JPH0638188Y2 - デュオサ−ボ型ドラムブレ−キ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 技術分野 本考案はデュオサーボ型ドラムブレーキに関するもので
ある。

従来技術 バッキングプレート上に互いに拡開可能に配設された一
対のブレーキシューと、それらブレーキシューの相対向
する各一端部を連結する連結機構と、前記バッキングプ
レート上に固定され、前記ブレーキシューの他端部が当
接させられることによりそれらブレーキシューに伝達さ
れた制動トルクを受け止めるアンカ部材と、直線部、そ
の直線部の先端において回曲する回曲部、およびその回
曲部の先端から延びてその直線部と対向する対向部から
成る略Ｕ字状のフックを一端に有し、そのフックが前記
バッキングプレートに設けられた板状の掛止部材に引っ
掛けられることによりその掛止部材と前記一方のブレー
キシューとの間に張設されてその一方のブレーキシュー
を他方のブレーキシューに向かって付勢する引張りコイ
ルスプリングとを備えたデュオサーボ型ドラムブレーキ
が知られている。かかるデュオサーボ型ドラムブレーキ
には、内周面が両ブレーキシューの外周面と僅かな間隙
を隔てて対向する状態で且つそれらブレーキシューとの
相対回転可能な状態で有底円筒状を成す回転ドラムが設
けられており、この回転ドラム内において前記引張りコ
イルスプリングにより前記一方のブレーキシュー（セカ
ンダリーシュー）が他方のブレーキシュー（プライマリ
ーシュー）に向かって付勢されることに基づいてブレー
キの引きずりが効果的に防止されるようになっている。

上記掛止部材は、通常、その板面が前記フックの直線部
と略平行に位置させられているとともに前記他方のブレ
ーキシュー側に向かって開口する切欠を有しており、こ
の切欠内に前記フックが引っ掛けられるようになってい
る。

考案が解決すべき問題点 しかしながら、かかるデュオサーボ型ドラムブレーキの
回転ドラムが組み付けられる前のドラムブレーキアッセ
ンブリの状態においては、両ブレーキシューが連結機構
と共にアンカ部材を略支点として比較的大きく移動させ
られる場合がある。このような場合には、前記一方のブ
レーキシューが他方のブレーキシュー側へ移動させられ
るに伴って前記引張りコイルスプリングが他方のブレー
キシュー側へ比較的大きく移動させられて、前記フック
の対向部先端が前記掛止部材の切欠底部を未だ越えてい
ないにも拘わらず、前記フックの回曲部が切欠の開口部
からはみ出してフックが切欠内から外れてしまう場合が
あった。

これに対し、掛止部材に係合穴を設け、この係合穴にフ
ックを引っ掛けるようにすればフックの係合穴からの外
れを効果的に防止し得ると考えられるが、この場合にお
いても未だ解決すべき問題を有している。すなわち、こ
の場合には、Ｕ字状のフックの対向部をその先端側から
係合穴に挿し通す必要があるため、比較的強い引張りコ
イルスプリングのフックを掛け止める組付作業が従来に
比べて比較的面倒になることが避け難いのである。

問題点を解決するための手段 本考案は以上の事情を背景として為されたものであっ
て、その目的とするところは、前記引張りコイルスプリ
ングのフックの前記掛止部材からの外れを効果的に防止
し得かつフックを掛止部材に容易に引っ掛け得るデュオ
サーボ型ドラムブレーキを提供することにある。かかる
目的を達成するために、本考案は、前記のようなデュオ
サーボ型ドラムブレーキにおいて、前記フックが引っ掛
けられる板厚方向に貫通した係合穴と、その係合穴を構
成する切欠線のうちスプリング側の線に連続し且つその
係合穴から離隔する程そのスプリングがら離れる第１斜
線とその第１斜線に連続し且つ係合穴から離隔する程そ
のスプリングに接近する第２斜線とを有する第１切欠線
と、その係合穴を構成する切欠線のうちスプリングから
離れた側の線に連続し且つその係合穴から離隔する程そ
のスプリングに接近する第２切欠線とを備えて、その係
合穴を外周縁に連通させる通路を、前記掛止部材の係合
部に設けたことにある。

作用および考案の効果 このようにすれば、係合穴を構成する切欠線のうちスプ
リング側の線に連続し且つその係合穴から離隔する程そ
のスプリングから離れる第１斜線とその第１斜線に連続
し且つ係合穴から離隔する程スプリングに接近する第２
斜線とを有する第１切欠線により、引張りコイルスプリ
ングの張設時において、一方のブレーキシューに形成さ
れた貫通穴に引掛けられたコイルスプリングのフックを
バッキングプレート側へ押し付けることにより、そのフ
ックが第２斜線に沿って案内されつつ第１斜線を介して
係合穴に容易に引掛けられる。また、係合穴を構成する
切欠線のうちスプリングから離れた側の線に連続し且つ
係合穴から離隔する程スプリングに接近する第２切欠線
により、一方のブレーキシューが他方のブレーキシュー
側へ移動させられるに伴って引張りコイルスプリングが
他方のブレーキシュー側へ比較的大きく移動させられて
も、フックと第２切欠線との当接に基づいてその当接以
降のフックの掛止部材に対する相対移動を阻止し得るの
で、フックの係合穴からの外れを効果的に防止し得る。

実施例 以下、本考案の一実施例を示す図面に基づいて詳細に説
明する。

第２図において、バッキングプレート10上には一対のブ
レーキシュー12,14がシューホルドダウン装置16,18によ
り所定の押圧力でバッキングプレート10に向かって押圧
された状態で互いに拡開可能に支持されている。ブレー
キシュー12,14の相対向する各一端部は、アジャスタ20
の両端部とそれぞれ係合させられているとともに、図示
しないスプリングにより互いに接近する方向へ付勢され
ている。このアジャスタ20は、その軸心方向長さが可変
な状態で両ブレーキシュー12,14の各一端部間を連結す
るものであって、本実施例における連結機構を構成して
いる。一方、ブレーキシュー12,14の各他端部は、バッ
キングプレート10上に固定されたアンカピン22の側面に
それぞれ当接させられるようになっているとともに、そ
のアンカピン22と両ブレーキシュー12,14との間にそれ
ぞれ張設されたリターンスプリング24,26により互いに
接近する方向へ常時付勢されている。このアンカピン22
が本実施例におけるアンカ部材を構成している。一方の
ブレーキシュー12の他端部側（アンカピン22側）には、
一端部に図示しないパーキングケーブルが連結されたパ
ーキングブレーキレバー28がその他端部において回動可
能に取り付けられているとともに、一方のブレーキシュ
ー12およびパーキングブレーキレバー28と他方のブレー
キシュー14との間にはストラット32が架け渡されてい
る。

前記一方のブレーキシュー12に形成された貫通穴34とバ
ッキングプレート10の内周部に突設された掛止部材36と
の間には、第１図および第２図に示すように、引張りコ
イルスプリング38が張設されており、この引張りコイル
スプリング38により一方のブレーキシュー12（セカンダ
リーシュー）が他方のブレーキシュー14（プライマリー
シュー）に向かって付勢されている。引張りコイルスプ
リング38は、コイル部40と、そのコイル部40の軸心方向
両側にそれぞれ設けられた一対のフック42とを一体に備
えて構成されており、フック42は、コイル部40の一端か
らコイル部40の軸心と平行な方向へ突き出す直線部44
と、その先端において回曲する回曲部46と、その回曲部
46の先端から所定距離延びて直線部44と対向する対向部
48とから成る。この所定距離は、回曲部46が掛止部材36
の後述の係合穴52周壁のブレーキシュー14側の部分と当
接した状態において対向部48先端の係合穴52からの外れ
を必要かつ充分に防止し得る距離であって、係合穴52の
前記直線部44と平行な方向における最大幅寸法等に基づ
いて予め決定される。

上記掛止部材36は、第１図に示すように、固定部50と、
板面がバッキングプレート10と略直角であって且つ前記
フック42の直線部44と略平行に位置する状態で固定部50
に一体に突設されるとともに板厚方向に貫通する係合穴
52を有する板状の係合部54とを備えて構成されており、
固定部50において溶接等によりバッキングプレート10に
固着されているとともに、係合穴52に前記フック42が引
っ掛けられている。この係合穴52は、三角形状を成し、
その一辺がバッキングプレート10と平行な状態で、すな
わち、係合穴52を構成する切欠線のうち引張りコイルス
プリング38側の線に連続し且つ係合穴52から離隔する程
コイルスプリング38から離れる第１斜線53と、第１斜線
53に連続し且つ係合穴52から離隔する程コイルスプリン
グ38に接近する第２斜線55とを有する第１切欠線57と、
係合穴52を構成する切欠線のうちコイルスプリング38か
ら離れた側の線に連続し且つ係合穴52から離隔する程コ
イルスプリング38に接近する第２切欠線59とを備えて、
係合穴52を外周縁に連通させる通路56が設けられてい
る。この通路56の最小幅は引張りコイルスプリング38の
線径より僅かに大きい寸法とされている。

以上のように構成されたドラムブレーキアッセンブリ
は、そのバッキングプレート10の内周部において車両の
非回転部材に固定されるとともに、有底円筒状を成す回
転ドラム（図示せず）がその内周面がブレーキシュー1
2,14の外周面と僅かな間隙を隔てて対向する状態で前記
非回転部材に回転可能に設けられることにより、デュオ
サーボ型ドラムブレーキが組み立てられることとなる。
なお、第２図において、Ａは前記回転ドラムの車両前進
時における回転方向を示している。また、かかるデュオ
サーボ型ドラムブレーキの作動は本考案の理解に必ずし
も必要ではないとともに良く知られたものであるため、
その詳細な説明は省略する。

ここで、第４図は従来のデュオサーボ型ドラムブレーキ
の要部を示す図である。なお、以下の説明において前述
の実施例と同様の部分には同一の符号を付して詳細な説
明は省略する。図において、掛止部材60の係合部62の板
面は、バッキングプレート10に略直角であって且つフッ
ク42の直線部44と略平行に位置させられているととも
に、その係合部62にはブレーキシュー12から離隔する方
向に向かって開口してフック42が引っ掛けられる所定深
さの切欠64が形成されている。これにより、回転ドラム
が組み付けられる前のドラムブレーキアッセンブリにお
いて、ブレーキシュー12,14がアジャスタ20と共にアン
カピン22を略支点としてブレーキシュー14外周側へ向か
って移動させられて引張りコイルスプリング38がブレー
キシュー14側へ比較的大きく移動させられた場合には、
前記フック42の対向部48先端が未だ前記切欠64底部を越
えていないにも拘わらず、フック42の回曲部46が切欠64
の開口部からはみ出してフック42が切欠64から外れてし
まう場合があったのである。

これに対し、本実施例によれば、掛止部材36の係合部54
の板面がフック42の直線部44と略平行に位置させられて
おり且つその係合部54に係合穴52が設けられているとと
もにコイルスプリング38から離れた側の線に連続し且つ
係合穴52から離隔する程コイルスプリング38に接近する
第２切欠線59によりたとえ、ブレーキシュー12のブレー
キシュー14側への移動に伴って引張りコイルスプリング
38がブレーキシュー14側へ比較的大きく移動させられた
としても、第１図に示すように、フック42の回曲部46と
係合部52周壁のブレーキシュー14側の部分との当接に基
づいてその当接以降のフック42の係合穴52に対する相対
移動が阻止されるとともに、その状態においては前述の
ように対向部48の先端が係合穴52から外れることはない
ので、フック42の係合穴52からの外れが従来に比べて一
層確実に防止される。しかも、引張りコイルスプリング
38の張設時においては、コイルスプリング38側の線に連
続し且つ係合穴52から離隔する程コイルスプリング38か
ら離れる第１斜線53と、その第１斜線53に連続し且つ係
合穴52から離隔する程コイルスプリング38に接近する第
２斜線55とを有する第１切欠線57により、貫通穴34に引
っ掛けられたフック42をバッキングプレート10側へ押し
付けることにより、フック42が第２斜線55に沿って案内
されつつ第１斜線53を介して係合穴52に容易に引っ掛け
られる。

なお、前述の実施例において、係合部54の板面はバッキ
ングプレート10と略直角に位置させられているが、必ず
しもその必要はなく、バッキングプレート10と直角でな
くても係合部54の板面がフック42の直線部44と略平行に
位置させられておれば、前述の実施例と略同様の効果が
得られる。

また、前述の実施例において、通路56はバッキングプレ
ート10から離隔する程幅広となるように形成されている
が、必ずしもその必要はなく、同一幅にて形成されてい
ても良い。この場合には、たとえば第３図に示すよう
に、通路58はバッキングプレート10から離隔する程ブレ
ーキシュー12側へ傾斜させられていても良い。この場合
においては、フック42がバッキングプレート10から離隔
する方向へ移動させられた場合に、フック42の係合穴52
からの外れが一層効果的に防止される利点がある。

また、前述の実施例において、引張りコイルスプリング
38はブレーキシュー12をブレーキシュー14に向かって付
勢するように設けられているが、ブレーキシュー12がプ
ライマリーシューであり且つブレーキシュー14がセカン
ダリーシューである場合には、ブレーキシュー14をブレ
ーキシュー12に向かって付勢するように設けられること
となる。

また、前述の実施例においては、パーキングブレーキ機
構のみを備えたデュオサーボ型ドラムブレーキに本考案
が適用された場合について説明したが、必ずしもその必
要はなく、サービスブレーキ機構のみ、あるいはそれら
両ブレーキ機構を備えたデュオサーボ型ドラムブレーキ
においても本考案を適用し得ることは勿論である。

その他、本考案はその趣旨を逸脱しない範囲において種
々変更が加えられ得るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は第２図のI-I視断面の要部を拡大して示す図で
ある。第２図は本考案が適用されたデュオサーボ型ドラ
ムブレーキの要部を示す正面図である。第３図は本考案
の他の例の要部を示す図であって、第１図に対応する図
である。第４図は従来のデュオサーボ型ドラムブレーキ
の要部を示す図であって、第１図に相当する図である。 10:バッキングプレート 12,14:ブレーキシュー 20:アジャスタ（連結機構） 22:アンカピン（アンカ部材） 36:掛止部材 38:引張りコイルスプリング 42:フック 44:直線部 46:回曲部 48:対向部 52:係合穴 54:係合部 56,58:通路

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】バッキングプレート上に互いに拡開可能に
   配設された一対のブレーキシューと、 該ブレーキシューの相対向する各一端部を連結する連結
   機構と、 前記バッキングプレート上に固定され、前記ブレーキシ
   ューの他端部が当接させられることにより該ブレーキシ
   ューに伝達された制動トルクを受け止めるアンカ部材
   と、 直線部と、その先端において回曲する回曲部と、該回曲
   部の先端から延びて該直線部と対向する対向部とから成
   る略Ｕ字状のフックを一端に有し、該フックが前記バッ
   キングプレートに設けられた板状の掛止部材に引っ掛け
   られることにより該掛止部材と前記ブレーキシューの一
   方との間に張設されて該一方のブレーキシューを他方の
   ブレーキシューに向かって付勢する引張りコイルスプリ
   ングと を備えたデュオサーボ形ドラムブレーキにおいて、 前記フックが引っ掛けられる板厚方向に貫通した係合穴
   と、 該係合穴を構成する切欠線のうち前記スプリング側の線
   に連続し且つ該係合穴から離隔する程該スプリングから
   離れる第１斜線と該第１斜線に連続し且つ該係合穴から
   離隔する程該スプリングに接近する第２斜線とを有する
   第１切欠線と、該係合穴を構成する切欠線のうち該スプ
   リングから離れた側の線に連続し且つ該係合穴から離隔
   する程該スプリングに接近する第２切欠線とを備えて、
   該係合穴を外周縁に連通させる通路と、 を、前記掛止部材の係合部に設けたことを特徴とするデ
   ュオサーボ型ドラムブレーキ。