JPH06242472A - 遷移金属酸化物と水溶性高分子のゲル複合膜及びその製造法 - Google Patents

遷移金属酸化物と水溶性高分子のゲル複合膜及びその製造法

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JPH06242472A
JPH06242472A JP5049894A JP4989493A JPH06242472A JP H06242472 A JPH06242472 A JP H06242472A JP 5049894 A JP5049894 A JP 5049894A JP 4989493 A JP4989493 A JP 4989493A JP H06242472 A JPH06242472 A JP H06242472A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 遷移金属酸化物と水溶性高分子物質との混合
物からなるタングステン酸含有ゲル複合膜、並びに遷移
金属酸化物の水溶液に水溶性高分子物質を添加混合して
得た混合水溶液を、製膜し、乾燥してゲル化させること
を特徴とする請求項1記載のゲル複合膜の製造法。 【効果】 本発明の遷移金属酸化物含有ゲル複合膜はフ
ォトクロミズム及びエレクトロクロミズムを有してお
り、短時間で着色し、消色する。また、乾燥させた後の
膜のクラック発生の心配がなく、大面積の表示面の作製
が可能である。さらに素子からの液漏れや、紫外線によ
る劣化という問題がない。しかも遷移金属酸化物含有ゲ
ル複合膜の作製が容易であり、均一にすることができる
ばかりか、安価で行なうことができる。従って、本発明
の遷移金属酸化物含有ゲル複合膜は、表示材料,調光
(遮光)ガラス,防眩ガラス,光制御素子等の素材とし
て、産業上極めて有効に利用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光や電圧により、変色
したり、透過光量が変わる性質(フォトクロミズムやエ
レクトロクロミズム)を有しており、表示材料,調光
(遮光)ガラス,防眩ガラス,光制御素子等として利用
することのできるゲル複合膜及びその製造法に関する。
より詳しくは、素子等として用いた場合の液漏れや紫外
線等による劣化がなく、しかも均一分散が容易であり、
かつ、大面積の表示面の作製が可能な遷移金属酸化物含
有ゲル複合膜と、その効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】遷移金
属酸化物、特にアモルファスの酸化タングステン(WO
3 )は、フォトクロミズム(photochromism ) やエレク
トロクロミズム(electrochromism) を有することが知ら
れており( R.J. Colton, A.M. Guzman and J.W. Rabal
ais : Acc. Chem. Res. 11(1978) 170. )、ディスプレ
イや調光ガラスなどに応用されている。これらの材料を
デバイスとして用いるには膜の作製が重要である。これ
まで、アモルファス酸化タングステンの膜作製方法とし
ては、主に真空蒸着法やスパッタ法が用いられてきた。
しかしながら、このような方法では、作業が煩雑であ
り、大面積の表示面を作製することはコストの面からも
困難であると共に、電解液の漏洩防止が困難であるとい
う問題がある。また、色素としてビオロゲン類等を用い
た分散型のエレクトリッククロミック素子は、蒸着の煩
雑さはないものの、有機材料であるため、紫外線に対し
て極端に劣化し易く、電解液の漏洩を防止するのが困難
であるという問題がある。
【0003】このような問題を解決するものとして、例
えば特開昭63−104027号公報には、ゲル状の樹
脂にヘテロポリ酸を配合した組成物から成形された膜
を、エレクトロクロミック素子に用いることが提案され
ている。この場合には、電解液の漏洩という問題は解消
されたものの、ヘテロポリ酸は固体粉末であることか
ら、このものの樹脂中への分散が容易でないという難点
がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な従来の問題点を解消するため、鋭意研究を重ね、この
研究過程において、塗布法を用いた膜に注目した。すな
わち、近年、作業が簡単であって、しかもコストの低い
塗布法による膜の作製が望まれており、塗布法を用いた
膜に関する研究も行なわれるようになっている。この塗
布法を用いた膜に関しては、上記アモルファス酸化タン
グステンと同じ系の物質であるタングステン酸(H2
4 )が、ゲル状態を取ることができ、しかもゲル化後
は、アモルファス酸化タングステンと同様にフォトクロ
ミズムやエレクトロクロミズムを示し、デバイスへの応
用も期待できることが知られている。
【0005】すなわち、タングステン酸の場合、ゾル−
ゲル法による膜の作製が考えられ、この方法によれば、
(1)ゲル化過程における環境を変化させることによ
り、容易にゲル化後の生成物の性質を操作することが可
能であり、(2)膜の作製を安価、容易に行なうことが
でき、大面積の膜の作製も可能であり、(3)試料の作
製は水溶液の状態で行なうため、複合体の作製が容易
で、均一にすることが可能であり、(4)比較的低温に
おける合成が可能であることから、有機・無機物質のハ
イブリッド化が可能であるなど、様々な利点があること
が判った。そこで本発明者らは、ゾル−ゲル法によるタ
ングステン酸膜の作製を行なったが、タングステン酸水
溶液を単に塗布したのでは、膜厚が厚いと乾燥時に収縮
による亀裂が入り、大面積の膜の製作が困難であった。
また、膜質がもろいという問題があった。このため、本
発明者らは、さらに研究を進めた結果、ゾル−ゲル法の
利点を生かし、バインダーとして水溶性高分子物質を配
合することにより、従来の問題を解消しうることと、上
記タングステン酸の他にモリブデンやバナジウムなどの
遷移金属の酸化物を用いても同様にゲル複合膜が得られ
ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0006】すなわち本発明は第1に、遷移金属酸化物
と水溶性高分子物質との混合物からなるゲル複合膜を提
供するものである。さらに本発明は第2に、遷移金属酸
化物の水溶液に水溶性高分子物質を添加混合して得た混
合水溶液を、製膜し、乾燥してゲル化させることを特徴
とする上記本発明の第1のゲル複合膜の製造法を提供す
るものである。
【0007】本発明の(第1の)遷移金属酸化物含有ゲ
ル複合膜は、上記の如く、遷移金属酸化物と水溶性高分
子物質との混合物からなるものである。ここで遷移金属
酸化物としては、例えばWO3 ,MoO3 ,V2
5 や、Nb2 5 ,TiO2 ,RbO2 ,IrO3 ,M
nO2 ,CoO3 ,FeO3 ,Zn(WO4 2 が挙げ
られ、特にWO3 ,MoO3 ,V2 5 が好ましい。ま
た水溶性高分子物質としては、例えばポリエチレングリ
コール,ポリビニルアルコール,ポリアクリルアミド,
ポリ酢酸ビニル,ヒドロキシエチルメタクリレートなど
が挙げられ、特にポリエチレングリコール,ポリビニル
アルコールが好ましい。とりわけフォトクロミズムの著
しい増感を有するポリエチレングリコールがより好まし
い。なお、ポリエチレングリコールとしては、分子量が
5,000〜100,000 程度のものが好ましい。また、本発明
の(第1の)遷移金属酸化物含有ゲル複合膜の厚さは通
常、0.2〜 500μm、好ましくは0.5 〜50μmである。
【0008】このような本発明の(第1の)遷移金属酸
化物含有ゲル複合膜は、アモルファスの酸化タングステ
ン(WO3 )と全く同じフォトクロミズムを示す。ま
た、加熱によって消色することもアモルファスの酸化タ
ングステン(WO3 )と同様である。このような本発明
の(第1の)遷移金属酸化物含有ゲル複合膜は、例えば
以下に示す本発明の(第2の)方法により効率良く製造
することができる。すなわち、ゾル−ゲル法によるもの
であって、遷移金属酸化物の水溶液に水溶性高分子物質
を添加混合して得た混合水溶液を、製膜し、乾燥してゲ
ル化させる方法である。ここで遷移金属酸化物の水溶液
としては、例えばタングステン酸ナトリウムなどの遷移
金属酸化物の塩の水溶液をイオン交換(Na+ →H+
したものを用いることができる。この遷移金属酸化物の
水溶液の濃度は0.3〜2.0モル/リットルが好まし
く、特に0.5〜1.7モル/リットルであることが好
ましい。
【0009】本発明の方法では、まず上記遷移金属酸化
物の水溶液に上記水溶性高分子物質を添加混合して、混
合水溶液を調製する。この場合の両者の混合割合は、遷
移金属酸化物の水溶液100重量部に対し、水溶性高分
子物質0.5〜100重量部、好ましくは、5〜50重
量部である。水溶性高分子物質の添加量が増大するほ
ど、短時間で着色し、かつ、消色するが、あまりに水溶
性高分子物質の添加量が多すぎると、膜が不均質となる
ため最大100重量部程度とする。
【0010】なお、遷移金属酸化物の水溶液と水溶性高
分子物質との混合方法としては、特に限定はなく、通常
行なわれる方法でよく、例えば攪拌機などを用いて、1
0〜20分間程度行なえばよい。このように遷移金属酸
化物の水溶液に、水溶性高分子物質を添加することによ
り、乾燥時における収縮を抑制する(バインダーとして
機能する)とともに、遷移金属酸化物の水溶液を単独で
用いた場合に比し、フォトクロミズムを著しく増感させ
ることができる。
【0011】このようにして調製された混合水溶液を、
製膜し、乾燥してゲル化させることにより、目的とする
遷移金属酸化物含有ゲル複合膜を製造することができ
る。より具体的には、例えば上記の如くして調製された
混合水溶液を、ガラス板等の適当な基板上に塗布,印刷
等の手段により製膜し、次いで常温で乾燥するか、或い
は熱風乾燥してゲル化させることにより、目的とする遷
移金属酸化物含有ゲル複合膜を、前記基板上に作製する
ことができる。この場合、塗膜の厚さは0.2〜500
μm、好ましくは0.5〜50μmである。なお、ここ
で基板とは、遷移金属酸化物含有ゲル複合膜をその上に
生ぜしめるために便宜上用いたものであり、本来はそれ
自身は不可欠の要素ではない。例えばエレクトロクロミ
ック素子として利用する場合には、透明電極がこの基板
に相当し、この透明電極上に遷移金属酸化物含有ゲル複
合膜が形成される。すなわち、該複合膜の利用態様に応
じて異なるものである。
【0012】このようにして得られる遷移金属酸化物含
有ゲル複合膜は、フォトクロミズムやエレクトロクロミ
ズムを示し、エレクトロクロミック素子やフォトクロミ
ック素子などとして利用することができる。
【0013】例えば、ガラス板上に、遷移金属酸化物の
水溶液と水溶性高分子物質との混合水溶液を、塗布し、
乾燥してゲル化させることにより、フォトクロミック素
子とすることができる。このようにして得られるフォト
クロミック素子は、適当な波長を有する紫外線を照射す
ることにより、速やかに発色(着色)し、暗室に1〜1
00時間程度放置すると消色し、ほぼ完全に透明とな
る。
【0014】
【実施例】次に本発明を実施例により詳しく説明する。 実施例1(フォトクロミズムの発現) (1)タングステン酸ナトリウム水溶液を、イオン交換
樹脂を通してイオン交換(Na+ →H+ )することによ
り、タングステン酸水溶液を調製した。このタングステ
ン酸水溶液を6つに分割し、各々にポリエチレングリコ
ール(PEG)(分子量20,000)の量を変えて加え、6
種の濃度(0重量%、2.5重量%、4.8重量%、
7.1重量%、9.2重量%及び11.3重量%)の混
合水溶液を調製した。この6種の混合水溶液のそれぞれ
を、40cm×20cmのガラス板6枚の上に、それぞ
れ厚さ20〜30μmに塗布し、常温乾燥させ、6種の
複合膜試料を作製した。これらの試料では、PEGがバ
インダーとしての役割を果たし、収縮などによるひび割
れは起きず、大面積の膜を作製することが出来た。次い
で、各複合膜試料に、20cm離れた距離より、15w
の紫外線ランプを用いて、弱い紫外線(波長=250n
m程度)を照射し、その後の色の経時変化をテレビカメ
ラ(CCDカメラ)で撮影し、ビデオテープに録画する
ことにより、各複合膜試料におけるフォトクロミズムの
示し方の違いを観察した。
【0015】各複合膜試料ともフォトクロミズムを示す
ことが確認できた。なお、紫外線照射直後は、各複合膜
試料は薄い黄緑色を示したが、紫外線の照射時間の経過
とともに、紺色への変化が認められた。PEGを添加し
た試料において色の変化が著しく、また、着色速度は、
PEGの添加量が10重量%程度のものが最も大きく、
PEG添加量が0重量%のもの(すなわち、タングステ
ン酸のみのもの)は、フォトクロミズムを示すまでに
(すなわち、着色するまでに)長時間を要した。また、
PEGの添加量の多い程、紫外線に対し、著しく増感し
ていることが判った。図1は、各複合膜試料についての
紫外線照射後の発色の経時変化を示す説明図であり、図
中においては明度で示した。なお、図中における時間
は、紫外線照射時間を示しており、図中における数値
は、複合膜試料中のPEGの濃度(重量%)を示してい
る。以上のように、僅かな量のPEGを添加することに
より、フォトクロミズムの著しい増感が観察された。こ
れは、着色に要する活性化エネルギーが、PEGを添加
することにより、低くなったためであると考えられる。
【0016】(2)上記(1)のように紫外線を照射し
た後、各複合膜試料を常温で暗室に放置し、消色の現象
をテレビカメラで撮影し、ビデオテープに録画すること
により、評価を行なった。その結果、いずれの複合膜試
料についても消色が認められ、ほぼ透明となった。ま
た、いずれの複合膜試料も、繰り返しフォトクロミズム
を示した。さらに、複合膜の消色の速度は温度に依存
し、温度が高い方がより速いことも判った。図2は、複
合膜試料における繰り返し発色と消色(フォトクロミズ
ム)の模様を示す説明図である。すなわち、複合膜試料
の紫外線照射前後の変化を示す説明図である。図中、
(a)は紫外線照射前の模様、(b)は3分間紫外線を
照射してから6分間経過後の模様、(c)は紫外線照射
後72時間、室温下において暗室に放置しておいた際の
模様、(d)は紫外線を一旦照射した後、再び太陽光を
3分間照射した後の模様をそれぞれ示すものであり、図
2と同様に明度で示した。なお、図中における数値は、
複合膜試料中のPEGの添加量(重量%)を示してい
る。
【0017】(3)また、乾燥前の上記混合水溶液につ
いて、上記(1)と同様にして紫外線を照射してフォト
クロミズムの示し方の違いを観察したが、上記(1)と
同様の結果が得られた。同じく、乾燥前の上記混合水溶
液についても上記(2)と同様の結果が得られた。
【0018】(4)さらに、複合膜試料について、サー
モクロミズムの影響についても検討した。すなわち、色
の変化していない(クロミズムを示していない)複合膜
試料を、80℃前後で1時間放置したが、温度による色
の変化は観察されなかった。したがって、この複合膜は
サーモクロミズムは示さないものと考えられる。
【0019】
【発明の作用・効果】本発明の遷移金属酸化物含有ゲル
複合膜は、フォトクロミズム及びエレクトロクロミズム
を有しており、遷移金属酸化物のみの場合よりも、はる
かに応答が速く、しかも水溶性高分子物質の添加量が増
大する程、短時間で着色し、かつ、消色する。これは水
溶性高分子物質、特にポリエチレングリコールが、遷移
金属酸化物の着色に要する活性化エネルギーを低下させ
るためと考えられる。また、水溶性高分子物質が遷移金
属酸化物のバインダーとなっているために、厚く塗布し
ても、乾燥させた後の膜のクラック発生の心配がなく、
大面積の表示面の作製が可能である。さらに、フォトク
ロミズムについては、ゲル複合膜からなる素子の温度が
高い方が、着色・消色の速度が大きい。
【0020】また、本発明の遷移金属酸化物含有ゲル複
合膜は、複合膜という形態を採っているため、素子から
の液漏れという問題がない。しかも本発明の遷移金属酸
化物含有ゲル複合膜は、紫外線による劣化という問題が
なく、優れた耐久性,安定性を有している。さらに、遷
移金属酸化物含有ゲル複合膜の作製は水溶液の状態で行
ない、これを塗布すればよいため、複合膜の作製が容易
であり、均一にすることができるばかりか、安価で行な
うことができる。また、比較的低温における合成が可能
であることから、有機・無機物質のハイブリッド化が可
能である。このように本発明のゾル−ゲル法によるゲル
複合膜の作製には様々な利点がある。従って、本発明の
遷移金属酸化物含有ゲル複合膜は、表示材料,調光(遮
光)ガラス,防眩ガラス,光制御素子等の素材として、
産業上極めて有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、実施例1における各複合膜試料についての
紫外線照射後の発色の経時変化を示す説明図である。
【図2】は、実施例2における複合膜試料についての繰
り返し発色と消色(フォトクロミズム)の模様を示す説
明図である。すなわち、実施例2における複合膜試料の
紫外線照射前後の変化を示す説明図である。図中、
(a)は紫外線照射前の模様、(b)は3分間紫外線を
照射してから6分間経過後の模様、(c)は紫外線照射
後72時間、室温下において暗室に放置しておいた際の
模様、(d)は紫外線を一旦照射した後、再び太陽光を
3分間照射した後の模様をそれぞれ示すものである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 遷移金属酸化物と水溶性高分子物質との
    混合物からなるゲル複合膜。
  2. 【請求項2】 遷移金属酸化物の水溶液に水溶性高分子
    物質を添加混合して得た混合水溶液を、製膜し、乾燥し
    てゲル化させることを特徴とする請求項1記載のゲル複
    合膜の製造法。
  3. 【請求項3】 水溶性高分子物質が、ポリエチレングリ
    コールである請求項1記載のゲル複合膜。
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