JPH0657286A - 脱硫された油脂又は脂肪酸エステルの製造法 - Google Patents

脱硫された油脂又は脂肪酸エステルの製造法

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JPH0657286A
JPH0657286A JP3245683A JP24568391A JPH0657286A JP H0657286 A JPH0657286 A JP H0657286A JP 3245683 A JP3245683 A JP 3245683A JP 24568391 A JP24568391 A JP 24568391A JP H0657286 A JPH0657286 A JP H0657286A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 水素化反応によりアルコールを製造する為の
原料として極めて好適な脱硫された油脂又は脂肪酸エス
テルを歩留りよく製造できる方法を提供する。 【構成】 油脂又は脂肪酸エステルを、水素又は水素と
不活性ガスとの混合ガス雰囲気下、一般式(I)で示さ
れる触媒と接触させて脱硫された油脂又は脂肪酸エステ
ルを得る。 Ni・Cux Oy (I) 〔式中、x はNiを1とした場合のCuの原子比を示し、 x
=0.02〜8である。ここで yはNi及びCuの原子価要求を
満足する酸素の原子比である。〕

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、脱硫された油脂又は脂
肪酸エステルの製造方法に関するものであり、詳しく
は、水素化反応によりアルコールを製造する為の原料と
して極めて好適な、脱硫された油脂又は脂肪酸エステル
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】油脂
(本発明において、油脂とはトリグリセライドを言
う。)およびそれから誘導される脂肪酸エステル(本発
明において、脂肪酸エステルとは、トリグリセライド以
外の、脂肪酸と低級又は高級アルコールとのエステルを
いう。)は、通常少なくとも数ないし数10ppm の硫黄分
を含有している。これらの油脂又は脂肪酸エステルを原
料油として、エステル還元触媒の存在下、水素で接触還
元し、アルコールを製造する場合、原料油中に含まれる
微量の硫黄化合物は触媒毒として作用し、エステル還元
触媒の活性寿命を著しく低下させる。
【0003】そこで、本発明者らはアルコール製造原料
となる油脂又は脂肪酸エステル中に含まれる硫黄分濃度
を低減すべく、種々の精製処理方法について検討を加え
たところ、以下のような問題点が明らかとなった。
【0004】(1) 蒸留精製処理の問題点 天然油脂から常法によって誘導した脂肪酸メチルエステ
ルを蒸留した場合、90%収率で硫黄化合物は初期含有濃
度の10%に、また98%収率で20%に低減可能である。し
かし、通常入手あるいは製造し得る脂肪酸メチルエステ
ルで合目的レベルに硫黄化合物濃度を低減しようとする
場合、5%以上の蒸留ロスは不可避であり、また原料ア
ルキル分布も大きく変化するという問題が生じる。ま
た、油脂又は脂肪酸と高級アルコールとのエステルの蒸
留の場合、これらは沸点が高いので、蒸留方法によって
これらに含有される硫黄化合物を除去することは、実質
的に困難であった。
【0005】(2) 脱硫触媒による精製処理の問題点 モリブデン又はタングステン系触媒は、石油精製の分野
において、軽油あるいは重油中の硫黄化合物の除去に使
用されている(触媒プロセス化学、東京化学同人出版)
。しかし、これらの触媒は、脱硫活性を得るために
は、 300℃以上の高温を必要とする。このような高温で
油脂や脂肪酸エステルを水素化処理した場合、エステル
基の水素化分解に伴い、酸価(AV) の上昇や原料分解物
が著しく増加するという問題が生じる。
【0006】(3) その他の精製処理(吸着剤処理、スチ
ーミング処理及びアルカリ処理)の問題点 これらの方法では、充分な処理を行っても3ないし5pp
m の硫黄分が残留し、所望の硫黄分濃度(S含有量0.6p
pm以下) の油脂又は脂肪酸エステルが得られない。
【0007】
〔式中、x はNiを1とした場合のCuの原子比を示し、 x=0.02〜8である。ここで yはNi及びCuの原子価要求を満足する酸素の原子比である。〕
尚、本発明において、使用される脂肪酸エステルについ
ては、上記の特定のニッケル−銅触媒存在下、特定条件
にて処理する工程に先立って、予め蒸留した脂肪酸エス
テルを使用してもよい。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。油脂又は
それから誘導される脂肪酸エステル(ここで脂肪酸エス
テルとは、脂肪族カルボン酸の低級又は高級アルコール
エステルをいう)を、エステル還元触媒の存在下、水素
で接触還元し対応する脂肪族アルコールを製造する場
合、原料油の品質により触媒寿命が大きく影響を受け
る。そこで、本発明者らはこれら原料油中の不純物で、
エステル還元触媒の寿命に大きく影響を与える物質につ
いて詳細に検討したところ、触媒毒として従来公知の硫
黄化合物、ハロゲン化物以外に遊離の脂肪酸が極めて強
い触媒毒性を示すことを見い出した。硫黄化合物および
ハロゲン化物は一般に水素化反応用触媒の触媒毒として
良く知られており、反応に際してはこれらの触媒毒を極
力低減することが望ましい。ここで、通常入手し得る原
料油はハロゲン化物をごく微量しか含有しないため、硫
黄化合物濃度の低減が最も重要となる。また、工業的に
用いられているエステル還元触媒は銅−クロム系あるい
は銅−亜鉛系触媒であり、このため遊離の脂肪酸による
腐食を受けやすい。従って、原料油中の脂肪酸濃度も極
力低減することが重要である。
【0009】そこで、原料油中の硫黄化合物および遊離
脂肪酸の許容濃度を調べるため、ヤシ油あるいはパーム
核油から常法によって誘導されたメチルエステルを原料
に、銅−クロムおよび銅−亜鉛触媒を用い、検討を行っ
た。ここで、比較には上記原料を蒸留した(蒸留収率90
%) 、硫黄分が 0.3ないし0.4ppmで、酸価 (AV,KOHmg/
g)が 0.1以下のメチルエステルを使用した。この結
果、硫黄分が0.6ppm以下、また酸価 (AV) が2以下の原
料であれば、蒸留メチルエステルとほぼ同等の触媒寿命
を確保できることを見い出した。従って、精製処理後に
要求される原料油の品質レベルは硫黄分濃度が0.6ppm以
下、且つ酸価(KOHmg/g)が2以下である。
【0010】本発明にて使用される触媒は前記式(I)
で示されるものであり、式(I)において、 x=0.02〜
8である。x がこの範囲を下廻る場合は副生する脂肪酸
の量が多くなり、一方、x がこの範囲を上廻る場合は脱
硫性の面で不利となる。本発明において使用される式
(I)で示される触媒は、通常、担体に担持あるいは担
体と混合して用いられる。担体成分としては、シリカ、
アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、珪藻土、活
性白土、チタニア、ジルコニア、活性炭などの公知の担
体が用いられる。式(I)で示される触媒と担体との重
量比は
【0011】
【数1】
【0012】の間が好ましく、担体量が多くなりすぎる
と有効Ni量が減少し所望の性能が得られなくなる。上記
触媒の製法は特に限定されず、共沈澱法、含浸法、ある
いは均一混練法等により得られる混合物を焼成して調製
される。なお、これらの調製法は、必要に応じて組み合
わせて使用することもできる。
【0013】これらの触媒は、油脂又は脂肪酸エステル
の処理反応方式に応じて、粉末触媒あるいは成形された
触媒から適宜選ばれ、使用に供される。更に、これらの
触媒は水素で還元活性化し、使用する。また、場合によ
っては公知の方法で予め還元活性化および安定化処理を
施した触媒を、そのままあるいは再度還元活性化した後
に、使用しても良い。
【0014】本発明において、油脂又は脂肪酸エステル
の処理反応方式については、連続、半回分あるいは回分
のいずれの方法も採用可能であるが、大量に処理を行う
場合は、連続方式が適する。連続方式の場合、固定床、
流動床、移動床方式等、例えば石油精製における接触脱
硫、接触分解、もしくは接触改質等、広く実用化されて
いる反応方式が適用できるが、工程の簡略化の点におい
て、固定床方式がより好ましい。
【0015】油脂又は脂肪酸エステルは、前記式(I)
で示される脱硫触媒の存在下、次の様な条件のもとで処
理される。例えば、連続反応方式においては、処理流通
ガスは水素又は水素と不活性ガスとの混合ガスであり、
不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウム、メタン
等が挙げられる。処理圧力は 0.1〜500 kg/cm2 であ
る。この場合、脱硫活性および原料油の分解抑制の点に
おいて、1〜300 kg/cm2 がより好ましい。水素ガス雰
囲気下、圧力が高くなると脱硫に伴い、原料油の水素化
分解副生成物が多くなる。また、処理温度は30〜250 ℃
の範囲内において決定されるが、温度が低い場合、脱硫
活性の低下が認められ、高温になると原料油の熱分解副
生成物、また、水素雰囲気下では水素化分解副生成物が
多くなるため、50〜250 ℃の範囲で処理を行うことが望
ましい。処理原料油である油脂又は脂肪酸エステルの供
給速度は、1時間当たりの反応塔容積比、つまり液空間
速度(以下、LHSVという)で、 0.1〜5.0 Hr-1とするの
が好ましいが、小さくなると生産性の点で不利となる。
【0016】固定床連続反応方式においては、処理され
る原料油は、流通ガスとともに上向き並流(アップフロ
ー方式)あるいは下向き並流(トリクルフロー方式)、
もしくは向流(カウンターフロー方式)のいずれの方式
で流通させても良い。しかし、液流量あるいはガス流量
が多い場合は、向流方式は不利であり、また、上向き並
流方式においても、触媒強度の必要性や流通ガスの圧力
損失といった点で不利となる。この場合、下向き並流方
式が好ましく採用される。
【0017】本発明において開示された方法に従い、得
られた硫黄分濃度0.6ppm以下および酸価 (AV) 2以下の
油脂又は脂肪酸エステルは、次に銅系のエステル還元触
媒を用いて水素で接触還元することにより対応するアル
コールへ誘導される。銅系のエステル還元触媒とは、例
えば銅−クロム、銅−亜鉛、銅−鉄−アルミニウム、銅
−シリカ等の公知の触媒に代表される銅を主成分とする
触媒を指す。エステル還元反応は、上記触媒の存在下、
液相懸濁床あるいは固定床のいずれの反応方式で行って
も良い。
【0018】尚、本発明において使用される油脂として
は、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、
ナタネ油、牛脂、豚脂もしくは魚油等の動植物油脂又は
これらの硬化油が挙げられる。また、本発において使用
される脂肪酸エステルにおいて、酸部分としては、ラウ
リン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、
エイコサン酸、ドコサン酸、オレイン酸、エルカ酸等が
挙げられ、アルコール部分としては、メタノール、エタ
ノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブ
タノール、2−ブタノール、2−エチルヘキサノール、
2,2 −ジメチル−1,3 −プロパンジオール、エチレング
リコール、プロピレングリコール、1,4 −ブタンジオー
ル、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、
シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジエチレン
グリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が
挙げられる。
【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでは
ない。
【0020】触媒調製例I(触媒Aの調製) 撹拌機、温度計を付した10リットルセパラブルフラスコ
にイオン交換水3500g、硝酸ニッケル6水和物 790g、
硝酸銅3水和物34.5gを入れ60℃で溶解した後、担体成
分としてゼオライト (モレキュラーシーブ13X) 169gを
加え、90℃迄昇温した。ここに10%炭酸ソーダ水溶液を
滴下し、pH=8のスラリーを得た。得られた沈澱物を濾
過、水洗、乾燥した後、 600℃で1時間焼成を行ない、
ゼオライトを含むニッケル−銅の複合酸化物を得た。か
くして得られた酸化物の組成は元素分析より次の組成を
有していた。 NiO:CuO:ゼオライト=53%:3%:44% (Cu/Niの原
子比=0.05) この複合酸化物を触媒Aとした。
【0021】触媒調製例II〜V(触媒B〜Eの調製) 調製例I記載の方法に従い、硝酸ニッケル6水和物と硝
酸銅3水和物の仕込み量だけを変えて表1の組成の複合
酸化物(触媒B〜D)を得た。尚、比較のために硝酸銅
3水和物を入れずに、硝酸ニッケル6水和物と担体とを
用いた複合酸化物を併わせて調製した(触媒E)。
【0022】
【表1】
【0023】実施例1〜4及び比較例1 硫黄分濃度が3.0ppmのパーム核脂肪酸メチルエステルを
用いて、触媒A〜Eの脱硫評価を次の条件で行った。 <脱硫評価>触媒をベントナイトを用いて押し出し成形
し、長さ5mm×直径2mmのヌードル状成形体とした。得
られた成形触媒15gをオートクレーブ式バスケットリア
クターにラウリルアルコール 200gと共に仕込み、水素
圧 230kg/cm2(ゲージ圧) 、温度 270℃、水素流通下で
4時間還元活性化を行った。還元終了後、ラウリルアル
コールとパーム核脂肪酸メチルエステル(硫黄分=3.0p
pm、AV=0.24) 200gに替え、水素圧 230kg/cm2(ゲー
ジ圧) 、温度200℃、撹拌速度900rpm、水素流通下にて
4時間反応を行い、硫黄分濃度は、RosemountAnalytica
l, Inc. 製 Dohrmann 型低濃度硫黄分析計(System 70
1) により測定した。又、酸価の測定も行った。結果を
表2に示した。
【0024】実施例5及び比較例2 触媒C及びEを用いて、硫黄分を4.0ppm含有する精製パ
ーム核油 (AV=0.07)の脱硫処理を実施例1と同様な方
法により行った。結果を表2に示した。
【0025】
【表2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塚田 清 和歌山県和歌山市坂田733−17

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 油脂又は脂肪酸エステルを、水素又は水
    素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下、一般式(I)で
    示される触媒と接触させることを特徴とする脱硫された
    油脂又は脂肪酸エステルの製造法。 Ni・Cux Oy (I) 〔式中、x はNiを1とした場合のCuの原子比を示し、 x
    =0.02〜8である。ここで yはNi及びCuの原子価要求を
    満足する酸素の原子比である。〕
  2. 【請求項2】 脱硫された油脂又は脂肪酸エステルの酸
    価(KOHmg/g)が2以下であり、且つ該油脂又は脂肪酸エ
    ステル中の硫黄分濃度が0.6ppm以下である、請求項1記
    載の脱硫された油脂又は脂肪酸エステルの製造法。
  3. 【請求項3】 油脂又は脂肪酸エステルと上記一般式
    (I)で示される触媒との接触を、触媒を充填した固定
    床を用いて、連続的に行なうことを特徴とする請求項1
    又は2記載の脱硫された油脂又は脂肪酸エステルの製造
    法。
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