JPH06279226A - 歯質に接着性を有する表面被覆材 - Google Patents

歯質に接着性を有する表面被覆材

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JPH06279226A
JPH06279226A JP5066711A JP6671193A JPH06279226A JP H06279226 A JPH06279226 A JP H06279226A JP 5066711 A JP5066711 A JP 5066711A JP 6671193 A JP6671193 A JP 6671193A JP H06279226 A JPH06279226 A JP H06279226A
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隆司 山本
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成道 本田
Akifumi Kasagi
昭文 笠置
Shozo Arata
正三 荒田
Norio Nakabayashi
宣男 中林
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 歯牙に接着性を有する表面被覆材を接触させ
ることにより、歯質表面に重合性単量体を含有する高分
子重合体の被膜を形成して歯質表面の保護ができるとと
もに強力にしかも簡便に接着性レジンを接着させること
ができる表面被覆材および接着方法を提供する。 【構成】 酸性基を有する高分子重合体、重合性単量
体、水または水系溶媒および随時重合開始剤を含有する
歯質に接着性を有する表面被覆材、そのキットおよび接
着方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、歯牙および骨に代表さ
れる生体硬組織の修復および保護を行うにあたり、硬組
織表面に被膜を形成するための表面被覆材に関する。さ
らに詳しくは、生体硬組織、特に歯牙とPMMA系レジ
ン、ボンディング材、レジンセメント、コンポジットレ
ジン等の歯科用修復レジンを接着する際に、予め硬組織
表面に被膜を形成し強い接着性と封鎖性を付与するため
の表面被覆材およびその適用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】歯科治療においては、歯質と修復材料を
隙間なく強力に接着させることが重要となる。しかし、
これまでに提案されてきた接着材の多くは歯質との接着
性および封鎖性が不十分であるために歯質と接着材との
間に隙間が生じ、歯髄への刺激、二次カリエスおよび着
色を引き起こしたり、修復物が脱落するなどの問題があ
った。
【0003】歯質と修復材料を強力に接着させるために
は、両者を接着させる接着材を歯質に十分に浸透させた
後に確実に硬化させることが必要である。歯牙の修復に
あたっては、接着材自体の耐摩耗性は低いので、特に修
復のマージン部では極力接着材の厚みは薄いのが望まし
い。
【0004】これまでに提案されてきた接着材の多く
は、歯質内への浸透性が十分とはいえず、更に不幸なこ
とに嫌気性である。空気中では酸素の影響を受け重合が
抑制されて硬化性が低下する。これは接着材の厚みが薄
くなるほど顕著になる。また、近年修復用レジンとして
一般的になった可視光硬化型コンポジットレジンを用い
た修復においては、接着材が硬化する前に充填したコン
ポジットレジンを硬化させるとコンポジットレジンの重
合収縮によって接着材が歯質表面から剥がれてしまい、
期待した接着力や封鎖性が得られないという問題があ
る。
【0005】歯質への浸透性を向上させるための方法と
して、エッチング(Buonocore, M.G., J. Dent. Res.,
34, 849-853, 1955 参照)及びプライマー処理(Munksg
aad, E. C., Asmussen, J. Dent. Res., 63, 1087-108
9, 1984、および特開昭63−279851号公報参
照)の提案がなされてきた。エッチング処理は、切削に
よってムシ歯を除去する際に表面に固着した切削クズの
層(スメア層)を取り除き、歯質に接着材を十分に接触
および浸透させる効果があると推測されている。また、
プライマー処理は、接着材が歯質内に浸透しやすくなる
ように、濡れ性を改善する効果を有するものと推察され
ている。
【0006】歯質表面に対するエッチング処理およびプ
ライマー処理によって接着力の改善は認められるもの
の、臨床的にはまだ満足される性能に至っていない。象
牙質へのエッチングは歯髄に外部での刺激を伝えやすく
するため、エッチングした象牙質表面に冷・温水、プラ
イマーや接着材等を接触させる際には、患者に強い痛み
を与える場合があった。この痛みの原因は、スメア層に
よって覆われていた象牙質がエッチングによって露出
し、象牙質中にある歯髄に通じる無数の象牙細管が表面
部分で大きく開口してしまうためと推察されている(高
橋和人、岸好彰、the Quintessence, 11(3), 513-520,
1992)。したがって、象牙質に対する接着においてはエ
ッチング処理を行うと接着力は向上する反面、接着操作
中に歯髄への刺激を与え易くなるという問題があった。
さらには、このような方法では接着操作がエッチング、
プライマー、接着材を順次に歯質へ接触させてコンポジ
ットレジンなどの修復材料を適用することになるので、
修復治療に手間がかかる問題があった。
【0007】コンポジットレジンの重合収縮による接着
材の剥離を改善するための方法としては、コンポジット
レジンを充填する前に可視光硬化型の接着材を予め硬化
させる方法が試みられている。しかし、この方法は空気
中の酸素による重合阻害があるため接着材を厚くしなけ
ればならない等の問題を抱えている。
【0008】本出願人は、歯質への接着はコンポジット
レジンが充填される以前に完了していることが好まし
く、そのためには歯質成分と反応できる高分子重合体を
用いるのが好ましいことを見い出した。すなわち、接着
材を適用する前に、予め歯質特に象牙質の表面にモノマ
ーの重合に頼らないで接着する高分子重合体の被膜を形
成させる表面処理剤を提案している(特開昭62−33
109号公報参照)。該提案に基づいてエッチング処理
もしくは覆罩を行うと、歯質表面に上記の重合体の被膜
が形成し象牙細管を封鎖し、さらに接着性レジンとの接
着力を向上させることができる。また木下らは、種々の
歯科用レジンを使用して、このような重合体の歯質接着
性を検討し報告している(歯科材料・器械、8(6), 913-9
29, 1989または 9(1), 86-101, 1990)。本報告による
と、歯質中のカルシウム成分と反応して水に不溶となり
表面に沈着して被膜となり象牙細管を封鎖できる。その
ため、接着性レジンを適用する際に生じる刺激が少なく
なり、しかも接着力を向上させることができる。しかし
ながら、処理剤を歯質表面に塗布した後に水洗を行うた
めに水洗の方法や表面の粗さなどによって被膜の形成が
不十分な場合がある。水洗を行わない覆罩の場合では処
理剤を塗布してそのまま乾燥するので被膜の形成は十分
であったが、被膜の水への溶解性が高いために強度が低
下し接着力が不十分であった。
【0009】
【発明が解決すべき課題】本発明の目的は、上記の従来
技術における問題点を解決することにあり、象牙細管を
開口させずに象牙質表面を被覆し硬化性組成物を接着さ
せるのに有効な表面被覆材および簡便な接着の使用方法
を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、本発明
の上記目的および利点は、(A)分子内に酸性基を有す
る高分子重合体、(B)重合性単量体 および(C)水
または水系溶媒、を含有する歯質に接着性を有する表面
被覆材(第1発明)或いは(A)分子内に酸性基を含有
する高分子重合体、(B)重合性単量体(C)水または
水系溶媒 および(D)重合開始剤を含有する歯質に接
着性を有する表面被覆材(第2発明)によって達成され
る。
【0011】すなわち、本発明は分子内に酸性基を有す
る重合体と重合性単量体を含有した被膜を歯質特に象牙
質表面に形成させることによって歯質表面を被覆するこ
とができ、しかもこの被膜によって接着性レジンを強力
に、しかも簡便に接着することのできる歯質に接着性を
有する表面被覆材および使用方法を提供するものであ
る。
【0012】本発明の表面被覆材は、歯質の表面にその
まま接触させるのが好ましいが、リン酸水溶液、金属塩
を含むクエン酸水溶液またはEDTA水溶液などのエッ
チング剤によって、あらかじめ歯牙の表面を処理してか
ら使用することもできる。その際、エッチング剤とし
て、塩化第二鉄とクエン酸を含む水溶液が好ましく用い
られる。
【0013】本発明の表面被覆材において、(A)成分
は分子内に酸性基を有する高分子重合体である。かかる
高分子重合体は、例えばカルボン酸基、リン酸基、チオ
リン酸基およびスルホン酸基などから選択される酸性基
を少なくとも1種以上含んでいる重合体であり、さらに
平均分子量が5000以上であることが好ましい。
(A)成分は歯質表面に対して反応性もしくは結合性を
有し、しかも分子量が高いために歯質表面で被膜を形成
させる役割を果たす。したがって、セルロース誘導体や
タンパク質誘導体などの天然高分子量体、または合成高
分子量体を挙げることができ、さらには懸濁重合体や乳
化重合体なども挙げることができる。
【0014】歯質に対して、長期にわたり高い接着性を
特に要求される場合には、(A)成分は酸性基を有する
ビニルモノマーユニットと酸性基を有しないビニルモノ
マーユニットを同時に含有する共重合体であることが好
ましい。とりわけ、(メタ)アクリル酸アルキルエルテ
ルとスチレンスルホン酸の共重合体であることが特に好
ましい。
【0015】かかる高分子重合体が有する酸性基として
はスルホン酸基が好ましく用いられる。スルホン酸基を
含有する重合体を製造する方法として、例えばスルホン
酸またはその塩を有する重合性単量体を単独で、もしく
は他の共重合可能な重合性単量体を予め共重合した後単
離することができる。ここで使用できるスルホン酸基を
含有する重合性単量体として、例えばスチレンスルホン
酸、2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン
酸、アリルスルホン酸およびこれらの金属塩やアンモニ
ウム塩を挙げることができる。スルホン酸基を含有する
重合性単量体と共重合できる重合性単量体としては、分
子中に重合性基を含有する重合性単量体が好ましく、さ
らに水酸基、カルボン酸基、リン酸基、アミノ基、アミ
ド基などの官能基を含んでもよい脂肪族および芳香族の
重合性単量体である。
【0016】これら単量体の具体例としては、例えば
(メタ)アクリル酸メチル(MMA)、(メタ)アクリ
ル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)ア
クリル酸ブチルなどの脂肪族(メタ)アクリル酸エステ
ル類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン
類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−
ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル
(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド
類;(メタ)アクリル酸、β−(メタ)アクリロイルオ
キシエチルハイドロゲンサクシネートなどのカルボン酸
基含有(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、2または3−ヒドロキシプロピ
ル(メタ)アクリレート、メチロール(メタ)アクリル
アミドなどの水酸基含有の(メタ)アクリレート類およ
び(メタ)アクリルアミド類などを挙げることができ
る。これらのモノマーは組み合わせて用いることができ
る。
【0017】(A)成分として更に好ましくは、既に報
告されている方法[中林ら、歯科材料・器械、6
(6)、873−876、1987または木下ら、歯科
材料・器械、8(6)、913−921、1989およ
び山本ら、高分子論文集、49(2)、119−12
3、1992]に基づいて、上記の単量体を予めラジカ
ル重合して得られた重合体で、平均分子量が5000以
上を有するスルホン酸基含有の重合体である。
【0018】(A)成分中の酸性基の一部がナトリウ
ム、カリウムおよびアンモニウムなどの1価のカチオ
ン、もしくはカルシウム、マグネシウム、銅、アルミニ
ウムもしくは鉄などの多価のカチオンと塩を形成するこ
ともできる。
【0019】本発明の表面被覆材において、(B)成分
は重合性単量体である。かかる単量体の重合性基は、例
えば(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、
アリル基などを有するラジカル重合可能な不飽和基を挙
げることができ、1分子中に少なくとも1個含有してい
ればよい。1分子中に上記の重合性基が1個、2個およ
び3個含有する重合性単量体として、それぞれ単官能単
量体、2官能単量体および3官能単量体が好ましく用い
られる。さらに、これらの重合性単量体は、分子内にカ
ルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、水酸基、アミ
ノ基、グリシジル基などの官能基を含有することができ
る。
【0020】(B)成分として使用できる重合性単量体
として、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)ア
クリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メ
タ)アクリル酸ブチル、ネオペンチルグリコールジ(メ
タ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の脂肪族エ
ステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレー
ト、2または3−プロピル(メタ)アクリレート、グリ
セロールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール
モノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェ
ノキプロピル(メタ)アクリレート、1モルのビスフェ
ノールAと2モルのグリシジル(メタ)アクリレートの
付加物などの水酸基含有の(メタ)アクリレート類;メ
チロール(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有の
(メタ)アクリルアミド類;エチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリ
レート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート類;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノ
ナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの
ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
上記のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート
およびポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト類のどちらか一方の(メタ)アクリロイル基がメチル
基およびエチル基などに置換されたモノ(メタ)アクリ
レート類;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソ
シアネートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレン
ジイソシアネートまたは1,3,5−トリメチルヘキサメ
チレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレートの付加物などのウレタン結合を有する
(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAにオキシエ
チレンを付加させた生成物にさらに(メタ)アクリル酸
を縮合させた2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイル
オキシポリエトキシフェニル)プロパン類などを挙げる
ことができる。これらの重合性単量体は単独で、もしく
は組み合わせて使用できる。
【0021】(B)成分の1種として使用できる1分子
中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する重合性単
量体としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカ
ルボン酸およびテトラカルボン酸またはこれらの誘導体
を挙げることができる。例えば(メタ)アクリル酸、マ
レイン酸、p−ビニル安息香酸、11−(メタ)アクリ
ロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MA
C−10)、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエ
チルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシ
エチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、4−
(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸およ
びその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチル
トリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリ
ロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、
4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキ
シ]ブチルトリメリット酸およびその無水物、2,3−
ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピ
ル(メタ)アクリレート、N,O−ジ(メタ)アクリロ
イルオキシチロシン、O−(メタ)アクリロイルオキシ
チロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、
N−(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン、N
−(メタ)アクリロイルp−アミノ安息香酸、N−(メ
タ)アクリロイルO−アミノ安息香酸、N−(メタ)ア
クリロイル5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリ
ロイル4−アミノサリチル酸、2または3または4−
(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、2−ヒドロキシ
エチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物
の付加生成物(PMDM)、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレートと無水マレイン酸または3,3',4,
4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BT
DA)または3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボ
ン酸二無水物の付加反応物、2−(3,4−ジカルボキ
シベンゾイルオキシ)1,3−ジ(メタ)アクリロイル
オキシプロパン、N−フェニルグリシンまたはN−トリ
ルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加
物、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイ
ルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3または4−
[N−メチルN−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アク
リロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸などを挙げ
ることができる。このうち、11−メタクリロイルオキ
シ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MAC−1
0)、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
無水物(4−META)およびN−メタクリロイル5−
アミノサリチル酸(5−MASA)が好ましく用いられ
る。これらのカルボキシル基を有する重合性単量体は単
独または組み合わせて使用できる。
【0022】(C)成分の1種として使用される1分子
中に少なくとも1個のリン酸基を有する重合性単量体と
しては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチル
アシドホスフェート、2および3−(メタ)アクリロイ
ルオキシプロピルアシドホスフェート、4−(メタ)ア
クリロイルオキシブチルアシドホスフェート、6−(メ
タ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、
8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフ
ェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシ
ドホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシド
デシルアシドホスフェート、ビス{2−(メタ)アクリ
ロイルオキシエチル}アシドホスフェート、ビス{2ま
たは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル}アシド
ホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル
フェニルアシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイ
ルオキシエチルp−メトキシフェニルアシドホスフェー
トなどを挙げることができる。これらの化合物における
リン酸基は、チオリン酸基に置き換えることができる。
このうち、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェ
ニルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイル
オキシデシルアシドホスフェートが好ましく用いられ
る。これらのリン酸基を有する重合性単量体は単独また
は組み合わせて使用できる。
【0023】該(B)成分の1種として使用される1分
子中に少なくとも1個のスルホン酸基を有する重合性単
量体として、例えば2−スルホエチル(メタ)アクリレ
ート、2または1−スルホ−1または2−プロピル(メ
タ)アクリレート、1または3−スルホ−2−ブチル
(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−スルホ−2−
プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−ス
ルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジ
メチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミドなど
を挙げることができる。このうち、2−メチル−2−
(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸が好ましく
用いられる。これらのスルホン酸基を有する重合性単量
体は単独または組み合わせて使用できる。
【0024】上記の(B)成分は、上記の重合性単量体
をそれぞれ単独で使用できるが、組み合わせて使用する
こともできる。
【0025】本発明の表面被覆材において(C)成分は
水または水系溶媒である。かかる(C)成分としては、
水を単独で、もしくは水に混合し得る有機溶媒とを混合
した溶媒である。ここで使用できる水としては、例えば
蒸留水、イオン交換水または生理食塩水などが挙げら
れ、ここでは蒸留水およびイオン交換水が好ましく用い
られる。さらに上記の水に混合し得る有機溶媒としては
(A)および(B)成分を均一に溶解させるかもしくは
分散させるものが特に好ましく用いられ、例えばメタノ
ール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラ
ヒドロフラン(THF)などのエーテル類;N,N−ジ
メチルホルムアミドなどのアミド類などが挙げることが
でき、このうちエタノールおよびアセトンが好ましく用
いられる。かかる水系溶媒のうち、歯牙へ用いる場合に
生体への毒性や刺激性を考慮して、水単独で、もしくは
水とエタノールやアセトンの混合液を用いることが特に
好ましい。
【0026】本発明の第1発明による表面被覆材は、上
記(A)、(B)および(C)の各成分について、これ
ら(A)、(B)および(C)成分の合計重量に基づい
て、(A)成分を0.1〜70重量部、(B)成分を1
〜95重量部、および(C)成分を1〜95重量部の範
囲で含有するのが好ましい。さらに好ましくは、(A)
成分が1〜30重量部、(B)成分が3〜80重量部お
よび(C)成分が1〜50重量部の範囲で使用される。
【0027】本発明の第2発明では、前記(A)、
(B)および(C)成分に、さらに重合開始剤が(D)
成分として使用される。かかる重合開始剤としては、例
えばジアセチルペルオキシド、ジプロピルペルオキシ
ド、ジブチルペルオキシド、ジカプリルペルオキシド、
ジラウリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、過
酸化ベンゾイル(BPO)、p,p'−ジクロルベンゾイ
ルペルオキシド、p,p'−ジメトキシベンゾイルペルオ
キシド、p,p'−ジメチルベンゾイルペルオキシド、
p,p'−ジニトロジベンゾイルペルオキシドなどの有機
過酸化物を例示することができる。これらのうちでは、
BPOが好ましい。さらに、過硫酸アンモニウム、過硫
酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過
リン酸カリウムなどの無機過酸化物を挙げることができ
る。
【0028】また、紫外光線もしくは可視光線を照射す
ることによって重合することもできる。かかる光重合の
際に使用できる重合開始剤に特に制限はないが、例えば
ベンジル、4,4'−ジクロロベンジル、ベンゾイン、ベ
ンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、
ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、
9,10−アントラキノン、ジアセチル、カンファキノ
ン(CQ)などの紫外線または可視光線増感剤が挙げら
れる。
【0029】有機過酸化物もしくは光重合開始剤を使用
する場合、例えばN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジ
メチルp−トルイジン(DMPT)、N,N−ジエチル
p−トルイジン、N,N−ジエタノールp−トルイジ
ン、N,N−ジメチルp−tert−ブチルアニリン、
N,N−ジメチルアニシジン、N,N−ジメチルp−クロ
ルアニリン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)ア
クリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)ア
クリレート、N,N−ジメチルアミノ安息香酸およびそ
のアルキルエステル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸
およびそのアルキルエステル、N,N−ジメチルアミノ
ベンツアルデヒドなどの芳香族アミン類を併用すること
ができる。また、ベンゼンスルフィン酸、o−トルエン
スルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチルベン
ゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデ
シルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン
酸、ナフタリンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸
またはその塩類を併用することもできる。
【0030】その他、トリアルキルホウ素またはその部
分酸化物を使用することもできる。具体的には、トリア
ルキルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピル
ホウ素、トリ−n−ブチルホウ素、トリ−n−アミルホ
ウ素、トリアミルホウ素、トリイソアミルホウ素、トリ
−sec−アミルホウ素またはこれらの一部が酸化され
たトリアルキルホウ素酸化物を用いることができる。こ
れらのなかでは、トリ−n−ブチルホウ素またはその部
分酸化物を使用することが好ましい。
【0031】本発明の第2発明による表面被覆材は、上
記(A)、(B)、(C)および(D)の各成分につい
て、これら(A)、(B)、(C)および(D)成分の
合計重量100重量部のうち、(A)成分を0.1〜7
0重量部、(B)成分を1〜95重量部、(C)成分を
1〜95重量部、および(D)成分を0.01〜20重
量部の範囲で含有するのが好ましい。さらに好ましく
は、(A)成分が1〜30重量部、(B)成分が3〜8
0重量部、(C)成分が1〜50重量部、および(D)
成分が0.1〜10重量部の範囲で使用される。
【0032】本発明の表面被覆材は、上記(A)、
(B)、(C)および随時(D)成分の他に、被膜形成
促進剤として、ベリリウム、マグネシウム、カルシウ
ム、ストロンチウムやバリウムなどのアルカリ土類金
属、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどの第II
I族金属、ゲルマニウム、スズ、鉛などの第IV族の金
属および鉄、銅、コバルト、ニッケルなどの遷移金属な
どの多価金属の水酸化物、ハロゲン化物、酸化物などを
含有させることができる。
【0033】本発明の表面被覆材は、上記(A)、
(B)、(C)および随時(D)成分を予め混合して歯
質に適用することができる。これらの3〜4成分の混合
物が長期にわたり変化し、本発明の効果を損なう恐れが
ある場合には、分割して保存することができる。保存の
方法として、第1発明の表面被覆材のときは、例えばA
/Cの混合物とBの2つに分割する場合、A/Cの混合
物とB/Cの混合物に分割する場合あるいはA/B/C
の混合物とB/Cの混合物などが挙げることができる。
また、第2発明の表面被覆材のときは、例えばA/C/
Dの混合物とBの2つに分割する場合、A/C/Dの混
合物とB/Cの混合物に分割する場合あるいはA/B/
C/Dの混合物とB/Cの混合物などが挙げることがで
きる。この組み合わせは、上記に記載したものに限定さ
れない。
【0034】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明がこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】実施例1 分子内に酸性基を有する重合体
(A)の合成 2lのフラスコに33gのp−スチレンスルホン酸ナト
リウム(p−SSA、和光純薬)、144gのメタクリ
ル酸メチル(MMA、和光純薬)および2.26gの2,
2'−アゾビスイソブチロニトリルを窒素雰囲気下で1.
6lの水/エタノール(EtOH)の混合溶媒(水/E
tOH=1/0.6容量比)で溶解し、続いて溶液を7
5℃の油浴中に入れて11時間攪拌した。溶液を室温に
もどして減圧下でEtOH分を留去した。残った溶液は
透析チューブ(Union Carbide、三光純薬)に詰めてイ
オン交換水中で3日間透析を行った。チューブ内の溶液
を集め、1.5Kgのイオン交換樹脂(アンバーライトI
R-118、オルガノ)を充填したカラムに通し脱塩した。
水を留去して目的の重合体を得た。得られた重合体は、
1H−NMR、元素分析およびGPC分析を行い、数平
均分子量が10万以上のメタクリル酸メチル−p-スチ
レンスルホン酸共重合体(MMA含量約90モル%、以
下これを共重合体Aと略記する)であることを確認し
た。
【0036】なお、実施例中、接着力および象牙細管の
封鎖状態は次のようにして評価した。
【0037】実施例2 接着力の評価 新鮮なウシ下顎前歯を抜去し、水中で凍結し保存したも
のを歯質サンプルとして使用した。解凍した牛歯エナメ
ル質および象牙質を、回転式研磨機ECOMET-III(BUE
HLER製)で注水、指圧下で耐水エメリー紙600番まで
研削し、平滑な面を得た。研削した牛歯を37℃の水中
に15分間浸漬した。牛歯を水中から取り出して気銃に
て水分を除去した。研削面に本発明の表面被覆材をスポ
ンジにて塗布して15秒間静置し、気銃にて約20秒間
空気を吹きかけて乾燥した。表面被覆材を塗布した表面
を光学顕微鏡にて観察し、表面処理材によって完全に歯
質表面が被覆されていることを確認した。この上に、接
着面積を規定するため直径5.1mmの円孔のあいた両
面粘着テープを固定した。実施例4〜9においては、歯
科用接着材のスーパーボンドDライナー(サンメディカ
ル)を塗布し、気銃にて余剰の接着材を除去した。更
に、直径5.1mmの円孔のあいた厚さ1mmの厚紙を
置いて固定し、この穴にコンポジットレジン(Silux Pl
us, 3M)を充填した。可視光照射器(Translux CL, Kul
zer)にて60秒間光照射してコンポジットレジンを硬
化させた後、メタファースト(サンメディカル)にてア
クリル棒を接着して15分間静置した。37℃の水中に
24時間浸漬した後、引っ張り接着試験(クロスヘッド
スピード2mm/min)を行った。実施例10〜12
では、上記の方法のうち、スーパーボンドDライナーお
よびコンポジットレジンを用いる代わりに、試作の可視
光硬化型レジンセメントは、歯科用複合レジンセメント
のケミエース(サンメディカル)に使用されている粉剤
と、液剤として65重量部のHEMA、35重量部の
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンジメタク
リレート(UDMA)、0.5重量部のd, −カンファ
キノン(CQ)および0.5重量部のN,N−ジエチルア
ミノ安息香酸(DEABA)からなる溶液を重量比で
1:1で混練して2分以内のものを充填し、厚さ50μ
mのポリエステルフィルムで覆った。そしてその上から
光照射を60秒間行った。実施例13については、可視
光硬化型レジンセメントの代わりに、コンポジットレジ
ン(Silux Plus, ユニバーサル)を直接充填した他は、
実施例10〜12と同様な手順で接着力の評価を行っ
た。
【0038】実施例3 象牙細管の封鎖状態についての
評価 本発明の表面被覆材について歯質表面での被膜の形成状
態を調べるために、被覆材処理後の象牙質表面での象牙
細管の封鎖状態を光学顕微鏡にて観察した。
【0039】実施例4 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と50重量部の水および10重量部の2−ヒドロキシエ
チルメタクリレート(HEMA)からなる溶液を使用し
た。被膜が良好に形成していることは目視でも確認で
き、粘着性(べとつき)があった。光学顕微鏡による観
察では象牙細管の開口がなく良好な封鎖状態であった。
接着試験の結果、象牙質に対する接着強さは99±17
kgf/cm2であり、表面被覆材の凝集破壊であっ
た。
【0040】実施例5 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、50重量部のEtOH、10重量部
のトリエチレングリコールジメタクリレート(3G)お
よび3重量部の4−MATAからなる溶液を使用した。
目視による被膜の形成は良好で、光学顕微鏡によって象
牙細管の良好な封鎖を確認した。接着試験の結果、象牙
質に対する接着強さは49±10kgf/cm2であ
り、表面被覆材の凝集破壊であった。
【0041】実施例6 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、50重量部のEtOHおよび3重量
部の4−MATAからなる溶液を使用した。目視による
被膜の形成は良好で、光学顕微鏡によって象牙細管の良
好な封鎖を確認した。接着試験の結果、象牙質に対する
接着強さは46±6kgf/cm2であり、表面被覆材
の凝集破壊であった。
【0042】実施例7 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、50重量部のHEMA、10重量部
の3Gおよび3重量部の4−MATAからなる溶液を使
用した。目視による被膜の形成は良好で、光学顕微鏡に
よって象牙細管の良好な封鎖を確認した。接着試験の結
果、象牙質に対する接着強さは68±16kgf/cm
2であり、表面被覆材の凝集破壊であった。
【0043】実施例8 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、50重量部のHEMAおよび3重量
部の4−MATAからなる溶液を使用した。目視による
被膜の形成は良好で、光学顕微鏡によって象牙細管の良
好な封鎖を確認した。接着試験の結果、象牙質に対する
接着強さは66±16kgf/cm2であり、表面被覆
材の凝集破壊であった。
【0044】実施例9 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水および10重量部のメトキシノナエチ
レングリコールモノメタクリレート(M90G)からな
る溶液を使用した。目視による被膜の形成は良好で、光
学顕微鏡によって象牙細管の良好な封鎖を確認した。接
着試験の結果、象牙質に対する接着強さは49±8kg
f/cm2であり、表面被覆材の凝集破壊であった。
【0045】比較例1 実施例4において表面被覆材を使用せずに接着したとこ
ろ、象牙質に対する接着強さは18±14kgf/cm
2であった。
【0046】比較例2 実施例4において、表面被覆材として共重合体Aを使用
しないで65重量部の水と35重量部のHEMAからな
る溶液を使用した。目視および光学顕微鏡による観察に
よっても被膜は確認できず、未処理の表面との違いは認
められなかった。象牙質に対する接着強さは36±20
kgf/cm2であった。
【0047】比較例3 実施例4において、表面被覆材として重合性単量体を使
用しないで10重量部の実施例1の共重合体A、40重
量部の水および50重量部のEtOHからなる溶液を使
用した。目視によっても被膜の形成は確認できたが、粘
着性はなかった。象牙質に対する接着強さは17±4k
gf/cm2であった。
【0048】比較例4 従来技術の例として市販のフォトボンド(クラレ社)を
使用し、メーカー指示にしたがって、エッチングした後
に接着材であるフォトボンドを適用して牛歯の象牙質表
面にコンポジットレジンを接着した。走査型電子顕微鏡
におけるエッチング象牙質表面は象牙細管が大きく開口
していた。接着強さは44±18kgf/cm2であっ
た。
【0049】比較例5 従来技術の例として市販のスコッチボンドII(3M
社)を使用し、メーカー指示にしたがって、プライマー
であるスコッチプレップおよび接着材のスコッチボンド
2を適用して牛歯の象牙質表面にコンポジットレジンを
接着した。接着強さは22±5kgf/cm2であっ
た。
【0050】以上実施例4〜9および比較例1〜5の結
果を表1にまとめて記載した。
【0051】
【表1】
【0052】COPOLY-A:分子内に酸性基を有する重合体
(A)、 HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、 EtOH:エタノール、 3G:トリエチレングリコールジメタクリレート、 4−META:4−メタクリロイルオキシエチルトリメ
リット酸無水物、 M90G:メトキシノナエチレングリコールメタクリレ
ート
【0053】実施例10 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、10重量部のトリエチレングリコー
ルジメタクリレート(3G)、50重量部の2−ヒドロ
キシエチルメタクリレート(HEMA)および可視光重
合開始剤である0.1重量部のd,l−カンファキノンか
らなる溶液を使用した。被膜が良好に形成していること
は目視でも確認でき、粘着性(べとつき)があった。光
学顕微鏡による観察では象牙細管の開口がなく良好な封
鎖状態であった。レジンセメントを使用した場合の接着
試験の結果、象牙質に対する接着強さは165±13k
gf/cm2であり、すべてレジンセメントの凝集破壊
であった。
【0054】実施例11 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、10重量部の3G、50重量部のH
EMA、3重量部の4−メタクリロイルオキシエチルト
リメリット酸無水物(4−MATA)、および0.5重
量部のCQからなる溶液を使用した。目視による被膜の
形成は良好で、光学顕微鏡によって象牙細管の良好な封
鎖を確認した。レジンセメントを使用した場合の接着試
験の結果、象牙質に対する接着強さは75±54kgf
/cm2であり、1部レジンセメントの凝集破壊と表面
被覆材の凝集破壊であった。
【0055】実施例12 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、50重量部のEtOH、および10
重量部のノナエチレングリコールジメタクリレート(9
G)からなる溶液を使用した。目視による被膜の形成は
良好で、光学顕微鏡によって象牙細管の良好な封鎖を確
認した。接着試験の結果、象牙質に対する接着強さは9
4±29kgf/cm2であり、表面被覆材の凝集破壊
であった。
【0056】実施例13 表面被覆材として、10重量部の実施例1の共重合体A
と40重量部の水、50重量部のHEMA、10重量部
の3G、3重量部の4−MATA、および0.5重量部
のCQからなる溶液を使用した。目視による被膜の形成
は良好で、光学顕微鏡によって象牙細管の良好な封鎖を
確認した。コンポジットレジンを用いた場合の接着試験
の結果、象牙質に対する接着強さは64±6kgf/c
2であり、表面被覆材の凝集破壊であった。
【0057】比較例6 実施例10において表面被覆材を使用せずにレジンセメ
ントないしはコンポジットレジンを接着したが、象牙質
に対する接着強さは0であった。
【0058】比較例7 実施例13において、表面被覆材として実施例1の共重
合体Aを使用しないで40重量部の水、50重量部のH
EMA、10重量部の3G、3重量部の4−MATA、
および0.5重量部のCQからなる溶液を使用した他
は、実施例7と同様に行った。目視および光学顕微鏡に
よる観察によっても被膜は確認できず、未処理の表面と
の明確な違いは認められなかった。象牙質に対する接着
強さは0であった。
【0059】以上実施例10〜13および比較例6〜7
の結果を表2にまとめて記載した。
【0060】
【表2】
【0061】COPOLY-A:分子内に酸性基を有する重合体
(A)、 HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、 EtOH:エタノール、 3G:トリエチレングリコールジメタクリレート、 4−META:4−メタクリロイルオキシエチルトリメ
リット酸無水物、 9G:ノナエチレングリコールジメタクリレート、 CQ:d,l−カンファキノン
【0062】
【発明の効果】本発明の歯質に接着性を有する表面被覆
材は、歯質表面に適用するすることによって被膜を形成
して歯質表面の保護を行うことができる。さらに、この
被膜は歯牙特に象牙質と接着性レジンを強力にしかも簡
便に接着させることができる。この発明の効果の原因は
十分に解明されていないが、本発明の表面被覆材を歯質
表面に適用すると、まず酸性基を有する高分子重合体が
歯質表面で反応して不溶化して沈着して重合性単量体を
含む被膜を形成するため、被膜のなかに含まれる重合性
単量体はエアーなどを吹き付けて乾燥させても必ずある
一定の割合で表面に存在できるようになる。この被膜を
形成した後に接着性レジンを用いると被膜中の重合性単
量体が接着性レジンと共に重合して硬化するので、歯質
と接着性レジンの接着力を向上させるものと推察され
る。
フロントページの続き (72)発明者 笠置 昭文 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井石油化学工業株式会社内 (72)発明者 荒田 正三 山口県玖珂郡和木町和木六丁目1番2号 三井石油化学工業株式会社内 (72)発明者 中林 宣男 千葉県松戸市小金原5−6−20

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)分子内に酸性基を含有する高分子
    重合体、(B)重合性単量体 および(C)水または水
    系溶媒を含有することを特徴とする歯質に接着性を有す
    る表面被覆材。
  2. 【請求項2】 上記の表面被覆材において、(A)、
    (B)および(C)成分の合計を100重量部としたと
    き、(A)成分が0.1〜70重量部、(B)成分が1
    〜95重量部、および(C)成分が1〜95重量部の範
    囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の歯質に
    接着性を有する表面被覆材。
  3. 【請求項3】 (A)成分の平均分子量が5000以上
    であることを特徴とする請求項1に記載の歯質に接着性
    を有する表面被覆材。
  4. 【請求項4】 (A)成分がカルボン酸基、リン酸基、
    チオリン酸基およびスルホン酸基から選択される酸性基
    を少なくとも1種以上含んでいることを特徴とする請求
    項1に記載の歯質に接着性を有する表面被覆材。
  5. 【請求項5】 (A)成分が酸性基を有するビニルモノ
    マーユニットと酸性基を有しないビニルモノマーユニッ
    トを同時に含有する共重合体であることを特徴とする請
    求項1に記載の歯質に接着性を有する表面被覆材。
  6. 【請求項6】 上記の(A)成分が(メタ)アクリル酸
    アルキルエステルとスチレンスルホン酸の共重合体であ
    ることを特徴とする請求項1に記載の歯質に接着性を有
    する表面被覆材。
  7. 【請求項7】 上記の表面被覆材において、(A)から
    (C)の成分を任意の組合せで2つ以上に分割して保存
    することを特徴とする請求項1に記載の歯質に接着性を
    有する表面被覆材製品キット。
  8. 【請求項8】 上記請求項1に記載の表面被覆材を歯質
    表面に接触させた後に硬化性組成物を接着させる接着方
    法。
  9. 【請求項9】 (A)分子内に酸性基を含有する高分子
    重合体、(B)重合性単量体(C)水または水系溶媒
    および(D)重合開始剤を含有することを特徴とする歯
    質に接着性を有する表面被覆材。
  10. 【請求項10】 上記の表面被覆材において、(A)、
    (B)、(C)および(D)成分の合計を100重量部
    としたとき、(A)成分が0.1〜70重量部、(B)
    成分が1〜95重量部、(C)成分が1〜95重量部、
    および(D)成分が0.01〜20重量部の範囲で含有
    することを特徴とする請求項9に記載の歯質に接着性を
    有する表面被覆材。
  11. 【請求項11】 (A)成分の平均分子量が5000以
    上であることを特徴とする請求項1に記載の歯質に接着
    性を有する表面被覆材。
  12. 【請求項12】 (A)成分がカルボン酸基、リン酸
    基、チオリン酸基およびスルホン酸基から選択される酸
    性基を少なくとも1種以上含んでいることを特徴とする
    請求項9に記載の歯質に接着性を有する表面被覆材。
  13. 【請求項13】 (A)成分が酸性基を有するビニルモ
    ノマーユニットと酸性基を有しないビニルモノマーユニ
    ットを同時に含有する共重合体であることを特徴とする
    請求項9に記載の歯質に接着性を有する表面被覆材。
  14. 【請求項14】 上記の(A)成分が(メタ)アクリル
    酸アルキルエステルとスチレンスルホン酸の共重合体で
    あることを特徴とする請求項9に記載の歯質に接着性を
    有する表面被覆材。
  15. 【請求項15】 上記の表面被覆材において、(A)か
    ら(D)の成分を任意の組合せで2つ以上に分割して保
    存することを特徴とする請求項9に記載の歯質に接着性
    を有する表面被覆材製品キット。
  16. 【請求項16】 上記請求項9に記載の表面被覆材を歯
    質表面に接触させた後に硬化性組成物を接着させる接着
    方法。
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