JPH06289633A - 電子写真用感光体 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 電子写真用感光体は第一の感光層上に第二の
感光層を積層して構成される。第一の感光層には顔料が
含有されている。第二の感光層には、化１で表されるテ
トラニトロ銅フタロシアニン（Ａ）と銅フタロシアニン
とを同時に処理して結晶形をα型に変化させたα型銅フ
タロシニン組成物、および光導電性のスクエアリウム化
合物が含有され、それぞれの配合割合が特定範囲内に調
製されている。 【化１】 （ただし、式中ニトロ基は１位もしくは４位、８位もし
くは１１位、１５位もしくは１８位、および２２位もし
くは２５位にそれぞれ一つずつ置換している。） 【効果】 可視域から赤外域の広い波長域において光感
度が高く、化学的にも安定で、繰り返し特性にも優れて
いる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、特定構造を有するテト
ラニトロ銅フタロシアニンと銅フタロシアニンとからな
るα型銅フタロシアニン組成物、および光導電性のスク
エアリウム化合物を電荷発生物質とする感光層を、顔料
を含有する感光層上に積層した、パンクロマチックな光
感度を示す正帯電型の電子写真用感光体に関する。

【０００２】

【従来の技術】現在、電子写真用感光体として、光源の
波長に光感度を有する電荷発生物質と、電荷移動速度の
速い電荷輸送物質とを含有する機能分離型感光体が多く
用いられている。この場合、電荷輸送物質としては、低
分子導電性物質であるヒドラゾン化合物、スチリル化合
物、ピラゾリン化合物、トリフェニルアミン化合物等が
使用されている。

【０００３】一方、光源波長に光感度を有する顔料をバ
インダー樹脂に分散した単層型感光体もあり、これには
アゾ顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アンスラ
キノン顔料、フタロシアニン顔料等が用いられている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】機能分離型感光体の場
合、電荷輸送物質の多くが正孔輸送型であることからそ
のほとんどが負帯電型である。負帯電型の場合、オゾン
の発生による感光体の劣化、および環境、人体に対する
影響等に課題があった。

【０００５】顔料をバインダー樹脂中に分散した単層型
感光体ではフタロシアニン等の顔料を光導電性物質とし
て用いる。これらは正帯電型の感光体であるが感度が低
い、あるいは繰り返し使用による帯電能劣化、感度シフ
ト、耐久性が十分でない等の課題があった。

【０００６】一方、情報の多様化により、複写機、およ
びプリンタにおいても黒一色ではなく、多色あるいはフ
ルカラー化の要求が高まっている。フルカラー電子写真
には幾つかの方法があるが、フィルターあるいはトナー
をフィルターとして用いる場合、感光体としては可視光
全域に光感度を示すパンクロマチックなものが要求され
る。しかし、現在のところ分光感度、光減衰速度ともに
満足するものは得られていない。

【０００７】本発明者らは、顔料を含有する感光層上
に、α型銅フタロシアニン組成物を光導電性物質として
含有する感光層を積層した電子写真用感光体を既に提案
している。この電子写真用感光体は正帯電型であり、顔
料分散型の感光体の課題であった耐久性にも優れたもの
である。しかし、分光感度はパンクロマチックではな
く、フルカラー電子写真に応用することはできなかっ
た。

【０００８】そこで本発明の目的は、α型銅フタロシア
ニン組成物を含有する電子写真用感光体において、パン
クロマチックな分光感度を有し、かつ耐久性に優れた正
帯電型の電子写真用感光体を提供することである。

【０００９】また、本発明の他の目的は、特定の処理を
施した光導電性のスクエアリウム化合物を使用すること
により、より光感度の高い電子写真用感光体を提供する
ことである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明の電子写真用感光
体は、第一の感光層上に第二の感光層が積層されてな
り、第一の感光層には顔料が含有され、第二の感光層に
は電荷発生物質としてα型銅フタロシアニン組成物およ
び光導電性のスクエアリウム化合物が含有され、α型銅
フタロシアニン組成物は化３で表されるテトラニトロ銅
フタロシアニン（Ａ）と銅フタロシアニンとを同時に処
理して結晶形をα型に変化させたものであり、α型銅フ
タロシアニン組成物に対するテトラニトロ銅フタロシア
ニン（Ａ）の割合が２重量％以上２０重量％以下であ
り、電荷発生物質に対するスクエアリウム化合物の割合
が１重量％以上３０重量％以下であることを特徴とする
ものである。

【００１１】

【化３】

【００１２】（ただし、式中ニトロ基は１位もしくは４
位、８位もしくは１１位、１５位もしくは１８位、およ
び２２位もしくは２５位にそれぞれ一つずつ置換してい
る。）

【００１３】また本発明の電子写真用感光体は、第一の
感光層上に第二の感光層が積層されてなり、第一の感光
層には顔料が含有され、第二の感光層には電荷発生物質
としてα型銅フタロシアニン組成物および光導電性のス
クエアリウム化合物が含有され、α型銅フタロシアニン
組成物は化４で表されるテトラニトロ銅フタロシアニン
（Ｂ）と銅フタロシアニンとを同時に処理して結晶形を
α型に変化させたものであり、α型銅フタロシアニン組
成物に対するテトラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）の割
合が１重量％以上１０重量％以下であり、電荷発生物質
に対するスクエアリウム化合物の割合が１重量％以上３
０重量％以下であることを特徴とするものである。

【００１４】

【化４】

【００１５】（ただし、式中ニトロ基は２位もしくは３
位、９位もしくは１０位、１６位もしくは１７位、およ
び２３位もしくは２４位にそれぞれ一つずつ置換してい
る。）

【００１６】さらに本発明の電子写真用感光体は、第一
の感光層上に第二の感光層が積層されてなり、第一の感
光層には顔料が含有され、第二の感光層には電荷発生物
質としてα型銅フタロシアニン組成物および光導電性の
スクエアリウム化合物が含有され、α型銅フタロシアニ
ン組成物はテトラニトロ銅フタロシアニン（Ａ）、テト
ラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）、および銅フタロシア
ニンを同時に処理して結晶形をα型に変化させたもので
あり、α型銅フタロシアニン組成物に対するテトラニト
ロ銅フタロシアニン（Ａ）の割合が１５重量％以下であ
り、テトラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）の割合が８重
量％以下であり、かつテトラニトロ銅フタロシアニン
（Ａ）とテトラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）との和が
２０重量％以下であり、電荷発生物質に対するスクエア
リウム化合物の割合が１重量％以上３０重量％以下であ
ることを特徴とするものである。

【００１７】本発明で用いるα型銅フタロシアニン組成
物としては、銅フタロシアニンとテトラニトロ銅フタロ
シアニン（Ａ）、銅フタロシアニンとテトラニトロ銅フ
タロシアニン（Ｂ）、または銅フタロシアニンとテトラ
ニトロ銅フタロシアニン（Ａ）とテトラニトロ銅フタロ
シアニン（Ｂ）を同時にアシッドペースト法により処理
して結晶形をα型に変化させたものが好ましい。

【００１８】本発明で使用する光導電性のスクエアリウ
ム化合物は、光導電性のスクエアリウム化合物を硫酸に
溶解し硫酸溶液とした後に、硫酸に不活性な水溶性有機
溶剤と硫酸溶液とを混合し、混合液中で水添することに
より得られるものを使用することが好ましい。

【００１９】また、光導電性のスクエアリウム化合物と
しては、光導電性のスクエアリウム化合物を硫酸に溶解
し硫酸溶液とした後に、硫酸に不活性な水溶性有機溶剤
の水溶液と硫酸溶液とを混合することにより得られるも
のも使用することができる。

【００２０】さらに光導電性のスクエアリウム化合物と
しては、光導電性のスクエアリウム化合物を硫酸に溶解
し硫酸溶液とした後に、硫酸溶液を水添することにより
得られるものも使用することができる。

【００２１】

【作用】本発明の電子写真用感光体に用いられるα型銅
フタロシアニン組成物は、α型銅フタロシアニン組成物
に対するテトラニトロ銅フタロシアニン（Ａ）および／
またはテトラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）の割合を変
化させることにより光感度を変化させることが可能であ
る。テトラニトロ銅フタロシアニン（Ａ）および／また
は（Ｂ）の含有量が上述の範囲より少ない場合には感光
体としての光感度が低くなり、多い場合には帯電能が極
端に低下してしまい、どちらの場合にも実用に適さな
い。

【００２２】本発明に用いられる銅フタロシアニン、お
よびテトラニトロ銅フタロシアニン（Ａ）、（Ｂ）は通
常の銅フタロシアニン合成法により得ることができる。

【００２３】本発明において銅フタロシアニンの結晶形
をα型に変化させる方法としてはアシッドペースト法、
アシッドスラリー法、低温昇華法などが挙げられる。本
発明では得られたα型銅フタロシアニン組成物中で、テ
トラニトロ銅フタロシアニンがα型銅フタロシアニンの
結晶中に均一に分布して存在することが重要であり、こ
の点でアシッドペースト法が最も好ましい方法である。
なお、テトラニトロ銅フタロシアニンを単にα型銅フタ
ロシアニンと混合しても目的とする感光体特性を得るこ
とはできない。

【００２４】また、銅フタロシアニンとテトラニトロ銅
フタロシアニン（Ａ）、銅フタロシアニンとテトラニト
ロ銅フタロシアニン（Ｂ）、または銅フタロシアニンと
テトラニトロ銅フタロシアニン（Ａ）とテトラニトロ銅
フタロシアニン（Ｂ）のそれぞれに光導電性のスクエア
リウム化合物を加え、上記アシッドペースト法、アシッ
ドスラリー法、低温昇華法などの処理を施すことによ
り、α型銅フタロシアニン組成物を作製するとともに電
荷発生物質を作製してもよい。

【００２５】本発明で使用するα型銅フタロシアニン組
成物のＸ線回折図を図１に示す。それぞれのピークの位
置は通常のα型銅フタロシアニンのそれと一致する。

【００２６】本発明で使用するスクエアリウム化合物
は、光導電性を有するものであれば使用することができ
る。その一例を化５に示す。また、スクエアリウム化合
物の電荷発生物質に対する割合は１重量％以上３０重量
％以下、好ましくは２重量％以上１５重量％以下であ
り、この範囲内で好ましい感度特性、および耐久性が得
られる。

【００２７】

【化５】

【００２８】（ただし、式中Ｘは水素、フッ素、水酸
基、アルキル基、アルコキシ基等を示す。）

【００２９】また、光導電性のスクエアリウム化合物と
しては、通常の方法で精製することにより得られるもの
以外に、スクエアリウム化合物を硫酸に溶解し硫酸溶液
とした後に、硫酸に不活性な水溶性有機溶剤と硫酸溶液
とを混合し混合液中で水添することにより得られるも
の、硫酸に不活性な水溶性有機溶剤の水溶液と硫酸溶液
とを混合することにより得られるもの、または硫酸溶液
を水添することにより得られるものも使用することがで
きる。このように硫酸に溶解させる処理を施すことによ
り処理前のものに比べてスクエアリウム化合物の粒径を
非常に細かくすることができ、また分散性も向上させる
ことができる。この処理を施したスクエアリウム化合物
を使用することによって、より光感度の高い電子写真用
感光体を得ることができる。

【００３０】硫酸に不活性な水溶性有機溶剤としては、
水に可溶な低級アルコール、グリコール、グリコールエ
ーテル、カルボン酸等が挙げられる。

【００３１】本発明の電子写真用感光体において第一の
感光層に含有される顔料は、光照射により第二の感光層
で生成したキャリアを効率よく注入し、輸送するもので
あればどのような顔料を用いても良い。使用可能な顔料
としては、たとえばフタロシアニン顔料、ペリレン顔
料、アンスラキノン顔料、スクエアリウム顔料、アゾ顔
料、キナクリドン顔料等が挙げられる。また、顔料を含
有する第一の感光層中に低分子導電性物質、または第二
の感光層に使用するα型銅フタロシアニン組成物、もし
くはスクエアリウム化合物を添加しても良い。添加する
低分子導電性物質としては、ヒドラゾン化合物、スチリ
ル化合物、トリフェニルアミン化合物等が用いられる。

【００３２】本発明の電子写真用感光体を構成する第一
の感光層は、顔料をバインダー樹脂に分散しこれを導電
支持体上に塗布して形成される。また、第二の感光層は
電荷発生物質であるスクエアリウム化合物とα型銅フタ
ロシアニン組成物とをバインダー樹脂に分散し、これを
第一の感光層上に塗布して形成される。バインダー樹脂
としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、
ポリビニルブチラール樹脂等の熱可塑性樹脂のほかに、
ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、メラミ
ン樹脂、ホルマリン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド
樹脂等の熱硬化性樹脂等で体積固有抵抗の高い樹脂が用
いられる。

【００３３】本発明の電子写真用感光体の形態の一例を
図面を用いて説明する。図２は本発明の電子写真用感光
体の断面図である。この電子写真用感光体は、顔料を分
散させたバインダー樹脂を導電支持体１上に塗布して第
一の感光層３を形成し、その上にスクエアリウム化合物
とα型銅フタロシアニン組成物とを分散させたバインダ
ー樹脂を塗布して第二の感光層６を形成して作製したも
のである。

【００３４】感光層３、６には、感光体特性を損なわな
い範囲で可とう性、接着性、機械的強度を向上させるた
めの可塑剤、あるいは化学的強度向上のための酸化防止
剤等を用いても良い。また必要に応じて導電支持体１と
の密着性向上、導電支持体１からの電子注入の阻止等を
目的とした中間層、あるいは機械的特性向上のための表
面保護層を設けても良い。

【００３５】感光層３、６、中間層、表面保護層の塗布
は、通常ドクターブレード、ワイヤーバー、ロールコー
ター等が用いられる。

【００３６】図２の電子写真用感光体の場合、第一の感
光層３の膜厚は５〜５０μｍ、好ましくは１０〜２０μ
ｍである。第二の感光層６の膜厚は０．２〜５μｍ、好
ましくは０．５〜２μｍである。さらに中間層、あるい
は表面保護層を設ける場合、その膜厚は１μｍ以下が好
ましい。

【００３７】導電支持体１としては従来使用されている
ものを用いることができる。具体的には、アルミニウ
ム、ステンレス、銅、黄銅等の金属支持体、あるいは絶
縁性支持体にアルミニウム、酸化インジウム等を蒸着し
たものなどが挙げられる。

【００３８】

【実施例】以下、本発明を実施例に従って説明する。

【００３９】（合成例１）スクエアリック酸とＮ，Ｎ−
ジメチルアニリンをｎ−ブタノールとトルエンの混合溶
媒中で加熱し、共沸反応にて脱水することにより化６に
示すスクエアリウム化合物を合成した。

【００４０】

【化６】

【００４１】（実施例１）銅フタロシアニン１０ｇを用
いアシッドペースト法でα型銅フタロシアニンを得た。
このα型銅フタロシアニン５ｇとポリエステル樹脂２０
ｇをシクロヘキサノン１８０ｇに溶解したポリマー溶液
を混合し、振とう式分散機で３時間分散した。得られた
溶液をＡｌ蒸着ポリエステルフィルム上にワイヤーバー
で塗布し、乾燥後の膜厚が１６μｍの第一の感光層を形
成した。

【００４２】銅フタロシアニン９．２ｇとテトラニトロ
銅フタロシアニン（Ａ）０．８ｇ（８重量％）とを硫酸
１００ｇに溶解し、この溶液を２ｌの氷水中にあけα型
銅フタロシアニン組成物を得た。このα型銅フタロシア
ニン組成物４．５ｇ、合成例１で作製したスクエアリウ
ム化合物０．５ｇ、ポリエステル樹脂４ｇ、シクロヘキ
サノン３６ｇからなる分散液を同様に調製し、第一の感
光層上に塗布し、第一および第二の感光層の膜厚の和が
乾燥後に１７μｍなるようにして電子写真用感光体を作
製した。

【００４３】このようにして作製した電子写真用感光体
を、まず暗所にて＋６ｋＶでコロナ帯電し、次いで照度
２．５μＷ／ｃｍ² 、８００ｎｍの単色光で２０秒間露
光し感光体特性を調べた。感光体特性としては、帯電後
初期帯電電位Ｖ₀ 、表面電位が６２０Ｖから６００Ｖま
で暗減衰するのに要する時間ｔD 、６００Ｖから３００
Ｖに光減衰するのに必要な露光量Ｅ1/2 、２０秒光照射
後の残留電位Ｖｒを測定した。更に、この電子写真用感
光体に同様な操作を繰り返し１０００回後のＶ₀ （１０
００）、ｔD （１０００）、Ｅ1/2 （１０００）、Ｖｒ
（１０００）を測定し、耐久性を調べた。結果は下記の
通りであった。また、帯電後時刻ｔ₀ で光照射した際の
光減衰曲線を図３に示す。図３から本発明の電子写真用
感光体は高感度であり、また顔料をバインダー樹脂に分
散させた感光体特有のインダクション現象を非常に微弱
な光量域において示すことがわかる。分光感度特性につ
いては可視域から赤外域にかけて照度２．５μＷ／ｃｍ
² の単色光を用い評価した。その結果を図４の曲線ｂに
示す。図４から本発明の電子写真用感光体は可視域から
赤外域にかけて高感度であることがわかる。

【００４４】Ｖ₀ ＝７８２Ｖ ｔD ＝１７秒 Ｅ1/2 ＝１．４μＪ／ｃｍ² Ｖｒ＝４６Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７６０Ｖ ｔD （１０００）＝１６秒 Ｅ1/2 （１０００）＝１．３μＪ／ｃｍ² Ｖｒ（１０００）＝５８Ｖ

【００４５】（実施例２）テトラニトロ銅フタロシアニ
ン（Ｂ）２重量％、および銅フタロシアニンからなるα
型銅フタロシアニン組成物を用いたほかは、実施例１と
同様の条件で電子写真用感光体を作製した。光減衰曲線
および分光感度特性は実施例１と同様であった。感光体
特性は以下の通りであった。

【００４６】Ｖ₀ ＝８００Ｖ ｔD ＝１９秒 Ｅ1/2 ＝１．３μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ＝４１Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７８９Ｖ ｔD （１０００）＝１７秒 Ｅ1/2 （１０００）＝１．３μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ（１０００）＝４９Ｖ

【００４７】（比較例１）スクエアリウム化合物を使用
しないで、テトラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）２重量
％および銅フタロシアニンからなるα型銅フタロシアニ
ン組成物のみを電荷発生物質として用いた以外は実施例
１と同様の条件で電子写真用感光体を作製した。分光感
度特性を図４の曲線ｃに示す。５５０ｎｍ以下、および
７５０ｎｍ以上の波長域において感度が低下することが
分かる。感光体特性は以下の通りであった。

【００４８】Ｖ₀ ＝７８６Ｖ ｔD ＝１８秒 Ｅ1/2 ＝２．３μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ＝５１Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７８０Ｖ ｔD（１０００）＝１７秒 Ｅ1/2（１０００）＝２．１μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ（１０００）＝５９Ｖ

【００４９】（実施例３）第一および第二の感光層のバ
インダー樹脂として熱硬化性メラミン樹脂を用い、α型
銅フタロシアニン組成物としてテトラニトロ銅フタロシ
アニン（Ｂ）２重量％および銅フタロシアニンからなる
ものを用いたほかは実施例１と同様の条件で電子写真用
感光体を作製した。光減衰曲線および分光感度特性は実
施例１と同様であった。感光体特性は以下の通りであっ
た。

【００５０】Ｖ₀ ＝８４１Ｖ ｔD ＝２０秒 Ｅ1/2 ＝１．３μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ＝５６Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝８３８Ｖ ｔD（１０００）＝１８秒 Ｅ1/2（１０００）＝１．３μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ（１０００）＝６１Ｖ

【００５１】（実施例４）第一の感光層に含有される顔
料として化７で示されるペリレン顔料を用い、α型銅フ
タロシアニン組成物としてテトラニトロ銅フタロシアニ
ン（Ｂ）２重量％および銅フタロシアニンからなるもの
を用いたほかは実施例１と同様の条件で電子写真用感光
体を作製した。感度の絶対値は下がるものの、分光感度
特性は実施例１と同様であった。また、光減衰曲線につ
いては実施例１と同様の結果が得られた。感光体特性は
以下の通りであった。

【００５２】

【化７】

【００５３】Ｖ₀ ＝７４１Ｖ ｔD ＝１６秒 Ｅ1/2 ＝２．１μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ＝５９Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７２８Ｖ ｔD（１０００）＝１４秒 Ｅ1/2（１０００）＝２．０μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ（１０００）＝６３Ｖ

【００５４】（実施例５）第一の感光層に含有される顔
料として化８で示される顔料を用い、α型銅フタロシア
ニン組成物としてテトラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）
２重量％および銅フタロシアニンからなるものを用いた
ほかは実施例１と同様の条件で電子写真用感光体を作製
した。感度の絶対値は下がるものの分光感度特性は実施
例１と同様であった。また、光減衰曲線についても実施
例１と同様の結果が得られた。感光体特性は以下の通り
であった。

【００５５】

【化８】

【００５６】Ｖ₀ ＝７６０Ｖ ｔD ＝１７秒 Ｅ1/2 ＝３．０μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ＝６８Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７２６Ｖ ｔD（１０００）＝１６秒 Ｅ1/2（１０００）＝３．３μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ（１０００）＝７２Ｖ

【００５７】（実施例６）テトラニトロ銅フタロシアニ
ン（Ａ）４重量％、テトラニトロ銅フタロシアニン
（Ｂ）１重量％、および銅フタロシアニンからなるα型
銅フタロシアニン組成物を用いたほかは実施例１と同様
の条件で電子写真用感光体を作製した。光減衰曲線およ
び分光感度特性は実施例１と同様であった。感光体特性
は以下の通りであった。

【００５８】Ｖ₀ ＝７６３Ｖ ｔD ＝１７秒 Ｅ1/2 ＝１．２μＪ／ｃｍ² Ｖｒ＝５２Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７５８Ｖ ｔD （１０００）＝１６秒 Ｅ1/2 （１０００）＝１．０μＪ／ｃｍ² Ｖｒ（１０００）＝５８Ｖ

【００５９】（実施例７）第一の感光層には顔料として
化７に示されるペリレン顔料、および低分子導電性物質
として化９に示されるヒドラゾン化合物（ペリレン顔料
に対して５重量％）、第二の感光層のα型銅フタロシア
ニン組成物としてテトラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）
２重量％および銅フタロシアニンからなるものを用いた
ほかは実施例１と同様の条件で電子写真用感光体を作製
した。光減衰曲線および分光感度特性は実施例１と同様
であった。感光体特性は以下の通りであった。

【００６０】

【化９】

【００６１】Ｖ₀ ＝７５６Ｖ ｔD ＝１５秒 Ｅ1/2 ＝１．９μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ＝５５Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７５１Ｖ ｔD （１０００）＝１３秒 Ｅ1/2 （１０００）＝１．７μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ（１０００）＝６１Ｖ

【００６２】（合成例２）合成例１で作製した光導電性
のスクエアリウム化合物１ｇを硫酸１０ｇに加え、得ら
れた硫酸溶液をジエチレングリコールジメチルエーテル
中に氷浴下で滴下した。その後、水１００ｇをゆっくり
添加することによりスクエアリウム化合物を調製した。

【００６３】（実施例８）合成例２で調製したスクエア
リウム化合物を用いたほかは実施例１と同様の条件で電
子写真用感光体を作製した。また、帯電後時刻ｔ₀ で光
照射した際の光減衰曲線は実施例１の場合と同様に図３
に示すような結果が得られた。分光感度特性については
可視域から赤外域にかけて照度２．５μＷ／ｃｍ² の単
色光を用い評価した。その結果を図４の曲線ａに示す。
曲線ａから本発明の電子写真用感光体は可視域から赤外
域にかけて高感度であり、実施例１に比べてさらに光感
度が高くなっていることがわかる。感光体特性は下記の
通りであった。

【００６４】Ｖ₀ ＝７７１Ｖ ｔD ＝１６秒 Ｅ1/2 ＝１．２μＪ／ｃｍ² Ｖｒ＝５１Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７６８Ｖ ｔD （１０００）＝１６秒 Ｅ1/2 （１０００）＝１．１μＪ／ｃｍ² Ｖｒ（１０００）＝５８Ｖ

【００６５】（実施例９）テトラニトロ銅フタロシアニ
ン（Ｂ）２重量％と銅フタロシアニンとからなるα型銅
フタロシアニン組成物、および合成例２で調製したスク
エアリウム化合物を用いたほかは、実施例１と同様の条
件で電子写真用感光体を作製した。光減衰曲線および分
光感度特性は実施例８と同様であった。感光体特性は以
下の通りであった。

【００６６】Ｖ₀ ＝７９０Ｖ ｔD ＝１８秒 Ｅ1/2 ＝１．１μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ＝５６Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７８６Ｖ ｔD （１０００）＝１７秒 Ｅ1/2 （１０００）＝１．０μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ（１０００）＝５２Ｖ

【００６７】（実施例１０）第一および第二の感光層の
バインダー樹脂として熱硬化性メラミン樹脂、第二の感
光層のスクエアリウム化合物として合成例２で調製した
ものを用いたほかは実施例１と同様の条件で電子写真用
感光体を作製した。光減衰曲線および分光感度特性は実
施例８と同様であった。感光体特性は以下の通りであっ
た。

【００６８】Ｖ₀ ＝８２６Ｖ ｔD ＝１８秒 Ｅ1/2 ＝１．２μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ＝５９Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝８２１Ｖ ｔD（１０００）＝１８秒 Ｅ1/2（１０００）＝１．１μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ（１０００）＝６１Ｖ

【００６９】（実施例１１）第一の感光層に含有される
顔料として化７で示されるペリレン顔料、第二の感光層
のスクエアリウム化合物として合成例２で調製したもの
を用いたほかは実施例１と同様の条件で電子写真用感光
体を作製した。感度の絶対値は下がるものの、分光感度
特性は実施例８と同様であった。また、光減衰曲線につ
いては実施例８と同様の結果が得られた。感光体特性は
以下の通りであった。

【００７０】Ｖ₀ ＝７５３Ｖ ｔD ＝１７秒 Ｅ1/2 ＝１．８μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ＝６１Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７４５Ｖ ｔD（１０００）＝１６秒 Ｅ1/2（１０００）＝１．８μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ（１０００）＝６４Ｖ

【００７１】（実施例１２）第一の感光層に含有される
顔料として化８で示される顔料を、スクエアリウム化合
物としては合成例２で調製したものを用いたほかは実施
例１と同様の条件で電子写真用感光体を作製した。感度
の絶対値は下がるものの分光感度特性は実施例８と同様
であった。また、光減衰曲線についても実施例８と同様
の結果が得られた。感光体特性は以下の通りであった。

【００７２】Ｖ₀ ＝７５７Ｖ ｔD ＝１８秒 Ｅ1/2 ＝２．５μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ＝６１Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７５２Ｖ ｔD（１０００）＝１７秒 Ｅ1/2（１０００）＝２．８μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ（１０００）＝６５Ｖ

【００７３】（実施例１３）テトラニトロ銅フタロシア
ニン（Ａ）４重量％、テトラニトロ銅フタロシアニン
（Ｂ）１重量％、および銅フタロシアニンからなるα型
銅フタロシアニン組成物、ならびにスクエアリウム化合
物として合成例２で調製したものを用いたほかは実施例
１と同様の条件で電子写真用感光体を作製した。分光感
度特性は実施例８と同様であった。また、光減衰曲線に
ついても実施例８と同様の結果が得られた。感光体特性
は以下の通りであった。

【００７４】Ｖ₀ ＝７７４Ｖ ｔD ＝１６秒 Ｅ1/2 ＝０．９μＪ／ｃｍ² Ｖｒ＝５６Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７６９Ｖ ｔD （１０００）＝１６秒 Ｅ1/2 （１０００）＝０．８μＪ／ｃｍ² Ｖｒ（１０００）＝５９Ｖ

【００７５】（実施例１４）第一の感光層に含有される
顔料として化７で示されるペリレン顔料、および低分子
電荷輸送物質として化９で示されるヒドラゾン化合物
（ペリレン顔料に対して５重量％）、第二の感光層のス
クエアリウム化合物として合成例２で調製したものを使
用したほかは実施例１と同様の条件で電子写真用感光体
を作製した。分光感度特性は実施例８と同様であった。
また、光減衰曲線についても実施例８と同様の結果が得
られた。感光体特性は以下の通りであった。

【００７６】Ｖ₀ ＝７４５Ｖ ｔD ＝１６秒 Ｅ1/2 ＝１．３μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ＝５１Ｖ Ｖ₀ （１０００）＝７４１Ｖ ｔD （１０００）＝１５秒 Ｅ1/2 （１０００）＝１．１μＪ／ｃｍ 2 Ｖｒ（１０００）＝５８Ｖ

【００７７】（合成例３）合成例１で得られた光導電性
のスクエアリウム化合物１ｇを硫酸１０ｇに加え、得ら
れた硫酸溶液をジエチレングリコールジメチルエーテル
の水溶液に滴下することによりスクエアリウム化合物を
調製した。

【００７８】（実施例１５）合成例３で調製したスクエ
アリウム化合物を用いたほかは実施例１と同様の条件で
電子写真用感光体を作製した。得られた感光体の光減衰
曲線、分光感度特性、および感光体特性は実施例８の場
合と同様であった。

【００７９】（合成例４）合成例１で得られた光導電性
のスクエアリウム化合物１ｇを硫酸１０ｇに加え、得ら
れた硫酸溶液を水中に滴下することによりスクエアリウ
ム化合物を調製した。

【００８０】（実施例１６）合成例４で調製したスクエ
アリウム化合物を使用するほかは、実施例１と同様の条
件で電子写真用感光体を作製した。光減衰曲線、分光感
度特性、および感光体特性は実施例８と同様であった。

【００８１】（実施例１７）合成例１で得られた光導電
性のスクエアリウム化合物１．０ｇ（電荷発生物質に対
して５重量％）、銅フタロシアニン１８．４ｇ、および
テトラニトロ銅フタロシアニン（Ａ）１．６ｇ（α型銅
フタロシアニン組成物に対して８重量％）を硫酸１００
ｇに溶解し、この溶液を２ｌの氷水中にあけ、得られた
ものを電荷発生物質として用いたほかは実施例１と同様
にして電子写真用感光体を作製した。光減衰曲線、分光
感度特性、および感光体特性は実施例８と同様であっ
た。

【００８２】

【発明の効果】本発明の電子写真用感光体は可視域から
赤外域の広い波長域において高い光感度を示す。特に電
荷発生物質として特定の処理を施した光導電性のスクエ
アリウム化合物を用いる場合には可視域から赤外域の広
い波長域においてより高い分光感度を示す。また、化学
的に安定なため、耐久性にも優れ、正帯電型であること
から帯電によるオゾン発生量も少なく、バインダー樹脂
の選択等により高感度、かつ耐久性に優れた高耐刷性の
電子写真用感光体を提供することができる。さらに、本
発明の電子写真用感光体は、可視域から赤外域の広い波
長域において高い感光体特性を示すことからフルカラー
電子写真システムに用いられるほか、光源としてレーザ
ー、液晶シャッター、ＬＥＤなどさまざまなものを用い
ることもできる。

【００８３】本発明の電子写真用感光体は高感度である
とともに顔料分散型感光体に特有のインダクション現象
を非常に低い光量域で示すことから、光源である液晶シ
ャッターの光漏れ、照射光スポットのエッジ部の光分布
に影響されない高解像度の電子写真用感光体として用い
ることもできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明で用いるα型銅フタロシアニン組成物の
Ｘ線回折の図である。

【図２】本発明の電子写真用感光体の断面図である。

【図３】本発明の電子写真用感光体の光減衰曲線を表す
図である。

【図４】本発明および比較例の電子写真用感光体の分光
感度特性を表す図である。

【符号の説明】

１ 導電支持体 ３ 第一の感光層 ６ 第二の感光層

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 第一の感光層上に第二の感光層が積層さ
   れてなり、前記第一の感光層には顔料が含有され、前記
   第二の感光層には電荷発生物質としてα型銅フタロシア
   ニン組成物および光導電性のスクエアリウム化合物が含
   有され、前記α型銅フタロシアニン組成物は化１で表さ
   れるテトラニトロ銅フタロシアニン（Ａ）と銅フタロシ
   アニンとを同時に処理して結晶形をα型に変化させたも
   のであり、前記α型銅フタロシアニン組成物に対する前
   記テトラニトロ銅フタロシアニン（Ａ）の割合が２重量
   ％以上２０重量％以下であり、前記電荷発生物質に対す
   る前記スクエアリウム化合物の割合が１重量％以上３０
   重量％以下であることを特徴とする電子写真用感光体。 【化１】 （ただし、式中ニトロ基は１位もしくは４位、８位もし
   くは１１位、１５位もしくは１８位、および２２位もし
   くは２５位にそれぞれ一つずつ置換している。）
2. 【請求項２】 第一の感光層上に第二の感光層が積層さ
   れてなり、前記第一の感光層には顔料が含有され、前記
   第二の感光層には電荷発生物質としてα型銅フタロシア
   ニン組成物および光導電性のスクエアリウム化合物が含
   有され、前記α型銅フタロシアニン組成物は化２で表さ
   れるテトラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）と銅フタロシ
   アニンとを同時に処理して結晶形をα型に変化させたも
   のであり、前記α型銅フタロシアニン組成物に対する前
   記テトラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）の割合が１重量
   ％以上１０重量％以下であり、前記電荷発生物質に対す
   る前記スクエアリウム化合物の割合が１重量％以上３０
   重量％以下であることを特徴とする電子写真用感光体。 【化２】 （ただし、式中ニトロ基は２位もしくは３位、９位もし
   くは１０位、１６位もしくは１７位、および２３位もし
   くは２４位にそれぞれ一つずつ置換している。）
3. 【請求項３】 第一の感光層上に第二の感光層が積層さ
   れてなり、前記第一の感光層には顔料が含有され、前記
   第二の感光層には電荷発生物質としてα型銅フタロシア
   ニン組成物および光導電性のスクエアリウム化合物が含
   有され、前記α型銅フタロシアニン組成物は前記テトラ
   ニトロ銅フタロシアニン（Ａ）、前記テトラニトロ銅フ
   タロシアニン（Ｂ）、および銅フタロシアニンを同時に
   処理して結晶形をα型に変化させたものであり、前記α
   型銅フタロシアニン組成物に対する前記テトラニトロ銅
   フタロシアニン（Ａ）の割合が１５重量％以下であり、
   前記テトラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）の割合が８重
   量％以下であり、かつ前記テトラニトロ銅フタロシアニ
   ン（Ａ）と前記テトラニトロ銅フタロシアニン（Ｂ）と
   の和が２０重量％以下であり、前記電荷発生物質に対す
   る前記スクエアリウム化合物の割合が１重量％以上３０
   重量％以下であることを特徴とする電子写真用感光体。
4. 【請求項４】 α型銅フタロシアニン組成物がアシッド
   ペースト法で処理することにより結晶形をα型に変化さ
   せたものであることを特徴とする請求項１、請求項２、
   または請求項３記載の電子写真用感光体。
5. 【請求項５】 光導電性のスクエアリウム化合物が、光
   導電性のスクエアリウム化合物を硫酸に溶解し硫酸溶液
   とした後に、前記硫酸に不活性な水溶性有機溶剤と前記
   硫酸溶液とを混合し、該混合液中で水添することにより
   得られるものであることを特徴とする請求項１、請求項
   ２、または請求項３記載の電子写真用感光体。
6. 【請求項６】 光導電性のスクエアリウム化合物が、光
   導電性のスクエアリウム化合物を硫酸に溶解し硫酸溶液
   とした後に、前記硫酸に不活性な水溶性有機溶剤の水溶
   液と前記硫酸溶液とを混合することにより得られるもの
   であることを特徴とする請求項１、請求項２、または請
   求項３記載の電子写真用感光体。
7. 【請求項７】 光導電性のスクエアリウム化合物が、光
   導電性のスクエアリウム化合物を硫酸に溶解し硫酸溶液
   とした後に、該硫酸溶液を水添することにより得られる
   ものであることを特徴とする請求項１、請求項２、また
   は請求項３記載の電子写真用感光体。