JPH0649981Y2 - 電磁弁 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は電磁弁に関し、特に圧縮空気等の圧力流体の供
給を制御する方向制御弁に適用して有効な技術に関す
る。

［従来の技術］ 電磁弁の構造としては、ばね部材によりたとえば弁を閉
じる方向のばね力を付勢し、励磁用コイルによって励磁
され電磁弁により可動鉄心を吸引して該可動鉄心に設け
られた弁を開放させるようにしたものが一般的である。
弁をたとえば閉じる方向に付勢するために永久磁石を利
用し、励磁用コイルに通電して弁を開く場合には可動鉄
心を吸引するようにして、可動鉄心を励磁用コイルと永
久磁石との磁力によって作動される構造のものが考えら
れる。

［考案が解決しようとする課題］ このように永久磁石を用いると、可動鉄心と永久磁石と
の対向部側が同極となる方向に励磁用コイルに通電する
ことにより、可動鉄心は励磁用コイルの電磁力によって
弁を開く方向に吸引されるとともに永久磁石の磁気反発
力によっても作動され、励磁用コイルの消磁時には、可
動鉄心が永久磁石の磁気吸引力により前述とは逆の方向
たとえば弁を閉じる方向に作動されるので、可動鉄心の
作動用ばねを不要にすることができ、さらに励磁用コイ
ルの消費電力の効率化と弁体の高速駆動化とを図ること
ができる。

しかしながら、このような構造の電磁弁においては、励
磁用コイルに通電して可動鉄心を駆動する場合に可動鉄
心の全ストロークにわたって磁気吸引力が大きく変化し
ないことが好ましい。可動鉄心が励磁用コイルの作動に
より前進端に接近するに従って磁気力が急激に大きくな
ると、可動鉄心がソレノイドヨークに当たる際の衝撃
や、弁体がたとえば弁座に当接する際の衝撃が大きくな
り、電磁弁の耐久性が損なわれることになる。

本考案の目的は、ばねを適用せずに可動鉄心の作動を可
能とするとともに、可動鉄心がソレノイドヨークに当接
する際における衝撃を緩和して電磁弁の耐久性の向上を
図ることができる電磁弁を提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 本考案の電磁弁は、可動鉄心の後端部に形成された大径
のフランジ部に対向して設けられ、励磁用コイルが通電
されないときに可動鉄心を後退させる方向に吸引する永
久磁石と、励磁用コイルの端部に前記フランジに臨ませ
て設けられ、励磁用コイルが通電されたときに可動鉄心
を前進させる方向に変位させるソレノイドヨークとを有
し、ソレノイドヨークをフランジ部が挿通可能なように
筒形に形成し、励磁用コイルに通電してソレノイドヨー
クで可動鉄心を前進させる方向に吸引する際にソレノイ
ドヨークで磁化された可動鉄心に対して反発力が発生す
るように永久磁石の極性の方向を設定したことを特徴と
する。フランジ部を介して永久磁石に対向する内向き鍔
部をソレノイドヨークに形成するようにしても良い。

［作用］ 前記構成の電磁弁にあっては、励磁用コイルの消磁時に
は、可動鉄心が永久磁石の磁気吸引力により戻されるの
で、可動鉄心を戻すためのばね部材が不要になる。ま
た、可動鉄心のフランジ部と永久磁石との対向部側が同
極となるように励磁用コイルに通電すると、可動鉄心が
その励磁用コイルの電磁力によって吸引されるとともに
永久磁石の磁気反発力によっても作動され、励磁用コイ
ルの電力の効率化と弁体の高速駆動化とを図ることがで
きる。

そして、ソレノイドヨークが筒形とされているので、可
動鉄心が永久磁石に接近してソレノイドヨークから離れ
ていても充分な磁気力を可動鉄心に作用させることがで
きるのみならず、可動鉄心が前進移動するに伴ってソレ
ノイドヨーク内にフランジ部が挿入され、可動鉄心が前
進端に接近した場合における磁気吸引力を急激に大きく
させることが防止され、可動鉄心を前進させる際におけ
る衝撃力を小さくすることができ、電磁弁の耐久性の向
上を図ることができる。

［実施例］ 第１図は本考案の一実施例である電磁弁の断面図、第２
図（Ａ）〜（Ｃ）は電磁弁に用いられるソレノイドヨー
クの形状を示す断面図、第３図は本考案の電磁弁におけ
る可動鉄心のストロークと磁気吸引力との関係を示すグ
ラフである。

本実施例の電磁弁は、ポペット形の電磁弁に適用され、
駆動部１と主弁部２とから構成されている。駆動部１は
磁性材からなるハウジング３を備え、このハウジング３
が上側鉄心部3aと外側鉄心部3bと下側鉄心部3cとから形
成されている。

ハウジング３内の下側には、ソレノイド４（励磁用コイ
ル）がボビン4aに巻装されて配設されている。ボビン4a
の上側の段部には、ソレノイドヨーク５が固定されてい
る。このソレノイドヨーク５は、ソレノイド４側に内向
き鍔部5aを有する筒形形状とされており、内向き鍔部5a
は、ソレノイドヨーク５の円筒部の内周壁の下端部から
軸心側に向かって環状に形成されている。

ハウジング３内の上側にはリング状の永久磁石６が配設
されている。永久磁石６の下面には永久磁石用のヨーク
７が固定され、ソレノイド部用のヨーク５と所定の間隔
をおいて対向している。

ソレノイド４の中空円筒部には、可動鉄心８がその軸方
向に沿って変位自在に挿入されており、この可動鉄心８
の図中上側の大径のフランジ部8aの端面は永久磁石６に
ヨーク７を介して対向している。この可動鉄心８の上端
側のフランジ部8aは、ソレノイドヨーク５とヨーク７と
の間に位置され、ソレノイドヨーク５は図示するよう
に、励磁用コイル４の端部にフランジ部8aに臨ませて設
けられている。

ソレノイドヨーク５の鍔部5aはフランジ部8aを介して永
久磁石６に対向しており、フランジ部8aよりも大径の筒
部内にフランジ部8aが軸方向に挿入されるように可動鉄
心が変位される。

したがって、ソレノイド４の消磁時には、永久磁石６の
磁気吸引力により、可動鉄心８がヨーク７側つまり後退
方向に変位されて第１図に示すようにそのフランジ部8a
がヨーク７に吸着される構造とされている。

他方、ソレノイド４の励磁時には、ソレノイド４の磁気
吸引力により可動鉄心８が永久磁石６から離れる方向つ
まり前進側に変位されてそのフランジ部8aが該ヨーク５
に吸着されるようになっている。また、このソレノイド
４への通電に際し、ソレノイド４の磁化力によってフラ
ンジ部8aの端面がヨーク７の磁極と同極となる方向にソ
レノイド４に通電することにより、可動鉄心８がその永
久磁石６の磁気反発力によっても前進側に変位されるよ
うになっている。

可動鉄心８の下面には、弾性材からなる弁体９が埋設さ
れており、主弁部２の両側面には、入口ポート10と出口
ポート11とがそれぞれ開設され、これらの入口ポート10
と出口ポート11とを連通させる弁孔12が弁体９により開
閉されるようになっている。

次に、図示する電磁弁の動作について説明すると、第１
図はソレノイド４の消磁時の状態を示しており、この状
態においては、永久磁石６の磁気吸引力により、可動鉄
心８がヨーク７側に後退してそのフランジ部8aの端面が
ヨーク７に接触している。このときには、可動鉄心８の
変位により弁孔12が開かれることになり、入口ポート10
と出口ポート11とが連通される。

次に、この状態からソレノイド４に通電すると、ソレノ
イド４の磁気吸引力により可動鉄心８がソレノイドヨー
ク５側に変位されてそのフランジ部8aがヨーク５の内向
き鍔部5aに吸着される。

このソレノイド４の通電に際して、ソレノイド４の磁化
力によってフランジ部8a側がヨーク７の磁極と同極とな
る方向にソレノイド４に通電すると、可動鉄心８がその
永久磁石６の磁気反発力によってもソレノイドヨーク５
側に変位する。すなわち、たとえば、ヨーク７側がＳ極
とすると、ソレノイドヨーク５側がＮ極となるようにソ
レノイド４に通電すると、このソレノイドヨーク５側の
Ｎ極により可動鉄心８のフランジ部8aがＳ極となり、可
動鉄心８にはソレノイド４の磁気吸引力の他に永久磁石
６の磁気反発力によっても前進方向の磁力が加えられ
る。これにより、可動鉄心８が前進する方向に変位され
ると、弁孔12が弁体９によって閉じられ、入口ポート10
と出口ポート11との連通状態が遮断される。このように
本実施例の電磁弁はソレノイド４への通電と非通電との
繰り返しにより、可動鉄心８が第１図の上下方向に変位
して弁孔12の開閉動作がなされる。

この場合に、本実施例の電磁弁によれば、可動鉄心８に
はソレノイド４の磁気吸引力の他に、永久磁石６の磁気
反発力によっても前進方向の磁力が加えられる一方、永
久磁石６の磁気吸引力によってヨーク７側に作動される
ので、可動鉄心８の作動用ばねを不要にすることができ
る。またソレノイド４への消費電力の軽減化と弁体９の
高速駆動化とを図ることができる。さらに、ばね部材が
不要とされるので、ばね部材の不良に起因する弁体９の
作動の不確実性を防止することができ、電磁弁の作動信
頼性の向上を図ることができる。

第３図は第２図に示したそれぞれの断面形状のソレノイ
ドヨークについて可動鉄心８を前進方向に移動させたと
きにおけるストロークの変化とソレノイドヨークによる
磁気吸引力との関係を示すグラフである。

第２図（Ａ）に示した平板形状の断面のソレノイドヨー
ク13を用いた場合における磁気吸引曲線は第３図におい
て実線で示す通りであり、ストロークがゼロつまり可動
鉄心８が前進端側に接近すると磁気吸引力が急激に大き
くなり、ストロークが大きくなると磁気吸引力が大幅に
減少することが示されている。第２図（Ａ）に示す形状
のソレノイドヨーク13は当初開発されたものであり、可
動鉄心８は強い衝撃力でソレノイドヨーク13に当接した
り、弁体９が弁座に強い衝撃力で当接することになる。

第１図に示す電磁弁のソレノイドヨーク５は筒形とさ
れ、この筒形のソレノイドヨーク５内に可動鉄心８のフ
ランジ部8aがその軸方向に沿って変位自在に挿入されて
変位される構造とされており、第３図において一点鎖線
で示すような磁気吸引力の特性が得られる。

つまり、ストロークが大きい場合つまり可動鉄心が後退
側に位置している場合における磁気吸引力を比較的大き
くしつつ、ストロークがゼロに近づいた場合における磁
気吸引力を第２図（Ａ）に示す断面形状のものに比較し
て小さくすることができる。これは、ソレノイドヨーク
５を筒形に形成することによって、可動鉄心８が前進す
るとフランジ部8aに対して径方向の磁力が発生すること
になり、平板形状のソレノイドヨーク13を用いた場合よ
りも、スロトークがゼロに近づくと、磁気吸引力がより
小さくなると考えられる。したがって、可動鉄心８を前
進させる場合における変位を迅速に行わせるとともに、
可動鉄心８のソレノイドヨーク５に対する衝撃力や弁体
９の弁座に対する衝撃力を小さくすることができ、電磁
弁の耐久性の向上を図ることができる。

第２図（Ｃ）に示すソレノイドヨーク14は、本考案の電
磁弁に適用されるソレノイドヨークの変形例を示すもの
である。このソレノイドヨーク14は、全体が筒形とさ
れ、内向き鍔部5aを有していないことが第１図および第
２図（Ｂ）に示すソレノイドヨーク５と異なる。

このソレノイドヨーク14を用いた電磁弁の磁気吸引曲線
は、第３図において二点鎖線で示されており、この場合
にはストロークが大きい場合における磁気吸引力を低下
させることなく、ストロークがゼロに接近した場合にお
ける磁気吸引力をより小さくすることができ、全ストロ
ークにわたる磁気吸引力の差をより小さくすることがで
きる。

以上、本考案を実施例に基づき具体的に説明したが、本
考案は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨
を逸脱しない範囲で種々変更可能である。

たとえば、本実施例における電磁弁は、ポペット形の電
磁弁に適用されているが、本考案における電磁弁はポペ
ット形の電磁弁に限定されるものではなく、たとえばス
プール形の電磁弁等に適用することも可能である。ま
た、本考案の電磁弁は、たとえば比例電磁形の電磁弁等
に適用することも可能である。

［考案の効果］ 本考案の電磁弁の構造によれば、以下の効果を得ること
ができる。

（１）．励磁用コイルの消磁時には永久磁石の磁力によ
って可動鉄心が戻されるので、可動鉄心に接続された弁
体を戻すためのばねが不要となる。

（２）．永久磁石に通電すると、可動鉄心がその励磁用
コイルの電磁力によって吸引されるとともに永久磁石の
磁気反発力によっても作動され、しかも吸引開始時にお
けるフランジ部とソレノイドヨークとの間のストローク
が大きい場合でも比較的大きな磁気吸引力を作用させる
ことができるので、励磁用コイルの電力の効率化と弁体
の高速駆動化とを図ることができる。

（３）．励磁用コイル側のソレノイドヨークが筒形とさ
れ、このソレノイドヨーク内に可動鉄心の一端部側が軸
方向に沿って挿入されることにより、平板形状のヨーク
を用いた電磁弁に比べ、可動鉄心が前進端側に接近した
状態での励磁コイルの磁気吸引力が減少されるので、可
動鉄心の衝撃力を小さくすることができ、このため、電
磁弁の耐久性の向上を図ることができる。

（４）．可動鉄心を永久磁石に吸着保持させて電磁弁を
搬送することができるので、搬送時における可動鉄心の
振動による破損を確実に防止することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例である電磁弁を示す断面図、
第２図（Ａ）〜（Ｃ）は電磁弁に用いられるソレノイド
ヨークを示す断面図、第３図は本考案の電磁弁における
可動鉄心のストロークと磁気吸引力との関係を示すグラ
フである。 １……駆動部、２……主弁部、３……ハウジング、3a…
…上側鉄心部、3b……外側鉄心部、3c……下側鉄心部、
４……ソレノイド（励磁用コイル）、５……ソレノイド
ヨーク、5a……鍔部、６……永久磁石、７……ヨーク、
８……可動鉄心、8a……フランジ部、９……弁体、10…
…入口ポート、11……出口ポート、12……弁孔、13,14
……ソレノイドヨーク。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】励磁用コイルによって軸方向に移動する可
   動鉄心を有し、この可動鉄心に接続された弁体を作動さ
   せる電磁弁であって、 前記可動鉄心の後端部に形成された大径のフランジ部に
   対向して設けられ、前記励磁用コイルが通電されないと
   きに前記可動鉄心を後退させる方向に吸引する永久磁石
   と、 前記励磁用コイルの端部に前記フランジに臨ませて設け
   られ、前記励磁用コイルが通電されたときに前記可動鉄
   心を前進させる方向に変位させるソレノイドヨークとを
   有し、 前記ソレノイドヨークを前記フランジ部が挿通可能なよ
   うに筒形に形成し、 前記励磁用コイルに通電して前記ソレノイドヨークで前
   記可動鉄心を前進させる方向に吸引する際に前記ソレノ
   イドヨークで磁化された前記可動鉄心に対して反発力が
   発生するように前記永久磁石の極性の方向を設定したこ
   とを特徴とする電磁弁。
2. 【請求項２】前記ソレノイドヨークは前記永久磁石に前
   記フランジ部を介して対向する内向き鍔部を有している
   ことを特徴とする請求項１記載の電磁弁。