JPH0648094Y2 - 内燃機関におけるブローバイガスのオイル分離装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、内燃機関において、機関内部に発生するブロ
ーバイガスのオイル分離装置に関するものである。

〔従来の技術〕

内燃機関においては、機関の作動中、吸排気弁のバルブ
ガイド部における間隙やピストンとピストンリングとの
間の間隙等から燃焼ガスが漏れ出てくることがその構造
上やむを得ない。

このガス（ブローバイガス）中にはCOをはじめ有害物質
を多く含んでおり、これを大気中に直接，放出すること
は大気汚染につながることよりそのブローバイガスを、
機関の吸気行程時に生ずる負圧を利用して吸気系に還流
し燃焼室で再燃焼させる方式が採用されている。

この場合、ブローバイガスには、機関内部を通過する
際、クランク機構や動弁機構による撹拌で多量のオイル
ミストを含んでおり、これをそのまま吸気系に還流した
のでは、エンジンオイルの消費量が増大する問題があ
り、また吸入空気中にオイルを含むことは、排気ガス中
にタール等の不燃性物質を含み触媒作用を劣化させて排
気ガス浄化作用にも悪影響を与える。

そこで、上述のブローバイガス還流に際しては通常、そ
の還流経路においてブローバイガス中に含まれるオイル
を分離して機関内部に戻すオイルセパレータを備えてお
り、従来、この種のオイルセパレータを、ロッカカバー
内に内蔵したものとしては実開昭60-24806号公報に記載
のものが知られている。

また他の先行技術として第５図，第６図に示すようにオ
イルセパレータ３を、水平対向形エンジンのシリンダヘ
ッド１の頭部に固定されたロッカカバー２の上面に形成
したものも提案されている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

ところで上述の第５図，第６図に示される先行技術で
は、セパレータ室３の底壁となるロッカカバー２の上壁
面2aに、比較的大きく開口された左右２個のブローバイ
ガス流通口4,4と、オイルの戻し穴５とが開口され、オ
イルミストを含んだブローバイガスが上記ガス流通口4,
4より上昇してセパレータ室３内に流入し、その室内を
迂回流通する過程においてオイルが分離され、この分離
されたオイルは、底壁の中央凹部６内に溜りその底部に
開口されたオイル戻し穴５よりロッカカバー２内に戻さ
れる形態に構成されるが、このように構成される場合、
次のような問題点があった。

すなわち上述のオイル戻し穴５は、ブローバイガスの流
出通路となるガス流通口4,4の開口面と同じセパレータ
室３の底壁面（ロッカカバーの上壁面2a）に開口される
関係から、この戻し穴５からもブローバイガスが噴き出
す現象が起きて上述の底壁中央凹部５内に溜るオイル
を、上側に吹き返し、これによりオイルの分離機能が低
下するという問題点が起る。

このような現象を防止する一般的な手段としては、第６
図に示されるようにオイル戻し穴５の開口部を挟んでそ
の下側のロッカカバー２内や、上側のセパレータ室３内
に、二重，三重のバッフル板7,8,9を設けた構成として
オイルの吹き返しを防止することが対策されるが、かか
る対策では、セパレータ室３内の構成が非常に複雑な形
状となって加工コストが高価となる上に、またその対策
では、ブローバイガスの噴き出し現象を確実に防止でき
ないことよりオイルの吹き返し現象が確実に回避でき
ず、前述した問題点の対策として不十分であった。

本考案は、上述の問題点を、簡単な手段によって確実に
解消できるように改善されたブローバイガスのオイル分
離装置を提供することを目的とするものである。

〔課題を解決するための手段〕

この目的を達成するため、本考案は、ロッカカバーの上
面にブローバイガスのオイルセパレータ室が形成され、
セパレータ室の底壁となるロッカカバーの上壁面にブロ
ーバイガスの流通口と、セパレータ室内で分離されたオ
イルの戻し穴とを有するものにおいて、 上記オイル戻し穴を開口する位置のセパレータ室底壁部
に、ロッカカバーをシリンダヘッドに締付け固定するロ
ッカカバー取付用ボルトの締結部を位置させて、該締結
部のボルトとボルト挿通孔内との間に形成された間隙通
路を上記オイル戻し穴と連通し、且つ間隙通路を開口部
によりロッカカバー内と連通してなることを特徴とす
る。

〔作用〕

このような構成では、セパレータ室の底壁部に開口する
オイル戻し穴は、ロッカカバーをシリンダヘッドに締付
け固定するロッカカバー取付用のボルト締結部を利用し
て、該締結部内に形成されたボルト周囲の間隙通路を介
してロッカカバー内と連通する構成となり、間隙通路に
おけるガスの流通が絞られた形態となることから、オイ
ル戻し穴よりのブローバイガスの噴き出し現象が確実に
阻止されて前述したオイルの吹き返し現象が防止され、
しかもその対策が格別のバッフル板を設けることなく達
成できるようになる。

〔実施例〕

以下、本考案の具体的な実施例を例示の図面に基いて説
明する。

第１図は本考案が適用される水平対向形エンジンの１例
を全体的に示すもので、このエンジン本体は、従来から
よく知られているようにシリンダブロック10,10aが互い
に向き合って水平に対向配置され、その各外側にシリン
ダヘッド11,11aが接合されてあり、各シリンダヘッド1
1,11aの頭部にはロッカカバー12がボルト13により締付
け固定されている。

そしてロッカカバー12の上面に、ブローバイガスのオイ
ルセパレータ室14が形成されてあり、このオイルセパレ
ータ室14は、第２図および第３図に示されているよう
に、ロッカカバー12の上壁に開口されたブローバイガス
流通口15を囲む断面凹形の囲壁14aと、その上を覆うよ
うに接合された断面逆凹形のカバー14bとでセパレータ
室が形成され、且つ下側の囲壁14aと上側のカバー14bと
の間にはガス流通口16を有するガスケットを兼ねた仕切
り邪魔板17が介在されて内部に矢印のようにブローバイ
ガスが流通する分離通路を形成してなるもので、上記カ
バー14bの内面には、さらにブローバイガス中からオイ
ルを付着分離させるフイン14cが複数突設されてあり、
また上面にはガス出口18が開口されている。

上記オイルセパレータ室14には、ロッカカバー12の上壁
を兼ねるセパレータ室底壁14dに、上述したブローバイ
ガスの流通口15が左右２個開口され、また底壁14dの中
央部にセパレータ室14内で分離されたオイルの戻し穴20
が開口されている。

本考案の実施例では上記オイルの戻し穴20を開口する個
所のセパレータ室14の底壁部14dに位置して、その位置
にロッカカバー12をシリンダヘッド11に締付け固定する
ロッカカバー取付用ボルト13の締結部が配置される。そ
して、このボルト締結部には、そこに挿通されたボルト
13と、ボルト挿通孔21内との間に間隙通路22が形成して
あり、前記したオイルの戻し穴20が上記間隙通路22と連
通され、また間隙通路22は底壁部14dの下部に開口され
た出口穴20aおよび通路端部の開放口20bを介してロッカ
カバー12内と連通するように構成されている。

なお出口穴20aは第３図の実施例の場合、オイル戻し穴2
0と対向する下側位置に開口されているが、第４図に示
すように出口穴20aを省略して通路端部の開放口20bのみ
によりロッカカバー12内と連通する構成にしてもよい。

なお前記囲壁14aとカバー14bとで形成されるセパレータ
室14は、その室巾がエンジン本体の巾方向に沿う方向
（第３図の左右方向）には短く、エンジン本体の巾方向
と直交する方向（第２図の左右方向）には長く形成され
ていて、セパレータ室14の容積を大きくしてもエンジン
本体の全巾には影響しない構成とされている。

また前記セパレータカバー14bの上面に開口されたガス
出口18には、ブローバイガス還流経路を形成するホース
25が接続されるもので、図示の実施例では、エンジン本
体に過給機26が装備されているターボ付き水平対向形エ
ンジンが示されていることより、左右のセパレータ室14
の各ガス出口18に接続される還流ホース25は、吸気マニ
ホールドに備えたPCVバルブ27および過給機26の吸気上
流側にそれぞれ接続され、エンジン運転状態に対応して
ブローバイガスがエンジン吸気系に還流できる構成にな
っている。

このように構成された実施例によると、機関作動時にお
いて、その本体内部で発生したブローバイガスは、その
流通経路となる左右のロッカ室内を経てロッカカバー12
内よりその上壁に開口されたブローバイガス流通口15を
上昇してセパレータ室14内に入り、ガスケットを兼ねた
仕切り邪魔板17に衝突して矢印のように迂回しつつ邪魔
板17に開口したガス流通口16を経て上側のセパレータカ
バー14b内に入り、さらに矢印のように迂回流通する過
程で、その流速が落ち、またガス流がフイン14cに衝突
を繰返しながら流通することにより気液分離作用が繰返
されてガス中に混入するオイルミストが分離される。

そして気液分離されたブローバイガスは、上方のガス出
口18よりホース25を介してエンジンの吸気系に還流さ
れ、一方、セパレータ室14内で分離されたオイルミスト
は、その底壁部14dの上に落ちて中央凹部内に寄せ集め
られ、中央凹部に開口されたオイル戻り穴20から間隙通
路22を経由して出口穴20a（または通路端部の開放口20
b）よりロッカカバー12内へと戻される。

この場合、オイルの戻り通路は、セパレータ室14の底壁
部14dに開口された戻り穴20から、ロッカカバー取付用
ボルト13の周囲に形成された間隙通路22を介在、迂回し
てロッカカバー12内に連通する構成となることで、ま
ず、その間隙通路22における絞り効果が得られ、また上
述のような通路構成ではオイル戻り穴20と出口穴20a
（または通路端部の開放口20b）とにより２つの絞り穴
が形成でき、さらにボルト13自体によるバッフル効果も
得られる等の利点から、ロッカカバー12内のブローバイ
ガスが、オイル戻り通路を通ってオイル戻し穴よりセパ
レータ室14内に噴き出す現象が阻止され、オイルの吹き
返し現象が防止される。

また他面、第４図に示すようにオイルの戻り通路の出口
側を、間隙通路22の通路端部における隙間を利用した開
放口20bのみによりロッカカバー12内と連通する構成と
した場合、戻り通路の通路長さを長く構成でき、通路抵
抗を所要に確保することが可能な構成となることから、
戻り通路の通路断面積を大きくでき、戻り通路において
オイル中のスラッジやごみ等が詰る現象が回避できる。

〔考案の効果〕

本考案は、以上に説明したように、セパレータ室内で分
離されたオイルの戻し通路を、ロッカカバー取付用ボル
トの締結部を利用して、その締結部内のボルト周囲に形
成した間隙通路の介在により絞り効果，バッフル効果を
持たせた構成としたから、ロッカカバー内のブローバイ
ガスが、オイル戻り通路を通ってオイル戻し穴よりセパ
レータ室内に噴き出す現象が確実に阻止でき、オイルの
吹き返し現象によるオイル分離性能の低下を回避でき、
しかもその効果が格別のバッフル板等を設けることなく
達成できるという効果が得られる。

また本考案によれば、オイルの戻り通路の通路長さを長
く構成でき、通路抵抗を所要に確保することが可能な構
成となることから、戻り通路の通路断面積を大きくで
き、戻り通路においてオイル中のスラッジやごみ等が詰
る現象が回避できてオイル回収性能も高めることができ
る等の効果も併せ得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例に係る水平対向形エンジンの１
例を示す構成図、第２図は要部となるオイルセパレータ
室の縦断側面図、第３図は同オイルセパレータ室の一部
の縦断正面図、第４図は他の実施例の第３図と同様な縦
断正面図、第５図および第６図は従来例のロッカカバー
上面に形成したオイルセパレータの１例を説明する縦断
面図である。 10,10a……シリンダブロック、11,11a……シリンダヘッ
ド、12……ロッカカバー、13……ロッカカバー取付用ボ
ルト、14……オイルセパレータ室、14a……囲壁、14b…
…セパレータカバー、14c……フイン、14d……底壁部、
15……ブローバイガス流通口、16……ガス流通口、17…
…仕切り邪魔板、18……ガス出口、20……オイル戻り
穴、20a……出口穴、20b……通路端部の開放口、21……
ボルト挿通孔、22……間隙通路。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダヘッドの頭部にボルトで締付け固
   定されるロッカカバーを有し、該ロッカカバーの上面に
   ブローバイガスのオイルセパレータ室を形成してなるも
   のにおいて、 上記セパレータ室の底壁となるロッカカバーの上壁面に
   ブローバイガスの流通口と、セパレータ室内で分離され
   たオイルの戻し穴とを有し、 上記オイル戻し穴を開口する位置のセパレータ室底壁部
   に、ロッカカバーをシリンダヘッドに締付け固定するロ
   ッカカバー取付用ボルトの締結部を位置させて、該締結
   部のボルトとボルト挿通孔内との間に形成された間隙通
   路を上記オイル戻し穴と連通し、且つ間隙通路を開口部
   によりロッカカバー内と連通してなることを特徴とする
   内燃機関におけるブローバイガスのオイル分離装置。