JPH0641768Y2 - 旋盤用チャック - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案はワークの内周面または外周面を複数のチャッ
ク爪により把握して、同ワークの前面を旋削する場合に
用いる旋盤用チャックに関するものである。

〔従来の技術〕

旋盤のチャックでワークの前面を切削する場合、チャッ
ク爪でワークの内径または外径を把握する。

また、ワークが肉薄で、しかも切削しようとするワーク
の後面とチャック本体の前面の間に空間が存在する場合
は、チャック本体の前面にワークの後面を受けるワーク
ストッパを設けて切削時の圧力によるワークの歪みを防
止する必要がある。

〔考案が解決しようとする課題〕

上記のようにチャック本体の前面にワークストッパを取
付ける場合、ワークの寸法が異なると、その都度寸法の
異なるワークストッパと取替える必要が生じ、きわめて
面倒である。

また、固定ワークストッパのかわりに可動のプッシュピ
ンを設けて、このプッシュピンをチャック本体に設けた
ドローバーで駆動し、その外側に被せた別のスリーブ管
を油圧シリンダで駆動してチャック爪を開閉するように
したものもあるが、この従来の装置の場合、旋盤の主軸
を貫通したドローバーを動かす油圧シリンダとスリーブ
管を動かす油圧シリンダとを旋盤のヘッドストックに同
芯に設ける必要があるため、旋盤自体を改造しなければ
ならないという問題がある。

この考案は上記のような問題点を解決するために、ワー
クの寸法が変化してもワークストッパを取替える必要が
なく、また、旋盤の改造の必要もない旋盤用チャックを
提供することを目的とするものである。

〔課題を解決するための手段〕

上記の目的を達成するために、この考案はチャック本体
の前部に、進退自在に装着した複数のプッシュピンの後
部の斜面に摺動自在に接触して、ワークの把握時にプッ
シュピンをワーク支持位置まで押し出して固定する斜面
を外端に有するロックピンを、上記プッシュピンの進退
方向と直交する方向に進退自在に装着し、上記チャック
本体の前部中央にはシリンダを設け、このシリンダに嵌
装したピストンの前部のロッドを上記シリンダの前部か
ら突出させてその先端に設けた大径部に上記ロックピン
の後端の斜面に接触してロッドの前進時に、該ロックピ
ンを外方に押し出す斜面を形成し、上記プッシュピンに
はこれを後退させるプッシュピン復元用バネを装着し、
上記ロックピンにもこれを後退させるロックピン復元用
バネを装着し、上記シリンダにはその前室に通じる作動
流体用通路と、ピストンを前方に押す、上記プッシュピ
ン復元用バネやロックピン復元用バネより強いバネを圧
縮状に装着し、さらに、上記ロックピンに設けた斜面を
ロックピンの進退方向に対して約20°としてワークを介
してプッシュピンに加わる切削圧力によりロックピンが
後退しないようにしたものである。

〔作用〕

この考案は上記の構成であるから、ワークの装着前はチ
ャック爪を開放位置とし、チャック本体の前部中央のシ
リンダの前室に流体圧力を加え、ピストンを後退させる
ことにより、プッシュピンを後退位置としておく。

この状態でワークをチャックの前面の所定位置とし、つ
いでチャック爪を働かせてワークを把握する。

こうしてワークが正確に把握された条件で上記シリンダ
の前室に加えてあった圧力流体を抜くと、ピストンを前
方に押す強いバネの力でピストンロッドが前に押され、
その斜面によりロックピンを外方に押し出し、その斜面
によりプッシュピンを押し、このプッシュピンの先端が
ワークの背面に当るとピストンを押すバネの力でワーク
の背面を押した状態で停止する。

上記の状態でチャック本体を回転させ、ワークの前面を
切削する。

この際ワークに加わる切削圧力がワークを介してプッシ
ュピンに伝わるが、プッシュピンを支えるためにロック
ピンに設けた斜面をロックピンの進退方向に対して約20
°にしてあるため、プッシュピンに強い圧力が加わって
もロックピンが後退してプッシュピンが後退するような
おそれはない。上記の状態で旋削加工が終わると、上記
シリンダの前部に流体圧力を加えて、ピストンを後退さ
せると、復元バネの作用で、ロックピンやプッシュピン
が元の位置に戻る。

〔実施例〕

図面に示す実施例において、１はチャック本体て、旋盤
の主軸に後部をボルトにより一体に結合したものであ
る。

本体１の外周寄りには軸２を中心に揺動する複数の揺動
体３を設け、この各揺動体３の外端にチャック爪４を固
定する。

５は本体１の後部中央に固定したガイド筒、６は本体１
内の空間に設けたアクチュエータで、その後部の筒状部
７が前記ガイド筒５に進退自在に嵌合し、かつ、ドロー
バー８に連結されている。

アクチュエータ６には各揺動体３に対応する位置にそれ
ぞれ球状の内面を有する嵌合孔10を設け、この各孔10に
エキセントスライディングボール11を回動自在に装着す
る。

上記ボール11には、傾斜孔12を設けて、前記揺動体３の
後部に一体に設けた軸13を揺動自在に挿入し、スライド
キー14によりボール11と軸13に回り止めを施す。

また、上記軸13の後端の凹孔には圧着子16を摺動自在に
装着してこれをバネ17により本体１の後壁に圧着せしめ
る。

20は本体１の前面に固定した三叉状の前部材で、この前
部材20と前記アクチュエータ６間にはアクチュエータ６
を後方へ押す複数のバネ21を装着する。

前記アクチュエータ６の前部材中央の筒状突部22は本体
１の前部中央の孔23に摺動自在に嵌入している。

上記前部材20の中央後部の凹所24内にシリンダ25を固定
し、このシリンダ25の後部を前記アクチュエータ６の筒
状突部22内に遊嵌する。

27はシリンダ25内のピストンで、その前部のロッド28を
前部材20の中央の孔から前方に突出させ、ピストン27の
後部をバネ29により前方へ押す。

31は前部材20の前面に固定した保持枠で、この枠31は第
２図のように本体１の中心から３方に分岐した三叉状
で、その中央の空間に前記ロッド28が突出してその先端
の大径部30の３等分位置に斜面32を設ける。

33は前記枠31の各分岐部に設けた半径方向の孔34内に進
退自在に挿入したロックピンで、その内端は前記斜面32
に適合する斜面となり、このロックピン33と孔34の外端
に固定した蓋35の間にはロックピン33を斜面32に押し付
けるバネ36を設ける。このバネ36は前記バネ29より弱い
ものとする。

また、枠31の各分岐部の前部から孔34に達するように設
けた軸方向の孔にはプッシュピン38を進退自在に挿入す
ると共に回止ピン41で回り止めを施し、このプッシュピ
ン38内端の大径部の斜面に適合する斜面39を前記ロック
ピン33の上部前面に設け、この斜面39をロックピン33の
斜面に押し付けるバネ40を設ける。このバネ40は前記バ
ネ29より弱いものとする。

なお、図示省略してあるが、前記シリンダ25内の前室に
通じるエア通路を前部材20に設け、この通路を圧縮空気
源に通じるエアホースに連結する。

上記実施例の作用を説明すれば、チャック爪４が図示の
ような内径張りの場合、ドローバー８を前進させると各
爪４が内方へ寄り、後退させると外方に開いてワーク45
の内径を把握する。

いま、シリンダ25の前室に圧縮空気を送り込んでピスト
ン27をバネ29に抗して後退させると、第１図のように斜
面32に接しているロックピン33がバネ36によって下げら
れ、プッシュピン38がバネ40により後退する。

一方、ドローバー８は前進位置としてチャック爪４を内
側に寄せた状態とし、図示省略してあるローダ爪などで
第１図のようなワーク45をチャック爪４群の外側に被せ
て、ドローバー８をエアシリンダなどで後退させると、
各爪４が拡開してワーク45を内径側から把握する。つい
で、シリンダ25の前室の圧縮空気を排気すると、バネ29
によりピストン27が前進し、斜面32がロックピン33を押
し上げる。

上記のようにロックピン33が上昇すると、その斜面39が
プッシュピン38を押し出してその先端をワーク45の内面
に接触させる。

また、斜面39の垂直面に対する傾斜角を20°にするとプ
ッシュピン38の先端に圧力が加わってもプッシュピン38
は後退しないから、ワーク45の前面ａを切削加工して押
圧力が働いてもワーク45が歪むおそれはない。

切削加工が経れば、シリンダ25の前室に圧縮空気を供給
してピストン27を後退させると、ロックピン33およびプ
ッシュピン38は後退し、ワーク45の後面から離れるので
アクチュエータ６を前進させ、各爪４を内側へ動かして
ワーク45の把握を解除する。

〔考案の効果〕

この考案は前記のように、チャック本体の前面に、チャ
ック爪により把握されたワークの後面を支持する複数の
プッシュピンを進退自在に装着し、同じくチャック本体
の前部には、上記プッシュピンの後部に摺動自在に接触
して、ワークの把握時にプッシュピンをワーク支持位置
まで押し出して固定する斜面を有するロックピンを設け
たから、肉の薄いワークの前面を切削する場合でもプッ
シュピンがワークを支持していることにより歪みを防止
して正確な切削が行えるものであるが、特にこの考案に
おいては、チャック本体の前部中央にシリンダを設け、
このシリンダに嵌装したピストンの前部のロッドを上記
シリンダの前部から突出させてその先端に設けた大径部
に上記ロックピンの後端の斜面に接触してロッドの前進
時に、該ロックピンを外方に押し出す斜面を形成し、上
記プッシュピンにはこれを後退させるプッシュピン復元
用バネを装着し、上記ロックピンにもこれを後退させる
ロックピン復元用バネを装着し、上記シリンダにはその
前室に通じる作動流体用通路と、ピストンを前方に押
す、上記プッシュピン復元用バネやロックピン復元用バ
ネより強いバネを圧縮状に装着したものであるから、上
記シリンダの前室に圧縮空気のような圧力流体を供給し
たり、排除したりするだけでピストンやロックピンやプ
ッシュピンが進退するので、旋盤のヘッドストックを改
造する必要はなく、圧力流体供給源さえあれば、どの旋
盤にも取付けられる。

また、チャック本体中央に設けたシリンダ内のピストン
を押すバネの力でプッシュピンをワークの端壁内面に圧
着させるものであるから、バネ圧を適当に設定すること
により押しすぎになってワークを変形させるおそれはな
い。

また、ロックピンに設けた斜面をロックピンの進退方向
に対して約20°としたので、切削に際して、その切削圧
力がワークを介してプッシュピンに伝わったとき、斜面
が摺動してロックピンが勝手に下り、プッシュピンが後
退してワークを歪ませるようなおそれはない。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の旋盤用チャックの縦断側面図、第２
図は正面図である。 １……チャック本体、４……チャック爪、 25……シリンダ、27……ピストン、 28……ロッド、29、36……バネ、 32、39……斜面、33……ロックピン、 38……プッシュピン、 45……ワーク。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】チャック本体の前面に適宜の駆動手段によ
   り開閉させる複数のチャック爪を設け、チャック本体の
   前面に上記チャック爪により把握されたワークの後面を
   支持する複数のプッシュピンを進退自在に装着した旋盤
   用チャックにおいて、上記チャック本体の前部には、上
   記プッシュピンの後部の斜面に摺動自在に接触して、ワ
   ークの把握時にプッシュピンをワーク支持位置まで押し
   出して固定する斜面を外端に有するロックピンを、上記
   プッシュピンの進退方向と直交する方向に進退自在に装
   着し、上記チャック本体の前部中央にはシリンダを設
   け、このシリンダに嵌装したピストンの前部のロッドを
   上記シリンダの前部から突出させてその先端に設けた大
   径部に上記ロックピンの後端の斜面に接触してロッドの
   前進時に、該ロックピンを外方に押し出す斜面を形成
   し、上記プッシュピンにはこれを後退させるプッシュピ
   ン復元用バネを装着し、上記ロックピンにもこれを後退
   させるロックピン復元用バネを装着し、上記シリンダに
   はその前室に通じる作動流体用通路と、ピストンを前方
   に押す、上記プッシュピン復元用バネやロックピン復元
   用バネより強いバネを圧縮状に装着し、さらに、上記ロ
   ックピンに設けた斜面をロックピンの進退方向に対して
   約20°としてワークを介してプッシュピンに加わる切削
   圧力によりロックピンが後退しないようにしたことを特
   徴とする旋盤用チャック。