JPH06279919A - 圧力容器用Cr−Mo鋼板及びその製造法 - Google Patents

圧力容器用Cr−Mo鋼板及びその製造法

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JPH06279919A
JPH06279919A JP7225093A JP7225093A JPH06279919A JP H06279919 A JPH06279919 A JP H06279919A JP 7225093 A JP7225093 A JP 7225093A JP 7225093 A JP7225093 A JP 7225093A JP H06279919 A JPH06279919 A JP H06279919A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 JIS G 4109 SCMV3−1のCr−Mo鋼の靱性を改
善する。 【構成】 C:0.10〜0.17%、Si:0.50〜0.70%、Mn:
0.40〜0.65%、Cr:1.00〜1.50%、Mo:0.45〜0.65%、
Nb:0.005 〜0.020 %、Ca:0.0005〜0.0020%、sol.A
l:0.010 〜0.070 %の鋼組成の圧力容器用Cr−Mo鋼
板。Al−Bの非添加、Nbの微量添加、Caの微量添加およ
びSi含有量の適正化、さらには焼入れ焼戻しの適用によ
り、低温靱性の確保を図った。 【効果】 高温強度特性 (高温クリープ特性) に優れる
とともに焼戻し脆化域を含む温度域で使用した後にも優
れた低温靱性を発揮する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高温強度特性 (高温ク
リープ特性) に優れるとともに焼戻し脆化域を含む温度
域で使用した後にも優れた低温靱性を発揮する圧力容器
用Cr−Mo鋼板およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】石油化学工業等において用いられる圧力
容器用鋼板には、その苛酷な使用環境に対応するため、
優れた耐水素アタック性および高温強度 (優れた高温ク
リープ特性) がともに要求されており、従来から2 1/4
%Cr−1%Mo鋼 (以下、本明細書においては特にことわ
りがない限り「%」は「重量%」を意味するものとす
る) や3%Cr−1%Mo鋼等のCr−Mo鋼が広く使用されて
いた。
【0003】多くの場合、これらの鋼材はその焼戻し脆
化温度域に相当する400 〜500 ℃の条件下で長期間にわ
たって使用されるために使用中に脆化を生じクラックが
発生し、装置の安全性や寿命が著しく低下してしまう。
そのため、前述の圧力容器に供されるCr−Mo鋼板は、高
温強度特性に優れ、使用前の靱性が高く、さらに脆化感
受性が低く使用後においても優れた靱性を維持できるこ
とが必要である。
【0004】上述の2 1/4 %Cr−1%Mo鋼や3%Cr−1
%Mo鋼に関しては、長年の研究により、脆化感受性が抑
制された高靱性Cr−Mo鋼が種々開発されており、既に実
用化されている。
【0005】例えば特公昭59−2736号公報には、2 1/4
%Cr−1%Mo鋼を対象とした低Mn、Al−B複合添加Cr−
Mo鋼、すなわちC:0.08〜0.21%、Si:0.50%以下、M
n:0.45%以下、Cr:1.00〜3.50%、Mo:0.40〜1.50
%、S:0.010 %未満、B:0.0005〜0.0050%、sol.A
l:0.020 〜0.070 %、残部Feおよび不可避的不純物か
らなる圧力容器用Cr−Mo鋼が提案されている。この提案
にかかる圧力容器用Cr−Mo鋼によれば、Sを低減するこ
とにより使用前の靱性を改善し、Sの低減に起因する脆
化感受性の増加をMnの低減により抑制し、さらにMnの低
下による焼入れ不足に起因した高温強度の不足をB添加
により補うことにより、高温強度が高く、しかも焼戻し
脆化域を含む温度域で使用した後にも優れた靱性が発揮
されるとしている。
【0006】特公昭55−82752 号公報には、2 1/4 %Cr
−1%Mo鋼、3%Cr−1%Mo鋼、5%Cr−1/2 %Mo鋼さ
らには7%Cr−1/2 %Mo鋼を対象とした極低Si含有Cr−
Mo鋼、すなわち、C:0.08〜0.15%、Si:0.10%以下、
Mn:0.30〜0.60%、Cr:2.50〜10.00 %、Mo:0.45〜1.
10%、V:0.05〜0.30%、Al:0.005 〜0.020 %、残部
Feおよび不可避的不純物からなる耐再熱割れ性に優れ
た、圧力容器や化学反応容器用等の高強度高温用Cr−Mo
鋼が提案されている。この提案にかかる圧力容器や化学
反応容器用等の高強度高温用Cr−Mo鋼によれば、強度上
昇のために必須とされてきた調質処理を行わないために
Vを添加するとともにVの添加に伴う溶接部の再熱割れ
感受性の上昇を防止するために鋼中のCr量の調整を図る
ことにより、鋼板の靱性および溶接接合部の靱性を維持
しつつ強度の上昇を図れるとしている。
【0007】さらに、特公平2−14417 号公報には、2
1/4 %Cr−1%Mo鋼のみを対象として、焼入れ性指数を
限定したCr−Mo鋼、すなわち、C:0.10〜0.17%、Si:0.1
0 〜0.20%、Mn:0.40 〜0.70%、Cr:1.80 〜3.40%、M
o:0.80 〜1.20%、Al:0.025%超0.060 %以下、N:0.002
0〜0.0060%、P:0.012 %以下を含有し、残部Feおよび
不可避的不純物よりなり、焼入れ性指数が380 mm以上で
ある圧力容器用Cr−Mo鋼が提案されている。この提案に
かかる圧力容器用Cr−Mo鋼によれば、Al含有量およびN
含有量を特定の範囲に限定することにより、オーステナ
イト粒の大きさを適正化し、強度、靱性を確保し、焼戻
し脆化を抑制できるとしている。
【0008】しかし、実用化されている、これらの2 1/
4 %Cr−1%Mo鋼や3%Cr−1%Mo鋼等は、いずれもCr
含有量が比較的高く元来焼入れ性が優れるため、比較的
容易に高靱性・低焼戻し感受性鋼の製造が可能である
が、合金元素を多量に含有するために製造コストが高
く、また溶接性が低いために圧力容器としての溶接施工
の際に問題があった。
【0009】そこで、近年、従来2 1/4 %Cr−1%Mo鋼
が用いられていた部位に、替わりに1 1/4 %Cr−1/2 %
Mo鋼が用いられ始めている。1 1/4 %Cr−1/2 %Mo鋼
は、ASTM (ASTM A387/A387M-90a グレードll−クラス1
またはクラス2) またはJIS(JIS G 4109 SCMV3-1または
SCMV3-2) に示されているように、C:0.04〜0.17%、
Si:0.44〜0.86%、Mn:0.35〜0.73%、P:0.035 %以
下、S:0.035 %以下、Cr:0.94〜1.56%、Mo:0.40〜
0.70%のCr−Mo鋼であって、2 1/4 %Cr−1%Mo鋼とほ
ぼ同等の高温強度特性を有しており、低合金Cr−Mo鋼で
あるために溶接性が優れている。
【0010】1 1/4 %Cr−1/2 %Mo鋼に関するものとし
て、特公昭57−59297 号公報には、C:0.08〜0.20%、
Si:0.50%以下、Mn:0.20〜0.90%、Cr:1.00〜3.50
%、Mo:0.40〜1.50%、sol.Al:0.040 %以下、S:0.0
10 %未満、Ca:0.0005〜0.0150%、残部Feおよび不可
避的不純物からなる圧力容器用Cr−Mo鋼が提案されてい
る。この提案にかかる圧力容器用Cr−Mo鋼は、上記の鋼
組成の鋼板に、例えば、焼入れ処理 (930 ℃×8Hr→水
冷) 、焼戻し処理 (650 ℃×8Hr→空冷) および応力除
去焼鈍処理 (690 ℃×20Hr→炉冷、以下本明細書におい
ては応力除去焼鈍処理を「SR処理」という) の条件で
熱処理を行うことにより製造され、脆化感受性の増加を
抑制するためにSi含有量を0.50%以下に抑制し、Sの低
下により使用前の靱性を改善し、さらにCaの添加により
脆化感受性を著しく低下することにより、高温強度の低
下を防止しながら使用前および使用後の靱性の劣化を防
止するものである。
【0011】また、特公昭57−57946 号公報には、C:
0.08〜0.20%、Si:0.10%未満、Mn:0.20〜0.90%、C
r:1.00〜3.50%、Mo:0.40〜1.50%、sol.Al:0.040
%以下、S:0.010 %未満、VおよびNbの少なくとも1
種:0.01〜0.10%、残部Feおよび不可避的不純物からな
る圧力容器用Cr−Mo鋼が提案されている。この提案にか
かる圧力容器用Cr−Mo鋼によれば、Sを低減することに
より使用前の靱性を改善し、Sの低減に起因する脆化感
受性の増加をSiの低減により抑制し、さらにSiの低下に
よる高温強度の不足をVおよび/またはNbの添加により
補うことにより、高温強度が高く、しかも焼戻し脆化域
を含む温度域で使用した後にも優れた靱性が発揮される
としている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特公昭57−59
297 号公報または特公昭57−57946 号公報により提案さ
れた1 1/4 %Cr−1/2 %Mo鋼 (JIS G 4109 SCMV3−1の
Cr−Mo鋼) は、2 1/4 %Cr−1%Mo鋼に比較するとSi含
有量が高く、かつCr含有量およびMo含有量がともに低い
ため、特公昭59−2736号公報または特公昭55−82752 号
公報により提案されたCr−Mo鋼に比較すると、脆性感受
性が高く高靱性化が困難であった。
【0013】なお、JIS G 4109 SCMV3−2のCr−Mo鋼
は、2 1/4 %Cr−1%Mo鋼において採用されているAl−
B複合添加を行うことにより、焼入れ性を上昇させ、か
つ高靱性化を図ることが可能になっているが、JIS G 41
09 SCMV3−1の鋼の場合にAl−B複合添加を行うと強度
上昇が著しく、規格値外れとなってしまうため、これま
で高靱性化を図ることはできなかった。
【0014】このように、JIS G 4109 SCMV3−1のCr−
Mo鋼の場合、強度の上限が60kgf/mm2 前後と低いため、
焼入れ性の上昇に併せた高靱性化は不可能であって、現
在までのところ圧力容器用として実用化することはでき
ず、JIS G 4109 SCMV3−1のCr−Mo鋼の有する低コスト
性を享受することはできなかった。ここに、本発明の目
的は、JIS G 4109 SCMV3−1のCr−Mo鋼の靱性を改善し
た圧力容器用Cr−Mo鋼板およびその製造法を提供するこ
とにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者は、かかる目的
を達成するためにCr−Mo鋼の組成について鋭意検討およ
び実験を重ねた結果、特公昭57−59297 号公報により提
案された1 1/4 %Cr−1/2 %Mo鋼からなる圧力容器用Cr
−Mo鋼において、(i) 強度上昇に顕著な効果を奏するAl
−B複合添加は行わないこと、(ii)焼入れ性を若干向上
させるために極微量のNbを添加すること、(iii) SR処
理後の特性低下を抑制するためにCaを微量添加するこ
と、および(iv)常温強度および高温強度の向上、および
使用後の強度低下の抑制をそれぞれ図るために、Si含有
量を0.50%以上0.70%以下とすること、さらに(v) 合金
成分の削減および靱性の向上を確実なものとするため、
熱処理としては公知の条件の焼入れ−焼戻し処理を行う
ことにより、低温靱性に優れた1 1/4 %Cr−1/2 %Mo鋼
を提供することが可能となることを知見して、本発明を
完成した。
【0016】ここに、本発明の要旨とするところは、
C:0.10〜0.17%、Si:0.50〜0.70%、Mn:0.40〜0.65
%、Cr:1.00〜1.50%、Mo:0.45〜0.65%、Nb:0.005
〜0.020 %、Ca:0.0005〜0.0020%、sol.Al:0.010 〜
0.070 %、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成
を有するとともに焼入れ焼戻し組織を有することを特徴
とする高靱性を有する圧力容器用Cr−Mo鋼板である。
【0017】上記の本発明にかかる圧力容器用Cr−Mo鋼
板は、C:0.10〜0.17%、Si:0.50〜0.70%、Mn:0.40
〜0.65%、Cr:1.00〜1.50%、Mo:0.45〜0.65%、Nb:
0.005 〜0.020 %、Ca:0.0005〜0.0020%、sol.Al:0.
010 〜0.070 %を含有する鋼組成の鋼板を、900 〜950
℃の焼入れ温度で焼入れを行い、さらに650 〜770 ℃の
焼戻し温度で焼戻しを行うことにより製造される。
【0018】
【作用】以下、本発明を作用効果とともに詳述する。本
発明にかかる高靱性を有する圧力容器用Cr−Mo鋼板の組
成を上記のように限定する理由を説明する。
【0019】C:0.10〜0.17% Cは、常温強度および高温強度をともに確保するために
0.10%以上含有するが、C含有量が0.17%を越えると溶
接性が低下するとともに靱性の低下が著しくなる。そこ
で、本発明では、C含有量は0.10%以上0.17%以下と限
定する。
【0020】Si:0.50〜0.70% Siの添加は、常温強度および高温強度の向上、SR処理
後の強度低下の低減に有効であり、1 1/4 %Cr−1/2 %
Mo鋼においては0.50%以上添加することによりかかる効
果が奏される。しかし、0.70%超添加するとJ−ファク
ターの増加、すなわちSR処理後の靱性の低下を生じ
る。そこで、本発明では、Si含有量は0.50%以上0.70%
以下と限定する。
【0021】Mn:0.40〜0.65% Mnは、焼入れ性を上昇させて常温強度および高温強度さ
らには靱性をそれぞれ向上させることに極めて有効であ
るが、0.65%超添加すると、SR処理やステップクーリ
ングによる脆化感受性が高まり、SR処理後やステップ
クーリング後の靱性が著しく劣化する。一方、Mn含有量
が0.40%未満であると、脆化感受性は低くなるものの初
析フェライトの生成を促し、高温強度、SR処理前また
はステップクーリング前の靱性の低下がそれぞれ著し
い。そこで、本発明では、Mn含有量は0.40%以上0.65%
以下と限定する。
【0022】Cr:1.00〜1.50% Crは、1.00%以上含有されることにより耐水素アタック
性や耐酸化性を高めるが、Cr含有量が1.50%超であると
溶接性が低下するとともに本来の高温強度特性(高温ク
リープ特性)も飽和し、コスト増となるばかりである。
そこで、本発明では、Cr含有量は1.00%以上1.50%以下
と限定する。
【0023】Mo:0.45〜0.65% Moは、0.45%以上含有されることにより耐水素アタック
性や高温強度さらには高温クリープ強度を顕著に高める
が、0.65%超添加すると溶接性が低下するとともにコス
ト増となる。そこで、本発明では、Mo含有量は0.45%以
上0.65%以下と限定する。
【0024】Nb:0.005 〜0.020 % Nbは、0.005 %以上という極微量の添加により、常温強
度および高温強度をそれぞれを顕著に上昇させる。しか
し、0.020 %超添加すると、析出硬化型元素としてSR
割れ感受性を増加させる。そこで、本発明では、Nb含有
量は0.005 %以上0.020 %以下と限定する。
【0025】Ca:0.0005〜0.0020% Caは、本発明にかかる圧力容器用Cr−Mo鋼板においては
最も重要な元素の一つである。大型の圧力容器に使用さ
れるCr−Mo鋼板は、通常、長時間のSR処理を施されて
使用されるため、鋼材に長時間のSR処理を行った後の
強度および靱性の保証が要求される。通常、長時間のS
R処理が行われると、ベイナイト組織中の炭化物の粗大
化が生じてしまい強度および靱性がともに低下するが、
0.0005%以上という微量のCaを添加することにより、炭
化物の凝集および粗大化を遅らせることができ、SR処
理後においても高強度および高靱性を発揮することがで
きる。しかし、0.0020%超添加すると、その効果が飽和
するとともにスラブ製造時に内質に悪影響を及ぼす。そ
こで、本発明では、Ca含有量は0.0005%以上0.0020%以
下と限定する。
【0026】sol.Al:0.010 〜0.070 % sol.Alは、鋼中にあっては0.010 %以上存在して脱酸剤
として作用するが、0.070 %超添加すると靱性が低下す
る。そこで、本発明では、sol.Al含有量は0.010 %以上
0.070 %以下と限定する。上記以外の組成は、Feおよび
不可避的不純物であるが、本発明にかかる圧力容器用Cr
−Mo鋼板では、さらに下記に列記する元素を含有しても
よい。
【0027】S:0.010 %以下 Sは、鋼中の清浄度を低下させるとともに、Mnと結合し
てB系介在物となり靱性を著しく低下させるため極力低
減することが望ましい。そこで、製造コストを勘案し、
S含有量は0.010 %以下とすることが望ましい。
【0028】P: 0.015 %以下 Pは、鋼中の清浄度を低下させるとともに脆化感受性を
高める。そこで、本発明にかかる圧力容器用Cr−Mo鋼板
では、P含有量は0.015 %以下とすることが望ましい。
【0029】Sn、Sb、As:いずれも0.010 %以下 Sn、SbまたはAsは、いずれもSR処理後の靱性を著しく
低下させるため、いずれも0.010 %以下とすることが望
ましい。以上の組成を有する本発明にかかる圧力容器用
Cr−Mo鋼板を製造するには、常法にしたがって溶製、造
塊 (連続鋳造もしくはインゴット) および熱間加工を行
って所定の寸法への成形を行ってから熱処理を行う。
【0030】熱処理は、以下に示す条件で行う。すなわ
ち、焼入れ−焼戻し処理を行うこととし、焼入れ温度は
900 〜950 ℃、焼戻し温度は650 〜770 ℃とする。焼入
れ温度は、組織がオーステナイト単相となる温度とする
必要があり、本発明にかかるCr−Mo鋼板においては900
℃以上である。一方、950 ℃超に加熱すると、オーステ
ナイト粒の粗大化を生じてしまい靱性が低下する。そこ
で、本発明では、焼入れ温度は900 ℃以上950 ℃以下と
限定する。
【0031】一方、焼戻し温度が650 ℃以上であれば、
組織調整を行って強度および靱性を調整することができ
るが、770 ℃を越えると2相域まで加熱されて組織が不
均一になってしまう。そこで、本発明では、焼戻し温度
は650 ℃以上770 ℃以下と限定する。
【0032】以上のようにして製造される本発明にかか
る圧力容器用Cr−Mo鋼板は、JIS G4109 SCMV3−1のCr
−Mo鋼であって、引張強さ:410 〜590 N/mm2 、降伏強
さ:235 N/mm2 以上である。さらに、低温靱性は−29℃
(−20°F) で50J以上のシャルピー吸収エネルギーを
有するため、圧力容器用として、2 1/4 %Cr−1%Mo鋼
の代替に充分に使用できる。さらに、本発明を実施例を
参照しながら詳述するが、これは本発明の例示でありこ
れにより本発明が限定されるものではない。
【0033】
【実施例1】表1に示す鋼組成を有する鋼板1ないし鋼
板5(板厚150mm)に表2に示すように焼入れ温度920
℃、焼戻し温度710 ℃およびSR処理条件:690 ℃×25
Hrの熱処理を行って、5種のCr−Mo鋼板を製造した。
【0034】これら5種のCr−Mo鋼板について、TS(N/m
m2) およびvE-29(J)を測定した。結果を表2にまとめて
示すとともに、図1にグラフにまとめて示す。なお、TS
≧460N/mm2、vE-29 ≧100Jを合格ラインとした。表1お
よび表2、および図1に示すグラフから、TS≧460N/m
m2、vE-29 ≧100Jをともに満足するためには、Si含有量
は0.50%超0.70%以下であることがわかる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【実施例2】常法にしたがって溶製および連続鋳造を行
った、表3に示す各種組成を有する24トンの鋼塊に熱間
圧延を行って、同表に示す板厚の熱延鋼板とし、その後
同表に示す条件で熱処理 (焼入れおよび焼戻し処理) を
行って、Cr−Mo鋼板を製造し、これらのCr−Mo鋼板から
JIS 10号引張試験片およびJIS 4号衝撃試験片をそれぞ
れ切り出し、C方向(圧延方向と直交する方向)につい
て常温引張試験およびシャルピー衝撃試験を行い、常温
引張試験におけるYP(N/mm2) およびTS(N/mm2)、シャル
ピー衝撃試験におけるvE-29(J)およびvTs(℃) を測定し
た。
【0038】結果を比較例とともに表4にまとめて示す
とともに、図2には、熱処理条件の違いによるvE-29(J)
の違いを、図3にはC含有量の違いに起因したvE-29(J)
の違いを、それぞれグラフで示す。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】表4から、本発明例 (試料No.1ないし試料
No.7) は、常温引張試験におけるYP:361 〜447 N/m
m2 、TS:499 〜571 N/mm2 であって衝撃試験におけるv
E-29:114 〜186 J 、vTs :−30〜−5 (℃) であり、
圧力容器用Cr−Mo鋼板として好適であることがわかる。
【0042】これに対し、試料No.8ないし試料No.14 は
比較例である。試料No.8ないし試料No.10 は、熱処理条
件が本発明で規定する条件外であるため、シャルピー吸
収エネルギーvE-29 が目標値を外れてしまった。
【0043】試料No.11 は、C含有量が本発明の範囲の
下限を下回っているため、常温引張試験におけるTSが目
標値を外れてしまった。試料No.12 は、C含有量が本発
明の範囲の上限を上回っているため、シャルピー吸収エ
ネルギーvE-29 が目標値を外れてしまった。
【0044】試料No.13 は、Nbを添加していないため、
シャルピー吸収エネルギーvE-29 が目標値を外れてしま
った。さらに、試料No.14 は、Caを添加していないた
め、シャルピー吸収エネルギーvE-29 が目標値を外れて
しまった。
【0045】さらに、目標性能であるvE-29 ≧100(J)を
得るためには、図2から焼入れ焼戻し処理を行い、ま
た、図3からC含有量が0.10%以上0.17%以下であるこ
とがそれぞれわかる。
【0046】
【実施例3】前述の表3中の試料No.1ないし試料No.3と
同一の鋼組成を有するCr−Mo鋼板 (板厚:100mm)に対し
て、焼入れ焼戻しおよびSR処理を行ってCr−Mo鋼板を
製造した。
【0047】これらの熱処理の際、焼戻し温度およびS
R処理温度を固定して焼入れ温度を変化させた場合の処
理条件および結果を表5に示すとともに、その結果を図
4にグラフにまとめて示す。また、焼入れ温度およびS
R処理温度を固定して焼戻し温度を変化させた場合の処
理条件および結果を表6に示すとともに、その結果を図
5にグラフにまとめて示す。なお、実施例1と同様に、
TS≧460N/mm2、vE-29≧100Jを合格ラインとした。
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】表5および図4から、TS≧460N/mm2、vE
-29 ≧100Jをともに満足するためには、焼入れ温度は90
0 ℃以上950 ℃以下であることがわかる。また、表6お
よび図5から、TS≧460N/mm2、vE-29 ≧100Jをともに満
足するためには、焼戻し温度は650 ℃以上770 ℃以下で
あることがわかる。
【0051】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明により、低
温靱性に優れた圧力容器用Cr−Mo鋼板を提供するこ
とが可能となった。具体的には、本発明により、(i) 合
金コストの低廉なCr、Mo、Si、NbさらにはCaを適量組み
合わせることにより、コストおよび溶接性を悪化させる
ことなく焼入れ性を改善して、長時間のSR処理を行っ
ても特性低下を軽微なものとすることができ、(ii)常温
におけるYP、TSをともに300 N/mm2 以上、460 N/mm2
上の高強度を確保でき、さらに(iii) −29℃において 1
00J以上の高いシャルピー吸収エネルギーを得ることが
可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1により得られた、Si含有量と、TSおよ
びvE-29 との関係を示すグラフである。
【図2】実施例2により得られた、熱処理条件の違いに
よる特性値の違いを示すグラフである。
【図3】実施例2により得られた、C含有量の違いによ
る特性値の違いを示すグラフである。
【図4】実施例3により得られた、焼入れ温度とTSおよ
びvE-29 との関係を示すグラフである。
【図5】実施例4により得られた、焼戻し温度とTSおよ
びvE-29 との関係を示すグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.10〜0.17%、Si:0.50
    〜0.70%、Mn:0.40〜0.65%、Cr:1.00〜1.50%、Mo:
    0.45〜0.65%、Nb:0.005 〜0.020 %、Ca:0.0005〜0.
    0020%、sol.Al:0.010 〜0.070 %、残部Feおよび不可
    避的不純物からなる鋼組成を有するとともに焼入れ焼戻
    し組織を有することを特徴とする圧力容器用Cr−Mo鋼
    板。
  2. 【請求項2】 重量%で、C:0.10〜0.17%、Si:0.50
    〜0.70%、Mn:0.40〜0.65%、Cr:1.00〜1.50%、Mo:
    0.45〜0.65%、Nb:0.005 〜0.020 %、Ca:0.0005〜0.
    0020%、sol.Al:0.010 〜0.070 %、残部Feおよび不可
    避的不純物からなる鋼組成の鋼板を、900 〜950 ℃の焼
    入れ温度で焼入れを行い、さらに650〜770 ℃の焼戻し
    温度で焼戻しを行うことを特徴とする圧力容器用Cr−Mo
    鋼板の製造法。
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