JP3854412B2 - 溶接熱影響部靱性に優れた耐サワー鋼板およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接熱影響部(HAZ)靱性に優れ、かつ耐水素誘起割れ(HIC)性および耐硫化物応力腐食割れ(SSC)性に優れた耐サワ−パイプライン用高強度鋼板(米国石油協会(API)規格X65以上の強度)およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
寒冷地、オフショア−における原油、天然ガス輸送用大径ラインパイプに対しては高強度とともに優れた低温靱性、現地溶接性が要求される。さらに、海水の注入による原油・ガス井戸のサワ−化や劣質資源の開発にともなって、パイプラインのサワ−化が進行し、HIC,SSCに対する優れた抵抗(耐サワ−性)が求められるようになった。またパイプラインの破壊発生防止の観点からラインパイプに要求される靱性値が従来に比べて高くなっている。
【0003】
従来、優れた耐サワ−性を有するラインパイプは、(1)鋼の高純化、介在物の低減、(2)硫化物系介在物のCa添加による形態制御、(3)連続鋳造(CC)時の軽圧下による中心偏析軽減、(4)圧延後の加速冷却によるミクロ組織制御などの技術を駆使して製造されてきた(たとえば特公昭63−001369号公報、特願昭60−252898号、特開昭61−124555号公報、特願平2−031910号)。しかし、厚肉化にともなう溶接入熱量の上昇や、安全性の観点から要求される靱性値の上昇により、これらの鋼のHAZの低温靱性は必ずしも十分ではなくなってきた。特願平2−031910号では耐サワ−性とHAZ靱性の改善を目的とした鋼板の製造法が開示されている。しかし、厚肉化にともない溶接入熱量が上昇した場合、この製造法による鋼板でも良好なHAZ靱性を得ることができなくなっている。このため従来の耐サワ−鋼板よりも格段にHAZ靱性の優れた鋼板の開発が強く望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は良好なHAZ靱性を有し、耐サワ−性に優れたAPI規格5L−X65以上の高強度鋼板およびその製造法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、
(1)重量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.5%、P:0.010%以下、S:0.0007%以下、Nb:0.026〜0.05%、Ti:0.005〜0.03%、Al:0.001〜0.005%、Mg:0.0001〜0.001%、Ca:0.001〜0.004%、N:0.001〜0.005%、O:0.001〜0.003%を含有し、かつ
2.0≦[Ca〕(1−124[O〕)/1.25[S〕≦7.0を満足する残部が鉄および不可避的不純物からなり、MgとAlから成る酸化物を内包する0.01〜0.5μmのTiNが10000個/mm2 以上含有することを特徴とする溶接熱影響部靱性に優れた耐サワ−鋼板。
【0006】
(2)重量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.5%、P:0.010%以下、S:0.0007%以下、Nb:0.026〜0.05%、Ti:0.005〜0.03%、Al:0.001〜0.005%、Mg:0.0001〜0.001%、Ca:0.001〜0.004%、N:0.001〜0.005%、O:0.001〜0.003%を含有し、さらに、Ni:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.1〜1.0%、V:0.01〜0.10%、REM:0.0005〜0.005%の一種または二種以上を含有し、かつ2.0≦[Ca〕(1−124[O〕)/1.25[S〕≦7.0を満足する残部が鉄および不可避的不純物からなり、MgとAlから成る酸化物を内包する0.01〜0.5μmのTiNが10000個/mm2 以上含有することを特徴とする溶接熱影響部靱性に優れた耐サワ−鋼板。
【0007】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の特徴は、低C−低Mn−Nb−Ti−低Al系を基本にS,Mg,CaおよびO量を厳格に制限し、かつMgとAlからなる酸化物を内包する微細な炭窒化物を含有させた鋼、およびこの鋼を制御圧延した後、加速冷却するところにあり、これによって耐サワ−性と格段に優れたHAZ靱性を同時に達成できることにある。
【0008】
C,Mn,P量を低減することにより、CCスラブの中心偏析を改善し、HICの発生および伝播を防止できる。また、S,Mg,CaおよびO量を厳格に制限することにより、HICの発生起点となりうるMnSの生成を防止するとともに、Mg添加するによりCa系介在物を微細化することができ、良好な耐サワ−性を得ることができる。Caを添加した鋼においてはCaSやCaOなどの粗大なCa系介在物が生成しやすくなる。粗大化した酸化物はHICの発生起点となるために、Ca系酸化物の微細化が必須であった。
【0009】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、Mgを添加することにより脱硫効果が促進され、HICの発生原因となるMnSの生成を抑制するとともに、粗大化しやすいCa系酸化物が微細に分散され、良好な耐サワー性が得られること、さらにはMgとAlからなる酸化物は微細なTiNなどの炭窒化物の生成核として作用し、この炭窒化物が高温においても化学的に安定であることから、良好なHAZ靱性が得られることを見いだし、本発明に至ったものである。
【0010】
まず、HAZ靱性について述べる。
低合金鋼のHAZ靱性は、(1)結晶粒のサイズ、(2)高炭素島状マルテンサイト(M*)、上部ベイナイト(Bu)などの硬化相の分散状態、(3)粒界脆化の有無、(4)元素のミクロ偏析など種々の冶金学的要因に支配される。なかでもHAZの結晶粒のサイズおよびM*は低温靱性に大きな影響を与えることが知られている。
そこで、本発明ではHAZの結晶粒を微細化して、かつM*の生成を抑制することにより、HAZ靱性の大幅の改善を図った。
【0011】
Mgの添加によりMgとAlからなる酸化物を内包する微細なTiNなどの炭窒化物を鋼中に生成させることによりHAZにおけるオ−ステナイト(γ)粒の粗大化を抑制してHAZ靱性を向上させる。溶接入熱量が増加すると、HAZにおいてγ粒が粗大化し、その後の冷却速度の低下によりHAZ組織は粗大化し、HAZ靱性は劣化する。しかし、MgとAlからなる酸化物を内包する微細なTiNなどの炭窒化物の作用によりHAZにおけるγ粒の粗大化が著しく抑制され、良好なHAZ靱性を得ることができる。
【0012】
MgとAlからなる酸化物を内包する微細なTiNなどの炭窒化物は高温でも化学的に安定で溶解しないため、γ粒の粗大化抑制効果が維持される。また、鋼中のAl量を低減することにより、HAZでのM*の生成を抑制して、かつ微細に分散させることによりHAZ靱性を向上させる。Alの添加量が少なくなれば、M*は微細に分散され、HAZ靱性は向上する。なお、Alの添加量が多くなると、Alは炭化物に固溶しないために、未変態γから炭化物が析出せず、M*の生成が顕著となり、HAZ靱性が劣化する。
【0013】
そこで、溶融線近傍の1400℃以上に加熱されるHAZにおいても化学的に安定な酸化物をピンニング粒子として用いることにより、γ粒の粗大化を抑制する方法を検討した。この結果、微量のMgとAlを含有させることにより、0.01〜0.05μmの微細な(Mg,Al)酸化物が多量に生成することを見出した。さらに、0.01〜0.5μmのTiNがこの微細な(Mg,Al)酸化物を核として複合析出するため、1400℃以上の高温においても優れたγ粒のピンニング効果を維持できることを明らかにした。この時、鋼中に含有する0.01〜0.5μmのTiNが10000個/mm2 未満の場合には、γ粒の粗大化抑制効果が不十分となり、良好なHAZ靱性を得ることができない。
【0014】
そこで、MgとAlから成る酸化物を内包する0.01〜0.5μmのTiNを10000個/mm2 以上含有させる必要がある。さらに、このTiNを生成させるためには0.0001%以上のMgを添加する必要がある。Mg添加量が多すぎるとMg系酸化物が増加し、低温靱性を劣化させるとともに耐HIC性も劣化させるのでその上限を0.001%に限定した。さらに、TiNの核となる微細な(Mg,Al)酸化物を生成させるためには、微量のAlを含有させる必要がある。しかしながら、Alの添加により、HAZ靱性に悪影響を与えるM*の生成量が増加する。このため、Alの含有量を0.001〜0.005%に限定した。0.001%以上のAl量であれば、微細な(Mg,Al)酸化物を生成させることができる。
【0015】
つぎに、耐サワー性について述べる。
本発明では、不純物元素であるS量を0.0007%以下とし、かつCaを添加して、2.0≦〔Ca〕(1−124〔O〕)/1.25〔S〕≦7.0とする。MnS系介在物は圧延により伸長して、HICの発生起点となる。これを防止するためには、介在物の絶対量を低減するとともに、硫化物の形態を制御して、圧延で延伸化し難いCaS、またはCaOとしなければならない。
そこで、S量を0.0007%以下とし、Caを0.001〜0.004%添加し、Caによる硫化物の形態制御を十分に行うため、〔Ca〕(1−124〔O〕)/1.25〔S〕で表されるESSP値を2.0以上とした。しかしESSP値が大きすぎると、Ca系介在物が増加し、HICの発生起点となるので、その上限を7.0とした。
【0016】
上記に関連してO量を0.003%以下に限定した。これはHICの発生起点となる酸化物系介在物を低減して、Ca、Mgで硫化物の形態制御を行うためである。O量の下限0.001%はTiNの生成核となる微細な酸化物を生成させるための最小値である。
優れた耐サワ−性を得るためにはさらにC,Mn,P量を限定する必要がある。この理由はCCスラブの中心偏析を改善し、HICの発生・伝播を防止するためである。X65以上の高強度鋼では必然的にC量が高くなるが、C量の増加はCCスラブの凝固時の中心偏析帯におけるMn,Pの偏析を強め、硬化組織の生成を助長して耐サワ−性を著しく劣化させる。
【0017】
これを防止するためC量の上限は0.08%としなければならない。C量の下限0.02%は強度・低温靱性を確保するための最小量である。C量の低減に加えて、さらにMn,P量を低減することは中心偏析を軽減、すなわち硬化組織の生成抑制に有効である。
このためMn,P量の上限をそれぞれ1.5%、0.010%に限定した。Mn量の下限0.8%は母材・溶接部の強度を確保するための最小値である。一方、P量は低いほど耐サワ−性は向上する。
本発明鋼では必須の元素としてNb:0.026〜0.05%、Ti:0.005〜0.030%を含有する。Nbは制御圧延において結晶粒の微細化や析出硬化に寄与し、鋼を強靱化する作用を有する。しかしNbを0.05%以上添加すると、現地溶接性やHAZ靱性に悪影響をもたらすので、その上限を0.05%とした。
【0018】
またTi添加は微細なTiNを形成し、スラブ再加熱時および溶接HAZのγ粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、母材およびHAZの低温靱性を改善する。このようなTiNの効果を発現させるためには、最低0.005%のTi添加が必要である。しかしTi量が多すぎると、TiNの粗大化やTiCによる析出硬化が生じ、低温靱性が劣化するので、その上限は0.03%に限定しなければならない。
【0019】
つぎに、その他元素の限定理由について説明する。
Siは脱酸や強度向上のため添加する元素であるが、多く添加すると現地溶接性、HAZ靱性を劣化させるので、上限を0.5%とした。鋼の脱酸はAlのみでも十分であり、Siは必ずしも添加する必要はない。
NはTiNを形成してスラブ再加熱時および溶接時のγ粒の粗大化を抑制して母材、HAZの低温靱性を向上させる。このために必要な最小量は0.001%である。しかし多すぎるとスラブ表面疵や固溶NによるHAZ靱性劣化の原因となるので、その上限は0.005%に抑える必要がある。
【0020】
つぎに選択元素であるNi,Cu,Cr,Mo,V,REMを添加する理由について説明する。基本となる成分に、さらに、これらの元素を添加する主たる目的は本発明により得られる鋼板の優れた特徴を損なうことなく、強度・低温靱性などの特性向上を図るためである。したがって、その添加量は自ら制限される性質のものである。
Niを添加する目的は低炭素の本発明鋼の強度を低温靱性や現地溶接性を劣化させることなく向上させるためである。Ni添加はMnに比較して、圧延組織(とくにスラブの中心偏析帯)中に低温靱性、耐サワ−性に有害な硬化組織を形成することが少なく、強度を増加させる。しかし、添加量が多すぎると経済性だけでなく、現地溶接性やHAZ靱性などを劣化させるので、その上限を1.0%とした。Niは連続鋳造時、熱間圧延時におけるCuクラックの防止にも有効である。
【0021】
Cuは0.1%以上でNiとほぼ同様にHAZ靱性に大きな影響をおよぼすことなく、強度・低温靱性を向上させるほか、耐食性、耐水素誘起割れ特性の向上にも効果がある。またCu析出硬化によって強度を大幅に増加させる。しかし過剰に添加すると析出硬化により母材、HAZの靱性低下や熱間圧延時にCuクラックが生じるので、その上限を1.0%とした。
CrはMnに比較してCCスラブにおいても中心偏析し難く、低温靱性や耐サワ−性を損なうことなく強度を増加させるのに有効である。この効果を発揮させるためには0.1%以上の添加が必要である。しかし多すぎると現地溶接性やHAZ靱性を著しく劣化させる。このためCr量の上限は1.0%とした。
【0022】
MoもCrと同様にMnに比較してCCスラブにおいても中心偏析し難く、低温靱性や耐サワ−性を損なうことなく強度を増加させるのに有効な元素である。このような効果を得るためには、Moは最低0.1%必要である。しかし過剰なMo添加はHAZ靱性、現地溶接性を劣化させるので、その上限を1.0%とした。
VはほぼNbと同様の効果を有し、ミクロ組織の微細化による低温靱性の向上や焼入れ性の増大、析出硬化による高強度化などに効果がある。しかし、添加量が多すぎると現地溶接性やHAZ靱性の劣化を招くので、その上限を0.10%とした。V添加量の下限は、前述の効果を発揮するための最小量である。
REMはCaと同様にMnSの形態制御に効果がある。この効果を発揮させるためには0.0005%以上の添加が必要である。また添加量が多すぎるとREM系酸化物が増加し、耐HIC性を劣化させるためにその上限の値を0.005%とした。
【0023】
上記のような本発明により得られる鋼板において母材の低温靱性を改善するためには、さらに鋼板製造法が適切でなければならない。このため鋼片(スラブ)の再加熱、圧延、冷却条件を限定する必要がある。
まず再加熱温度を1050℃〜1250℃の範囲に限定する。再加熱温度はNb析出物を固溶させ、かつ圧延終了温度を確保するために1050℃以上としなければならない(望ましい再加熱温度は1150〜1200℃である)。しかし再加熱温度が1250℃を超えると、γ粒が著しく粗大化し圧延によっても完全に微細化できないため、優れた低温靱性が得られない。このため再加熱温度の上限を1250℃とした。
【0024】
さらに950℃以下の累積圧下量を60%以上、圧延終了温度を750〜900℃としなければならない(望ましくはAr3 変態点以上)。これは再結晶域 延で微細化したγ粒を低温圧延によって延伸化し、結晶粒の徹底的な微細化をはかって低温靱性を改善するためである。累積圧下量が60%未満ではγ組織の延伸化が不十分で、微細な結晶粒が得られない。また圧延終了温度が900℃以上では、たとえば累積圧下量が60%以上でも微細な結晶粒は達成できない。しかし圧延終了温度が低下し、(γ+α)2相域から水冷すると組織の制御が困難となり、耐HIC性や強度・低温靱性の劣化を招くので、圧延終了温度の下限を750℃とした。
【0025】
圧延後、鋼板を加速冷却することが必須である。加速冷却は中心偏析を含めたミクロ組織の改善に有効で、低温靱性を損なわずに強度の増加、耐HIC性の向上を可能にする。加速冷却の条件としては圧延後、ただちに冷却速度3〜40℃/秒で350℃以上600℃以下の温度まで冷却、その後空冷しなければならない。冷却速度が遅すぎたり、冷却停止温度が高すぎると加速冷却の効果が十分に得られず、適正なミクロ組織を得ることができない。一方、冷却速度が大きすぎたり、停止温度が低すぎると硬化組織が生成して低温靱性や耐HIC性が大幅に劣化する。
【0026】
なお、この鋼を製造後、焼戻し、脱水素などの目的でAc1 変態点以下の温度で再加熱熱処理しても本発明の特徴を損なうものではない。また省エネルギ−などを目的としてCCスラブを加熱炉にホットチャ−ジ、圧延してもよい。
本発明は厚板ミルに適用することがもっとも好ましいが、ホットコイルにも適用できる(この場合、圧延冷却後の鋼板は巻き取られ、冷却される)。また、この方法で製造した鋼板は低温靱性に優れているので、寒冷地におけるパイプラインのほか圧力容器などにも適用できる。
【0027】
【実施例】
つぎに本発明の実施例について述べる。
転炉−連続鋳造−厚板工程で表1に示す種々の鋼成分の鋼板(厚み16〜38mm)を表2に示す種々の製造条件により製造し、強度、低温靱性、HAZ靱性および耐HIC性を調査した。鋼板を両面1パス潜弧溶接した後、板厚中心部からシャルピー試験片を採取した。溶接線の交点にノッチを入れて、HAZ靭性を評価した(図1)。それらの結果を表2に示す。
本発明にしたがって製造した鋼板(本発明鋼)はすべて良好な特性を有する。これに対して本発明によらない比較鋼は化学成分または鋼板製造条件が適切でなく、強度、低温靱性、HAZ靱性、耐HIC性のいずれかの特性が劣る。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
鋼13はC量が高すぎるため、母材・HAZ靱性、耐HIC性が劣る。鋼14はMn量が高すぎるため、耐HIC性が劣る。鋼15はS量が高すぎるため、耐HIC性が劣る。鋼16はAlを全く含有していないため、HAZ靭性が劣る。鋼17はAl量が高すぎるため、HAZ靱性が劣る。鋼18はMgを含有していないため、HAZ靱性が悪い。鋼19はMg量が高すぎるため、母材・HAZ靱性、耐HIC性が劣る。鋼20はCaが添加されていないため、かつ硫化物の形態制御を表すESSP値が0となるため、耐HIC性が劣る。鋼21は酸素量が少なすぎるため、HAZ靭性が劣る。鋼22は酸素量が高すぎるため、また硫化物の形態制御を表すESSP値が小さすぎるため、耐HIC性が劣る。鋼23はESSP値が2.0以上を満足しないため、耐HIC性が劣る。
【0031】
鋼24はESSP値が7.0以下を満足しないため、耐HIC性が劣る。鋼25〜鋼29は成分は本発明鋼と同様であるが、製造条件が適当でないために母材強度、低温靱性あるいは耐HIC性が劣る。鋼25はスラブ再加熱温度が低く、母材強度が低い。鋼26は950℃以下の累積圧下量が少ないため、低温靱性が劣る。鋼27は圧延終了温度が低いため、低温靱性、耐HIC性が劣る。鋼28は圧延後の冷却速度が遅いため、強度が低く、耐HIC性が劣る。鋼29は水冷停止温度が低いため、耐HIC性が劣る。
【0032】
【発明の効果】
本発明により耐サワ−性の優れた高強度パイプライン用鋼を安価に大量生産することが可能となった。その結果、パイプラインの安全性が著しく向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】両面潜弧溶接部からのシャルピ−試験片の採取位置を示す図である。
Claims (2)
- 重量%で、
C :0.02〜0.08%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.8〜1.5%、
P :0.010%以下、
S :0.0007%以下、
Nb:0.026〜0.05%、
Ti:0.005〜0.03%、
Al:0.001〜0.005%、
Mg:0.0001〜0.001%、
Ca:0.001〜0.004%、
N :0.001〜0.005%、
O :0.001〜0.003%を含有し、かつ
2.0≦[Ca〕(1−124[O〕)/1.25[S〕≦7.0
を満足する残部が鉄および不可避的不純物からなり、MgとAlから成る酸化物を内包する0.01〜0.5μmのTiNが10000個/mm2 以上含有することを特徴とする溶接熱影響部靱性に優れた耐サワ−鋼板。 - 重量%で、
C :0.02〜0.08%、
Si:0.5%以下、
Mn:0.8〜1.5%、
P :0.010%以下、
S :0.0007%以下、
Nb:0.026〜0.05%、
Ti:0.005〜0.03%、
Al:0.001〜0.005%、
Mg:0.0001〜0.001%、
Ca:0.001〜0.004%、
N :0.001〜0.005%、
O :0.001〜0.003%
を含有し、さらに、
Ni:0.1〜1.0%、
Cu:0.1〜1.0%、
Cr:0.1〜1.0%、
Mo:0.1〜1.0%、
V :0.01〜0.10%、
REM:0.0005〜0.005%の一種または二種以上を含有し、
かつ
2.0≦[Ca〕(1−124[O〕)/1.25[S〕≦7.0
を満足する残部が鉄および不可避的不純物からなり、MgとAlから成る酸化物を内包する0.01〜0.5μmのTiNが10000個/mm2 以上含有することを特徴とする溶接熱影響部靱性に優れた耐サワ−鋼板。
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