JPH0691841A - ドクター装置及び凹版印刷機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】版面とドクターブレードとの、あたりの圧力と
角度、平行度の自動的な調整が可能となる機構を備え
た、ドクター装置及び、凹版印刷機を使用することによ
って、ドクターブレードと版面とのあたりと角度が、自
動的に調整される様にした。 【効果】凹版の厚みの変更等、印刷条件の変更があって
も、調整に熟練を必要とせず、短時間で良好な状態に設
定することが可能であり、かつ、良好な状態を保持する
ことも容易となる。また、ドクターブレード圧力を適性
な範囲に設定できるので、インキかき取り性を損ねるこ
となく、ドクターブレードと凹版の磨耗を抑えることが
可能である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、凹版印刷機や凹版オフ
セット印刷機等で、使用されるドクター装置に関する。
さらに詳しくは、インキかき取りとインキ供給を行うド
クター装置のドクターブレードの自動調整方法に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】凹版印刷機や凹版オフセット印刷機等で
は、ヘラ等により手動で、または、インキ輸送部とコー
ター部を合わせたインキ供給装置により自動で、版面へ
インキを塗布した後、非画像部のインキかき取りと、画
像部へのインキ供給の手段として、一般的にドクターブ
レードが使用される。それは、機構が簡便であることに
加えて、良好に非画像部のインキをかき取れて地汚れが
少なく、また、画像部へのインキ充填能力も良好なため
である。

【０００３】しかし、版面へのあたりの圧力と角度、平
行度等が十分に調整されていない状況では、不十分なイ
ンキのかき取りの為に地汚れが発生し易く、良好に印刷
を行うには、これらの充分な調整が必要であるが、それ
には熟練だけでなく、長い調整時間も必要となる。それ
と言うのも、ドクターブレードと版面とのあたりの調整
の際には、ドクターブレードの刃の付き方、使用するイ
ンキの状態、版面表面の平滑度や濡れ性等の状態を勘案
しながら、通常は、まず、インキかき取り方向に対して
鋭角になるように版面の垂直方向へのドクターブレード
の角度を決定し、次に、良好なインキのかき取り状態と
なるように圧力を調整して試し刷りを行う。このとき、
まだ、かき取り状態が不良ならば、再び角度の調整から
始めるというように、角度と圧力を交互に調整しなが
ら、最良点を探す方法を取らざるを得ないからである。
さらに、版の画像が方向性を持つ場合には、インキのか
き取り方向の角度をも合わせて考慮する必要があるの
で、これに、版へのあたりの角度と平行度も合わせた状
態に調整するのは、一層、困難な作業となる。

【０００４】また、印刷作業での繰り返し使用でドクタ
ーブレードに磨耗を生じて、インキのかき取りが不良と
なった場合は、これを補正するために、ドクターブレー
ドの研磨、及び、版面とのあたりの圧力と角度の再調整
を行うが、不十分な初期調整状態からの使用で、ドクタ
ーブレードの長さ方向での不均一な磨耗を生じている場
合には、版面との平行度の調整が難しくなってくるの
で、インキのかき取り性を良好に再調整することは、も
っと困難な作業となる傾向にある。

【０００５】加えて、インキの変更で粘度が変化した時
や、使用する凹版の厚みを変更した時、凹版と印刷物、
もしくはブランケットとの圧力を変化させた時等、印刷
条件を変更した際には、凹版とドクターブレードとのあ
たり方に変化を生じるので、圧力と角度の再調整が必要
となってくる。以上のことから、１版当たりの印刷数が
少ない場合には、実際に印刷している時間よりも、ドク
ターブレードの調整に多くの時間を取られることになる
ので、印刷品種が増加した場合には、生産効率が著しく
低下する傾向にある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明では、上記の従
来技術の欠点を解決し、版面とドクターブレードとの、
あたりの圧力と角度、平行度の自動的な調整が可能とな
る機構を備えた、ドクター装置及び、凹版印刷機を提供
することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、ドクターブレ
ードで、平面形の凹版上の非画像部のインキかき取り
と、画像部へのインキ供給を行う円圧式の凹版印刷機に
おいて、ドクターブレード、及びドクターブレードの保
持具とを、版面の方向へ移動、接触、引き離しさせる駆
動装置を、凹版の印刷方向、及びこれに直交する方向の
各々に対して複数個備えると共に、前記駆動装置の各々
の軸に圧力測定装置を備えたことを特徴とするドクター
装置であり、さらに、圧力測定装置からの出力を取り込
みながら、前記駆動装置を動かして、ドクターブレード
の版面に対する、圧力及び角度と平行度を制御すること
が可能な制御装置を、備えたことを特徴とする凹版印刷
機である。

【０００８】本発明のドクター装置に使用するドクター
ブレード２１は、金属性の物に限らず、使用する凹版の
材質に合わせて、セラミックやプラスチック等で作られ
た物を使用することで、インキかき取り性の向上が見込
めると共に、耐磨耗性の向上や、コストの低下等の取扱
性を良くすることが可能である。

【０００９】平面形の凹版１６としては、印刷する用途
に合わせて、銅や鉄等の金属に、フォトプロセスでエッ
チングしてパターンを形成した物や、この上にクロム等
のメッキを行った物、また、感光性プラスチックを使用
してフォトプロセスで形成された物などを使用すること
ができる。

【００１０】また、本発明のドクター装置で使用する、
ドクターブレード２１、ドクターブレードホルダー、及
び、長さ調整継ぎ手２４等を、凹版１６の方向へ移動さ
せる駆動装置３０としては、コンプレッサーからの圧縮
空気を動力源とし、複数の圧力調整手段によって、応力
調整できる複動式のエアーシリンダー、油圧を動力とす
る類似の構成の油圧シリンダーや、電気によって動作す
るサーボモーター等が使用できる。実際の使用での移動
距離は短いので、駆動装置３０の最大速度への要求は低
いが、凹版の表面に傷を付けずに、ドクターブレードを
接触させられるように、駆動速度を調整できることが要
求される。

【００１１】

【作用】以上述べたように、版面とドクターブレードと
の、あたりの圧力と角度、平行度の自動的な調整が可能
となる機構を備えた事により、ドクターブレードと版面
とのあたりと角度を、自動的に調整されるようになっ
た。

【００１２】

【実施例】本発明を図面に沿って、印刷の工程から説明
する。印刷機の概略図の図１において、版固定装置のバ
キュームテーブルを兼用する、版固定Ｘ−Ｙテーブル１
５面上に、画像を製版した凹版１６を取付けて位置を調
整し、サーキュラーテーブル１４によって、適切な印刷
方向とドクター方向となるように角度調整を行い、さら
に、版固定装置の版上下装置１３によって、適切な版印
圧を得られるように高さ調整される。次に、ドクター装
置を含むインキング架台２５が、架台の駆動装置が回転
させたギアによって往路右方向に移動し、インキングス
キージ２０によって版面へインキングされた後、ドクタ
ーブレード２１は、駆動装置３０によって凹版１６に接
触しながら、復路左方向へ移動する。この時、版面のイ
ンキがドクタリングされる。図１では、インキング架台
２５はインキング後・ドクタリング前、印刷架台２６は
待機の状況にある。次に、印刷架台２６のブランケット
胴１８が、胴入れ状態で凹版上を右方向に移動し、先
ず、凹版の画像部に充填されたインキをブランケット胴
１８に転移させ、さらに、設定された位置である印刷物
１左上まで移動した後、適切な印刷印圧となるように調
整されており、凹版１６と同様の手段で固定されている
印刷物１上へ、インキを転写させて、一連の工程を終了
する。

【００１３】上記、印刷の各工程における架台の移動速
度や、インキスキージ、ドクタリング、インキ転移、イ
ンキ転写開始位置とタイミング等は、設定された適切な
印刷条件となるよう、印刷機の総合制御装置にて制御さ
れている。

【００１４】次に、本発明のドクター装置の機構につい
て詳細に説明する。まず、ドクタリング時の調整部分
は、ドクター装置側面図の図２に示すドクターブレード
２１と凹版１６との接触角θ１と、ドクター装置正面図
の図３に示すドクターブレード２１と凹版１６との接触
角θ２と、図４に示す印刷基台２７に沿って進行する、
インキング架台２５の進行方向に対する、ドクターブレ
ード２１の水平平面内回転角度θ３である。これらは、
各々の調整機構によって凹版１６での適性なドクタリン
グが可能となるよう調整される。

【００１５】この内のθ３の調整は、凹版に形成されて
いる画像パターンの方向を勘案しながら、インキング架
台２５に対するドクター装置架台２８の取り付け方向
を、手動で変更することによって行い、非画像部のイン
キかき取り性と、各方向の画像パターンへのインキ充填
が、良好となるように設定する。しかし、この取り付け
方向角度の調整も、インキング架台２５とドクター装置
架台２８の取り付け部の間に、駆動装置を介在させるこ
とによって、自動化が可能である。

【００１６】接触角θ２は、インキかき取り性に関し
て、接触角θ１及びθ３と異なった特性を持ち、本来０
度に設定される物である。０度以外の場合は、インキの
ドクタリングは片残りをする不良状態となるので、良好
なドクタリング状態を維持できる角度は、０度近辺の非
常に狭い範囲にある。図３はθ２が０度以上の値になっ
た、過渡的な状態を示しており、ドクター装置の制御装
置４０の作用、場合によっては版上下装置１３との共同
動作を通して、自動的に０度に修正される。制御装置４
０によって、ドクタリング中もこの状態が保ち続けられ
るので、良好な状況を保持することができる。

【００１７】次に、接触角θ１は、ドクターブレード２
１と凹版１６の諸特性、及び、使用するインキの諸特性
によって、インキかき取り性に対する最適値が存在し、
寄与は少ないものの、画像パターンへのインキ充填性も
考慮して設定される。設定した値は、制御装置４０によ
って保ち続けられる。また、接触角θ１の設定値に大幅
な変更がある場合には、駆動装置３０と接続されてい
る、長さ調整用継ぎ手２４と周辺の回転軸２３を、他の
長さの物に変えることで対応できる。

【００１８】上記の接触角θ１、θ２の調整と維持は、
以下の様に行なっている。エアシリンダーによる駆動装
置３０，３０' ，３０''，３０''' と、圧空源との間に
接続されている圧空用電磁弁を開き、ドクターブレード
２１とそのホルダーとを、凹版の方向へ移動させ、凹版
１６とドクターブレード２１とを接触させる。この時、
電歪素子と増幅器からなる、圧力測定装置３１，３１'
，３１''，３１''' からの圧力測定信号４１，４１'
，４１''，４１''' の値に生じた変化を、制御装置４
０で検知し、圧空用電磁弁と駆動装置３０，３０' ，３
０''，３０''' との間にある圧力調整器で圧空の圧力を
低下させ、圧力測定信号４１，４１' ，４１''，４
１''' の値を設定値と一致させることで、ドクターブレ
ード２１と凹版１６間の圧力を必要な値にすることがで
きる。この時、接触角θ１の調整は、圧力測定信号４１
と４１' 及び４１''と４１''' それぞれの値と、前者４
１と４１' の値の比と後者４１''と４１''' の値の比
を、接触角θ１でドクターブレード２１が凹版１６に接
触する際、回転モーメントから生じる応力比により算出
された、それぞれの設定値の値、及び比と一致するよう
に、駆動装置３０，３０' ，３０''，３０''' を動作さ
せることで行なわれる。若しくは、それぞれの設定値を
変更しながら、接触角θ１の変化を観察し、適切な角度
となる設定値を採用すれば良い。また、実際のドクタリ
ング時には、接触角θ１の値やインキ種類、ドクタリン
グ速度等で変化してくるインキかき取りの応力が加算さ
れるので、この値を加味して設定の基準とする必要があ
る。

【００１９】接触角θ２は、圧力測定信号４１と４１''
同志、及び４１' と４１''' 同志を比較し、通常は、そ
れぞれの値が等しくなるように、各々の駆動装置３０を
動作させることで、凹版１６との角度を０度にすること
ができる。この時、調整、使用の前に、版上下装置１３
で凹版１６の水平出しを行っておくと良い。

【００２０】以上の様に、接触角θ１とθ２の調整は、
ドクタリング方向＝印刷方向と、これに直交する方向
に、それぞれ複数本、図５では２本ずつ設けられた駆動
装置３０，３０' ，３０''，３０''' に、圧力検知装置
の圧力信号４１，４１' ，４１''，４１''' から、制御
装置４０で算出された駆動空圧４２，４２' ，４２''，
４２''' を印加することで行っているが、この時、圧力
信号４１，４１' ，４１''，４１''' の総和を、圧力検
知装置３１の検量線に当てはめることにより、ドクター
ブレード２１が受ける圧力の総和、及び、単位長さ当た
りの圧力を計算できる。この値を適性な範囲に設定して
おくことで、ドクターブレード２１と凹版１６の磨耗を
抑えながら、凹版上のインキかき取り性が良好となるド
クター圧力を保持することができる。

【００２１】

【発明の効果】以上述べたように本発明は、版面とドク
ターブレードとの、あたりの圧力と角度、平行度の自動
的な調整が可能となる機構を備えた、ドクター装置及
び、凹版印刷機を使用することによって、ドクターブレ
ードと版面とのあたりと角度が、自動的に調整されるよ
うになるため、凹版の厚みの変更等、印刷条件の変更が
あっても、調整に熟練を必要とせず、短時間で良好な状
態に設定することが可能であり、かつ、良好な状態を保
持することも容易となる。また、ドクターブレード圧力
を適性な範囲に設定できるので、インキかき取り性を損
ねることなく、ドクターブレードと凹版の磨耗を抑える
ことが可能である。

【００２２】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のドクター装置を備える印刷機の概略の
側面図である。

【図２】本発明のドクター装置の側面図である。

【図３】本発明のドクター装置の正面図である。

【図４】本発明印刷機におけるドクタリング軌跡の一例
を示す平面図である。

【図５】本発明ドクター装置の圧力信号による駆動装置
の制御装置の説明図である。

【符号の説明】

１ … 印刷物 １３ … 版及び印刷物上
下装置 １４ … サーキュラーテ
ーブル １５ … Ｘ−Ｙクロステ
ーブル １６ … 凹版 １８ … ブランケット胴 ２０ … スキージ ２１ … ドクターブレー
ド ２３ … 回転軸 ２４ … 長さ調整用継ぎ
手 ２５ … インキング架台 ２６ … 印刷架台 ２７ … 印刷基台 ２８ … ドクター装置基
台、 ３０，３０' ，３０''，３０''' … 駆動装置 ３１，３１' ，３１''，３１''' … 圧力測定装置 ３２ … ストッパー ４０ … 制御装置 ４１，４１' ，４１''，４１''' … 圧力測定信号 ４２，４２' ，４２''，４２''' … 駆動空圧

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ドクターブレードで、平面形の凹版の版上
   の非画像部のインキかき取りと、画像部へのインキ供給
   を行う円圧式の凹版印刷機において、ドクターブレー
   ド、及びドクターブレードの保持具とを、版面方向へ移
   動、接触、引き離しさせる駆動装置を、凹版の印刷方
   向、及びこれに直交する方向の各々に対して複数個備え
   ると共に、前記駆動装置の各々の軸に圧力測定装置を備
   えたことを特徴とするドクター装置。
2. 【請求項２】請求項１記載のドクター装置を備え、さら
   に、圧力測定装置からの出力を取り込みながら、前記駆
   動装置を動かすことで、ドクターブレードの版面に対す
   る圧力及び角度と平行度を制御しながら、版面に接触さ
   せる制御装置を備えたことを特徴とする凹版印刷機。