JPH06263172A - 脱臭能を有する酸素バリアー性積層体 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】安価で加工性が良く、高い酸素バリアー性を有
し、かつ脱臭能を有することにより臭気の透過が抑制さ
れた積層体を提供すること。 【構成】基材上に酸素バリアー性材料層と接着剤層と金
属化合物を含有する熱可塑性樹脂層と接着剤層と芳香バ
リアー性材料層と接着剤層と吸着剤を含有する熱可塑性
樹脂層とが少なくともこの順に積層されてなることを特
徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は包装用資材として供与さ
れる酸素バリアー性積層体に関する。さらには、脱臭能
を有するものに関する。

【０００２】

【従来の技術】現在、包装用資材としては、フィルム、
シート、ボトル、容器等種々の形状への加工が容易であ
り、同時に軽量であって輸送コストが安価となる、高分
子材料を主体としたものが、多く使用されている。

【０００３】特に食品など、酸化により変質劣化しやす
い内容物が被包装材料となる場合には、高い酸素バリア
ー性が要求される。この様な要望に対しては、従来より
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物（以下、ＥＶＯ
Ｈとする）やポリ塩化ビニリデンなどの高分子材料やフ
ィルム上にアルミニウムや珪素酸化物を蒸着したものが
使用に供せられていた。

【０００４】しかしながら前記の酸素バリアー性を有す
る高分子材料は高価であるため、コスト上実用化が制限
されていた。また、ＥＶＯＨにおいては吸湿により酸素
バリアー性が低下してしまうという欠点があった。

【０００５】また、アルミニウムや珪素酸化物等の蒸着
を行うには、真空装置を使用するため、加工性が悪いと
いう欠点があった。さらにこれらの蒸着薄膜の場合に
は、ピンホールやクラックの発生により酸素バリアー性
が不安定になるという欠点があった。

【０００６】一方、臭いの強い物を包装する手段として
は、一般にプラスチックフィルムの袋の中に入れ、ヒー
トシールなどにより密封することが行われている。しか
し、この方法では経時に伴い臭気成分がフィルムを透過
してくるという欠点があった。

【０００７】さらに臭いの強い物を包装する手段として
は、ポリエチレン等の包装材料に消臭剤を練り込んで、
脱臭能を持たせるという方法がある。しかしながらこの
方法でも、包装材料自体の酸素バリアー性および臭気バ
リアー性が高くないため、内容物の臭いは経時と共に増
大し、包材外部へ透過してくると考えられる。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問
題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところ
は、安価で加工性が良く、高い酸素バリアー性を有し、
かつ脱臭能を有することにより臭気の透過が抑制された
積層体を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明はこの課題を解決
するため、基材上に酸素バリアー性材料層と接着剤層と
金属化合物を含有する熱可塑性樹脂層と接着剤層と芳香
バリアー性材料層と接着剤層と吸着剤を含有する熱可塑
性樹脂層とが少なくともこの順に積層されてなることを
特徴とする酸素バリアー性積層体を提供するものであ
る。

【００１０】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
酸素バリアー性積層体を包装体とする場合は、その内面
に吸着剤を含有する熱可塑性樹脂層、外面に基材となる
ようにして使用する。

【００１１】本発明の酸素バリアー性積層体の基材とし
ては、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどの
各種フィルムを用いることができる。

【００１２】本発明に係る酸素バリアー性材料層として
は、ポリ塩化ビニリデンやＥＶＯＨを用いることができ
る。前者については、例えば、基材上にコーティングさ
れたものでもよい。また、他の材料として、アルミニウ
ムや珪素酸化物などがフィルム状の基材に蒸着されたも
のを用いることもできる。

【００１３】本発明における接着剤層に用いる接着剤と
しては、２種類のフィルムを十分な強度にて貼りあわせ
ることができればよく、例えばウレタン系接着剤などが
挙げられる。

【００１４】本発明における熱可塑性樹脂層に用いる熱
可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが好ましく、例え
ば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポ
リエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体
やエチレン、プロピレン、ブテン、メチルペンテンなど
のオレフィンから選ばれる二つ以上のモノマーの共重合
体が挙げられる。また、他の熱可塑性樹脂としては、ポ
リ塩化ビニル、ナイロン、ＥＶＯＨ、ポリエステルなど
も用いることができる。

【００１５】上記熱可塑性樹脂に添加する金属化合物と
しては、ステアリン酸やナフテン酸、リノール酸、ジメ
チルジチオカルバミン酸などと、Ｃｏ、Ｎｉ、Ｆｅ、Ａ
ｌ、Ｍｇ、Ｍｎ、Ｃｕ、Ｖ、Ｃｒなどの金属イオンとの
有機酸塩が用いられ、特にポルフィリン、フタロシアニ
ン、キノリンなどを配位子とした有機金属錯塩も好まし
く用いられる。また、塩化鉄や塩化アルミニウムやコバ
ルトブルーなどの無機塩なども用いることができる。ま
た、これらの金属化合物は単独あるいは２種類以上の混
合物として使用することができる。

【００１６】これらの金属化合物は熱可塑性樹脂に対
し、金属の原子濃度で１０〜１０００ｐｐｍ含有すれば
よく、より好ましくは５０〜５００ｐｐｍである。

【００１７】本発明に係る熱可塑性樹脂、特にポリオレ
フィンは一般に酸化を受けやすく、通常ラジカル抑制剤
とともに使用されている。しかし、本発明における熱可
塑性樹脂中にはラジカル抑制剤が添加されていないか、
５００ｐｐｍ以下であればよい。この程度の添加量であ
れば、ラジカル抑制剤は、ポリオレフィンの酸化進行を
すべて妨げることはできず、酸素の取り込みが行われる
ので、本発明を妨げるものではない。逆にラジカル抑制
剤の添加量を調整することで酸素バリアー性の能力を制
御することもできる。

【００１８】本発明における芳香バリアー性材料層とし
ては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、Ｅ
ＶＯＨ、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポ
リオレフィン等の材料を用いる。無延伸、延伸にかかわ
りなく、特に限定されるものではないが、１０〜１００
μｍ好ましくは、１０〜５０μｍの厚さとするのが良
い。

【００１９】本発明に用いられる吸着剤には、物理吸着
能を有し、臭気成分を多孔質物質の表面へ吸着させて除
去するもの、化学吸着能を有し臭気成分を化学的結合に
より吸着し除去するもの、物理化学吸着能を有するもの
等がある。このような吸着剤としては、天然ゼオライ
ト、合成ゼオライト、シリカゲル、活性炭、添着活性
炭、活性白土、活性酸化アルミニウム、クレー、ケイソ
ウ土、カオリン、タルク、ベントナイト、酸化マグネシ
ウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウ
ム、水酸化鉄、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウ
ム、合成ハイドロタルサイト等が挙げられる。これら吸
着剤は単独で用いても良いが、２種以上の混合物として
用いても良い。

【００２０】吸着剤の添加量は、吸着剤を高濃度添加す
ると成形が困難となるため、熱可塑性樹脂に対して、１
０重量％以下の添加量であることが望ましい。

【００２１】吸着剤の添加方法としては、吸着剤のマス
ターバッチをあらかじめ成形した後樹脂に添加する方法
などが、さらに吸着剤の分散性を向上させるため、好ま
しく行われる。

【００２２】以上に示した構成材料から、本発明による
酸素バリアー性積層体は、周知の加工方法によって製造
することができる。例えば、溶融押出成形法によって、
金属化合物を含有する熱可塑性樹脂をフィルムとして加
工し、一方ポリ塩化ビニリデンコートされた熱可塑性樹
脂を前記フィルムと接着剤により貼り合わせることによ
って構成することができる。

【００２３】本発明に係る金属化合物を含有する熱可塑
性樹脂層の厚みは金属化合物の含有量と合わせて調整す
れば良く、特に限定されるものではないが、１０〜１０
００μｍの厚さ、より好ましくは２０〜２００μｍの厚
さとするのが良い。

【００２４】

【作用】前記金属化合物を含有する熱可塑性樹脂層にお
いては、いわゆる溶解、拡散による酸素の透過を物理的
に抑制する働きと、熱可塑性樹脂が金属化合物の触媒作
用により酸化されて層内に酸素をトラップする働きとに
より酸素バリアー性が発現される。特に後者の働きは、
密閉された包装体内部に残留した酸素が壁体内部に溶解
した際にこれをトラップする作用を示している。

【００２５】本発明における酸素バリアー性材料層は金
属化合物を含有する熱可塑性樹脂層へ到達する酸素量を
制御する。これにより前記金属化合物を含有する熱可塑
性樹脂層は長期間にわたって高い酸素バリアー性を発現
し、これにより内容物の酸化変質劣化が抑えられる。

【００２６】本発明に係る熱可塑性樹脂として、ポリオ
レフィンは酸化触媒の存在下で加工時または保存中に光
や熱によってラジカルを形成しやすく、これによりポリ
マーラジカルが生成する。これが樹脂中に溶解した酸素
と反応して、パーオキシラジカルとなる。さらに、この
パーオキシラジカルは、ポリオレフィンの水素を引き抜
き、ハイドロパーオキサイドとポリマーラジカルを形成
する。このハイドロパーオキサイドは、アルコキシラジ
カルとハイドロキシラジカルに分解され、さらにポリオ
レフィンと反応して、ラジカルを生成すると考えられ
る。

【００２７】本発明における吸着剤を含有する熱可塑性
樹脂層は、包装体内部の臭気を吸着して低減せしめ、包
装体外への透過を防ぐ働きをする。

【００２８】さらに、本発明における芳香バリアー性材
料層は、吸着剤を添加した熱可塑性樹脂層で吸着した臭
気が他の層に移行し、包装体外へ透過するのを抑制する
働きをする。これらの材料は、臭気を吸着しにくく、臭
気の移行が少ない特徴を有する。

【００２９】

【実施例】以下、実施例に基づき具体的に説明を行う
が、本発明は以下の例に限定されるものではない。

【００３０】＜実施例１＞熱可塑性樹脂としてラジカル
抑制剤の添加されていないポリプロピレンを用い、これ
に金属化合物としてステアリン酸コバルト（II）を用
い、コバルト原子濃度が５０ｐｐｍとなるように混合
し、押出温度２５０℃にて押出成形し、金属化合物を含
有する熱可塑性樹脂層となる単層４０μｍのフィルムを
作成した。

【００３１】このフィルムと、Ｋコート（酸素バリアー
性材料層となるポリ塩化ビニリデンのコート）された厚
さ１２μｍになる延伸ポリエチレンテレフタレートフィ
ルム（基材となる）のＫコート面とを、ウレタン系接着
剤にてドライラミネート（接着剤層となる）した。

【００３２】このラミネートされたフィルムの、金属化
合物の添加されたポリプロピレン層と、厚さ１２μｍに
なる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム（芳香バ
リアー性材料層となる）をウレタン系接着剤にてドライ
ラミネート（接着剤層となる）し、さらにその基材上に
吸着剤としてシリカゲルを１％添加した厚さ３０μｍと
なるポリプロピレンフィルムをウレタン系接着剤にてド
ライラミネート（接着剤層となる）し、積層体を得た。

【００３３】＜実施例２＞実施例１において、上記シリ
カゲルを６ケイ酸マグネシウム（２ＭｇＯ・６Ｓｉ
Ｏ₂ ）にした以外は同様にして、積層体を得た。

【００３４】＜比較例１＞実施例１において、シリカゲ
ルを含まない３０μｍの無延伸ポリプロピレンフィルム
を用いた以外は同様にして積層体を得た。

【００３５】＜比較例２＞実施例１において、上記シリ
カゲル及び上記ステアリン酸コバルトを含まない以外は
同様にして積層体を得た。

【００３６】得られた積層体のそれぞれを成形後、２５
℃に放置して、成形直後から経時的に酸素透過率を測定
した。測定はモダンコントロール社（米国）製「ＭＯＣ
ＯＮＯｘ−ＴＲＡＮ １００」で２５℃にて行った。結
果を表１に示す。

【００３７】

【表１】

【００３８】実施例１、２及び比較例１では、高い酸素
バリアー性が確認された。

【００３９】＜酸素濃度測定＞実施例１、２及び比較例
１、２の、基材側が外面になるようにして、ヒートシー
ルによりＡ５サイズ４方パウチとして製袋した。このパ
ウチ中に空気４００ｃｃを充填し、２５℃で保存し、酸
素濃度を経時的に測定した。結果を表２に示す。

【００４０】

【表２】

【００４１】実施例１、２及び比較例１では、パウチ内
残留酸素濃度が低下することが確認された。

【００４２】＜脱臭能測定＞酸素濃度測定と同様にして
パウチを作製し、これに空気４００ｃｃ、及び臭気成分
としてポリプロピレン、アセトンを、各々濃度が２００
ｐｐｍとなるように入れて密封し、２５℃で保存した。
経時的にパウチ中に残存する各成分の濃度を、島津製作
所（株）製「ガスクロマトグラフＧＣ−１４Ａ」により
測定した。結果を表３に示す。臭気成分脱臭率は、各々
の臭気成分の２００ｐｐｍのピーク面積をＹとし、２週
間、１ヶ月後のパウチ内の各成分のピーク面積をＸとし
て、臭気成分脱臭率＝（Ｙ−Ｘ）／Ｙ×１００により計
算したものである。

【００４３】

【表３】

【００４４】表３から明らかなように、実施例１、２
は、高い脱臭能を有する酸素バリアー性積層体である。

【００４５】

【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
り、安価な熱可塑性樹脂により高い酸素バリアー性を有
する積層体を提供することができる。これにより、包装
体内部の内容物が変質劣化することなく、長期保存が可
能になった。また、本発明により、脱臭能を有する積層
体を提供することができる。これにより、経時に伴う臭
気の透過を抑制することができる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 増田 直己 東京都台東区台東一丁目５番１号 凸版印 刷株式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】基材上に酸素バリアー性材料層と接着剤層
   と金属化合物を含有する熱可塑性樹脂層と接着剤層と芳
   香バリアー性材料層と接着剤層と吸着剤を含有する熱可
   塑性樹脂層とが少なくともこの順に積層されてなること
   を特徴とする酸素バリアー性積層体。