JPH10219268A - 鋼材の熱間圧延加工用潤滑剤組成物 - Google Patents

鋼材の熱間圧延加工用潤滑剤組成物

Info

Publication number
JPH10219268A
JPH10219268A JP9027899A JP2789997A JPH10219268A JP H10219268 A JPH10219268 A JP H10219268A JP 9027899 A JP9027899 A JP 9027899A JP 2789997 A JP2789997 A JP 2789997A JP H10219268 A JPH10219268 A JP H10219268A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal salt
rolling
steel
compound
hot rolling
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9027899A
Other languages
English (en)
Inventor
Kunio Goto
邦夫 後藤
Toshitaka Anami
敏隆 穴見
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP9027899A priority Critical patent/JPH10219268A/ja
Publication of JPH10219268A publication Critical patent/JPH10219268A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Lubricants (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高塩基性の金属塩スルホネート、金属塩フェ
ネート、および/または金属塩サリシレートを主剤とす
る潤滑剤を用いて熱間圧延した鋼材に見られる島状の灰
白色の汚れ発生を防止する。 【解決手段】 塩基価40 mg-KOH/g 以上の金属塩フェネ
ート、金属塩スルホネートおよび金属塩サリシレートか
ら選ばれた少なくとも1種の金属塩化合物を組成物全重
量に対して合計で10〜80重量%、ならびにサルファイド
架橋数が3以上の有機ポリサルファイド化合物を該金属
塩化合物の合計量に対して10〜50重量%含有する鋼材の
熱間圧延加工用潤滑剤組成物を使用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素鋼やステンレ
ス鋼を含む各種鋼材の鋼板圧延、形鋼圧延、線材圧延、
製管などの孔形圧延に代表される熱間圧延や鍛造加工に
おいて優れた潤滑効果を有し、かつ鋼材表面汚れを発生
しない、熱間圧延加工用潤滑剤組成物に関する。本発明
にかかる鋼材の熱間圧延加工用潤滑剤組成物は、特にス
テンレス鋼材などの焼き付きが発生し易い鋼材の熱間圧
延時の焼き付き防止、摩耗低減や、炭素鋼材熱間圧延時
のスケール疵防止に有効であり、これらの効果に加え、
圧延後の板表面に残渣が残らず、表面汚れを発生させな
い。
【0002】
【従来の技術】各種鋼材を熱間圧延する際に、圧延ロー
ルに被圧延材が焼き付くと、圧延用ロール表面に各種肌
荒れが発生し、これが鋼材表面にプリントされ、表面疵
となる。この表面疵が発生した鋼材は、研磨作業により
表面を手入れするが、手入れのための工数増加を伴い、
また疵発生の激しいものはスクラップにせざるを得ない
ため、コスト高の原因となっている。
【0003】焼き付きに起因して発生する鋼材表面の疵
は、特にステンレス鋼材の熱間圧延において大きな問題
となっている。ステンレス鋼は、一般に重量で13%以上
のCrを含有する化学組成を持ち、鋼の表面に安定なクロ
ムの酸化保護膜を形成し、表面を不動態化することによ
って優れた耐食性、耐酸化性を発揮する。しかし、この
表面酸化膜は、炭素鋼のそれと比べると著しく薄く、し
かも熱間の変形抵抗が高い。したがって、ステンレス鋼
材は熱間圧延時に圧延用ロールと金属間接触を起こし易
く、その結果焼き付きが発生して、ロール肌荒れと鋼材
表面疵を生じるのである。
【0004】このようにステンレス鋼材は焼き付きが起
こり易い上、一般に無塗装で使用されるステンレス鋼の
製品には特に美麗な表面肌が要求されることもあって、
ロールとの焼き付きがステンレス鋼材の熱間圧延で特に
問題になるのである。
【0005】しかし、この焼き付きの問題は、なにもス
テンレス鋼材の熱間圧延に限ったことではなく、炭素鋼
材や特殊鋼材の熱間圧延においても生じることがある。
すなわち、近年の高生産性、高品質化、低コスト化が指
向される中、これまで以上に高速・高圧下で圧延が実施
されるようになった。このため圧延負荷が増大し、熱間
圧延時に焼き付きが発生し易くなってきた。
【0006】さらに、最近では、スケジュールフリー圧
延や新熱間圧延機、高炭素系ハイスロールに代表される
ような高価な新耐摩耗ロールの開発などにより、これま
で以上に焼き付き防止が重要な課題となっている。
【0007】また、炭素鋼材の熱間圧延時には、焼き付
きに加えて、鋼材表面に残存した酸化スケールが圧延に
より押し込まれてできる噛み込みスケール疵が発生し
て、製品品質を低下させるという、スケール疵に起因す
る問題も生じていた。
【0008】焼き付き防止の対策として、従来から熱間
圧延油などの潤滑剤の使用、ロール冷却の最適化、圧延
操業条件の見直し等が実施されている。特に、圧延用ロ
ールと被圧延鋼材との摩擦力を低下させ、ロールの肌荒
れ防止と摩耗低減により、圧延製品品質を向上させる目
的で、圧延用ロールまたはその補強ロールに潤滑剤を供
給することが有効であるとされてきた。
【0009】炭素鋼材の熱間圧延に用いる潤滑剤とし
て、特開昭47−18907 号公報には、天然脂肪酸油に少量
の (全体の0.1 〜10重量%) の水置換剤と、場合により
さらに鉱物性潤滑油とを配合した潤滑剤組成物が提案さ
れている。水置換剤としては油溶性スルホン酸塩 (例、
石油スルホン酸金属塩) が使用されている。また、10μ
m程度の微粉状炭酸カルシウムを水または潤滑基油に分
散させた潤滑剤が、特公昭62−14598 号、特公昭62−39
198 号、特公昭62−39199 号の各公報に記載されてい
る。
【0010】しかし、これらの潤滑剤には、摩擦係数を
幾分低下させる作用は認められるものの、焼き付き防止
効果やスケール疵防止効果はほとんど得られないという
のが実情である。
【0011】また、一般の潤滑油には極圧添加剤、油性
向上剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤などをはじめとす
る各種の添加剤が添加されており、例えば、清浄分散剤
として高塩基性の金属塩スルホネートや金属塩フェネー
ト等の金属塩化合物が使用されている。しかし、このよ
うな化合物それ自体が潤滑主剤として使用でき、特に鋼
材の熱間圧延用の潤滑剤として有効であることは、本発
明者が着目する以前には知られていなかった。
【0012】また、炭素鋼やステンレス鋼を含む各種鋼
材の鋼板圧延、形鋼圧延、線材圧延、製管圧延等の熱間
圧延油に有機イオウ化合物を使用すると一般に潤滑性能
が向上すると言われているが、高塩基性スルホネートや
高塩基性フェネートを使用した熱間圧延油に有機イオウ
化合物を一緒に添加した例は知られておらず、また特定
構造の有機イオウ化合物が鋼材の表面残渣模様に及ぼす
影響についても詳しくは研究されていない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、先に、特
開平5−306399号公報や特開平7−3279号公報におい
て、塩基価40 mg-KOH/g 以上の高塩基性の金属塩スルホ
ネートおよび金属塩フェネートの1種もしくは2種以上
を潤滑主剤とする鋼材の熱間圧延用潤滑剤組成物を提案
した。
【0014】この潤滑剤は、鋼材の熱間圧延における焼
き付き防止およびロール摩耗の低減に多大の効果を示
す。しかし、特に普通鋼の熱間圧延時において、鋼材表
面上に潤滑剤残渣が残留し、島模様状の灰白色の汚れを
発生するという問題があった。本発明の課題は、このよ
うな表面汚れの発生がなく、焼き付き防止とロール摩耗
低減が可能な鋼材の熱間圧延加工用潤滑剤組成物を提供
することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は、高塩基性の
金属塩フェネート、金属塩スルホネート、金属塩サリシ
レート等の金属塩化合物を主剤とする潤滑剤を用いた鋼
材の熱間圧延についてさらに検討した結果、このような
高塩基性の金属塩化合物に、サルファイド架橋数が3以
上(即ち、トリサルファイド以上)の有機ポリサルファ
イド化合物を添加すると、 鋼材の圧延用ロールへの焼き付きの防止とロール摩耗
の低減がさらに改善されること、 鋼材表面に発生するスケール性の疵防止効果が高いこ
と、および 鋼材表面の不水溶性カルシウム化合物残渣による表面
汚れを防止する効果があること、を見出し、上記課題を
解決するのに最適であるとの知見を得た。
【0016】ここに、本発明は、塩基価40 mg-KOH/g 以
上の金属塩フェネート、金属塩スルホネートおよび金属
塩サリシレートから選ばれた少なくとも1種の金属塩化
合物を組成物全重量に対して合計で10〜80重量%、なら
びにサルファイド架橋数が3以上の有機ポリサルファイ
ド化合物を該金属塩化合物の合計量に対して10〜50重量
%含有することを特徴とする、鋼材の熱間圧延加工用潤
滑剤組成物である。
【0017】本発明で用いる金属塩化合物(フェネー
ト、スルホネート、サリシレート)の塩基価は、JIS K2
501 に規定の電位差滴定法により測定することができ
る。本発明で使用する金属塩化合物は、いずれも塩基価
が40 mg-KOH/g 以上の高塩基性のものである。
【0018】使用する金属塩が1種類である場合には、
その塩基価が40 mg-KOH/g 以上である必要がある。2種
類以上の金属塩を使用する場合には、それらの金属塩の
塩基価の加重平均値 (それぞれの量を加味した平均値、
以下では単に平均値という)が40 mg-KOH/g 以上であれ
ば良い。即ち、この場合には、塩基価の高いものと併用
することにより、塩基価が40 mg-KOH/g 未満のものを混
ぜることができる。
【0019】本発明で用いる高塩基性の金属塩化合物
は、フェネート、スルホネート、サリシレートのいずれ
についても、アルカリ土類金属塩 (例、Ca、Mg、Ba塩
等) が好ましい。しかし、アルカリ金属塩などの他の金
属塩も併用できる。
【0020】これらの高塩基性の金属塩化合物は、いず
れも潤滑油の清浄分散剤として開発されたものであり、
エンジン油、ギヤー油、工業用潤滑油などに少量配合さ
れる潤滑油添加剤の1種である。しかし、前述したよう
に、これらの高塩基性の金属塩化合物それ自体を、潤滑
剤組成物の潤滑主剤として使用することは、本発明者ら
が初めて着目したことである。
【0021】
【発明の実施の形態】高塩基性の金属塩フェネートは、
長鎖アルキルフェノール誘導体 (硫化アルキルフェノー
ル) の金属塩であり、アルキルフェノール誘導体をアル
コール、ケトンまたはポリオキシアルコールの存在下に
溶液状で過剰の金属塩 (例としては、炭酸塩、酸化物、
水酸化物等) と共に加熱することにより製造される。得
られた高塩基性金属塩フェネートは、過剰の微細な金属
塩を含有しており、この過剰の微細金属塩は油中にコロ
イド状分散体として存在する。
【0022】一方、高塩基性の金属塩スルホネートは、
アルキル芳香族化合物を発煙硫酸またはSO3 ガスにより
スルホン化して得た親油性の石油スルホン酸を金属化合
物で中和して金属塩とした後、溶液状で炭酸ガス等の存
在下にさらに金属炭酸塩または水酸化物 [例、CaO また
はCa(OH)2]と反応させることにより製造される。この高
塩基性金属塩スルホネートも高塩基性金属塩フェネート
と同様に、正塩に比べて3〜15倍も過剰の金属塩を主と
して炭酸塩 (例、CaCO3)の形で含有し、この過剰の金属
塩はコロイド状分散体として油中に分散する。
【0023】また、高塩基性の金属塩サリシレートは、
金属塩フェネートに類似した化合物であり、アルキルフ
ェノール誘導体の代わりにアルキルサリシル酸誘導体を
用いて製造される。
【0024】これらの高塩基性の金属塩フェネート、金
属塩スルホネート、および金属塩サリシレートは、耐熱
性に優れているため、熱間圧延加工時においても完全に
燃焼あるいは分解することなく、流体あるいは流体に近
い状態で潤滑に寄与することにより、潤滑主剤として優
れた潤滑性を発揮することが判明した。その上、鋼材表
面の金属や酸化物に対する反応性や吸着性を有するの
で、表面に潤滑性の反応被膜を形成することによって、
摩擦界面 (ロール/鋼材間) での金属間の直接接触状態
を抑制することができ、焼き付き防止や摩耗低減効果を
発揮する。
【0025】高塩基性の金属塩フェネート、金属塩スル
ホネート、および金属塩サリシレートに含まれている過
剰の金属塩、代表的には炭酸塩 (例えば、CaCO3)は、こ
の高塩基性金属塩化合物を製造する過程で自然に液中か
ら析出した、通常は粒径150Å以下の微粒子であり、油
中ではコロイド状分散体を形成する。金属塩が炭酸塩で
ある場合には、炭酸塩は熱間圧延時の高温下では一部が
酸化物 (例えば、CaO、MgO 等) に解離する。
【0026】これらの過剰の金属塩や、それが解離した
金属酸化物の微粒子自体には、特に潤滑効果はないが、
この金属塩化合物それ自体が有する金属および酸化物に
対する高い吸着作用による潤滑効果 (特に、酸化物に対
する化学吸着性が高い) をより発揮し易くするため、金
属塩化合物を摩擦界面に運ぶキャリアーとしての役割を
果たすのである。それと同時に、ロール/鋼材間の摩擦
界面に均一に運ばれた金属塩微粒子が、圧延用ロールと
鋼材との金属間の直接接触を完全に阻止し、焼き付きを
防止する作用も果たす。
【0027】このように、本発明で用いる高塩基性の金
属塩フェネート、金属塩スルホネート、金属塩サリシレ
ートといった高塩基性の金属塩化合物は、金属塩化合物
それ自体が持つ潤滑効果と、油中でコロイド状分散体を
形成している過剰の析出金属塩微粒子によるキャリアー
効果および金属間接触阻止効果との相乗効果で、鋼材に
対する耐焼き付き性、耐摩耗性向上効果を顕著に発揮す
ることができる。金属塩微粒子の粒径が500 Å以下でこ
の効果が認められ、特に150 Å以下で効果が顕著とな
る。
【0028】従って、前述した特公昭62−14598 号公報
などに記載の従来技術で用いる、別途に用意した粒径1
〜10μm程度の微粉末状態炭酸カルシウムを潤滑油基油
に分散させた従来の潤滑剤とは、その作用及び効果が明
らかに異なる。即ち、この従来の潤滑剤では、炭酸カル
シウムの粉末そのものが潤滑効果を発揮するとされてい
るからである。
【0029】また、高塩基性の金属塩フェネート、金属
塩スルホネート、および金属塩サリシレートは、もとも
と清浄分散剤として開発されたものであるため、強い分
散清浄作用を有しているので、圧延後に鋼材表面に残留
した酸化膜 (酸化スケール)や摩耗粉などの異物を取り
除くことができ、それらが鋼材表面に押し込まれて生成
するスケール疵の防止にも有効である。
【0030】前述したように、高塩基性の金属塩フェネ
ート、金属塩スルホネート、および金属塩サリシレート
は、熱間圧延加工時においても一部が残存して潤滑に寄
与し、また鋼材表面の金属や酸化物に対する反応または
吸着によって鋼材表面に潤滑性の被膜を形成する。従っ
て、熱間圧延後の鋼材表面には、本発明の潤滑剤組成物
に由来する物質が残存する。この鋼材表面の残存物は主
に炭酸塩、酸化物等であるが、圧延後にロールや鋼材に
噴霧する冷却水に対する溶解性が非常に小さいため、鋼
材表面から完全に除去されないことがあり、鋼材表面に
島模様状の灰白色の汚れ模様が発生する原因となる。
【0031】本発明によれば、高塩基性の金属塩フェネ
ート、金属塩スルホネート、および金属塩サリシレート
から選ばれた少なくとも1種の高塩基性金属塩化合物
に、サルファイド架橋数が3以上の機ポリサルファイド
化合物を添加する。それにより、この鋼材表面の残存物
の冷却水に対する溶解性が向上して、冷却水の噴霧でこ
の残存物が完全に除去され、圧延後の鋼材表面の島模様
状の汚れが発生しなくなり、均一で清浄な鋼材表面が得
られる。
【0032】その理由としては、有機ポリサルファイド
化合物の添加により、水溶性の小さいアルカリ土類金属
の炭酸塩、酸化物が、水溶性の大きなチオ硫酸塩に転化
されるためではないかと考えられる。因みに、各種カル
シウム化合物の水に対する溶解度 (g/100g H2Oで示す)
は、 Ca(OH)2=0.11、CaCO3 =0.015 、 CaSO4・2H2O=
0.21、 CaS2O・36H2O =36.8、 CaS2O・64H2O =23.9で
ある。即ち、アルカリ土類金属化合物に関しては、炭酸
塩や酸化物は水溶性が低いのに対し、チオ硫酸塩の水溶
性は非常に高いので、金属塩をチオ硫酸塩に転化させる
ことで、残存物が冷却水により完全に除去されるのでは
ないかと考えられる。
【0033】さらに、有機ポリサルファイド化合物は、
一般の潤滑油に極圧添加剤として使用されている物質で
あり、熱間圧延加工時に金属表面と反応吸着して極圧潤
滑添加剤としての作用、即ち、圧延荷重低減作用も発揮
する。従って、有機ポリサルファイドの添加により、上
記の表面汚れの防止効果に加えて、圧延荷重の低減効果
も付与される。
【0034】以上の作用により、本発明にかかる熱間圧
延加工用潤滑組成物は、熱間圧延時の圧延用ロールへの
焼き付きを防止し、ロール摩耗を大幅に低減させること
ができると同時に、鋼板表面に発生するスケール性の疵
を効果的に防止することができる。そして、さらに圧延
後の鋼材表面の島模様状の汚れ発生を防止でき、優れた
潤滑効果を示す。その結果、良好な圧延製品品質と高作
業効率を確保することができる。
【0035】本発明にかかる鋼材の熱間圧延加工用潤滑
剤組成物は、塩基価40 mg-KOH/g 以上の高塩基性の金属
塩フェネート、金属塩スルホネート、および金属塩サリ
シレートから選ばれた1種または2種以上の金属塩化合
物を組成物全重量に基づいて10〜80重量%の量で含有す
ると共に、上記の有機ポリサルファイド化合物を、金属
塩化合物の合計量に対して10〜50重量%の量で含有す
る。
【0036】高塩基性の金属塩化合物の合計量が、組成
物の10重量%未満では、高塩基性の金属塩化合物による
潤滑効果が不足し、ロール摩耗量が多くなって、焼き付
きも十分には防止できない上、スケール疵の防止も困難
となる。一方、この量が80重量%を超えると、潤滑剤組
成物が高粘度化し、潤滑剤を供給しにくくなる。高塩基
性の金属塩スルホネート、金属塩フェネート、および金
属塩サリシレートの合計量の好ましい範囲は組成物の20
〜70重量%であり、より好ましくは30〜60重量%であ
る。
【0037】有機ポリサルファイド化合物の量が、高塩
基性の金属塩化合物の合計量に対して10重量%未満で
は、前述した島模様状の汚れ防止効果が不十分である。
この量が50重量%を超えると、この化合物が高温、高
圧、温水、蒸気等により分解して生ずる活性イオウ(S
x ) の量が多くなり、鋼材が浸硫を受ける可能性が出て
くる。また、ロール軸受けの銅合金の腐食の可能性も生
ずる。有機ポリサルファイド化合物の好ましい添加量
は、高塩基性の金属塩化合物の合計量に対して10〜40重
量%である。
【0038】アルカリ土類金属塩の場合、潤滑効果を同
一含有量、同一塩基価で比べた場合、金属塩フェネー
ト、金属塩スルホネート、金属塩サリシレートのいずれ
に関しても、Ba塩、Mg塩等に比べて、Ca塩が最も効果が
高い。したがって、ステンレス鋼のように特に焼き付き
が起こり易い鋼材、あるいは圧延負荷が激しい場合に
は、金属塩としてCa塩を選択することが好ましい。
【0039】金属塩スルホネート、金属塩フェネート、
および金属塩サリシレートは、前述したように、いずれ
も塩基価が40 mg-KOH/g 以上の高塩基性のものを使用す
る。これら金属塩化合物の塩基価が40 mg-KOH/g 未満で
は、熱間圧延加工用潤滑剤に要求される潤滑効果を発揮
しえなくなる。潤滑効果は塩基価が高くなるほど向上
し、特に塩基価が200 mg-KOH/g以上のものが、焼き付き
防止能、耐摩耗性に特に優れている。塩基価が200 mg-K
OH/g未満の場合、金属塩化合物の摩擦界面への導入性を
向上させるキャリアーとしての過剰の金属塩 (例、炭酸
塩) の量が少なくなり、金属塩化合物の摩擦界面への導
入量が減少するため、ロール摩耗の低減と焼き付き防止
効果が不十分となる場合がある。しかし、ステンレス鋼
の圧延であっても加工度が低い場合や、加工性が比較的
良好な普通鋼材の場合には、塩基価が200 mg-KOH/g未満
の金属塩化合物も有効に使用できる。
【0040】塩基価が500 mg-KOH/gを超える高塩基性の
金属塩スルホネート、金属塩フェネート、および金属塩
サリシレートは、熱間圧延加工用潤滑剤組成物としての
適切な機能、例えば粘度等を有するものが現状技術レベ
ルにおいて製造困難であるが、この製造が可能になれば
500 mg-KOH/g超のものも使用できると考えられる。
【0041】なお、高塩基性の金属塩スルホネート、金
属塩フェネート、および金属塩サリシレートは、各種の
塩基価のものが清浄分散剤として市販されており、市販
品を利用することもできる。スルホネート、フェネー
ト、サリシレートを含んだカルボキシレートとして使用
することもできる。
【0042】また、金属塩 (炭酸塩が主) の粒径は、成
長させても500 Å以下であるならば発明の効果を著しく
損なうものではないが、前述の通り150 Å以下が最も好
適である。
【0043】炭酸塩を成長させる方法としては、150 Å
以下の微粒炭酸塩を含む高塩基性の金属塩スルホネー
ト、金属塩フェネート、または金属塩サリシレートを原
料にして、水やメタノール等の極性物質を添加し、結晶
粒成長を促進させる方法などが利用できる。
【0044】有機ポリサルファイドとしては、チオ (−
S−) 結合が3個以上つながっている、即ち、サルファ
イド架橋数が3以上の、ポリサルファイド化合物 (つま
り、トリサルファイド以上のポリサルファイド化合物)
を使用する。イオウ結合が1個または2個のモノサルフ
ァイドまたはジサルファイド化合物では、高塩基性の金
属塩化合物に由来する鋼材表面残留物 (主にアルカリ土
類金属の炭酸塩および酸化物からなる) と反応してこれ
を水溶性の高いチオ硫酸塩に転化させる作用が乏しく、
熱間圧延後の鋼材の島模様状の汚れ発生をほとんど防止
できない。
【0045】有機ポリサルファイド化合物のサルファイ
ド架橋数が3以上 (トリサルファイド以上) であると、
鋼材表面に残留するアルカリ土類金属化合物を、水溶性
の高いチオ硫酸塩に容易に転化させることができ、それ
により熱間圧延時にロールおよび鋼材に噴霧される多量
の冷却水中にこの残留物が溶解して除去されるため、鋼
材表面およびロール表面は残留物がなく、鋼材表面の島
模様状の汚れ発生が防止される。有機ポリサルファイド
におけるイオウ結合 (サルファイド架橋数) の上限は8
である。
【0046】サルファイド架橋数が3以上の有機ポリサ
ルファイド化合物の具体例としては、ジ−tert−ドデシ
ルポリサルファイド、ジヘキシルポリサルファイド、ジ
ペンタメチレンチウラムポリサルファイド、ジフェニル
チオ尿素の多硫化物、多硫化スルフェンアミド等が挙げ
られる。また、C数8〜30の不飽和脂肪酸エステルをポ
リサルファイド架橋した化合物、例えば、ビス(オレイ
ル−2−エチルヘキサノエート) ポリサルファイド、も
使用できる。
【0047】本発明の熱間圧延加工用潤滑剤組成物は、
組成物全重量に対して10〜80重量%の量の高塩基性金属
塩化合物 (フェネート、スルホネート、および/または
サリシレート)と、この高塩基性金属塩化合物の合計量
に対して10〜50重量%の量の有機ポリサルファイド化合
物とを含有する。
【0048】組成物の残部は潤滑油基油からなる。潤滑
油基油としては、鉱物油、合成潤滑油、ナタネ油、ラー
ド油等の油脂類、高級脂肪酸およびそのエステル類等が
使用でき、1種でも、2種以上の混合物でもよい。市販
の熱間圧延油をそのまま基油として使用することもでき
る。
【0049】所望により、本発明の潤滑剤組成物は、潤
滑剤に使用される慣用の1種もしくは2種以上の添加剤
をさらに含有していてもよい。かかる添加剤としては、
固体潤滑剤、極圧添加剤、酸化防止剤、流動点降下剤、
粘度指数向上剤、洗浄分散剤等が挙げられる。
【0050】固体潤滑剤の例としては、黒鉛、二硫化モ
リブデン、窒化硼素、雲母、タルク等が挙げられる。極
圧添加剤の例としては、硫化油脂、硫化鉱油等の硫黄系
極圧添加剤 (但し、サルファイド架橋数が3以上のもの
は、本発明で使用する有機ポリサルファイド化合物に相
当するので、サルファイド架橋数が2未満のもの) 、ト
リクレジルホスフェート等のリン系極圧添加剤等が挙げ
られる。
【0051】酸化防止剤の例としては、メチレン−4,4
−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール) 等のビスフ
ェノール類、ジ−tert−ブチルクレゾール等のアルキル
フェノール類、ナフチルアミン類等が挙げられる。流動
点効果剤、粘度指数向上剤の例としては、ポリメタクリ
レート、ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0052】洗浄分散剤の例としては、スルホネート、
フェネート、サリシレート、カルボキシレート等が使用
できるが、塩基価が40 mg-KOH/g 以上の高塩基性のもの
は本発明では潤滑主剤となる。
【0053】本発明の熱間圧延加工用潤滑剤組成物は、
一般のステンレス鋼はもとより、特に自動車排ガス用材
料などに使用されるCr含有量20重量%以上の高耐食性ス
テンレス鋼 (例、20%Cr鋼、20%Cr−2%Mo鋼、20%Cr
−5%Al鋼、など) の熱間圧延や、炭素鋼の低温圧延、
高圧下圧延などの高負荷圧延において、その効果を顕著
に発揮する。もちろん、一般の鋼材の通常圧延時の熱間
圧延加工用潤滑剤として利用してもその効果は絶大であ
る。また、板圧延のみならず、形鋼、線材、管材の孔形
圧延、鍛造加工等にも適用できる。冷間におけるこれら
の圧延加工においても同様の潤滑効果を発揮するのは言
うまでもない。
【0054】鋼材の熱間圧延加工における本発明の潤滑
剤組成物の供給方法としては、要求される粘度や濃度に
応じて、圧縮空気と混合して噴霧状にして供給するエア
ーアトマイズ法や、水と混合して供給するウォータイン
ジェクション法、さらには加熱蒸気で噴霧化して供給す
るスチームアトマイズ法等が可能であり、いずれの方法
でも本発明の顕著な潤滑効果を得ることができる。もち
ろん、原液のままで供給する方法でもよく、その場合、
必要に応じて本発明の潤滑剤組成物を水中に分散させた
水性タイプにして、多少不燃化してもよい。上記以外の
供給方法も使用できる。
【0055】
【実施例】それぞれ表1および表2に組成を示す本発明
例および比較例の潤滑剤組成物を、潤滑油基油に各添加
剤を混合し、プロペラ式攪拌機にて攪拌混合することに
より、均一溶解液として調製した。実施例で使用した基
油は、鉱物油、菜種油、α−オレフィン重合油からなる
混合油であった。表1および表2における高塩基性の金
属塩フェネート、金属塩スルホネート、および金属塩サ
リシレート、ならびに有機ポリサルファイド化合物の記
号の意味は次の通りである。
【0056】高塩基性金属塩化合物 A:塩基価100 mg-KOH/gの高塩基性Caフェネート B:塩基価200 mg-KOH/gの高塩基性Caサリシレート、 C:塩基価 50 mg-KOH/gの高塩基性Baフェネート D:塩基価400 mg-KOH/gの高塩基性Mgフェネート E:塩基価400 mg-KOH/gの高塩基性Caスルホネート有機ポリサルファイド化合物 a:ジ−tert−ドデシルポリサルファイド(n=5) b:ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド(n=
4) c:ジフェニルチオ尿素の多硫化物(n=3) d:多硫化スルフェンアミド(n=3) e:ビス (オレイル-2-エチルヘキサノエート) ポリサ
ルファイド(n=3) f:ジヘキシルポリサルファイド (n=5) g:ジベンジルジサルファイド(n=2)(比較用) h:硫化油脂(n=2)(比較用) 但し、nはポリサルファイド化合物のサルファイド架橋
数を意味する。即ち、n=3はトリサルファイド、n=
4はテトラサルファイド等である。
【0057】調製した各潤滑剤組成物を、鋼板の熱間圧
延ミルラインにおける普通鋼 (0.08%C−1.0 %Mn) の
仕上げ鋼板厚み1.6 mm圧延時において、仕上タンデムミ
ルの前段の4段式熱間圧延機の圧延用高合金ハイスロー
ルに、ウォーターインジェクション方式の潤滑剤供給装
置を用いて供給し、熱間圧延後の鋼板表面を目視観察し
た。なお、この圧延中に圧延ロールおよび圧延後の板の
両方に冷却水を噴霧した。圧延後の鋼板の表面を目視観
察して、灰白色の島模様状の汚れの発生の有無について
検査した。その結果も表1および表2に併記する。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】表1からわかるように、高塩基性の金属塩
フェネート、金属塩スルホネート、および/または金属
塩サリシレートに加えて、サルファイド架橋数が3以上
の有機ポリサルファイド化合物を添加した本発明例の潤
滑剤組成物では、全例で鋼板表面に島模様の汚れ発生は
認められなかった。
【0061】これに対して、有機ポリサルファイド化合
物を添加しなかった比較例では鋼板に汚れが発生した。
また、有機ポリサルファイド化合物を添加しても、その
サルファイド架橋数が2のもの (ジサルファイド) で
は、鋼板の汚れ発生を防止することができなかった。鋼
板の島模様状の汚れは、特に平均塩基価が高い高塩基性
の金属塩フェネート、金属塩スルホネートおよび/また
は金属塩サリシレートを使用した潤滑剤組成物の場合
(比較例2、3、5〜8) で顕著であった。
【0062】なお、本発明例と比較例の全例において、
鋼材とロールとの焼き付きや鋼板のスケール疵の発生は
認められなかった。また、噛込み不良やスリップ等の圧
延トラブルも皆無であった。
【0063】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明にかかる
鋼材の熱間圧延用潤滑剤組成物によれば、高塩基性の金
属塩フェネート、金属塩スルホネートおよび/または金
属塩サリシレートが示す優れた焼き付き防止効果、摩耗
低減効果、および鋼板スケール疵防止効果を生かしたま
ま、その問題点であった潤滑剤残渣による島模様状の灰
白色の汚れ発生を防止することができる。また、噛込み
不良やスリップといった圧延トラブルも回避できる。そ
の結果、本発明にかかる熱間圧延用潤滑剤組成物によ
り、熱間圧延製品の品質が著しく向上し、圧延作業効率
も改善される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C10N 30:06 30:08 40:24

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩基価40 mg-KOH/g 以上の金属塩フェネ
    ート、金属塩スルホネートおよび金属塩サリシレートか
    ら選ばれた少なくとも1種の金属塩化合物を組成物全重
    量に対して合計で10〜80重量%、ならびにサルファイド
    架橋数が3以上の有機ポリサルファイド化合物を該金属
    塩化合物の合計量に対して10〜50重量%含有することを
    特徴とする、鋼材の熱間圧延加工用潤滑剤組成物。
JP9027899A 1997-02-12 1997-02-12 鋼材の熱間圧延加工用潤滑剤組成物 Pending JPH10219268A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9027899A JPH10219268A (ja) 1997-02-12 1997-02-12 鋼材の熱間圧延加工用潤滑剤組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9027899A JPH10219268A (ja) 1997-02-12 1997-02-12 鋼材の熱間圧延加工用潤滑剤組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10219268A true JPH10219268A (ja) 1998-08-18

Family

ID=12233742

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9027899A Pending JPH10219268A (ja) 1997-02-12 1997-02-12 鋼材の熱間圧延加工用潤滑剤組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10219268A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015074694A (ja) * 2013-10-08 2015-04-20 Jx日鉱日石エネルギー株式会社 金属加工用潤滑油組成物

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015074694A (ja) * 2013-10-08 2015-04-20 Jx日鉱日石エネルギー株式会社 金属加工用潤滑油組成物

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4559153A (en) Metal working lubricant
US8586514B2 (en) Lubricants for use in processing of metallic material and methods for processing the metallic material using the lubricants
EP1835012B1 (en) Lubricant composition for cold working and cold working method using the same
JPH02270975A (ja) 表面処理鋼板用防錆油組成物
KR930010573B1 (ko) 금속가공용 윤활유 조성물
JP2570060B2 (ja) 鋼材の熱間圧延潤滑方法
US5352373A (en) Lubricating composition for use in hot rolling of steels
JP3475983B2 (ja) 金属の圧延加工用潤滑剤組成物
JP3008823B2 (ja) 金属の塑性加工用潤滑剤組成物
JPH10219268A (ja) 鋼材の熱間圧延加工用潤滑剤組成物
JP2624122B2 (ja) 熱間圧延加工用潤滑剤組成物
JP2560678B2 (ja) 鋼板の熱間圧延潤滑方法
JP2931570B2 (ja) 極圧添加剤及び工業用潤滑油
JP2666688B2 (ja) H形鋼のローラー矯正における潤滑方法
JP2689827B2 (ja) 鋼材の冷間圧延方法
JP2643733B2 (ja) 圧延加工方法
JP4008994B2 (ja) 高温塑性加工用潤滑剤
JP2885011B2 (ja) 熱間圧延加工用潤滑剤組成物
JP2730455B2 (ja) 鋼材の熱間潤滑方法
JP3011056B2 (ja) アルミニウムおよびアルミニウム合金の加工方法
JPH07316575A (ja) 金属塑性加工用潤滑油組成物
JP2870413B2 (ja) 熱間圧延用潤滑剤組成物とその使用方法
JPH07115059B2 (ja) 鋼板の熱間圧延潤滑方法
JP2921436B2 (ja) チタンおよびチタン合金の圧延方法
JPH08333594A (ja) 鍛造用型潤滑剤

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20010807