼
板を再加熱で720〜840℃の温度範囲に加熱して、
この温度からただちに常温まで水冷して焼入れを行い、
ミクロ組織を主としてマルテンサイト・フェライトの混
合組織とした後、表面のスケールを排除した後、800
〜1000℃に加熱した熱処理炉に挿入し、0.3℃/
秒以上の昇温速度で加熱して、表面温度がA1 点−15
0℃以上、A1 点+50℃以下の所定の温度に到達した
後、ただちに炉外へ出し、空冷〜水冷を行うことを特徴
とする靭性の優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26657793A JPH07118739A (ja) | 1993-10-25 | 1993-10-25 | 急速焼戻しによる低降伏比高張力鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26657793A JPH07118739A (ja) | 1993-10-25 | 1993-10-25 | 急速焼戻しによる低降伏比高張力鋼板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07118739A true JPH07118739A (ja) | 1995-05-09 |
Family
ID=17432746
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP26657793A Withdrawn JPH07118739A (ja) | 1993-10-25 | 1993-10-25 | 急速焼戻しによる低降伏比高張力鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07118739A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102965594A (zh) * | 2012-11-07 | 2013-03-13 | 韶关市新世科壳型铸造有限公司 | 采用低合金钢制作超低温钢的方法 |
CN102965593A (zh) * | 2012-11-07 | 2013-03-13 | 韶关市新世科壳型铸造有限公司 | 用低合金钢制作超低温钢的热处理方法 |
CN112375978A (zh) * | 2020-10-30 | 2021-02-19 | 舞阳钢铁有限责任公司 | 一种建筑用钢及其生产方法 |
-
1993
- 1993-10-25 JP JP26657793A patent/JPH07118739A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102965594A (zh) * | 2012-11-07 | 2013-03-13 | 韶关市新世科壳型铸造有限公司 | 采用低合金钢制作超低温钢的方法 |
CN102965593A (zh) * | 2012-11-07 | 2013-03-13 | 韶关市新世科壳型铸造有限公司 | 用低合金钢制作超低温钢的热处理方法 |
CN112375978A (zh) * | 2020-10-30 | 2021-02-19 | 舞阳钢铁有限责任公司 | 一种建筑用钢及其生产方法 |
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