JPH0429130Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案は例えば伝動軸のように軸受の中心線
の完全な一致を望みえない場合とか、重加重を受
ける軸または軸受間距離の大きな長い軸のように
湾曲を生ずるおそれのある場合など、軸心を正確
に出し難い個所に使用する密封自動調心形軸受に
関し、さらに詳しくは、軸心が偏心してもこれに
追随して常に安定した密封性を確保することがで
きるオイルシールを備えた密封自動調心形軸受に
関するものである。

（従来の技術） 一般に密封自動調心形軸受は、軸受軸方向両側
にオイルシールが設けられるとともに、軸受内部
に潤滑グリースが封入されてなる構造とされてお
り、上記オイルシールとしては、例えば第４図に
示すものがある。

該オイルシールは、略Ｌ字形状の断面を有する
環状の芯金ａとゴム製の弾性部材ｂとからなり、
該弾性部材ｂが内輪ｃの外径面（シール面）ｄに
摺接するシールリツプｅを備えた構造とされてい
る。ｆは締付ばね、ｇは外輪である。

ところで、この種のオイルシールには高い偏心
追随性能が要求される。すなわち、自動調心形軸
受の場合、軸支すべき軸部の軸心が偏心（傾斜）
すると、上記内輪ｃもその調心性のために偏心し
て、内・外輪ｃ，ｇ間の間隔が変化するが、この
場合でも、上記シールリツプｅはこの内輪ｃの偏
心に追随して、シール面ｄに常に密着状に摺接し
て密封性を確保することが要求される。

この点に関して、従来は第４図に実線で示すよ
うに、上記シール面ｄが傾斜状断面を有するテー
パ面に形成されたり、二点鎖線で示すように、凸
湾曲状断面を有する曲面に形成された構造とされ
ており、これにより、軸偏心が生じて内輪ｃと外
輪ｇとの間隔が変化しても、上記シールリツプｄ
が軸偏心に追随してこの部位の密封性を確保する
ようにされている。

（考案が解決しようとする問題点） しかしながら、このような構造では、以下に述
べるような問題があり、その改良が要望されてい
た。

(1) シール面ｄを上記のような特殊形状とするだ
けでは、シールリツプｅの偏心追随性能が十分
でなく、例えば、該シールリツプｅがその締め
しろ以上の軸偏心を受けた場合には、内輪ｃの
シール面ｄとの接触パターン（接触状態）が不
均一になる。これがため、この部位の安定した
密封性を維持することができず、上記シールリ
ツプｅと内輪ｃとの間に油洩れを生じ易い状態
となるか、あるいは生じてしまうこととなる。

したがつて、従来の密封自動調心形軸受で
は、シールリツプｅの締めしろの範囲内でしか
偏心追随性能が期待できず、大きな偏心に対し
ては十分な密封性能が得られていないのが現状
であり、防塵性に劣り、これがため、軸受内部
に封入した潤滑グリースの特性が損なわれるな
ど、その寿命が短いという問題があつた。よつ
て、従来から軸受に望まれている、その保守作
業を簡易にするメンテナンスフリー化は、密封
自動調心形軸受では得られ難かつた。

(2) また、内輪ｃのシール面ｄを図示のごとくテ
ーパ面あるいは凸湾曲状の曲面にすることは、
その研磨工程が難しく、製造コストひいては製
品コストの上昇を招いていた。

（問題点を解決するための手段） 本考案はかかる従来の問題点に鑑みてなされた
ものであつて、本考案の密封自動調心形軸受は、
軸受軸方向両側に環状のオイルシールが設けられ
るとともに、軸受内部に潤滑グリースが封入され
てなる密封自動調心形のものであつて、前記オイ
ルシールは、外輪側に装着される環状の芯金と、
該芯金に一体的に設けられ、内輪のシール面に摺
接するシールリツプを有する環状の弾性部材とを
備え、該弾性部材は、弾性変形可能な可撓部が前
記芯金の内径側端部に連続して設けられるととも
に、該可撓部の内径側端部に、前記シールリツプ
がリツプ腰部を介して設けられてなり、該リツプ
腰部には、剛性の高い材料からなる円環状の補強
リングが設けられていることを特徴とする。

また、前記シールリツプが摺接する内輪のシー
ル面は、例えば軸方向へ同一の径寸法を有する直
円筒面に形成されている。

（作用） オイルシールのシールリツプの外径側部分に設
けた可撓部は、シールリツプの半径方向への変位
（移動）を可能として、内輪の軸偏心により締め
しろ以上の偏心を受けた場合でも、シールリツプ
が上記偏心に追随して、シールリツプと内輪との
間に〓間が発生するのを有効に防止する。

また、上記可撓部とシールリツプとの間部分の
リツプ腰部に設けた補強リングは、剛性の高い材
料からなる円環状であり、上記軸偏心にシールリ
ツプが追随する際に、該シールリツプ全体を常に
円形状に維持して、シールリツプに高い偏心追随
性能を付与する。

さらに、上記オイルシール自体が高い偏心追随
能を有することに対応して、上記シールリツプが
摺接する内輪のシール面を直円筒面とし、研磨工
程の容易化を図る。

以下、本考案の実施例を図面に基いて説明す
る。

（実施例） 本考案に係る密封自動調心形軸受の構造を第１
図に示し、該軸受は具体的には自動調心形ころ軸
受つまり球面ころ軸受であつて、内輪１と外輪２
との間に転動体（球面ころ）３……が介装される
とともに、該球面ころ３……が保持器４，４に保
持されて軸受円周方向へ等間隔に２列に配設され
た複列形である。また、上記内・外輪１，２の軸
方向両側にはオイルシール５，５がそれぞれ設け
られるとともに、該オイルシール５，５と内外輪
１，２とにより形成される軸受内部に、潤滑剤と
して潤滑グリースが封入されている。

内輪１の外径面には２列の軌道溝１ａ，１ａが
設けられ、該軌道溝１ａが上記球面ころ３の外周
面（球面）に対応した軸方向断面形状を有する曲
面に形成される一方、外輪２の内径面つまり軌道
面２ａは軸受の中心と同一の球面中心を有する球
面に形成された構造とされて、いわゆる自動調心
性を有している。また、上記軌道溝１ａの軸方向
外側には、上記オイルシール５が摺接するシール
面６が設けられ、該シール面６は軸方向へ同一の
径寸法を有する直円筒面に形成されている。

オイルシール５は第２図に示すように、金属製
の芯金７とゴム製の弾性部材８および締付ばね９
からなる。上記芯金７は略Ｌ字形状の断面を有す
る環状に形成されて、その外径側端部７ａが外輪
２の嵌合溝１５に嵌着される一方、その内径側端
部７ｂに上記弾性部材８が加硫接着されている。

弾性部材８は、オイルシールのシール部を構成
するものであつて、シールリツプ１０、可撓部１
１およびリツプ腰部１２などからなり、その材料
としてはシリコンゴム等が使用されるとともに、
その断面形状は、シールリツプ１０が高い偏心追
随性能を発揮しうる形状とされている。すなわ
ち、弾性部材８の断面形状は、第２図に示すよう
に、可撓部１１が軸方向内方に向かい半径方向内
側へ傾斜して直線状に延び、該可撓鵜１１の内径
側端部からリツプ腰部１２が半径方向内方へ直線
状に延び、さらに該リツプ腰部１２の内径側端部
から上記シールリツプ１０が軸方向外方へ延びて
なる形状とされている。

次に、上記各構成部１０，１１，１２の具体的
構造について説明する。

シールリツプ１０は内輪１のシール面６に摺接
し、その間を密封するもので、内径側に主リツプ
部１３が全周にわたつて円環状に設けられてい
る。また、主リツプ部１３の外周部分には、上記
締付ばね９が嵌着されている。

可撓部１１は、シールリツプ１０の半径方向へ
の変位（移動）を可能とするためのものであつ
て、シールリツプ１０の外径側部分つまり該シー
ルリツプ１０と芯金７との間部分に設けられてい
る。該可撓部１１は軸方向内方へ向けて徐々にそ
の径寸法が減少する薄肉の断面形状を有し、この
断面形状が半径方向へ弾性変形して、その半径方
向長さＬが伸縮し、シールリツプ１０の偏心を許
容するようにされている。

リツプ腰部１２は上記シールリツプ１０の補強
部を構成するもので、上記可撓部１１とシールリ
ツプ１０との間部分に設けられ、補強リング１４
を備えている。該補強リング１４はシールリツプ
１０を補強してその変形を防止するためのもの
で、軸偏心や組付偏心にシールリツプ１０が追随
する際に、該シールリツプ全体を常に円形状に維
持して、シールリツプ１０に高度な偏心追随性能
を付与する。補強リング１４は弾性部材８の構成
材料よりも剛性の高い材料からなり、シールリツ
プ１０と同心状の円環状に形成されている。補強
リング１４は、上記リツプ腰部１２に一体焼付に
より埋設されている。

しかして、以上のように構成された密封自動調
心形軸受は所定の軸部１６に装着され、この装着
状態において軸部１６が偏心（傾斜）すると、こ
れに伴つて内輪１も偏心してその調心作用をな
す。

この際、上記内輪１と外輪２との半径方向の間
隔は軸方向位置によつて変化することとなるが、
オイルシール５のシールリツプ１０は、それ自体
の弾性変形作用と、可撓部１１の半径方向への伸
縮作用とによる高い偏心追随性能を有し、その円
形状態を保持したまま半径方向へ変位（移動）し
て、上記内輪１の偏心に有効に追随する。また、
このシールリツプ１０の円形状は補強リング１４
の保形作用によりさらに補強されて確実に保持さ
れる。

すなわち、上記シール面６に押される側におい
ては、シールリツプ１０は、それ自体の弾性変形
作用と可撓部１１の半径方向への縮長作用との協
働作用により、その締めしろをシール面６の偏心
に追随して有効に保ち、一方、上記と対角側つま
り軸心に対して反対側においては、シールリツプ
１０は、やはりそれ自体の弾性変形作用と可撓部
１１の伸長作用とにより、その締めしろをシール
面６の偏心に追随して有効に保つ。

これにより、該シールリツプ１０の主リツプ部
１３は上記シール面６に全周にわたり所定の圧力
をもつて密着状に摺接して、該シール面６との接
触パターンを常に良好なものに保ち、この部位の
密封性を有効に保つ。特に、軸偏心が大きくて、
例えば上記シールリツプ１０の締めしろ以上の偏
心を受けた場合でも、可撓部１１の半径方向への
伸縮作用によつて、主リツプ部１３とシール面６
との接触パターンは全周にわたつて均一に保たれ
る。

また、上記リツプ腰部１２には補助リツプ１７
が弾性部材８の一部分を半径方向内方へ膨出して
形成されている。該補助リツプ１７の内径面１７
ａは平坦な円筒面とされ、その内径が上記シール
リツプ１０の内径よりも若干大きく設定されてい
る。該補助リツプ１７は補助リング１４が軸の偏
心によつて半径方向へ押されて軸に追随する場合
に、シールリツプ１０に所定以上の圧縮変形が生
じるのを防止して、シールリツプ１０と内輪１と
の適正な接触パターンを常に維持し、シールリツ
プ１０の安定した密封性を確保する。つまり、内
輪１の軸偏心によりシールリツプ１０がある程度
押されて変形すると、補助リツプ１７が内輪シー
ル面６に摺接して、以後はこの補助リツプ１７が
内輪１からの押圧力を受けることとなり、上記シ
ールリツプ１０にはこれ以上の押圧力が作用しな
い。換言すれば、シールリツプ１０はこれ以上の
半径方向外側への圧縮変形を受けることがない。
これにより、上記シールリツプ１０は常時所定の
圧力をもつて内輪シール面６に密着状に摺接し、
この部位の良好な密封性を保つ。

さらに、第３図に示すように、芯金７の外径側
端部７ａにも上記弾性部材８を被覆し、外輪２の
嵌合溝１５に嵌着することも可能である。これに
より、オイルシール５の外輪２への組み付けが容
易になるとともに、組付精度が向上する。

なお、本考案は上記の実施例に限定されること
なく、種々設計変形することができ、例えば、球
面ころ軸受のほか、複列自動調心形玉軸受など他
の自動調心形軸受にも適用することができる。

（考案の効果） 以上詳述したように、本考案にれば、以下に列
挙するような種々の効果が得られ、従来から懸案
とされていた、密封自動調心形軸受のメンテナン
スフリー可が可能となる。

(1) オイルシールのシールリツプの外径側部分に
半径方向へ弾性変形可能な可撓部が連続して設
けられているから、シールリツプの半径方向へ
の変位（移動）が可能であり、内輪の軸偏心に
より例えばシールリツプの締めしろ以上の偏心
を受けた場合でも、該シールリツプが円形状態
を保ちながら上記偏心に有効に追随することが
でき、シールリツプの主リツプ部と内輪のシー
ル面との間に〓間が発生するのが有効に防止さ
れる。これにより、軸受内部の潤滑グリースの
密封性が軸受の調心作用にもかかわらず、常に
安定して保たれる。

したがつて、本考案の密封自動調心形軸受は
防塵性に優れ、軸受内部に封入した潤滑グリー
スの特性が損なわれることもなく、その寿命が
大幅に延びて、従来のこの種の軸受では実現不
可能であつた、その保守作業を簡易にするメン
テナンスフリー可が可能となる。

(2) 上記可撓部とシールリツプとの間部分のリツ
プ腰部に、剛性の高い材料からなる補強リング
が設けられているから、上記軸偏心にシールリ
ツプが追随する際に、該シールリツプ全体を補
強して常に円形状に維持することができ、シー
ルリツプに高度な偏心追随性能を付与すること
ができる。

(3) 上記オイルシール自体が高い偏心追随能を有
することに対応して、上記シールリツプが摺接
する内輪のシール面が直円筒面に形成されてい
るから、その研磨工程の容易化を図ることがで
き、製造コストひいては製品コストの低減化を
図ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る密封自動調心形軸受の一
実施例を示す縦断面図、第２図は同軸受の要部で
あるオイルシール部分の構造を拡大して示す縦断
面図、第３図はオイルシール部分の他の実施例を
示す縦断面図、第４図は従来の密封自動調心形軸
受におけるオイルシール部分の構造を示す第２図
に対応する縦断面図である。 １……内輪、２……外輪、３……転動体、４…
…保持器、５……オイルシール、６……内輪のシ
ール面、１０……シールリツプ、１１……可撓
部、１２……リツプ腰部、１４……補強リング。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 軸受軸方向両側に環状のオイルシールが設け
   られるとともに、軸受内部に潤滑グリースが封
   入されてなる密封自動調心形のものであつて、 前記オイルシールは、外輪側に装着される環
   状の芯金と、該芯金に一体的に設けられ、内輪
   のシール面に摺接するシールリツプを有する環
   状の弾性部材とを備え、 該弾性部材は、弾性変形可能な可撓部が前記
   芯金の内径側端部に連続して設けられるととも
   に、該可撓部の内径側案部に、前記シールリツ
   プがリツプ腰部を介して設けられてなり、 該リツプ腰部には、剛性の高い材料からなる
   円環状の補強リングが設けられていることを特
   徴とする密封自動調心形軸受。 (2) 前記オイルシールの断面形状は、前記可撓部
   が軸方向内方に向かい半径方向内側へ傾斜して
   直線状に延び、該可撓部の内径側端部から前記
   リツプ腰部が半径方向内方へ直線状に延び、か
   つ該リツプ腰部の内径側端部から前記シールリ
   ツプが軸方向外方へ延びてなり、 該シールリツプの内径側に、前記内輪のシー
   ル面に摺接する主リツプ部が全周にわたつて円
   環状に設けられている 実用新案登録請求の範囲第１項記載の密封自
   動調心形軸受。 (3) 前記シールリツプの摺接する内輪のシール面
   が、軸方向へ同一の径寸法を有する直円筒面に
   形成されている実用新案登録請求の範囲第１項
   または第２項記載の密封自動調心形軸受。