JPH07116937B2 - シリンダヘッド冷却方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、エンジンの冷却装置に関し、特に潤滑油で
あるオイルをシリンダヘッド内に噴射してエンジンの冷
却を図るシリンダヘッド冷却装置に関する。

〔従来の技術〕

第４図は従来のシリンダヘッド冷却装置を示すエンジン
１の概念図で特に自動二輪車に搭載される４サイクルエ
ンジンを示したものである。

このエンジン１では、シリンダヘッド２の燃焼室上方に
位置する部分に凹部からなるオイル貯溜室３が形成さ
れ、このオイル貯溜室３の少なくとも上方開口面はシリ
ンダヘッド２とは別体の着脱自在な蓋体18により覆われ
ている。

またこのオイル貯溜室３内には、先端噴射口を該貯溜室
３の底壁3aに向けて開口させたオイル噴射ノズル10が没
入配置され、該オイル噴射ノズル10から噴射されたオイ
ルにより、最も熱を発生するシリンダヘッド２の熱が吸
収されエンジン１の冷却が図られている。

このような、油冷式のシリンダヘッド冷却装置では、上
述した冷却系の潤滑油であるオイル（矢印Ａ）とエンジ
ン１の各摺動部分に供給される潤滑系のオイルはそれぞ
れクランクケース４内に並設された２個のオイルポンプ
P1,P2によって圧送されている。

このうち、オイルポンプP1は、オイルパン５内に貯留さ
れたオイル６をオイルストレーナ７を介して吸引し、前
記シリンダヘッド２の貯溜室３内へ圧送する冷却系専用
のポンプで、オイルポンプP1により吸引されたオイル
は、クランクケース４の上面4aに植設された独立のオイ
ルパイプ８を介してシリンタヘッドカバー９へ圧送さ
れ、さらにこのシリンダヘッドカバー９に形成されたオ
イル通路9aと、このオイル通路9aに植設されたオイル噴
射ノズル10を介してオイル貯溜室３の底壁3aへ噴射され
る。

なお、前記シリンダヘッドカバー９に形成されたオイル
通路9aは、シリンダヘッドカバー９の背面を示す第５図
のように、シリンダヘッドカバー９の側方9bから穿設さ
れた孔9cにより構成され、その開口端9c′は埋栓9dによ
って密封されている。

一方、第４図に示すようにオイルポンプP2は、オイルパ
ン５内に貯留されたオイル６をオイルストレーナ７を介
して吸引し、エンジン１の各摺動部分へ圧送する潤滑系
のポンプで、このオイルポンプP2により吸引されたオイ
ルは、オイルクーラ30およびオイルフィルタ11を介し、
クランクシャフト12へ供給される。

このクランクシャフト12へ供給されたオイルは、さらに
ノズル13を介し図示せぬピストンの背面へ噴射され、ピ
ストンの冷却を図るとともに、カウンタシャフト14およ
びドライブシャフト15へ供給され、図示せぬ変速装置の
潤滑を図る。なおクランクシャフト12へ供給されたオイ
ルは、シリンダブロック16およびシリンダヘッド２内に
形成された図示せぬオイル通路を介し、シリンダヘッド
２内に配置された図示せぬ動弁機構へも供給される。

なお、シリンダヘッド２のオイル貯溜室３内に噴射さ
れ、また図示せぬ動弁機構へ供給されたオイルの大部分
は、第４図で示すようにシリンダヘッド２の前方（図面
の右側）に形成された主排出通路2aと、クランクケース
４内に形成されたオイル返却通路4b、およびこのオイル
返却通路4bと前記主排出通路2aとの間を連通させるオイ
ルパイプ17を介しオイルパン５内に返却される。

ところが、上述した従来のシリンダヘッド冷却装置によ
ると、冷却用のオイル（矢印Ａ）は、一本のオイル噴射
ノズル10と一個のオイルポンプP1のみで供給するため、
その冷却用のオイル噴射量にはおのずから制限が加わ
り、特定なエンジンの運転状況下（例えば高回転高負荷
時）では、冷却用オイルの十分な噴射量が確保されず、
安定したエンジンの冷却を図ることが出来なくなる虞れ
がある。

〔発明の目的〕

この発明は上述した事情に鑑み、多様なエンジンの運転
状況下においても、シリンダヘッドの安定した冷却が図
られるシリンダヘッド冷却装置を提供することを目的と
する。

〔発明の構成〕

上述した目的を達成するため、この発明のシリンダヘッ
ド冷却装置では、オイル貯溜室の吸気ポート側に配設さ
れた第１のオイル噴射ノズルと、オイル貯溜室の排気ポ
ート側に配設された第２のオイル噴射ノズルを具えると
ともに、オイルパン内に貯留されたオイルを吸引し、か
つ吸引したオイルを前記第１のオイル噴射ノズルのみに
連通する第１のオイルパイプへ圧送するオイルポンプP1
を有し、該オイルポンプP1により圧送されたオイルを前
記第１のオイル噴射ノズルの噴射口を介し前記オイル貯
溜室底壁の吸気ポート側に噴射させる第１のオイル供給
手段と、オイルパン内に貯留されたオイルを吸引し、か
つ吸引したオイルをエンジンの摺動部分へ供給する潤滑
系オイル供給路のオイルクーラと、前記第２のオイル噴
射ノズルのみに連通する第２のオイルパイプとへそれぞ
れ圧送するオイルポンプP2を有し、該オイルポンプP2に
より圧送されたオイルを前記第２のオイル噴射ノズルの
噴射口を介し前記オイル貯溜室底壁の排気ポート側に噴
射させる第２のオイル供給手段とを具えている。

〔作用〕

上述したシリンダヘッド冷却装置によると、第１のオイ
ルポンプP1から供給された冷却用のオイルは第１のオイ
ル供給手段を介し第１のオイル噴射ノズルへ圧送され、
この第１のオイル噴射ノズルから噴射されるオイルによ
りオイル貯溜室の吸気ポート側が冷却されるとともに、
第２のオイルポンプP2によってエンジンの摺動部分へ供
給されるオイルの一部は第２のオイル供給手段を介し第
２のオイル噴射ノズルへ圧送され、この第２のオイル噴
射ノズルから噴射されるオイルによりオイル貯溜室の排
気ポート側が冷却されることとなる。

〔実施例〕

以下この発明に係わるシリンダヘッド冷却装置の一実施
例を詳述する。

第１図は本発明のシリンダヘッド冷却装置を適用した４
サイクルエンジン20の概念図で第４図と同一部分を同一
符号で示す。

このエンジン20では、第１のオイルポンプP1によって吸
引されたオイルは、第１のオイルパイプ31によってシリ
ンダヘッドカバー21内に形成されたオイル通路21aへ案
内され、さらに第１のオイルポンプP1によって吸引され
たオイルは、このオイル通路21aに植設され、かつオイ
ル貯溜室底壁3aの吸気ポート側に配設された第１のオイ
ル噴射ノズル10aによって当該オイル貯溜室底壁3aの吸
気ポート側に噴射され、大量の熱が発生しやすいオイル
貯溜室底壁3aの吸気ポート側を効率良く冷却する。

なお、上述した第１のオイルパイプ31、この第１のオイ
ルパイプ31へオイル圧送するオイルポンプP1、および第
１のオイル噴射ノズル10aを植設したオイル通路21aによ
り、オイルをオイル貯溜室３の底壁3aのうち吸気ポート
側に噴射させる第１のオイル供給手段が構成される。

一方、エンジンの各摺動部分へオイルを供給する第２の
オイルポンプP2によって吸引されたオイルの一部は、オ
イルクーラ30のインレットポート近傍で分岐された独立
の第２のオイルパイプ22を介してシリンダヘッドカバー
21内のエキゾーストポート側に形成されたオイル通路21
bへ案内され、さらに第２のオイルポンプP2によって吸
引されたオイルは、このオイル通路21bに植設され、か
つ貯溜室底壁3aの排気ポート側に配設された第２のオイ
ル噴射ノズル10bによって当該オイル貯溜室底壁3aの排
気ポート側に噴射され、大量の熱が発生しやすいオイル
貯溜室底壁3aの排気ポート側を効率良く冷却する。

なお、エンジンの各摺動部分へオイルを供給するオイル
クーラ30のインレットポート近傍で分岐された独立の第
２のオイルパイプ22、この第２のオイルパイプ22へオイ
ル圧送するオイルポンプP2、および第２のオイル噴射ノ
ズル10bを植設したオイル通路21bにより、オイルをオイ
ル貯溜室底壁3aの排気ポート側に噴射させる第２のオイ
ル供給手段が構成される。

なお、前記各オイル通路21a,21bは、シリンダヘッドカ
バー21の要部背面図で示す第２図のように、シリンダヘ
ッドカバー21の側方21cから穿設された孔21d,21eから構
成されており、前記第１のオイルパイプ31と第１のオイ
ル噴射ノズル10aは、前記孔21dの開口端21d′を介して
連通し、また前記第２のオイルパイプ22と第２のオイル
噴射ノズル10bは、前記孔21eの開口端21e′を介して連
通している。

なお、前記第２のオイルパイプ22には所定の設定圧で拡
開し、シリンダヘッドカバー21側へ流れるオイルの移動
のみを許容する図示せぬリリーフバルブが介在されてい
る。

次に上述したシリンダヘッド冷却装置の作用を説明し、
併せて構成をより詳細に説明する。

エンジン20が始動すると、第１図で示すようにクランク
シャフト12に連動して第１および第２のオイルポンプP
1,P2が駆動され、オイルパン５内に収容されたオイル６
はオイルストレーナ７を介し第１および第２のポンプP
1,P2に吸引される。このうち、第１のオイルポンプP1に
吸引されたオイルは、常に第１のオイルパイプ31および
第１のオイル噴射ノズル10aを介し、シリンダヘッド２
に形成されたオイル貯溜室底壁3aの吸気ポート側に噴射
され、大量の熱が発生しやすいオイル貯溜室底壁3aの吸
気ポート側を効率良く冷却する。

一方、第２のオイルポンプP2に吸引されたオイルは、第
２のオイルパイプ22に図示せぬリリーフバルブが介在さ
れているため、所定の設定圧以下では、すべてオイルク
ーラー30を介しクランクシャフト12等の摺動部分へ供給
される。

そして、エンジンか高回転数に至り、第２のオイルポン
プP2によるオイルの供給圧が、リリーフバルブの設定圧
以上に至ると、第２のオイルポンプP2より吸引されたオ
イルの一部は、第２のオイルパイプ22を介して、シリン
ダヘッドカバー21のオイル通路21b内に案内され、さら
に第２のオイル噴射ノズル10bを介し、大量の熱が発生
しやすいオイル貯溜室底壁3aの排気ポート側に噴射さ
れ、その部分を効率良く冷却する。

したがって、熱的な安定性が特に要求されるエンジン20
の高回転数域では、シリンダヘッド２に形成されたオイ
ル貯溜室底壁3aに吸気ポート側と排気ポート側には第１
および第２のオイルポンプP1,P2双方によって吸引され
た多量のオイル（矢印Ａ）が第１および第２のオイル噴
射ノズル10a、10bを介しオイル貯溜室底壁3aへ噴射され
ることとなる。

なお、上記実施例では、第２のオイルパイプ22に所定の
設定圧で開閉するリリーフバルブを介在させるようにし
たが、このリリーフバルブは必らずしも必要ではなく、
第１および第２のポンプP1,P2の容量あるいはエンジン
の仕様等に応じ設ければ良い。

なお、上記実施例では、油冷式エンジンの安定した冷却
能力を確保するにあたり、噴射するオイルの場所および
量を増大するようにしたが、上記実施例とは別に、第４
図と同一部分を同一符号で示す第３図のように、オイル
パイプ８にオイルクーラー32を介在させ、このオイルク
ーラー32によって、オイルポンプP1から吸引されたオイ
ルを冷却し、この冷却したオイルをオイル噴射ノズル10
を介してシリンダヘッド２のオイル貯溜室３内に噴射さ
せることも可能であり、また第１図の第１のオイルパイ
プ31に第３図で示すオイルクーラー32を介在させ、この
オイルクーラー30によって、第１のオイルポンプP1から
吸引されたオイルを冷却し、この冷却したオイルを第１
のオイル噴射ノズル10a介しオイル貯溜室３内に噴射さ
せるようにしてもよい。

〔発明の効果〕

以上、説明したように、この発明では、第１のオイルポ
ンプP1から供給された冷却用のオイルを第１のオイル供
給手段を介し第１のオイル噴射ノズルへ圧送し、この第
１のオイル噴射ノズルから噴射されるオイルによりオイ
ル貯溜室底壁の吸気ポート側を冷却するとともに、第２
のオイルポンプP2によってエンジンの摺動部分へ供給さ
れるオイルの一部を第２のオイル供給手段を介し第２の
オイル噴射ノズルへ圧送し、この第２のオイル噴射ノズ
ルから噴射されるオイルによりオイル貯溜室底壁の排気
ポート側を冷却するようにしたから、熱が発生しやすい
シリンダヘッドの燃焼室上方の吸気ポート側と排気ポー
ト側の双方が多量の噴射オイルにより集中的に冷却さ
れ、このため多様のエンジンの運転状況下においても、
シリンダヘッドを効率良く冷却させて油冷式エンジンの
冷却能力を著るしく向上させることが出来る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るシリンダヘッド冷却装置を適用し
た４サイクルエンジンの概念図、第２図はシリンダヘッ
ドカバーの背面図、第３図はオイルクーラを介在させた
一例を示す４サイクルエンジンの概念図、第４図は従来
のシリンダヘッド冷却装置を示す４サイクルエンジンの
概念図、第５図は第４図の４サイクルエンジンに装着さ
れたシリンダヘッドカバーの背面図である。 ３……オイル貯溜室、3a……底壁、５……オイルパン、
６……オイル、10a……第１のオイル噴射ノズル、10b…
…第２のオイル噴射ノズル、18……蓋体、20……エンジ
ン、21……シリンダヘッド、31……第１のオイルパイ
プ、30、32……オイルクーラ、22……第２のオイルパイ
プ、P1……第１のオイルポンプ、P2……第２のオイルポ
ンプ。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダヘッドの燃焼室上方に位置する部
   分にオイル貯溜室を形成し、該オイル貯溜室の少なくと
   も上方開放面にシリンダヘッドと別体の蓋体を上方から
   着脱自在に固定するとともに、前記オイル貯溜室内に、
   先端噴射口を該貯溜室の底壁に向けて開口させたオイル
   噴射ノズルを没入配置し、該オイル噴射ノズルから噴射
   されたオイルによりシリンダヘッドを冷却させるように
   したシシリンダヘッド冷却装置において、 前記オイル噴射ノズルは前記オイル貯溜室の吸気ポート
   側に配設された第１のオイル噴射ノズルと、前記オイル
   貯溜室の排気ポート側に配設された第２のオイル噴射ノ
   ズルとを具えるとともに、 前記シシリンダヘッド冷却装置は、オイルパン内に貯留
   されたオイルを吸引し、かつ吸引したオイルを前記第１
   のオイル噴射ノズルのみに連通する第１のオイルパイプ
   へ圧送するオイルポンプP1を有し、該オイルポンプP1に
   より圧送されたオイルを前記第１のオイル噴射ノズルの
   噴射口を介し前記オイル貯溜室底壁の吸気ポート側に噴
   射させる第１のオイル供給手段と、 オイルパン内に貯留されたオイルを吸引し、かつ吸引し
   たオイルをエンジンの摺動部分へ供給する潤滑系オイル
   供給路のオイルクーラと、前記第２のオイル噴射ノズル
   のみに連通する第２のオイルパイプとへそれぞれ圧送す
   るオイルポンプP2を有し、該オイルポンプP2により圧送
   されたオイルを前記第２のオイル噴射ノズルの噴射口を
   介し前記オイル貯溜室底壁の排気ポート側に噴射させる
   第２のオイル供給手段と、 を具えることを特徴とするシリンダヘッド冷却装置。
2. 【請求項２】前記第１のオイルパイプにはオイルクーラ
   が介在されていることを特徴とする特許請求の範囲第
   （１）項記載のシリンダヘッド冷却装置。