JPH0860292A - 溶接熱影響部靱性の優れた高張力鋼 - Google Patents

溶接熱影響部靱性の優れた高張力鋼

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JPH0860292A
JPH0860292A JP19863794A JP19863794A JPH0860292A JP H0860292 A JPH0860292 A JP H0860292A JP 19863794 A JP19863794 A JP 19863794A JP 19863794 A JP19863794 A JP 19863794A JP H0860292 A JPH0860292 A JP H0860292A
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steel
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haz
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JP19863794A
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Masahiko Hamada
昌彦 濱田
Yasuto Fukada
康人 深田
Takeshi Kadonaga
猛 門長
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】溶接熱影響部(HAZ)靱性の優れた高張力鋼
の提供。 【構成】(1) C:0.03〜0.15%、Si:0.01〜0.5 %、M
n:0.4〜2.0 %、Nb:0.01〜0.1 %、Ti:0.005 〜0.015
%、Al:0.0005〜0.05%、N:0.005〜0.02%を含有
し、不純物中のPは0.030 %以下、Sは0.030 %以下で
あるHAZ靱性の優れた高張力鋼。この鋼は、Cu: 0.2
〜1.5 %、Ni: 0.2〜3.0 %の一種もしくは二種、及び
/又はCr:0.05〜1.0 %、Mo:0.05〜1.0 %、V:0.03
〜0.2 %、B:0.0003〜0.002 %の一種もしくは二種以
上を含むことができる。加えてさらに、Ca:0.0005〜0.
005 %、REM:0.005 〜0.05%の一種もしくは二種を
含んでもよい。 【効果】高い母材靱性と共に優れたHAZ靱性を確保す
ることができるものである。この鋼材では更に、溶接構
造物の低温靱性が向上し、大入熱溶接法の適用が可能で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、圧力容器、船舶、橋
梁、建築、海洋構造物およびラインパイプなどの溶接構
造物に使用される溶接熱影響部靱性の優れた高張力鋼に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、氷海域に設置される海洋構造物や
寒冷地向けのラインパイプ、または船舶やLNGタンク
などの大型構造物に供される溶接用高張力鋼では、材質
特性の向上に対する要求が厳しくなっており、使用目的
に応じた十分な強度が要求されることはもちろん、特に
溶接金属に接する母材の溶接熱影響部(以下、HAZと
いう)での靱性改善についての要望が高い。
【0003】従来から、高張力鋼板の溶接部靱性には、
オーステナイト(以下、γと記す)結晶粒径、変態
組織、微細な硬化相の析出状態および鋼板中の固溶
N量が大きな影響を及ぼすことが知られており、種々の
溶接部靱性向上対策が提案されてきた。
【0004】例えば、上記およびに関しては、Tiを
微量添加し、鋼中にTiNを微細析出させてγ結晶粒の粗
大化を抑制する方法(昭和54年6月発行の「鉄と鋼」第
65巻8号、1232頁参照)やCaを微量添加してCaSおよび
CaOを生成させ、γ結晶粒の微細化とCaS、CaOを核と
した粒内のフェライト(以下、αと記す)の析出とによ
り、組織を微細化する方法(昭和58年2月発行の「溶接
学会誌」第52巻第2号、49頁参照)、希土類(以下、R
EMと記す)元素の酸化物により、同様に結晶粒を微細
化する方法(特開昭64−15320 号公報参照)、Ti酸化物
粒子を核生成サイトとして粒内αを生成させて組織を微
細化する方法(特開昭57−51243 号および特開昭61−79
745 号の各公報参照)、さらにVとTiを複合添加するこ
とにより、冷却過程において析出するVNをαの変態核
とする方法(特開平5−186848号公報参照)などが提案
されている。
【0005】前記に関しては、低炭素当量化やSiおよ
びAlを低減することにより硬化相の析出を抑制する方法
(特開平2−1904213 号公報参照)などが提案されてい
る。
【0006】前記に関しては、鋼に含まれるN量を下
げる方法や過剰のAlを添加することにより、AlNとして
Nを固定する方法などが提案されている。
【0007】しかし、以上のような対策において、TiN
は1400℃以上に加熱される部分では大部分が母材に溶解
すると考えられており、特に大入熱溶接HAZ溶融線近
傍におけるγ結晶粒の粗大化は免れ得ない。さらに、加
熱過程で溶解したTiNは冷却過程において再析出しな
い。すなわち、TiNが溶解した部分では、冷却過程にお
ける粒内でのα変態が起こらず、さらには固溶窒素の増
加をも招き、HAZ靱性の劣化を避けることができない
という欠点がある。
【0008】一方、Ca、REMおよびTiの酸化物粒子の
利用については、これらを溶製時に鋼中において微細に
安定した状態で均一分散させることが非常に困難であ
り、実操業的な面で問題が残る。
【0009】低炭素当量化や低Si化、低Al化といった方
法による微細硬化相の析出形態制御や固溶N量の低減な
どの技術は、上述の窒化物または酸化物による靱性改善
との相乗効果を狙ったものであり、単独でのHAZ靱性
改善効果には自ずと限界がある。
【0010】またNbは、TiおよびVと並んで鋼の強度を
確保する観点から非常に重要な元素であり、従来からNb
添加により鋼母材の強度靱性を改善する方法が種々提案
されている。
【0011】特公昭56−50779 号公報および特公昭57−
19734 号公報には、微量のNb含有量と圧延、熱処理方法
を特定することにより、母材組織を微細α化し、高靱性
な鋼材を得る方法が開示されている。特開平6−49586
号公報には、Nb含有により、鋼板の製造工程における加
熱時のγ粒成長抑制効果、圧延中の変形帯へのNbC析出
強化作用および大入熱溶接に際してのHAZ軟化防止効
果が得られるとの記載がある。
【0012】しかし、TiNに比べてNbの炭化物、窒化物
の高温での安定度は極めて低いため、Nb含有によるHA
Z靱性の改善を析出物の観点から検討した提案は皆無に
等しく、HAZ靱性改善鋼におけるNb含有は、専ら母材
の強度確保を目的として行われているのが現状である
(例えば、特開昭59−35619 号公報参照)。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の課題
を解決するためになされたものであり、本発明の目的は
中入熱から大入熱に至る広い入熱条件での溶接施工に対
して、溶融線近傍の1400℃以上に加熱されるような領域
においても組織が微細化され、良好な低温HAZ靱性を
安定して示す溶接用高張力鋼を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、次の
(1)〜(5) のHAZ靱性の優れた高張力鋼にある。
【0015】(1)重量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.0
1〜0.5 %、Mn:0.4〜2.0 %、Nb:0.01〜0.1 %、Ti:
0.005 〜0.015 %、Al:0.0005〜0.05%およびN:0.005
〜0.02%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物から
なり、不純物中のPは0.030 %以下、Sは0.030 %以下
であることを特徴とするHAZ靱性の優れた高張力鋼。
【0016】(2)上記(1) の成分に加えてさらに、重量
%で、Cu:0.2 〜1.5 %およびNi:0.2 〜3.0 %の一種
または二種を含むことを特徴とするHAZ靱性の優れた
高張力鋼。
【0017】(3)上記(1) の成分に加えてさらに、重量
%で、Cr:0.05〜1.0 %、Mo:0.05〜1.0 %、V:0.03
〜0.2 %およびB:0.0003〜0.002 %の一種または二種
以上を含むことを特徴とするHAZ靱性の優れた高張力
鋼。
【0018】(4)上記(1) の成分に加えてさらに、重量
%で、Cu:0.2 〜1.5 %およびNi:0.2 〜3.0 %の一種
または二種、Cr:0.05〜1.0 %、Mo:0.05〜1.0 %、
V:0.03〜0.2 %およびB:0.0003〜0.002 %の一種ま
たは二種以上を含むことを特徴とするHAZ靱性の優れ
た高張力鋼。
【0019】(5)加えてさらに、重量%で、Ca:0.0005
〜0.005 %およびREM:0.005 〜0.05%の一種または
二種を含むことを特徴とする上記 (1)から(4) までのい
ずれかのHAZ靱性の優れた高張力鋼。
【0020】本発明者らは、溶接線近傍における窒化物
の母材への固溶および溶接冷却過程での再析出に着目し
た検討を行い、γ粒の微細化および固溶元素の低減によ
るHAZ靱性の改善作用について比較を行った。その結
果、次の〜の新知見を得た。
【0021】Nb含有鋼に微量のTiを添加した場合、極
めて微細かつ多量のNb−Ti複合炭窒化物が析出するこ
と。
【0022】この複合炭窒化物は1400℃以上に加熱さ
れても比較的安定であり、十分なγ粒微細化作用を有す
ること。
【0023】鋼中のN量を増加させることによって、
複合炭窒化物は安定化し、実質的に固溶元素量の低減作
用を有すること。
【0024】Nbの含有量に対してTiのそれが過剰とな
った場合には、複合炭窒化物は形成されず、Ti窒化物が
単独で析出するため、TiとNbとの含有量を制限する必要
があること。
【0025】また、Nb析出物を利用する従来技術の問題
点を検討し、HAZ靱性に対してNb析出物を有効に利用
するためには、Nb含有鋼に微量のTiを複合添加すること
により、安定なNb−Ti複合炭窒化物を形成させること、
さらにNの含有量を制限することが重要であり、これら
の方法によりHAZ靱性を飛躍的に向上させ得ることを
実験的に明らかにした。これを図1に基づいて説明す
る。
【0026】図1は、0.05%C−0.10%Si−1.3 %Mn−
0.002 %P−0.003 %Sをベース組成としたNb含有鋼、
Ti含有鋼およびNb−Ti含有鋼において、N含有量を変化
させたときに、最高加熱温度1400℃で100kJ/cm相当の
大入熱溶接を模した熱サイクルを与えた場合のHAZ靱
性をシャルピー衝撃試験での遷移温度として評価した結
果を示す図である。
【0027】図1に示すように、Nb−Ti複合添加によ
り、HAZ靱性が大きく向上することがわかる。すなわ
ち、Nb含有鋼ではN量が増加するとHAZ靱性が劣化す
るのに対して、Ti含有鋼では約0.004 %までN量の増加
にしたがってHAZ靱性が向上し、さらにN量が0.005
%を超えるとHAZ靱性が劣化する。さらに、Nb−Ti複
合添加鋼では、N量の増加にしたがってHAZ靱性が向
上し、特にN量が 0.005%以上で飛躍的にHAZ靱性が
改善される。
【0028】このようなHAZ靱性改善の原因は、Nb析
出物へTiを複合化し、析出物を安定化したことによるγ
粒の微細化効果の向上および固溶元素の低減にある。
【0029】さらに、γ粒径はN量の増加にしたがって
微細化する。これは、N量の増加により窒化物系の析出
量が増加することが原因で生じていることが容易に予想
されたが、析出元素の詳細な調査結果から、N量の増加
は窒化物系析出物量を増加させるだけでなく、Ti−Nb複
合炭窒化物中のNbC成分をも増加させることが判明し
た。
【0030】すなわち、本発明鋼においては、N量の増
加は窒化物だけでなく炭化物をも高温で安定化させるこ
とにより、析出物量を増加させてγ粒径の微細化を強化
し、さらに固溶Ti、固溶Nbを減少させ、焼入性を下げて
HAZ靱性を改善すると考えられる。
【0031】
【作用】以下、本発明鋼の化学組成を、前記のように定
めた理由について説明する。%は重量%を意味する。
【0032】C:0.03〜0.15% Cは、強度の確保、およびNb−Ti複合炭窒化物を形成さ
せて組織を微細化させる効果を有する元素である。C含
有量が0.03%未満では、これらの効果が得られない。一
方、0.15%を超えると溶接部にマルテンサイト(α’)
や類似パーライト(α/Fe3C)を生成してHAZ靱性を
悪化させるとともに、母材の靱性および溶接性にも悪影
響を及ぼす。よって、C含有量の範囲は0.03〜0.15%と
した。
【0033】Si:0.01〜0.5 % Siは溶鋼の予備脱酸のために有効な元素であり、このた
め鋼中に0.01%程度含有されている。一方、Siはセメン
タイト中に固溶しないため、Si含有量が0.5 %を超える
と未変態γ粒がα粒とセメンタイトに分解するのを阻害
し、微細な硬化相である島状マルテンサイトの生成を助
長し、HAZ靱性を劣化させる。よってSi含有量の範囲
は0.01〜0.5 %とした。
【0034】Mn: 0.4〜2.0 % Mnは、強度および靱性の確保に必要な元素である。これ
らの効果を得るには、0.4 %以上のMn含有量とする必要
がある。しかし、Mn含有量が2.0 %を超えると焼入性を
増大させ、溶接性およびHAZ靱性を劣化させる。よっ
て、Mn含有量の範囲は 0.4〜2.0 %とした。
【0035】Nb:0.01〜0.1 % Nbは、強度確保の観点から非常に有効であるとともに、
Tiとともに複合炭窒化物を形成し、HAZ靱性を高める
のに必要不可欠な元素である。これらの効果はNb含有量
が0.01%未満では得られない。一方、0.1 %を超えると
粗大なNbCの単独析出を招き、母材の靱性に有害とな
る。よって、Nb含有量の範囲は0.01〜0.1%とした。
【0036】Ti: 0.005〜0.015 % TiはNbとともに複合炭窒化物を形成させるために必要不
可欠な元素である。この効果を得るには0.005 %以上の
Ti含有量としなければならない。一方、Ti含有量が0.01
5 %を超えると単独での粗大なTiCの析出を招き、HA
Zおよび母材の靱性に有害となる。よって、Ti含有量の
範囲は 0.005〜0.015 %とした。
【0037】Al:0.0005〜0.05% Alは脱酸剤として必要な元素である。脱酸効果を得るに
は、0.0005%以上のAl含有量が必要である。一方、0.05
%を超えるとSiと同様に島状マルテンサイトの生成を助
長することから、HAZ靱性向上を阻害する。このた
め、その上限は、0.05%とした。
【0038】N:0.005〜0.02% Nは、Nb−Ti複合炭窒化物を生成させる上に必要な元素
である。図1に示すように、HAZ靱性を向上させる観
点から0.005 %以上のN含有量が必要である。
【0039】しかし、0.02%を超えると母材靱性の低
下、溶接時に希釈による溶接金属中への混入から溶接金
属の靱性低下を招き、さらに溶接割れを防止するために
も好ましくないことから、その上限は0.02%とした。
【0040】P:0.030 %以下 Pは、粒界偏析を起こす不可避的不純物元素であるため
に、HAZにおける粒界割れの原因となる。このため、
P含有量は低いほど望ましいが、経済的な観点を考慮し
て上限は0.030 %とした。母材靱性およびHAZ靱性を
ともに向上させ、スラブ中心偏析も低減させるために望
ましいのは、0.01%以下である。
【0041】S:0.030 %以下 Sは、多量に存在する場合、MnSなどの溶接割れの起点
となる析出物を生成する。このため、その含有量は少な
いほど望ましい。しかし、経済性を考慮して、その上限
は0.030 %とした。母材靱性およびHAZ靱性をともに
向上させ、スラブ中心偏析も低減させるために望ましい
のは、0.01%以下である。
【0042】本発明鋼は、上記のベース組成に加えてさ
らに、次のCuおよびNiの一種または二種を含むことがで
きる。
【0043】Cu: 0.2〜1.5 % Cuは母材の強度と靱性を確保するために有効な元素であ
る。これらの効果は、Cu含有量が0.2 %未満では得られ
ない。一方、1.5 %を超えると逆に母材の強度と靱性を
低下させる。
【0044】Ni: 0.2〜3.0 % Niは、Cuと同様に母材の強度と靱性を確保するために有
効な元素である。これらの効果は、Ni含有量が0.2 %未
満では得られない。一方、3.0 %を超えると逆に母材の
強度と靱性を低下させる。
【0045】CuとNiを複合で含有させる場合、それらの
合計で3.0 %以下とするのが望ましい。さらに望ましい
のは2%以下である。これらにより、多量の単独含有に
よる過度の焼入性上昇を回避し、HAZ靱性および溶接
性への悪影響を最小限として、所望の強度と靱性のバラ
ンスを得ることができる。
【0046】本発明鋼は、前記のベース組成に加えてさ
らに、次のCr、Mo、VおよびBの一種または二種以上を
選んで含有させることができる。これらの元素は、いず
れも鋼材の焼入性を増加させ、強度を確保するのに有効
である。二種以上を含有させる場合には、合計で2%以
下とするのが望ましい。さらに望ましいのは1.5 %以下
である。これらにより同様に、多量の単独含有による過
度の焼入性上昇を回避し、HAZ靱性および溶接性への
悪影響を最小限として、所望の強度と靱性のバランスを
得ることができる。
【0047】Cr:0.05〜1.0 % Cr含有量が0.05%未満では上記の効果が得られない。一
方、1.0 %を超えると母材およびHAZの靱性劣化を招
くとともに、HAZの硬化および溶接低温割れを抑制す
る観点からも好ましくない。
【0048】Mo:0.05〜1.0 % Crと同様の理由で、その含有量の範囲は0.05〜1.0 %と
した。
【0049】V:0.03〜0.2 % V含有量が0.03%未満では焼入性と強度の向上効果が得
られない。一方、 0.2%を超えると母材およびHAZの
靱性劣化を招くとともに、HAZの硬化および溶接低温
割れを抑制する観点からも好ましくない。
【0050】B:0.0003〜0.002 % B含有量が0.0003%未満では、焼入性と強度の向上効果
が得られない。一方、0.002 %を超えると母材およびH
AZの靱性劣化を招くとともに、HAZの硬化および溶
接低温割れを抑制する観点からも好ましくない。
【0051】本発明鋼では、前記のベース組成に加えて
さらに、前述のCuおよびNiの元素群の一種もしくは二種
を、およびCrからBまでの元素群から一種もしくは二種
以上を、それぞれ選んで同時に含有させてもよい。各元
素群の望ましい合計量および効果は、前述のとおりであ
る。
【0052】上述のいずれの本発明鋼においても、加え
てさらに重量%で、次のCaおよびREMの一種または二
種を含有させることができる。これらは、硫化物の形態
を制御し、低温靱性を向上させるとともに、耐水素誘起
割れ性の改善にも効果を有する。
【0053】Ca:0.0005〜0.005 % Ca含有量が0.0005%未満では、上記の効果が得られな
い。一方、0.005 %を超えると大型介在物やクラスター
を生成して鋼の清浄度を害する。
【0054】REM: 0.005〜0.05% REMが0.005 %未満では、前記の効果が得られない。
一方、0.05%を超えると大型介在物やクラスターを生成
して鋼の清浄度を害する。REMとしては、Ce、La、Y
およびHfなどの1種または2種以上を用いるのが望まし
く、いずれの場合も上記効果を得ることができる。
【0055】本発明の高張力鋼の製造にあたっては、上
記成分系の鋼を転炉、電気炉などで溶製し、連続鋳造ま
たは造塊分塊法により、スラブとする。このとき、冷却
速度が速い方が析出物を微細分散させる上から好ましい
ので、連続鋳造法を用いるのが望ましい。また、スラブ
厚さは同様の理由から薄い方が望ましい。
【0056】その後、加熱、熱間圧延を施し、所定の鋼
板を製造する。
【0057】上記加熱以降の製造条件として、公知の制
御圧延、制御冷却などの種々の技術を適用してもHAZ
の性質には何ら影響を及ぼさない。ただし、熱間圧延に
際して再加熱を行う場合は、スラブの再加熱温度は1250
℃以下とするのが望ましい。
【0058】これは、スラブ中にNb−Ti複合炭窒化物を
微細に析出させているとは言え、溶接熱処理サイクルの
ような短時間の熱サイクルではないため、1250℃を超え
てスラブの再加熱を行った場合には、γ結晶粒の粗大化
を抑制し得ず、母材の低温靱性が劣化するからである。
【0059】また、母材の機械的性質を向上させるため
に、熱間圧延後、適正な熱処理を施してもHAZ靱性に
関しては何ら差し支えない。
【0060】上記の製造方法では、スラブの再加熱は必
ずしも実施する必要はなく、ホットチャージ圧延やダイ
レクト圧延を行っても、本発明鋼の特徴を損なうもので
はない。
【0061】
【実施例】表1〜表3に示す化学組成を有する鋼を転炉
で溶製し、造塊分塊法または連続鋳造法でスラブとした
後、1150〜1250℃に加熱して熱間圧延し、その後表4〜
表6に示す熱処理を施して板厚20〜60mmの鋼板を製造し
た。
【0062】これらの鋼板を対象として母材の機械的性
質および溶接部のHAZ靱性を調査した。HAZ靱性の
調査方法は次のとおりである。
【0063】再現HAZ1:溶接入熱量100kJ/cmに相
当する最高加熱温度1400℃、800 〜500 ℃の冷却時間が
60秒の熱サイクルを与えた後、シャルピー衝撃試験を実
施。
【0064】再現HAZ2:溶接入熱量250kJ/cmに相
当する最高加熱温度1400℃、800 〜500 ℃の冷却時間が
180 秒の熱サイクルを与えた後、シャルピー衝撃試験を
実施。 溶接継手:一部の鋼種については、SAW法で溶接入熱
量100kJ/cmの実継手を作製し、シャルピー衝撃試験を
実施。
【0065】これらの試験結果を表4〜表6に併せて示
す。表4のF.L.は溶融線近傍のHAZと溶接金属が1:
1になる位置にノッチを入れた場合のシャルピー試験
を、同じくW.M.は溶接金属中央の位置にノッチを入れた
場合のシャルピー試験を、それぞれ意味する。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】表1の鋼1〜24は、前述の図1にその再現
HAZ靱性を示した鋼種である。鋼1〜3ではN含有量
が不足しており、複合炭窒化物が十分に析出しない。こ
のため再現HAZの靱性が高い値とならない。鋼10では
N含有量が過剰であるため再現HAZ靱性値は優れてい
るものの、母材の靱性および実継手の溶接金属靱性が著
しく劣化している。
【0073】鋼11〜17はNb単独含有鋼であるが、この場
合には溶接再現熱サイクルを受けることによって、Nb析
出物はほぼ全量母材中に固溶する。このため、N含有量
の増加は直截に固溶N量の増加を招くため、N量の増加
にしたがって再現HAZ靱性は劣化する。鋼18〜24はTi
単独含有鋼であるが、この場合にはN量の増加ととも
に、ある程度の靱性改善が認められる。しかし、析出物
として期待できるのはTiNのみであることから、Ti含有
量とN含有量との比が3.4 程度を境に再現HAZ靱性は
急激に劣化する。また、図1から、Ti単独含有鋼での靱
性の改善代はTi−Nb複合添加鋼に比べて小さいことが明
白である。
【0074】本発明鋼4〜9は、上述の比較鋼に対して
優れたHAZ靱性を示すとともに、母材靱性、母材の機
械的性質および溶接時の溶接部靱性にも優れている。
【0075】比較鋼26〜33では、一部の成分が本発明で
定める範囲を逸脱しているため、HAZ靱性が著しく劣
化している。
【0076】本発明鋼34〜61は、母材の強度、靱性など
を改善する作用を有する元素を含有させたものである
が、いずれも優れた再現HAZ靱性を示している。
【0077】本発明鋼62〜64は、本発明を満たす成分の
場合において熱処理方法の違いの影響を検討したもので
ある。本発明鋼5のHAZ靱性と比較すると、圧延後の
熱処理の変化が再現HAZ靱性に何ら影響を及ぼさない
ことが明らかである。
【0078】
【発明の効果】本発明の溶接用高張力鋼は、高い母材靱
性とともに優れたHAZ靱性を確保することができるも
のである。この鋼材ではさらに、溶接構造物の低温靱性
が向上し、大入熱溶接法の適用が可能である。この結
果、溶接施工性および溶接構造物の安定性を向上させる
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Nb単独、Ti単独およびTi−Nb複合の各含有鋼の
場合において、遷移温度に及ぼすN含有量の影響を示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/58

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.01〜
    0.5 %、Mn:0.4〜2.0 %、Nb:0.01〜0.1 %、Ti:0.00
    5 〜0.015 %、Al:0.0005〜0.05%およびN:0.005〜0.
    02%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からな
    り、不純物中のPは0.030 %以下、Sは0.030 %以下で
    あることを特徴とする溶接熱影響部靱性の優れた高張力
    鋼。
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.01〜
    0.5 %、Mn:0.4〜2.0 %、Nb:0.01〜0.1 %、Ti:0.00
    5 〜0.015 %、Al:0.0005〜0.05%およびN:0.005〜0.
    02%を含有し、さらにCu:0.2 〜1.5 %およびNi:0.2
    〜3.0 %の一種または二種を含み、残部はFeおよび不可
    避的不純物からなり、不純物中のPは0.030 %以下、S
    は0.030 %以下であることを特徴とする溶接熱影響部靱
    性の優れた高張力鋼。
  3. 【請求項3】重量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.01〜
    0.5 %、Mn:0.4〜2.0 %、Nb:0.01〜0.1 %、Ti:0.00
    5 〜0.015 %、Al:0.0005〜0.05%およびN:0.005〜0.
    02%を含有し、さらにCr:0.05〜1.0 %、Mo:0.05〜1.
    0 %、V:0.03〜0.2 %およびB:0.0003〜0.002 %の
    一種または二種以上を含み、残部はFeおよび不可避的不
    純物からなり、不純物中のPは0.030 %以下、Sは0.03
    0 %以下であることを特徴とする溶接熱影響部靱性の優
    れた高張力鋼。
  4. 【請求項4】重量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.01〜
    0.5 %、Mn:0.4〜2.0 %、Nb:0.01〜0.1 %、Ti:0.00
    5 〜0.015 %、Al:0.0005〜0.05%およびN:0.005〜0.
    02%を含有し、さらにCu:0.2 〜1.5 %およびNi:0.2
    〜3.0 %の一種または二種、Cr:0.05〜1.0 %、Mo:0.
    05〜1.0 %、V:0.03〜0.2 %およびB:0.0003〜0.00
    2 %の一種または二種以上を含み、残部はFeおよび不可
    避的不純物からなり、不純物中のPは0.030 %以下、S
    は0.030 %以下であることを特徴とする溶接熱影響部靱
    性の優れた高張力鋼。
  5. 【請求項5】加えてさらに重量%で、Ca:0.0005〜0.00
    5 %および希土類:0.005 〜0.05%の一種または二種を
    含むことを特徴とする請求項1から請求項4までに記載
    のいずれかの溶接熱影響部靱性の優れた高張力鋼。
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