JPH07115059B2 - 鋼板の熱間圧延潤滑方法 - Google Patents

鋼板の熱間圧延潤滑方法

Info

Publication number
JPH07115059B2
JPH07115059B2 JP23326892A JP23326892A JPH07115059B2 JP H07115059 B2 JPH07115059 B2 JP H07115059B2 JP 23326892 A JP23326892 A JP 23326892A JP 23326892 A JP23326892 A JP 23326892A JP H07115059 B2 JPH07115059 B2 JP H07115059B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sulfonate
rolling
roll
highly basic
lubricant composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP23326892A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0679330A (ja
Inventor
邦夫 後藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP23326892A priority Critical patent/JPH07115059B2/ja
Priority to US08/026,786 priority patent/US5352373A/en
Publication of JPH0679330A publication Critical patent/JPH0679330A/ja
Publication of JPH07115059B2 publication Critical patent/JPH07115059B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Lubricants (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、炭素鋼板やステンレス
鋼板などの各種鋼板の熱間圧延潤滑方法に関する。より
詳しくは、本発明は、鋼板の熱間圧延において、負荷条
件の厳しいロール表面の通板エッジ部における焼付きを
防止し、この部分でのロール局部摩耗を著しく低減させ
ることのできる、鋼板の熱間圧延潤滑方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼の耐食性は、多量のCrの含有により飛
躍的に向上させることができる。ステンレス鋼に代表さ
れる高クロム鋼は、重量%で13%以上のCrを含有するた
め、鋼の表面に安定なクロム酸化保護膜を形成し、表面
を不働態化することによって耐食性が向上するのであ
る。しかし、この表面酸化膜は炭素鋼のそれに比べると
著しく薄く、圧延時に塑性加工を受けると容易に剥離し
てしまうものである。
【0003】炭素鋼の熱間圧延においても、低温圧延、
高圧下圧延といった高負荷圧延の際には、鋼材表面に充
分な酸化保護膜が形成されないか、或いは形成されたと
しても大きな塑性加工を受けることによって加工変形に
充分に追従できず、割れを生じたり、剥離し易いのであ
る。
【0004】このような状況下では、熱間圧延時に圧延
作業用ロールと鋼板とが焼付きを起こし易く、ロール肌
荒れやそれに伴う圧延製品疵を生じる。また、上記のよ
うな厳しい圧延状況においては、ロール摩耗も大きく、
圧延スケジュールが制約を受けることもあった。
【0005】従来、このような問題に対処するために、
圧延作業用ロールまたはその補強ロールに潤滑剤を供給
することが行われてきた。潤滑剤の使用目的は、圧延作
業用ロールと鋼材間の摩擦力を低減させて焼付きを防止
し、ロールの肌荒れや摩耗を防ぐとともに、圧延製品品
質を向上させることである。
【0006】このような潤滑剤として、特開昭47−
8907号公報には、天然脂肪油に全体の0.1〜10
重量%の少量の水置換剤と、場合によりさらに鉱物性潤
滑油を配合した潤滑剤組成物が提案されている。水置換
剤としては、油溶性スルホン酸塩(例、石油スルホン酸
金属塩)が使用される。また、10μm以下程度の微粉
状炭酸カルシウムを水または潤滑基油に分散させた潤滑
剤が、特公昭62−14598号、特公昭62−391
98号、特公昭62−39199号の各公報に記載され
ている。
【0007】しかし、これらの潤滑剤は、炭素鋼圧延時
の潤滑を目的としたもので、ステンレス鋼の熱間圧延に
使用すると、被圧延材が圧延作業用ロール表面に激しく
焼付き、圧延製品に疵を生じる。また、圧延作業用ロー
ルの摩耗も大きいため、圧延効率が極めて低下するなど
の問題がある。
【0008】ステンレス鋼圧延用の潤滑剤としては、特
開昭63−254195号公報に潤滑油中に酸化鉄粉末を分散さ
せたものが、特開平1−167396号公報には黒鉛粉末を粘
性水溶液中に分散させたものが提案されている。
【0009】しかし、金属間の直接接触状態を抑制する
ために酸化鉄粉末を分散させても、圧延作業用ロールと
ステンレス鋼板との間の焼付きやロール摩耗を充分防止
できるだけの効果が得られていない。黒鉛は、摩擦係数
が極端に低く、圧延に際して被圧延材のかみ込み不良や
スリップ発生の原因となるため、焼付き防止効果と摩耗
低減効果を発揮できるほど充分な量を含有させることが
できないでいた。さらに、鋼板の熱間圧延においては、
鋼板の両端部は温度低下し易いため酸化スケールの発生
量が少なくなるとともに、熱間変形抵抗も高くなる。し
かも、板中央部に比べて大きな幅広がりを生じるため
に、圧延作業用ロールの胴部表面のうち鋼板端部と接触
する周辺部(通板エッジ部という)は、特に焼付きが発
生し易く、ロール局部摩耗も激しい。即ち、この通板エ
ッジ部には焼付き発生やロール摩耗増大の影響が顕著に
現れ、圧延後の圧延作業用ロールの軸方向摩耗プロフィ
ールの通板エッジ部には、キャッツイヤーと呼ばれる局
部摩耗が見られるほか、焼付きに起因する肌荒れやバン
ディングといった現象も起こり、鋼板の熱間圧延におけ
る大きな問題となっていた。
【0010】この対策として、従来から圧延作業用ロー
ルの胴部表面全体に供給する潤滑剤とは別に、通板エッ
ジ部に黒鉛などの固体潤滑剤を含有させた高潤滑性潤滑
剤を供給することが行われてきた。しかし、この場合に
は、ロール表面に潤滑作用効果の異なる2種類の潤滑剤
が同時に供給されることになるため、ロール軸方向にお
いてそれら潤滑剤が混合する領域で不連続な潤滑性を生
じる。その結果、潤滑効果が急激に変化するこのような
領域において、スリップや噛み込み不良、或いは焼付き
が発生するという問題がある。
【0011】また、通板エッジ部のみにこのような高潤
滑性潤滑剤を供給すると、局部的な低摩擦状態を生じる
ため、鋼板端部に大きな幅広がりを生じ、これに伴う肌
荒れ疵がロール胴部に発生するという問題もあった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ステ
ンレス鋼板、炭素鋼板を含む各種鋼板の熱間圧延におい
て、圧延時の噛み込み不良やスリップ発生などの圧延ト
ラブルを起こさずに、鋼板が圧延作業用ロール胴部表面
の通板エッジ部に焼付くことを防止すると同時に、ロー
ル通板エッジ部の摩耗も大幅に低減させることができ、
それにより圧延製品品質と作業効率を著しく向上させる
ことのできる鋼板の熱間圧延潤滑方法を提供することで
ある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者は、かかる目的
を達成するために鋭意検討した結果、従来は清浄分散剤
として潤滑油に少量配合されてきたにすぎない高塩基性
Caスルホネートが、鋼板の熱間圧延用潤滑剤の潤滑主剤
として最適であることを見出した。
【0014】Caスルホネートは、アルキル芳香族をスル
ホン化して得たアルキル芳香族スルホン酸を中和してCa
塩としたものである。高塩基性Caスルホネートとは、こ
うして得たCaスルホネートを、炭酸ガスなどの存在下で
さらにCaO またはCa(OH)2 と反応させることにより製造
され、正塩であるCaスルホネートに比べて3〜15倍もの
過剰Caを含有している。この過剰Caを含有する高塩基性
Caスルホネートの塩基価は、JIS K2501 に記載の方法で
決定される。
【0015】なお、本発明において「高塩基性Caスルホ
ネート」とは、塩基価40 mg-KOH/g以上のものを意味す
る。
【0016】高塩基性Caスルホネートは、耐熱性に優れ
ているため、鋼板の熱間圧延加工時に完全には燃焼ある
いは分解せず、流体あるいは流体に近い状態で存在し
て、潤滑に寄与することができ、潤滑主剤として優れた
潤滑性を発揮することが判明した。その上、鋼板表面に
生成した酸化物保護膜との反応性にも富むため、鋼板表
面に塑性加工時にも剥離しにくい潤滑性反応被膜を形成
することによっても潤滑性は一層向上する。
【0017】しかも、高塩基性Caスルホネートに含まれ
る過剰のCa塩は、粒径150 Å以下の炭酸カルシウムの微
粒子の形態で、油中にコロイド状分散体として存在し、
この微細な炭酸カルシウム粒子が鋼板とロール胴部との
間の金属間の直接接触を物理的に抑制する作用をする。
また、このコロイド状炭酸カルシウム粒子は、潤滑作用
の主体となるCaスルホネートのキャリアー (運び手) と
しても作用し、熱間圧延時における高圧下においても、
Caスルホネートが圧延作業用ロールと被圧延鋼板との摩
擦界面に均一な状態で導入されるため、高塩基性Caスル
ホネートの潤滑効果は著しく高い。その結果、焼付きの
防止と同時に、ロールの摩耗も著しく低減させることが
できるのである。
【0018】高塩基性Caスルホネートを潤滑主剤とする
潤滑剤は、高塩基性Caスルホネートの塩基価が高くなる
ほど潤滑効果も増大する。そのため、塩基価が例えば20
0 mg-KOH/g以上と非常に高い高塩基性Caスルホネートを
使用すれば、負荷条件の厳しい通板エッジ部での焼付き
やロール局部摩耗も完全に防止することができる。しか
し、このような強力な潤滑効果を持つ潤滑剤を使用する
と、ロールと鋼板との摩擦係数が低くなりすぎ、噛み込
み不良やスリップといった圧延トラブルが発生すること
があり、単に潤滑剤の潤滑性を高めるだけでは、問題が
解決できないことが判明した。
【0019】本発明者は、さらに検討を重ねた結果、負
荷条件が厳しく、焼付きやロールの局部摩耗が起こり易
い圧延作業用ロールの通板エッジ部 (即ち、被圧延鋼板
の端部と接触する圧延作業用ロール胴部表面の周辺部)
に用いる高塩基性Caスルホネートの塩基価が、このロー
ルの中央部に用いる高塩基性Caスルホネートの塩基価よ
り高くなるように、高塩基性Caスルホネートを含む潤滑
剤組成物を供給することにより、ロール軸方向に不連続
な潤滑効果や化学的不安定状態を与えることなく、また
噛み込み不良やスリップを引き起こさずに、ロール全体
の潤滑性を効率よく向上できることを見出し、本発明を
完成した。
【0020】ここに、本発明は、塩基価40 mg-KOH/g 以
上の高塩基性Caスルホネートを20〜70重量%含有する潤
滑剤組成物を圧延作業用ロールの胴部表面に供給する鋼
板の熱間圧延潤滑方法において、該潤滑剤組成物中の高
塩基性Caスルホネートの塩基価が、被圧延鋼板端部と接
触する圧延作業用ロール胴部表面の周辺部(通板エッジ
部)において、該ロール胴部表面の中央部より高くなる
ように該潤滑剤組成物を供給することを特徴とする、鋼
板の熱間圧延潤滑方法を要旨とする。
【0021】好適態様にあっては、潤滑剤組成物中の高
塩基性Caスルホネートの塩基価を、圧延作業用ロール
胴部表面の周辺部において200mg−KOH/g以
上、該ロール胴部表面の中央部において200mg−K
OH/g未満とする。別の好適態様にあっては、該潤滑
剤組成物中に、全Caスルホネート量の10重量%以下
の他の金属塩スルホネートを含有してもよい。
【0022】本発明によれば、圧延作業用ロールの全体
に、高塩基性Caスルホネートを20〜70重量%含有する基
本的に同種の潤滑剤組成物を供給し、その塩基価を通板
エッジ部で高く、残りの中央部を低くする。即ち、通板
エッジ部に供給する潤滑剤組成物は、従来のように粘度
特性などの潤滑特性や組成を大幅に変更したものではな
く、単に塩基価を高くしただけであるので、ロール軸方
向における両潤滑剤の混合領域において潤滑特性は滑ら
かに変化し、従来のような潤滑効果の不連続性が解消さ
れる。そのため、スリップや噛み込み不良などの圧延ト
ラブルを起こさずに熱間圧延時の鋼板の圧延作業用ロー
ル表面の通板エッジ部に発生する焼付きを防止し、ロー
ルエッジ摩耗を大幅に低減することができる上、ロール
全体の摩耗も著しく低減し、良好な圧延製品品質も得る
ことができる。
【0023】ここで、「被圧延鋼板端部と接触する圧延
作業用ロール胴部表面の周辺部」とは、従来の潤滑方法
では圧延作業用ロールの局部摩耗や焼付きに起因するロ
ール肌荒れやバンディングが顕著に現れる部分、即ち、
図3に示すように、圧延作業用ロールの軸方向ロール摩
耗プロフィールで通称「キャッツイヤー」と呼ばれる局
部摩耗が見られる、通板エッジ部と称される部分を意味
し、一般に被圧延鋼板の両側の板端部から内方に少なく
とも200 mm、通常は250 mm以下までの領域を意味する。
【0024】
【作用】本発明で潤滑主剤として用いる、塩基価40 mg-
KOH/g 以上の高塩基性Caスルホネートの原料アルキル芳
香族は特に制限されず、従来品と同様、鉱油の潤滑油留
分ならびに合成系化合物 (例、アルキルベンゼン、ポリ
オレフィンをベンゼンにアルキル化したもの、ジノニル
ナフタレン等) のいずれも使用できる。
【0025】この高塩基性Caスルホネートは、本発明で
用いる潤滑剤組成物中に20〜70重量%の割合で含有させ
る。この含有量が20重量%未満では、ロール摩耗量が多
くなり、焼付きも充分に防止できない。一方、高塩基性
Caスルホネートの含有量が70重量%を超えると、組成物
が高粘度化し、潤滑剤を供給しにくくなるため、高塩基
性Caスルホネートの含有量は20〜70重量%とする。高塩
基性Caスルホネートの好ましい含有量は30〜60重量%で
ある。
【0026】使用する高塩基性Caスルホネートの塩基価
が高くなるほどその潤滑効果が一般に高くなる。本発明
においては、圧延負荷条件の厳しい圧延作業用ロールの
通板エッジ部には塩基価がより高い高塩基性Caスルホネ
ートを、負荷の比較的軽い圧延作業用ロール中央部には
塩基価がより低い高塩基性Caスルホネートを供給する。
それにより、ロール中央部に適度の潤滑性を付与しなが
ら、通板エッジ部に対してより強力な潤滑効果を発揮さ
せ、しかも通板エッジ部と中央部の境界領域において潤
滑特性を滑らかに変化させることができる。
【0027】圧延作業用ロールの通板エッジ部と中央部
のそれぞれに供給される潤滑剤組成物中の高塩基性Caス
ルホネートの塩基価は、通板エッジ部における塩基価が
中央部における塩基価より高ければ特に制限されず、上
記効果が達成されるように適宜選択すればよい。好まし
くは、次に述べる理由により、ロール通板エッジ部にお
ける高塩基性Caスルホネートの塩基価を200 mg-KOH/g以
上、ロール中央部における高塩基性Caスルホネートの塩
基価を200 mg-KOH/g未満とする。
【0028】即ち、塩基価が 200 mg-KOH/g の高塩基性
Caスルホネートは、焼付き防止能と耐摩耗性に特に優れ
ているので、熱間圧延時に厳しい負荷が加わるロール通
板エッジ部に供給する潤滑剤組成物には、塩基価が 200
mg-KOH/g の高塩基性Caスルホネートを使用する。塩基
価が200 mg-KOH/g未満では、高塩基性Caスルホネートの
摩擦界面への導入性を向上させるキャリアーとして作用
し、同時に金属間の直接接触を物理的に阻止する作用も
するコロイド状に分散した炭酸カルシウムの量が少な
く、高塩基性Caスルホネートの摩擦界面への導入量が低
下するので、負荷の厳しい通板エッジ部部においてはロ
ール摩耗の低減と焼付きの防止が不十分となる場合があ
る。
【0029】通板エッジ部に使用する高塩基性Caスルホ
ネートの塩基価の上限は特に制限されないが、塩基価が
500 mg-KOH/gを超える高塩基性Caスルホネートは、圧延
用潤滑剤としての適切な機能、例えば粘度等を有するも
のが現状技術レベルでは製造できないので、高塩基性Ca
スルホネートの塩基価は一般に500 mg-KOH/g以下となろ
う。ただし、それ以上の塩基価のものも、製造技術上可
能になれば、使用することができよう。
【0030】一方、圧延作業用ロールの中央部は、熱間
圧延時に加わる負荷がそれほど厳しくないので、塩基価
が200 mg-KOH/g未満の高塩基性Caスルホネートで十分で
あり、塩基価が200 mg-KOH/g以上の高塩基性Caスルホネ
ートをこの部分に使用すると、摩擦係数が低くなりすぎ
てスリップや噛み込み不良を引き起こすことがある。し
かし、高塩基性Caスルホネートの塩基価が40 mg-KOH/g
未満であると、高粘度や原液に近い状態で潤滑剤組成物
を供給しても潤滑効果が不足することがあるので、ロー
ル中央部に使用する高塩基性Caスルホネートの塩基価は
40 mg-KOH/g 以上とし、上限は200 mg-KOH/g未満とする
ことが好ましい。
【0031】このように、本発明の潤滑方法において
は、高塩基性Caスルホネートを特定量含有する潤滑剤組
成物を使用する。高塩基性Caスルホネートは、熱間圧延
時に鋼材表面に生成する酸化被膜との反応性に富み、従
来の潤滑剤とは異なる作用により極めて強力な潤滑効果
を発揮するからである。
【0032】高塩基性Caスルホネートに含まれる粒径 1
50Å以下の炭酸カルシウムは、高塩基性Caスルホネート
を製造する過程で自然に析出したものであり、コロイド
状分散体を油中に形成している。このコロイド状に分散
した炭酸カルシウムは、前述した特公昭62−14598 号公
報に見られるような、別途用意した粒径1〜10μm程度
の微粉状炭酸カルシウムを潤滑油基油に分散させた従来
技術の潤滑剤とは、その作用効果が明らかに異なる。こ
の従来技術の潤滑剤では、炭酸カルシウムの粉末そのも
のが潤滑効果を発揮する。
【0033】これに対して、高塩基性Caスルホネート中
に塩として析出している粒径 150Å以下の炭酸カルシウ
ムそのものには、なんら潤滑効果はなく、高塩基性Caス
ルホネートの持つ高い潤滑効果を発揮し易くするため、
高塩基性Caスルホネートを摩擦界面に運ぶキャリアーと
して作用し、高面圧の界面下での高塩基性Caスルホネー
トの導入性および反応性を助ける役目を果たすと同時
に、この界面での金属間の物理的な直接接触状態を阻止
する役目も果しているものと考えられる。
【0034】このように、高い潤滑性を示すCaスルホネ
ートと油中でコロイド状分散体を形成した粒径 150Å以
下の炭酸カルシウムとの相乗効果により、高塩基性Caス
ルホネートは鋼材に対して顕著な耐焼付き性、耐摩耗性
の向上効果を発揮するのである。
【0035】本発明方法で用いる潤滑剤組成物は、高塩
基性Caスルホネートを一般に使用される潤滑油基油に混
合することにより一般に製造される。高塩基性Caスルホ
ネートは、前述のように、組成物全体の20〜70重量%の
範囲内の量で配合する。高塩基性Caスルホネートと潤滑
油基油のみからなる組成物でも充分に有効であるが、必
要に応じてさらに他の1種もしくは2種以上の添加剤を
配合してもよい。使用しうる添加剤としては、固体潤滑
剤、極圧添加剤、酸化防止剤、流動点降下剤、粘度指数
向上剤等がある。
【0036】適当な潤滑油基油には、鉱物油、合成潤滑
油、ナタネ油、ラードオイル等の油脂類、高級脂肪酸お
よびそのエステル類等が挙げられる。固体潤滑剤の例と
しては、黒鉛、二硫化モリブデン、窒化硼素、雲母、タ
ルク等が挙げられる。
【0037】極圧添加剤の例としては、硫化油脂、硫化
鉱油、ジノニルポリサルファイド等の硫黄系極圧添加
剤、トリクレジルホスフェート、リン酸ジオクチル等の
リン系極圧添加剤が挙げられる。
【0038】酸化防止剤の例としては、メチレン−4,4
−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール) 等のビスフ
ェノール類、ジ−tert−ブチルクレゾール等のアルキル
フェノール類、ナフチルアミン類等が挙げられる。流動
点降下剤、粘度指数向上剤の例としては、ポリメタクリ
レート、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0039】固体潤滑剤の添加量は約1〜10重量%、極
圧添加剤の添加量は約1〜15重量%、酸化防止剤の添加
量は約0.01〜1.0 重量%、流動点降下剤、粘度指数向上
剤の添加量は、それぞれ約1〜5重量%程度でよい。
【0040】本発明で用いる潤滑剤組成物中には、Ca塩
以外のスルホネート (例、Baスルホネート、Mgスルホネ
ート) を含有させてもよい。即ち、塩基価が実質的に変
化しない範囲であれば、Caスルホネートの一部をBaスル
ホネート、Mgスルホネートなどの他のスルホネート金属
塩と置換しても、その効果は低負荷圧延条件下であれば
ほとんど変わらない。従って、特に負荷が比較的軽いロ
ール中央部に使用する潤滑剤組成物ではこのような置換
を行ってもよい。ただし、BaスルホネートやMgスルホネ
ートの単位使用量当たりの潤滑効果がCaスルホネートに
比べて小さいことを考慮し、その置換量は全Caスルホネ
ート量の10重量%以下にすることが好ましい。
【0041】前述のように、本発明では、塩基価がより
高い高塩基性Caスルホネートを含む潤滑剤組成物と、塩
基価がより低い高塩基性Caスルホネートを含む潤滑剤組
成物とを用意しておき、高塩基価の潤滑剤組成物を圧延
作業用ロールの通板エッジ部に、低塩基価の潤滑剤組成
物をロール中央部にそれぞれ供給する。この場合、低塩
基価の潤滑剤組成物は、ロール中央部のみに供給して
も、或いはロール全体に供給してもよい。即ち、ロール
全体に低塩基価の潤滑剤組成物を供給し、ロール通板エ
ッジ部に高塩基価の潤滑剤組成物をさらに供給するとい
う方法も本発明の範囲内である。
【0042】こうして、より高塩基価で潤滑性能がより
高い高塩基性Caスルホネートを圧延通板エッジ部に集中
供給することにより、負荷の厳しい通板エッジ部の摩擦
状態の緩和と潤滑効果を優先的に高めることができ、こ
の部分での焼付き防止とロール局部摩耗の防止ないしは
著しい低減が図られる。一方、負荷が小さい中央部に
は、適度の潤滑性能を有するより低塩基価の高塩基性Ca
スルホネートを供給することで、この部分での潤滑作用
が過大となることが防止され、鋼板の噛み込み不良やス
リップといった圧延トラブルを生ずることなく、必要な
潤滑効果を充分に得ることができる。
【0043】圧延作業用ロールの通板エッジ部に供給さ
れたより高塩基価のCaスルホネートを含む潤滑剤組成物
は、ロールの回転に伴ってロール中央部に向かって広が
っていき、ロール中央部に供給されたより低塩基価のCa
スルホネートを含む潤滑剤組成物と均質に混ざり合う。
従って、両者の混合領域において潤滑性能が急激に変化
することが避けられ、潤滑性能の不連続性が解消され
る。
【0044】潤滑剤組成物の圧延作業用ロールへの供給
は、圧延作業用ロールに直接行ってもよいし、多段式圧
延機の場合には補強ロール、中間ロールなど、他のロー
ルを介して行ってもよい。
【0045】潤滑剤組成物の供給方法としては、要求さ
れる粘度や濃度に応じて、圧縮空気と混合して噴霧状に
して供給するエアーアトマイズ法や、水と混合して供給
するウォーターインジェクション法、さらには加熱蒸気
で噴霧化して供給するスチームアトマイズ法等から適宜
選択すればよく、いずれの方法でも本発明の顕著な潤滑
効果を得ることができる。もちろん、原液のまま供給す
る方法でもよく、上記以外の一般的な給油方式を使用し
てもよい。原液で供給する場合には、必要に応じて、本
発明の潤滑剤組成物を水溶性タイプにして不燃性化して
もよい。
【0046】本発明の潤滑方法を図1に示す例で説明す
ると、鋼板4の両端のエッジ部に対応する位置にある2
個のノズルヘッダ1からは、塩基価が例えば 200〜500
mg-KOH/gの高塩基性Caスルホネートを含む潤滑剤組成物
を、残りの中央部に位置するヘッダ2からは、塩基価が
40 mg-KOH/g 以上、200 mg-KOH/g未満の高塩基性Caスル
ホネートを含む潤滑剤組成物を、それぞれ圧延作業用ロ
ール3に供給する。
【0047】本発明の潤滑方法は、フェライト系、オー
ステナイト系などの一般のステンレス鋼はもとより、特
に自動車排ガス用材料などに使用されるCr含有量20重量
%以上の高耐食性ステンレス鋼 (例、20%Cr鋼、20%Cr
-2%Mo鋼、20%Cr-5%Al鋼など) の熱間圧延や、炭素鋼
の低温圧延、高圧下圧延などの高負荷圧延において、そ
の効果を特に顕著に発揮する。もちろん、一般の鋼板の
通常圧延時の熱間圧延に利用してもその効果は絶大であ
る。
【0048】また、本発明の方法は、鋼板の冷間圧延に
おいてもその効果が期待できるほか、焼付きの激しいク
ロムまたはクロム合金でめっきした圧延作業用ロールを
使用した圧延に対しても有効である。
【0049】
【実施例】次に具体的な実施例に基づき説明する。実施例1 表1に示す13種の潤滑剤組成物(No.1〜9は高塩
基性Caスルホネートを20〜70重量%含有する本発
明で用いる潤滑剤組成物、No.10〜11は比較用潤
滑剤組成物、No.12〜13は従来の潤滑剤組成物)
を、ホモミキサーを使って成分を所定割合で混合するこ
とにより調製し、この潤滑剤組成物を使用して、次に述
べるように試験した。
【0050】図1および図2に示す潤滑剤供給装置を備
えた熱間鋼板圧延ミルラインの4段式熱間鋼板圧延機に
おいて、炭素鋼約3000トンとステンレス鋼 (SUS 304)約
1800トンの圧延試験を行った。各圧延時の潤滑は、図示
のように、上下の圧延作業用ロール3に鋼板入側から潤
滑剤組成物を直接供給することにより行った。図2にお
いて、4は鋼板、5は補強ロールである。潤滑剤組成物
は、ウォーターインジェクション方式の潤滑剤供給装置
により、濃度 0.1〜0.5 重量%程度に希釈して圧力3〜
4kgf/mm2 で供給した。その際、表2に示すように、図
1に示す両端のロール通板エッジ部供給用のヘッダー1
と中央のヘッダー2とではそれぞれ塩基価の異なる高塩
基性Caスルホネートを含有する潤滑剤組成物を使用し
た。圧延後の板幅は約1000mmであり、両側の通板エッジ
部の幅はそれぞれ約200 mmであった。試験結果を、表2
(炭素鋼) と表3 (ステンレス鋼) に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】上記結果から明らかなように、本発明の熱
間潤滑方法によれば、いずれの鋼種においても、圧延作
業用ロールの通板エッジ部の焼付きが防止され、この部
分の肌荒れやバンディングが回避され、またロールの摩
耗量も著しく低減することが立証された。また、従来の
熱間圧延では顕著であった通板エッジ部でのロールの局
部摩耗が著しく低減し、通板エッジ部でのロール摩耗が
ロール中央部での摩耗とほぼ同レベルに抑制されたこと
も確認された。さらに、ロール中央部での潤滑性能を適
度に抑制したことから、スリップや噛み込み不良などの
圧延トラブルも発生しなかった。
【0055】ステンレス鋼圧延など一段と過酷な圧延状
況においては、本発明例4、5、6の潤滑剤組成物よう
に、高塩基性Caスルホネートを30〜60重量%含有させも
のが、より大きな潤滑効果を発揮することも立証され
た。
【0056】一方、比較例においては、試験kのよう
に、通板エッジ部に使用した高塩基性Caスルホネートの
塩基価が中央部のそれより低くなった場合には、焼付き
や肌荒れを生じた。試験lでは、通板エッジ部に供給し
た潤滑剤組成物中の高塩基性Caスルホネートの含有量が
20重量%未満であったため、焼付きや肌荒れを生じた。
比較例mでは、ロール中央部にも200 mg-KOH/gという通
板エッジ部と同じ高塩基価の高塩基性Caスルホネートを
含有した潤滑剤組成物を供給したため、スリップなどの
圧延トラブルを生じた。比較例nでは通板中央部に供給
した潤滑剤組成物中の高塩基性Caスルホネートの塩基価
が40 mg-KOH/g より低かったため、ロール摩耗が著しく
増大した。
【0057】なお、圧延作業用ロールとして、高炭素系
高速度鋼 (ハイス) ロール、高合金グレン鋳鉄ロール、
高Cr鋳鉄ロール、アダマイトロールなど、熱間で一般に
使用される圧延用ロールのいずれを使用した場合にも、
上と同様の結果が得られている。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の熱間潤滑
方法によれば、潤滑剤組成物中の高塩基性Caスルホネ
ートの塩基価を圧延作業用ロールの通板エッジ部と中央
部で負荷に応じて変化させることにより、圧延負荷条件
のより厳しい通板エッジ部において効率的に圧延時の摩
擦力の低減と潤滑作用の向上を図ることができ、この部
分における圧延作業用ロールの局部摩耗を解消ないし著
しく低減することができると同時に、焼付きやそれに起
因するロール肌荒れ、バンディングも防止することがで
きる。また、噛み込み不良やスリップといった圧延ト
ブルも回避することができる。従って、本発明の熱間圧
延潤滑方法により、圧延製品品質が著しく向上し、作業
効率も改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱間圧延潤滑方法における潤滑剤の供
給方法を上方から示す説明図である。
【図2】本発明の熱間圧延潤滑方法における潤滑剤の供
給方法を側面から示す説明図である。
【図3】従来の熱間圧延潤滑方法による圧延後のロール
摩耗プロフィールを説明した図である。
【符号の説明】
1:ロール通板エッジ部供給用ヘッダー 2:ロール通板中央部供給用ヘッダー 3:圧延作業用ロール 4:鋼板 5:補強ロール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10N 30:08 40:24 Z

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩基価40mg−KOH/g以上の高塩
    基性Caスルホネートを20〜70重量%含有する潤滑
    剤組成物を圧延作業用ロールの胴部表面に供給する鋼板
    の熱間圧延潤滑方法において、該潤滑剤組成物中の高塩
    基性Caスルホネートの塩基価が、被圧延鋼板端部と接
    触する圧延作業用ロール胴部表面の周辺部において、該
    ロール胴部表面の中央部より高くなるように該潤滑剤組
    成物を供給することを特徴とする、鋼板の熱間圧延潤滑
    方法。
  2. 【請求項2】 該潤滑剤組成物中の高塩基性Caスルホ
    ネートの塩基価が、圧延作業用ロール胴部表面の周辺部
    において200mg−KOH/g以上、該ロール胴部表
    面の中央部において200mg−KOH/g未満となる
    ように該潤滑剤組成物を供給することを特徴とする、請
    求項1記載の鋼板の熱間圧延潤滑方法。
  3. 【請求項3】 該潤滑剤組成物中に、全Caスルホネー
    ト量の10重量%以下の他の金属塩スルホネートを含有
    することを特徴とする、請求項1または2記載の鋼板の
    熱間圧延潤滑方法。
JP23326892A 1992-03-05 1992-09-01 鋼板の熱間圧延潤滑方法 Expired - Fee Related JPH07115059B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23326892A JPH07115059B2 (ja) 1992-09-01 1992-09-01 鋼板の熱間圧延潤滑方法
US08/026,786 US5352373A (en) 1992-03-05 1993-03-05 Lubricating composition for use in hot rolling of steels

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23326892A JPH07115059B2 (ja) 1992-09-01 1992-09-01 鋼板の熱間圧延潤滑方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0679330A JPH0679330A (ja) 1994-03-22
JPH07115059B2 true JPH07115059B2 (ja) 1995-12-13

Family

ID=16952429

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP23326892A Expired - Fee Related JPH07115059B2 (ja) 1992-03-05 1992-09-01 鋼板の熱間圧延潤滑方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH07115059B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100858385B1 (ko) 2003-06-06 2008-09-11 신닛뽄세이테쯔 카부시키카이샤 윤활식 열간 압연 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0679330A (ja) 1994-03-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5352373A (en) Lubricating composition for use in hot rolling of steels
JP2570060B2 (ja) 鋼材の熱間圧延潤滑方法
JP3272973B2 (ja) 高温塑性加工用潤滑剤
JP3475983B2 (ja) 金属の圧延加工用潤滑剤組成物
JP2560678B2 (ja) 鋼板の熱間圧延潤滑方法
JP3008823B2 (ja) 金属の塑性加工用潤滑剤組成物
JPH07115059B2 (ja) 鋼板の熱間圧延潤滑方法
JP2689827B2 (ja) 鋼材の冷間圧延方法
JP2624122B2 (ja) 熱間圧延加工用潤滑剤組成物
JP2666688B2 (ja) H形鋼のローラー矯正における潤滑方法
JP2885011B2 (ja) 熱間圧延加工用潤滑剤組成物
JP2643733B2 (ja) 圧延加工方法
JP3011056B2 (ja) アルミニウムおよびアルミニウム合金の加工方法
JP2730455B2 (ja) 鋼材の熱間潤滑方法
JP2009144100A (ja) ステンレス鋼用熱間圧延油
JP2921436B2 (ja) チタンおよびチタン合金の圧延方法
JP3475982B2 (ja) 金属の圧延加工用潤滑剤組成物
JP4008994B2 (ja) 高温塑性加工用潤滑剤
JPH10219268A (ja) 鋼材の熱間圧延加工用潤滑剤組成物
JP3124454B2 (ja) 鋼材の熱間圧延用潤滑剤組成物及び鋼材の熱間圧延方法
JP2870413B2 (ja) 熱間圧延用潤滑剤組成物とその使用方法
JP2750510B2 (ja) 耐酸化性に優れたアルミニウム用熱間圧延油およびその製造方法
JP2000202508A (ja) 固形潤滑剤を用いた冷間圧延方法
JP4464477B2 (ja) 熱間圧延油及び熱間圧延方法
JPH10231493A (ja) 熱間圧延用潤滑剤及び圧延方法

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 19981006

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees