JPH06240411A - 強度、靱性および耐食性に優れた2相ステンレス鋼、および、2相ステンレス鋼材の製造方法 - Google Patents

強度、靱性および耐食性に優れた2相ステンレス鋼、および、2相ステンレス鋼材の製造方法

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JPH06240411A
JPH06240411A JP5045788A JP4578893A JPH06240411A JP H06240411 A JPH06240411 A JP H06240411A JP 5045788 A JP5045788 A JP 5045788A JP 4578893 A JP4578893 A JP 4578893A JP H06240411 A JPH06240411 A JP H06240411A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐力、靭性、および、塩化物を含む環境下に
おける耐応力腐食割れ性が優れており、しかも、SUS316
鋼と同程度の耐孔食性を有する2相ステンレス鋼を製造
する。 【構成】 2相ステンレス鋼の化学成分組成は、C:0.05
% 以下、Si:1.5% 以下、Mn:2.0% 以下、Ni:3.0〜5.0%、
Cr: 21.0〜25.0% 、N:0.25% 以下、残り:Fe および不可
避不純物からなっており、αf が0.40〜0.60であり、そ
して、20×Cr(%)+11×Mn(%) -Ni(%)+133×N(%)-38 ≧40
0 、23×Cr(%)/(3×αf +20)≧23.5、および、20×Cr
(%)/(3×αf +20)- 16×N(%)/(αf -1) ≧23.5である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、化学プラント、ケミ
カルタンカーおよび各種タンク等の材料として好適な、
強度、靭性および耐食性に優れたオーステナイト・フェ
ライト系2相ステンレス鋼および前記2相ステンレス鋼
材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】化学プラント、ケミカルタンカーおよび
各種タンク等の材料として、従来、18Cr-8Ni系のSUS304
鋼、16Cr-11Ni-2Mo 系のSUS316鋼等のようなオーステナ
イト系ステンレス鋼が広く使用されている。しかしなが
ら、SUS304鋼およびSUS316鋼には、これを構造用材料と
して使用した場合に、その耐力が低く(0.2%耐力で約25
0MPa)、且つ、塩化物を含む環境下での耐応力腐食割れ
性に劣る問題がある。
【0003】オーステナイト系ステンレス鋼を高強度化
させる手段として、窒素含有量の増加が有効であり、こ
れによって、0.2%耐力を約400MPaまで高める技術がほぼ
確立されている。しかしながら、その耐応力腐食割れ性
を向上させるためには、ニッケル含有量の増加が必要で
あり、そのために、製造コストが上昇する問題がある。
【0004】上述した問題を解決し、強度および通常の
耐食性はSUS316鋼と同程度であってしかも耐応力腐食割
れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼として、近年、
18Cr-2Mo系のSUS444鋼が使用されている。しかしなが
ら、SUS444鋼材には、それが厚肉の場合に靭性が劣るた
め、大型容器用の材料としては使用することができない
問題がある。
【0005】一方、強度、靭性および耐応力腐食割れ性
が何れも優れた鋼として、オーステナイト・フェライト
系2相ステンレス鋼が注目されており、例えば、SUS329
J3L鋼およびSUS329J4L 鋼が知られている。しかしなが
ら、SUS329J3L 鋼および SUS329J4L鋼は、耐食性の向上
のために多量のモリブデンおよびニッケルを含有してい
る。その結果、上記鋼には、製造コストの上昇により、
汎用材料としては高価になる問題がある。
【0006】そこで、強度、靭性および耐応力腐食割れ
性が何れも優れ且つ安価な2相ステンレス鋼の開発が進
められており、例えば、特開平1-165750号公報、特開平
1-201446号公報および特公平4-42464 号公報等には、モ
リブデンおよびニッケルの含有量が少ない鋼(以下、先
行技術1という)が開示されている。
【0007】一方、塩化物を含む環境下における耐食性
として重要な耐孔食性の向上のためには、ステンレス鋼
中のクロム、モリブデンおよび窒素の含有量を増加させ
ることが有効であり、例えば、特開平1-165750号公報お
よび特開平3-82740 号公報には、2相ステンレス鋼の耐
孔食性の指標として、オーステナイト系ステンレス鋼等
の単相鋼と同様に、PI=Cr(%) +3 ×Mo(%) +16×N(%)
からなる式を使用して合金含有量を定める方法(以下、
先行技術2という)が開示されている。
【0008】ステンレス鋼の延性、靭性および耐食性の
確保のために、通常、その熱間加工後に固溶化熱処理を
施すことが行われているが、オーステナイトステンレス
鋼において、このような固溶化熱処理を省略し、製造コ
ストの低減を図る熱処理技術が、例えば、特公昭56-462
87号公報、特公平3-65408 号公報等に開示されている。
また、特公平3-66368 号公報には、約1250℃の温度に加
熱した後、熱間加工を施すことにより、固溶化熱処理を
省略する技術が開示されており、2相ステンレス鋼にも
適用可能である旨が述べられている(以下、先行技術3
という)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述した先行技術1に
は、次のような問題がある。即ち、例えば特公昭57-962
3 号公報等に開示されているように、2相ステンレス鋼
の靭性は、フェライト相の体積率(αf )の増加と共に
劣化する。従って、フェライト相の体積率(αf) は、
通常約0.5 に設計されている。しかしながら、ニッケル
含有量が極端に少ない2相ステンレス鋼の場合には、フ
ェライト相の体積率(αf ) が0.5 程度であっても、そ
の靭性が劣化する。
【0010】先行技術2には、次のような問題がある。
即ち、2相ステンレス鋼においては、フェライト相およ
びオーステナイト相の各成分含有量が異なるために、先
行技術2のように耐孔食性の指標として平均組成を使用
したPIでは、耐孔食性を過大評価する場合が生ずる。ま
た、鋼中に相当量のクロム、モリブデンおよび窒素を含
有していても、ニッケル含有量が極端に少ない場合に
は、耐孔食性が劣化する。
【0011】先行技術3には次のような問題がある。即
ち、2相ステンレス鋼においては、熱間加工時の加熱温
度が高いと、フェライト相の体積率(αf )が上昇す
る。従って、先行技術3のように、約1250℃の温度によ
って熱間加工を施すと、鋼の組成によっては、フェライ
ト相の体積率(αf )を0.5 程度に適正化するために、
固溶化熱処理が必要となる。
【0012】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決し、高N 含有オーステナイト系ステンレス鋼より
も優れた0.2%耐力を有し、そして、優れた靭性、およ
び、塩化物を含む環境下における耐応力腐食割れ性を有
し、しかも、SUS316鋼と同程度の耐孔食性を有する2相
ステンレス鋼、および、2相ステンレス鋼材の製造方法
を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】この発明の2相ステンレ
ス鋼は、 炭素(C) : 0.05 wt.%以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、フェライト相
の体積率(αf )が0.40〜0.60の範囲内であり、そし
て、 20×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 133×N(%)−38≧400 ───── (1) 23×Cr(%) /(3×αf + 20)≧23.5 ────────────── (2) 20×Cr(%) /(3×αf + 20)− 16 ×N(%)/ (αf −1) ≧23.5── (3) からなることに特徴を有するものである。
【0014】また、この発明の2相ステンレス鋼材の製
造方法は、 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、そして、下記
(1) 式、 20×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 133×N(%)−38≧400 ───── (1) を満足する化学成分組成を有する鋼塊または鋼片を調製
し、前記鋼塊または鋼片を熱間加工して鋼材を調製し、
次いで、前記鋼材に対し、900 〜1150℃の範囲内の温度
による加熱と、500 〜850 ℃の範囲内の温度域における
1℃/sec以上の速度による冷却とからなる固溶化熱処理
を施すか、または、前記鋼塊または鋼片に対し、下記
(4) 式、 T≦ 71 ×Ni(%) +6×Mn(%) −36×Cr(%) −42×Si(%) +1037×C(%) +1113×N(%)+1608 ─────────────────── (4) を満足する温度域T( ℃) において加熱し、そして、90
0 ℃以上の温度で仕上げることからなる熱間加工を施
し、次いで、500 〜850 ℃の範囲内の温度域において1
℃/sec以上の速度により冷却し、かくして、フェライト
相の体積率(αf )が0.40〜0.60の範囲内であり、そし
て、下記(2) および(3) 式 23×Cr(%) /(3×αf + 20)≧23.5 ────────────── (2) 20×Cr(%) /(3×αf + 20)− 16 ×N(%)/ (αf −1) ≧23.5── (3) を満足する化学成分組成を有する鋼材を製造することに
特徴を有するものである。
【0015】
【作用】この発明の2相ステンレス鋼の化学成分組成お
よびフェライト相の体積率( αf ) を上述した範囲内に
限定した理由について、以下に述べる。 (1) 炭素(C) :炭素は、オーステナイト生成元素であ
る。しかしながら、炭素含有量が0.05wt.%を超えて多く
なると、鋼中に炭化物が生成して耐粒界腐食性が劣化す
る。従って、炭素含有量は0.05wt.%以下に限定すべきで
ある。
【0016】(2) シリコン(Si):シリコンは、脱酸材と
して有用な元素である。しかしながら、シリコン含有量
が 1.5wt.%を超えて多くなると、鋼中に金属間化合物が
生成して熱間加工性が劣化する。従って、シリコン含有
量は1.5wt.% 以下に限定すべきである。
【0017】(3) マンガン(Mn):マンガンは、オーステ
ナイト生成元素であり且つ脱酸作用を有している。しか
しながら、マンガン含有量が2.0wt.%を超えて多くなる
と、塩化物を含有する環境下での耐孔食性が劣化する。
従って、マンガン含有量は2.0wt.%以下に限定すべきで
ある。
【0018】(4) ニッケル(Ni):ニッケルは、強力なオ
ーステナイト生成元素であり、そして、後述するフェラ
イト相の体積率(αf )を得るための必須元素である。
本発明者等は、ニッケル含有量が鋼の延性、靭性および
耐孔食性に及ぼす影響について研究を行った結果、ニッ
ケル含有量が3.0wt.%未満では、フェライト相の体積率
(αf )を後述する適正値に調整しても、延性、靭性お
よび耐孔食性が著しく劣化することがわかった。一方、
ニッケル含有量が5.0wt.%を超えると、コストが上昇す
るばかりでなく、フェライト相の体積率(αf )を適正
値に調整するために、オーステナイト生成元素である窒
素の含有量を低減することが必要になる結果、耐孔食性
の観点から不利になる場合が生ずる。従って、ニッケル
含有量は3.0〜5.0wt.%の範囲内に限定すべきである。
【0019】(5) クロム(Cr):クロムは、強力なフェラ
イト生成元素であり、そして、鋼に耐孔食性を付与する
重要な元素である。しかしながら、クロム含有量が21.0
wt.%未満では、マルテンサイトを生成させずにフェライ
ト相の体積率(αf )を後述する適性値に調整すること
ができない。一方、クロム含有量が25.0wt.%を超える
と、靭性が低下し、且つ、σ相が析出するために、耐食
性および熱間加工性が劣化する。従って、クロム含有量
は21.0〜25.0wt.%の範囲内に限定すべきである。
【0020】(6) 窒素(N):窒素は、強力なオーステナイ
ト生成元素であり、そして、鋼に耐孔食性を付与する有
効な元素である。しかしながら、窒素含有量が0.25wt.%
を超えると、熱間加工時における変形抵抗が増加するた
めに、熱間加工時の鋼材に割れ等が発生する。従って、
窒素含有量は0.25wt.%以下に限定すべきである。
【0021】(7) フェライト相の体積率(αf ):2相
ステンレス鋼において、フェライト相の体積率(αf
は、鋼の諸特性に対し大きな影響を及ぼす。即ち、本発
明鋼において、フェライト相の体積率(αf )が0.40未
満では、熱間加工性が著しく劣化する。一方、αf が0.
60を超えると、鋼材の延性および靭性が低下する。従っ
て、フェライト相の体積率(αf )は、0.40〜0.60の範
囲内に限定すべきである。
【0022】本発明者等は、モリブデンを含有しない2
相ステンレス鋼において、その強度に対する成分の影響
について詳細に検討した。その結果、高窒素含有量のオ
ーステナイト系ステンレス鋼が有する400MPaよりも高い
0.2%耐力(σ0.2 )を、2相ステンレス鋼に付与するた
めには、クロム、マンガン、ニッケルおよび窒素の各含
有量が、下記(1) 式を満足する必要のあることがわかっ
た。従って、この発明においては、鋼中に、クロム、マ
ンガン、ニッケルおよび窒素が、前述した範囲に加え、
下記(1) 式を満足するように含有されていることを必要
とする。 σ0.2 = 20 ×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 133×N(%)−38≧400 ──(1)
【0023】一方、塩化物を含む環境下での耐孔食性に
ついて検討を重ねた結果、2相ステンレス鋼において
は、フェライト相およびオーステナイト相の各成分含有
量が相違するために、耐孔食性もフェライト相とオース
テナイト相とでは異なり、孔食は、耐孔食性が劣ってい
る相において初期に発生することがわかった。
【0024】モリブデンを含有しない2相ステンレス鋼
において、そのフェライト相における耐孔食性の指数
(αP1)およびオーステナイト相における耐孔食性の指
数(γP1)は、クロムおよび窒素の各含有量およびフェ
ライト相の体積率(αf )によって変化する。従って、
SUS316鋼と同等の耐孔食性を、2相ステンレス鋼に付与
するためには、クロムおよび窒素の各含有量およびフェ
ライト相の体積率(αf)が、下記(2) 式および(3) 式
を満足する必要のあることがわかった。
【0025】従って、この発明においては、下記(2) 式
に示すフェライト相における耐孔食性の指数(αP1)が
23.5以上になるように、クロム含有量およびフェライト
相の体積率(αf )を定め、そして、下記(3) 式に示す
オーステナイト相における耐孔食性の指数(γP1)が2
3.5以上になるように、クロム含有量、窒素含有量およ
びフェライト相の体積率(αf )を定めることが必要で
ある。 αP1=23×Cr(%) /(3×αf + 20)≧23.5 ──────────── (2) γP1=20×Cr(%) /(3×αf + 20)− 16 ×N(%)/ (αf −1) ≧23.5─(3)
【0026】次に、この発明の2相ステンレス鋼材の製
造方法について述べる。この発明の第1実施態様の方法
においては、前述した範囲内の量の、炭素、シリコン、
マンガン、ニッケル、クロムおよび窒素を含有し、そし
て、前記(1) 式、即ち、20×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni
(%)+ 133×N(%)−38≧400 を満足する化学成分組成を
有する鋼塊または鋼片を調製し、前記鋼塊または鋼片を
熱間加工して鋼材を調製し、次いで、前記鋼材に対し、
900 〜1150℃の範囲内の温度による加熱と、500 〜850
℃の範囲内の温度域における1℃/sec以上の速度による
冷却とからなる固溶化熱処理を施すことを特徴としてい
る。
【0027】上述した固溶化熱処理において、その加熱
温度が 900℃未満では炭窒化物等が固溶せず、従って、
耐食性が劣化する上、熱間加工時に生じた歪みが十分に
緩和されないので、延性および靭性が劣化する。一方、
加熱温度が1150℃を超えると、結晶粒が粗大化する結
果、強度、延性および靭性が劣化する。従って、鋼材に
対する加熱温度は、900 〜1150℃の範囲内に限定すべき
である。
【0028】クロムの炭窒化物は、一般に 500〜850 ℃
の範囲内の温度域において析出する。しかるに、固溶化
熱処理において、上述した条件で加熱された鋼材に対す
る、500 〜850 ℃の範囲内の温度域での冷却を、1℃/s
ec未満の速度で行ったのでは、クロムの炭窒化物の析出
に伴う粒界腐食が著しくなる。従って、固溶化熱処理に
おける、500 〜850 ℃の範囲内の温度域での冷却速度は
1℃/sec以上に限定すべきである。
【0029】この発明の第2実施態様の方法において
は、前述した範囲内の量の、炭素、シリコン、マンガ
ン、ニッケル、クロムおよび窒素を含有し、そして、前
記(1) 式、即ち、20×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 1
33×N(%)−38≧400 を満足する化学成分組成を有する鋼
塊または鋼片を調製し、前記鋼塊または鋼片に対し、前
記(4) 式、即ち、 T≦ 71 ×Ni(%) +6×Mn(%) −36×Cr(%) −42×Si(%) +1037×C(%) +1113×N(%)+1608 を満足する温度域T( ℃) において加熱し、そして、90
0 ℃以上の温度で仕上げることからなる熱間加工を施
し、次いで、500 〜850 ℃の範囲内の温度域において1
℃/sec以上の速度により冷却することを特徴としてい
る。
【0030】上記第2実施態様の方法によれば、熱間加
工された鋼材に対し、固溶化熱処理を施す必要なく、強
度、靭性および耐食性に優れた2相ステンレス鋼材が得
られるので、その製造コストを一段と低減することがで
きる。
【0031】本発明者等は、熱間加工された鋼材に対
し、固溶化熱処理を施さなくても、強度、靭性および耐
食性に優れた2相ステンレス鋼材を製造し得る条件に関
して検討を重ねた。その結果、次のことがわかった。即
ち、本発明鋼においては、鋼塊または鋼片に対する、熱
間加工のための加熱温度が1150℃を超えると、フェライ
ト相の体積率(αf )が上昇して、熱間加工性の観点か
ら有利になる。上記温度によって加熱された鋼塊または
鋼片のフェライト相の体積率(αf )は、熱間加工され
た鋼材のフェライト相の体積率(αf )とほぼ同じであ
る。従って、2相ステンレス鋼材の延性および靭性を確
保するためには、加熱された鋼塊または鋼片のフェライ
ト相の体積率(αf )を、前述した0.6 以下にしなけれ
ばならない。
【0032】そこで、フェライト相の体積率(αf )と
加熱温度と化学成分組成との関係について、詳細に検討
した結果、フェライト相の体積率(αf )を0.6 以下に
するための、鋼塊または鋼片に対する熱間加工のための
加熱温度T( ℃) は、下記(4) 式を満足する必要のある
ことがわかった。従って、この発明においては、鋼塊ま
たは鋼片に対し、下記(4) 式を満足する温度T( ℃) に
よって加熱することが必要である。 T≦ 71 ×Ni(%) +6×Mn(%) −36×Cr(%) −42×Si(%) +1037×C(%) +1113×N(%)+1608──────────(4)
【0033】熱間加工の仕上げ温度は、900 ℃以上とす
べきである。仕上げ温度が 900℃未満では、炭窒化物等
が析出して耐食性が劣化する上、熱間加工時に生じた歪
みが十分に緩和されないので、延性および靭性が劣化す
る。
【0034】上述した条件で熱間加工された鋼材に対す
る冷却は、500 〜850 ℃の範囲内の温度域において、1
℃/sec以上の速度で行うことが必要である。上記冷却速
度が1℃/sec未満では、クロムの炭窒化物の析出に伴う
粒界腐食が著しくなる。
【0035】
【実施例】次に、この発明を、実施例により比較例と対
比しながら説明する。 実施例1 表1に示した、この発明の範囲内の化学成分組成および
フェライト相体積率(αf )を有する供試鋼a〜iの、
重量50Kgの鋼塊、および、少なくとも1つが本発明の範
囲外の化学成分組成または本発明の範囲外のフェライト
相体積率(αf)を有する、比較用供試鋼a' 〜g'
の、重量50Kgの鋼塊を調製した。
【0036】次いで、供試鋼a〜iおよび比較用供試鋼
a' 〜g' の鋼塊を、1150℃の温度に加熱した後、900
℃の仕上げ温度で熱間圧延し、次いで、500 〜850 ℃の
温度域における冷却速度が 0.7℃/ sec の条件で空冷
し、15mmの厚さの鋼板を調製した。このようにして調製
された鋼板に対し、1050℃の温度による加熱と、500 〜
850 ℃の温度域における30℃/ sec の速度による冷却と
からなる固溶化熱処理を施し、表2に示した、この発明
の範囲内の、フェライト相の体積率(αf )、(1) 式に
よって求められる0.2%耐力 (σ0.2)、(2) 式によって求
められるフェライト相の耐孔食性指数(αP1)および
(3)式によって求められるオーステナイト相の耐孔食性
指数(γP1)を有する本発明供試体No.1〜9 および比較
用供試体No.1〜7を調製した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】上述した本発明供試体No.1〜9 および比較
用供試体No.1〜7の各々から、ミクロ組織観察用試験
片、引張り試験片、 2mmVノッチ付きシャルピー衝撃試
験片および孔食電位測定用試験片を採取し、フェライト
相の体積率(αf )、伸び、 0℃および−50℃の吸収エ
ネルギー、孔食電位および鋼板の端面割れの状態を調
べ、その結果を、表2に併せて示した。なお、フェライ
ト相の体積率(αf )は、ミクロサンプルに対し20%NaO
H 電解エッチングを施して測定した。孔食電位は、JIS
GO577 により、電流密度が 100μA/cm2 になる電位によ
って求めた。そして、鋼板の端面割れは、目視によって
その程度を判定した。
【0040】表1および表2から明らかなように、フェ
ライト相の体積率(αf )が本発明の範囲を外れて低い
比較用供試体No.1および2は、鋼板の端面割れが大であ
った。そして、フェライト相の体積率(αf )が本発明
の範囲を外れて多い比較用供試体No.6および7は、伸
び、および、 0℃,-50 ℃の吸収エネルギーが劣ってい
た。図1に、本発明供試体No.1〜9 および比較用供試体
No.1,2およびNo.6,7の、フェライト相の体積率(αf
と、伸び、 0℃,-50 ℃の吸収エネルギー、および、鋼
板の端面割れとの関係をグラフで示す。図1からも、フ
ェライト相の体積率(αf )が0.40未満の場合には、圧
延時における鋼板端面の割れは大であり、そして、フェ
ライト相の体積率(αf )が0.60を超えた場合には、鋼
板の靭性および延性が劣化することが明らかである。
【0041】表1および表2から明らかなように、ニッ
ケル含有量が本発明の範囲を外れて少ない比較用供試体
No.3および4は、そのフェライト相の耐孔食性指数(α
P1)およびオーステナイト相の耐孔食性指数(γP1)が
何れも本発明の範囲内であるにもかかわらず孔食電位が
低く耐孔食性が劣っており、更に、フェライト相の体積
率(αf )が本発明の範囲内であるにもかかわらず、 0
℃,-50 ℃の吸収エネルギーが劣っていた。図2に、本
発明供試体No.2〜4 および比較用供試体No.3,4の、ニッ
ケル含有量と、孔食電位および 0℃,-50 ℃の吸収エネ
ルギーとの関係をグラフで示す。図2からも、ニッケル
含有量が本発明の範囲を外れて少ない場合には、鋼板の
耐孔食性および靭性が劣化することが明らかである。
【0042】表1および表2から明らかなように、マン
ガン含有量が本発明の範囲を外れて多い比較用供試体N
o.5は、(2) 式によって求められたフェライト相の耐孔
食性指数(αP1)および(3) 式によって求められたオー
ステナイト相の耐孔食性指数(γP1)が何れも本発明の
範囲内であるにもかかわらず、孔食電位が低く、耐孔食
性が劣っていた。図3に、本発明供試体No.1〜4 および
比較用供試体No.5の、マンガン含有量と孔食電位との関
係をグラフで示す。図3からも、マンガン含有量が本発
明の範囲を外れて多い場合には、鋼板の耐孔食性が劣化
することが明らかである。
【0043】これに対し、表1、2および図1〜3から
明らかなように、本発明供試体No.1〜9 は、伸び、吸収
エネルギー、孔食電位および鋼板の端面割れ状態の何れ
も優れていた。
【0044】実施例2 表3に示した、この発明の範囲内の化学成分組成を有す
る、重量50Kgの供試鋼のうち、供試鋼jおよびlを使用
した。供試鋼jおよびlを、実施例1と同様に、1150℃
の温度で加熱した後、900 ℃の仕上げ温度で熱間圧延
し、次いで、500〜850 ℃の温度域における冷却速度が
0.7℃/ sec の条件で空冷し、15mmの厚さの鋼板を調製
した。
【0045】
【表3】
【0046】このようにして調製された鋼板に対し、85
0 〜1200℃の範囲内の温度による加熱と、500 〜850 ℃
の温度域における0.3 〜30℃/ sec の範囲内の速度によ
る冷却とからなる固溶化熱処理を施し、固溶化熱処理の
施された鋼板から、ミクロサンプル、引張り試験片およ
び粒界腐食割れ試験片を採取した。
【0047】そして、試験片のフェライト相体積率(α
f )、伸び、硬さ(Hv)および耐粒界腐食性(腐食速度)
を調べた。なお、耐粒界腐食性は、JIS G0573 による65
% 硝酸腐食試験(以下、「ヒューイ試験」という)によ
って行った。図4に、500 〜850 ℃の温度域における冷
却を30℃/secの速度で行った固溶化熱処理時の加熱温度
と、フェライト相の体積率(αf )、伸び、硬さ(Hv)お
よび耐粒界腐食性(腐食速度)との関係をグラフで示
す。図4において、白丸印は供試鋼jを示し、黒丸印は
供試鋼lを示す。
【0048】図4から明らかなように、固溶化熱処理時
の加熱温度が本発明の範囲外の900℃未満の場合には、
硬さ(Hv)が上昇し、延性が低下しそして腐食速度が早く
耐粒界腐食性が劣化した。一方、上記加熱温度が本発明
の範囲外の1150℃超の場合には、フェライト相の体積率
(αf )が増加し、そして、延性が低下した。特に、固
溶化熱処理時の加熱温度が1200℃の供試鋼jの場合に
は、フェライト相の体積率(αf )が本発明の範囲内の
0.60以下であるにもかかわらず、その延性が顕著に劣化
した。
【0049】図5に、供試鋼jおよびlの鋼板に対し、
1050℃の温度での固溶化熱処理時における、500 〜850
℃の温度域での冷却速度と、ヒューイ試験における腐食
速度即ち耐粒界腐食性との関係をグラフで示す。図5か
ら明らかなように、固溶化熱処理時における、500 〜85
0 ℃の温度域での冷却速度が1℃/sec未満では、その加
熱温度が1050℃の場合でも、耐粒界腐食性が著しく低下
した。
【0050】実施例3 表3に示した、この発明の範囲内の化学成分組成を有す
る供試鋼j〜w、および、SUS 304,316,444 の従来鋼の
各鋼塊(重量50Kg)を調製した。上記鋼塊に対し、表4
に示した条件で熱間圧延し、次いで、本発明の範囲内の
温度による加熱と、500 〜850 ℃の範囲内の温度域にお
いて本発明の範囲内の速度による冷却とからなる固溶化
熱処理( 以下、STと略称)を施し、かくして、フェラ
イト相の体積率(αf )、(1) 式によって求められる0.
2%耐力の指標 (σ0.2)、 (2)式によって求められるフェ
ライト相の耐孔食性指数(αP1)および (3)式によって
求められるオーステナイト相の耐孔食性指数(γP1
が、何れも本発明の範囲内である、15mmの厚さの鋼板か
らなる本発明供試体No.10 〜13を調製した。
【0051】比較のために、表4に併せて示すように、
STの加熱温度および冷却速度、フェライト相の体積率
(αf )、0.2%耐力の指標 (σ0.2)、フェライト相の耐
孔食性指数(αP1)およびオーステナイト相の耐孔食性
指数(γP1)の少なくとも1つが本発明の範囲外であ
る、15mmの厚さの鋼板からなる比較用供試体No. 8〜15
を調製した。
【0052】
【表4】
【0053】上述した本発明供試体No.10 〜13、比較用
供試体No. 8〜15、および、従来鋼(SUS 304,316,444
)の各々から、ミクロ組織観察用試験片、引張り試験
片、 2mmVノッチ付きシャルピー衝撃試験片、孔食電位
測定用試験片、粒界腐食試験片および応力腐食割れ試験
片を採取し、その0.2%耐力、引張り強さ、伸び、 0℃お
よび−50℃の吸収エネルギー、ヒューイ試験における腐
食速度、孔食電位および耐応力腐食割れ性を調べ、その
結果を表5に示した。なお、耐応力腐食割れ性の評価
は、45%MgCl2沸騰溶液中において、定荷重引張り試験を
最長 500時間実施し、 500時間経過後も破断しなかった
最高応力を許容応力(σth) とした。
【0054】
【表5】
【0055】表4および表5から明らかなように、ST
の加熱温度が本発明の範囲を外れて低い比較用供試体N
o.8は、伸びおよび吸収エネルギーが劣り、且つ、ヒュ
ーイ試験における腐食量が多く耐粒界腐食性が悪かっ
た。STの加熱温度およびフェライト相の体積率
(αf )が本発明の範囲を外れて高く且つフェライト相
の耐孔食性指数(αP1)が本発明の範囲を外れて低い比
較用供試体No.9は、伸び、吸収エネルギーおよび耐粒界
腐食性が劣っていた。
【0056】STの加熱温度が本発明の範囲を外れて高
く且つフェライト相の体積率(αf)が本発明の範囲を
外れて多い比較用供試体No.10 は、伸びおよび吸収エネ
ルギーが劣っていた。STの加熱温度が本発明の範囲を
外れて高く且つ冷却速度が本発明の範囲を外れて遅い比
較用供試体No.11 は、伸びおよび吸収エネルギーが劣っ
ており且つヒューイ試験における腐食量が多く耐粒界腐
食性が悪かった。
【0057】0.2%耐力、フェライト相の耐孔食性指数
(αP1)およびオーステナイト相の耐孔食性指数
(γP1)が本発明の範囲を外れて低い比較用供試体No.1
2 および13は、0.2%耐力が劣り、且つ、孔食電位が低く
耐孔食性が劣っていた。オーステナイト相の耐孔食性指
数(γP1)が本発明の範囲を外れて低い比較用供試体N
o.14 およびオーステナイト相の耐孔食性指数(γP1
が本発明の範囲を外れて低い比較用供試体No.15 は、孔
食電位が低く耐孔食性が劣っていた。
【0058】従来鋼のSUS 304 は、0.2%耐力 (σ0.2)、
耐孔食性および耐応力腐食割れ性(σth) が劣ってい
た。従来鋼のSUS 316 は、0.2%耐力、引張り強さおよび
耐応力腐食割れ性(σth) が劣っていた。そして、従来
鋼のSUS 444 は、0.2%耐力、-50 ℃の吸収エネルギーお
よび耐孔食性が劣っていた。
【0059】これに対し、本発明供試体No.10 〜13は、
0.2%耐力、引張り強さ、伸び、吸収ネルギー、耐粒界腐
食性、耐孔食性および耐応力腐食割れ性(σth) のすべ
てにおいて優れていた。
【0060】実施例4 表3に示した、この発明の範囲内の化学成分組成を有す
る供試鋼j〜wの鋼塊に対し、表6に示したこの発明の
範囲内の加熱温度および仕上げ温度からなる熱間圧延を
施し、次いで、500 〜850 ℃の範囲内の温度域において
本発明の範囲内の速度により冷却し、かくして、フェラ
イト相の体積率(αf )、 (1)式によって求められる0.
2%耐力の指標 (σ0.2)、 (2)式によって求められるフェ
ライト相の耐孔食性指数(αP1)および (3)式によって
求められるオーステナイト相の耐孔食性指数(γP1
が、何れも本発明の範囲内である、15mmの厚さの鋼板か
らなる本発明供試体No.14 〜17を調製した。
【0061】比較のために、表6に併せて示すように、
熱間圧延の加熱温度、仕上げ温度および冷却速度、フェ
ライト相の体積率(αf )、0.2%耐力の指標 (σ0.2)、
フェライト相の耐孔食性指数(αP1)およびオーステナ
イト相の耐孔食性指数(γP1)の少なくとも1つが本発
明の範囲外である、15mmの厚さの鋼板からなる比較用供
試体No.16 〜24を調製した。
【0062】
【表6】
【0063】上述した本発明供試体No.14 〜17および比
較用供試体No.16 〜24の各々から、上述した各種試験片
を採取し、その0.2%耐力、引張り強さ、伸び、 0℃およ
び−50℃の吸収エネルギー、ヒューイ試験における腐食
速度、孔食電位および耐応力腐食割れ性を調べ、その結
果を表7に示した。
【0064】
【表7】
【0065】表6および表7から明らかなように、熱間
圧延時の仕上げ温度が本発明の範囲を外れて低い比較用
供試体No.16 は、伸び、吸収エネルギーおよび耐粒界腐
食性が劣っていた。熱間圧延時の加熱温度およびフェラ
イト相の体積率(αf )が本発明の範囲を外れて高く且
つフェライト相の耐孔食性指数(αP1)が本発明の範囲
を外れて低い比較用供試体No.17 は、伸び、吸収エネル
ギーおよび耐孔食性が劣っていた。
【0066】熱間圧延後の冷却速度が本発明の範囲を外
れて遅い比較用供試体No.18 およびNo.19 は、ヒューイ
試験における腐食量が多く耐粒界腐食性が悪かった。熱
間圧延時の加熱温度が本発明の範囲を外れて高く且つフ
ェライト相の体積率(αf )が本発明の範囲を外れて多
い比較用供試体No.20,21は、伸びおよび吸収エネルギー
が劣っていた。
【0067】熱間圧延時の加熱温度が本発明の範囲を外
れて高く、仕上げ温度が本発明の範囲を外れて低くそし
てフェライト相の体積率(αf )が本発明の範囲を外れ
て多い比較用供試体No. 22は、伸びおよび吸収エネルギ
ーが劣っており且つヒューイ試験における腐食量が多く
耐粒界腐食性が劣っていた。そして、オーステナイト相
の耐孔食性指数(γP1)が本発明の範囲を外れて低い比
較用供試体No.23 、および、オーステナイト相の耐孔食
性指数(γP1)が本発明の範囲を外れて低い比較用供試
体No.24 は、孔食電位が低く、耐孔食性が劣っていた。
【0068】これに対し、本発明供試体No.14 〜17は、
0.2%耐力、引張り強さ、伸び、吸収ネルギー、耐粒界腐
食性、、耐孔食性および耐応力腐食割れ性(σth) のす
べてにおいて優れていた。
【0069】以上述べたように、この発明によれば、40
0MPa以上の0.2%耐力を有し、そして、優れた靭性、およ
び、塩化物を含む環境下における耐応力腐食割れ性を有
し、しかも、SUS316鋼と同程度の耐孔食性を有する、化
学プラント、ケミカルタンカーおよび各種タンク等の材
料として好適な、オーステナイト・フェライト系2相ス
テンレス鋼および2相ステンレス鋼材を経済的に製造す
ることができる、工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フェライト相の体積率(αf )と、 0℃,-50
℃の吸収エネルギー、伸び、および、鋼板の端面割れと
の関係を示すグラフである。
【図2】ニッケル含有量と、孔食電位および 0℃,-50
℃の吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。
【図3】マンガン含有量と孔食電位との関係を示すグラ
フである。
【図4】500 〜850 ℃の温度域における冷却を30℃/sec
の速度で行った固溶化熱処理時の加熱温度と、フェライ
ト相体積率(αf )、伸び、硬さ(Hv)および耐粒界腐食
性(腐食速度)との関係を示すグラフである。
【図5】500 〜850 ℃の温度域での冷却速度と、ヒュー
イ試験における腐食速度即ち耐粒界腐食性との関係を示
すグラフである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜 5.0wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、 フェライト相の体積率αf が0.40〜0.60の範囲内であ
    り、そして、 20×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 133×N(%)−38≧400 ───── (1) 23×Cr(%) /(3×αf + 20)≧23.5 ────────────── (2) 20×Cr(%) /(3×αf + 20)− 16 ×N(%)/ (αf −1) ≧23.5── (3) からなることを特徴とする、強度、靭性および耐食性に
    優れた2相ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、 そして、下記(1) 式、 20×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 133×N(%)−38≧400 ───── (1) を満足する化学成分組成を有する鋼塊または鋼片を調製
    し、 前記鋼塊または鋼片を熱間加工して鋼材を調製し、次い
    で、前記鋼材に対し、900 〜1150℃の範囲内の温度によ
    る加熱と、500 〜850 ℃の範囲内の温度域における1℃
    /sec以上の速度による冷却とからなる固溶化熱処理を施
    し、 かくして、フェライト相の体積率(αf )が0.40〜0.60
    の範囲内であり、そして、下記(2) および(3) 式、 23×Cr(%) /(3×αf + 20)≧23.5 ────────────── (2) 20×Cr(%) /(3×αf + 20)− 16 ×N(%)/ (αf −1) ≧23.5── (3) を満足する化学成分組成を有する鋼材を製造することを
    特徴とする、強度、靭性および耐食性に優れた2相ステ
    ンレス鋼材の製造方法。
  3. 【請求項3】 炭素(C) : 0.05wt.% 以下、 シリコン(Si): 1.5 wt.% 以下、 マンガン(Mn): 2.0 wt.% 以下、 ニッケル(Ni): 3.0〜5.0 wt.%、 クロム(Cr) :21.0〜25.0wt.%、 窒素(N) : 0.25wt.% 以下、および、 残り:Feおよび不可避不純物、からなり、 そして、下記(1) 式、 20×Cr(%) +11×Mn(%) − Ni(%)+ 133×N(%)−38≧400 ───── (1) を満足する化学成分組成を有する鋼塊または鋼片を調製
    し、 前記鋼塊または鋼片に対し、下記(4) 式、 T≦ 71 ×Ni(%) +6×Mn(%) −36×Cr(%) −42×Si(%) +1037×C(%) +1113×N(%)+1608 ─────────────────── (4) を満足する温度域T( ℃) において加熱し、そして、90
    0 ℃以上の温度で仕上げることからなる熱間加工を施
    し、次いで、500 〜850 ℃の範囲内の温度域において1
    ℃/sec以上の速度により冷却し、 かくして、フェライト相の体積率(αf )が0.40〜0.60
    の範囲内であり、そして、下記(2) および(3) 式 23×Cr(%) /(3×αf + 20)≧23.5 ────────────── (2) 20×Cr(%) /(3×αf + 20)− 16 ×N(%)/ (αf −1) ≧23.5── (3) を満足する化学成分組成を有する鋼材を製造することを
    特徴とする、強度、靭性および耐食性に優れた2相ステ
    ンレス鋼材の製造方法。
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