JPH0677947B2 - 合成樹脂製保持器の製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 この発明は、軸受や一方クラッチ等において、奇数個の
転動体（玉、ころ、ロール及びスプラグ等）を保持する
合成樹脂製保持器の製造方法に関する。

〈従来の技術と発明が解決しようとする問題点〉 第４図及び第５図は、奇数個のポケット（81）を有する
環状の保持器（80）を、射出成形により成形する場合を
示している。

従来、成形用金型のキャビティ内に合成樹脂材料を注入
するゲート（82）は、柱（83）の中央位置に臨ませてい
た［柱とは、隣り合うポケット（81）間に介在した肉厚
の厚い部分をいう］。このように、ゲート（82）を肉厚
の厚い部分に臨ませるのは、仮に、薄肉部分に臨ませた
場合、ゲート（82）に残存する余剰成形部の切断跡から
クラッチが発生しやすいので、これを防止するためであ
る。

上記のように奇数個のポケット（81）を持つ保持器（8
0）を成形する場合、ゲート（82）から注入された合成
樹脂材料は、金型に形成された環状のキャビティ内を左
右に別れて流動し、ゲート（82）を通る直径線ｄ上にあ
るポケット（81）の下方部分において、すなわちゲート
（82）から最も離れ且つ最も肉厚の薄い部分において合
流し接合する。

したがって、上記のようにして接合された接合部（Ａ）
は、合成樹脂材料の流動性が最も悪くなった状態で成形
される。さらに、接合部（Ａ）は、その接合の面積が狭
いので、上記の成形状態と相埃って、接合強度が弱く、
破損しやすかった。

上記の問題点を解決するために、第６図に示すように、
ゲート（90）の位置を柱（83）の中央位置から、隣り合
う何れか一方のポケット（81）側へ偏位させることによ
り、接合部（Ｂ）を、肉厚の厚い側に配置する方法が発
明されたが（特開昭58-102823号公報参照）、偏位量ｅ
をあまり大きくできないので、十分な接合面積を確保で
きず、したがって、接合強度が弱く、やはり耐久性の点
で問題があった。

この発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであ
り、その目的は、接合部の強度を確保して耐久性に優れ
た保持器を成形することのできる合成樹脂製保持器の製
造方法を提供することである。

〈課題を解決するための手段〉 上記目的を達成するためこの発明に係る合成樹脂製保持
器の製造方法は、金型のキャビティ内にゲートを通して
合成樹脂材料を注入し、複数且つ奇数個の転動体保持用
のポケットを持つ保持器を射出成形する合成樹脂製保持
器の製造方法において、上記複数のポケットのうちの１
つのポケットを挟んで隣り合う２本の柱に対応する位置
に臨ませた２つのゲートを通して、上記合成樹脂材料を
注入し、上記２つのゲートに挟まれた上記ポケット部分
と、該ポケットと保持器中心を挟んで対向する柱部分に
て、上記合成樹脂材料を合流接合させることを特徴とす
るものである。

〈作用〉 上記の構成の合成樹脂製保持器の製造方法によれば、ポ
ケットを挟んで隣り合う２本の柱に対応する位置に臨ま
せた２つのゲートを通して、合成樹脂材料を注入するの
で、当該合成樹脂材料は、上記２つのゲートに挟まれた
上記ポケット部分と、該ポケットと保持器中心を挟んで
対向する柱部分にて合流接合する。前者の接合部は、肉
厚の薄い部分にあるが、各ゲートから非常に近い位置に
あることから、合成樹脂材料の流動性が極めて良い状態
で成形することができる。また、後者の接合部は、各ゲ
ートから離れた位置にはあるが、肉厚の厚い柱の部分に
あることから、合成樹脂材料の流動性の良い状態で成形
することができると共に、接合の面積を十分に確保する
ことができる。

〈実施例〉 以下実施例を示す添付図面によって詳細に説明する。

第１図及び第２図は、この発明に係る合成樹脂製保持器
の製造方法の一実施例を示す概略の斜視図及び平面図で
ある。第１図において、保持器（１）は、円筒形の本体
811）の一方の端面（12）に、転がり軸受の転動体を保
持する奇数個のポケット（２）を、保持器（１）の円周
方向に沿って配設している。隣り合うポケット（２）間
には、肉厚の厚い柱（３）が介在している。そして、一
つのポケット（２）を挟んで隣り合う２本の柱（３）に
対応する位置に臨ませた２つのゲート（５）を通して、
金型（４）のキャビティ（７）内に合成樹脂材料を注入
することにより、保持器（１）を成形するものである
（第２図参照）。以下、各ゲート（５）に挟まれた上記
ポケット（２）を、ポケット（2a）という。

保持器（１）の材質としては、フェノール樹脂、ポリア
ミド、ポリアセタール及びフッ素樹脂等の合成樹脂を使
用することができる。

各ゲート（５）には、第２図に示すように、略Ｔ字形の
ランナ（６）を通して合成樹脂材料が供給される。

この実施例によれば、各ゲート（５）から注入された合
成樹脂材料は、金型（４）のキャビティ（７）内を左右
に流れ、保持器（１）の円周上で各ゲート（５）から等
距離にある位置において合流し接合する。したがって、
上記ポケット（2a）の下方の肉厚の薄い部分と、ポケッ
ト（2a）と対向した柱（３）（以下、柱（3a）という）
の中央部分との２か所に、それぞれ接合部（Ｃ）及び接
合部（Ｄ）ができる。上記接合部（Ｃ）は、肉厚の薄い
部分にあるが、各ゲート（５）から非常に近い位置にあ
ることから、合成樹脂材料の流動性が極めて良い状態で
成形することができる。また、上記接合部（Ｄ）は、各
ゲート（５）から離れた位置にはあるが、肉厚の厚い柱
（3a）の部分にあることから、合成樹脂材料の流動幅を
十分に確保して流動性の良い状態で成形することができ
ると共に、接合の面積を十分を確保することができる。
したがって、各接合部（Ｃ）（Ｄ）の接合強度を強くす
ることができ、耐久性に優れた保持器を成形することが
できる。

また、一般の多点ゲート方式の製造方法と較べて、各ゲ
ート（５）を近接させているので、ランナ（６）の長さ
を短くでき（第２図参照）、したがって、材料の歩留ま
りを向上することができると共に、多数個取りを容易に
行うことができる。

なお、上記実施例において、両ゲート（５）を保持器
（１）の円周方向の何れか一方側へ偏位させて、上記接
合部（Ｃ）の位置を、肉厚の厚い側へずらせることによ
り、この部分の接合強度を一層強くすることができ、一
層耐久性に優れた保持器の成形を行うことができる。

また、保持器（１）の形状は、上記実施例に限定される
ものではなく、第３図に示すように、ポケット（２）
を、端面（12）側に開放させない形状であっても良い。

その他、この発明の要旨を変更しない範囲で種々の設計
変更を施すことができる。

〈発明の効果〉 以上のように、この発明に係る合成樹脂製保持器の製造
方法によれば、ポケットを挾んで隣り合う２本の柱に対
応する位置に臨ませた２つのゲートを通して、合成樹脂
材料を注入するので、当該合成樹脂材料は、上記２つの
ゲートに挟まれた上記のポケット部分と、該ポケットと
保持器中心を挟んで対向する柱部分にて合流接合する。
前者の接合部は、肉厚の薄い部分にあるが、各ゲートか
ら非常に近い位置にあることから、合成樹脂材料の流動
性が極めて良い状態で成形することができる。また、後
者の接合部は、各ゲートから離れた位置にはあるが、肉
厚の厚い柱の部分にあることから、合成樹脂材料の流動
性の良い状態で成形することができると共に、接合の面
積を十分に確保することができる。したがって、前者及
び後者の接合部の接合の強度を十分に確保することがで
き、耐久性に優れた保持器を成形することができるとい
う特有の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図はこの発明に係る合成樹脂製保持器の
製造方法の一実施例を示す概略斜視図及び概略平面図、 第３図は他の保持器の例を示す斜視図、 第４図及び第５図は従来の保持器の製造方法を示す概略
斜視図及び概略平面図、 第６図は他の従来例を示す概略平面図である。 （１）……保持器、（２）（2a）……ポケット、 （３）（3a）……柱、（４）……金型、 （５）……ゲート、（７）……キャビティ。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】金型のキャビティ内にゲートを通して合成
   樹脂材料を注入し、複数且つ奇数個の転動体保持用のポ
   ケットを持つ保持器を射出成形する合成樹脂製保持器の
   製造方法において、上記複数のポケットのうちの１つの
   ポケットを挟んで隣り合う２本の柱に対応する位置に臨
   ませた２つのゲートを通して、上記合成樹脂材料を注入
   し、上記２つのゲートに挟まれた上記ポケット部分と、
   該ポケットと保持器中心を挟んで対向する柱部分にて、
   上記合成樹脂材料を合流接合させることを特徴とする合
   成樹脂製保持器の製造方法。