JPH0665632A - 複合ロールの外層材製造方法 - Google Patents
複合ロールの外層材製造方法Info
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- JPH0665632A JPH0665632A JP24142892A JP24142892A JPH0665632A JP H0665632 A JPH0665632 A JP H0665632A JP 24142892 A JP24142892 A JP 24142892A JP 24142892 A JP24142892 A JP 24142892A JP H0665632 A JPH0665632 A JP H0665632A
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- roll
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- bainite
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 耐摩耗性、耐熱衝撃性に優れ、割損の虞れの
ない、均一組織のロール外層材を製造すること。 【構成】 重量%で、Ni:2.0 〜 6.0%、Cr:0.8
〜 4.0%、Mo:0.2 〜3.0%、Si:0.5 〜 1.5%を
含有する合金鋳鉄のロール外層材を、850 〜 950℃に加
熱した後、 450〜 510℃の温度域まで急冷し、該温度域
に保持した後、更に冷却し 200〜 350℃に保持し、変態
させる複合ロールの外層材製造方法である。
ない、均一組織のロール外層材を製造すること。 【構成】 重量%で、Ni:2.0 〜 6.0%、Cr:0.8
〜 4.0%、Mo:0.2 〜3.0%、Si:0.5 〜 1.5%を
含有する合金鋳鉄のロール外層材を、850 〜 950℃に加
熱した後、 450〜 510℃の温度域まで急冷し、該温度域
に保持した後、更に冷却し 200〜 350℃に保持し、変態
させる複合ロールの外層材製造方法である。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐摩耗性、耐肌荒れ性
に優れた圧延用複合ロール等として用いて好適な、複合
ロールの外層材製造方法に関する。
に優れた圧延用複合ロール等として用いて好適な、複合
ロールの外層材製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、熱間圧延工程では、より高速度高
負荷の圧延が要求され、製品品質、特に表面状況への要
求が厳しくなっている。このため、このような圧延工程
の圧延機に利用されるロール特性として、より一層耐摩
耗性や耐肌荒れ性等に優れることが要求されている。
負荷の圧延が要求され、製品品質、特に表面状況への要
求が厳しくなっている。このため、このような圧延工程
の圧延機に利用されるロール特性として、より一層耐摩
耗性や耐肌荒れ性等に優れることが要求されている。
【0003】従来、このような用途に対しては、高合金
鋳鉄を外層材とした複合ロールが用いられていた。この
ような複合ロールは、As cast のまま歪取り熱処理を行
なって製造するか、恒温変態処理(例えば、特公昭57-1
5647、特公昭57-15648、特開平1-191746)を行なって製
造されている。
鋳鉄を外層材とした複合ロールが用いられていた。この
ような複合ロールは、As cast のまま歪取り熱処理を行
なって製造するか、恒温変態処理(例えば、特公昭57-1
5647、特公昭57-15648、特開平1-191746)を行なって製
造されている。
【0004】ここで、複合ロールの外殻層を構成する組
織は、黒鉛、共晶炭化物及び基地組織であるが、基地組
織はオーステナイト化後(或いは凝固後)の冷却条件に
よって決定される。即ち、オーステナイトの状態から常
温まで連続的に冷却する場合、冷却速度が遅いと基地組
織がパーライトになり、冷却速度が速くなるとベイナイ
ト或いはマルテンサイトが析出する。一般に、各基地組
織の耐摩耗性は、マルテンサイト、ベイナイト、パーラ
イトの順に良いため、圧延ロール等の複合ロールでは、
外殻層の基地にマルテンサイトを析出させて用いること
が多い。ところが、オーステナイト化後から連続的に冷
却して変態させた場合、冷却過程で生じたロール内部
と外殻層の温度差に起因する熱応力と、外殻層の変態膨
張に基づく変態応力が重なって、ロール内層に著しい引
張応力が発生してロールの割損を生じ易い。マルテン
サイトは、高硬度ではあるが、靱性が低いことから、圧
延ロールとして使用される際、局部的な熱応力や圧延応
力が加わるとクラックが生じ易い、等の欠点がある。
織は、黒鉛、共晶炭化物及び基地組織であるが、基地組
織はオーステナイト化後(或いは凝固後)の冷却条件に
よって決定される。即ち、オーステナイトの状態から常
温まで連続的に冷却する場合、冷却速度が遅いと基地組
織がパーライトになり、冷却速度が速くなるとベイナイ
ト或いはマルテンサイトが析出する。一般に、各基地組
織の耐摩耗性は、マルテンサイト、ベイナイト、パーラ
イトの順に良いため、圧延ロール等の複合ロールでは、
外殻層の基地にマルテンサイトを析出させて用いること
が多い。ところが、オーステナイト化後から連続的に冷
却して変態させた場合、冷却過程で生じたロール内部
と外殻層の温度差に起因する熱応力と、外殻層の変態膨
張に基づく変態応力が重なって、ロール内層に著しい引
張応力が発生してロールの割損を生じ易い。マルテン
サイトは、高硬度ではあるが、靱性が低いことから、圧
延ロールとして使用される際、局部的な熱応力や圧延応
力が加わるとクラックが生じ易い、等の欠点がある。
【0005】そこで、従来技術では、特に内層の厚みが
薄いスリーブ式複合ロールの外層材において、割損を防
止するため、徐冷するとともに外殻層にパーライトを析
出させて(耐摩耗性を犠牲)製造することを余儀なくさ
れていた。また、変態応力を緩和する処理法としてオー
ステンパー処理が知られており、これを利用した技術と
して、特公昭57-15647と特公昭57-15648に記載される如
く、Ni:3.0 〜5.0%、Mo:0.2 〜0.8 %含有する
複合ロール外殻層を 850℃以上の温度でオーステナイト
化処理し、引続いて急速冷却して 200〜 450℃で恒温変
態処理を行なう方法や、特開平1-191746に記載される如
く、 800〜 900℃の温度でオーステナイト化後、引続い
て 100〜 500℃/hで急速冷却して 350〜 500℃で恒温
変態を起こさせる方法が提案されている。
薄いスリーブ式複合ロールの外層材において、割損を防
止するため、徐冷するとともに外殻層にパーライトを析
出させて(耐摩耗性を犠牲)製造することを余儀なくさ
れていた。また、変態応力を緩和する処理法としてオー
ステンパー処理が知られており、これを利用した技術と
して、特公昭57-15647と特公昭57-15648に記載される如
く、Ni:3.0 〜5.0%、Mo:0.2 〜0.8 %含有する
複合ロール外殻層を 850℃以上の温度でオーステナイト
化処理し、引続いて急速冷却して 200〜 450℃で恒温変
態処理を行なう方法や、特開平1-191746に記載される如
く、 800〜 900℃の温度でオーステナイト化後、引続い
て 100〜 500℃/hで急速冷却して 350〜 500℃で恒温
変態を起こさせる方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】然しながら、従来技術
では、下記、の問題点がある。 オーステナイト化後、急冷して 325℃以上で保持した
場合、ベイナイト変態しないか、該変態が停滞して未変
態オーステナイトが残留し、等温変態後の冷却過程(室
温〜200 ℃)で未変態オーステナイトがマルテンサイト
に変態する。マルテンサイトは前述の如く靱性が低く、
局部的な熱応力や圧延応力によって、ロールの割損を生
じ易い。
では、下記、の問題点がある。 オーステナイト化後、急冷して 325℃以上で保持した
場合、ベイナイト変態しないか、該変態が停滞して未変
態オーステナイトが残留し、等温変態後の冷却過程(室
温〜200 ℃)で未変態オーステナイトがマルテンサイト
に変態する。マルテンサイトは前述の如く靱性が低く、
局部的な熱応力や圧延応力によって、ロールの割損を生
じ易い。
【0007】オーステナイト化後、急冷して直接 200
〜 300℃に保持するとベイナイト変態は完了するが、長
く伸びたベイナイトが析出し、その間隙に粗大な残留オ
ーステナイトが形成されるため、耐摩耗性と耐熱衝撃性
を損なう。更に、ベイナイト変態温度までの急冷でロー
ル径方向に大きな温度差が生じ、これに基づいて過大な
熱応力が加わるためロールの割損を生じ易い。
〜 300℃に保持するとベイナイト変態は完了するが、長
く伸びたベイナイトが析出し、その間隙に粗大な残留オ
ーステナイトが形成されるため、耐摩耗性と耐熱衝撃性
を損なう。更に、ベイナイト変態温度までの急冷でロー
ル径方向に大きな温度差が生じ、これに基づいて過大な
熱応力が加わるためロールの割損を生じ易い。
【0008】本発明は、耐摩耗性、耐熱衝撃性に優れ、
割損の虞れのない、均一組織のロール外層材を製造可能
とすることを目的とする。
割損の虞れのない、均一組織のロール外層材を製造可能
とすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の複合ロールの外
層材製造方法は、重量%で、Ni:2.0 〜 6.0%、C
r:0.8 〜 4.0%、Mo:0.2 〜 3.0%、Si:0.5 〜
1.5%を含有する合金鋳鉄のロール外層材を、850 〜 9
50℃に加熱した後、 450〜 510℃の温度域まで急冷し、
該温度域に保持した後、更に冷却し 200〜 350℃に保持
し、変態させるようにしたものである。
層材製造方法は、重量%で、Ni:2.0 〜 6.0%、C
r:0.8 〜 4.0%、Mo:0.2 〜 3.0%、Si:0.5 〜
1.5%を含有する合金鋳鉄のロール外層材を、850 〜 9
50℃に加熱した後、 450〜 510℃の温度域まで急冷し、
該温度域に保持した後、更に冷却し 200〜 350℃に保持
し、変態させるようにしたものである。
【0010】
【作用】本発明者は、複合ロールの熱処理特性を種々検
討した結果、所定の化学組成の外層材においては、オー
ステナイト化後の冷却過程でパーライト変態もベイナイ
ト変態も生じない中間温度域( 450〜 510℃)が存在す
ることを見い出し、オーステナイト化後にパーライトノ
ーズを回避する速度で急冷し、この温度域に保持すれ
ば、ベイナイト及びパーライト変態も生じず、熱応力を
弛緩できることを見い出した。更に、この温度域では、
その後の変態でオーステナイトから微細な2次炭化物が
析出(オーステナイト不安定化)し、引き続き冷却して
200〜350 ℃に保持すると、ベイナイトとオーステナイ
トが細かく分断された組織となり、耐摩耗性と耐熱衝撃
性が著しく向上することを見い出したのである。
討した結果、所定の化学組成の外層材においては、オー
ステナイト化後の冷却過程でパーライト変態もベイナイ
ト変態も生じない中間温度域( 450〜 510℃)が存在す
ることを見い出し、オーステナイト化後にパーライトノ
ーズを回避する速度で急冷し、この温度域に保持すれ
ば、ベイナイト及びパーライト変態も生じず、熱応力を
弛緩できることを見い出した。更に、この温度域では、
その後の変態でオーステナイトから微細な2次炭化物が
析出(オーステナイト不安定化)し、引き続き冷却して
200〜350 ℃に保持すると、ベイナイトとオーステナイ
トが細かく分断された組織となり、耐摩耗性と耐熱衝撃
性が著しく向上することを見い出したのである。
【0011】本発明において、外層材の化学組成を限定
した理由を以下に示す。 Ni:2.0 〜 6.0% Niは焼入れ性を向上する元素でパーライト変態が起き
る臨界冷却速度を遅くする効果があり、またベイナイト
を強化する。 2%未満ではその効果が不足し、6%を越
えて含有しても効果が飽和するばかりか、ベイナイト変
態速度を遅くする。
した理由を以下に示す。 Ni:2.0 〜 6.0% Niは焼入れ性を向上する元素でパーライト変態が起き
る臨界冷却速度を遅くする効果があり、またベイナイト
を強化する。 2%未満ではその効果が不足し、6%を越
えて含有しても効果が飽和するばかりか、ベイナイト変
態速度を遅くする。
【0012】Cr:0.8 〜 0.4% CrはNiと同様に焼入れ性を向上する元素であり、パ
ーライト変態終了温度とベイナイト変態開始温度の差を
拡げる作用を持つ。また、鉄、炭素と結合して炭化物を
形成するため、耐摩耗性が向上する。 0.8%未満では前
記の作用が不足し、 4%を超えると炭化物量が必要以上
に増大して脆化する。
ーライト変態終了温度とベイナイト変態開始温度の差を
拡げる作用を持つ。また、鉄、炭素と結合して炭化物を
形成するため、耐摩耗性が向上する。 0.8%未満では前
記の作用が不足し、 4%を超えると炭化物量が必要以上
に増大して脆化する。
【0013】Mo:0.2 〜 3.0% Moはベイナイト変態時間をあまり延長させることなく
焼入れ性を向上する。また、パーライト変態温度を上昇
させる作用があるため、CrとNiの複合添加において
パーライト変態温度とベイナイト変態温度の差を60℃以
上に拡げることができる。Moが 0.2%未満ではその効
果が不足し、 3%を超えても効果が飽和するため、経済
性の観点から上限を 3%とする。
焼入れ性を向上する。また、パーライト変態温度を上昇
させる作用があるため、CrとNiの複合添加において
パーライト変態温度とベイナイト変態温度の差を60℃以
上に拡げることができる。Moが 0.2%未満ではその効
果が不足し、 3%を超えても効果が飽和するため、経済
性の観点から上限を 3%とする。
【0014】Si:0.5 〜 2.0% 溶解時の脱酸と基地組織の靱性付与のため 0.5%以上添
加することが好ましいが2%を超えて含有させると黒鉛
過多となって耐摩耗性が低下する。
加することが好ましいが2%を超えて含有させると黒鉛
過多となって耐摩耗性が低下する。
【0015】C:2.5 〜 4.0% 2.5 %以下では炭化物量が不足して耐摩耗性が低下し、
4%を超えると、炭化物量と黒鉛量が過多となり、脆化
すると共に耐摩耗性も低下する。
4%を超えると、炭化物量と黒鉛量が過多となり、脆化
すると共に耐摩耗性も低下する。
【0016】Mn:0.3 〜 1.5% 焼入れ性を高めると共に基地を強化する効果がある。0.
3 %以上添加しなければ効果が得られない。1.5 %を超
えて含有すると硬脆化する。
3 %以上添加しなければ効果が得られない。1.5 %を超
えて含有すると硬脆化する。
【0017】P≦0.04%、S≦0.03% P、Sは共に有害成分であり少ないほど好ましいが、P
≦0.04%、S≦0.03%まで許容できる。
≦0.04%、S≦0.03%まで許容できる。
【0018】そして、本発明では、上述の如くの化学組
成からなる外層材に図1に示す如くの熱処理を施したも
のである。熱処理条件を限定した理由を以下に示す。
成からなる外層材に図1に示す如くの熱処理を施したも
のである。熱処理条件を限定した理由を以下に示す。
【0019】(1) 加熱条件: 850〜950 ℃ 外層材を 850〜 950℃に加熱するとその基地組織はオー
ステナイトに変態する。ここで、オーステナイト化温度
が 850℃より低いと、合金元素の均一化が不足し、熱処
理後の組織にムラが生ずる。 950℃を超えると組織が粗
大化して脆化する。
ステナイトに変態する。ここで、オーステナイト化温度
が 850℃より低いと、合金元素の均一化が不足し、熱処
理後の組織にムラが生ずる。 950℃を超えると組織が粗
大化して脆化する。
【0020】(2) 急冷保持条件: 450〜 510℃ 外層材を上述(1) の加熱後、 450〜 510℃まで冷却し
て、一旦保持する。 450〜 510℃までの冷却速度はパー
ライト変態を完全に阻止するため、60℃/H以上にする
ことが望ましい。 450℃〜 510℃の間は長時間保持して
も、パーライト変態やベイナイト変態を起こさないた
め、この温度に保持することによって冷却過程で発生し
たロール内部の温度差をなくし、また、熱応力を弛緩す
ることができる。 450℃〜 510℃の保持時間は 5時間以
上が好適である。 510℃より高いとパーライト変態が開
始するため、上限は 510℃とする必要があり、また、 4
50℃より低いと、少量の粗大なベイナイトが析出するた
め、ロールの硬度を低下させる原因になると共に、熱応
力弛緩効果も減少するため下限を 450℃とした。また、
450〜 510℃に保持した場合、オーステナイト中の炭素
が拡散均一化するとともに、過飽和炭素が最大径 3μm
以下の2次炭化物として析出し、オーステナイトが不安
定化するためベイナイト変態が促進される。
て、一旦保持する。 450〜 510℃までの冷却速度はパー
ライト変態を完全に阻止するため、60℃/H以上にする
ことが望ましい。 450℃〜 510℃の間は長時間保持して
も、パーライト変態やベイナイト変態を起こさないた
め、この温度に保持することによって冷却過程で発生し
たロール内部の温度差をなくし、また、熱応力を弛緩す
ることができる。 450℃〜 510℃の保持時間は 5時間以
上が好適である。 510℃より高いとパーライト変態が開
始するため、上限は 510℃とする必要があり、また、 4
50℃より低いと、少量の粗大なベイナイトが析出するた
め、ロールの硬度を低下させる原因になると共に、熱応
力弛緩効果も減少するため下限を 450℃とした。また、
450〜 510℃に保持した場合、オーステナイト中の炭素
が拡散均一化するとともに、過飽和炭素が最大径 3μm
以下の2次炭化物として析出し、オーステナイトが不安
定化するためベイナイト変態が促進される。
【0021】(3) 冷却保持条件: 200〜 350℃ 外層材を上述(2) の急冷保持後、更に冷却して 200〜 3
50℃に保持すると、オーステナイトとベイナイトが細か
く分断された基地組成が均一に形成される。保持温度が
200℃より低いとマルテンサイトが析出し、 350℃を超
えるとベイナイト変態が完了しなくなるとともに硬度の
低い粗大なベイナイトが析出するため、ロールの靱性或
いは耐摩耗性を低下させる。 200〜 350℃の保持時間は
20時間以上が好適である。
50℃に保持すると、オーステナイトとベイナイトが細か
く分断された基地組成が均一に形成される。保持温度が
200℃より低いとマルテンサイトが析出し、 350℃を超
えるとベイナイト変態が完了しなくなるとともに硬度の
低い粗大なベイナイトが析出するため、ロールの靱性或
いは耐摩耗性を低下させる。 200〜 350℃の保持時間は
20時間以上が好適である。
【0022】このようにして製造された本発明複合ロー
ルの外層材の組織は、黒鉛、共晶炭化物と基地組織がベ
イナイト、オーステナイト及び最大径 3μm 以下の2次
炭化物で構成された形となり、優れた耐摩耗性、耐熱衝
撃性、強度を示す。また、オーステナイト化後の冷却過
程で 450〜 510℃に保持されるため、ロール内部の温度
差と熱応力が解放されて、ロール割損の虞れがなくな
り、また均一な組織が得られる。ロール径方向に温度差
がつき易い大型ロールや、内層の厚みが薄いスリーブ式
複合ロール等を熱処理する場合でも、上述の 450〜 510
℃に保持した際の応力の解放によって割損の虞れがな
く、熱処理時の冷却速度に制限を受けずに均一な組織を
持つ複合ロールを製造できる。
ルの外層材の組織は、黒鉛、共晶炭化物と基地組織がベ
イナイト、オーステナイト及び最大径 3μm 以下の2次
炭化物で構成された形となり、優れた耐摩耗性、耐熱衝
撃性、強度を示す。また、オーステナイト化後の冷却過
程で 450〜 510℃に保持されるため、ロール内部の温度
差と熱応力が解放されて、ロール割損の虞れがなくな
り、また均一な組織が得られる。ロール径方向に温度差
がつき易い大型ロールや、内層の厚みが薄いスリーブ式
複合ロール等を熱処理する場合でも、上述の 450〜 510
℃に保持した際の応力の解放によって割損の虞れがな
く、熱処理時の冷却速度に制限を受けずに均一な組織を
持つ複合ロールを製造できる。
【0023】尚、本発明複合ロールに適用される内層材
は、鋳鉄や鋳鋼等何でもかまわないが、球状黒鉛鋳鉄や
黒鉛鋼等、強靱な材質を用いることが好ましい。
は、鋳鉄や鋳鋼等何でもかまわないが、球状黒鉛鋳鉄や
黒鉛鋼等、強靱な材質を用いることが好ましい。
【0024】
(実施例1)遠心鋳造法により、表1に示す化学組成の
外層材(高合金グレン鋳鉄)と内層材(黒鉛鋼)を用い
て外径:1330mm、内径: 750mm、幅: 900mmのスリーブ
式複合ロールを製造した。本ロールは内層の厚みが約10
0mm と非常に薄く、普通に冷却するとマルテンサイト変
態して割損するため、鋳造後に徐冷し、外層の基地組織
をパーライト変態させて、割損を防止した。かくして得
られた複合ロールの外層部から50× 200× 200mmの試料
を採取し、表2に示す各種熱処理を施した。試料A〜D
は本発明実施例、E〜Gは比較例である。Eは焼入れ焼
き戻しを行なって焼き戻しマルテンサイト組織とした試
料で、Fはパーライト組織試料(現行条件)、Gは中間
温度での保持工程を省略したベイナイト組織の試料であ
る。各試料から、引張り試験片、熱衝撃試験片、摩耗試
験片(φ50mm)を採取した。熱衝撃試験は、1200rpm で
回転している鋼製ローラー(φ300 )に試験片を荷重14
70N、接触時間15sec.の条件で圧接し、直接に水冷する
方式で行なった。また、摩耗試験は相手材をS45Cとした
2円盤の滑り摩耗方式で、滑り率3.9 %、相手材加熱温
度 800℃、荷重 980N、滑り距離588 mの条件で行なっ
た。
外層材(高合金グレン鋳鉄)と内層材(黒鉛鋼)を用い
て外径:1330mm、内径: 750mm、幅: 900mmのスリーブ
式複合ロールを製造した。本ロールは内層の厚みが約10
0mm と非常に薄く、普通に冷却するとマルテンサイト変
態して割損するため、鋳造後に徐冷し、外層の基地組織
をパーライト変態させて、割損を防止した。かくして得
られた複合ロールの外層部から50× 200× 200mmの試料
を採取し、表2に示す各種熱処理を施した。試料A〜D
は本発明実施例、E〜Gは比較例である。Eは焼入れ焼
き戻しを行なって焼き戻しマルテンサイト組織とした試
料で、Fはパーライト組織試料(現行条件)、Gは中間
温度での保持工程を省略したベイナイト組織の試料であ
る。各試料から、引張り試験片、熱衝撃試験片、摩耗試
験片(φ50mm)を採取した。熱衝撃試験は、1200rpm で
回転している鋼製ローラー(φ300 )に試験片を荷重14
70N、接触時間15sec.の条件で圧接し、直接に水冷する
方式で行なった。また、摩耗試験は相手材をS45Cとした
2円盤の滑り摩耗方式で、滑り率3.9 %、相手材加熱温
度 800℃、荷重 980N、滑り距離588 mの条件で行なっ
た。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】試験結果を表3に示す。現行条件のパーラ
イト組織試料Fに比べた場合、本発明実施例の試料A〜
Dは引張り強さで16〜23%向上し、耐熱衝撃性は維持さ
れて耐摩耗性が 2〜 4倍向上している。焼き戻しマルテ
ンサイト組織にした試料Eと比べた場合、本発明実施例
の試料A〜Dは耐熱衝撃性が 2倍向上し、耐摩耗性は同
等から 2倍に向上している。また、オーステナイト化
後、 450〜 510℃に一旦保持する工程を省略し、 300℃
で恒温変態させた試料G(公知の熱処理法)と、450〜
510℃で18時間保持後に 300℃で恒温変態させた本発明
実施例の試料Bを比べた場合、試料Bは試料Gに比べて
耐熱衝撃性が約 2倍、耐摩耗性が約 2.5倍に向上してお
り、いずれの比較においても本発明の有効性が明白であ
る。
イト組織試料Fに比べた場合、本発明実施例の試料A〜
Dは引張り強さで16〜23%向上し、耐熱衝撃性は維持さ
れて耐摩耗性が 2〜 4倍向上している。焼き戻しマルテ
ンサイト組織にした試料Eと比べた場合、本発明実施例
の試料A〜Dは耐熱衝撃性が 2倍向上し、耐摩耗性は同
等から 2倍に向上している。また、オーステナイト化
後、 450〜 510℃に一旦保持する工程を省略し、 300℃
で恒温変態させた試料G(公知の熱処理法)と、450〜
510℃で18時間保持後に 300℃で恒温変態させた本発明
実施例の試料Bを比べた場合、試料Bは試料Gに比べて
耐熱衝撃性が約 2倍、耐摩耗性が約 2.5倍に向上してお
り、いずれの比較においても本発明の有効性が明白であ
る。
【0028】
【表3】
【0029】また、外層の金属組織の構成を表4に示
し、その一例として、試料B、GのSEM組織をそれぞ
れ図2、3に示す。また、試料Gの光学顕微鏡組織を図
4に示す。本発明実施例の試料の場合、一例として示し
た試料Bに見られるような2次炭化物(最大径で 3μm
以下)が基地部に析出して、オーステナイトとベイナイ
トが均一に分布している。これに対し、試料Gの場合、
2次炭化物がなく、ベイナイトが密集して析出している
部分と粗大なオーステナイトが残留している部分が不均
一に分布している。つまり、本発明実施例では、2次炭
化物の存在と、それに伴って均一な組織が形成される結
果、耐摩耗性と耐熱衝撃性が著しく向上するのである。
し、その一例として、試料B、GのSEM組織をそれぞ
れ図2、3に示す。また、試料Gの光学顕微鏡組織を図
4に示す。本発明実施例の試料の場合、一例として示し
た試料Bに見られるような2次炭化物(最大径で 3μm
以下)が基地部に析出して、オーステナイトとベイナイ
トが均一に分布している。これに対し、試料Gの場合、
2次炭化物がなく、ベイナイトが密集して析出している
部分と粗大なオーステナイトが残留している部分が不均
一に分布している。つまり、本発明実施例では、2次炭
化物の存在と、それに伴って均一な組織が形成される結
果、耐摩耗性と耐熱衝撃性が著しく向上するのである。
【0030】
【表4】
【0031】(実施例2)遠心鋳造法により、表5に示
す化学組成の外層材(高合金グレン鋳鉄)と内層材(黒
鉛鋼)を用いて、外径:1330mm、内径: 750mm、幅: 9
00mmのスリーブ式複合ロールを2本溶製し、表6に示す
熱処理を行なった。試料Hは本発明実施例であり、Iは
比較例である。試料H、Iの光学顕微鏡組織を図5、図
6に示す。
す化学組成の外層材(高合金グレン鋳鉄)と内層材(黒
鉛鋼)を用いて、外径:1330mm、内径: 750mm、幅: 9
00mmのスリーブ式複合ロールを2本溶製し、表6に示す
熱処理を行なった。試料Hは本発明実施例であり、Iは
比較例である。試料H、Iの光学顕微鏡組織を図5、図
6に示す。
【0032】
【表5】
【0033】
【表6】
【0034】比較例Iのロールは熱処理終了後、放置中
に内面から割損した。外表層部のミクロ組織を確認した
結果、図6に示すように、基地組織はマルテンサイトと
少量のベイナイトで構成されていることが確認された。
即ち、比較例に適用された熱処理では、ベイナイト変態
の進行が不完全となり、 325℃で保持後の冷却過程及び
放置中に残留したオーステナイトがマルテンサイトに変
態し、このロール外層材の変態膨張によって割折したの
である。
に内面から割損した。外表層部のミクロ組織を確認した
結果、図6に示すように、基地組織はマルテンサイトと
少量のベイナイトで構成されていることが確認された。
即ち、比較例に適用された熱処理では、ベイナイト変態
の進行が不完全となり、 325℃で保持後の冷却過程及び
放置中に残留したオーステナイトがマルテンサイトに変
態し、このロール外層材の変態膨張によって割折したの
である。
【0035】本発明実施例Hのロールは割損を起こすこ
となく、健全に製造された。外表層部のミクロ組織を確
認した結果、図5に示すようにベイナイトが均一に析出
しており、良好な組織が得られていることが明らかにな
った。
となく、健全に製造された。外表層部のミクロ組織を確
認した結果、図5に示すようにベイナイトが均一に析出
しており、良好な組織が得られていることが明らかにな
った。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、合金鋳
鉄の変態特性を把握し、所定量の合金を含有した合金鋳
鉄を外層材とした複合ロールを、オーステナイト化後の
冷却過程で 450〜 510℃のベイナイト、パーライト変態
しない温度に一旦保持して、オーステナイト中の炭素を
均一分散させるとともに過飽和炭素を2次炭化物として
析出させ、その後冷却して 200〜 330℃で保持する間に
均一にベイナイトを析出させるようにした。従って、耐
摩耗性、耐熱衝撃性に優れ、割損の虞れのない、均一組
織のロール外層材を製造することができる。
鉄の変態特性を把握し、所定量の合金を含有した合金鋳
鉄を外層材とした複合ロールを、オーステナイト化後の
冷却過程で 450〜 510℃のベイナイト、パーライト変態
しない温度に一旦保持して、オーステナイト中の炭素を
均一分散させるとともに過飽和炭素を2次炭化物として
析出させ、その後冷却して 200〜 330℃で保持する間に
均一にベイナイトを析出させるようにした。従って、耐
摩耗性、耐熱衝撃性に優れ、割損の虞れのない、均一組
織のロール外層材を製造することができる。
【図1】図1は本発明の熱処理パターンの概略を示す模
式図である。
式図である。
【図2】図2は本発明実施例(B)の金属組織を示す50
00倍のSEM写真である。
00倍のSEM写真である。
【図3】図3は比較例(G)の金属組織を示す5000倍の
SEM写真である。
SEM写真である。
【図4】図4は比較例(G)の金属組織を示す 400倍の
光学顕微鏡写真である。
光学顕微鏡写真である。
【図5】図5は本発明実施例(H)の金属組織を示す 4
00倍の光学顕微鏡写真である。
00倍の光学顕微鏡写真である。
【図6】図6は比較例(I)の金属組織を示す 400倍の
光学顕微鏡写真である。
光学顕微鏡写真である。
Claims (1)
- 【請求項1】 重量%で、Ni:2.0 〜 6.0%、Cr:
0.8 〜 4.0%、Mo:0.2 〜 3.0%、Si:0.5 〜 1.5
%を含有する合金鋳鉄のロール外層材を、850 〜 950℃
に加熱した後、 450〜 510℃の温度域まで急冷し、該温
度域に保持した後、更に冷却し 200〜 350℃に保持し、
変態させることを特徴とする複合ロールの外層材製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24142892A JP2810907B2 (ja) | 1992-08-19 | 1992-08-19 | 複合ロールの外層材製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24142892A JP2810907B2 (ja) | 1992-08-19 | 1992-08-19 | 複合ロールの外層材製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0665632A true JPH0665632A (ja) | 1994-03-08 |
JP2810907B2 JP2810907B2 (ja) | 1998-10-15 |
Family
ID=17074157
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP24142892A Expired - Fee Related JP2810907B2 (ja) | 1992-08-19 | 1992-08-19 | 複合ロールの外層材製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2810907B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8857576B2 (en) | 2011-12-27 | 2014-10-14 | Akebono Brake Industry Co., Ltd. | Disc brake apparatus |
-
1992
- 1992-08-19 JP JP24142892A patent/JP2810907B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8857576B2 (en) | 2011-12-27 | 2014-10-14 | Akebono Brake Industry Co., Ltd. | Disc brake apparatus |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2810907B2 (ja) | 1998-10-15 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
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