JPH06248376A - 導電用高力銅合金 - Google Patents

導電用高力銅合金

Info

Publication number
JPH06248376A
JPH06248376A JP50A JP3565293A JPH06248376A JP H06248376 A JPH06248376 A JP H06248376A JP 50 A JP50 A JP 50A JP 3565293 A JP3565293 A JP 3565293A JP H06248376 A JPH06248376 A JP H06248376A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
alloy
wire
tensile strength
elongation
present
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP50A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2804966B2 (ja
Inventor
Kosuke Ohashi
康佑 大橋
Tamotsu Nishijima
保 西島
Toshihiro Fujino
年弘 藤野
Yasuhito Taki
康仁 滝
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yazaki Corp
Original Assignee
Yazaki Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yazaki Corp filed Critical Yazaki Corp
Priority to JP3565293A priority Critical patent/JP2804966B2/ja
Publication of JPH06248376A publication Critical patent/JPH06248376A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2804966B2 publication Critical patent/JP2804966B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Conductive Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 複雑な熱処理工程を必要とせず、伸縮加工性
に優れ、かつ強度,伸び、導電性,耐屈曲性に優れた導
電用高力銅合金の提供を目的とする。 【構成】 本発明に係る導電用高力銅合金は、Mgを
0.1〜0.5wt%、Niを0.1〜0.5wt%、Snを0.1〜
0.5wt%、Liを0.02 〜0.2wt%含有し、残部を実質
的にCuで構成する。あるいは、Mgを0.1〜0.5wt
%、Snを0.15 〜0.75wt %、Inを0.05〜0.35wt
%含有し、残部が実質的にCuからなり、かつMg:
Snの含有比率が1:1.2〜1.8の範囲にあるように構
成してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、伸線特性に優れた導電
用銅合金に係り、更に詳細には引張強さ及び繰り返し屈
曲強度等の機械的特性に優れ、しかも高い導電性と伸び
とを備えた自動車用の電線導体に好適な導電用銅合金に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車に搭載された種々の車載装置は、
近年、自動車の運転を制御するため、或いはその車載装
置自体の操作を容易にするために、電子化或いは電動化
される傾向にある。このような傾向に伴い、電源と車載
装置間又は車載装置同士間での配線回路数が著しく増加
し、自動車における自動車用電線の総重量及び車内占積
空間が増加している。この結果、自動車全体の重量及び
所要空間が増大して、燃費が嵩み経済的に不利であるば
かりでなく、省エネルギーの社会的要請に反することに
なる。このため、引張強さ及び繰り返し屈曲強度等の機
械的特性に優れ、しかも高い導電性と伸びとを備えた自
動車用電線の導体を実現し、それにより自動車用電線の
軽量化及びその占積空間の狭小化を図ることが要望され
ている。
【0003】従来は、自動車用電線の導体として、主に
軟銅線が使用されてきたが、軟銅線は、機械的特性に劣
るため、微小電流回路用の実際には極細線でもよいとこ
ろを走行中の振動衝撃等に対する機械的強度を確保する
ため電気的必要径よりも大きな導体を用いる必要があ
り、重量の軽減を図ることは困難であった。このため、
軟銅線に代わる材料として硬銅線が検討されたが、硬銅
線は伸びが著しく小さいため、端子圧着箇所が外力によ
る機械的弱点となり信頼性に乏しい結果となった。そこ
で、軟銅線に代わる優れた特性を有する線材、即ち引張
強さ及び繰り返し屈曲強度等の機械的特性が優れてい
て、導体径を細くすることが可能で、導電性と伸びが良
好な線材が必要となる。かかる線材用素材として、Cu
−Mg合金あるいは特開平1−212732号に開示さ
れているようなCu−Fe−P−Mn−Si合金等が開
発されている。この後者の合金は、Fe、P、Mn、S
iの金属間化合物を銅マトリックス中に析出させたもの
であって、比較的良好な導電性を有し、伸線特性、引張
強さ及び繰り返し屈曲特性に優れている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
Cu−Mg合金は、MgをCuに固溶させることにより
引張強さを向上させてはいるが充分ではなく、また屈曲
強度も低い。更に、Mgは溶解,鋳造時での酸化消失が
激しく、添加成分が変動しやすいため特性が不安定にな
りやすい。また、鋳造性に難点があるために連続鋳造時
に鋳造割れが発生しやすく、以後の伸線加工時に断線が
多発する恐れがある。更にこれにSnを加えたCu−M
g−Sn合金も提案されているが、引張強さが多少向上
するものの充分ではな。また、上述のCu−Fe−P−
Mn−Si合金は、Fe,P,Mn,Siを微細に析出
させて、引張強さ,伸び,導電率を向上させているので
特性的には良好であるが、時効硬化型の合金のため、通
常の電線製造工程とは別に、熱処理の温度を正確に制御
した溶体化処理,時効硬化処理を必要とする。このた
め、設備増や工程増となり製造コストのアップを招いて
しまう。また、合金中のPが、脱酸剤として作用し、合
金の線材化のための連続鋳造工程中に酸素と反応して鋳
造品のP含有量にバラツキが生じ、製品線材の特性にム
ラが生じると言う問題もあった。
【0005】本発明は、複雑な熱処理工程を必要とせ
ず、伸線加工性に優れ、かつ強度,伸び,導電性,耐屈
曲性に優れた固溶強化型銅合金である導電用高力銅合金
の提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、Mgを0.1〜0.5wt%、Niを0.1〜
0.5wt%、Snを0.1〜0.5wt%、Liを0.02 〜0.2
wt%含有し、残部が実質的にCuからなることを特徴と
している。
【0007】また、本発明は、Mgを0.1〜0.5wt%、
Snを0.15 〜0.75wt %、Inを0.05 〜0.35wt %
含有し、残部がCuからなり、かつMg:Snの含有比
率が1:1.2〜1.8の範囲にあるものでもよく、それに
より伸線特性に優れた導電用高力銅合金を実現してい
る。
【作用】
【0008】請求項1に係る本発明合金は、Mg,Sn
をCu母相中に固溶させて、引張強さ,焼鈍後の伸びを
向上させ、Niを添加することで鋳造性を向上させてい
る。また更に、Liを添加することによってMg含有量
の安定化が図られている。本発明において、Mgの含有
量を0.1 〜0.5 wt%に規定した理由について説明する。
MgをCuに添加すると、鋳造時に鋳巣が発生しやすく
鋳造性が悪化する。特に、連続鋳造時に鋳造割れが発生
しやすく、微細な割れでも後工程の冷間圧延及び伸線時
において欠陥部となり断線が多発する。このため、Cu
−Mg合金は表面を面削してから伸線をおこなうが断線
が多発することがある。しかしながら、Mgの固溶は導
電率の低下が少ない割に引張強さの向上効果が大きい。
Mgの含有量が0.1wt %以下では引張強さの向上効果は
小さく、Mgの含有量が0.5wt %以上では引張強さの向
上効果は飽和し、導電率の低下が大きくなり鋳造性が悪
くなる。そこで、0.1 〜0.5wt %とした。
【0009】Ni含有量を0.1 〜0.5wt %に規定した理
由について説明する。NiをCu−Mg合金に添加する
と、Mgによって悪化した鋳造性が飛躍的に向上するの
みならず、引張強さや焼鈍後の伸びも向上する。ところ
が、Ni含有量が0.1wt %以下ではMgの添加によって
低下した鋳造性を改善しきれず、また0.5wt %以上では
鋳造性は向上するが導電率の低下が大きく実用的ではな
いのみならず、引張強さや焼鈍後の伸びが飽和してしま
う。また、Niは導電率を低下させるので添加量はあま
り多くないほうが望ましく、Mg:Niの比率は0.8 〜
1.0 程度がよい。Mg:Niの比率が0.8 以下ではMg
による鋳造性の低下を補い切れず、反面Niの添加量が
あまり多いと鋳造性は向上するが導電率が低下して実用
的ではない。
【0010】Sn含有量を0.1 〜0.5wt %に規定した理
由について説明する。Snは焼鈍後の伸びの向上効果が
非常に大きく、耐屈曲性も大幅に向上し、引張強さの向
上効果も大きく鋳造性の向上効果もNiについで大き
い。しかし、0.1wt %以下では効果はあまりなく、0.5w
t %以上では向上効果は飽和するとともに、導電率の減
少が大きくなり実用的ではない。
【0011】Li含有量を0.02〜0.2wt %に規定した理
由について説明する。Liは引張強さの向上に寄与し、
導電率の低下も少ない。しかし、Li添加の主目的はM
g含有量の安定化にある。通常、MgはCu中に溶解さ
れると酸化のため消失が大きいので、Mgを添加した銅
合金は炉内雰囲気を不活性ガスにしたり、溶湯表面を酸
化防止のフラックス等で保護して酸化防止を図っている
が、鋳造が長時間の時、Mgは溶銅中及び雰囲気中の酸
素と反応して酸化消失する。Liを添加することにより
溶銅中及び雰囲気中の酸素は優先的に反応しMgの酸化
を防止する。溶銅中に残存したLiは引張強さの向上に
寄与する。Liの添加が0.02wt%以下では上記の効果は
得られず、また0.2wt %以上になるとLiは高価なため
コストアップになり導電率も低下する。
【0012】また、請求項2に係る本発明合金は、M
g、Sn及びInをCuマトリックス中に固溶させるこ
とにより、比較的高い導電性を維持しつつ、しかも引張
強さを増強し、焼鈍後の伸びを向上させたものである。
本発明において、Mgを含有させる理由は、上述したよ
うにMgの含有が引張強さを増強するからであり、また
Mg含有量を0.1〜0.5wt%の範囲に限定した理由も、
上述のように0.5wt%以上では引張強さ増強の効果が飽
和し、しかもインゴット鋳造中に鋳巣などの欠陥が発生
し易く鋳造性が悪化し、特に連続鋳造時に鋳造割れが発
生し易くなるからであり、一方、0.1wt%以下では引張
強さの増強効果が低いからである。
【0013】本発明において、Snを含有させる理由
も、上述したとうりで、連続鋳造性を大幅に改善し、か
つ引張強さの増強及び焼鈍後の伸びの向上に寄与し、特
に繰り返し屈曲特性を大幅に向上させるからである。ま
た、Sn含有量を0.15 〜0.75wt %の範囲に限定した
理由は、0.75wt %以上では引張強さの増強効果、焼鈍
後の伸び及び繰り返し屈曲特性の向上効果に比べて導電
率の低下が大きくなるからであり、一方0.15wt %以下
では、連続鋳造性改善の効果が小さく、また引張強さを
増強させる効果並びに焼鈍後の伸び及び繰り返し屈曲特
性を向上させる効果も低いからである。
【0014】本発明において、Inを含有させる理由
は、Inの含有が導電性を犠牲にすることなく引張強さ
を増強するからである。In含有量を0.05 〜0.35wt
%の範囲に限定した理由は、Inは高価な元素であるか
ら出来るだけ少量の含有量で済ませるべきであって、
0.35wt %以上では引張強さ増強の効果が飽和し、しか
もコストが大幅に増加するためであり、一方0.05wt %
以下では引張強さの増強効果が小さいからである。
【0015】本発明において、MgとSnとの含有比率
を1:1.2〜1.8の範囲に限定した理由は、MgとSn
との含有比率が1:1.2以下ではMgの含有による鋳造
性の劣化をSnの含有による鋳造性の改善では補えず、
鋳造割れが発生し易くなり、そのため断線が発生し易い
からである。鋳造割れは、圧延後の伸線工程において欠
陥となって出現し、それにより断線が多発する。また、
MgとSnとの含有比率が、1:1.8以上では、Snに
よる鋳造性の改善効果が飽和するからである。
【0016】
【実施例】以下、本発明の第1の実施例について説明す
る。表1に示す本発明の銅合金及び比較例No.1〜1
2としての合金から、以下のようにして試料線材を得
た。先ず、不活性ガス雰囲気に保たれた溶解炉で黒鉛粒
被覆下にて銅(Cu)を溶解後、Mg,Ni,Sn及び
Liを純金属の形態でそれぞれ所要量添加し、均一な組
成の溶湯を得た。これを連続鋳造により、それぞれ表1
に示す組成の20mmφの鋳造棒を作製した。これを、冷
間圧延後、1mmφに伸線し、電気抵抗式焼鈍機にて通電
焼鈍をおこない、引張強さ,伸び,導電率,繰返し屈曲
強度を測定した。なお、比較例No.13は硬銅線であ
り、純銅である。
【0017】
【表1】
【0018】また、従来例の合金である比較例No.1
4のCu−Fe−P−Mn−Si合金は、不活性ガス雰
囲気に保たれた溶解炉で黒鉛粒被覆下にて銅を溶解後、
Fe,P,Mn,Siを母合金の形態で添加し均一な溶
湯を得た。これを連続鋳造により表1に示す組成の20
mmφの鋳造棒を作成した。これを、冷間圧延及び伸線し
3.2mmφの線材を得た。この線材を不活性ガス雰囲気炉
で900℃で1時間加熱後水冷して溶体化処理をおこな
った。その後、1.0mmφまで伸線し不活性ガス雰囲気炉
にて470℃で6時間の時効硬化処理を施し、引張強
さ,伸び,導電率,繰返し屈曲強度を測定した。なお、
表1では導電率は%IACS、引張強さはKg/mm2
伸びは%、繰り返し屈曲強度は回数でそれぞれ表示され
ている。
【0019】次に、本発明に係る合金の鋳造性を評価す
るために、0.08 mmφまでの細線をおこなった。連続鋳
造で作成した20mmφの鋳造棒を冷間圧延し、9.5mmφ
の荒引線を作成した。これを、大型連続伸線機で2.6mm
φまで伸線した。続いて、小型伸線機で2.6mmφより
0.6mmφまで伸線した。更に、細線機で0.6mmφより
0.08mm φまで伸線し、それぞれの断線回数を調査し、
上述の表1に示した。なお、伸線数量は線材重量50k
gを取り出しておこなった。
【0020】屈曲試験は、図1に示すように、治具1に
供試料2を挟んで、他端を2kgの引張荷重Wを加えた
状態で(a)→(b)→(c)→(d)と左右に90°
曲げるのを1回として、破断するまで繰返しおこない、
その回数を屈曲強度とした。
【0021】表1に示すように、本発明の合金No.1
〜No.9と比較合金No.14とを比べると、導電率
は若干低下するものの、引張強さ,伸び,屈曲強度で同
等以上の特性を有していることがわかる。なお、比較合
金No.14は、解決課題のところで述べたように、溶
体化処理,時効硬化処理等の複雑な熱処理工程を経てい
る。
【0022】比較合金No.1とNo.2は、通常のC
u−Mg合金である。本発明合金と比較すると、導電率
は同等であるが引張強さ,伸び,屈曲強度が大幅に劣
る。比較合金No.3は、Cu−Ni合金であるが、導
電率,引張強さ,伸び,屈曲強度が劣る。比較合金N
o.4とNo.5は、Cu−Sn合金である。導電率は
同等であるが引張強さ,伸び,屈曲強度が劣る。比較合
金No.6は、Mg,Ni,Sn,Liが本発明合金の
下限以下である。導電率は優れているが、引張強さ,伸
び,屈曲強度で劣る。比較合金No.7は、Cu−Mg
−Sn合金である。導電率は同等であるが引張強さ,伸
び,屈曲強度が劣る。比較合金No.8は、Cu−Mg
−Ni合金である。導電率は同等であるが引張強さ,伸
び,屈曲強度が劣る。
【0023】比較合金No.9、No.10、No.1
1は Cu−Mg−Ni−Sn合金である。No.9は
NiとSnの含有量が本発明合金の上限以上のため導電
率が大幅に劣る。No.10とNo.11は同一組成で
あるが、No.11は鋳造開始直後の組成で、No.1
0は鋳造開始後2時間経過後の組成である。不活性ガス
雰囲気,黒鉛粒被覆下にもかかわらず、Mgの量が約3
0%減少している。このため、引張強さ,伸びが若干減
少している。一方、本発明合金No.8は鋳造直後の組
成であり、本発明合金No.9は6時間経過後の鋳造終
了時での組成である。LiがMgの酸化・消失を保護し
ているのでMgの減少は殆どなく、特性にも変化はな
い。本発明合金No.5は、比較合金No.11にLi
を添加した組成である。引張強さ,伸び,屈曲強度にお
ける特性が向上している。
【0024】比較合金No.12は、Mg,Ni,S
n,Liが本発明合金の上限以上の組成である。導電率
が極端に悪化しており実用的でない。比較合金No.1
4は、上述したように、特性は良好であるが、鋳造→圧
延→伸線→溶体化処理→伸線→時効硬化処理と製造工程
が複雑であり、正確な温度管理も必要となり、製造コス
トが非常に高くなるという問題がある。
【0025】また、本発明合金の鋳造性を評価するた
め、伸線特性の検討をおこなった。比較合金No.1、
No.2はCu−Mg合金であり、伸線特性は非常に悪
く、0.6mmφ→0.08 mmφへの伸線は断線が多発して不
可能であった。比較合金No.7はCu−Mg−Sn合
金であるが、Niを含有していないために断線が非常に
多く発生した。No.12は本発明合金と同成分である
が、含有量が本発明合金の上限より多いため、細線機で
断線が多発した。これは、特にMg含有量が0.9%と多
いため、Ni含有量を増加しても伸線特性を向上するこ
とができなかっためである。その他の比較合金の伸線特
性は良好であった。
【0026】次に、本発明の第2の実施例について説明
する。表2に示す本発明合金No.1〜9及び比較例N
o.1〜8としての合金から、以下のようにして、試料
線材を得た。先ず、不活性ガス雰囲気に保たれた溶解炉
で黒鉛粒被覆下にて銅を溶解し、その後、Mg、Sn及
びInを純金属の形態でそれぞれ所要量添加し、均一な
組成の溶湯を得た。これを連続鋳造して、それぞれ表2
に示す組成の20mmφの鋳造棒を形成した。次いで、得
た鋳造棒を冷間圧延し、その後、1mmφに伸線し、更に
電気抵抗式焼鈍機で通電焼鈍して、引張強さ,伸び,導
電率,繰返し屈曲強度を測定した。また、従来例の合金
である比較例No.9のCu−Fe−P−Mn−Si合
金は、不活性ガス雰囲気に保たれた溶解炉で黒鉛粒被覆
下にて銅を溶解後、Fe,P,Mn,Siを母合金の形
態で添加し均一な溶湯を得た。これを連続鋳造により表
1に示す組成の20mmφの鋳造棒を作製した。これを、
冷間圧延及び伸線し3.2mmφの線材を得た。この線材を
不活性ガス雰囲気炉で900℃で1時間加熱後水冷して
溶体化処理をおこなった。その後、1.0mmφまで伸線し
不活性ガス雰囲気炉にて470℃で6時間の時効硬化処
理を施し、引張強さ,伸び,導電率,繰返し屈曲強度を
測定した。常用の試験方法に従って、この試料線材につ
いて引張強さ、伸び、導電率及び繰り返し屈曲強度を測
定し、その結果を表2に示した。表2では、導電率は%
IACSで、引張強さはKg/mm2で、伸びは%で、及び繰
り返し屈曲強度は回数でそれぞれ表示されている。
【0027】
【表2】
【0028】屈曲試験は、第1の実施例と同様に、図1
に示すような治具1にておこなった。
【0029】また、本発明合金の鋳造性を評価するため
に、表2に示す本発明合金No.1から9の組成の合金か
ら作った試料線材の伸線試験を線径0.08mm φまで伸線
して行った。そのために、先ず本発明合金から連続鋳造
により作製した20mmφの鋳造棒を冷間圧延し、9.5mm
φの荒引線を得た。これを大型連続伸線機で2.6mmφま
で伸線を行い、次いで小型伸線機で2.6mmφから0.6mm
φまで伸線を行い、更に細線機で0.6mmφより0.08mm
φまで伸線を行った。大型伸線機、小型伸線機及び細線
機による伸線工程での断線回数を計数し、その断線回数
で以て伸線特性を評価した。尚、各伸線工程における断
線回数は、線材重量50Kg当たりの伸線の断線回数であ
る。
【0030】本発明合金の試料線材と同様にして、得た
比較合金の試料線材について導電率、引張強さ、伸び、
繰り返し屈曲強度及び伸線特性を測定し、その結果を表
2に記載した。また、本発明合金の試料線材と同様にし
て、得た従来合金の試料線材について導電率、引張強
さ、伸び及び繰り返し屈曲強度並びに伸線特性を測定
し、その結果を表2に記載した。更に、参考例として硬
銅のみからなる線材についても同様に作製し、試験を行
い、その結果を表示した。
【0031】以下に、試料線材の導電率、引張強さ、伸
び及び繰り返し屈曲強度について、本発明合金No. 1〜
9、比較合金No. 1〜9を比較して検討する。本発明合
金は、その導電率が従来のCu−Fe−P−Mn−Si
合金より僅かに低い値を示しているが、実用上差し支え
のない程度の低下であって、一方、引張強さ、伸び及び
繰り返し屈曲強度は、Cu−Fe−P−Mn−Si合金
に比べて同等ないしそれ以上の良好な値を示している。
【0032】比較合金No. 1、No. 2及びNo. 4は、I
nを添加しなかった合金である。それから作製した試料
線材は、導電率は本発明合金とほぼ同等であるが、引張
強さが大幅に低下している。比較合金No. 3は、Sn含
有量が本発明で規定したSn含有量の下限以下のため、
伸び及び繰り返し屈曲強度が本発明合金に比べてかなり
低い。一方、比較合金No. 5は、Snを全く添加しなか
った合金である。これから作製した試料線材は、伸び及
び繰り返し屈曲強度が大幅に低下している。
【0033】比較合金No. 6は、Mg、Sn及びInが
本発明で規定した含有量の下限以下のため、引張強さ、
伸び及び繰り返し屈曲強度が大幅に低下している。一
方、比較合金No. 7は、Mg含有量が本発明で規定した
含有量の上限以上であるため、導電率が本発明合金に比
べて大幅に低下している。比較合金No. 8は、Sn含有
量が本発明で規定した含有量の上限以上のため、導電率
が本発明合金に比べて大幅に低下している。
【0034】次に、本発明合金の鋳造性を評価するため
に試料線材の伸線特性について検討する。本発明合金N
o. 1〜9では、伸線時に断線が発生していない。これ
は、本発明合金は、極めて良好な伸線特性を有すること
を示している。一方、比較合金は、以下に説明するよう
に伸線特性が本発明合金に比較して劣っている。先ず、
比較合金No. 1〜3は、Mg:Snが本発明で規定した
比率の範囲の下限以下であるため、本発明合金に比べて
伸線時に断線が多発した。比較合金No. 5は、Snが添
加されていない合金であるため、伸線時に断線が多発
し、特に線径0.6mmφから0.08mm φへの伸線は、すぐ
に断線するため事実上不可能であった。比較合金No. 7
は、SnとInの添加量及びMg:Snの添加比率を本
発明で規定した範囲内にあるが、Mg含有量が本発明で
規定した含有量の上限以上であるため、伸線特性が本発
明合金に比べて低下した。
【0035】一方、比較合金No. 4は、MgとSnの含
有量及びMg:Snの含有比率が本発明の規定した範囲
内にあるので、伸線特性は良好であった。比較合金No.
6は、Mg、Sn及びInの含有量が本発明の規定した
下限以下であるが、Mg:Snの含有比率が本発明の規
定した範囲内にあるので、伸線特性は良好であった。比
較合金No. 8は、Sn含有量及びMg:Snの含有比率
が本発明の規定した上限以上であるが、伸線特性は良好
であった。比較合金No.9に示すCu−Fe−P−M
n−Si合金と参考例の硬銅線とも伸線特性が良好であ
る。
【0036】以上のように、本発明合金は、従来のCu
−Fe−P−Mn−Si合金に比べて遙に簡単な製造工
程で製造することができるにもかかわらず、それと同等
の特性を備えていることが確認された。換言すれば、本
発明合金は、比較的高い導電性と伸びとを備え、しかも
引張強さ及び繰り返し屈曲強度等の機械的特性並びに伸
線特性に優れた銅合金であって、従来のCu−Fe−P
−Mn−Si合金に比べてより経済的に製造できる銅合
金であることが確認された。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による合金
は、導電性は硬銅に比べやや低下するが、硬銅と同等の
引張強さを有し、伸び,屈曲性は大幅に向上する。ま
た、従来のCu−Mg合金,Cu−Mg−Sn合金に比
べて伸線性が大幅に向上し、導電率,引張強さ,伸び,
屈曲性も優れている。時効硬化型のCu−Fe−P−M
n−Si合金に比べ、導電率は若干低下するものの、引
張強さ,伸び,屈曲性で同等以上の特性を有し、製造工
程が時効硬化型のように複雑でなく、純銅と同じため製
造コストが低い。以上説明したように、本発明による合
金は、先ず、第1には、導電率は硬銅に比べて実用上で
差し支えない程度の低下を招くが、引張強さが硬銅と同
等以上であって、しかも伸び,屈曲性が硬銅に比べて大
幅に増加する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)、(b)、(c)及び(d)は、線
材の屈曲試験方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 試験のための治具 2 供試材
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年6月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正内容】
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
Cu−Mg合金は、MgをCuに固溶させることにより
引張強さを向上させてはいるが充分ではなく、また屈曲
強度も低い。更に、Mgは溶解,鋳造時での酸化消失が
激しく、添加成分が変動しやすいため特性が不安定にな
りやすい。また、鋳造性に難点があるために連続鋳造時
に鋳造割れが発生しやすく、以後の伸線加工時に断線が
多発する恐れがある。更にこれにSnを加えたCu−M
g−Sn合金も提案されているが、引張強さが多少向上
するものの充分ではな。また、上述のCu−Fe−P
−Mn−Si合金は、Fe,P,Mn,Siを微細に析
出させて、引張強さ,伸び,導電率を向上させているの
で特性的には良好であるが、時効硬化型の合金のため、
通常の電線製造工程とは別に、熱処理の温度を正確に制
御した溶体化処理,時効硬化処理を必要とする。このた
め、設備増や工程増となり製造コストのアップを招いて
しまう。また、合金中のPが、脱酸剤として作用し、合
金の線材化のための連続鋳造工程中に酸素と反応して鋳
造品のP含有量にバラツキが生じ、製品線材の特性にム
ラが生じるという問題もあった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 滝 康仁 静岡県沼津市大岡2771 矢崎電線株式会社 内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mgを0.1〜0.5wt%、Niを0.1〜
    0.5wt%、Snを0.1〜0.5wt%、Liを0.02 〜0.2
    wt%含有し、残部が実質的にCuからなることを特徴と
    する伸線特性に優れた導電用高力銅合金。
  2. 【請求項2】 Mgを0.1〜0.5wt%、Snを0.15 〜
    0.75wt %、Inを0.05 〜0.35wt %含有し、残部が
    実質的にCuからなり、かつMg:Snの含有比率が
    1:1.2〜1.8の範囲にあることを特徴とする伸線特性
    に優れた導電用高力銅合金。
JP3565293A 1993-02-24 1993-02-24 導電用高力銅合金 Expired - Fee Related JP2804966B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3565293A JP2804966B2 (ja) 1993-02-24 1993-02-24 導電用高力銅合金

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3565293A JP2804966B2 (ja) 1993-02-24 1993-02-24 導電用高力銅合金

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06248376A true JPH06248376A (ja) 1994-09-06
JP2804966B2 JP2804966B2 (ja) 1998-09-30

Family

ID=12447811

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP3565293A Expired - Fee Related JP2804966B2 (ja) 1993-02-24 1993-02-24 導電用高力銅合金

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2804966B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011093114A1 (ja) * 2010-01-26 2011-08-04 三菱マテリアル株式会社 高強度高導電性銅合金

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011093114A1 (ja) * 2010-01-26 2011-08-04 三菱マテリアル株式会社 高強度高導電性銅合金

Also Published As

Publication number Publication date
JP2804966B2 (ja) 1998-09-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3699701B2 (ja) 易加工高力高導電性銅合金
US20100294534A1 (en) Conductor wire for electronic apparatus and electrical wire for wiring using the same
JP4959141B2 (ja) 高強度銅合金
JP2007100111A (ja) プレス打抜き性の良いCu−Ni−Sn−P系銅合金およびその製造法
JP3383615B2 (ja) 電子材料用銅合金及びその製造方法
JP2004307905A (ja) Cu合金およびその製造方法
EP0460454B1 (en) High-tensile copper alloy for current conduction having superior flexibility
JP2007270171A (ja) 曲げ加工性に優れた高導電性銅基合金およびその製造法
JP5376396B2 (ja) ワイヤーハーネス用電線導体
JPH0987814A (ja) 電子機器用銅合金の製造方法
JP4287878B2 (ja) Cu−Ni−Si−Mg系銅合金条
JP2813652B2 (ja) 導電用高力銅合金
JP2804966B2 (ja) 導電用高力銅合金
JP4175920B2 (ja) 高力銅合金
JP3302840B2 (ja) 伸び特性及び屈曲特性に優れた導電用高力銅合金、及びその製造方法
JPS6338547A (ja) 高力伝導性銅合金
JP3333654B2 (ja) 伸び特性及び屈曲特性に優れた導電用高力銅合金、及びその製造方法
JPH0355532B2 (ja)
JPH0995747A (ja) 伸び特性及び屈曲性に優れた導電用高力銅合金、及びその製造方法
JP3381817B2 (ja) 電線導体用高力銅合金及び電線用導体の製造方法
JPH01189805A (ja) ワイヤーハーネスのターミナル用銅合金
JPH0230727A (ja) 半導体機器リード材又は導電性ばね材用高力高導電銅合金
JPH07331362A (ja) 屈曲特性及び伸線特性に優れた導電用高力銅合金
JPH0676630B2 (ja) 配線接続具用銅合金
JPH0219432A (ja) 半導体機器リード材又は導電性ばね材用高力高導電銅合金

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 19980428

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees