JP2672430B2 - 耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法 - Google Patents
耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法Info
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Description
れ、耐硫化物応力割れ性を有するマルテンサイト系ステ
ンレス鋼継目無鋼管の製造法に関するものである。
るガス井の開発や、2次回収のためのCO2 インジェク
ションが広く行われるようになっている。このような環
境では鋼管の腐食が激しいため、耐CO2 腐食特性に優
れたマンテンサイト系ステンレス鋼管が多く使用されて
いる。特に、低〜中CでNiを数%含有するタイプのマ
ルテンサイト系ステンレス鋼は耐食性が優れており、油
井管やラインパイプとしてCO2 だけでなく微量のH2
Sも含むような厳しい腐食環境下にて使用されることが
望まれている。
されているAISI 414,431などが良く知られ
ている。しかしながら、これらの鋼は鋳鋼として用いら
れることを前提としているために熱間加工性が著しく悪
く、また微量のH2 Sを含むCO2 腐食環境下では硫化
物応力割れを生じてしまうために、耐食性も十分である
とはいえない。また、これらの鋼の熱間加工性ならびに
耐食性を改善した鋼が特公昭59−15977号公報、
特開昭60−174859号公報などに挙げられてい
る。しかしながら、これらのマルテンサイト系ステンレ
ス鋼は耐食性を向上させるためにCならびにNの添加量
を著しく低下させているか、あるいは低C化しつつ数%
のMoを添加しているために、鋼塊を加熱した時にオー
ステナイト基地に熱間加工性を悪化させるδフェライト
相が形成されるという欠点をもつ。従って、シームレス
圧延のように苛酷な加工条件下では割れや疵を発生し、
歩留低下によるコストアップが避けられず、このような
成分系で高耐食性を有する継目無鋼管の製造はこれまで
非常に困難であった。
うな従来の問題点を解消せんとするものであって、成分
調整と組織制御を行うことにより、耐食性に優れたマル
テンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法を提供す
ることを目的とする。
結果から、耐CO2 腐食性はCを低減化し必要量のCr
を添加しておけば維持されること、耐硫化物応力割れ性
は割れ抵抗性を示す組織制御を行うことで向上すること
を知見した。また、熱間加工性は、P,Sなどを低減化
して介在物の形成を抑えることと、CおよびNの添加量
を制御してさらにNiを添加することにより、変形抵抗
の異なる異相の相分率および形状を制御するような冶金
的操作を行うことで維持されることを知見した。特に、
本発明者らはCならびにNの効果に着目し次のような知
見を得た。
2.5%Cr−1.0%Mo鋼としてCおよびN含有量
を変えた場合の耐CO2 腐食特性ならびに熱間加工時の
絞り値を示す。図1において、C.R.は40atm のC
O2 と平衡した180℃の人工海水中における年間の腐
食速度であり、C.R.<0.1mm/yであれば十分な耐
食性を有すると評価できる。また、R.A.は1250
℃に加熱した試料を900℃で歪速度3 sec-1の条件に
て単軸引張変形したときの絞り率であり、70%以上と
なれば熱間変形能が良好である。なお、CO2 腐食試験
には熱間加工後、焼入れ・焼きもどし処理を行い、降伏
強度が650MPa 程度を示すものを用いた。図1より、
耐CO2 腐食特性を満足するためにはC<0.05%に
する必要があり、また、十分な熱間加工性を有するため
には、C%+0.8N%>0.06にする必要がある
(各元素の含有量の単位はwt%)。
構成したものであって、その要旨とするところは下記の
通りである。すなわち重量%として、C<0.05%、
Si≦0.50%、Mn≦1.0%、P≦0.03%、
S≦0.01%、Cr:11〜15%、Mo:0.3〜
2.0%、Ni:1.5〜5%、Al≦0.05%、
N:0.02〜0.1%で、かつC%+0.8N%>
0.06を満足し、あるはさらにCu:0.5〜2%を
含み、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からな
る鋼を熱間加工し室温まで自然放冷した後、Ac3 変態
点+10℃〜Ac3 変態点+200℃の温度に加熱し室
温まで空冷以上の速度にて冷却し、続いて、Ac1 変態
点以下の温度にて焼きもどし処理する耐食性に優れたマ
ルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法であ
る。
ず、鋼成分の限定理由について述べる。CはCr炭化物
などを形成し耐食性を劣下させる元素であるが、典型的
なオーステナイト形成元素であり、熱間加工温度域であ
る900〜1250℃でδフェライト相の発生を抑制す
る効果があるために添加する。ただし、0.05%を越
える量を添加するとCr炭化物などの炭化物が多量に析
出してCr欠乏層を形成するために耐CO2 腐食特性が
低下し、また、粒界に炭化物が析出しやすくなるために
耐硫化物応力割れ性が著しく低下する。従ってC含有量
は0.05%未満とした。
れたもので、鋼の中に0.50%を越えて含有されると
靭性および耐硫化物応力割れ性を低下するために、0.
50%以下とした。Mnは介在物を形成し腐食環境下で
割れ抵抗性を損なう元素であるが、オーステナイト単相
化するために有用な成分であるために添加する。ただ
し、1.0%を越えて添加すると多量の介在物を形成す
るために、腐食環境下での割れ抵抗性と靭性が低下す
る。従って、Mnの含有量は1.0%以下とした。
加工性および耐硫化物応力割れ性を低下させるので0.
03%以下とした。Sは硫化物として介在物を形成し熱
間加工性を低下させるため、その上限を0.01%とし
た。Crは本発明の目的とする耐CO2 腐食性を付与
し、ステンレス鋼としての腐食性を有するためには、1
1%以上の含有が必要である。しかし、Moを含有しさ
らに15%を越えて添加するとδフェライト相が生成し
やすくなるために、その限定範囲を11〜15%とし
た。
CO2 腐食性を付与し、ステンレス鋼としての腐食性を
付与するための作用を有する。特に高温で耐孔食性を高
める。0.3%以下では顕著な効果は期待できず、2%
越えて含有するとδフェライト相が生成しやすくなるた
めに、その範囲を0.3〜2.0%とした。
させる効果がある。しかも、強力なオーステナイト形成
元素であり、高温加熱時にδフェライト相の形成を抑制
するうえ、その形状を細く短くし、熱間加工時にδフェ
ライト相内部に形成されるクラックの成長を抑える効果
があることから、熱間加工性を向上させる効果も有す
る。ただし、Ni:1.5%以下の添加ではそれらの効
果を示さず、また、5%を越えて添加するとAc1 点が
非常に低くなり調質が困難になることと、残留オーステ
ナイト相が形成されて強度・靭性を損なうために、その
限定範囲を1.5〜5%とした。
残有されたもので、0.05%を越えて添加するとAl
Nが多数形成されて著しく靭性が低下する。従って、添
加量の上限を0.05%とした。
同様に典型的なオーステナイト形成元素であり、熱間加
工温度域である900〜1250℃でδフェライト相の
形成を抑える効果がある。その効果は、前述のように
1.5%Ni−12.5%Cr鋼をベース成分とする場
合には、C%+0.8N%>0.06(C,Nはwt%)
を満たす添加量の範囲において有効である。従って、C
<0.05%の場合に熱間加工温度域にてδフェライト
相を発生させず、良好な熱間加工性を得るためにはNを
0.02%以上添加する必要がある。また、通常の溶製
工程においては0.1%以上の添加は困難であるため
に、その添加量の範囲を0.02〜0.1%とした。
形成元素であり、Ac1 変態点を低下させない効果もあ
る。しかし、単独で2.0%を越えて添加すると熱間脆
性が生じることと、Niに比べて耐食性・相の安定性を
もたらす効果が少ないために単独での添加は効果を示さ
ない。従って、Cuを添加する場合はその添加量を2.
0%以下とし、必ずNiと同時に添加する。
る。加熱温度は、Cr含有ステンレス鋼のγループ内に
おいて、炭化物が完全に固溶せず結晶粒の粗大化が生じ
ない温度を上限とし、またオーステナイト相が安定とな
る最低の温度を下限とした。すなわち、Ac3 変態点+
200℃以上の温度に加熱すると炭化物が完全に固溶す
るために、冷却時にCr炭化物などが粒界に多量に析出
し耐食性が著しく低下し、さらに結晶粒の粗大化が生じ
るために、靭性が低下する。また、Ac3 変態点+10
℃以下の低い温度に加熱した場合には、オーステナイト
相が安定化せず、安定した強度を得ることが困難であ
る。従って、加熱処理温度はAc3 変態点+10℃〜A
c3 変態点+200℃とした。
粒界に炭化物が板状に析出し、靭性が著しく低下するた
めに空冷以上の冷却速度に限定した。こうして室温まで
冷却するとマルテンサイト変態が生じて、マルテンサイ
ト単相組織となる。このマルテンサイト組織中の残留応
力を回復により消滅させ、過飽和炭素原子を炭化物とし
て析出させることによって、靭性・延性を高め、所望の
強度を得るために焼きもどし処理を施す。このとき、A
c1 変態点以上の温度に加熱すると逆変態が生じて靭性
が著しく低下するために、焼きもどし処理はAc1 変態
点以下の温度で行う。以上のような本発明法により製造
された鋼管は、耐CO2 腐食特性・耐硫化物応力割れ性
だけでなく、靭性なども優れている。
程にて鋳造した後、熱間圧延により鋼管を製造し、加熱
処理と焼きもどし処理を施したものを用いて、強度、靭
性、耐CO2 腐食性、耐硫化物応力割れ性を調査した。
そのときの熱処理温度と強度などの材質については表2
に示す。
した180℃の人工海水中での腐食速度で評価した。腐
食速度が0.1mm/年以下であれば耐食性を有すると見
なせる。耐硫化物応力割れ性は丸棒引張試験片を25℃
の5%NaCl溶液中に1気圧の99%CO2 +1%H
2 Sガスを飽和した腐食環境中で単軸引張応力を加え、
720時間で破壊が生じない最大初期応力と降伏応力の
比(Rs値)を求めた。Rs≧0.8であれば優れた特
性であるといえる。
た鋼管は良好な耐CO2 腐食性、耐硫化物応力割れ性な
らびに高靭性を示すのに対し、本発明の範囲から外れた
比較法ではいずれかの特性が劣っていることが明らかで
ある。
により、耐CO2 耐食性、耐硫化物応力腐食割れ性なら
びに熱間加工性等の諸特性の優れた靭性および耐食性に
優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管を得る
ことができる。
特性(C.R.)ならびに熱間加工時の絞り値(R.
A.)に及ぼすCとN量との関係を示す図。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、C <0.05% 、 Si≦0.50%、 Mn≦1.0%、 P ≦0.03%、 S ≦0.01%、 Cr:11〜15%、 Mo:0.3〜2.0%、 Ni:1.5〜5%、 Al≦0.05%、 N :0.02〜0.1%で、かつC%+0.8N%>
0.06 を満足する成分を含み、残部が実質的にFeおよび不可
避的不純物からなる鋼を熱間加工し室温まで自然放冷し
た後、Ac3 変態点+10℃〜Ac3 変態点+200℃
の温度に加熱し室温まで空冷以上の速度で冷却し、続い
て、Ac1 変態点以下の温度で焼きもどし処理すること
を特徴とする耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレ
ス鋼継目無鋼管の製造法。 - 【請求項2】 重量%で、C <0.05% 、 Si≦0.50%、 Mn≦1.0%、 P ≦0.03%、 S ≦0.01%、 Cr:11〜15%、 Mo:0.3〜2.0%、 Ni:1.5〜5%、 Al≦0.05%、 N :0.02〜0.1%で、かつC%+0.8N%>
0.06を満足し、 Cu:0.5〜2% を含み、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物から
なる鋼を熱間加工し室温まで自然放冷した後、Ac3 変
態点+10℃〜Ac3 変態点+200℃の温度に加熱し
室温まで空冷以上の速度で冷却し、続いて、Ac1 変態
点以下の温度で焼きもどし処理することを特徴とする耐
食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管
の製造法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4031105A JP2672430B2 (ja) | 1992-02-18 | 1992-02-18 | 耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4031105A JP2672430B2 (ja) | 1992-02-18 | 1992-02-18 | 耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05263138A JPH05263138A (ja) | 1993-10-12 |
JP2672430B2 true JP2672430B2 (ja) | 1997-11-05 |
Family
ID=12322127
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4031105A Expired - Lifetime JP2672430B2 (ja) | 1992-02-18 | 1992-02-18 | 耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2672430B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2672437B2 (ja) * | 1992-09-07 | 1997-11-05 | 新日本製鐵株式会社 | 耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法 |
JP5145793B2 (ja) * | 2007-06-29 | 2013-02-20 | Jfeスチール株式会社 | 油井管用マルテンサイト系ステンレス継目無鋼管およびその製造方法 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS59173245A (ja) * | 1983-03-24 | 1984-10-01 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 耐食性のすぐれた油井管用鋼 |
JP2791804B2 (ja) * | 1989-08-16 | 1998-08-27 | 新日本製鐵株式会社 | 高強度かつ耐食性の優れたマルテンサイト系ステンレス鋼 |
-
1992
- 1992-02-18 JP JP4031105A patent/JP2672430B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05263138A (ja) | 1993-10-12 |
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