JPH09296253A - 低温靱性の優れた極厚高強度鋼管 - Google Patents
低温靱性の優れた極厚高強度鋼管Info
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- JPH09296253A JPH09296253A JP11165096A JP11165096A JPH09296253A JP H09296253 A JPH09296253 A JP H09296253A JP 11165096 A JP11165096 A JP 11165096A JP 11165096 A JP11165096 A JP 11165096A JP H09296253 A JPH09296253 A JP H09296253A
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- temperature toughness
- steel pipe
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 高強度と極低温での良好な靱性を有する極厚
鋼管を提供する。 【解決手段】 実質的にAlを含有しない低C−低Si
−高Mn−Nb−微量Ti系−高炭素当量の鋼板を鋼管
母材としHAZにおける粒界フェライトを10%以下と
すること、かつ低C−低Si−高Mn−Nb−微量Ti
−微量B−高炭素当量からなり、粒界フェライトが10
%以下の溶接金属部を有する。低温靱性に優れた極厚高
強度鋼管(API規格X70以上)を提供することによ
りパイプラインの輸送効率が大幅に向上する。
鋼管を提供する。 【解決手段】 実質的にAlを含有しない低C−低Si
−高Mn−Nb−微量Ti系−高炭素当量の鋼板を鋼管
母材としHAZにおける粒界フェライトを10%以下と
すること、かつ低C−低Si−高Mn−Nb−微量Ti
−微量B−高炭素当量からなり、粒界フェライトが10
%以下の溶接金属部を有する。低温靱性に優れた極厚高
強度鋼管(API規格X70以上)を提供することによ
りパイプラインの輸送効率が大幅に向上する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、API規格X70
以上の高強度と高靱性を有する極厚(38mm以上)鋼
管に関するものである。
以上の高強度と高靱性を有する極厚(38mm以上)鋼
管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】原油・天然ガスを輸送するパイプライン
に使用するラインパイプには、安全性の観点から優れた
強度、低温靱性、溶接性などが求められる。近年、パイ
プライン敷設域の深海化や寒冷地化にともない、極厚肉
化や−60℃での低温靱性の確保が要求されるようにな
っている。
に使用するラインパイプには、安全性の観点から優れた
強度、低温靱性、溶接性などが求められる。近年、パイ
プライン敷設域の深海化や寒冷地化にともない、極厚肉
化や−60℃での低温靱性の確保が要求されるようにな
っている。
【0003】従来、極厚鋼板の製造法としては、特開昭
59−211529号公報、特開平1−159320号
公報に開示のものがある。また、溶接部靱性の優れた極
厚鋼板の製造法としては、特開昭59−53653号公
報、特開昭59−140355号公報などに開示のもの
がある。一方、極厚鋼管の製造法としては、特開昭53
−1148号公報、特開平7−150245号公報、特
開平7−150246号公報などに種々の製造法が開示
されている。
59−211529号公報、特開平1−159320号
公報に開示のものがある。また、溶接部靱性の優れた極
厚鋼板の製造法としては、特開昭59−53653号公
報、特開昭59−140355号公報などに開示のもの
がある。一方、極厚鋼管の製造法としては、特開昭53
−1148号公報、特開平7−150245号公報、特
開平7−150246号公報などに種々の製造法が開示
されている。
【0004】例えば、特開昭53−1148号公報に
は、極厚鋼管を成形・シーム溶接後にシーム溶接HAZ
(溶接熱影響部)を550〜680℃に加熱することに
よるHAZ靱性の優れた極厚鋼管の製造法が示されてい
る。しかしながら、この方法は鋼管溶接後に熱処理が必
須であるため、生産性や製造コストの観点から問題があ
った。
は、極厚鋼管を成形・シーム溶接後にシーム溶接HAZ
(溶接熱影響部)を550〜680℃に加熱することに
よるHAZ靱性の優れた極厚鋼管の製造法が示されてい
る。しかしながら、この方法は鋼管溶接後に熱処理が必
須であるため、生産性や製造コストの観点から問題があ
った。
【0005】このようなことから、生産性に優れ、高強
度でかつ極低温での優れた靱性を有する極厚鋼管の開発
が強く望まれていた。
度でかつ極低温での優れた靱性を有する極厚鋼管の開発
が強く望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高強度でか
つ低温での優れた靱性を有する極厚鋼管を提供すること
を目的とするものである。
つ低温での優れた靱性を有する極厚鋼管を提供すること
を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
とするところは下記のとおりである。重量%で、C:
0.05〜0.12%、Si:0.3%以下、Mn:
1.4〜2.2%、P:0.015%以下、S:0.0
30%以下、Nb:0.005〜0.025%、Ti:
0.005〜0.030%、Al:0.004%以下、
N:0.001〜0.006%、O:0.004%以下
を含有し、必要に応じて、Ni:0.1〜1.0%、C
u:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.0%、M
o:0.1〜1.0%、V:0.01〜0.10%、
B:0.0003〜0.002%、Ca:0.001〜
0.005%のうち1種または2種以上を含有し、残部
が鉄および不可避的不純物からなり、かつ下記の式で定
義されるFT値が−0.005〜0.01の範囲にあ
り、CE値が0.40以上からなる鋼板の溶接熱影響部
のミクロ組織中における粒界フェライトが10%以下
で、C:0.05〜0.12%、Si:0.3%以下、
Mn:1.4〜2.2%、P:0.015%以下、S:
0.030%以下、Nb:0.003〜0.02%、T
i:0.005〜0.050%、Al:0.1%以下、
N:0.001〜0.01%、O:0.05%以下、
B:0.0003〜0.0020%を含有し、必要に応
じて、Ni:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜1.0
%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.1〜1.0
%、V:0.01〜0.10%、Ca:0.001〜
0.005%のうち1種または2種以上を含有し、残部
が鉄および不可避的不純物からなり、かつ下記の式で定
義されるP値が−0.010〜0.010の範囲にあ
り、かつミクロ組織中における粒界フェライトが10%
以下の溶接金属部からなる低温靱性の優れた極厚高強度
鋼管。
とするところは下記のとおりである。重量%で、C:
0.05〜0.12%、Si:0.3%以下、Mn:
1.4〜2.2%、P:0.015%以下、S:0.0
30%以下、Nb:0.005〜0.025%、Ti:
0.005〜0.030%、Al:0.004%以下、
N:0.001〜0.006%、O:0.004%以下
を含有し、必要に応じて、Ni:0.1〜1.0%、C
u:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.0%、M
o:0.1〜1.0%、V:0.01〜0.10%、
B:0.0003〜0.002%、Ca:0.001〜
0.005%のうち1種または2種以上を含有し、残部
が鉄および不可避的不純物からなり、かつ下記の式で定
義されるFT値が−0.005〜0.01の範囲にあ
り、CE値が0.40以上からなる鋼板の溶接熱影響部
のミクロ組織中における粒界フェライトが10%以下
で、C:0.05〜0.12%、Si:0.3%以下、
Mn:1.4〜2.2%、P:0.015%以下、S:
0.030%以下、Nb:0.003〜0.02%、T
i:0.005〜0.050%、Al:0.1%以下、
N:0.001〜0.01%、O:0.05%以下、
B:0.0003〜0.0020%を含有し、必要に応
じて、Ni:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜1.0
%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.1〜1.0
%、V:0.01〜0.10%、Ca:0.001〜
0.005%のうち1種または2種以上を含有し、残部
が鉄および不可避的不純物からなり、かつ下記の式で定
義されるP値が−0.010〜0.010の範囲にあ
り、かつミクロ組織中における粒界フェライトが10%
以下の溶接金属部からなる低温靱性の優れた極厚高強度
鋼管。
【0008】FT=Ti−3.4N CE=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni
+Cu)/15 P={1.5(O−0.89Al)+3.4N}−Ti 以下に本発明の低温靱性の優れた極厚高強度鋼管につい
て詳細に説明する。従来より、極厚鋼管を成形・シーム
溶接後、シーム溶接HAZ部を550〜680℃に加熱
することにより良好なHAZ靱性を確保できることが知
られている(特開昭53−1148号公報)。しかしな
がら、この方法では生産性や製造コストの観点から問題
がある。
+Cu)/15 P={1.5(O−0.89Al)+3.4N}−Ti 以下に本発明の低温靱性の優れた極厚高強度鋼管につい
て詳細に説明する。従来より、極厚鋼管を成形・シーム
溶接後、シーム溶接HAZ部を550〜680℃に加熱
することにより良好なHAZ靱性を確保できることが知
られている(特開昭53−1148号公報)。しかしな
がら、この方法では生産性や製造コストの観点から問題
がある。
【0009】極厚鋼管のシーム溶接に対して内外面1パ
スのSAW(サブマージドアーク溶接)をする場合、溶
接入熱を大きくしなければならず、鋼管厚が厚くなるほ
ど溶接入熱は必然的に大きくなる。溶接入熱が大きくな
ると、再加熱時のγ(オーステナイト)粒が大きくなる
とともに、溶接後の冷却速度が小さくなるため、γから
フェライト(α)への変態の際に、γ粒界から粗大なフ
ェライト(粒界フェライト)が生成し、低温靱性が劣化
する。これはシーム溶接金属およびシーム溶接HAZで
観察される。低温靱性に有害な粒界フェライトを抑制す
るためには、合金元素の添加量を増加させる必要がある
が、この場合、さらに低温靱性に有害なM*(島状マル
テンサイト)が生成し、低温靱性の改善が困難となる。
スのSAW(サブマージドアーク溶接)をする場合、溶
接入熱を大きくしなければならず、鋼管厚が厚くなるほ
ど溶接入熱は必然的に大きくなる。溶接入熱が大きくな
ると、再加熱時のγ(オーステナイト)粒が大きくなる
とともに、溶接後の冷却速度が小さくなるため、γから
フェライト(α)への変態の際に、γ粒界から粗大なフ
ェライト(粒界フェライト)が生成し、低温靱性が劣化
する。これはシーム溶接金属およびシーム溶接HAZで
観察される。低温靱性に有害な粒界フェライトを抑制す
るためには、合金元素の添加量を増加させる必要がある
が、この場合、さらに低温靱性に有害なM*(島状マル
テンサイト)が生成し、低温靱性の改善が困難となる。
【0010】そこで、極厚高強度鋼管の低温靱性を改善
するために鋭意研究した結果、本発明に至った。すなわ
ち、本発明の特徴は、(1)実質的にAlを含有しない
低C−低Si−高Mn−Nb−微量Ti系−高CE(炭
素当量)の鋼板を鋼管母材とし、HAZにおける粒界フ
ェライトを10%以下とすること、(2)低C−低Si
−高Mn−Nb−微量Ti−微量B系で粒界フェライト
が10%以下の溶接金属部を有することにあり、これに
よって高強度と優れた低温靱性を同時に達成するもので
ある。
するために鋭意研究した結果、本発明に至った。すなわ
ち、本発明の特徴は、(1)実質的にAlを含有しない
低C−低Si−高Mn−Nb−微量Ti系−高CE(炭
素当量)の鋼板を鋼管母材とし、HAZにおける粒界フ
ェライトを10%以下とすること、(2)低C−低Si
−高Mn−Nb−微量Ti−微量B系で粒界フェライト
が10%以下の溶接金属部を有することにあり、これに
よって高強度と優れた低温靱性を同時に達成するもので
ある。
【0011】低合金鋼の低温靱性は、(1)結晶粒のサ
イズ、(2)M*や上部ベイナイト(Bu)などの硬化
相の分散状態など種々の冶金学的要因に支配される。特
に極厚化するほど溶接入熱が必然的に多くなり、再加熱
時のγ粒の粗大化抑制と粒界フェライトの生成抑制が必
須となる。粒界フェライトの生成を10%以下とするこ
とにより、良好な低温靱性が得られる。なお、本発明に
おけるHAZとは溶融線(フュージョンライン)から1
mm以内を示す。さらに、粒界フェライトの生成を抑制
するために合金元素が多く添加すると、HAZにM*が
多量に生成して低温靱性が劣化する。
イズ、(2)M*や上部ベイナイト(Bu)などの硬化
相の分散状態など種々の冶金学的要因に支配される。特
に極厚化するほど溶接入熱が必然的に多くなり、再加熱
時のγ粒の粗大化抑制と粒界フェライトの生成抑制が必
須となる。粒界フェライトの生成を10%以下とするこ
とにより、良好な低温靱性が得られる。なお、本発明に
おけるHAZとは溶融線(フュージョンライン)から1
mm以内を示す。さらに、粒界フェライトの生成を抑制
するために合金元素が多く添加すると、HAZにM*が
多量に生成して低温靱性が劣化する。
【0012】そこで、本発明では、まず鋼管母材の成分
として、Si量とAl量の低減、Ti−Nバランス
の適正化、鋼管母材の合金元素の適正化(適正CE
(炭素当量)化)、により、HAZにおいてγ粒の粗大
化を抑制し、粗大な粒界フェライトとM*の生成量を抑
制して、低温靱性を向上させる。たとえ合金元素の添加
量が多くなる場合でも極力SiとAlを低減して、実質
的にAlを含んでいなければM*は微細に分散され、低
温靱性は向上する。これは、SiとAlを添加した場合
には、SiやAlはセメンタイトへの溶解度が小さく、
セメンタイト中にSiやAlが固溶しないため、未変態
オーステナイト中でγが安定化してMAの生成が顕著に
なるためである。
として、Si量とAl量の低減、Ti−Nバランス
の適正化、鋼管母材の合金元素の適正化(適正CE
(炭素当量)化)、により、HAZにおいてγ粒の粗大
化を抑制し、粗大な粒界フェライトとM*の生成量を抑
制して、低温靱性を向上させる。たとえ合金元素の添加
量が多くなる場合でも極力SiとAlを低減して、実質
的にAlを含んでいなければM*は微細に分散され、低
温靱性は向上する。これは、SiとAlを添加した場合
には、SiやAlはセメンタイトへの溶解度が小さく、
セメンタイト中にSiやAlが固溶しないため、未変態
オーステナイト中でγが安定化してMAの生成が顕著に
なるためである。
【0013】この効果を十分に発揮させるために、S
i:0.3%以下、Al:0.004%以下に限定し
た。Si、Al量の上限値は、MAの生成を抑制して低
温靱性を向上させるために必要な値である。Siは脱酸
や強度向上のために必要な元素であり、その上限の値を
0.3%とした。ただし、Si量は強度が確保できる範
囲内でできるだけ少ない方が望ましい。Alは通常脱酸
剤として鋼に含まれるが、本発明では好ましくない元素
である。Al量が0.004%を超えるとHAZでのM
Aの生成が顕著となり、低温靱性の劣化を招くので、上
限を0.004%とした。鋼の脱酸はTiのみでも十分
であり、Si、Alは必ずしも添加する必要はない。
i:0.3%以下、Al:0.004%以下に限定し
た。Si、Al量の上限値は、MAの生成を抑制して低
温靱性を向上させるために必要な値である。Siは脱酸
や強度向上のために必要な元素であり、その上限の値を
0.3%とした。ただし、Si量は強度が確保できる範
囲内でできるだけ少ない方が望ましい。Alは通常脱酸
剤として鋼に含まれるが、本発明では好ましくない元素
である。Al量が0.004%を超えるとHAZでのM
Aの生成が顕著となり、低温靱性の劣化を招くので、上
限を0.004%とした。鋼の脱酸はTiのみでも十分
であり、Si、Alは必ずしも添加する必要はない。
【0014】さらに、γ粒の粗大化を抑制するために
は、TiおよびN量の適正化とTi−Nバランスの適正
化が重要である。すなわち、Ti:0.005〜0.0
3%、N:0.001〜0.006%とし、かつTi−
3.4N:−0.005〜0.01の範囲内に限定する
必要がある。Ti添加は微細なTiNを形成し、スラブ
再加熱時および溶接HAZのオーステナイト粒の粗大化
を抑制してミクロ組織を微細化し、母材およびHAZの
低温靱性を改善する。このようなTiNの効果を発現さ
せるためには、最低0.005%のTi添加が必要であ
る。しかし、Ti量が多過ぎると、TiNの粗大化やT
iCによる析出硬化が生じ、低温靱性が劣化するので、
その上限は0.030%に限定しなければならない。
は、TiおよびN量の適正化とTi−Nバランスの適正
化が重要である。すなわち、Ti:0.005〜0.0
3%、N:0.001〜0.006%とし、かつTi−
3.4N:−0.005〜0.01の範囲内に限定する
必要がある。Ti添加は微細なTiNを形成し、スラブ
再加熱時および溶接HAZのオーステナイト粒の粗大化
を抑制してミクロ組織を微細化し、母材およびHAZの
低温靱性を改善する。このようなTiNの効果を発現さ
せるためには、最低0.005%のTi添加が必要であ
る。しかし、Ti量が多過ぎると、TiNの粗大化やT
iCによる析出硬化が生じ、低温靱性が劣化するので、
その上限は0.030%に限定しなければならない。
【0015】NはTiNを形成してスラブ再加熱時およ
び溶接HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制し、母
材、HAZの低温靱性を向上させる。このために必要な
最小量は0.001%である。しかし、多過ぎるとスラ
ブ表面疵や固溶NによるHAZ靱性の劣化の原因となる
ので、上限は0.006%に抑える必要がある。Ti−
3.4Nは化学量論的にTiの過不足を表し、Ti−
3.4Nが−0.005より小さい場合、すなわちTi
量が少ない場合、固溶Nが増加してHAZ靱性が劣化す
る。一方、Ti−3.4Nが0.01を超える場合、T
iが過剰となってTiCによる析出硬化が生じる。
び溶接HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制し、母
材、HAZの低温靱性を向上させる。このために必要な
最小量は0.001%である。しかし、多過ぎるとスラ
ブ表面疵や固溶NによるHAZ靱性の劣化の原因となる
ので、上限は0.006%に抑える必要がある。Ti−
3.4Nは化学量論的にTiの過不足を表し、Ti−
3.4Nが−0.005より小さい場合、すなわちTi
量が少ない場合、固溶Nが増加してHAZ靱性が劣化す
る。一方、Ti−3.4Nが0.01を超える場合、T
iが過剰となってTiCによる析出硬化が生じる。
【0016】また、鋼管厚が大きくなり溶接入熱が増加
すると、溶接後の冷却速度が小さくなるために粗大な粒
界フェライトが生成しやすくなる。この粒界フェライト
の生成を抑制するためにCE(炭素当量)=C+Mn/
6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15を
0.40以上とする必要がある。CEが0.40未満で
あると鋼板の焼入れ性が低下して、γ−α変態時に粗大
な粒界フェライトが生成し、低温靱性が劣化する。
すると、溶接後の冷却速度が小さくなるために粗大な粒
界フェライトが生成しやすくなる。この粒界フェライト
の生成を抑制するためにCE(炭素当量)=C+Mn/
6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15を
0.40以上とする必要がある。CEが0.40未満で
あると鋼板の焼入れ性が低下して、γ−α変態時に粗大
な粒界フェライトが生成し、低温靱性が劣化する。
【0017】次に、本発明の鋼管母材におけるその他の
成分元素の限定理由について説明する。Cの下限0.0
5%は、母材および溶接部の強度、低温靱性の確保なら
びにNb、V添加による析出硬化、結晶粒の微細化効果
を発揮させるための最小量である。しかし、C量が多過
ぎると低温靱性、現地溶接性の著しい劣化を招くので、
上限を0.12%とした。
成分元素の限定理由について説明する。Cの下限0.0
5%は、母材および溶接部の強度、低温靱性の確保なら
びにNb、V添加による析出硬化、結晶粒の微細化効果
を発揮させるための最小量である。しかし、C量が多過
ぎると低温靱性、現地溶接性の著しい劣化を招くので、
上限を0.12%とした。
【0018】Mnは強度、低温靱性を確保する上で不可
欠な元素であり、その下限は1.4%である。しかし、
Mnが多過ぎると鋼の焼入れ性が増加して現地溶接性、
HAZ靱性を劣化させるだけでなく、連続鋳造鋼片の中
心偏析を助長し、低温靱性も劣化させるので、上限を
2.2%とした。Nbは制御圧延において結晶粒の微細
化や析出硬化に寄与し、鋼を強靱化する作用を有すると
ともに、γ粒界からのフェライトの生成抑制にも効果が
ある。これらの効果を発揮させるための最小量として、
その下限を0.005%とした。しかし、Nbを0.0
25%超添加すると、現地溶接性やHAZ靱性に悪影響
を及ぼすので、その上限を0.025%とした。
欠な元素であり、その下限は1.4%である。しかし、
Mnが多過ぎると鋼の焼入れ性が増加して現地溶接性、
HAZ靱性を劣化させるだけでなく、連続鋳造鋼片の中
心偏析を助長し、低温靱性も劣化させるので、上限を
2.2%とした。Nbは制御圧延において結晶粒の微細
化や析出硬化に寄与し、鋼を強靱化する作用を有すると
ともに、γ粒界からのフェライトの生成抑制にも効果が
ある。これらの効果を発揮させるための最小量として、
その下限を0.005%とした。しかし、Nbを0.0
25%超添加すると、現地溶接性やHAZ靱性に悪影響
を及ぼすので、その上限を0.025%とした。
【0019】さらに、本発明では不純物元素であるP、
S、O量をそれぞれ、0.015%以下、0.030%
以下、0.004%以下とする。その主たる理由は、母
材、HAZの低温靱性をより一層向上させるためであ
る。P量の低減は連続鋳造スラブの中心偏析を低減し、
粒界破壊を防止して低温靱性を向上させる。また、S量
の低減は延伸化したMnSを低減して延靱性を向上させ
る効果がある。さらに、O量の低減は鋼中の酸化物を少
なくして、低温靱性の改善に効果がある。従って、P、
S、O量は低いほど好ましい。
S、O量をそれぞれ、0.015%以下、0.030%
以下、0.004%以下とする。その主たる理由は、母
材、HAZの低温靱性をより一層向上させるためであ
る。P量の低減は連続鋳造スラブの中心偏析を低減し、
粒界破壊を防止して低温靱性を向上させる。また、S量
の低減は延伸化したMnSを低減して延靱性を向上させ
る効果がある。さらに、O量の低減は鋼中の酸化物を少
なくして、低温靱性の改善に効果がある。従って、P、
S、O量は低いほど好ましい。
【0020】次に、溶接金属部の成分として、低C−低
Si−高Mn−Nb−微量Ti−微量B系とする必要が
ある。溶接金属部における低温靱性改善の基本的な考え
方は、微量B添加による粒界フェライトの抑制、酸
化物を核とする粒内変態フェライトを活用するためのA
l−Ti−N−Oバランスの適正化が重要である。鋼管
母材の時と同様に、鋼管厚が大きくなって溶接入熱が増
加すると、溶接後の冷却速度が小さくなるために粗大な
粒界フェライトが生成しやすくなる。溶接金属部におい
て低温靱性を改善するためには、粒界フェライトを10
%以下とする必要がある。粒界フェライトの生成を抑制
するためには、B:0.0003〜0.0020%とす
ることが有効である。固溶Bは変態前のγ粒界に偏析し
て、γ粒界からのフェライト変態を抑制し、粗大な粒界
フェライトの生成を抑制して、低温靱性を改善する。B
添加量が0.0003%未満であると粒界フェライトの
抑制効果がないため、下限を0.0003%とした。ま
た、0.0020%を超えてBを添加すると、低温靱性
を劣化させるだけでなく、却ってBの焼入れ性向上効果
を消失せしめることもあるので、上限を0.0020%
とした。
Si−高Mn−Nb−微量Ti−微量B系とする必要が
ある。溶接金属部における低温靱性改善の基本的な考え
方は、微量B添加による粒界フェライトの抑制、酸
化物を核とする粒内変態フェライトを活用するためのA
l−Ti−N−Oバランスの適正化が重要である。鋼管
母材の時と同様に、鋼管厚が大きくなって溶接入熱が増
加すると、溶接後の冷却速度が小さくなるために粗大な
粒界フェライトが生成しやすくなる。溶接金属部におい
て低温靱性を改善するためには、粒界フェライトを10
%以下とする必要がある。粒界フェライトの生成を抑制
するためには、B:0.0003〜0.0020%とす
ることが有効である。固溶Bは変態前のγ粒界に偏析し
て、γ粒界からのフェライト変態を抑制し、粗大な粒界
フェライトの生成を抑制して、低温靱性を改善する。B
添加量が0.0003%未満であると粒界フェライトの
抑制効果がないため、下限を0.0003%とした。ま
た、0.0020%を超えてBを添加すると、低温靱性
を劣化させるだけでなく、却ってBの焼入れ性向上効果
を消失せしめることもあるので、上限を0.0020%
とした。
【0021】さらに、溶接金属部においては、酸化物を
核とする粒内変態フェライトの活用が有効である。酸化
物を核とする粒内変態フェライトの生成により、結晶粒
のサイズが小さくなり、低温靱性が向上する。この効果
を発揮させるためには、P={1.5(O−0.89A
l)+3.4N}−Tiを−0.010〜0.010%
とする必要がある。P値はTi量の過不足を示したもの
で、P値が低い(マイナス)場合にはTiが過剰に添加
されていることになり、TiCなどによる析出硬化によ
り低温靱性が劣化する。一方、P値が高い(プラス)場
合にはTi量が不足(または酸素量が過剰)しているた
めに、低温靱性が劣化する。良好な低温靱性を得るため
には、P値を−0.010〜0.010%にする必要が
ある。
核とする粒内変態フェライトの活用が有効である。酸化
物を核とする粒内変態フェライトの生成により、結晶粒
のサイズが小さくなり、低温靱性が向上する。この効果
を発揮させるためには、P={1.5(O−0.89A
l)+3.4N}−Tiを−0.010〜0.010%
とする必要がある。P値はTi量の過不足を示したもの
で、P値が低い(マイナス)場合にはTiが過剰に添加
されていることになり、TiCなどによる析出硬化によ
り低温靱性が劣化する。一方、P値が高い(プラス)場
合にはTi量が不足(または酸素量が過剰)しているた
めに、低温靱性が劣化する。良好な低温靱性を得るため
には、P値を−0.010〜0.010%にする必要が
ある。
【0022】次に、本発明の溶接金属におけるその他の
成分元素の限定理由について説明する。Cの下限0.0
5%は、強度、低温靱性の確保ならびにNb、V添加に
よる析出硬化、結晶粒の微細化効果を発揮させるための
最小量である。しかし、C量が多過ぎると低温靱性、現
地溶接性の著しい劣化を招くので、上限を0.12%と
した。
成分元素の限定理由について説明する。Cの下限0.0
5%は、強度、低温靱性の確保ならびにNb、V添加に
よる析出硬化、結晶粒の微細化効果を発揮させるための
最小量である。しかし、C量が多過ぎると低温靱性、現
地溶接性の著しい劣化を招くので、上限を0.12%と
した。
【0023】Siは脱酸や強度向上のために必要な元素
であり、その上限を0.3%とした。ただし、Si量は
強度が確保できる範囲内でできるだけ少ない方が望まし
い。鋼の脱酸はTiのみでも十分であり、Siは必ずし
も添加する必要はない。Mnは強度、低温靱性を確保す
る上で不可欠な元素であり、その下限は1.4%であ
る。しかし、Mnが多過ぎると鋼の焼入れ性が増加して
現地溶接性、HAZ靱性を劣化させるだけでなく、連続
鋳造鋼片の中心偏析を助長し、低温靱性も劣化させるの
で、上限を2.2%とした。
であり、その上限を0.3%とした。ただし、Si量は
強度が確保できる範囲内でできるだけ少ない方が望まし
い。鋼の脱酸はTiのみでも十分であり、Siは必ずし
も添加する必要はない。Mnは強度、低温靱性を確保す
る上で不可欠な元素であり、その下限は1.4%であ
る。しかし、Mnが多過ぎると鋼の焼入れ性が増加して
現地溶接性、HAZ靱性を劣化させるだけでなく、連続
鋳造鋼片の中心偏析を助長し、低温靱性も劣化させるの
で、上限を2.2%とした。
【0024】Nbは結晶粒の微細化や析出硬化に寄与
し、鋼を強靱化する作用を有するとともに、γ粒界から
のフェライトの生成抑制にも効果がある。これらの効果
を発揮させるための最小量として、その下限を0.00
3%とした。しかし、Nbを0.02%超添加すると、
現地溶接性や低温靱性に悪影響を及ぼすので、その上限
を0.02%とした。
し、鋼を強靱化する作用を有するとともに、γ粒界から
のフェライトの生成抑制にも効果がある。これらの効果
を発揮させるための最小量として、その下限を0.00
3%とした。しかし、Nbを0.02%超添加すると、
現地溶接性や低温靱性に悪影響を及ぼすので、その上限
を0.02%とした。
【0025】Ti添加は微細なTiNを形成し、オース
テナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、
低温靱性を改善する。このようなTiNの効果を発現さ
せるためには、最低0.005%のTi添加が必要であ
る。しかし、Ti量が多過ぎると、TiNの粗大化やT
iCによる析出硬化が生じ、低温靱性が劣化するので、
その上限は0.050%に限定しなければならない。
テナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、
低温靱性を改善する。このようなTiNの効果を発現さ
せるためには、最低0.005%のTi添加が必要であ
る。しかし、Ti量が多過ぎると、TiNの粗大化やT
iCによる析出硬化が生じ、低温靱性が劣化するので、
その上限は0.050%に限定しなければならない。
【0026】NはTiNを形成してオーステナイト粒の
粗大化を抑制し、低温靱性を向上させる。このために必
要な最小量は0.001%である。しかし、N量が多過
ぎると固溶Nによる低温靱性の劣化の原因となるので、
その上限は0.01%に抑える必要がある。さらに、本
発明では不純物元素であるP、S、O量をそれぞれ、
0.015%以下、0.030%以下、0.05%以下
とする。その主たる理由は、低温靱性をより一層向上さ
せるためである。P量の低減は偏析を低減し、粒界破壊
を防止して低温靱性を向上させる。また、S量の低減は
MnSを低減して延靱性を向上させる効果がある。さら
に、O量の低減は溶接金属中の酸化物を少なくして、低
温靱性の改善に効果がある。従って、P、S、O量は低
いほど好ましい。
粗大化を抑制し、低温靱性を向上させる。このために必
要な最小量は0.001%である。しかし、N量が多過
ぎると固溶Nによる低温靱性の劣化の原因となるので、
その上限は0.01%に抑える必要がある。さらに、本
発明では不純物元素であるP、S、O量をそれぞれ、
0.015%以下、0.030%以下、0.05%以下
とする。その主たる理由は、低温靱性をより一層向上さ
せるためである。P量の低減は偏析を低減し、粒界破壊
を防止して低温靱性を向上させる。また、S量の低減は
MnSを低減して延靱性を向上させる効果がある。さら
に、O量の低減は溶接金属中の酸化物を少なくして、低
温靱性の改善に効果がある。従って、P、S、O量は低
いほど好ましい。
【0027】次に、鋼管母材および溶接金属部にNi、
Cu、Cr、Mo、V、B、Caを添加する理由につい
て説明する。基本となる成分にさらにこれらの元素を添
加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうこ
となく、製造可能な板厚の拡大や母材の強度・靱性など
の特性の向上を図るためである。従って、その添加量は
自ら制限されるべき性質のものである。
Cu、Cr、Mo、V、B、Caを添加する理由につい
て説明する。基本となる成分にさらにこれらの元素を添
加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうこ
となく、製造可能な板厚の拡大や母材の強度・靱性など
の特性の向上を図るためである。従って、その添加量は
自ら制限されるべき性質のものである。
【0028】Niを添加する目的は、低炭素の本発明鋼
の強度を低温靱性や現地溶接性を劣化させることなく向
上させるためである。Ni添加はMnやCr、Mo添加
に比較して圧延組織(特にスラブの中心偏析帯)中に低
温靱性に有害な硬化組織を形成することが少なく、強度
を増加させる。この効果を発揮させるためには、0.1
%以上の添加が必要である。しかし、添加量が多すぎる
と、経済性だけでなく現地溶接性やHAZ靱性などを劣
化させるので、その上限を1.0%とした。Niは連続
鋳造時、熱間圧延時におけるCuクラックの防止にも有
効である。
の強度を低温靱性や現地溶接性を劣化させることなく向
上させるためである。Ni添加はMnやCr、Mo添加
に比較して圧延組織(特にスラブの中心偏析帯)中に低
温靱性に有害な硬化組織を形成することが少なく、強度
を増加させる。この効果を発揮させるためには、0.1
%以上の添加が必要である。しかし、添加量が多すぎる
と、経済性だけでなく現地溶接性やHAZ靱性などを劣
化させるので、その上限を1.0%とした。Niは連続
鋳造時、熱間圧延時におけるCuクラックの防止にも有
効である。
【0029】CuはNiとほぼ同様な効果を持つととも
に、耐食性、耐水素誘起割れ特性の向上にも効果があ
る。また、Cu析出硬化によって強度を大幅に増加させ
る。この効果を発揮させるためには、0.1%以上の添
加が必要である。しかし、過剰に添加すると析出硬化に
より母材、HAZの靱性低下や熱間圧延時にCuクラッ
クが生じるので、その上限を1.0%とした。
に、耐食性、耐水素誘起割れ特性の向上にも効果があ
る。また、Cu析出硬化によって強度を大幅に増加させ
る。この効果を発揮させるためには、0.1%以上の添
加が必要である。しかし、過剰に添加すると析出硬化に
より母材、HAZの靱性低下や熱間圧延時にCuクラッ
クが生じるので、その上限を1.0%とした。
【0030】Crは母材、溶接部の強度を増加させる効
果があり、この効果を発揮させるためには、0.1%以
上の添加が必要である。しかし、多過ぎると現地溶接性
やHAZ靱性を著しく劣化させるため、Cr量の上限を
1.0%とした。Moを添加する理由は、母材、溶接部
の強度を増加させるためである。MoはNbと共存して
制御圧延時にオーステナイトの再結晶を強力に抑制し、
オーステナイト組織の微細化にも効果がある。このよう
な効果を得るためには、Moは最低0.1%必要であ
る。しかし、過剰のMo添加はHAZ靱性、現地溶接性
を劣化させるので、上限を1.0%とした。
果があり、この効果を発揮させるためには、0.1%以
上の添加が必要である。しかし、多過ぎると現地溶接性
やHAZ靱性を著しく劣化させるため、Cr量の上限を
1.0%とした。Moを添加する理由は、母材、溶接部
の強度を増加させるためである。MoはNbと共存して
制御圧延時にオーステナイトの再結晶を強力に抑制し、
オーステナイト組織の微細化にも効果がある。このよう
な効果を得るためには、Moは最低0.1%必要であ
る。しかし、過剰のMo添加はHAZ靱性、現地溶接性
を劣化させるので、上限を1.0%とした。
【0031】VはほぼNbと同様の効果を有する。この
効果を発揮させるためには、0.01%以上の添加が必
要である。Vの上限は現地溶接性、HAZ靱性の観点か
ら0.10%まで許容できる。Bは極微量で鋼の焼入れ
性を飛躍的に高める。このような効果を得るためには、
Bは最低でも0.0003%必要である。一方、過剰に
添加すると、低温靱性を劣化させるだけでなく、却って
Bの焼入れ性向上効果を消失せしめることもあるので、
上限を0.0020%とした。
効果を発揮させるためには、0.01%以上の添加が必
要である。Vの上限は現地溶接性、HAZ靱性の観点か
ら0.10%まで許容できる。Bは極微量で鋼の焼入れ
性を飛躍的に高める。このような効果を得るためには、
Bは最低でも0.0003%必要である。一方、過剰に
添加すると、低温靱性を劣化させるだけでなく、却って
Bの焼入れ性向上効果を消失せしめることもあるので、
上限を0.0020%とした。
【0032】Caは硫化物(MnS)の形態を制御し、
低温靱性を向上(シャルピー試験における吸収エネルギ
ーの増加など)させる。しかし、Ca量が0.001%
未満では実用上効果がなく、また0.005%を超えて
添加すると、CaO−CaSが大量に生成して、クラス
ター、大型介在物となり、鋼の清浄度を害するだけでな
く、現地溶接性にも悪影響を及ぼす。このため、Ca添
加量を0.001〜0.005%に制限した。
低温靱性を向上(シャルピー試験における吸収エネルギ
ーの増加など)させる。しかし、Ca量が0.001%
未満では実用上効果がなく、また0.005%を超えて
添加すると、CaO−CaSが大量に生成して、クラス
ター、大型介在物となり、鋼の清浄度を害するだけでな
く、現地溶接性にも悪影響を及ぼす。このため、Ca添
加量を0.001〜0.005%に制限した。
【0033】なお、上記成分を有する鋼の圧延方法とし
ては、制御圧延または制御圧延〜加速冷却することが望
ましい。これは、ベンド管の袖部の強度と低温靱性を確
保するためである。
ては、制御圧延または制御圧延〜加速冷却することが望
ましい。これは、ベンド管の袖部の強度と低温靱性を確
保するためである。
【0034】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について述べ
る。種々の成分を有する鋼片を1150℃に加熱後、9
00℃以下の累積圧下量65%で、かつ圧延終了温度7
50℃で圧延を終了した後、5℃/秒以上の冷却速度で
400℃まで冷却し、その後空冷した鋼板を母材とし、
さらにシーム溶接としてSAWにより種々の溶接金属成
分を有する鋼管厚38mm以上の極厚鋼管を製造した。
成形方法はUOEおよびBR(ベンディングロール)で
ある。その後、鋼管諸性質を調査した。機械的性質は圧
延と直角方向で調査した。
る。種々の成分を有する鋼片を1150℃に加熱後、9
00℃以下の累積圧下量65%で、かつ圧延終了温度7
50℃で圧延を終了した後、5℃/秒以上の冷却速度で
400℃まで冷却し、その後空冷した鋼板を母材とし、
さらにシーム溶接としてSAWにより種々の溶接金属成
分を有する鋼管厚38mm以上の極厚鋼管を製造した。
成形方法はUOEおよびBR(ベンディングロール)で
ある。その後、鋼管諸性質を調査した。機械的性質は圧
延と直角方向で調査した。
【0035】実施例を表1、表2(表1のつづき−
1)、表3(表1のつづき−2)、表4(表1のつづき
−3)、表5(表1のつづき−4)、表6(表1のつづ
き−5)に示す。
1)、表3(表1のつづき−2)、表4(表1のつづき
−3)、表5(表1のつづき−4)、表6(表1のつづ
き−5)に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】本発明の鋼管は優れた強度・低温靱性を有
する。これに対して、比較鋼は化学成分が適切でなく、
いずれかの特性が劣る。鋼6は母材のC量が多過ぎるた
め、母材およびHAZの低温靱性が悪い。鋼7は母材の
Si量が高過ぎるため、HAZの低温靱性が悪い。鋼8
は母材のAl量が多過ぎるため、HAZの低温靱性が悪
い。鋼9は母材のTi−Nバランスが悪く、Nが過剰で
あるため、母材およびHAZの低温靱性が悪い。鋼10
は母材のTi−Nバランスが悪く、Tiが過剰であるた
めに母材およびHAZの低温靱性が悪い。鋼11は母材
の炭素当量が低く、X70としての十分な強度が得られ
ないと同時にHAZの低温靱性も悪い。鋼12は溶接金
属のC量が多過ぎるため、溶接金属の低温靱性が悪い。
鋼13は溶接金属のB量が少ないため、溶接金属の低温
靱性が悪い。鋼14はP値が低過ぎるため溶接金属の低
温靱性が悪い。鋼15はP値が高過ぎるため溶接金属の
低温靱性が悪い。鋼16はHAZの粒界フェライト分率
が高く、HAZ靱性が悪い。鋼17は溶接金属部の粒界
フェライト分率が高く、HAZ靱性が悪い。
する。これに対して、比較鋼は化学成分が適切でなく、
いずれかの特性が劣る。鋼6は母材のC量が多過ぎるた
め、母材およびHAZの低温靱性が悪い。鋼7は母材の
Si量が高過ぎるため、HAZの低温靱性が悪い。鋼8
は母材のAl量が多過ぎるため、HAZの低温靱性が悪
い。鋼9は母材のTi−Nバランスが悪く、Nが過剰で
あるため、母材およびHAZの低温靱性が悪い。鋼10
は母材のTi−Nバランスが悪く、Tiが過剰であるた
めに母材およびHAZの低温靱性が悪い。鋼11は母材
の炭素当量が低く、X70としての十分な強度が得られ
ないと同時にHAZの低温靱性も悪い。鋼12は溶接金
属のC量が多過ぎるため、溶接金属の低温靱性が悪い。
鋼13は溶接金属のB量が少ないため、溶接金属の低温
靱性が悪い。鋼14はP値が低過ぎるため溶接金属の低
温靱性が悪い。鋼15はP値が高過ぎるため溶接金属の
低温靱性が悪い。鋼16はHAZの粒界フェライト分率
が高く、HAZ靱性が悪い。鋼17は溶接金属部の粒界
フェライト分率が高く、HAZ靱性が悪い。
【0043】
【発明の効果】本発明により低温靱性に優れた極厚高強
度鋼管(API規格X70以上)が安定して得られるよ
うになった。その結果、パイプラインの輸送効率の向上
が可能となった。
度鋼管(API規格X70以上)が安定して得られるよ
うになった。その結果、パイプラインの輸送効率の向上
が可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/14 C22C 38/14 38/58 38/58
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、 C:0.05〜0.12%、 Si:0.3%以下、 Mn:1.4〜2.2%、 P:0.015%以下、 S:0.030%以下、 Nb:0.005〜0.025%、 Ti:0.005〜0.030%、 Al:0.004%以下、 N:0.001〜0.006%、 O:0.004%以下 を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、か
つ下記の式で定義されるFT値が−0.005〜0.0
1の範囲にあり、CE値が0.40以上からなる鋼板の
溶接熱影響部のミクロ組織中における粒界フェライトが
10%以下で、 C:0.05〜0.12%、 Si:0.3%以下、 Mn:1.4〜2.2%、 P:0.015%以下、 S:0.030%以下、 Nb:0.003〜0.02%、 Ti:0.005〜0.050%、 Al:0.1%以下、 N:0.001〜0.01%、 O:0.05%以下、 B:0.0003〜0.0020% を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、か
つ下記の式で定義されるP値が−0.010〜0.01
0の範囲にあり、かつミクロ組織中における粒界フェラ
イトが10%以下の溶接金属部からなる低温靱性の優れ
た極厚高強度鋼管。 FT=Ti−3.4N CE=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni
+Cu)/15 P={1.5(O−0.89Al)+3.4N}−Ti - 【請求項2】 重量%で、 C:0.05〜0.12%、 Si:0.3%以下、 Mn:1.4〜2.2%、 P:0.015%以下、 S:0.030%以下、 Nb:0.005〜0.025%、 Ti:0.005〜0.030%、 Al:0.004%以下、 N:0.001〜0.006%、 O:0.004%以下 を含有し、さらに Ni:0.1〜1.0%、 Cu:0.1〜1.0%、 Cr:0.1〜1.0%、 Mo:0.1〜1.0%、 V:0.01〜0.10%、 B:0.0003〜0.002%、 Ca:0.001〜0.005% のうち1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不
可避的不純物からなり、かつ下記の式で定義されるFT
値が−0.005〜0.01の範囲にあり、CE値が
0.40以上からなる鋼板の溶接熱影響部のミクロ組織
中における粒界フェライトが10%以下で、 C:0.05〜0.12%、 Si:0.3%以下、 Mn:1.4〜2.2%、 P:0.015%以下、 S:0.030%以下、 Nb:0.003〜0.02%、 Ti:0.005〜0.050%、 Al:0.1%以下、 N:0.001〜0.01%、 O:0.05%以下、 B:0.0003〜0.0020% を含有し、さらに Ni:0.1〜1.0%、 Cu:0.1〜1.0%、 Cr:0.1〜1.0%、 Mo:0.1〜1.0%、 V:0.01〜0.10%、 Ca:0.001〜0.005% のうち1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不
可避的不純物からなり、かつ下記の式で定義されるP値
が−0.010〜0.010の範囲にあり、かつミクロ
組織中における粒界フェライトが10%以下の溶接金属
部からなる低温靱性の優れた極厚高強度鋼管。 FT=Ti−3.4N CE=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni
+Cu)/15 P={1.5(O−0.89Al)+3.4N}−Ti
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11165096A JPH09296253A (ja) | 1996-05-02 | 1996-05-02 | 低温靱性の優れた極厚高強度鋼管 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11165096A JPH09296253A (ja) | 1996-05-02 | 1996-05-02 | 低温靱性の優れた極厚高強度鋼管 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09296253A true JPH09296253A (ja) | 1997-11-18 |
Family
ID=14566711
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP11165096A Withdrawn JPH09296253A (ja) | 1996-05-02 | 1996-05-02 | 低温靱性の優れた極厚高強度鋼管 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH09296253A (ja) |
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001340990A (ja) * | 2000-03-31 | 2001-12-11 | Kawasaki Steel Corp | 溶接部靱性に優れた高強度厚肉溶接ベンド鋼管用の素管およびその製造方法 |
JP2008000808A (ja) * | 2006-06-26 | 2008-01-10 | Kobe Steel Ltd | 低温靭性、耐低温割れ性、および全姿勢溶接時のビード形状が良好な高強度溶接金属 |
JP2009202167A (ja) * | 2008-02-26 | 2009-09-10 | Jfe Steel Corp | 溶接熱影響部靭性に優れた溶接鋼管 |
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WO2014104443A1 (ko) | 2012-12-27 | 2014-07-03 | 주식회사 포스코 | 극저온 인성이 우수하고 저항복비 특성을 갖는 고강도 강판 및 그의 제조방법 |
JP2015151563A (ja) * | 2014-02-12 | 2015-08-24 | 新日鐵住金株式会社 | Haz靱性に優れたuoe鋼管母材 |
EP2264203A4 (en) * | 2008-03-26 | 2016-06-01 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp | HIGH-RESISTANCE UOE STEEL TUBE WITH EXCELLENT ANTISEISM PERFORMANCE CHARACTERISTICS AND EXCELLENT LOW TEMPERATURE STRENGTH UNDER THE INFLUENCE OF WELDER HEAT |
WO2022033128A1 (zh) * | 2020-08-14 | 2022-02-17 | 江阴兴澄特种钢铁有限公司 | 一种正火态交货的100-120mm厚海上风电管桩用FH36钢板及其制备方法 |
-
1996
- 1996-05-02 JP JP11165096A patent/JPH09296253A/ja not_active Withdrawn
Cited By (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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