JP4276341B2 - 引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築、橋梁、造船、貯槽タンクその他に用いられる引張強さ570〜720N/mm2の溶接構造物用鋼(具体的にはJIS規格に定めるSM570級鋼)およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鋼材の強度を高めると母材の疲労強度は向上するが、溶接部の疲労強度は向上しないといわれ、疲労を考慮した設計では、高張力鋼を使用しても必ずしも鋼材使用量が低減されず、高張力鋼のメリットが十分享受できないという問題があった。
【0003】
溶接鋼構造物の疲労の問題は、特定分野に限ったものではなく、あらゆる分野で現存している。溶接部の疲労強度は、溶接ディテールが支配的とされ、その向上のため溶接部(止端部)形状の平坦化による応力集中の低減やピーニングなどによる残留応力のコントロールなどが広く行われている。また、鋼材面からの溶接部疲労強度向上対策として、特開平9−227987号公報、特開平9−241796号公報、特開平10−1742号公報、特開平10−1743号公報などに、溶接熱影響部(HAZ)組織の特定組織への制御とそのための鋼成分の規定、あるいはさらに溶接金属(WM)とHAZの硬度差を小さくすることなどが記載されている。しかし、前述の硬度差は、溶接溶融線を挟む比較的狭い領域を対象としており、これは溶接部の疲労は、溶接止端部が問題となるためと推定されるが、母材とHAZとの硬度差に関する記載がない。
【0004】
一方、アンモニア、LPGなどの貯槽タンクや石油・天然ガス精製プラントおよび輸送用ラインパイプでは、特に溶接部近傍での硫化水素による硫化物応力腐食割れ(SSC)が大きな問題となっている。鋼のSSC感受性は、鋼成分やミクロ組織、非金属介在物の有無などによって異なるが、とりわけ硬さの影響が大きく、HRC22(HV換算で248)以下ではSSCは起こらないとされている。しかし、溶接部のような硬さの不均質部では、上記硬さ規制を行っても応力や歪みの集中(不均質分布)が生じ、SSCの一形態とされるSOHICなどが発生する場合があった。SOHIC防止策は、その生成機構が必ずしも明確ではないこともあって、例えば、特開平5−287442号公報、特開平7−188838号公報、特開平9−125136号公報などに開示されているようなSSC防止対策をより厳格に行うという従来対策の延長でしかなく、溶接部での耐SOHIC特性に対する有効性については記載されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板およびその製造方法に関するものである。溶接割れ感受性組成PCMをはじめ、鋼組成を本願発明の通り限定することで、溶接性が著しく改善されるばかりでなく、溶接熱影響部の硬化性、軟化性も低減し、溶接熱影響部と母材の硬さ差を小さくすることが可能となり、溶接部の硬さ(強度)の不均質に起因する供用時の応力・歪みの集中(不均一分布)が緩和され、溶接部の疲労強度や耐応力腐食割れ性が一段と向上し、溶接鋼構造物の安全性を高めることができる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨とするところは下記の通りである。
【0007】
(1) 重量%で、
C:0.01〜0.1%、
Si:0.6%以下、
Mn:0.4〜2.0%、
P:0.025%以下、
S:0.008%以下、
Al:0.003%以下、
Nb:0.05〜0.2%、
Ti:0.005〜0.021%、
N:0.001〜0.005%、
残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、
PCM=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60
+Mo/15+V/10+5B≦0.18%
を同時に満足する鋼組成を有することを特徴とする引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板。
【0008】
(2) 鋼組成としてさらに、重量%で、
Cu:0.05〜0.5%、
Ni:0.05〜0.5%、
Cr:0.05〜0.5%、
Mo:0.05〜0.5%、
V:0.005〜0.2%、
Mg:0.0002〜0.005%
の範囲で1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)記載の引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板。
【0009】
(3) 鋼組成としてさらに、重量%で、
Ca:0.0005〜0.004%、
REM:0.0005〜0.004%
のいずれかの少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする上記(1)〜(2)のいずれか1項に記載の引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板。
【0010】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の鋼組成からなる鋳片または鋼片を、1100〜1250℃の温度に再加熱し、750℃以上の温度で圧延を終了した後、直ちに焼き入れし、引き続きAc1以下の温度で焼き戻し処理することを特徴とする引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
HIC対策としては水素のトラップサイトとなる中心偏析の軽減や硫化物(MnS)をはじめとする非金属介在物の低減とその形態制御などが極めて有効であり、またSSC対策としては前記に加えて鋼のSSC感受性に大きな影響を及ぼすとされる溶接熱影響部硬さを低減することが有効である。
【0012】
まず、溶接熱影響部での硬化性の低減には、鋼の焼入性を下げることが効果的であるが、同時に母材強度をも低下させる。このため、両者をバランスよく達成するには、鋼成分の適正化だけでは極めて困難である。そこで、焼入性に最も顕著に効くCおよびBを極力抑えたBフリー・低Cをベースとして溶接熱影響部硬さの低減を図り、同時にNbあるいはさらに必要に応じてVを添加することで析出硬化を活用する方法を考案した。
【0013】
Nb(Nb+V)の析出硬化そのものは従来より広く知られたものであるが、本願発明における最大の特徴は、Nbを0.05〜0.2%と比較的多く添加することである。Nb(Nb+V)を比較的多く添加し、その析出硬化を積極的に利用した例としては、例えば特開平5−25542号公報、特開平5−209222号公報に開示されているが、いずれも引張強さ780N/mm2(80kgf/mm2)級の高張力鋼である。Nbの析出硬化代は非常に大きく、多量添加を前提にした場合、本願発明が対象とする引張強さ570〜720N/mm2のいわゆるJIS規格で定められたSM570級鋼(60kgf/mm2級鋼)に対しては、強度が過剰傾向となるため、多く添加されることはなかった。Nb多量添加前提でも、製造条件によっては強度上昇を抑えることは可能であるが、そのようなケースはNb本来の効果をフルに発揮したものではなく、添加量としては妥当なものではない。
【0014】
本願発明においては、0.05〜0.2%のNb添加を必須要件として引張強さ570〜720N/mm2の鋼を提供するものである。このような比較的高いNb添加は、析出硬化による母材の高張力化のみならず、溶接熱影響部の軟化防止にも効果を発揮し、Bフリー・低C化による溶接熱影響部での硬化抑制とともに、溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さいという特徴を有する。このため、鋼組成を以下の通り限定する必要がある。
【0015】
Cは、鋼の焼入性に最も顕著に効き、溶接熱影響部の硬さを大きく左右する。C量が多すぎると焼入性が高くなり、本願発明が対象とする強度レベルに対し、溶接熱影響部の硬さが高くなるため、上限を0.1%に限定した。一方、下限は、母材および溶接部の強度確保ならびにNbの析出硬化を発揮するための最小量として0.01%以上は必要である。
【0016】
Siは、脱酸上鋼に含まれる元素であるが、多く添加すると溶接性、溶接熱影響部靭性が劣化するため、上限を0.6%に限定した。鋼の脱酸は、AlやTiのみでも十分可能であり、焼入性および後述するPCMの観点から0.25%以下が望ましい。
【0017】
Mnは、強度、靭性を確保する上で不可欠な元素であり、その下限は0.4%である。しかし、多すぎると焼入性、PCMが上昇して、溶接熱影響部硬さを高めるとともに溶接性、溶接熱影響部靭性を劣化させ、さらにスラブの中心偏析を助長するため、上限を2.0%とした。
【0018】
P、Sは、本願発明においては不純物であり、特性上少ないほど好ましいことは広く知られた事実であり、脱P、脱Sなどの経済性も考慮し、それぞれ上限を0.025%、0.008%に限定した。特に、SはMnSを形成し、湿潤硫化水素環境中ではHICやSSC、さらにはSOHIC生成を助長するため、このような環境で使用される用途においては、後述するCa添加とともに、Sを0.001%以下とすることが望ましい。
【0019】
Alは、一般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、脱酸はSiまたはTiだけでも十分であり、本願発明においては、その加減は限定しない。しかし、Al量が多くなると鋼の清浄度が悪くなるばかりでなく、溶接金属の靭性が劣化するので上限を0.003%とした。
【0020】
Tiは、母材および溶接熱影響部靭性向上のために必須である。なぜならばTiは、Al量が少ないとき(例えば0.003%以下)、Oと結合してTi2O3を主成分とする析出物を形成、粒内変態フェライト生成の核となり溶接熱影響部靭性を向上させる。また、TiはNと結合してTiNとしてスラブ中に微細析出し、加熱時のγ粒の粗大化を抑え、圧延組織の細粒化に有効であり、また鋼板中にに存在する微細TiNは、溶接時に溶接熱影響部組織を細粒化するためである。これらの効果を得るためには、Tiは最低0.005%必要である。しかし、多すぎるとTiCを形成し、低温靭性や溶接性を劣化させるので、その上限は0.021%である。
【0021】
Nは、不可避的不純物として鋼中に含まれるものであるが、Nbと結合して炭窒化物を形成して強度を増加させ、また、TiNを形成して前述のように鋼の性質を高める。このため、N量として最低0.001%必要である。しかしながら、N量の増加は溶接熱影響部靭性、溶接性に極めて有害であり、本願発明においてはその上限は0.005%である。
【0022】
次に、必要に応じて含有することができるCu、Ni、Cr、Mo、V、Mgの添加理由について説明する。
【0023】
基本となる成分に、さらにこれらの元素を添加する主たる目的は、本願発明の優れた特徴を損なうことなく、強度、靭性などの特性を向上させるためである。したがって、その添加量は自ずと制限されるべき性質のものである。
【0024】
Cuは、過剰に添加しなければ、溶接性、溶接熱影響部靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度、靭性を向上させる。これらの効果を発揮させるためには、少なくとも0.05%以上の添加が必要である。しかし、過剰な添加は、溶接性の劣化に加え、熱間圧延時にCu−クラックが発生し、製造困難となるため0.50%に限定した。
【0025】
Niは、Cuとほぼ同様の効果、現象を示し、下限は実質的な効果が得られるための最小量とすべきで、0.05%である。上限については、Cuと同様の理由に加え、比較的高価であることや、湿潤硫化水素環境中では応力下でフィッシャーと呼ばれる鋸歯状腐食が懸念されるため0.5%に限定した。
【0026】
Cr、Moは、0.05%以上の添加で母材の強度、靭性をともに向上させる。しかし、添加量が多すぎると母材、溶接部の靭性および溶接性の劣化を招くため、上限を0.5%とした。
【0027】
Vは、Nbとほぼ同様の作用を有するものであるが、Nbに比べてその効果は小さい。また、Vは焼入性にも影響を及ぼすため、Nbの補完的添加とすべきであり、下限は効果が見られる0.01%で、上限は0.05%に限定した。
【0028】
Mgは、溶接熱影響部においてオーステナイト粒の成長を抑制し、細粒化する作用があり、溶接部の強靭化が図れる。このような効果を享受するためには、Mgは0.0002%以上必要である。一方、添加量が増えると添加量に対する効果代が小さくなるため、コスト上得策ではないので上限は0.005%とした。
【0029】
さらに、CaおよびREMは、MnSの形態を制御し、母材の低温靭性を向上させるほか、湿潤硫化水素環境下での水素誘起割れ(HIC、SSC、SOHIC)感受性を低減させる。これらの効果を発揮するためには、最低0.0005%必要である。しかし、多すぎる添加は、鋼の清浄度を逆に高め、母材靭性や湿潤硫化水素環境下での水素誘起割れ(HIC、SSC、SOHIC)感受性を高めため、添加量の上限は0.004%に限定した。CaとREMは、ほぼ同等の効果を有するため、いずれか1種を上記範囲で添加すればよい。
【0030】
本願発明において、個々の元素の添加量の限定に加え、PCM=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5Bと定義する値を0.18%以下に限定する理由は、第一義的には溶接構造用鋼として溶接冷間割れを防止し、優れた溶接性を確保するためである。これに加えて、本願発明の最大の特徴である最低でも0.05%のNbを添加し、Nbの析出硬化を利用する上で、限定された引張強さ(570〜720N/mm2)の中で必要以上に焼入性を高めないためである。逆に、0.05%のNb添加でその析出硬化を最大限に利用した場合、PCMで0.18%を超える成分では、SM570級鋼として強度が過剰となってしまう。
【0031】
本願発明の特徴とする溶接熱影響部と母材の硬さ差を小さくするためには、Nbをはじめとする各種成分を上記のように限定した上で、さらに鋼板の製造方法も適切に限定すべきである。以下、その限定範囲および理由について説明する。
【0032】
まず、上記限定範囲に制御された成分を有する鋳片または鋼片を、1100〜1250℃の温度に再加熱しなければならない。下限温度は、Nbの析出硬化利用の観点から、再加熱時にNbを一旦溶体化させる必要上からの理由である。一旦溶体化させることにより、後工程を本願発明のようにすることによってNbの析出物を微細に分散析出させることができ、析出硬化現象を有効に発現させることができる。一方、再加熱上限温度は、再加熱時のオーステナイト粒を必要以上に粗大化させないためである。再加熱時のオーステナイト粒は、圧延後の組織の微細化にも少なからず影響を与えるため、再加熱温度は極力低い方が好ましいが、Nbの溶体化の観点から上限を1250℃に限定したものである。
【0033】
再加熱後の熱間圧延は、750℃以上で圧延を終了する必要がある。これは、圧延中にフェライトが析出し、それを圧延する危険性を回避するためである。加工フェライトは、靭性の劣化や材質の異方性を助長する可能性が高く、好ましくない。
【0034】
熱間圧延後は、直ちに焼き入れなければならない。圧延後放冷したり、水冷までの意図的な待ちは、その間にNbが析出、粗大化する可能性があるためである。放冷中の粗大析出物は、析出硬化として効果を発揮せず、母材の強度が確保できない可能性があるばかりでなく、これを再加熱焼入しても、Nbが溶体化されない限り、析出硬化を再度利用することはできない。なお、「直ちに焼き入れ」というのは、圧延後意図的な待ちのない、冷却装置までの搬送時間程度は許容されることはいうまでもなく、その時間は概ね1〜2分以内に焼き入れることを意味している。また、「焼き入れ」自体も、冶金的に定義されるオーステナイト単相域からの急冷のみを意味するものではなく、若干フェライトが析出した状態からの強制冷却も含まれ、強制冷却は200℃以下まで行うものである。このような「焼き入れ」は、Nb析出物の析出粗大化を防止する上で不可欠のものである。
【0035】
焼き入れ後は、Nbの微細析出、すなわち析出硬化の発現と、焼き入れ組織の焼き戻しによる強靭化のため、Ac1以下の温度での焼き戻しが必要である。
【0036】
【実施例】
本願発明の有用性を例示するため、表1に示す化学成分を有する鋼を転炉溶製し、表2に示す条件で厚板圧延を行った。
【0037】
機械的性質のうち、強度については、圧延方向と直角方向に、板厚50mm以下の鋼板は全厚のJIS5号引張試験片、板厚50mm超の鋼板は1/4板厚位置から採取したJIS4号丸棒引張試験片を用いた。衝撃試験は、1/4板厚位置から圧延方向に切り出したJIS4号シャルピー試験片を用い、延・脆性破面遷移温度(vTrs)を求めた。
【0038】
また、溶接熱影響部と母材との硬さ差を調べるために、JIS Z 3101に規定される溶接熱影響部の最高硬さ試験方法に準拠して、ビード・オン・プレートを作製し、鋼板表面0.5mm下位置の溶接熱影響部の最高硬さおよび最低硬さを調べるとともに、母材硬さは溶接金属から十分離れた鋼板表面0.5mm下位置の10点の平均値とした。なお、試験板は元厚ままとし、溶接時の予熱はなしとした。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
表3に、上記方法による機械的性質、溶接熱影響部と母材の硬さの測定値を示す。本願発明が規定する成分および製造方法による鋼板は、いずれもSM570級鋼として十分な強度を有すると同時に靭性にも優れ、さらに、本願発明の特徴である溶接熱影響部と母材との硬さ差が小さい範囲に抑えられていることが分かる。
【0042】
これに対して、比較例に示す鋼はいずれも成分あるいは製造条件のいずれかが本願発明が規定する範囲を逸脱しているため、溶接熱影響部の硬化または軟化が大きく、本願発明によってもたらされる最大効果である溶接熱影響部と母材との硬さ差が相対的に大きい。具体的に例示すると、比較例の鋼3では、C量が高く、PCMも高いため溶接熱影響部の硬化程度が大きい。また、圧延に先立つ再加熱温度も低いため、Nbの析出硬化が十分利用できておらず、強度がやや低めである。鋼4は、Nb添加量が低く、Bも添加されているため、溶接熱影響部の軟化および硬化が大きい。また、圧延終了温度も低いため、必然的に直接焼入時の開始温度も低下し、その間フェライトが析出するなどして、母材の強度、靭性にも劣る。鋼5は、成分的にはTiが添加されていないだけであるが、圧延後直接焼入ではなく、再加熱焼入を行っているため、Nbの析出硬化が十分活用できておらず、母材の強度が低い。Ti無添加の影響は、再加熱時のオーステナイトの細粒化が不十分となって、母材靭性にもやや劣る。鋼6は、Nbが添加されておらず、溶接熱影響部の軟化が大きい。また、C、PCMとも高く、Bが添加されているため、溶接熱影響部の硬化も大きい。
【0043】
【表3】
【0044】
【発明の効果】
本発明により、引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板を大量かつ安価に提供できるようになり、溶接割れ感受性組成PCMをはじめ、鋼組成を本願発明の通り限定することで、溶接性が格段に優れ、さらに溶接熱影響部の硬化性、軟化性も低減され、溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さくすることが可能となり、溶接部の硬さ(強度)の不均質に起因する供用時の応力・歪みの集中(不均一分布)が緩和され、溶接部の疲労強度や耐応力腐食割れ性が向上し、溶接鋼構造物の安全性を高めることができた。
Claims (4)
- 重量%で、
C:0.01〜0.1%、
Si:0.6%以下、
Mn:0.4〜2.0%、
P:0.025%以下、
S:0.008%以下、
Al:0.003%以下、
Nb:0.05〜0.2%、
Ti:0.005〜0.021%、
N:0.001〜0.005%、
残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、
PCM=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60
+Mo/15+V/10+5B≦0.18%
を同時に満足する鋼組成を有することを特徴とする引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板。 - 鋼組成としてさらに、重量%で、
Cu:0.05〜0.5%、
Ni:0.05〜0.5%、
Cr:0.05〜0.5%、
Mo:0.05〜0.5%、
V:0.005〜0.2%、
Mg:0.0002〜0.005%
の範囲で1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板。 - 鋼組成としてさらに、重量%で、
Ca:0.0005〜0.004%、
REM:0.0005〜0.004%
のいずれかの少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼組成からなる鋳片または鋼片を、1100〜1250℃の温度に再加熱し、750℃以上の温度で圧延を終了した後、直ちに焼き入れし、引き続きAc1以下の温度で焼き戻し処理することを特徴とする引張強さ570〜720N/mm2の溶接熱影響部と母材の硬さ差が小さい厚鋼板の製造方法。
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