JPH069218A - チタン酸バリウム・ストロンチウム固溶体の製造方法 - Google Patents

チタン酸バリウム・ストロンチウム固溶体の製造方法

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JPH069218A
JPH069218A JP5059773A JP5977393A JPH069218A JP H069218 A JPH069218 A JP H069218A JP 5059773 A JP5059773 A JP 5059773A JP 5977393 A JP5977393 A JP 5977393A JP H069218 A JPH069218 A JP H069218A
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hydroxide
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powder
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Hiroyasu Akashi
景泰 明石
Shingo Kimura
真吾 木村
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 含水酸化チタンと、水酸化ストロンチウムお
よび水酸化バリウムと、アルカリ金属水酸化物とを、チ
タン換算で120〜10000倍モルの水の存在下、6
0℃〜110℃で反応させるチタン酸バリウム・ストロ
ンチウム固溶体の製造方法。 【効果】 粒径が0.07〜0.5μmと微細で比表面
積が小さく、かつ粒度分布の狭い、球形状の低温焼結可
能なチタン酸バリウム・ストロンチウム固溶体を得るこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粒径が0.07〜0.
5μmと微細で比表面積が小さく、粒度分布が狭い、球
形状の新規なチタン酸バリウム・ストロンチウム固溶体
の製造方法に関するものである。さらには、低温焼結可
能である新規なチタン酸バリウム・ストロンチウム固溶
体粉末の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】これまで、チタン酸バリウム・ストロン
チウム固溶体粉末およびチタン酸バリウム粉末は、大粒
径のものや、小粒径ではあるが分散性が悪く、粒径や形
状が不均一な粉末のみが知られていた。大粒径のもの
や、強度に凝集したものは、見かけ上一個の粒子として
挙動するため、焼結開始温度が1100℃以上で、相対
密度を90%以上にするには、1300℃以上の高温を
必要とする。また、分散性が悪いものや、粒径および形
状が不均一の粉は、均一な充填構造をとる事が難しく、
焼結も均一に進行せず、寸法精度や物性のバラツキの原
因となっている。
【0003】さらに、粒径が0.05μm程度以下の超
微粉ではハンドリング性が非常に悪く、均一な成形体を
得る事が難しく信頼性の高い焼結体が得られ難いと言う
欠点を有していた。現在、チタン酸バリウム・ストロン
チウム固溶体およびチタン酸バリウムは、コンデンサ
ー、PTC素子、半導体等として、電子部品分野で広く
応用されている。
【0004】近年、電子部品はますます小型化の傾向に
ある。例えば、コンデンサーもその類にたがわず、小型
化高容量化が望まれており、これを実現するものとし
て、積層コンデンサーが注目を集めている。現在、積層
コンデンサーでは、さらに電極間距離を10〜20μm
と小さくして高容量化を促進する傾向にある。この要求
を満足し、コンデンサーの性能および信頼性を保証する
ため、かかるセラミックコンデンサーでは、電極間で焼
結体を構成する粒子をできるだけ数多く均一に存在させ
る事が望ましい。しかし、例えば焼結に1300℃以上
を要することは、高価な貴金属内部電極を必要とする
為、電極コストを引き上げる原因となり、さらに、焼結
体中の粒子も粒成長により大きくなるため、電極間距離
を短かくできず、高容量化を阻害する原因となり、ま
た、物性や寸法精度がバラツクことは、歩留まり低下を
もたらし、コスト高の原因となる。この為、上記欠点は
改善されることが強く望まれていた。また、この事は、
積層コンデンサー以外の電子部品についても強く要望さ
れていた。しかし、これらの諸要求を満足させるチタン
酸バリウム・ストロンチウム固溶体粉末およびチタン酸
バリウムの合成方法は、従来知られていなかった。
【0005】従来より工業的には、チタン酸バリウム・
ストロンチウム固溶体粉末およびチタン酸バリウム粉末
は、固相反応法により製造されている。固相反応法と
は、炭酸ストロンチウムおよび/または炭酸バリウムと
二酸化チタンを混合し、各々1000℃以上の高温で反
応させ、チタン酸バリウム・ストロンチウム固溶体また
はチタン酸バリウムを合成する方法である。しかしなが
ら、この方法は、高温で反応を行なうため、粉末製造時
に既に焼結が始まり、粉体同志の固着および粒成長が生
じ、本質的に微細で均一粒径を有するチタン酸バリウム
・ストロンチウム固溶体またはチタン酸バリウムを得る
ことは困難であるという欠点を有している。
【0006】一方、最近、シユウ酸法、アルコキシド
法、水酸化物法などによるチタン酸バリウム粉末やチタ
ン酸ストロンチウム粉末の新しい合成法が提案されてお
り、上記欠点についてかなりの改善が見られるが本発明
の特性の粉末は得られていない。例えば、P.K.Ga
llagherらは“J.Am.Ceram.So
c.,46,359〜365(1963)”で、0.0
9μmから0.73μmまでの範囲で様々な粒径を持つ
チタン酸バリウム粉末をシユウ酸法で合成したことを報
告している。また、K.S.Mazdiyasniらは
“J.Am.Ceram.Soc.,52,523〜5
26(1969)”で、アルコキシド法により粒径50
Å〜150Åの高純度チタン酸バリウムを合成したこと
を報告している。
【0007】しかし、シユウ酸法は、シユウ酸塩を60
0℃以上で焼成してチタン酸塩を合成する方法であるた
め、固相反応法に近いものになり、粉体の凝集が生じ易
く、また多量に使うシユウ酸を回収、再使用できない
為、コストが高い欠点がある。また、アルコキシド法
は、原料が非常に高価であり、工業的には問題がある。
一方、水酸化物法は、未だ確立された技術ではないが、
製造プロセスが簡単で、また、原料も安価であり、得ら
れた粉は焼結性も高いという点で注目されている。しか
し、水酸化物法で本発明のチタン酸バリウム・ストロン
チウム固溶体およびチタン酸バリウムが生成することは
従来知られていなかった。
【0008】例えば、松岡らは“高知大学水熱化学実験
所報告Vol.2,No.15(1978)”におい
て、酸化チタンと水酸化バリウムをバリウムとチタンの
元素の比が1.2となるように混合し、攪拌型オートク
レーブ中、110℃〜370℃でチタン酸バリウムを合
成している。該研究では、比較的粒子の大きい酸化チタ
ンを原料に使用したため、反応率を100%にするに
は、高温高圧(300℃、85気圧以上)を必要とし、
生成したチタン酸バリウム粒子も粗いものであった。該
研究で松岡らは、酸化チタンと水酸化バリウムの混合の
際に水を加えると、反応率が低下することも指摘してい
る。
【0009】また、久保らは“工業化学雑誌71巻1号
(1968)”において、含水率95重量%の含水酸化
チタンと水酸化バリウムを、バリウムとチタンの比が2
〜3となるよう機械的に混合し、100℃に加熱するこ
とにより、反応率100%で粒径が約300Å程度のチ
タン酸バリウムを得たことを報告している。しかし、久
保らの方法で得られたチタン酸バリウムは、その形状が
含水酸化チタンと非常によく似た角ばった形をしてお
り、また、細孔を有しているため比表面積が40.2m
2 /gと大きく、凝集粒子が見られ、粒径分布は不均一
であり、粒子形状、粒子の凝集性、粒径分布等について
は依然不満足であった。
【0010】上平らは特開昭59−39726号公報お
よび特開昭59−39728号公報においてチタン化合
物の加水分解生成物と水溶性バリウム塩または水溶性ス
トロンチウム塩とを強アルカリ水溶液中で反応させ、チ
タン酸バリウムまたはチタン酸ストロンチウムを得てい
る。該特許に開示されている方法では、得られるチタン
酸バリウムの粒径は200〜300Å、チタン酸ストロ
ンチウムの粒径は100〜200Åと小さいものであ
る。
【0011】久保らの方法および上平らの方法は、10
0℃という低温で収率良くチタン酸バリウムを合成でき
るという優れた特徴を有するものの、得られる粉末の粒
径は100〜300Å程度と非常に小さいため粉自体の
凝集性が強く、例えば該粉末を用いてグリーンシート化
を行ない、積層コンデンサーを作ろうとした場合、ペー
スト中で凝集粒子が十分な分散状態にならない為、密度
が大きく、十分な強度を持ったシートが得られず積層コ
ンデンサーへの組立てが困難であり、さらに該シートを
焼結した場合、凝集粒子の部分にボイドなどの欠陥が生
じ、信頼性の高いコンデンサーが得られ難いなどの欠点
を有している。
【0012】このように、水酸化物法の研究では、未だ
実用的に満足できるチタン酸バリウムは得られておら
ず、また、その研究では、反応率を上げるため、含水酸
化チタンと水酸化バリウムの混合時には、水を必要最小
限に限定する傾向にある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、微細で比表
面積が小さくかつ粒度分布が狭い、球形状の低温焼結可
能である新規なチタン酸バリウム・ストロンチウム固溶
体粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、微細で均
一な粒径を持つチタン酸バリウム・ストロンチウム固溶
体を製造するため、水酸化物法について鋭意研究を重ね
た結果、含水酸化チタンと水酸化ストロンチウムおよび
水酸化バリウムとアルカリ金属水酸化物とを、比較的大
量の水の存在下で混合しつつ加熱反応させ、粒径0.0
7〜0.5μmと微細で、かつ均一粒径を有し、ほぼ球
形状を有し、さらには比表面積が小さくほとんど凝集の
ない、新規な性状のチタン酸バリウム・ストロンチウム
固溶体が合成できることを見出し、この知見に基づいて
本発明をなすに至った。
【0015】すなわち、本発明方法は、含水酸化チタン
と、水酸化ストロンチウムおよび水酸化バリウムと、ア
ルカリ金属水酸化物とをチタン換算で120〜1000
0倍モルの水の存在下で、混合しつつ60℃〜110℃
の温度範囲で反応させるチタン酸バリウム・ストロンチ
ウム固溶体の製造方法である。本発明において、含水酸
化チタンとしてはオルトチタン酸、メタチタン酸、二酸
化チタンのいずれか一種以上を用いるが、特にオルトチ
タン酸は、その反応性の高さから最も好ましい。これら
は固体あるいはゲルの状態で使用できる。このような含
水酸化チタン、たとえばオルトチタン酸は、チタンの塩
化物、硫酸塩、シユウ酸塩等をアルカリで処理すること
により容易に得られる。特に塩化物は好ましい。また、
メタチタン酸および二酸化チタンは、オルトチタン酸を
加熱していけばオルトチタン酸の有する構造水が順次抜
けていくため、順次容易に得られる。
【0016】本発明で用いられる水酸化バリウムおよび
水酸化ストロンチウムは、いずれも一般に水を含む白色
固体であるが、これらはそのまま用いてもよく、また、
水に溶かして用いてもよい。本発明で用いられるアルカ
リ金属水酸化物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、
ルビジウム、セシウム、フランシウムの水酸化物から選
ばれた1種以上である。コスト、反応性の観点から好ま
しくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリ
ウムから選ばれた1種以上であり、より好ましくは水酸
化ナトリウムである。
【0017】本発明の反応は、二酸化炭素の存在により
阻害される。したがって、反応を行なう際に二酸化炭素
が存在しないよう充分注意を払うことはもちろん、反応
に供する含水酸化チタン、水酸化バリウム、水酸化スト
ロンチウム、アルカリ金属水酸化物およびこれらを分
散、希釈する水等から、あらかじめ二酸化炭素を除去し
ておくことが望ましい。
【0018】本発明では、含水酸化チタンと水酸化スト
ロンチウムおよび水酸化バリウムとアルカリ金属水酸化
物とを多量の水の存在下で60〜110℃で反応させ
る。水の量はチタン換算で120〜10000倍モルの
量がある事が必要である。120倍モルより少なくなれ
ば、反応系の流動性が保てなくなり、球状で均一粒径を
有する粉末を製造することが困難になるばかりでなく、
含水酸化チタンと水酸化ストロンチウムおよび水酸化バ
リウムとの反応性が高まるため粒径が0.05μm以下
と小さく、結晶子も小さく、細孔を有し、比表面積が大
きく、したがって、凝集性の強い粉末が生成し始める。
また、10000倍モルを越えるほど多量に水を加えた
場合、反応系全体の濃度を低下させ反応性を落とし、も
はや実質的に反応を行なうことが困難となる。水の量は
より好ましくは200〜2000倍である。
【0019】本発明においてアルカリ金属水酸化物を共
存させた場合、反応に要する時間が短くなり、さらに粒
径の大きさの制御も容易となる。また、均一な焼結組
織、良好な誘電特性を与える粉が、含水酸化チタンと水
酸化ストロンチウムおよび水酸化バリウムの混合物との
モル比の広い領域で合成可能となる。コスト面を考えた
場合、該モル比は1〜1.6程度と、1に近い事が望ま
しい。アルカリ金属水酸化物は、好ましくは0.01〜
0.5モル/リットルの濃度となる様に加えられる。
0.01モル/リットル以下ではアルカリ金属水酸化物
の効果はあまり顕著とならず、0.5モル/リットル以
上加えても反応に及ぼす効果は増大せず、コストアップ
となる。
【0020】本発明において、反応の温度範囲は60℃
〜110℃である。反応温度が60℃よりも低ければ、
反応速度が極めて遅くなり実用的でないためであり、反
応温度が110℃以上であれば、水熱条件下での反応と
なり、装置上コスト高となるばかりでなく、生成する粒
子が粒成長を起こし、微細かつ均一粒径を有する粉末を
製造することが困難となるためである。
【0021】さらに、本発明において、混合を行なうこ
とが粉末形状を球状化し、粒径分布を均一化する上で好
ましい。反応時間は反応を完結するに必要な時間以上与
えられるならば特に限定されるものではない。このよう
にして得られたチタン酸バリウム・ストロンチウム固溶
体は、常法にしたがって、水洗、ろ過、乾燥後、場合に
よっては適当な温度で仮焼した後、弱酸で洗浄し、水洗
し、ろ過し、乾燥される。
【0022】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳細に
説明する。
【0023】
【実施例1】含水率95%のゲル状オルトチタン酸0.
5モルを水1リットルと共に反応器中へ入れた。この混
合液中へ窒素ガスを吹き込んで反応器中を窒素置換し、
さらに窒素ガスを流しつつ20時間放置した。水酸化バ
リウム(8水和物)190gと水酸化ストロンチウム
(8水和物)54gと水酸化ナトリウム8gを90℃の
水2リットルに溶解し、炭酸バリウムを除去するためろ
過し、ろ液を空気に触れさせないように窒素ガスの下で
充分注意を払いつつ、オルトチタン酸と水を入れて放置
してある反応器中へ入れた(水はチタンに対して420
倍モルである。)。この反応器に窒素ガスを流しなが
ら、さらに攪拌混合しつつ、オイルバスで100℃、4
時間加熱して反応を行なった。反応終了後、約5分間放
置し、上澄液を除去し、さらに熱水3リットルを加えて
攪拌洗浄した後ろ過した。この洗浄、ろ過の操作を3回
繰り返し、合計9リットルの熱水で洗浄した後、0.2
N酢酸0.5リットルで洗浄し、ろ過した後、さらに純
水で洗浄、ろ過を3回繰り返した後、空気中、100℃
で20時間乾燥した。この様にして得られた粉末を走査
型電子顕微鏡による観察およびX線回折による解析を行
なった結果、粒径0.1〜0.2μmの球状で分布が均
一である、立方晶のチタン酸バリウムとチタン酸ストロ
ンチウムの均一な固溶体であった。X線回折図のピーク
位置から求めたバリウムの量は約60%、ストロンチウ
ムの量は40%であった。
【0024】
【参考例1】含水率93%のゲル状オルトチタン酸1モ
ルを水2リットルと共に反応器中へ入れ、窒素ガスを吹
き込んで反応器中を窒素置換し、さらに窒素ガスを流し
つつ24時間放置した。一方、水酸化バリウム(8水和
物)476gと水酸化ナトリウム15gを90℃の水2
リットルに溶解し、炭酸バリウムを除去するためろ過
し、ろ液を空気に触れさせないよう窒素ガスの下で充分
注意を払いつつ、オルトチタン酸と水を入れて放置して
ある反応器中へ入れた(水はチタンに対して280倍モ
ルである。)。この反応器中へ窒素ガスを流しながら、
さらに攪拌混合しつつ、オイルバスで100℃、2時間
加熱して反応を行なった。反応終了後、約5分間放置
し、上澄液を除去し、さらに熱水4リットルを加えて攪
拌洗浄後ろ過した。この洗浄、ろ過の操作を3回繰り返
し、合計12リットルの熱水で洗浄後、空気中、100
℃で20時間乾燥して白色粉末を得た。この粉末を空気
中、800℃で2時間焼成した後、0.2N酢酸1リッ
トルで洗浄し、ろ過し、さらに純水で洗浄、ろ過を3回
繰り返した。
【0025】このようにして得られた粉末について、走
査型電子顕微鏡による観察およびX線回折による解析を
行なった結果、非常に分散性の良い粒径0.1〜0.2
μmの均一球状粒子の立方晶チタン酸バリウムで、さら
にX線のピーク巾からシエラーの式を用いて求めた結晶
子径は約0.05μmと極めて結晶性が高いものであっ
た。さらに比表面積を測定したところ、比表面積は8.
6m2 /gであり、これを球状粒子と仮定して粒径を算
出した結果、約0.11μmとなり、走査型電子顕微鏡
による観察の結果と良い一致を示した。
【0026】この粉末を2ton/cm2 の圧力でプレ
ス成形し、1200℃で1時間焼成した結果、相対密度
93%と、焼成温度が低いにもかかわらず、高い焼結密
度が得られた。また、焼結体を構成する粒子は約0.5
μmと極めて小さく、かつ均一な粒子径を有していた。
【0027】
【参考例2および参考比較例1】含水率93%のゲル状
オルトチタン酸1モルを水6リットルと共に反応器中へ
入れ窒素ガスを5時間流した後、水酸化バリウム(8水
和物)385gと水酸化ナトリウム80gを90℃の水
2リットルに溶解し、炭酸バリウムを除去するためろ過
して溶液を反応器に加えた(水はチタンに対して510
倍モルである。)。窒素を流しながら100℃で4時
間、攪拌下で反応を行なわせた。得られた粉末を、実施
例1と同様にして洗浄、乾燥を行ない、800℃で2時
間焼成した後、0.2N酢酸1リットルで洗浄し、ろ
過、純水洗浄を行なった後、乾燥し白色粉末を得た。ま
た、比較のため水酸化ナトリウムの量を0とした以外は
すべて上記と同じ方法によりチタン酸バリウムを合成し
た。このようにして得られた粉末について、走査型電子
顕微鏡による観察およびX線回折による解析を行なっ
た。どちらの粉も粒径0.1〜0.2μmの立方晶チタ
ン酸バリウムであったが、水酸化ナトリウムを加えたも
のの粒径は若干小さかった。
【0028】これらの粉末を実施例1と同様にして12
00℃、1時間焼成した。どちらの粉も相対密度93%
と高い焼結密度が得られた。また、焼結体を構成する粒
子は、水酸化ナトリウムを加えたものでは約0.5μm
と極めて小さく、かつ均一な粒子径を有していたが、加
えないものでは10μm以上に成長した巨大粒子が存在
していた。
【0029】
【参考例3】水酸化ナトリウムを120gとした以外は
実施例2と同様にしてチタン酸バリウムを合成し、洗
浄,乾燥、800℃焼成、酢酸洗浄を行なった。得られ
た粉末の粒径は、約0.1μmであり、結晶子径は0.
03μm、比表面積は9.6m 2 /gであった。
【0030】
【発明の効果】本発明の方法は、含水酸化チタンと水酸
化ストロンチウム及び水酸化バリウムとの反応が温和に
進行するため、得られる粉末は、粒径が0.07〜0.
5μmであり、結晶子が大きく、細孔がなく比表面積が
小さく、ほとんど凝集のないものとなること、及び反応
時の流動化が可能となり粒子形状が球状で、粒径分布が
均一なものとなる。また、該粉末を原料とした積層コン
デンサーは信頼性の高いものとなり、電極間の誘電体層
の厚みを十分に薄くすることも可能である。
【0031】さらに、本発明で得られる粉末は、積層コ
ンデンサー用原料のみでなく、各種コンデンサ、PTC
半導体等に使用する原料としても有効である。また、本
発明方法で得られるチタン酸バリウム・ストロンチウム
固溶体粉末は従来の粉末に比べて、焼結温度が100℃
〜200℃低いため、エネルギーコストを低くできるほ
か、積層コンデンサのように電極焼付をコンデンサの焼
結と同時に行なう場合に、電極コストを大巾に低くする
ことが可能となる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 含水酸化チタンと、水酸化ストロンチウ
    ムおよび水酸化バリウムと、アルカリ金属水酸化物と
    を、チタン換算で120〜10000倍モルの水の存在
    下60℃〜110℃で反応させることを特徴とするチタ
    ン酸バリウム・ストロンチウム固溶体の製造方法。
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