JPH064468U - フローティングリングシールの負荷リング - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】フローティングリングシールの耐久性を大巾に
向上させる。 【構成】断面を略Ｘ形状に形成した負荷リングである。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、回転物のシールとして使用されるフローティングリングシールに 関し、特にそのフローティングリングシールの主要部分を構成する負荷リングの 改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、自然界の厳しい条件下で使用される建設機械等の機器では、例えばモ ータとこれに接続される歯車減速装置との間に土砂等の異物の進入を防止するフ ローティングリングシールを配設するようにしている。

【０００３】 第６図は、従来のフローティングリングシール（以下単にシールと言う）１を 示す要部断面図である。このシール１は、円環形状のインナーハウジング２と、 このインナーハウジング２よりも径の大きいアウターハウジング３とからなり、 このインナー及びアウターハウジング２、３間には、弾性体、例えばニトリルゴ ムで形成された負荷リング４が装着される。

【０００４】 この従来の負荷リング４は断面が真円形に形成されており、シール１内に装着 された際は、第６図で示すようにインナーハウジング外周面２ａとアウターハウ ジング内周面３ａとの間に押圧挟持されて断面が略楕円形に変形し、その周面４ ａの一部はそれぞれインナーハウジング外周面２ａとアウターハウジング内周面 ３ａとに密着する。

【０００５】 従って、シール１は、インナーハウジング外周面２ａとアウターハウジング内 周面３ａとに密着する、この負荷リング４によりインナーハウジング２とアウタ ーハウジング３との間からの異物の進入、例えば土砂の進入を阻止する。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】 ところで、上述した従来のシール１によると、第６図で示すように、インナー ハウジング２とアウターハウジング３との間から矢印Ａで示すように土砂等の異 物が進入すると、その圧力で負荷リング４が、第７図で示すようにインナーハウ ジング外周面２ａとアウターハウジング内周面３ａとに沿って図面の左側へ移動 し（いわゆる負荷リング４の落ち込み）、このため、負荷リング４の外周面４ａ は、広い範囲に渡ってインナーハウジング外周面２ａの一部を構成する底面２ｂ とアウターハウジング内周面３ａの一部を構成する底面３ｂとにそれぞれ圧接す ることとなる。

【０００７】 このように負荷リング４の落ち込みが発生すると、負荷リング４の外周面４ａ がインナーハウジング底面２ｂと、アウターハウジング底面３ｂにも接触するの で、負荷リング４の外周面４ａとインナーハウジング外周面２ａ及びアウターハ ウジング内周面３ａとの接触面積がそれぞれ大巾に増大するばかりでなく、その 接触圧（シール線圧）も増大するので、このため負荷リング４に焼き付き及び損 傷が発生し易くなり、シール１の耐久性を大巾に低下させる要因となっていた。 この考案は、上述した事情に鑑み、フローティングリングシールの耐久性を大 巾に向上させるようにしたフローティングリングシールの負荷リングを提供する ことを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

上述した課題を解決するため、この考案では、負荷リングの断面形状をＸ形状 に形成している。

【０００９】

【作用】

上述した断面Ｘ形状の負荷リングによると、当該負荷リングがフローティング リングシール内に装着されると、断面がＸ形状に形成された負荷リングの外周面 のうち、その一部が最初からアウターハウジング底面と接触するので、このため 土砂等の異物がフローティングリングシール内に進入すると、この断面Ｘ形状に 形成された負荷リングの外周面を構成する一部が支えとなって負荷リングの落ち 込みを阻止し、このため負荷リングとインナーハウジング及びアウターハウジン グとの接触面積の増大を大巾に抑制する。

【００１０】

【実施例】

以下、こ考案に係わる負荷リングの一実施例を詳述する。

【００１１】 第１図は、この考案に係わる負荷リング１０の概念断面図である。

【００１２】 この負荷リング１０は、材質が例えばニトリルゴム等の弾性体で形成され、ま た全体として断面が略Ｘ形状に形成されており、その外周面及び内周面は、それ ぞれ径の異なる二つの内周面と外周面とにより構成されている。

【００１３】 このうち外周面は第１の外周面１１と第２の外周面１２とからなり、このうち 、第１の外周面は、負荷リング１０が後述するフローティングリングシール内に 装着された際にアウターハウジング底面と常時接触し、負荷リング１０の圧縮時 におけるスラスト方向の反力を受けるように形成されている。また、第２の外周 面１２は、この負荷リング１０がフローティングリングシール内に装着された際 に後述するアウターハウジング内周壁の一部を構成するリップ内径部に常時接触 し、これにより、負荷リング１０の圧縮時におけるラジアル方向の反力を受け、 また、フローティングリングシールの組み立て時における負荷リング１０の脱落 を防止するように形成されている。

【００１４】 一方、断面が略Ｘ形状に形成された負荷リング１０の内周面のうち、第１の内 周面１３はフローティングリングシールの組み立ての際に、後述するインナーハ ウジング小径端部に係合し、このインナーハウジングの脱落を防止するように形 成されており、また第２の内周面１４はフローティングリングシール内に装着さ れた際に、インナーハウジング外周面を構成する後述する大径部に常時接触し、 このインナーハウジングに負荷リング１０の圧縮力を伝えるように形成されてる 。 次に、上述した負荷リング１０の装着工程を詳述する。

【００１５】 まず、第２図で示すように、フローティングリングシール２０を組み立てる際 は、負荷リング１０の全体の外径を縮めて、アウターハウジング３の内周壁３ａ 内に負荷リング１０を挿入する。すると負荷リング１０は自己の弾性力によりア ウターハウジング内周壁３ａに密着する。その際、第１の外周面１１はアウター ハウジング底面３ｂに圧接し、第２の外周面１２はアウターハウジング内周壁３ ａの一部を構成するリップ内径部３ｃに圧接する。

【００１６】 従って、負荷リング１０をアウターハウジング内周壁３ａに嵌着させた状態で 、当該負荷リング１０はアウターハウジング３に支承されることとなり、また、 第２の外周面１２はアウターハウジング内周壁３ａの一部を構成するリップ内径 部３ｃに圧接係合しているので、組み立て時における負荷リング１０の脱落が防 止される。

【００１７】 次に、負荷リング１０をアウターハウジング３に支承させた状態から、インナ ーハウジング２を矢印Ｂで示すようにアウターハウジング３側へ移動させると、 第３図で示すように、負荷リング１０の第１の内周面１３がインナーハウジング ２の外周面２ａを構成する小径端部２ｃを乗り越えてインナーハウジング底面２ ｂに圧接する。この第３図に示す負荷リング１０の装着状態によると、インナー ハウジング２は負荷リング１０の第１の内周面１３とインナーハウジング底面２ ｂで係合することとなるので、組み立て途中におけるインナーハウジング２の脱 落が阻止されることとなる。

【００１８】 そして、この第３図に示すインナーハウジング２の装着位置から、さらにイン ナーハウジング２を矢印Ｂで示すようにアウターハウジング３側へ移動させ、第 ４図で示すような最終的なフローティングリングシール２０の組み立て状態に至 らせると、第１の外周面１１と第２の内周面１４との間は圧縮力が作用するので 、第２の外周面１２はラジアル方向へ膨らんでアウターハウジング３のリップ内 径部３ｃに強く押し付けられ、このため負荷リング１０は第１の外周面１１、第 ２の外周面１２、及び第２の内周面１４の３点支持でインナーハウジング２とア ウターハウジング３との間に装着されることとなる。

【００１９】 従って、第４図に示す状態から、第５図の矢印Ａで示すように土砂等の異物が インナーハウジング２とアウターハウジング３との間から進入すると、第１の外 周面１１とアウターハウジング底面３ｂとが当接するので、第１の外周面１１が 支えとなって、つまりアウターハウジング底面３ｂに当接する第１の外周面１１ の反作用によって、負荷リング１０全体がインナーハウジング外周面２ａとアウ ターハウジング内周面３ａとに沿って図面の左側へ移動する、いわゆる負荷リン グ１０の落ち込みが可及的に阻止されることとなる。

【００２０】 このため負荷リング１０の周面がインナーハウジング底面２ｂとアウターハウ ジング底面３ｂとに広い範囲に渡って接触し、その接触面積を大巾に増大させる ことがなく、従って、負荷リング１０に発生する焼き付きや損傷の虞を可及的に 低減することとなる。

【００２１】 なお、上述した負荷リング１０では、第２図から第４図に示すフローティング リングシール２０の組み立て工程において、負荷リング１０がインナーハウジン グ外周面２ａとアウターハウジング内周面３ａとの間の摩擦力により、従来の断 面円形の負荷リングの如く捩じれたり回転したりすることがないので、フローテ ィングリングシール２０の組み立て工程における負荷リングの損傷も可及的に低 減されることとなる。

【００２２】

【考案の効果】

以上説明したように、この考案の負荷リングでは、その断面をＸ形状に形成し 、これによりフローティングリングシール内に装着した際にアウターハウジング 内周面の一部を構成する底面に負荷リングの外周面の一部が常時接触するように したため、土砂等の異物が進入すると、アウターハウジング底面に接触する外周 面が支えとなって負荷リングの落ち込みを防止するので、このため負荷リングと インナー及びアウターハウジングとの接触面積の増大が大巾に抑制され、このた め負荷リングの焼き付き及び損傷の発生を大巾に低減させて、フローティングリ ングシールの耐久性を大巾に向上させることができる。

【００２３】 またフローティングリングシールの組み立て工程においても、負荷リングの断 面がＸ形状に形成されているので、負荷リングがインナーハウジング外周面とア ウターハウジング内周面との間の摩擦力により、捩じれたり回転したり、また落 ち込むことがなく、このためフローティングリングシールの組み立て工程におけ る負荷リングの損傷も可及的に低減することがもきる。

【００２４】 また、本願考案に係わる負荷リングを使用したフローティングリングシールで は、断面がＸ形状の負荷リングを圧縮して荷重をだすため、直線的で制御しやす い荷重−タワミ線図を得ることもできる。

【００２５】

【図面の簡単な説明】

【００２６】

【図１】この考案に係わる、負荷リングの概念断面図。

【００２７】

【図２】この考案に係わる、負荷リングの装着手順を示
すフローティングリングシールの概念断面図。

【００２８】

【図３】この考案に係わる、負荷リングの装着過程を示
すフローティングリングシールの概念断面図。

【００２９】

【図４】この考案に係わる、負荷リングを装着したフロ
ーティングリングシールの概念断面図。

【００３０】

【図５】この考案に係わる、負荷リングの別の作用を示
すフローティングリングシールの概念断面図。

【００３１】

【図６】従来の負荷リングを装着した状態を示すフロー
ティングリングシールの概念断面図。

【００３２】

【図７】従来の負荷リングに、土砂等の異物が進入した
状態を示すフローティングリングシールの概念断面図。

【００３３】

【符号の説明】

２…インナーハウジング ２ａ…インナーハウジング外周面 ２ｂ…底面 ３…アウターハウジング ３ａ…アウターハウジング内周面 ３ｂ…底面 １０…負荷リング ２０…フローティングリングシール

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】インナーハウジング外周面とアウターハウ
   ジング内周面との間に押圧挟持されるフローティングリ
   ングシールの負荷リングにおいて、前記負荷リングの断
   面形状を略Ｘ形状に形成したことを特徴とするフローテ
   ィングリングシールの負荷リング。