JPH068635Y2

JPH068635Y2 - グランドピアノのマフラ−装置

Info

Publication number: JPH068635Y2
Application number: JP1986028856U
Authority: JP
Inventors: 宏叔高橋
Original assignee: Yamaha Corp
Current assignee: Yamaha Corp
Priority date: 1986-02-28
Filing date: 1986-02-28
Publication date: 1994-03-02
Anticipated expiration: 2001-02-28
Also published as: JPS62142092U

Description

【考案の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕この考案は演奏音量を効果的に減じ弱音演奏を可能にし
たグランドピアノのマフラー装置に関する。

〔従来の技術〕

従来からグランドピアノにあってはペダル操作によって
鍵およびアクション機構を鍵盤筬と共に横方向にスライ
ドさせ、ハンマーによって打撃される弦の本数を減じ、
例えば高音弦の場合通常は１つのハンマーで３本の弦を
打撃するところを２本の弦を打撃して発音音量を減じ、
弱音演奏を行うようにしている。しかし、鍵およびアク
ション機構を移動させることはそれだけ移動スペースを
確保する必要があり、またペダルおよびペダルレバー機
構を必要とするため構造が複雑で部品点数が増加するな
どの欠点があった。

そこで、アップライドピアノと同様弦とハンマーとの間
に緩衝部材を選択的に介在させ、ハンマーの打撃力を弱
めるようにしたピアノが提案（特公昭４５−22294号）
された。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかし、このようなピアノにおいては構造上緩衝部材が
弦の打弦位置より手前側（演奏者側）にあるため、アク
ション調整作業時にハンマーが隠れ、作業に邪魔にな
る。また、緩衝部材を水平に配設し、前後にスライドさ
せる必要があるため、緩衝部材自体にある程度の剛性が
要求され、弱音効果が低下する。また、緩衝部材の駆動
をリンク機構で行っているため、コストが高くつき、し
かも切換えた時の保持、確認機能を備えていないため不
便であるなど多くの欠点があった。

そこで、このような問題を解決するものとして本出願人
は特開昭６０−241094号に示す「グランドピアノのマフ
ラー装置」を既に提案している。これは操作レバーによ
りマフラー棒を回動させ該棒に配設された緩衝部材を弦
とハンマーとの間に介在させるようにしたものである。
しかし、このようなものにおいても、弦がオーバースト
ラングしているピアノ（実際上ほとんどピアノがオーバ
ーストラングしている）では、低音弦と中，高音弦とで
は弦の張設高さが異なるため、低音弦用と中高音弦用の
マフラーを２つ設け、その夫々を駆動しなければなら
ず、したがって部品点数が増え、操作も別々でやり難
く、コストも高くつくという不都合があった。

〔問題点を解決するための手段〕

この考案に係るグランドピアノのマフラー装置は上述し
たような問題を解決すべくなされたもので、弦（７）の
下方でかつハンマー（２９）より後方側に軸支されて回
動自在に配設され複数の弦に対して共通に延在するマフ
ラー棒（４１）と、一端がマフラー棒（４１）に固着さ
れた緩衝部材（４５，４５Ａ，４５Ｂ，４５Ｃ）と、前
記マフラー棒（４１）を回動させるための操作手段（６
１）と、この操作手段（６１）と前記マフラー棒（４
１）とを連結する連結手段（６２）と、回転伝達機構
（４８）とを備え、前記マフラー棒（４１）は、長手方
向に２分割形成されることにより低音弦（７Ａ）の下方
に配設された第１マフラー棒（４１Ａ）と、低音弦（７
Ａ）より弦高の低い中，高音弦（７Ｂ，７Ｃ）の下方で
かつ低音弦（７Ａ）と中，高音弦（７Ｂ，７Ｃ）の張設
高さの違いに応じてその高さの差だけ低い位置に配設さ
れた中，高音弦（７Ｂ，７Ｃ）に共通な第２マフラー棒
（４１Ｂ）とからなり、前記回転伝達機構（４８）は前
記第１，第２マフラー棒（４１Ａ，４１Ｂ）の互いに対
向する軸端を連結し、これらマフラー棒の一方から他方
に同相で回転を伝達するものである。

〔作用〕

この考案においては第１および第２マフラー棒間に回転
伝達機構を介在させているので、いずれか一方のマフラ
ー棒を回動させれば、他方のマフラー棒もこれに連動し
て回動する。したがって、１つの操作機構で済み、構造
および操作が簡単である。

以下、この考案を図面に示す実施例に基づいて詳細に説
明する。

〔実施例〕

第１図はこの考案に係るマフラー装置を備えたグランド
ピアノのアクション機構部の側断面図、第２図はマフラ
ー装置の正面図である。第１図において、１は棚板で、
その上面に鍵盤筬２が、さらにその上に鍵３が配設され
ている。

前記鍵盤筬２は、筬前２Ａ、筬中２Ｂ、筬後２Ｃ、これ
らを連結する鍵盤筬中樌２Ｄ等で構成され、筬前２Ａに
は前記鍵３の左右方向の回動を規制防止するオーバルキ
ーピン４が、また筬中２Ｂには鍵３の中間部を上下方向
に回動自在に支持するバランスキーピン５がそれぞれ植
設されている。

前記鍵３の後端部上方には従来周知のアクション機構６
が各弦７に対応して配設されている。前記アクション機
構６は、一端がサポートレール８にフレンジ９を介して
回動自在に枢支され、前記鍵３の押鍵操作時にキャプス
タン１０によって突き上げ回動されるウイペン１１，ウ
イペン１１の遊端に回動自在に枢支されたジャック１
２，前記ウイペン１１の上方にフレンジ１３を介して回
動自在に配設されたレペテイションレバー１４，一端が
シャンクレール１５にフレンジ１６を介して回動自在に
枢支され先端にハンマーウッド１７を介してハンマーフ
エルト１８が固着されることによりハンマー２９を構成
し、通常前記レペテイションレバー１４上にハンマーロ
ーラ１９を介して載置されるハンマーシャンク２０，前
記ジャック１２およびレペテイションレバー１４に復帰
習性を付与するレペテイションレバースプリング２１等
で構成されている。前記ジャック１２は前記レペテイシ
ョンレバー１４と一体的に上昇して前記ハンマーローラ
１９を突き上げ、その途中にてレギュレチイングボタン
２２に当接し時計方向に回動されることにより、前記ハ
ンマーローラ１９の下部から一時的に脱進するように構
成されている。前記ハンマーシャンク２０は前記ジャッ
ク１２によるハンマーローラ１９の突き上げ動作により
上昇回動され、これにより前記ハンマーフエルト１８が
弦７を打撃して発音させるように構成されている。

なお、前記サポートレール８およびシャンクレール１５
は前記鍵盤筬２上に立設されたブラケット２４に固定さ
れている。また、弦７はフレーム２５上にその両端をチ
ューニングピン２６と図示しないフレームピンに係止さ
れて所定の張力でほぼ水平に張設されている。なお、弦
７のうち特に低音弦７Ａ（第２図）と中音弦７Ｂとは一
般にＸ字状に交叉し、低音弦７Ａが中音弦７Ｂの上方に
張設されているため、低音弦７Ａの張設高さが中，高音
弦７Ｂ，７ＣのそれよりΔＨだけ高くなっている。

前記鍵３の後方には該鍵３の押鍵操作に連動して作動す
る周知のダンパー機構３０が配設されている。このダン
パー機構３０は通常前記弦７の自由な振動を阻止するも
ので、ダンパーレバー３１，ダンパーワイヤー３２，ダ
ンパー３３等からなり、押鍵操作に伴い前記ダンパーレ
バー３１が鍵３の後端により突き上げられると、ダンパ
ーワイヤー３２が上昇し、ダンパー３３を弦７から離間
させるように構成されている。

さて、この考案を特徴づけるマフラー装置４０は、すべ
ての弦７に対して共通に延在するマフラー棒４１（第２
図）を備えている。このマフラー棒４１は、２分割形成
されることにより、前記低音弦７Ａに対応する第１マフ
ラー棒41Ａと、中，高音弦７Ｂ，７Ｃに対応する第２マ
フラー棒41Ｂとで構成されるもので、前記弦７の下方で
かつ前記ハンマーフエルト１８の後方側に位置して配設
され、その各マフラー棒41Ａ，41Ｂがブラケット42Ａ，
42Ｂ，42Ｃ，42Ｄによってそれぞれ回動自在に軸支され
ている。この場合、第１マフラー棒41Ａは、低音弦７Ａ
と中，高音弦７Ｂ，７Ｃの張設高さの差ΔＨだけ第２マ
フラー棒41Ｂより高い位置に配設されている。前記各ブ
ラケット42Ａ，42Ｂ，42Ｃ，42Ｄは中框４４の前面にそ
れぞれ高さ調整自在にねじ止め固定されている。

前記第１および第２マフラー棒41Ａ，41Ｂには皮革，フ
エルト，不織布等の可撓性材料（もしくはこれらの材料
の組合わせ）からなり、ある程度の剛性を有する緩衝部
材45Ａ，45Ｂ，45Ｃがそれぞれ配設され、通常第１図に
示すように垂下している。これらの緩衝部材45Ａ，45
Ｂ，45Ｃには弱音演奏時に隣接する鍵の打弦に影響され
ないように多数の切込み４６が、緩衝部材自体の剛性を
著しく低下させない範囲で形成されている。

前記第１マフラー棒41Ａと第２マフラー棒41Ｂの互いに
対向する軸端には、一方のマフラー棒、例えば41Ａの回
動をもう一方のマフラー棒41Ｂに伝達する回転伝達機構
４８が配設されている。回転伝達機構４８は、第１およ
び第２マフラー棒41Ａ，41Ｂの軸端に固定された歯車49
Ａ，49Ｂと、ブラケット42Ｂに回転自在に軸支された軸
５０の各軸端にそれぞれ固定され前記歯車49Ａ，49Ｂに
それぞれ噛合する歯車51Ａ，51Ｂとで構成されている。
したがって、第１マフラー棒41Ａが回動すると、該棒41
Ａの回転は前記回転伝達機構４８を介して第２マフラー
棒42Ｂに伝達され、該棒42Ｂを第１マフラー棒41Ａと同
一方向に回転させる。この場合、第１および第２マフラ
ー棒41Ａ，41Ｂは、すべての歯車49Ａ，49Ｂ，51Ａ，51
Ｂの歯数を等しくすることで、同相で、すなわち同一方
向に同一角度回動する。

また、前記第１マフラー棒41Ａの一端部には第３図（第
２図では図示を省略）に示す如き発音機構５２が配設さ
れている。この発音機構５２は、前記第１マフラー棒41
Ａの外周に嵌合固定された連結部材５４と、マグネット
５５とからなり、このマグネット５５の上、下面55ａ，
55ｂが前記第１マフラー棒41Ａの回動に伴ってブラケッ
ト42Ａの表面に一点鎖線で示す如く当接吸着する毎に
「カチッ」という音を発生させるように構成されてい
る。この音はマフラー装置４０を通常演奏状態より弱音
演奏状態にもしくはその逆に切替える際、その切替操作
が確実に行われたか否かを知る上で有効とされる。

また、前記マグネット５５は前記ブラケット42Ａに吸着
することにより、前記第１マフラー棒41Ａをその回動位
置に保持し、これによって前記緩衝部材45Ａを第１図実
線示と鎖線示の状態、すなわち通常演奏状態と弱音演奏
状態に切替えるようにしている。そして、この切替え操
作は前記棚板１の下面前端部適宜箇所にブラケット６０
を介して配設されたレバー等からなる操作手段６１によ
って行われる。前記操作手段６１と前記連結部材５４と
はワイヤ等の連結手段６２によって連結されており、こ
の連結手段６２はスプリング６３によって棚板後方側に
付勢されている。したがって、前記連結部材５４は通常
マグネック５５の上端面55ａがブラケット42Ａの表面に
当接吸着した位置に設定保持され、この状態において、
前記緩衝部材45Ａ，45Ｂ，45Ｃが第１図実線示の垂下状
態を保ち、通常の演奏を可能にしている。この通常演奏
状態から弱音演奏状態に切替えるには前記操作手段６１
を手前に引張ればよい。すると、連結手段６２がスプリ
ング６３に抗して引張られ、連結部材５４を第３図時計
方向に回動させるため、第１マフラー棒41Ａも同方向に
回動して緩衝部材45Ａを上昇させ第１図鎖線で示す如く
低音弦７Ａとハンマー２９との間に介在させる。

また、第１マフラー棒41Ａの回動は前述した通り回転伝
達機構４８によって第２マフラー棒41Ｂにも伝達される
ため、該棒41Ｂに取付けられている緩衝部材45Ｂ，45Ｃ
も上昇し、中，高音弦７Ｂ，７Ｃとハンマー２９との間
にそれぞれ介在される。この結果、通常演奏状態から弱
音演奏状態に切替わり、この状態で鍵３を操作し、これ
に連動してアクション機構６が動作してハンマーシャン
ク２０を上方に回動飛翔させると、ハンマー２９が前記
緩衝部材45Ａ，45Ｂ，45Ｃを介して低，中，高音弦７
Ａ，７Ｂ，７Ｃをそれぞれ打撃するため、打撃力が弱め
られ、発音音量を減ずる。なお、操作手段６１は引張ら
れた位置、すなわち弱音演奏位置に図示しない適宜な係
止機構によって係止される。

かくして、このような構成からなるマフラー装置４０に
よれば、通常演奏と弱音演奏の切替え操作を１つの操作
手段６１によって行うことができるので、操作が簡単
で、従来のように各第１および第２マフラー棒41Ａ，41
Ｂに対してそれぞれ操作手段を設ける必要がなく、部品
点数を削減することができる。また、部品点数の削減が
可能になれば、組立作業が容易で、安価に提供し得る。
また、第１マフラー棒41Ａの回転を歯車機構４８によっ
て第２マフラー棒41Ｂに伝達しているので、構造が簡単
で確実に伝達することができる。また、操作手段６１は
連結手段６２によって連結部材５４に作動連結されてい
るため、その取付け位置を自由に選定できる。また、緩
衝部材４５（45Ａ，45Ｂ，45Ｃ）は通常ハンマーより後
方に位置しているため、アクション機構６の調整；組込
み作業に邪魔にならず、作業性を低下させない。さら
に、操作手段６１による切替操作時に発音機構５２が音
を発するため、切替えを確実に確認することができる。
また発音機構５２は切替状態を保持する機能を有してい
るため、演奏中に不測に通常演奏状態から弱音演奏状態
もしくはその逆に切替ったりすることがないなどの利点
を有している。

なお、上記実施例は発音機構５２としてマグネット５５
を用いたが、この考案はこれに限らず種々の変更な可能
で、要は切替操作に伴って音を発する機構であれば何で
もよく、またその配設位置も第１マフラー棒41Ａに限ら
ず第２マフラー棒41Ｂまたは操作手段６１部に設けても
よい。

また、緩衝部材４５をマフラー棒４１に固着するために
は、予めマフラー棒４１に長手方向に沿ったフランジ部
を設けておき、フランジ部で接着等すると固着が容易で
ある。

また、上記実施例は連結手段６２の一端を連結部材５４
に接続したが、第１マフラー棒41Ａに直接接続してもよ
い。さらに、マフラー棒４１を回動させる機構としては
連結手段６２の一端をラックに接続し、このラックを連
結手段６２で上下動させ、第１マフラー棒41Ａに前記ラ
ックに噛合するピニオンを固定したり、リンクを介在さ
せるなど、種々の変更が可能である。

〔考案の効果〕

以上説明したようにこの考案に係るグランドピアノのマ
フラー装置によれば、低音弦および中，高音弦に対応し
て配設される第１および第２マフラー棒を備え、これら
両マフラー棒を回転伝達機構で連結し、操作手段の操作
により一方のマフラー棒の回動を前記回転伝達機構によ
り他方のマフラー棒に伝達するように構成したので、マ
フラー棒を分割してあっても低音弦と中，高音弦それぞ
れにおいて、正確に緩衝部材をハンマーと弦との間に挿
入位置させることができる。また、分割したマフラー棒
毎に操作手段を設けなくてよいので、操作手段を一度操
作するだけでよい。したがって、部品点数が少なく、組
立作業が容易で安価に提供し得る。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案に係るマフラー装置を備えたアクショ
ン機構部の側断面図、第２図はマフラー装置の正面図、第３図は発音機構の側断面図である。３……鍵、６……アクション機構、７……弦、７Ａ……低音弦、７Ｂ……中音弦、７Ｃ……高音弦、１８……マフラーフエルト、２９……ハンマー、４０……マフラー装置、４１……マフラー棒、 41Ａ……第１マフラー棒、 41Ｂ……第２マフラー棒、 45，45Ａ，45Ｂ，45Ｃ……緩衝部材、４８……回転伝達機構、６１……操作手段、６２……連結手段。

Claims

【実用新案登録請求の範囲】

【請求項１】弦（７）の下方でかつハンマー（２９）よ
り後方側に軸支されて回動自在に配設され複数の弦に対
して共通に延在するマフラー棒（４１）と、一端がマフ
ラー棒（４１）に固着された緩衝部材（４５，４５Ａ，
４５Ｂ，４５Ｃ）と、前記マフラー棒（４１）を回動さ
せるための操作手段（６１）と、この操作手段（６１）
と前記マフラー棒（４１）とを連結する連結手段（６
２）と、回転伝達機構（４８）とを備え、前記マフラー
棒（４１）は、長手方向に２分割形成されることにより
低音弦（７Ａ）の下方に配設された第１マフラー棒（４
１Ａ）と、低音弦（７Ａ）より弦高の低い中，高音弦
（７Ｂ，７Ｃ）の下方でかつ低音弦（７Ａ）と中，高音
弦（７Ｂ，７Ｃ）の張設高さの違いに応じてその高さの
差だけ低い位置に配設された中，高音弦（７Ｂ，７Ｃ）
に共通な第２マフラー棒（４１Ｂ）とからなり、前記回
転伝達機構（４８）は前記第１，第２マフラー棒（４１
Ａ，４１Ｂ）の互いに対向する軸端を連結し、これらマ
フラー棒の一方から他方に同相で回転を伝達することを
特徴とするグランドピアノのマフラー装置。