JP2560678B2 - 鋼板の熱間圧延潤滑方法 - Google Patents

鋼板の熱間圧延潤滑方法

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JP2560678B2
JP2560678B2 JP4156826A JP15682692A JP2560678B2 JP 2560678 B2 JP2560678 B2 JP 2560678B2 JP 4156826 A JP4156826 A JP 4156826A JP 15682692 A JP15682692 A JP 15682692A JP 2560678 B2 JP2560678 B2 JP 2560678B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、炭素鋼板やステンレス
鋼板などの熱間圧延潤滑方法に関する。より詳しくは、
本発明は、高塩基性Caスルホネートを20〜70重量%含有
する潤滑剤組成物を圧延用作業ロール表面に供給する鋼
板の熱間圧延において、噛み込み不良やスリップを起こ
さずに、負荷条件の厳しいロール表面の通板エッジ部に
おける焼付きを防止し、この部分でのロール局部摩耗を
防止ないし著しく低減させることのできる、鋼板の熱間
圧延潤滑方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼の耐食性は、多量のCrの含有により飛
躍的に向上させることができる。ステンレス鋼に代表さ
れる高クロム鋼は、重量%で13%以上のCrを含有するた
め、鋼の表面に安定なクロム酸化保護膜を形成し、表面
を不働態化することによって耐食性が向上するのであ
る。しかし、この表面酸化膜は炭素鋼のそれに比べると
著しく薄く、圧延時に塑性加工を受けると容易に剥離し
てしまうものである。
【0003】炭素鋼の熱間圧延においても、低温圧延、
高圧下圧延といった高負荷圧延の際には、鋼材表面に充
分な酸化保護膜が形成されないか、或いは形成されたと
しても大きな塑性加工を受けることによって容易に剥離
してしまうものであった。
【0004】このような状況下では、熱間圧延時に圧延
用作業ロールと鋼材とが焼付きを起こし易く、ロール肌
荒れやそれに伴う圧延製品疵を生じる。また、上記のよ
うな厳しい圧延状況においては、ロール摩耗も大きく、
圧延スケジュールが制約を受けることもあった。
【0005】従来、このような問題に対処するために、
圧延用作業ロールまたはその補強ロールに潤滑剤を供給
することが行われてきた。潤滑剤の使用目的は、圧延用
作業ロールと鋼材間の摩擦力を低減させて焼付きを防止
し、ロールの肌荒れや摩耗を防ぐとともに、圧延製品品
質を向上させることである。
【0006】このような潤滑剤として、特開昭47−
8907号公報には、天然脂肪油に全体の0.1〜10
重量%の少量の水置換剤と、場合によりさらに鉱物性潤
滑油を配合した潤滑剤組成物が提案されている。水置換
剤としては、油溶性スルホン酸塩(例、石油スルホン酸
金属塩)が使用される。また、10μm以下程度の微粉
状炭酸カルシウムを水または潤滑基油に分散させた潤滑
剤が、特公昭62−14598号、特公昭62−391
98号、特公昭62−39199号の各公報に記載され
ている。
【0007】しかし、これらの潤滑剤は、炭素鋼圧延時
の潤滑を目的としたもので、ステンレス鋼の熱間圧延に
使用すると、被圧延材が圧延用作業ロール表面に激しく
焼付き、圧延製品に疵を生じる。また、圧延用作業ロー
ルの摩耗も大きいため、圧延効率が極めて低下するなど
の問題がある。
【0008】ステンレス鋼圧延用の潤滑剤としては、特
開昭63−254195号公報に潤滑油中に酸化鉄粉末を分散さ
せたものが、特開平1−167396号公報には黒鉛粉末を粘
性水溶液中に分散させたものが提案されている。
【0009】しかし、金属間の直接接触状態を抑制する
ために酸化鉄粉末を分散させても、圧延用作業ロールと
ステンレス鋼板との間の焼付きやロール摩耗を充分防止
できるだけの効果が得られていない。黒鉛は、摩擦係数
が極端に低く、圧延に際して被圧延材のかみ込み不良や
スリップ発生の原因となるため、焼付き防止効果と摩耗
低減効果を発揮できるほど充分な量を含有させることが
できないでいた。さらに、鋼板の熱間圧延においては、
鋼板の両端部は温度低下し易いため酸化スケールの発生
量が少なくなるとともに、熱間変形抵抗も高くなる。し
かも、板中央部に比べて大きな幅広がりを生じるため
に、鋼板両端部と圧延用作業ロールとが接する部分とそ
の周辺(通板エッジ部という)は特に焼付きが発生し易
く、ロール局部摩耗も激しく、この点が鋼板の熱間圧延
の大きな問題となっていた。この通板エッジ部は、焼付
き発生やロール摩耗増大の影響が顕著に現れる部分であ
る。そのため、図3(a)に示すように、圧延後の圧延
用作業ロールの軸方向摩耗プロフィールの通板エッジ部
に相当する通板部両端には、キャッツイアーと呼ばれる
局部摩耗が見られるほか、焼付きに起因する肌荒れやバ
ンディングといった現象も起こる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ステ
ンレス鋼板を含む各種鋼板の熱間圧延において、圧延時
のかみ込み不良やスリップ発生などの圧延トラブルを起
こさずに、鋼板が圧延用作業ロール表面の通板エッジ部
に焼付くことを防止すると同時に、ロール通板エッジ部
の摩耗も大幅に低減させることができ、それにより圧延
製品品質と作業効率を著しく向上させることのできる鋼
板の熱間圧延潤滑方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、かかる目的
を達成するために鋭意検討した結果、従来は清浄分散剤
として潤滑油に少量配合されてきたにすぎない高塩基性
Caスルホネートが、鋼板の熱間圧延用潤滑剤の潤滑主剤
として最適であることを見出した。
【0012】高塩基性Caスルホネートは、アルキル芳香
族を発煙硫酸またはSO3 ガスによりスルホン化して得た
親油性の石油スルホン酸を中和してCa塩とすることによ
り得られるCaスルホネートを、炭酸ガスなどの存在下で
さらにCaO またはCa(OH)2 と反応させることにより製造
される。高塩基性Caスルホネートは、正塩 (Caスルホネ
ート) に比べて3〜15倍もの過剰Caを含有し、この過剰
のCaは、主として炭酸カルシウム(CaCO3) の形で粒径
(平均粒径)150Å以下のコロイド状で油中に分散したコ
ロイド状分散体を形成している。
【0013】この高塩基性Caスルホネートは、耐熱性に
優れているため、鋼板の熱間圧延温度では、完全に燃焼
あるいは分解せず、流体あるいは流体に近い状態で存在
して、潤滑に寄与することができ、潤滑主剤として優れ
た潤滑性を発揮することが判明した。その上、鋼板表面
の酸化物との反応性にも富むため、表面に潤滑性の反応
被膜を形成することによっても潤滑性は一層向上する。
【0014】しかも、高塩基性Caスルホネートは、上記
のように、油中にCa塩(炭酸カルシウム) の微粒子を粒
径150 Å以下のコロイド状分散体として含有している。
この微細に分散した炭酸カルシウムは、潤滑作用の主体
となる塩基性Caスルホネートのキャリアー (運び手) と
して作用し、熱間圧延時における高圧下においても、こ
の微粒子が圧延用作業ロールと被圧延材との摩擦界面に
均一な状態で導入されるため、高塩基性Caスルホネート
の潤滑効果は著しく高く、摩擦界面での金属間の直接接
触状態を抑制して焼付きを防止し、同時にロールの摩耗
を大きく低減させることができる。
【0015】このような作用により、高塩基性Caスルホ
ネートを潤滑主剤とする潤滑剤は、高塩基性Caスルホネ
ートの供給量を多くすれば、負荷条件の厳しい通板エッ
ジ部での焼付きやロール局部摩耗も完全に防止すること
ができる。しかし、高塩基性Caスルホネートは潤滑効果
が著しく高いため、その供給量を増やすと、ロールと鋼
板との摩擦係数が低くなりすぎ、噛み込み不良やスリッ
プといった圧延トラブルが発生することがあり、しかも
潤滑性が強力な高塩基性Caスルホネートほどこの傾向が
高い。
【0016】本発明者は、さらに検討を重ねた結果、高
塩基性Caスルホネートを圧延用作業ロール表面の通板エ
ッジ部に集中的に供給する(即ち、他のロール表面部分
より多量に、或いは他のロール表面部分には供給せず
に)ことによって、ロール全体の潤滑剤の使用効率を向
上させ、同時に通板エッジ部の焼付きやロール局部摩耗
を防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0017】ここに、本発明は、高塩基性Caスルホネ
ートを20〜70重量%含有する潤滑剤組成物を圧延用
作業ロール表面に供給する鋼板の熱間圧延潤滑方法にお
いて、該潤滑剤組成物を、圧延用作業ロールの表面の
うち被圧延鋼板両端部と接触する部分およびその周辺部
のみに供給するか、或いは圧延用作業ロールの表面の
うち被圧延鋼板両端部と接触する部分およびその周辺部
、それ以外のロール表面部分より多量の高塩基性Ca
スルホネートを供給することを特徴とする、鋼板の熱間
圧延潤滑方法、を要旨とする。
【0018】ここで、「圧延用作業ロールの表面のうち
被圧延鋼板両端部と接触する部分およびその周辺部」と
は、従来の潤滑方法ではロールの局部摩耗やロール肌荒
れが顕著に認められてきた部分、即ち、図3(a)の軸
方向ロール摩耗プロフィールで局部摩耗が見られる、通
板エッジ部と称される部分を意味し、一般に被圧延鋼板
の両端から内方に少なくとも200mm、通常は250
mm以下までの範囲が通板エッジ部に相当する。
【0019】
【作用】本発明で潤滑主剤として用いる高塩基性Caスル
ホネートの原料アルキル芳香族は特に制限されず、従来
品と同様、鉱油の潤滑油留分ならびに合成系化合物
(例、アルキルベンゼン、ポリオレフィンをベンゼンに
アルキル化したもの、ジノニルナフタレン等) のいずれ
も使用できる。
【0020】この高塩基性Caスルホネートは、本発明の
潤滑剤組成物中に20〜70重量%の割合で含有させる。こ
の含有量が20重量%未満では、ロール摩耗量が多くな
り、焼付きも充分に防止できない。一方、高塩基性Caス
ルホネートの含有量が70重量%を超えると、組成物が高
粘度化し、潤滑剤を供給しにくくなるため、高塩基性Ca
スルホネートの含有量は20〜70重量%とする。高塩基性
Caスルホネートの好ましい含有量は30〜60重量%であ
る。
【0021】使用する高塩基性Caスルホネートの塩基価
は特に制限されないが、40 mg-KOH/g 以上のものがよ
く、特に 200〜500 mg-KOH/gのものが焼付き防止能、耐
摩耗性および耐汚れ性に優れていることから好ましい。
塩基価が200 mg-KOH/g未満では、高塩基性Caスルホネー
トの摩擦界面への導入性を向上させるキャリアーとして
の炭酸カルシウムの量が少なく、高塩基性Caスルホネー
トの摩擦界面への導入量が低下するので、ロール摩耗の
低減と焼付きの防止が不十分となり、脱スケール性など
の耐汚れ性も低下する場合がある。しかし、軽加工や加
工性が比較的良好な鋼材(例、炭素鋼、SUS 304 鋼) の
場合には、塩基価が200 mg-KOH/g未満の高塩基性Caスル
ホネートでも有効に使用できる。一方、塩基価が500 mg
-KOH/gを超える高塩基性Caスルホネートは、圧延用潤滑
剤としての適切な機能、例えば粘度等を有するものが現
状技術レベルでは製造できない。但し、製造技術上可能
になれば、塩基価が500 mg-KOH/g超のものも使用できよ
う。高塩基性Caスルホネートは、各種の塩基度のものが
市販されており、市販品を利用してもよい。
【0022】このように、本発明の潤滑方法において
は、高塩基性Caスルホネートを特定量含有する潤滑剤組
成物を使用することに大きな特徴がある。即ち、本発明
に特有の強力な潤滑作用を得るには、熱間圧延時に鋼材
表面に生成する酸化皮膜との反応性に富んだ高塩基性物
質としての高塩基性Caスルホネートの存在が重要なので
ある。
【0023】高塩基性Caスルホネートに含まれる粒径 1
50Å以下の炭酸カルシウムは、高塩基性Caスルホネート
を製造する過程で自然に析出し、コロイド状分散体を油
中に形成している。このコロイド状に分散した炭酸カル
シウムは、前述した特公昭62−14598 号公報に見られる
ような、別途用意した粒径1〜10μm程度の微粉状炭酸
カルシウムを潤滑油基油に分散させた従来技術の潤滑剤
とは、その作用効果が明らかに異なる。この従来技術の
潤滑剤では、炭酸カルシウムの粉末そのものが潤滑効果
を発揮する。
【0024】これに対して、高塩基性Caスルホネート中
に塩として析出している粒径 150Å以下の炭酸カルシウ
ムそのものには、なんら潤滑効果はなく、高塩基性Caス
ルホネートの持つ高い潤滑効果を発揮し易くするため、
高塩基性Caスルホネートを摩擦界面に運ぶキャリアーと
して作用し、高面圧界面下での高塩基性Caスルホネート
の導入性および反応性を助ける役目をしているものと考
えられる。
【0025】このように、高い潤滑性を示す高塩基性Ca
スルホネートと油中でコロイド状分散体を形成した粒径
150Å以下の炭酸カルシウムとの相乗効果により、鋼材
に対して顕著な耐焼付き性、耐摩耗性、耐汚れ性の向上
効果を発揮するのである。
【0026】本発明の方法で用いる潤滑剤組成物は、使
用する潤滑油基油に高塩基性Caスルホネートを混合する
ことにより一般に製造される。高塩基性Caスルホネート
は、前述のように、組成物全体の20〜70重量%の範囲内
の量で配合する。高塩基性Caスルホネートと潤滑油基油
のみからなる組成物でも充分に有効であるが、必要に応
じてさらに他の1種もしくは2種以上の添加剤を配合し
てもよい。使用しうる添加剤としては、固体潤滑剤、極
圧添加剤、酸化防止剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤
等がある。
【0027】適当な潤滑油基油には、鉱物油、合成潤滑
油、ナタネ油、ラードオイル等の油脂類、高級脂肪酸お
よびそのエステル類等が挙げられる。固体潤滑剤の例と
しては、黒鉛、二硫化モリブデン、窒化硼素、雲母、タ
ルク等が挙げられる。
【0028】極圧添加剤の例としては、硫化油脂、硫化
鉱油、ジノニルポリサルファイド等の硫黄系極圧添加
剤、トリクレジルホスフェート、リン酸ジオクチル等の
リン系極圧添加剤が挙げられる。
【0029】酸化防止剤の例としては、メチレン−4,4
−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール) 等のビスフ
ェノール類、ジ−tert−ブチルクレゾール等のアルキル
フェノール類、ナフチルアミン類等が挙げられる。流動
点降下剤、粘度指数向上剤の例としては、ポリメタクリ
レート、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0030】固体潤滑剤の添加量は約1〜10重量%、極
圧添加剤の添加量は約1〜15重量%、酸化防止剤の添加
量は約0.01〜1.0 重量%、流動点降下剤、粘度指数向上
剤の添加量は、それぞれ約1〜5重量%程度でよい。
【0031】本発明の熱間圧延潤滑方法においては、高
塩基性Caスルホネートを20〜70重量%含有する潤
滑剤組成物を、圧延用作業ロールの表面のうち被圧延
鋼板両端部と接触する部分およびその周辺部のみに供給
するか、或いは圧延用作業ロールの表面のうち被圧延
鋼板両端部と接触する部分およびその周辺部へ、それ以
外のロール表面部分より多量の高塩基性Caスルホネー
トを供給する。即ち、高塩基性Caスルホネートの供給
を、圧延用作業ロール表面の通板エッジ部のみに、或い
は通板エッジ部が通板中央部より多量となるように供給
量の勾配をつけて、行うのである。
【0032】こうして、高塩基性Caスルホネートを圧延
通板エッジ部に集中供給することにより、負荷の厳しい
通板エッジ部の摩擦状態の緩和と潤滑効果を優先的に高
めることができ、この部分での焼付き防止とロール局部
摩耗の防止ないしは著しい低減が図られる。
【0033】つまり、一般に潤滑剤は圧延用作業ロール
の表面全体に均一に供給することが普通であるが、負荷
条件の厳しい通板エッジ部の焼付きやロール局部摩耗を
防ぐのに十分な量で本発明の潤滑剤組成物をロール全面
に均一に供給すると、高塩基性Caスルホネートは潤滑効
果が高いため、負荷が小さい中央部において潤滑作用が
過大となり、鋼板の噛み込み不良やスリップといった圧
延トラブルが発生し易くなり、安定な圧延が困難となる
場合がある。その上、このような均一供給は、高塩基性
Caスルホネートを多量に使用することになり、経済的に
も不利である。しかし、本発明によれば、高塩基性Caス
ルホネートを潤滑主剤とする場合のこのような弊害が解
消され、しかも必要な潤滑効果は充分に得られるのであ
る。
【0034】潤滑剤組成物を圧延用作業ロール表面の通
板エッジ部のみに供給しても、ロールの回転に伴って、
潤滑剤組成物はロール中央部に向かって広がっていき、
周辺部ほど高塩基性Caスルホネートの量が多くなるよう
な濃度勾配をもってロール全面に潤滑剤組成物が分布す
るようになるので、ロール全面にその潤滑効果を波及さ
せることができる。従って、この場合でも、ロール中央
部に別の潤滑剤を供給する必要はない。
【0035】しかし、所望により、例えば、一般市販の
熱間潤滑剤を圧延用作業ロールの表面全面あるいはロー
ル表面中央部のみに供給し、同時に本発明で用いる潤滑
剤組成物を通板エッジ部のみ、或いはこの部分により多
量に供給してもよい。または、特に通板エッジ部のみに
上記潤滑剤組成物を供給する場合、圧延開始初期の中央
部での潤滑不良を防止するために、圧延開始初期のみに
一般の熱間潤滑剤を圧延用作業ロール表面の全面または
中央部に供給してもよい。
【0036】潤滑剤組成物の圧延用作業ロールへの供給
は、圧延用作業ロールに直接行ってもよいし、多段式圧
延機の場合には補強ロール、中間ロールなど、他のロー
ルを介して行ってもよい。
【0037】潤滑剤組成物の供給方法としては、要求さ
れる粘度や濃度に応じて、圧縮空気と混合して噴霧状に
して供給するエアーアトマイズ法や、水と混合して供給
するウォーターインジェクション法、さらには加熱蒸気
で噴霧化して供給するスチームアトマイズ法等から適宜
選択すればよく、いずれの方法でも本発明の顕著な潤滑
・脱スケール効果を得ることができる。もちろん、原液
のまま供給する方法でもよく、上記以外の一般的な給油
方式を使用してもよい。原液で供給する場合には、必要
に応じて、本発明の潤滑剤組成物を水溶性タイプにして
不燃性化してもよい。
【0038】高塩基性Caスルホネートを圧延用作業ロー
ルの通板エッジ部のみに供給するには、本発明で用いる
高塩基性Caスルホネートを20〜70重量%含有する潤滑剤
組成物を、例えば、図1に示す例では、鋼板4の両側の
エッジ部に位置した2個のノズルヘッダ1のみから上記
潤滑剤組成物を圧延用作業ロール3に供給すればよい。
この場合、残りの中央部に位置したヘッダ2からは、必
要であれば他の潤滑剤を供給してもよく、或いはこのヘ
ッダからは何も供給しなくてもよい。
【0039】高塩基性Caスルホネートを圧延用作業ロー
ルの通板エッジ部に中央部より多量に供給するには、上
記潤滑剤組成物を水や空気と混合して供給する場合に
は、その混合比をロール通板エッジ部と中央部とで変化
させればよい。即ち、図1に示す例では、ヘッダ1での
水または空気の混合比をヘッダ2での混合比より低く
し、流量はヘッダ1と2とで同じにすれば、ヘッダ1か
らより多量の潤滑剤組成物、従って高塩基性Caスルホネ
ートを供給することができる。潤滑剤組成物を原液で供
給する場合には、単純にその供給流量を制御し、ヘッダ
1からより多量の潤滑剤組成物を供給すればよい。或い
は、ヘッダ1と2とで、供給する潤滑剤組成物中の高塩
基性Caスルホネート濃度を変化させてもよい。即ち、ヘ
ッダ1からは高塩基性Caスルホネートがより高濃度の潤
滑剤組成物を供給するのである。
【0040】このように圧延用作業ロールの通板中央部
よりエッジ部に多量に高塩基性Caスルホネートを供給す
る場合、本発明の目的が達成される限り、中央部とエッ
ジ部の高塩基性Caスルホネートの供給量比に制限はない
が、一般には、エッジ部への供給量が中央部の供給量の
2〜3倍程度が好ましい。
【0041】図2には、潤滑剤を鋼板4の圧延用作業ロ
ール3に供給する場合を示したが、既述のように、潤滑
剤は、補強ロール5を介して圧延用作業ロール3に供給
してもよい。或いは、一方のロールに本発明で用いる潤
滑剤を、他のロールに別の潤滑剤を供給してもよい。ま
た、本発明の潤滑剤組成物を、圧延用作業ロールに加え
て、圧延前の鋼板に少量供給してもよく、それにより潤
滑および清浄化効果がさらに高まる。
【0042】本発明の熱間圧延潤滑方法により、高塩基
性Caスルホネート含有潤滑剤組成物の少ない使用量
で、特に圧延負荷の厳しい圧延用作業ロール通板エッジ
部の局部摩耗や肌荒れ、焼付きを効率的に防止すること
ができる。そのため、圧延後の圧延用作業ロールの軸方
向摩耗プロフィールは、図3(b)に示すように、キャ
ッツイアーと呼ばれる通板エッジ部での局部摩耗が解消
ないし大幅に低減され、この部での焼付きに起因する
肌荒れやバンディングなどの現象も防止される。
【0043】本発明の潤滑剤組成物は、フェライト系、
オーステナイト系などの一般のステンレス鋼はもとよ
り、特に自動車排ガス用材料などに使用されるCr含有量
20重量%以上の高耐食性ステンレス鋼 (例、20%Cr鋼、
20%Cr-2%Mo鋼、20%Cr-5%Al鋼など) の熱間圧延や、
炭素鋼の低温圧延、高圧下圧延などの高負荷圧延におい
て、その効果を特に顕著に発揮する。もちろん、一般の
鋼材の通常圧延時の熱間圧延潤滑法に利用してもその効
果は絶大である。また、板圧延のみならず、形鋼、線
材、管材の孔形圧延などにも有用である。
【0044】
【実施例】次に具体的な実施例に基づき説明する。実施例1 表1に示す本発明例1〜8、比較例1〜2、従来例1〜
2の12種の潤滑剤組成物を、ホモミキサーを使って成分
を所定割合で混合することにより調製し、この潤滑剤組
成物を使用して、次に述べるように試験した。
【0045】図1および図2に示す潤滑剤供給装置を備
えた熱間鋼板圧延ミルラインの4段式熱間鋼板圧延機に
おいて、炭素鋼約3000トンとステンレス鋼 (SUS 304)約
1800トンの圧延試験を行った。各圧延時に、表2に示す
本発明の圧延潤滑方法A (高塩基性Caスルホネートをロ
ールの通板エッジ部に多く供給) およびB (高塩基性Ca
スルホネートをロールの通板エッジ部のみに供給) に従
って、表1に示した各潤滑剤組成物を供給し、圧延後の
圧延用作業ロール (高Cr鋳鉄製) の通板エッジ部の焼付
きと局部摩耗 (通板中央部の摩耗量との差) を調べた。
【0046】潤滑剤組成物は、ウォーターインジェクシ
ョン方式の潤滑剤供給装置により、濃度 0.1〜0.5 重量
%程度に希釈して圧力3〜4kgf/mm2 で供給した。圧延
後の板幅は約1000mmであり、両側の通板エッジ部の幅は
それぞれ約200 mmであった。試験結果を、表3 (炭素
鋼) および表4 (ステンレス鋼) に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】表3および表4の結果から明らかなよう
に、本発明の熱間潤滑方法によれば、AおよびBのいず
れの方法でも、鋼種に関係なく、圧延用作業ロールの通
板エッジ部の焼付きが防止され、この部分の肌荒れやバ
ンディングが回避されることが立証された。また、図3
(a) に示すような、従来の熱間圧延では顕著であった通
板エッジ部でのロールの局部摩耗も全くないか、著しく
低減し、エッジ部でのロール摩耗が中央部での摩耗とほ
ぼ同レベルに抑制された、図3(b) に示すロール摩耗プ
ロフィルを得ることができた。
【0052】ロールの通板中央部にも高塩基性Caスルホ
ネートを少量供給した潤滑方法Aでは、中央部に高塩基
性Caスルホネートを供給しなかった潤滑方法Bに比べ
て、通板エッジ部のロール摩耗だけでなく、ロール中央
部の摩耗自体も減少していることがわかる。
【0053】また、ステンレス鋼圧延など一段と過酷な
圧延状況においては、本発明例4、5、6の潤滑剤組成
物ように、高塩基性Caスルホネートを30〜60重量%含有
させものが、より大きな潤滑効果を発揮する。高塩基性
Caスルホネートの塩基価に関しては、本発明例1〜6と
本発明例7〜8の潤滑剤組成物の比較からわかるよう
に、塩基価 200〜500 mg-KOH/gのものが、潤滑効果 (耐
摩耗性、耐焼付き性) に優れていることがわかる。
【0054】比較例1に示すように、高塩基性Mgスルホ
ネートでは、塩基価が400 mg-KOH/gと高くても潤滑作用
は劣っており、通板エッジ部での焼付き防止効果や局部
ロール摩耗の低減効果が得られない。また、比較例2の
ように高塩基性Caスルホネートの含有量が20重量%未満
の場合、および従来例1、2の潤滑剤組成物は、いずれ
の潤滑剤供給方法によっても、潤滑効果は非常に劣って
いた。
【0055】従来の熱間潤滑方法Cにより本発明の潤滑
剤No.1〜8を使用した場合、スリップ等の圧延トラブル
は発生しないが通板エッジ部に焼付きやロール局部摩耗
が発生する他、ロール中央部の摩耗も充分に抑制できな
い。
【0056】一方、従来の潤滑方法Dにより本発明の潤
滑剤No.1〜8を使用した場合、通板中央部でスリップ等
の圧延トラブルが頻発し、板厚変動や荷重変動を起こす
など圧延が不安定となる。
【0057】なお、圧延用作業ロールとして、高炭素系
高速度鋼 (ハイス) ロール、高合金グレン鋳鉄ロール、
高Cr鋳鉄ロール、アダマイトロールなど、熱間で一般に
使用される圧延用ロールのいずれを使用した場合にも、
上と同様の結果が得られている。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の熱間潤滑
方法によれば、高塩基性Caスルホネート含有潤滑剤組
成物の使用量を抑えて、特に圧延負荷条件の厳しい通板
エッジ部において効率的に圧延時の摩擦力の低減と潤滑
作用の向上を図ることができ、この部分における圧延用
作業ロールの局部摩耗を解消ないし著しく低減すること
ができると同時に、焼付きやそれに起因するロール肌荒
れ、バンディングも防止することができる。また、噛み
込み不良やスリップといった圧延トブルも回避するこ
とができる。従って、本発明の熱間圧延潤滑方法によ
り、圧延製品品質が著しく向上し、作業効率も改善され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱間圧延潤滑方法における潤滑剤の供
給方法を上方から示す説明図である。
【図2】本発明の熱間圧延潤滑方法における潤滑剤の供
給方法を側面から示す説明図である。
【図3】 図3(a)および(b)は、それぞれ従来法
従来の潤滑油の均一供給)および本発明の熱間圧延潤
滑方法による圧延後のロール摩耗プロフィールを説明し
た図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10N 30:08 40:24

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高塩基性Caスルホネートを20〜70
    重量%含有する潤滑剤組成物を圧延用作業ロール表面に
    供給する鋼板の熱間圧延潤滑方法において、該潤滑剤組
    成物を、圧延用作業ロールの表面のうち被圧延鋼板両端
    部と接触する部分およびその周辺部のみに供給すること
    を特徴とする、鋼板の熱間圧延潤滑方法。
  2. 【請求項2】 高塩基性Caスルホネートを20〜70
    重量%含有する潤滑剤組成物を圧延用作業ロール表面に
    供給する鋼板の熱間圧延潤滑方法において、該潤滑剤組
    成物を、圧延用作業ロールの表面のうち被圧延鋼板両端
    部と接触する部分およびその周辺部へ、それ以外のロー
    ル表面部分より多量の高塩基性Caスルホネートを供給
    することを特徴とする、鋼板の熱間圧延潤滑方法。
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