JPH063127B2 - エンジンの動弁装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、吸気系もしくは排気系の少なくとも一方に１
気筒当り２個のバルブを設けたエンジンにおいて、運転
状態に応じてバルブリフト特性を変えることのできる動
弁装置に関するものである。

（従来技術） エンジンの吸，排気バルブの作動特性を設定する場合
に、低速時にはバルブオーバーラップ期間における排気
の吹返しや吸気の吹抜けを抑制する等により燃焼の安全
性および燃費の向上を図るため、バルブリフト量および
開弁期間を比較的小さくすることが望ましく、高速時に
は出力の向上等のためバルブリフト量や開弁期間を大き
くすることが望ましい。

このような要求を満足するため、形状の異なる２種のカ
ムを設け、これらのカムのいずれかに選択的にバルブを
連係させ、かつその連係を運転状態に応じて切替えるよ
うにした動弁装置は従来においても知られており、この
種の動弁装置としては、例えば実開昭５７−１８２２０
５号公報に示されているようなものがある。この装置
は、１個のバルブに対して低速型と高速型の２個のカム
と１個のロッカーアームとを有し、ロッカーアームのカ
ム側部分を２又状に形成してその一方の端部を低速型カ
ムへの当接部とするとともに、他方の端部に摺動可能な
高速カム当接部材およびその摺動を阻止するストッパを
装備し、このストッパを油圧シリンダ等のアクチュエー
タにより連動機構を介して作動するようにしている。そ
して上記アクチュエータを運転状態に応じて制御するこ
とにより、低速時には上記高速カム当接部材が遊動して
高速型カムの作動がバルブに伝達されず低速型カムでバ
ルブが作動され、高速時には上記高速カム当接部材の摺
動が阻止されて高速型カムの作動がバルブに伝達される
ようにしている。

ところで、上記従来装置は、吸気系もしくは排気系のバ
ルブが１気筒につき１個設けられたエンジンにおいて、
この１気筒につき１個のバルブのリフト特性を運転状態
に応じて変えるようにしているにすぎず、吸気バルブ、
排気バルブの双方もしくはいずれか一方が１気筒につき
２個設けられたエンジンには適用されていなかった。ま
た上記従来装置によると、低速域と高速域とにわたって
運転状態が変化したとき、バルブリフト特性の変化に伴
う吸気導入量の変動により、トルクショックが生じ易か
った。

（発明の目的） 本発明はこのような事情に鑑み、吸気系もしくは排気系
の少なくとも一方に、１気筒当り複数個のバルブを設け
たエンジンにおいて、エンジンの要求に応じたバルブリ
フト特性の調整を行うことができ、特に低速域での充填
量を高めるとともに、低速域と高速域とに亘って運転状
態が変動したときのトルクショックを軽減することがで
きるエンジンの動弁装置を提供するものである。

（発明の構成） 本発明は、吸気系もしくは排気系の少なくとも一方に、
１気筒当り２個のバルブを設けたエンジンにおいて、低
速型カムと高速型カムとを含む複数のカムからなるカム
群と、上記各バルブとカム群との間の伝達機構と、この
伝達機構に具備されて上記カム群の個々のカムと上記各
バルブとの連係を制御する制御機構と、低速域では上記
両バルブをともに低速型カムに連係させ、高速域では両
バルブを各々低速型カムと高速型カムとに連係させるよ
うに上記制御機構をコントロールするコントロール手段
とを設けたものである。

つまり、低速域では両バルブが比較的小さなリフト量、
開弁期間をもって作動され、高速域では一方のバルブの
リフト量、開弁期間が大きくされるようにしている。

（実施例） 第１図乃至第３図は本発明の一実施例を示し、図では吸
気バルブに適用した場合を示しており、これらの図にお
いて１はシリンダヘッド、２は気筒であり、この気筒２
には２個の吸気バルブ３，４が装備されている。気筒２
には排気バルブも装備されるが、排気バルブおよびその
駆動系については図示を省略している。上記両吸気バル
ブ３，４に対しては、カムシャフト５に配設された３個
のカム６，７，８からなるカム群と、ロッカーシャフト
９に支承された別個の互いに独立したロッカーアーム１
０，３０からなる伝達機構とで駆動系が構成されてい
る。上記カム群は、一方の吸気バルブ３に対して設けら
れた低速型および高速型の２個のカム６，７と、他方の
吸気バルブ４に対して設けられた低速型カム８とで構成
されている。

上記各低速型カム６，８は、バルブリフト量および開弁
期間を比較的小さくするようにカムノーズが小さく形成
され、上記高速型カム７はバルブリフト量、開弁期間の
少なくとも一方を低速型カム６，８よりも大きくするよ
うにカムノーズが大きく形成されている。

上記両ロッカーアーム１０，３０からなる伝達機構に
は、各カム６，７，８と各吸気バルブ３，４との連係を
制御する制御機構が設けられている。当実施例ではこの
制御機構として、上記一方のロッカーアーム１０が高速
型カム７への当接部を有する第１アーム１１と一方の吸
気バルブ３および低速型カム６への当接部を有する第２
アーム１２とに分割され、この両アーム１１，１２がロ
ッカーシャフト９回りに相対運動可能に支承されるとと
もに、この両アーム１１，１２を接続状態と非接続状態
とに切替えるセレクタ１３が上記ロッカーアーム１０に
組込まれている。他方のロッカーアーム３は単に低速型
カム８と他方の吸気バルブ４と連係する構造となってい
る。

上記セレクタ１３はプランジャ１４およびレバー部材１
５を備え、具体的には次のような構造となっている。す
なわち、第１アーム１１の上部には第２アーム１２の上
部に向かって開口するガイド孔１６が形成され、このガ
イド孔１６に上記プランジャ１４が移動可能に収容さ
れ、このプランジャ１４はガイド孔１６内のスプリング
１７によって第２アーム１２に当接するように付勢され
ており、プランジャ１４の途中部には小径の係合部１８
が形成されている。また、第１アーム１１の上部には、
上記レバー部材１５がプランジャ１４に直交してロッカ
ーシャフト９の軸方向に移動可能に支承されており、こ
のレバー部材１５には、プランジャ１４より若干大径の
プランジャ挿通孔１９と上記係合部１８に対応する大き
さで上記プランジャ挿通孔１９に連なった係止孔２０と
が形成されている。上記レバー部材１５の端部はロッカ
ーシャフト９の周囲に設けられた環状の油圧式のアクチ
ュエータ２１にレバー部材１５のアーム１５ａを介して
連結されており、このアクチュエータ２１に図外のオイ
ルポンプからオイル通路２３を介してオイルが供給され
たときにはレバー部材１５が後記ロック位置に向けて作
動され、アクチュエータ２１からオイルがリリーフされ
たときはリターンスプリング２４によりレバー部材１５
が後記非ロック位置に向けて作動されるようになってい
る。レバー部材１５を作動するアクチュエータは上記の
油圧式のものに限らず、ソレノイド等を用いてもよい。

こうして、上記レバー部材１５の係止孔２０がプランジ
ャ１４の係合部１８から離脱してプランジャ挿通孔１９
にプランジャ１４が挿通される非ロック位置にレバー部
材１５があるときは、プランジャ１４の摺動が許容され
ることにより両アーム１１，１２の相対運動が許容され
（このときが非接続状態）、他方、係止孔２０が係合部
１８に係合するロック位置にレバー部材１５が作動され
たときは、プランジャ１４の摺動が阻止されることによ
り、両アーム１１，１２の上部が互いに接近する方向の
相対運動が阻止されるようにしている（このときが接続
状態）。そして、上記両アーム１１，１２が非接続状態
となったときは、高速型カム７の回転に伴う第１アーム
１１の揺動が第２アーム１２に伝達されないため低速型
カム６の回転に応じた第２アーム１２の揺動により吸気
バルブ３が作動され、また両アーム１１，１２が接続状
態となったときは、高速型カム７の回転に応じて両アー
ム１１，１２が一体的に揺動することにより吸気バルブ
３が作動されるようにしている。

上記制御装置は、コントロール手段としてのマイクロコ
ンピュータ等からなる制御回路２６によりコントロール
されている。この制御回路２６は、回転数信号２５等を
受け、例えば上記アクチュエータ２１に対するオイル通
路２３に設けられた制御バルブ２７を介してアクチュエ
ータ２１へのオイルの供給、排出を制御することによ
り、セレクタ１３の作動を制御するようになっている。
そして、一方のロッカーアーム１０の両アーム１１，１
２を低速域で非接続状態、高速域で接続状態とするよう
にセレクタ１３を制御し、こうすることにより、低速域
では上記両吸気バルブ３，４がともに低速型カム６，８
に連係され、高速域では一方の吸気バルブ３が高速型カ
ム７に連係されて、他方の吸気バルブ４が低速型カム８
に連係されるようにしている。

なお、２８，２８′，２９はバルブクリアランス調整用
のアジャスタである。

この動弁装置によると、低速域および高速域のそれぞれ
において、吸気バルブのリフト特性は第４図(a)(b)に実
線で示すようになる。なお、破線Ｂは排気バルブのリフ
ト特性である。

この図によって上記動弁装置の作用を説明すると、低速
域では、両吸気バルブ３，４が第４図(a)に曲線Ａ₁₁，
Ａ_２で示すように、ともに小さなリフト量、開弁期間を
もって作動される。従って、排気バルブとのオーバーラ
ップ量が小さくなって吸気の吹抜け、吹返し等が抑制さ
れ、しかも両吸気バルブ３，４によって燃焼室への開口
量は充分に確保され、このため、低速域での充填量が高
められる。また、高速域では、一方の吸気バルブ３が第
４図(b)に曲線Ａ₁₂で示すように、大きなリフト量、開
弁期間をもって作動され、他方の吸気バルブ４が小さな
リフト量、開弁期間（曲線Ａ_２）をもって作動される。
従って低速域と比べ、一方の吸気バルブ３のリフト特性
の変化分だけ１気筒当りの吸気バルブ全体としての燃焼
室への開口量や開口時間が大きくなって、高速域で要求
される多量の吸気の導入が許容され、しかも他方の吸気
バルブ４のリフト特性は変化しないので、低速域と高速
域との間での運転状態変動時に、急激な吸気導入量の変
化によるトルクショックが抑制されることとなる。

なお、本発明において一方の吸気バルブ３と各カム６，
７との連係を切替えるための具体的構造は上記実施例に
限定されず、種々変更可能である。例えばロッカーアー
ム１０を一体化し、その代りに、ロッカーアーム１０の
高速型カム７に当接する端部に摺動可能なプランジャお
よびこれに係脱するストッパ部材を装備することによ
り、この端部で高速型カム７の作動の吸収、伝達を可能
とするようにしてもよい。

また、上記実施例では吸気バルブに適用した場合を示し
たが、本発明は、排気バルブが１気筒当り２個設けられ
ているエンジンにおいて、その２個の排気バルブに適用
してもよく、この場合も、排気バルブのリフト特性の調
整によってバルブオーバーラップ量等を調整できるの
で、吸気バルブに適用した場合と同様にカムとの連係を
制御すればよい。

（発明の効果） 以上のように本発明は、吸気系もしくは排気系の少なく
とも一方に１気筒当り２個のバルブを設けたエンジンに
おいて、低速域では上記両バルブをともに低速型カムに
連係させ、高速域では両バルブを各々低速型カムと高速
型カムとに連係させるようにしているので、低速域では
燃焼室への開口面積を充分に確保しつつ吸気の吹抜け、
吹返し等を防止して充填量を高め、低速域でのトルクア
ップが図れるとともに、高速域での出力も向上し、しか
も低速域と高速域との間での運転状態変動時のトルクシ
ョックを軽減することができるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明装置の一実施例を示す平面図、第２図は
第１図のII−II線に沿った断面図、第３図はロッカーシ
ャフト位置での縦断正面図、第４図(a)(b)はそれぞれ低
速域、高速域でのバルブリフト特性の説明図である。 ３，４…吸気バルブ、６，８…低速型カム、７…高速型
カム、１０，３０…ロッカーアーム、１３…セレクタ
（制御機構）、２６…制御回路。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】吸気系もしくは排気系の少なくとも一方
   に、１気筒当り２個のバルブを設けたエンジンにおい
   て、低速型カムと高速型カムとを含む複数のカムからな
   るカム群と、上記各バルブとカム群との間の伝達機構
   と、この伝達機構に具備されて上記カム群の個々のカム
   と上記各バルブとの連係を制御する制御機構と、低速域
   では上記両バルブをともに低速型カムに連係させ、高速
   域では両バルブを各々低速型カムと高速型カムとに連係
   させるように上記制御機構をコントロールするコントロ
   ール手段とを設けたことを特徴とするエンジンの動弁装
   置。