JP3475982B2 - 金属の圧延加工用潤滑剤組成物 - Google Patents
金属の圧延加工用潤滑剤組成物Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高温、高圧条件下にお
いても焼付き防止や圧延荷重低減、工具摩耗低減等を実
現し、工具の研削頻度減少による作業性、生産性向上や
金属製品表面品質の向上を達成することができる金属の
圧延加工用潤滑剤組成物に関する。
いても焼付き防止や圧延荷重低減、工具摩耗低減等を実
現し、工具の研削頻度減少による作業性、生産性向上や
金属製品表面品質の向上を達成することができる金属の
圧延加工用潤滑剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】各種金属を冷間あるいは熱間加工する際
に、圧延用ロールや鍛造用金型工具等の圧延加工用工具
(以後、これらを単に工具と総称する) の表面に該金属
が焼付くと、その後の加工において金属製品表面にも次
々とプリントされ、表面疵を発生する。
に、圧延用ロールや鍛造用金型工具等の圧延加工用工具
(以後、これらを単に工具と総称する) の表面に該金属
が焼付くと、その後の加工において金属製品表面にも次
々とプリントされ、表面疵を発生する。
【0003】この表面疵が発生した金属製品は研磨によ
り手入れをするが、疵発生の激しいものは、スクラップ
にせざるを得ないためかなりのコスト高を招くことにな
る。また、焼付き疵が発生した工具についても表面を研
削して手入れを行うが、この工具表面の研削頻度の増加
は、作業性や生産性を阻害すると共に、工具寿命を著し
く低下させる原因にもなっている。
り手入れをするが、疵発生の激しいものは、スクラップ
にせざるを得ないためかなりのコスト高を招くことにな
る。また、焼付き疵が発生した工具についても表面を研
削して手入れを行うが、この工具表面の研削頻度の増加
は、作業性や生産性を阻害すると共に、工具寿命を著し
く低下させる原因にもなっている。
【0004】このような焼付きに起因して発生する金属
製品表面の疵は、例えば、チタンおよびチタン合金、ア
ルミおよびアルミ合金、ステンレス鋼等の、表面に酸化
膜が形成され難いか又は薄い金属の冷間および熱間での
塑性加工 (板圧延、管圧延、条鋼圧延、線材圧延、押出
し、引抜き、鍛造等) 時に、特に問題となっている。
製品表面の疵は、例えば、チタンおよびチタン合金、ア
ルミおよびアルミ合金、ステンレス鋼等の、表面に酸化
膜が形成され難いか又は薄い金属の冷間および熱間での
塑性加工 (板圧延、管圧延、条鋼圧延、線材圧延、押出
し、引抜き、鍛造等) 時に、特に問題となっている。
【0005】例えば、ステンレス鋼は、一般に重量で13
%以上のCrを含有する化学組成をもち、鋼の表面に安定
なクロム酸化保護膜が生成して表面を不動態化すること
により優れた耐食性、耐酸化性を発揮する。しかし、こ
の表面酸化膜は炭素鋼のそれに比べると著しく薄く、し
かも熱間の変形抵抗が高い。したがって、熱間圧延時に
工具と金属間接触をおこし易く、その結果、焼付きが発
生して、肌荒れと鋼材表面疵を生じるのである。このよ
うにステンレス鋼材は、焼付きが起こり易い上、ステン
レス鋼製品には特に美麗な表面肌が要求されることもあ
って、工具との焼付きがステンレス鋼の熱間圧延で問題
になるのである。
%以上のCrを含有する化学組成をもち、鋼の表面に安定
なクロム酸化保護膜が生成して表面を不動態化すること
により優れた耐食性、耐酸化性を発揮する。しかし、こ
の表面酸化膜は炭素鋼のそれに比べると著しく薄く、し
かも熱間の変形抵抗が高い。したがって、熱間圧延時に
工具と金属間接触をおこし易く、その結果、焼付きが発
生して、肌荒れと鋼材表面疵を生じるのである。このよ
うにステンレス鋼材は、焼付きが起こり易い上、ステン
レス鋼製品には特に美麗な表面肌が要求されることもあ
って、工具との焼付きがステンレス鋼の熱間圧延で問題
になるのである。
【0006】しかし、この焼付きの問題は、何もステン
レス鋼の熱間圧延に限ったことではなく、全ての金属の
冷間〜熱間加工においても生じる。すなわち、近年の高
生産性、高品質化、低コスト化が指向される中、これま
で以上に高速、高圧下加工が実施されるようになり、負
荷が増大し、塑性加工時に焼付きを発生し易くなってい
るのである。さらに、最近では、スケジュールフリー圧
延や新加工方法、高炭素系ハイスロールや超硬工具に代
表されるような新耐摩耗工具の開発などにより、これま
で以上に焼付き防止が重要な問題となっている。
レス鋼の熱間圧延に限ったことではなく、全ての金属の
冷間〜熱間加工においても生じる。すなわち、近年の高
生産性、高品質化、低コスト化が指向される中、これま
で以上に高速、高圧下加工が実施されるようになり、負
荷が増大し、塑性加工時に焼付きを発生し易くなってい
るのである。さらに、最近では、スケジュールフリー圧
延や新加工方法、高炭素系ハイスロールや超硬工具に代
表されるような新耐摩耗工具の開発などにより、これま
で以上に焼付き防止が重要な問題となっている。
【0007】金属の圧延加工時の焼付き防止方法として
は、潤滑剤の使用、圧延用ロール、鍛造用金型工具の冷
却の最適化、加工負荷条件の見直し等が従来から実施さ
れている。特に、工具と被加工金属との間の摩擦力を低
減させ、工具の肌荒れ防止と摩耗低減により、圧延金属
製品の品質を向上させる目的で、工具に潤滑剤を供給す
ることが有効であるとされてきた。
は、潤滑剤の使用、圧延用ロール、鍛造用金型工具の冷
却の最適化、加工負荷条件の見直し等が従来から実施さ
れている。特に、工具と被加工金属との間の摩擦力を低
減させ、工具の肌荒れ防止と摩耗低減により、圧延金属
製品の品質を向上させる目的で、工具に潤滑剤を供給す
ることが有効であるとされてきた。
【0008】これに関して、本発明者は、特開平5−30
6397号公報、特開平5−306399号公報、および特開平7
−3279号公報において、高塩基性金属塩スルホネートや
高塩基性金属塩フェネートが熱間鋼材の圧延用ロールへ
の焼付き防止に顕著な効果を示すことを明らかにした。
6397号公報、特開平5−306399号公報、および特開平7
−3279号公報において、高塩基性金属塩スルホネートや
高塩基性金属塩フェネートが熱間鋼材の圧延用ロールへ
の焼付き防止に顕著な効果を示すことを明らかにした。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】高塩基性金属塩スルホ
ネートまたは高塩基性金属塩フェネートを主成分とする
潤滑剤組成物は、境界潤滑となりやすい厳しい負荷条件
下では、これらの高塩基性金属塩に含まれる20〜150 Å
という超微細な塩基性粒子 (例えば、CaCO3 などの金属
炭酸塩の超微細粒子) が、金属間の直接接触を防止する
ため、焼付きを効果的に防止できる。しかし、一方で流
体潤滑のような比較的軽い負荷条件下では、スリップや
かみ込み不良の防止に効果を発揮する超微細な塩基性粒
子 (例、CaCO3)が、逆に摩擦を高めに維持し、圧延荷重
の低減効果が十分に得られないという問題があった。
ネートまたは高塩基性金属塩フェネートを主成分とする
潤滑剤組成物は、境界潤滑となりやすい厳しい負荷条件
下では、これらの高塩基性金属塩に含まれる20〜150 Å
という超微細な塩基性粒子 (例えば、CaCO3 などの金属
炭酸塩の超微細粒子) が、金属間の直接接触を防止する
ため、焼付きを効果的に防止できる。しかし、一方で流
体潤滑のような比較的軽い負荷条件下では、スリップや
かみ込み不良の防止に効果を発揮する超微細な塩基性粒
子 (例、CaCO3)が、逆に摩擦を高めに維持し、圧延荷重
の低減効果が十分に得られないという問題があった。
【0010】本発明の目的は、高温・高圧においても十
分な潤滑効果を示し、圧延荷重低減、工具摩耗低減等を
実現し、焼付きの防止により工具の研削頻度を減少させ
ることによって作業性、生産性向上や金属製品表面品質
の向上を達成することができる、金属の圧延加工用潤滑
剤組成物を提供することである。
分な潤滑効果を示し、圧延荷重低減、工具摩耗低減等を
実現し、焼付きの防止により工具の研削頻度を減少させ
ることによって作業性、生産性向上や金属製品表面品質
の向上を達成することができる、金属の圧延加工用潤滑
剤組成物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、かかる目的
を達成するために、圧延用潤滑剤組成物について鋭意検
討した結果、下記の知見を突き止め、本発明を完成する
に至った。
を達成するために、圧延用潤滑剤組成物について鋭意検
討した結果、下記の知見を突き止め、本発明を完成する
に至った。
【0012】潤滑剤組成物の潤滑主剤を酸価が40 mgK
OH/g以下のホスホン酸エステルとすることで、高圧・高
温にさらされる摩擦面においても容易に分解してしまう
ことなく、工具や被加工金属表面に対する吸着性を維持
することができる。その結果、より厳しい負荷条件下に
おいても大幅に圧延荷重の低減や工具摩耗を軽減するこ
とができる。また、ホスホン酸エステルの酸価が40mgKO
H/g 以下であれば、焼付き防止のために添加される高塩
基性金属塩スルホネートや高塩基性金属塩フェネートな
どの高塩基性物質を共存させても安定で、性能劣化等も
ない潤滑剤組成物とすることができる。
OH/g以下のホスホン酸エステルとすることで、高圧・高
温にさらされる摩擦面においても容易に分解してしまう
ことなく、工具や被加工金属表面に対する吸着性を維持
することができる。その結果、より厳しい負荷条件下に
おいても大幅に圧延荷重の低減や工具摩耗を軽減するこ
とができる。また、ホスホン酸エステルの酸価が40mgKO
H/g 以下であれば、焼付き防止のために添加される高塩
基性金属塩スルホネートや高塩基性金属塩フェネートな
どの高塩基性物質を共存させても安定で、性能劣化等も
ない潤滑剤組成物とすることができる。
【0013】高塩基性金属塩スルホネートや高塩基性
金属塩フェネート中に、コロイド状分散体を油中で形成
した粒径150 Å以下の炭酸塩が存在している。この超微
細な固体炭酸塩粒子それ自体は潤滑性を有しないが、前
記ホスホン酸エステルを工具と被加工金属材との摩擦界
面に導入させるキャリヤとしての働きを有する。
金属塩フェネート中に、コロイド状分散体を油中で形成
した粒径150 Å以下の炭酸塩が存在している。この超微
細な固体炭酸塩粒子それ自体は潤滑性を有しないが、前
記ホスホン酸エステルを工具と被加工金属材との摩擦界
面に導入させるキャリヤとしての働きを有する。
【0014】さらに、この超微細粒炭酸塩は、加工温
度、つまり冷間、温間、熱間にかかわらず、境界潤滑状
態時における加工時の金属と工具間の金属間接触を物理
的に抑制する作用を有している。すなわち、この超微細
粒炭酸塩を工具と金属の摩擦面の表面凹凸細部にまで導
入することにより、金属と工具間の直接接触を徹底的に
抑制し、焼付きを防止することができる。
度、つまり冷間、温間、熱間にかかわらず、境界潤滑状
態時における加工時の金属と工具間の金属間接触を物理
的に抑制する作用を有している。すなわち、この超微細
粒炭酸塩を工具と金属の摩擦面の表面凹凸細部にまで導
入することにより、金属と工具間の直接接触を徹底的に
抑制し、焼付きを防止することができる。
【0015】以上のことから、圧延荷重を大幅に低減
し、工具摩耗を低減することができ、しかも工具に発生
する焼付きなどの表面疵を防止することによって工具寿
命を大幅に延長することができ、その結果、良好な圧延
製品表面品質を得ることができる。
し、工具摩耗を低減することができ、しかも工具に発生
する焼付きなどの表面疵を防止することによって工具寿
命を大幅に延長することができ、その結果、良好な圧延
製品表面品質を得ることができる。
【0016】以上の知見に基づき、本発明により、下記
(1) 〜(3) の潤滑剤組成物が提供される。 (1) 組成物全重量に基づいて、酸価40 mgKOH/g以下の、
後述する有機ホスホン酸のすべての酸基をエステル化し
たホスホン酸エステル(ただし、R 1 はヒドロキシル基
を有する炭化水素基)を5.5 〜70重量%含有することを
特徴とする、金属の圧延加工用潤滑剤組成物。
(1) 〜(3) の潤滑剤組成物が提供される。 (1) 組成物全重量に基づいて、酸価40 mgKOH/g以下の、
後述する有機ホスホン酸のすべての酸基をエステル化し
たホスホン酸エステル(ただし、R 1 はヒドロキシル基
を有する炭化水素基)を5.5 〜70重量%含有することを
特徴とする、金属の圧延加工用潤滑剤組成物。
【0017】(2) 組成物全重量に基づいて、酸価40 mgK
OH/g以下の、後述する有機ホスホン酸をエステル化した
ホスホン酸エステル (ただし、R 1 はヒドロキシル基を
有する炭化水素基) を5.5 〜70重量%、ならびに塩基価
40 mgKOH/g以上の高塩基性金属塩スルホネートおよび高
塩基性金属塩フェネートから選ばれた1種以上を合計5
〜60重量%含有することを特徴とする、金属の圧延加工
用潤滑剤組成物。 (3) 前記ホスホン酸エステルが、前記有機ホスホン酸の
すべての酸基をエステル化したホスホン酸エステルであ
る上記(2) 記載の金属の圧延加工用潤滑剤組成物。
OH/g以下の、後述する有機ホスホン酸をエステル化した
ホスホン酸エステル (ただし、R 1 はヒドロキシル基を
有する炭化水素基) を5.5 〜70重量%、ならびに塩基価
40 mgKOH/g以上の高塩基性金属塩スルホネートおよび高
塩基性金属塩フェネートから選ばれた1種以上を合計5
〜60重量%含有することを特徴とする、金属の圧延加工
用潤滑剤組成物。 (3) 前記ホスホン酸エステルが、前記有機ホスホン酸の
すべての酸基をエステル化したホスホン酸エステルであ
る上記(2) 記載の金属の圧延加工用潤滑剤組成物。
【0018】ホスホン酸エステルは、次式で示される有
機ホスホン酸のエステルである。
機ホスホン酸のエステルである。
【0019】
【化1】
【0020】式中、R1 は置換基を有していてもよい炭
化水素基である。ホスホン酸エステルは、ホスホン酸の
2個のOH基の1個のみがエステル化されたモノエステ
ルと、2個ともエステル化されたジエステルのいずれで
もよい。モノエステルの例は2−エチルヘキシルホスホ
ン酸モノ(2−エチルヘキシル) 、ジエステルの例は2−
エチルヘキシルホスホン酸ジ(2−エチルヘキシル) であ
る。また、R1 基が置換基としてカルボン酸などの酸基
を有している場合には、トリエステル以上のエステルと
なることもある。そのような化合物の例は、3−ホスホ
ノプロピオン酸トリエステルである。
化水素基である。ホスホン酸エステルは、ホスホン酸の
2個のOH基の1個のみがエステル化されたモノエステ
ルと、2個ともエステル化されたジエステルのいずれで
もよい。モノエステルの例は2−エチルヘキシルホスホ
ン酸モノ(2−エチルヘキシル) 、ジエステルの例は2−
エチルヘキシルホスホン酸ジ(2−エチルヘキシル) であ
る。また、R1 基が置換基としてカルボン酸などの酸基
を有している場合には、トリエステル以上のエステルと
なることもある。そのような化合物の例は、3−ホスホ
ノプロピオン酸トリエステルである。
【0021】ホスホン酸エステルは、農薬の原料中間体
として開発されたものであり、防錆防食効果があること
から、水処理や洗剤添加物、紙パルプ、写真等の分野で
使用されてきた。また、潤滑油においては極圧添加剤と
して少量添加されることはあったが、潤滑主剤として有
効であることはこれまで知られていなかった。
として開発されたものであり、防錆防食効果があること
から、水処理や洗剤添加物、紙パルプ、写真等の分野で
使用されてきた。また、潤滑油においては極圧添加剤と
して少量添加されることはあったが、潤滑主剤として有
効であることはこれまで知られていなかった。
【0022】本発明では、前述の有機ホスホン酸をエス
テル化したホスホン酸エステルを潤滑主剤とすることに
より、高圧・高温条件下においてもホスホン酸エステル
が容易に分解することなく、工具表面に吸着し続けて潤
滑効果を発揮し、圧延荷重の大幅な低減と工具摩耗を軽
減することができる。
テル化したホスホン酸エステルを潤滑主剤とすることに
より、高圧・高温条件下においてもホスホン酸エステル
が容易に分解することなく、工具表面に吸着し続けて潤
滑効果を発揮し、圧延荷重の大幅な低減と工具摩耗を軽
減することができる。
【0023】また、ホスホン酸エステルを、塩基価40 m
gKOH/g以上の高塩基性金属塩スルホネートや高塩基性金
属塩フェネートと併用して用いることで、焼付き等の表
面疵防止効果を一層高める効果を発揮する。ホスホン酸
エステルの酸価が40 mgKOH/g以下であれば、高塩基性の
金属塩スルホネートや金属塩フェネートと併用しても、
酸−塩基反応に起因する上述した性能劣化を来すことな
く、潤滑剤組成物を安定に保持できる。
gKOH/g以上の高塩基性金属塩スルホネートや高塩基性金
属塩フェネートと併用して用いることで、焼付き等の表
面疵防止効果を一層高める効果を発揮する。ホスホン酸
エステルの酸価が40 mgKOH/g以下であれば、高塩基性の
金属塩スルホネートや金属塩フェネートと併用しても、
酸−塩基反応に起因する上述した性能劣化を来すことな
く、潤滑剤組成物を安定に保持できる。
【0024】本発明で潤滑主剤として用いる酸価が40 m
gKOH/g以下の、前述の有機ホスホン酸のすべての酸基を
エステル化したホスホン酸エステルとして好ましいの
は、下記の化学構造を有するヒドロキシメチルホスホン
酸ジ(2−エチルヘキシル) である。
gKOH/g以下の、前述の有機ホスホン酸のすべての酸基を
エステル化したホスホン酸エステルとして好ましいの
は、下記の化学構造を有するヒドロキシメチルホスホン
酸ジ(2−エチルヘキシル) である。
【0025】
【化2】
【0026】この化合物は酸価が1mgKOH/g 以下で、し
かも300 ℃を超えるような高温下でも容易に分解せずに
摩擦界面に吸着し続け、潤滑効果を発揮する。また、高
塩基性金属塩スルホネートや高塩基性金属塩フェネート
のような塩基性潤滑剤と混合しても、化学的に非常に安
定な組成物を形成し、性能劣化を起こさないため、本発
明の効果を最大限に発揮することができる。
かも300 ℃を超えるような高温下でも容易に分解せずに
摩擦界面に吸着し続け、潤滑効果を発揮する。また、高
塩基性金属塩スルホネートや高塩基性金属塩フェネート
のような塩基性潤滑剤と混合しても、化学的に非常に安
定な組成物を形成し、性能劣化を起こさないため、本発
明の効果を最大限に発揮することができる。
【0027】ただし、本発明で用いるホスホン酸エステ
ルは上記化合物に制限されるものではなく、酸価が40 m
gKOH/g以下であれば、任意のホスホン酸モノまたはジエ
ステルを使用することができる。また、酸価が40 mgKOH
/g以下のホスホン酸エステルは2種以上を使用してもよ
く、その場合にはホスホン酸エステルの酸価は加重平均
値となる。酸基が残存したモノエステルは一般に酸価が
高いため、酸基を全てエステル化したホスホン酸エステ
ルの方が好ましい。また、上記化合物のように、R1 が
ヒドロキシル基を含有しているホスホン酸エステルが特
に好ましい。
ルは上記化合物に制限されるものではなく、酸価が40 m
gKOH/g以下であれば、任意のホスホン酸モノまたはジエ
ステルを使用することができる。また、酸価が40 mgKOH
/g以下のホスホン酸エステルは2種以上を使用してもよ
く、その場合にはホスホン酸エステルの酸価は加重平均
値となる。酸基が残存したモノエステルは一般に酸価が
高いため、酸基を全てエステル化したホスホン酸エステ
ルの方が好ましい。また、上記化合物のように、R1 が
ヒドロキシル基を含有しているホスホン酸エステルが特
に好ましい。
【0028】潤滑剤組成物中でのホスホン酸エステルの
含有量は、組成物全量に基づいて5.5 〜70重量%であ
る。その含有量が5.5 重量%未満では前記効果が不足
し、一方70重量%を越えて含有させると、前記効果が飽
和する。圧延荷重低減や工具摩耗軽減効果の点で好まし
い含有量は10〜50重量%である。
含有量は、組成物全量に基づいて5.5 〜70重量%であ
る。その含有量が5.5 重量%未満では前記効果が不足
し、一方70重量%を越えて含有させると、前記効果が飽
和する。圧延荷重低減や工具摩耗軽減効果の点で好まし
い含有量は10〜50重量%である。
【0029】本発明の潤滑剤組成物は、前記有機ホスホ
ン酸のすべての酸基をエステル化したホスホン酸エステ
ルの1種もしくは2種以上だけを残部を構成する潤滑油
基油中に混合したものが好ましい。しかし、ホスホン酸
エステルに、塩基価が40 mgKOH/g以上の高塩基性の金属
塩スルホネートまたは金属塩フェネートを添加すると、
特に焼付き防止効果がさらに向上するので、必要により
これらの高塩基性金属塩の1種もしくは2種以上を併用
してもよい。
ン酸のすべての酸基をエステル化したホスホン酸エステ
ルの1種もしくは2種以上だけを残部を構成する潤滑油
基油中に混合したものが好ましい。しかし、ホスホン酸
エステルに、塩基価が40 mgKOH/g以上の高塩基性の金属
塩スルホネートまたは金属塩フェネートを添加すると、
特に焼付き防止効果がさらに向上するので、必要により
これらの高塩基性金属塩の1種もしくは2種以上を併用
してもよい。
【0030】本発明で用いる高塩基性金属塩スルホネー
トおよび高塩基性金属塩フェネートは、例えば前掲の特
開平5−306397号、同5−306399号、および同7−3279
号各公報に記載されているものと同様でよい。
トおよび高塩基性金属塩フェネートは、例えば前掲の特
開平5−306397号、同5−306399号、および同7−3279
号各公報に記載されているものと同様でよい。
【0031】高塩基性金属塩スルホネートは、長鎖アル
キル芳香族のスルホン化物を金属化合物で中和して得た
金属塩スルホネート (正塩) を、溶液状で炭酸ガスの存
在下にさらにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭
酸塩または水酸化物と反応させることにより製造され
る。この高塩基性金属塩スルホネート (例、高塩基性Ca
スルホネート) は、正塩の金属塩スルホネート (例、中
性Caスルホネート) に比べて、3〜15倍もの多量の過剰
金属 (例、Ca) を含有する。この過剰金属塩は、主とし
て炭酸塩 (例、CaCO3)の形で、粒径150 Å以下の超微粒
子からなるコロイド状分散体として油中に分散してい
る。
キル芳香族のスルホン化物を金属化合物で中和して得た
金属塩スルホネート (正塩) を、溶液状で炭酸ガスの存
在下にさらにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭
酸塩または水酸化物と反応させることにより製造され
る。この高塩基性金属塩スルホネート (例、高塩基性Ca
スルホネート) は、正塩の金属塩スルホネート (例、中
性Caスルホネート) に比べて、3〜15倍もの多量の過剰
金属 (例、Ca) を含有する。この過剰金属塩は、主とし
て炭酸塩 (例、CaCO3)の形で、粒径150 Å以下の超微粒
子からなるコロイド状分散体として油中に分散してい
る。
【0032】一方、高塩基性金属フェネートも、同様に
長鎖アルキルフェノール誘導体 (硫化物) を溶液状で過
剰のアルカリまたはアルカリ土類金属化合物 (例、炭酸
塩、酸化物または水酸化物) と反応させることにより製
造される。
長鎖アルキルフェノール誘導体 (硫化物) を溶液状で過
剰のアルカリまたはアルカリ土類金属化合物 (例、炭酸
塩、酸化物または水酸化物) と反応させることにより製
造される。
【0033】高塩基性金属塩スルホネートおよび高塩基
性金属塩フェネートは、いずれも製造過程で自然に液中
から析出した過剰の塩基性の金属化合物 (例、CaCO3 な
どの炭酸塩) を、通常は粒径150 Å以下という超微粒子
状態で含有している。この炭酸塩の固体超微粒子は、高
塩基性金属塩スルホネートと高塩基性金属塩フェネート
の持つ金属やその酸化物に対する高い化学吸着作用によ
る潤滑効果をより発揮し易くさせるため、高塩基性金属
塩スルホネート、高塩基性金属塩フェネート、さらには
本発明で用いるホスホン酸エステルなどの潤滑物質を摩
擦界面に運ぶキャリアとしての作用を有しており、高温
・高圧といった状況でもこれらの潤滑物質による潤滑効
果の発現を助ける。さらに、工具と被加工金属間に運ば
れた炭酸塩の超微粒子により、摩擦界面での金属間直接
接触が阻害される結果、焼付き、かじり等の表面疵を防
止することができる。
性金属塩フェネートは、いずれも製造過程で自然に液中
から析出した過剰の塩基性の金属化合物 (例、CaCO3 な
どの炭酸塩) を、通常は粒径150 Å以下という超微粒子
状態で含有している。この炭酸塩の固体超微粒子は、高
塩基性金属塩スルホネートと高塩基性金属塩フェネート
の持つ金属やその酸化物に対する高い化学吸着作用によ
る潤滑効果をより発揮し易くさせるため、高塩基性金属
塩スルホネート、高塩基性金属塩フェネート、さらには
本発明で用いるホスホン酸エステルなどの潤滑物質を摩
擦界面に運ぶキャリアとしての作用を有しており、高温
・高圧といった状況でもこれらの潤滑物質による潤滑効
果の発現を助ける。さらに、工具と被加工金属間に運ば
れた炭酸塩の超微粒子により、摩擦界面での金属間直接
接触が阻害される結果、焼付き、かじり等の表面疵を防
止することができる。
【0034】高塩基性金属塩スルホネートおよび高塩基
性金属塩フェネートは、これらを使用する場合、組成物
全量に基づいてそれらの1種以上を合計で5〜60重量%
の量で本発明の潤滑剤組成物に含有させる。含有量が5
重量%未満では、高負荷時の工具への焼付きを充分に防
止できず、金属製品表面品質も劣化する。一方、60重量
%を超えると、本発明で潤滑主剤として用いるホスホン
酸エステルによっても圧延荷重を十分に低減し、工具摩
耗を軽減することが困難になる。高負荷時の焼付き防止
や荷重低減効果の点で好ましくは10〜50重量%である。
性金属塩フェネートは、これらを使用する場合、組成物
全量に基づいてそれらの1種以上を合計で5〜60重量%
の量で本発明の潤滑剤組成物に含有させる。含有量が5
重量%未満では、高負荷時の工具への焼付きを充分に防
止できず、金属製品表面品質も劣化する。一方、60重量
%を超えると、本発明で潤滑主剤として用いるホスホン
酸エステルによっても圧延荷重を十分に低減し、工具摩
耗を軽減することが困難になる。高負荷時の焼付き防止
や荷重低減効果の点で好ましくは10〜50重量%である。
【0035】また、高塩基性金属書スルホネートおよび
高塩基性金属塩フェネートの塩基価は、JIS K2501(電位
差滴定法) により測定した塩基価が40 mgKOH/g以上であ
ればよいが、150 mgKOH/g 以上、特に 200〜500 mgKOH/
g のものが焼付き防止能にさらに優れている。
高塩基性金属塩フェネートの塩基価は、JIS K2501(電位
差滴定法) により測定した塩基価が40 mgKOH/g以上であ
ればよいが、150 mgKOH/g 以上、特に 200〜500 mgKOH/
g のものが焼付き防止能にさらに優れている。
【0036】すなわち、塩基価が低いと、塩基性金属塩
スルホネートや塩基性金属塩フェネート中の固体粒子で
ある炭酸塩(CaCO3等) の含有量が少ないため、金属間
(工具と被加工金属間) の直接接触を物理的に防止する
ために必要な炭酸塩(CaCO3等)の摩擦界面への導入量が
不足する。そのため、塩基価が低いと、加工時の加工用
工具の焼付きやかじりを完全に防止することができず、
製品表面品質も満足するレベルに達しないことがある。
スルホネートや塩基性金属塩フェネート中の固体粒子で
ある炭酸塩(CaCO3等) の含有量が少ないため、金属間
(工具と被加工金属間) の直接接触を物理的に防止する
ために必要な炭酸塩(CaCO3等)の摩擦界面への導入量が
不足する。そのため、塩基価が低いと、加工時の加工用
工具の焼付きやかじりを完全に防止することができず、
製品表面品質も満足するレベルに達しないことがある。
【0037】塩基価の下限については、本発明にかかる
潤滑剤組成物を工具や被加工金属表面に供給する際の濃
度、粘度および圧延条件にもよるが、特に高粘度あるい
は原液に近い状態で供給する時や低負荷条件下では、塩
基価が200 mgKOH/g 未満でも充分な潤滑効果を発揮し得
る。しかし、40mgKOH/g ではこの効果が得られないた
め、下限を40mgKOH/g とした。
潤滑剤組成物を工具や被加工金属表面に供給する際の濃
度、粘度および圧延条件にもよるが、特に高粘度あるい
は原液に近い状態で供給する時や低負荷条件下では、塩
基価が200 mgKOH/g 未満でも充分な潤滑効果を発揮し得
る。しかし、40mgKOH/g ではこの効果が得られないた
め、下限を40mgKOH/g とした。
【0038】一方、塩基価が500 mgKOH/g を超えると、
潤滑剤として適切な粘度等の性質を有するものが現状技
術レベルでは製造できない。ただし、製造技術上可能に
なれば、500 mgKOH/g 以上の塩基価のものも使用できよ
う。
潤滑剤として適切な粘度等の性質を有するものが現状技
術レベルでは製造できない。ただし、製造技術上可能に
なれば、500 mgKOH/g 以上の塩基価のものも使用できよ
う。
【0039】本発明の潤滑剤組成物中に含有させる高塩
基性金属塩スルホネートや高塩基性金属塩フェネートの
金属は、Ca、Mg、Ba等のアルカリ土類金属およびNa等の
アルカリ金属から選択することができるが、好ましいの
はアルカリ土類金属である。中でも、Ca塩およびMg塩が
好ましく、特に高塩基性CaスルホネートおよびCaフェネ
ートが効果の点で最適であるので、これらの1種もしく
は2種を使用することが最も好ましい。
基性金属塩スルホネートや高塩基性金属塩フェネートの
金属は、Ca、Mg、Ba等のアルカリ土類金属およびNa等の
アルカリ金属から選択することができるが、好ましいの
はアルカリ土類金属である。中でも、Ca塩およびMg塩が
好ましく、特に高塩基性CaスルホネートおよびCaフェネ
ートが効果の点で最適であるので、これらの1種もしく
は2種を使用することが最も好ましい。
【0040】本発明の潤滑油組成物は、酸価が40 mgKOH
/g以下のホスホン酸エステル5〜70重量%を、所望によ
り塩基価が40 mgKOH/g以上の高塩基性金属塩スルホネー
トと高塩基性金属塩フェネートの1種以上5〜60重量%
と一緒に、残部を構成する潤滑油基油に配合したもので
ある。潤滑油基油としては、従来より一般に使用されて
いる、例えば、鉱物油、合成潤滑油、ナタネ油、ラード
オイル等に油脂類、高級脂肪酸およびそのエステル類等
が使用できる。
/g以下のホスホン酸エステル5〜70重量%を、所望によ
り塩基価が40 mgKOH/g以上の高塩基性金属塩スルホネー
トと高塩基性金属塩フェネートの1種以上5〜60重量%
と一緒に、残部を構成する潤滑油基油に配合したもので
ある。潤滑油基油としては、従来より一般に使用されて
いる、例えば、鉱物油、合成潤滑油、ナタネ油、ラード
オイル等に油脂類、高級脂肪酸およびそのエステル類等
が使用できる。
【0041】本発明の潤滑剤組成物は、必要に応じて、
他の固体潤滑剤、極圧添加剤、酸化防止剤、流動点降下
剤、粘度指数向上剤等の、潤滑油に添加可能な各種の添
加剤の1種もしくは2種以上をさらに含有することがで
きる。
他の固体潤滑剤、極圧添加剤、酸化防止剤、流動点降下
剤、粘度指数向上剤等の、潤滑油に添加可能な各種の添
加剤の1種もしくは2種以上をさらに含有することがで
きる。
【0042】固体潤滑剤の例としては、黒鉛、二硫化モ
リブデン、窒化硼素、雲母、タルク等が挙げられる。極
圧添加剤の例としては、硫化油脂、硫化鉱油、ジノニル
ポリサルファイド等の硫黄系極圧添加剤、トリクレジル
ホスフェート、ジオレイルハイドロゼンホスファイト等
のリン系極圧添加剤が挙げられる。
リブデン、窒化硼素、雲母、タルク等が挙げられる。極
圧添加剤の例としては、硫化油脂、硫化鉱油、ジノニル
ポリサルファイド等の硫黄系極圧添加剤、トリクレジル
ホスフェート、ジオレイルハイドロゼンホスファイト等
のリン系極圧添加剤が挙げられる。
【0043】酸化防止剤の例としては、メチレン−4,4
−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール) 等のビスフ
ェノール類、ジ−tert−ブチルクレゾール等のアルキル
フェノール類、ナフチルアミン類等が挙げられる。流動
点降下剤、粘度指数向上剤の例としては、ポリメタクリ
レート、ポリオレフィン等が挙げられる。
−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール) 等のビスフ
ェノール類、ジ−tert−ブチルクレゾール等のアルキル
フェノール類、ナフチルアミン類等が挙げられる。流動
点降下剤、粘度指数向上剤の例としては、ポリメタクリ
レート、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0044】これらの任意添加剤を含有させる場合、他
の固体潤滑剤の添加量は約1〜10重量%程度、極圧添加
剤の添加量は約1〜15重量%程度、酸化防止剤の添加量
は約0.01〜1.0 重量%程度、流動点降下剤、粘度指数向
上剤の添加量は、それぞれ1〜5重量%程度である。
の固体潤滑剤の添加量は約1〜10重量%程度、極圧添加
剤の添加量は約1〜15重量%程度、酸化防止剤の添加量
は約0.01〜1.0 重量%程度、流動点降下剤、粘度指数向
上剤の添加量は、それぞれ1〜5重量%程度である。
【0045】本発明の潤滑剤組成物の供給手段は特に制
限されず、要求される粘度や濃度に応じて、圧縮空気と
混合して噴霧状にして供給するエアーアトマイズ法、水
と混合して供給するウォーターインジェクション法、さ
らに加熱蒸気で噴霧化して供給するスチームアトマイズ
法や、予め水に分散させ、エマルジョンとして供給する
方法等の適当な方法から選択すればよい。もちろん、原
液 (ニート) のまま供給する方法でも良いことは言うま
でもなく、その他の一般的な給油方式を使用しても良
い。原液で供給する場合には、必要に応じて本発明の潤
滑剤組成物を水溶性タイプにするなどして不燃性化して
用いてもよい。
限されず、要求される粘度や濃度に応じて、圧縮空気と
混合して噴霧状にして供給するエアーアトマイズ法、水
と混合して供給するウォーターインジェクション法、さ
らに加熱蒸気で噴霧化して供給するスチームアトマイズ
法や、予め水に分散させ、エマルジョンとして供給する
方法等の適当な方法から選択すればよい。もちろん、原
液 (ニート) のまま供給する方法でも良いことは言うま
でもなく、その他の一般的な給油方式を使用しても良
い。原液で供給する場合には、必要に応じて本発明の潤
滑剤組成物を水溶性タイプにするなどして不燃性化して
用いてもよい。
【0046】また、本発明の潤滑剤組成物を、圧延用ロ
ールや鍛造用金型等の工具や加工前の被加工金属表面に
上記方法で直接供給しても良いし、その補強工具 (例、
補強ロール) 等を介して間接的に供給しても、本発明の
効果に何等変わりはない。
ールや鍛造用金型等の工具や加工前の被加工金属表面に
上記方法で直接供給しても良いし、その補強工具 (例、
補強ロール) 等を介して間接的に供給しても、本発明の
効果に何等変わりはない。
【0047】さらに、潤滑成分であるホスホン酸エステ
ル、高塩基性金属塩スルホネート、高塩基性金属塩フェ
ネートは、いずれも耐熱性に優れており、温間や熱間加
工時において完全には燃焼・分解しないため、本発明の
潤滑剤組成物は流体か流体に近い状態に保持され、温間
や熱間加工時においても優れた潤滑性を示す。
ル、高塩基性金属塩スルホネート、高塩基性金属塩フェ
ネートは、いずれも耐熱性に優れており、温間や熱間加
工時において完全には燃焼・分解しないため、本発明の
潤滑剤組成物は流体か流体に近い状態に保持され、温間
や熱間加工時においても優れた潤滑性を示す。
【0048】したがって、本発明の潤滑剤組成物は、冷
間、温間、熱間での板圧延、管圧延、条鋼圧延、押出
し、引抜き、鍛造、矯正等のあらゆる圧延加工において
同様の効果を発揮することは言うまでもない。
間、温間、熱間での板圧延、管圧延、条鋼圧延、押出
し、引抜き、鍛造、矯正等のあらゆる圧延加工において
同様の効果を発揮することは言うまでもない。
【0049】さらに、加工用工具に関しても、冷間から
熱間で使用される一般的な工具材質なら同様の効果を得
ることが可能である。例えば、熱間圧延用ロール材質で
ある高Cr鋳鉄、高合金グレン鋳鉄、アダマイト、ダクタ
イル鋳鉄、高炭素系高速度鋼(ハイス) 、超硬合金等
や、冷間圧延用ロール材質であるSKD61 クラスの鍛鋼、
セミハイス等や、SKD62 クラスの熱間金型材、さらにCr
めっきなどの表面処理を施したロールおよび工具など、
さまざまな工具材料に対して使用できる。
熱間で使用される一般的な工具材質なら同様の効果を得
ることが可能である。例えば、熱間圧延用ロール材質で
ある高Cr鋳鉄、高合金グレン鋳鉄、アダマイト、ダクタ
イル鋳鉄、高炭素系高速度鋼(ハイス) 、超硬合金等
や、冷間圧延用ロール材質であるSKD61 クラスの鍛鋼、
セミハイス等や、SKD62 クラスの熱間金型材、さらにCr
めっきなどの表面処理を施したロールおよび工具など、
さまざまな工具材料に対して使用できる。
【0050】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に例示す
る。実施例中、%は特に指定のない限り重量%である。
る。実施例中、%は特に指定のない限り重量%である。
【0051】
【調合例1】酸価が異なるホスホン酸エステル30重量%
と、塩基価が40及び250 mgKOH /gの高塩基性Caスルホネ
ート30重量%とを、残部 (40重量%) の潤滑油基油 (精
製鉱物油) 中に混合して、本発明の潤滑剤組成物を調合
し、室温で24時間放置することにより、その安定性を調
査した。結果を表1に示す。
と、塩基価が40及び250 mgKOH /gの高塩基性Caスルホネ
ート30重量%とを、残部 (40重量%) の潤滑油基油 (精
製鉱物油) 中に混合して、本発明の潤滑剤組成物を調合
し、室温で24時間放置することにより、その安定性を調
査した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】この結果から、ホスホン酸エステルの酸価
が40 mgKOH/g以下であれば、塩基価40 mgKOH/g以上の塩
基性金属塩スルホネートや金属塩フェネートと混合して
も、安定性が高く、潤滑性能が劣化しないことが確認さ
れた。
が40 mgKOH/g以下であれば、塩基価40 mgKOH/g以上の塩
基性金属塩スルホネートや金属塩フェネートと混合して
も、安定性が高く、潤滑性能が劣化しないことが確認さ
れた。
【0054】なお、使用したホスホン酸エステルは次の
ものであった。 酸価1mgKOH/g =ヒドロキシメチルホスホン酸ジ(2−
エチルヘキシル) 酸価10mgKOH/g =3−ホスホノプロピオン酸トリエス
テル 酸価40mgKOH/g =2−エチルヘキシルホスホン酸ジ(2
−エチルヘキシル) 酸価70mgKOH/g =との混合物 酸価180mgKOH/g=2−エチルヘキシルホスホン酸モノ
(2−エチルヘキシル) 。
ものであった。 酸価1mgKOH/g =ヒドロキシメチルホスホン酸ジ(2−
エチルヘキシル) 酸価10mgKOH/g =3−ホスホノプロピオン酸トリエス
テル 酸価40mgKOH/g =2−エチルヘキシルホスホン酸ジ(2
−エチルヘキシル) 酸価70mgKOH/g =との混合物 酸価180mgKOH/g=2−エチルヘキシルホスホン酸モノ
(2−エチルヘキシル) 。
【0055】
【調合例2】表2に示すように、酸価が異なるホスホン
酸エステルの1種または2種以上を単独で、またはこれ
を塩基価、金属塩が異なる金属塩スルホネートおよびフ
ェネートの1種または2種以上と一緒に、残部を構成す
る精製鉱物油(ISO VG 46) 中に、ホモミキサーにより攪
拌、調合して、本発明例および比較例の潤滑剤組成物を
調合した。
酸エステルの1種または2種以上を単独で、またはこれ
を塩基価、金属塩が異なる金属塩スルホネートおよびフ
ェネートの1種または2種以上と一緒に、残部を構成す
る精製鉱物油(ISO VG 46) 中に、ホモミキサーにより攪
拌、調合して、本発明例および比較例の潤滑剤組成物を
調合した。
【0056】使用したホスホン酸エステルは次の通りで
あった。 酸価1mgKOH/g =ヒドロキシメチルホスホン酸ジ(2−
エチルヘキシル) 酸価40mgKOH/g =2−エチルヘキシルホスホン酸ジ(2
−エチルヘキシル) 酸価120mgKOH/g=との混合物 酸価185mgKOH/g=2−エチルヘキシルホスホン酸モノ
(2−エチルヘキシル) 。
あった。 酸価1mgKOH/g =ヒドロキシメチルホスホン酸ジ(2−
エチルヘキシル) 酸価40mgKOH/g =2−エチルヘキシルホスホン酸ジ(2
−エチルヘキシル) 酸価120mgKOH/g=との混合物 酸価185mgKOH/g=2−エチルヘキシルホスホン酸モノ
(2−エチルヘキシル) 。
【0057】これらの潤滑剤組成物を、金属の熱間、温
間、冷間における圧延加工における潤滑剤として使用し
た実施例を以下に示す。なお、対照として、市販の圧延
油も同様の条件で潤滑剤として使用した。
間、冷間における圧延加工における潤滑剤として使用し
た実施例を以下に示す。なお、対照として、市販の圧延
油も同様の条件で潤滑剤として使用した。
【0058】
【実施例1】熱延仕上げタンデムミルによるステンレス鋼板 (SUS43
0) の圧延加工 各潤滑剤組成物は、ウォータインジェクション方式によ
り水中に強制的に分散させて、各圧延スタンドの圧延用
ロールに直接供給 (濃度0.5 %) した。圧延用ロール材
は、高炭素系ハイス (主要化学成分:1.0〜2.5%C-0.2〜
2.0%Si-2.0〜10%Mo-0.5〜8%V-0.5〜6%W、製法:遠心
鋳造法) を使用した。
0) の圧延加工 各潤滑剤組成物は、ウォータインジェクション方式によ
り水中に強制的に分散させて、各圧延スタンドの圧延用
ロールに直接供給 (濃度0.5 %) した。圧延用ロール材
は、高炭素系ハイス (主要化学成分:1.0〜2.5%C-0.2〜
2.0%Si-2.0〜10%Mo-0.5〜8%V-0.5〜6%W、製法:遠心
鋳造法) を使用した。
【0059】結果を表3に示す。耐摩耗性は、ステンレ
ス鋼を約2000トン圧延後の2号圧延機の上下圧延用ロー
ルの最大摩耗深さによって調べた。圧延終了後の圧延用
ロールやステンレス鋼板表面の状況については、目視観
察と表面疵発生部位の面積率によって調べた。
ス鋼を約2000トン圧延後の2号圧延機の上下圧延用ロー
ルの最大摩耗深さによって調べた。圧延終了後の圧延用
ロールやステンレス鋼板表面の状況については、目視観
察と表面疵発生部位の面積率によって調べた。
【0060】表3からわかるように、酸価40 mgKOH/g以
下のホスホン酸エステルを5.5 〜70重量%含有する場合
には、顕著な表面疵の軽減、ロール摩耗の軽減、圧延荷
重の低減が達成された。また、塩基価 40mgKOH/g以上の
高塩基性金属塩スルホネートや高塩基性金属塩フェネー
トを一緒に含有させることにより、圧延用ロールやステ
ンレス鋼板表面の焼付き疵防止効果が大幅に向上するこ
とも明らかになった。
下のホスホン酸エステルを5.5 〜70重量%含有する場合
には、顕著な表面疵の軽減、ロール摩耗の軽減、圧延荷
重の低減が達成された。また、塩基価 40mgKOH/g以上の
高塩基性金属塩スルホネートや高塩基性金属塩フェネー
トを一緒に含有させることにより、圧延用ロールやステ
ンレス鋼板表面の焼付き疵防止効果が大幅に向上するこ
とも明らかになった。
【0061】
【実施例2】熱延仕上げタンデムミルによる炭素鋼板の圧延加工
各潤滑剤組成物は、ウォータインジェクション方式によ
り水中に強制的に分散させて各圧延スタンドの圧延用ロ
ールに直接供給 (濃度0.5 %) した。圧延用ロール材の
材質および製法は実施例1と同じであった。
り水中に強制的に分散させて各圧延スタンドの圧延用ロ
ールに直接供給 (濃度0.5 %) した。圧延用ロール材の
材質および製法は実施例1と同じであった。
【0062】本実施例は、負荷の軽い圧延加工に相当す
るものであるため、圧延用ロールや炭素鋼板表面の焼付
きはさほど問題がないため、圧延荷重の低減率と耐摩耗
性について調査した。荷重低減率は、2号圧延機におけ
る無潤滑時の圧延荷重を基準にした。結果を表3に示
す。
るものであるため、圧延用ロールや炭素鋼板表面の焼付
きはさほど問題がないため、圧延荷重の低減率と耐摩耗
性について調査した。荷重低減率は、2号圧延機におけ
る無潤滑時の圧延荷重を基準にした。結果を表3に示
す。
【0063】本発明例No.1〜7と比較例No.8〜10との比
較から、酸価40 mgKOH/g以下のホスホン酸エステルを含
有する場合には、圧延荷重が大幅に低減することが判明
した。また、耐摩耗性についても大幅に改善された。
較から、酸価40 mgKOH/g以下のホスホン酸エステルを含
有する場合には、圧延荷重が大幅に低減することが判明
した。また、耐摩耗性についても大幅に改善された。
【0064】
【実施例3】センジミアミルによるチタン板の冷間圧延加工
各潤滑剤組成物は、予め水に分散させ、エマルジョン状
態 (濃度1.5 %) にして圧延用ロールに直接供給した。
チタン板 (JIS 2種の熱延焼鈍酸洗板、サイズは2.5 mm
厚×50mm幅×2000mm長さ) をセンジミアミル (小径多段
ロールを有した圧延機) にて1パス圧延 (圧下率25%)
した。
態 (濃度1.5 %) にして圧延用ロールに直接供給した。
チタン板 (JIS 2種の熱延焼鈍酸洗板、サイズは2.5 mm
厚×50mm幅×2000mm長さ) をセンジミアミル (小径多段
ロールを有した圧延機) にて1パス圧延 (圧下率25%)
した。
【0065】表3の結果からわかるように、本発明例の
潤滑剤組成物は、ロールおよびチタン板表面の焼付き疵
を防止もしくは大幅に軽減できた。
潤滑剤組成物は、ロールおよびチタン板表面の焼付き疵
を防止もしくは大幅に軽減できた。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】以上の実施例から、
(1) 本発明例No.1〜4と比較例No.8、との比較から、ホ
スホン酸エステルを5.5〜70重量%含有させることによ
り、焼付き等の表面疵軽減効果、工具摩耗軽減、加工荷
重の低減効果を共にバランス良く発揮することがわかっ
た。また、本発明例No.1〜4から、その含有量が5.5 〜
70重量%のものがより好ましいことが立証された。な
お、ホスホン酸エステルの含有量が70重量%を超えると
効果が飽和するため経済的な観点から不利である。
スホン酸エステルを5.5〜70重量%含有させることによ
り、焼付き等の表面疵軽減効果、工具摩耗軽減、加工荷
重の低減効果を共にバランス良く発揮することがわかっ
た。また、本発明例No.1〜4から、その含有量が5.5 〜
70重量%のものがより好ましいことが立証された。な
お、ホスホン酸エステルの含有量が70重量%を超えると
効果が飽和するため経済的な観点から不利である。
【0069】(2) 本発明例No.2、と比較例No.9、10との
比較から、ホスホン酸エステルの酸価が40mgKOH/g 以下
のものが効果が高いことも立証される。
比較から、ホスホン酸エステルの酸価が40mgKOH/g 以下
のものが効果が高いことも立証される。
【0070】(3) No.1とNo.5等の比較から、本発明にか
かる潤滑剤組成物にさらに高塩基性金属塩スルホネート
/フェネートを5〜60重量%添加することにより、焼付
き等の表面疵を防止する効果が向上することがわかる。
さらに、高塩基性金属塩スルホネートおよび高塩基性金
属塩フェネートの含有量が5〜50重量%のもの、塩基価
が40mgKOH/g 以上のもの、金属がCaであるものが、特に
焼き付き防止に効果があることも確認された。高塩基性
金属塩スルホネートを70重量%含有する比較例No.11
は、ロールおよび製品表面疵に対しては、本発明例同様
に良好な効果を発揮するが、荷重低減効果や工具摩耗軽
減効果が不足することも確認された。
かる潤滑剤組成物にさらに高塩基性金属塩スルホネート
/フェネートを5〜60重量%添加することにより、焼付
き等の表面疵を防止する効果が向上することがわかる。
さらに、高塩基性金属塩スルホネートおよび高塩基性金
属塩フェネートの含有量が5〜50重量%のもの、塩基価
が40mgKOH/g 以上のもの、金属がCaであるものが、特に
焼き付き防止に効果があることも確認された。高塩基性
金属塩スルホネートを70重量%含有する比較例No.11
は、ロールおよび製品表面疵に対しては、本発明例同様
に良好な効果を発揮するが、荷重低減効果や工具摩耗軽
減効果が不足することも確認された。
【0071】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の圧延加工
用潤滑剤組成物によれば、高温、高圧条件下においても
圧延荷重低減、工具摩耗低減等の潤滑効果を発揮すると
共に、焼付き防止効果をも有するため、圧延工具の研削
頻度減少による作業性、生産性向上や工具寿命の延長、
金属製品表面品質の向上を実現することができる。
用潤滑剤組成物によれば、高温、高圧条件下においても
圧延荷重低減、工具摩耗低減等の潤滑効果を発揮すると
共に、焼付き防止効果をも有するため、圧延工具の研削
頻度減少による作業性、生産性向上や工具寿命の延長、
金属製品表面品質の向上を実現することができる。
フロントページの続き
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C10M 137/12
C10M 159/20 - 159/24
C10N 40:20
CA(STN)
REGISTRY(STN)
Claims (3)
- 【請求項1】 組成物全重量に基づいて、酸価40mg
KOH/g以下の、下記式で示される有機ホスホン酸の
すべての酸基をエステル化したホスホン酸エステルを
5.5〜70重量%含有することを特徴とする、金属の
圧延加工用潤滑剤組成物。 【数1】 R1:ヒドロキシル基を有する炭化水素基。 - 【請求項2】組成物全重量に基づいて、酸価40mgK
OH/g以下の、下記式で示される有機ホスホン酸をエ
ステル化したホスホン酸エステルを5.5〜70重量
%、ならびに塩基価40mgKOH/g以上の高塩基性
金属塩スルホネートおよび高塩基性金属塩フェネートか
ら選ばれた1種以上を合計5〜60重量%含有すること
を特徴とする、金属の圧延加工用潤滑剤組成物。ただし、塩基価150mgKOH/g以上の高塩基性金
属塩スルホネート5〜20重量%と、酸価40mgKO
H/g以下のホスホン酸エステル0.1〜30重量%と
の組み合わせは除く。 【数2】 R1:ヒドロキシル基を有する炭化水素基。 - 【請求項3】前記ホスホン酸エステルが、前記有機ホス
ホン酸のすべての酸基をエステル化したホスホン酸エス
テルである請求項2記載の金属の圧延加工用潤滑剤組成
物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19564495A JP3475982B2 (ja) | 1995-07-31 | 1995-07-31 | 金属の圧延加工用潤滑剤組成物 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP19564495A JP3475982B2 (ja) | 1995-07-31 | 1995-07-31 | 金属の圧延加工用潤滑剤組成物 |
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JPH0940985A JPH0940985A (ja) | 1997-02-10 |
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JP5363750B2 (ja) * | 2008-03-17 | 2013-12-11 | 新日鐵住金ステンレス株式会社 | ステンレス用水溶性冷間圧延油組成物 |
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- 1995-07-31 JP JP19564495A patent/JP3475982B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH0940985A (ja) | 1997-02-10 |
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