JPH0639451B2 - 0―アシル化dl―スレオ―3―イソプロピルリンゴ酸モノアルキル及びその製法 - Google Patents

0―アシル化dl―スレオ―3―イソプロピルリンゴ酸モノアルキル及びその製法

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JPH0639451B2 JP60258367A JP25836785A JPH0639451B2 JP H0639451 B2 JPH0639451 B2 JP H0639451B2 JP 60258367 A JP60258367 A JP 60258367A JP 25836785 A JP25836785 A JP 25836785A JP H0639451 B2 JPH0639451 B2 JP H0639451B2
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  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はDL−スレオ-3-イソプロピルリンゴ酸を製造
する際の合成中間体として有用な、O−アシル化DL−
スレオ-3-イソプロピルリンゴ酸モノアルキル及びその
製造法に関する。
〔従来の技術〕
ロイシン生合成系の第三段階を触媒する酵素である3−
イソプロピルマレート=デヒドロゲナーゼは、微生物界
に広く分布、D−スレオ−3−イソプロピルリンゴ酸は
この酵素の基質である。
3−イソプロピルリンゴ酸は分子中に2個の不斉炭素原
子をもち、四個の立体異性体、即ちD−スレオ体、L−
スレオ体、D−エリスロ体、L−エリスロ体があるが、
基質はD−スレオ体であって、従来これを収得する方法
は、幾つか試みられて来た。
生合成法は、例えばメソツズ=イン=エンザイモロジイ
(Methods in Enzymology)17A巻791〜793頁(ア
カデミック・プレス刊1970年)に示されているが、例え
ば20の培養タンクで粗製物を得、これをカラムを使
って分離精製し、不要な異性体15〜30gを収得する
と共に、目的物を3〜6g得ているという状態であり、
収量は十分でない。尚、目的物はD−エリスロ体とD−
スレオ体の混合物である。
合成化学による方法は、例えば雑誌バイオケミストリィ
(Biochemistry)1巻6号1157〜1161頁(1962年)に示
されているが、例えば2−ブロムイソ吉草酸エチルから
出発して、取扱い好ましくない試薬などを用いる数工程
を経て、収率約5%で目的物を得ているようになってい
る。しかし、副生する2−イソプロピル置換体との分離
が困難であることが述べられており、且つ目的物として
得られたものは、前記の四つの立体異性体の混合物であ
る。
〔発明が解決しようとする問題点〕
このように、従来の製法は効率が悪く、得られたとされ
る目的物も、必要なD−スレオを豊富に含有するもので
なく、例えばD−エリスロとの等量混合物であったり、
他の三種の立体異性体を含んで、その1/4がD−スレオ
であるに過ぎなかったりするものであった。
勿論製造の効率が良好で、工業的に実用するに足る方法
であるべきであると共に、よしんば必要としない立体異
性体の他方のものが同時に生成しても、必要とするD−
スレオ体、即ちDL-スレオ−イソプロピルリンゴ酸がよ
り多く含有する成績体を得ることは、極めて要望される
ところであった。
本発明者は、この要望に対応して種々研究した結果、新
規にして有用な合成経路を踏む方法を発明し、これを完
成した。
近時遺伝子工学分野に於いて、遺伝子クローニング技術
が進歩し、極めて一般的な手法になるに至った。バクテ
リアのロイシン生合成系に関与する酵素は三つあり、夫
々の遺伝子は、関与の順に記せば、ロイA、ロイC、及
びロイBである。この内3−イソプロピルマレート=デ
ヒドロゲナーゼ(酵素番号1.1.1.85)を作る遺伝子が、
ロイBである。ロイB及びそれと相同な遺伝子は、バク
テリヤ、かび等の微生物及び植物に広く存在し、取扱い
易く、容易にクローニングできる遺伝子である。クロー
ニングの宿主として利用される大腸菌などでは、ロイシ
ン、トリプトファンなどの欠損株がよく使われ、就中ロ
イBの欠損株は安定で取扱い易く、種類も多くてよく利
用されている。それ故に、ロイBは、遺伝子工学でクロ
ーニングを試みようとするときのトレーニングには、殊
に不可欠の材料である。また高度耐熱菌など特殊な菌の
遺伝子のクローニングを行う場合にも、最初にクローニ
ングされる遺伝子が、ロイBであることが多い。
このロイシン生合成系の第三段階を触媒する酵素である
3−イソプロピルマレート=デヒドロゲナーゼの基質で
あるD−スレオ−3−イソプロピルリンゴ酸は、この酵
素の遺伝子ロイBの種差の解明とか同定に必須のもので
あるが、前記の通り好ましい製法がなく、従って市販品
もなく、遺伝子工学のより円滑な展開の支障となってい
るのが実状である。この分野に於ける遺伝子工学の発展
は、遺伝子組換え技術の利用によって、従前生産性の良
くない醗酵法によっていたものを改良し、バイオリアク
ターによる、必須アミノ酸であるロイシンの、大量生合
成という段階を期待させるものである。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、一般式[D] (式中、R1は低級アルキル基、R4はアルキル基又はア
リール基を示す。)で表わされる、O−アシル化DL−
スレオ-3-イソプロピルリンゴ酸モノアルキルの発明で
ある。
また本発明は、イソ吉草酸アルキルを、リチウム=ジイ
ソプロピルアミド、3,4-ジ低級アルキルオキシベンズア
ルデヒド、及びヘキサメチルホスホラス=トリアミドと
反応させて、DL−スレオ-2-(3,4-ジ低級アルキルオキ
シ−α−ヒドロキシベンジル)イソ吉草酸アルキルを
得、次でそのヒドロキシ基をアシル基で保護した後、三
塩化ルテニウム又は二酸化ルテニウムを触媒としてこれ
ら触媒を酸化しうる酸化剤を用いて反応させる、一般式
[D] (式中、R1は低級アルキル基、R4はアルキル基又はア
リール基を示す。)で表わされる、O−アシル化DL−
スレオ-3-イソプロピルリンゴ酸モノアルキルの製法の
発明である。
即ち、本発明者は、合成化学的に効率良く、且つ工業的
に実施容易なDL−スレオ-3-イソプロピルリンゴ酸の
製法を求めて鋭意研究を重ねた結果、上記本発明の新規
化合物及びその製法を見出し、これを経由するDL−ス
レオ-3-イソプロピルリンゴ酸の新規な製造法を得、本
発明を完成した。最終目的化合物はD−スレオ−3−イ
ソプロピルリンゴ酸であるが、生体内所産ではないの
で、そのL体が共存する。D体とL体とは、研究的には
分離可能であるが、工業的にはL体の共存が実用に当っ
て全く障碍にならないので、経済的な負担を敢て負うこ
とないように、本発明はDL-スレオ−3−イソプロピル
リンゴ酸の製法を目的とする。
本発明に関与する化合物は、キラルな部分を2個以上も
って、その異性体はジアステレオマーと呼ばれるもので
あるから、これを完璧に紙面に式示することはできない
が、慣例に従って本発明の化合物及び製法を用いたDL
−スレオ-3-イソプロピルリンゴ酸の製法を式示すれ
ば、以下の如くである。
ここに化合物〔B〕、〔C〕、及び〔D〕は、文献未載
の新規な化合物である。本発明の方法は、まず化合物
〔A〕を、リチウム=ジイソプロピルアミド(LDAと称
す)の存在下に、3,4−ジ低級アルキルオキシベンズア
ルデヒド及び、ヘキサメチルホスホラス=トリアミド
(HMPAと称す)と反応させて、化合物〔B〕を得、次い
でこの化合物〔B〕のヒドロキシ基をアシル基で保護し
て化合物〔C〕とした後、三塩化ルテニウム又は二酸化
ルテニウムを触媒として、これら触媒を酸化し得る酸化
剤例えば、過沃素酸アルカリを反応させて、化合物
〔D〕を得る。この間、副生する少量のエリスロ体を分
離除去するとか、化合物〔D〕に水酸化アルカリを反応
させてエステルを加水分解するとか、或は各化合物を精
製するとかのことは、通常のことである。そうして、化
合物〔D〕を加水分解すれば、最終目的化合物〔E〕が
収得されるのである。
更に本発明製法を詳記する。LDAの調製は常法で行われ
る。アルゴン等不活性ガス雰囲気中、テトラヒドロフラ
ン(THFと称す)等エーテル型溶媒中のジイソプロピル
アミンに、市販のブチルリチウムのヘキサン溶液を加え
冷時に反応を行なった後、これにHMPAを加える。次
いで、−50℃程度に保ちながら、化合物〔A〕のエー
テル型溶媒溶液をゆっくり滴下する。撹拌反応の後3,4
−ジ低級アルキルオキシベンズアルデヒドのエーテル型
溶媒溶液を加える。薄層クロマトグラフィで監視して反
応完了したら、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、n
−ヘキサン、エーテル等の溶媒で抽出、抽出液を水洗し
乾燥し、要すればシリカゲルのショートカラムを通して
HMPAを除去した後溶媒を溜去し、スレオ体及びエリスロ
体の混合成績体を得る。収率は80%以上である。この
混合成績体に於いて、スレオ体とエリスロ体の比率は
4:1と、スレオ体が圧倒的に多く、これが本発明方
法、HMPAを共存させた効果である。HMPAの共存が無い場
合、通常その比は逆に1:5〜7である。
次いでシリカゲルカラムを、例えばエーテルとヘキサ
ン、酢酸エチルとヘキサン等の混合溶媒を使用して通
し、スレオ体とエリスロ体とを分離する。両異性体の性
状は実施例に於いて更に詳記するが、スレオ体即ち化合
物〔B〕は油状のものであり、エリスロ体は結晶状のも
のである。
化合物〔B〕をピリジンに溶解し、無水酢酸を加えて、
室温乃至冷却下数時間乃至一昼夜反応させた後反応液を
氷水にあけ、エーテル、ヘキサン等適当な溶媒で抽出
し、抽出液を洗浄し乾燥すれば化合物〔C〕が得られ
る。これをエーテル、四塩化炭素等の溶媒に溶解し、こ
の溶液を更に、適宜水性の混合溶媒中に加え、次いで、
適当な酸化剤、例えば過沃素酸アルカリ等を加え、触媒
の三塩化ルテニウム又は二酸化ルテニウム等を与え、薄
層クロマトグラム上の原料(即ち化合物〔C〕)スポッ
トが消失するまで反応する。溶媒を除去して得た化合物
〔D〕を、水酸化アルカリ水溶液と室温で反応させ、エ
ステルを加水分解する。反応後塩酸酸性で溶媒(エーテ
ル、酢酸エチル等)抽出し、水洗乾燥の後溶媒を除去す
れば、化合物〔E〕の結晶が収得される。
〔作用〕
本発明に於いて、HMPAの共存が、目的の異性体を圧倒的
に多く与える機構については、尚純学問的な解明に俟つ
べきものであり、今の段階で確言すべきものではない。
しかし本発明アルドール縮合を、HMPA共存で行うことは
不可欠の要件である。
〔発明の効果〕
DL−スレオ-3-イソプロピルリンゴ酸の製造は、従前
の生合成も化学合成も、目的異性体を収得するには余り
にも無力であった。効率も低く、到底工業化できるもの
でなかった。本発明は、この目的物を収得するのに、画
期的な中間体と製法とを与え、比較的穏やかな条件とす
ぐれた効率を示し、工業的生産を容易にすることを期待
させるものである。
以下本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定され
るものでない。
〔実施例〕
実施例1. (a)DL-スレオ−2−(3,4−ジメトキシ−α−ヒドロキ
シベンジル)イソ吉草酸エチルの合成 1の四頚フラスコに、アルゴン気流下、ジイソプロピ
ルアミン39.4g、THF 100mlを加え、0〜5℃で撹拌し
た。この状態のまま、これに、ブチルリチウム15%ヘ
キサン溶液142.2gを滴下し、滴下後30分間撹拌を続
け、更にこれにHMPA133.5gを加えた。次に、内温を約−
50℃に下げ、これにTHF 100mlにイソ吉草酸エチル42.
2gを溶解したものを滴下し、滴下後30分間撹拌を続
け、更にこの状態のまま、これに3,4−ジメトキシベン
ズアルデヒド59.2gをTHF 200mlに溶解したものを滴下
し、滴下後0℃で30分間撹拌した。反応終了後、反応
液の温度を室温にもどし、これにヘキサン500mlを加え
抽出を行ない、このヘキサン層を飽和NH4Cl水溶液300ml
で2回、1NHCl300mlで2回、蒸留水300mlで2回、こ
の順序で洗浄した。洗浄後ヘキサン層をNa2SO4で乾燥
し、減圧下溶媒留去することにより、黄色油状物87.4g
(収率84%)を得た。《スレオ体とエリスロ体の混合
物》 次いで、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル〔ワコ
ーゲルC−300,和光純薬工業(株)商品名〕,展開
溶媒ヘキサン:酢酸エチル=2:1)により異性体分離
を行ない、目的とするスレオ体の淡黄色油状物68.2g
(異性体分離工程の収率78%)を得た。
(b)O−アセチル−DL−スレオ−2−(3,4−ジメトキシ
−α−ヒドロキシベンジル)イソ吉草酸エチルの合成 500mlの四頚フラスコに、前工程で得られたDL−スレ
オ−2−(3,4ジメトキシ−α−ヒドロキシベンジル)
イソ吉草酸エチル27g、ピリジン200mlを加え、0
〜5℃で撹拌した。この状態のまま、これに無水酢酸4
6.4gを加え1時間撹拌を行ない、更に温度を25〜30
℃に上げ、7時間撹拌反応を行なった。反応終了後、反
応液を200mlの氷水中に注ぎ、これにヘキサン−酢酸
エチル溶液(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)300ml
を加え抽出を行なった。抽出操作を3回行なった後有機
層を合わせ、これを、1NHCl500mlで2回、5%NaH
CO3200mlで2回、飽和食塩水200mlで1回、この
順序で洗浄した。洗浄後有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧
下溶媒留去することにより、淡黄色油状物2g(収率8
7.5%)を得た。
(c)O−アセチル−DL−スレオ−3−イソプロピルリン
ゴ酸モノエチルの合成 1の四頚フラスコに、前工程(b)で得られたO−アセ
チル−DL−スレオ−2−(3,4−ジメトキシ−α−ヒド
ロキシベンジル)イソ吉草酸エチル27g、CCl4200
ml、CH3CN200ml、蒸留水300mlを加え、5〜8℃
で撹拌溶解を行なった。この状態のまま、これにRuCl
30.4g、NaIO456.8gを加え、10分間撹拌反応後、NaIO4
100gを加え、10分間撹拌反応を行なった。更に5
〜8℃でNaIO4100gを加え、30分間撹拌反応後、
反応温度を25〜30℃に上げ、7時間撹拌反応させ
た。反応終了後、イソプロピルアルコール100mlを加
え酸化反応を停止し、セライト過によりNaIO3とRuCl3
を除去した。液にヘキサン−酢酸エチル溶液(ヘキサ
ン:酢酸エチル=2:1)を加え抽出を行なった。抽出
操作を3回行なった後有機層を合わせ、これを蒸留水5
00mlで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後、減圧下溶
媒留去することにより、褐色油状物16.7g(収率85
%)を得た。
参考例1DL−スレオ−3−イソプロピルリンゴ酸の合成 500mlの四頚フラスコに、KOH22.4g、蒸留水200ml
を加え、25〜30℃で撹拌溶解し、これに実施例1で
得たO−アセチル−DL−スレオ−3−イソプロピルリン
ゴ酸モノエチル16.7gを加え、1時間撹拌反応させた。
反応終了後、反応液に2NHCl250mlを加え、pH2以
下とした。これに酢酸エチル300mlを加え抽出を行な
った。抽出操作を3回行なった後有機層を合わせ、Na2S
O4で乾燥後、減圧下溶媒留去することにより、褐色結晶
11g(収率92%)を得た。この粗結晶5gを水10
0mlに溶解し、ヘキサン100mlで洗浄する操作を5回
行なった後、水層を濃縮乾固することにより、黄色結晶
4.4gを得た。この黄色結晶4.4gを1,2−ジクロロエタン
200mlに加え、10分間加熱還流後、10℃に冷却
し、結晶を取した(得量3.9g)。この結晶3.9gを更に
1,2−ジクロロエタン500mlに加え、10分間加熱還
流後、25℃に放冷し、結晶を取することにより、白
色結晶3.2g(収率64%)を得た。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式[D] (式中、R1は低級アルキル基、R4はアルキル基又はア
    リール基を示す。)で表わされる、O−アシル化DL−
    スレオ-3-イソプロピルリンゴ酸モノアルキル。
  2. 【請求項2】イソ吉草酸アルキルを、リチウム=ジイソ
    プロピルアミド、3,4-ジ低級アルキルオキシベンズアル
    デヒド、及びヘキサメチルホスホラス=トリアミドと反
    応させて、DL−スレオ-2-(3,4-ジ低級アルキルオキ
    シ−α−ヒドロキシベンジル)イソ吉草酸アルキルを
    得、次でそのヒドロキシ基をアシル基で保護した後、三
    塩化ルテニウム又は二酸化ルテニウムを触媒としてこれ
    ら触媒を酸化しうる酸化剤を用いて反応させる、 一般式[D] (式中、R1は低級アルキル基、R4はアルキル基又はア
    リール基を示す。)で表わされる、O−アシル化DL−
    スレオ-3-イソプロピルリンゴ酸モノアルキルの製法。
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