JPH06240338A - 溶鋼の脱硫方法 - Google Patents

溶鋼の脱硫方法

Info

Publication number
JPH06240338A
JPH06240338A JP2836393A JP2836393A JPH06240338A JP H06240338 A JPH06240338 A JP H06240338A JP 2836393 A JP2836393 A JP 2836393A JP 2836393 A JP2836393 A JP 2836393A JP H06240338 A JPH06240338 A JP H06240338A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molten steel
desulfurization
gas
slag
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2836393A
Other languages
English (en)
Inventor
Akihiko Ebihara
明彦 海老原
Koji Nishio
浩二 西尾
Keiichi Maya
敬一 真屋
Hiroyuki Ikemiya
洋行 池宮
Kaoru Masame
薫 真目
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP2836393A priority Critical patent/JPH06240338A/ja
Publication of JPH06240338A publication Critical patent/JPH06240338A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Treatment Of Steel In Its Molten State (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】減圧下で脱硫反応効率を高めて極低硫鋼を製造
する方法の提供。 【構成】減圧下の溶鋼 (M) の表面に、酸素上吹きラン
ス(15)からO2ガスもしくはO2を含むガス、又はこれらの
ガスとともに金属酸化物粉を吹きつけて溶鋼温度を昇温
させる。昇温後、副原料添加装置(16)からAlを含む脱酸
剤を添加し溶鋼およびスラグの酸素ポテンシャルを低減
させ、脱酸後の〔Al〕濃度を 0.1重量%以上に調整す
る。その後、粉体上吹きランス(14)から脱硫剤粉体を溶
鋼 (M) の表面に吹きつけ、高温、低酸素ポテンシャル
下で脱硫反応を進行させる。図示のVOD装置の外、R
H装置によって実施することもできる。 【効果】処理中の溶鋼温度降下を防ぎ、脱硫反応を促進
し復硫を防止して極低硫鋼を溶製することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、減圧下での精錬によっ
て溶鋼を高純度化する際、特に溶鋼の脱硫処理の際に、
溶鋼の温度降下を防ぎ、高い反応効率で極低硫鋼を製造
する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、溶鉄の脱硫は溶銑段階で行う溶
銑脱硫と、製鋼精錬後の溶鋼段階で行われる溶鋼脱硫と
に分けられる。近年、溶鋼の高純度化に対する要求が強
くなり、溶銑脱硫だけでは目標とする低硫化が困難とな
り、溶鋼脱硫が必須のプロセスになってきた。特に S
≦ 0.001重量%(以下、 は溶鋼中成分を示す) の
極低硫鋼を溶製するには、高効率の溶鋼脱硫法の開発が
必要とされる。
【0003】従来の溶鋼脱硫法としては、取鍋内の溶鋼
中に脱硫剤をインジェクションする方法や脱硫剤を添加
した後溶鋼を攪拌する方法などが採用されてきたが、溶
鋼の温度降下や大気からの N ピックアップが大きい
などの問題があった。この脱硫処理中の N ピックア
ップを防止するため、真空精錬装置を用いる溶鋼脱硫法
が開発された。例えば、VOD真空精錬装置を用いて、
上吹きランスから減圧下の溶鋼表面に脱硫剤粉体を吹き
つけ、溶鋼中に脱硫剤を浸入させて脱硫する方法が特公
昭61− 59376号公報に開示されている。
【0004】他方、RH真空脱ガス装置を用いる方法と
して、真空処理中に真空槽の側壁中間部に設けられた合
金鉄添加口から脱硫剤を投入して脱硫する方法がある
が、排気系へ吸引されるのを防ぐために脱硫剤の粒径を
大きくする必要があり脱硫反応効率が低いという問題点
があった。そこで真空槽内で溶鋼中に浸漬したノズルか
らキャリアガスとともに脱硫剤粉体をインジェクション
する方法や、取鍋内に粉体吹込みランスを浸漬してキャ
リアガスとともに脱硫剤粉体を浸漬管(上昇管)に向け
てインジェクションする方法などが開発されている。し
かし、これらの方法では、脱硫剤をインジェクションし
ない時でも、粉体吹込み口から溶鋼が浸入しないように
ガスを流しておく必要があり、操業コストおよび真空度
維持の点から不利であるという問題があった。
【0005】さらに、上述の脱硫方法は、いずれも脱硫
剤やガスなどの冷材添加、および伝導と輻射による脱硫
処理中の溶鋼の熱損失のため、溶鋼温度の降下量が大き
くなり、脱硫効率が低下するという問題がある。溶鋼の
温度降下補償法としては、電磁誘導加熱やアーク加熱な
どが溶鋼成分に影響を与えないので理想的であるが、未
だ量産プロセスに一般的に適用できる段階には至ってい
ない。
【0006】量産プロセスにおいては酸素ガスを溶鋼に
吹きつけまたは吹き込んで、発生する酸化反応熱を利用
する方法が一般的である。この場合、脱硫後に酸素ガス
を溶鋼に吹き込んで昇温させると、溶鋼およびスラグの
酸素ポテンシャルが増大し、脱硫されてスラグ中に移行
した硫黄が溶鋼中に戻るいわゆる復硫を生じるので、脱
硫処理の効果が失われる。また脱硫前に酸素ガスで昇温
する場合も、溶鋼およびスラグの酸素ポテンシャルが増
大するため、脱硫剤による溶鋼の脱硫反応が阻害される
という問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、減圧
下における溶鋼の脱硫処理に際して、脱硫反応速度の増
大と溶鋼温度降下の低減を同時に達成できる効果的な方
法は、未だ確立されていない。本発明の目的は、減圧処
理中の溶鋼温度降下を抑制して、しかも脱硫反応の促進
を可能にする脱流方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、『減圧
下の溶鋼表面に酸素ガスもしくは酸素を含むガス、また
はこれらのガスとともに金属酸化物粉を吹きつけて溶鋼
を昇温させた後、Alを含む脱酸剤を添加して、酸化生成
スラグを還元するとともに溶鋼を脱酸し、脱酸後の溶鋼
中のAl濃度を 0.1重量%以上に調整し、その後脱硫剤粉
体をキャリアガスとともに減圧下の溶鋼表面に吹きつけ
ることを特徴とする溶鋼の脱硫方法』にある。
【0009】上記の本発明方法は、VOD法やRH法の
ような真空(減圧)精錬プロセスで実施できる。特に、
RH真空脱ガス装置を使用して実施する場合には、溶鋼
の脱酸後、かつ脱硫剤粉体の吹きつけ前に、CaO を主成
分とする粒状体を減圧下の溶鋼表面に投入することが望
ましい。
【0010】本発明方法において、溶鋼の昇温に用いる
ガスとしては、O2またはO2とAr、N2などの不活性ガスと
の混合ガスが用いられる。以下、これらを「酸化性ガ
ス」と言う。ただし、低窒素鋼を溶製する場合は、N2
外の不活性ガスを用いる必要がある。また、これらの酸
化性ガスとともに吹きつける金属酸化物粉としては、鉄
鉱石やMn鉱石、Ni鉱石などの粉体を用いることができ
る。
【0011】本発明方法において、溶鋼の脱酸にはAlを
含む脱酸剤を使用する。金属Al、Fe−Al合金、Ca−Al合
金などの単独脱酸剤を使用してもよいが、これらと金属
SiやFe−Si合金などとの混合物、あるいはFe−Si−Al合
金のような複合脱酸剤を用いてもよい。
【0012】本発明方法において、溶鋼の脱硫に用いる
脱硫剤としては、粉状のCaO (CaOの融点降下のためCaF2
を混合するのが望ましい)が好適である。これらの脱硫
剤を溶鋼表面に上吹きするキャリアガスは、Ar、N2など
の不活性ガスが用いられる。
【0013】ただし、低窒素鋼溶製の場合は、N2以外の
不活性ガスを用いる必要がある。
【0014】
【作用】以下、本発明方法を図面を用いて説明する。
【0015】図1は、VOD真空精錬装置を用いて行う
本発明方法の実施の一例を示す概略縦断面図である。
【0016】図示の装置を用いて、本発明の脱硫方法を
実施するには、脱硫処理前にまず真空容器11内で減圧下
にある精錬取鍋12内の溶鋼Mの表面に、真空容器11の上
部から降ろした上吹きランス15の先端に設けたノズルか
ら前記の酸化性ガスまたは酸化性ガスとともに金属酸化
物粉を吹きつける。同時に精錬取鍋12の底部に設けたポ
ーラスプラグ13からArなどの不活性ガスを底吹きして溶
鋼を攪拌する。
【0017】このとき溶鋼表面に吹きつけられた酸化性
ガスと溶鋼成分との酸化反応により酸化熱が発生し、さ
らに脱炭反応が生じている場合は生成したCOガスの二次
燃焼により燃焼熱が発生して溶鋼に熱が付与される。そ
して、Ar底吹きにより溶鋼内部が強攪拌されているの
で、溶鋼全体を均一に昇温することができる。
【0018】MnやCrなどを多く含む鋼種の場合には、Mn
の蒸発ロスやCrの酸化ロスを抑制しながら溶鋼を昇温す
るために、酸化性ガスをArなどの不活性ガスとO2ガスと
の混合ガスとし、酸素濃度を低下させること、および酸
化性ガスとともに冷却材としての金属酸化物粉を吹きつ
けることにより、酸化性ガスのジェットが溶鋼表面と衝
突する火点での、急激な温度上昇を抑制することができ
る。
【0019】溶鋼の昇温処理中は定期的に溶鋼温度を測
定し、目標昇温量の達成を確認した時点で酸化性ガスの
吹きつけを終了する。その後、減圧下で底吹きガスによ
り攪拌されている溶鋼Mの表面に副原料添加装置16から
Alを含む脱酸剤を添加して、昇温時の酸化生成スラグ中
の FeO、MnO などを還元するとともに溶鋼を脱酸し、脱
酸後の Al 濃度を 0.1重量%以上に調整する。このと
き、溶鋼内部は底吹きガス攪拌で強く攪拌されているた
め、溶鋼中にAlまたはAlとSiなどの脱酸元素が速やかに
拡散し、溶鋼表面上の昇温時の酸化生成スラグとの接触
が良好になる。したがって、酸化生成スラグ中の FeO、
MnO などの還元および溶鋼の脱酸が効率良く進行し、溶
鋼およびスラグの酸素ポテンシャルを低下させて脱硫反
応を促すことができる。
【0020】脱酸後の Al 濃度を 0.1重量%以上にする
理由は、後述する実施例1および比較例1に示すよう
に、通常の Al が0.04〜0.06重量%のキルド鋼よりさら
に脱硫速度を増大させることができ、極低硫鋼を製造で
きるからである。このような脱硫の促進要因としては、
以下のことが考えられる。
【0021】 Al 濃度の増加にともない溶鋼の酸素
ポテンシャルが低減し、 S の活量係数が増大するの
で脱硫反応が促進される。
【0022】 脱硫反応でSを固定した脱硫剤は、酸
素ポテンシャルが高いスラグと接触すると、スラグの酸
素が結合されて固定Sを分離する復硫反応を生じ、総合
的な脱硫効率の低下を招く。しかし Al 濃度を 0.1重量
%以上にすることにより、スラグの酸素ポテンシャルが
高い場合でも、 Al とスラグの酸素が結合するため、ス
ラグと溶鋼の界面近傍のスラグの酸素ポテンシャルは低
いレベルに維持される。したがって復硫は生じず、高い
脱硫効率が得られる。
【0023】上述の脱酸後、減圧下で底吹きガスにより
攪拌されている溶鋼Mの表面に、粉体上吹きランス14の
先端に設けたノズルからArなどの不活性ガスをキャリア
ガスとして、 CaOまたは CaOとCaF2の混合物などの脱硫
剤粉体を吹きつける。溶鋼中に吹き込まれた脱硫剤は、
脱硫反応をしながら浮上して溶鋼を脱硫するとともに溶
鋼表面で昇温時の酸化生成スラグ中の FeO、MnO などを
還元して生成したSiO2、Al2O3 等とともに滓化されて C
aOを主体とする低酸素ポテンシャルの高塩基度スラグを
形成する。一方、溶鋼は底吹きガスにより攪拌されてい
るため、スラグ−溶鋼界面は常に更新され、スラグ脱硫
も促進される。また前述のごとく、 Al濃度を 0.1重量
%以上に調整しているので S の活量係数が増大し、
スラグから溶鋼への復硫も生じない。したがって、高い
脱硫反応効率で、極低硫鋼を溶製することができる。
【0024】図2は、RH真空脱ガス装置を使用して本
願方法を実施する例を示す概略縦断図である。この場合
は、まず取鍋22内の溶鋼Mに浸漬管27a、27bを浸漬
し、真空槽21内を減圧して溶鋼Mを真空槽21内へ吸い上
げる。その後、上昇管27aの環流ガス吹込み羽口23から
Arガスを吹込み、ガスリフト原理に基づいて浸漬管27a
内の溶鋼を上昇させ浸漬管27b内の溶鋼を下降させて、
取鍋22と真空槽21との間で溶鋼Mを環流させる。
【0025】溶鋼の環流が安定したのち、真空槽21の上
部から垂直に降ろしたガス上吹きランス25の先端に設け
たノズルから酸化性ガス、または酸化性ガスとともに金
属酸化物粉を吹きつけて前記のように溶鋼を昇温する。
昇温処理中は定期的に溶鋼温度を測定し、目標の昇温量
の達成を確認した時点で酸化性ガスの吹きつけを終了す
る。
【0026】その後、減圧下で溶鋼の環流により攪拌さ
れている真空槽21内の溶鋼Mの表面に、副原料添加装置
26からAlを含む脱酸剤を添加して、真空槽21内に残留し
た昇温時の酸化生成スラグ中の FeO、MnO などを還元す
るとともに、溶鋼を脱酸し、脱酸後の Al 濃度を 0.1重
量%以上に調整する。
【0027】さらに、必要に応じて浸漬管(下降管)27
bの直上の溶鋼Mの表面に副原料添加装置26から CaOを
主成分とする粒状体を投入する。この粒状体は、浸漬管
27bの下降渦流に乗せて取鍋22の溶鋼中へ移行させ、酸
素上吹き時に生成した高酸素ポテンシャルの取鍋スラグ
L と溶鋼との界面に浮上させるようにする。引き続い
て減圧下で溶鋼の環流により攪拌されている溶鋼Mの表
面に粉体上吹きランス24の先端に設けたノズルからArな
どの不活性ガスをキャリアガスとして脱硫剤粉体を吹き
つけて脱硫を行う。溶鋼の昇温および脱酸の原理は、先
に述べた図1の装置における場合と同じである。
【0028】RH装置を用いて本発明方法を実施するの
に際して、脱硫処理時に真空槽内でCaO を主成分とする
粒状体を投入するのは、次のような作用効果を期待する
場合である。即ち、この粒状体を真空槽内の溶鋼表面
(下降管27bの直上が望ましい)に投入すれば、下降渦
流に巻き込まれて取鍋22の溶鋼Mの内部に移行し、その
後、高酸素ポテンシャルの取鍋スラグSL と溶鋼Mとの
界面に未溶融状態で浮上する。したがって、脱硫された
Sを固定した脱硫剤が真空槽21から取鍋22内へ環流さ
れ、取鍋22内の溶鋼Mの内部から浮上してきた際に、酸
素ポテンシャルの高い取鍋スラグSL と浮上してきた脱
硫剤との接触が遮断され復硫を防止することができる。
その結果として総合的に脱硫反応が促進されたことにな
り、RH真空脱ガス装置を用いる脱硫処理でも効率良く
極低硫鋼を製造することができる。
【0029】なお、RH真空脱ガス装置では、溶鋼環流
による攪拌力が小さく、取鍋スラグと溶鋼とのスラグ−
メタル間脱硫反応が期待できないので、吹込まれた脱硫
剤が溶鋼表面に浮上するまでの脱硫反応(トランジトリ
ー反応)が脱硫特性を決定する。したがって融点が低く
脱硫反応速度の大きい脱硫剤を使用するのが望ましく、
CaO にCaF2を20〜40重量%混合した脱硫剤の使用が効果
的である。
【0030】本発明方法において、上吹きに使用するラ
ンスは冷却水などを用いて冷却できることが望ましい。
非冷却型のランスを用いた場合、ランスの溶損、地金付
着によるランスの昇降不能などのトラブルが発生し、ラ
ンスと溶鋼湯面との距離を正確に保持することが不可能
になる。またランス本体が健全であってもランス先端の
ノズル部が溶損すると、ガス流速が変化するとともに粉
体の吹込み方向も変化し所定の吹込み条件を維持できな
くなる。
【0031】以下、実施例により本発明の脱硫方法につ
いて詳しく説明する。
【0032】
【実施例1】図1に示した50t規模のVOD真空精錬装
置を用い、電気炉で溶製された粗溶鋼を下記の条件で酸
素上吹き真空脱炭し、Al脱酸した後、前述した本発明の
方法にしたがって表1にNo.1およびNo.2として示す極低
炭素の極低硫鋼を溶製した。
【0033】溶製条件は下記の通りである。
【0034】1.真空度:1〜2Torr 2.溶鋼底吹き攪拌用Ar吹込み速度:50Nl/min 3.溶鋼昇温用酸化性ガス吹付条件:純O2を供給速度5Nm
3/min で先端ノズル径25mm の水冷ランスからランス−
溶鋼湯面間距離 1.0mで吹きつけ 4.昇温後目標溶鋼温度:1620℃以上 5.脱酸剤添加量:金属 Al 0.30〜0.45kg/溶鋼トン 6.脱酸後目標 Al 濃度: 0.1重量%以上 7.脱硫剤吹付条件:脱硫剤供給速度40kg/min キャリヤーArガス流量 50 Nm3/min ランス先端ノズル径 25 mm ランス−溶鋼湯面間距離 1.0m 8.脱硫剤:粒径約0.15mm、組成80%CaO-20%CaF2、使用
量は約11kg/溶鋼トン表1に溶鋼組成の変化を示す。
【0035】
【比較例1】脱酸剤添加量を金属 Al 0.10〜0.20kg/溶
鋼トンとして、脱酸後の Al 濃度が0.1 重量%に満たな
いようにしたこと以外は、実施例1と同様の溶製条件で
極低炭素低硫鋼を溶製した。結果を表1にNo.6、No.7と
して示す。
【0036】
【実施例2】溶鋼の昇温時に火点温度の過熱を抑制して
Mn の蒸発ロスを少なくするため、供給速度5Nm3/min
のO2とともに、供給速度 4 kg/min の鉄鉱石粉(組成:
63%T.Fe−0.2 %FeO −4.5 %SiO2−2.6 %Al2O3)を溶
鋼表面に上吹きした。また、脱酸剤として金属 Al 1.3
kg/溶鋼トンを併用した。それ以外は実施例1と同じ溶
製条件で中炭素の極低硫鋼を溶製した。結果を表1にN
o.3として示す。
【0037】
【実施例3】図2に示した 170t規模のRH真空脱ガス
装置を用い、転炉で溶製された粗溶鋼を酸素上吹き真空
脱炭し、Fe−Si (75%) 合金および金属Alで脱酸した
後、本発明の方法にしたがって極低炭素の極低硫鋼を溶
製した。溶製条件は下記の通りである。
【0038】1.真空度:1〜2Torr 2.溶鋼環流用Ar吹込み速度:1.5 Nm3/min 3.溶鋼昇温用酸化性ガス吹付条件:純O2を供給速度 10
Nm3/min で先端ノズル径25mmの水冷ランスからランス−
溶鋼湯面間距離 2.0mで吹きつけ 4.昇温後目標溶鋼温度:1640℃以上 5.脱酸剤添加量:金属Al 1.4kg/溶鋼トン 6.脱酸後目標 Al 濃度: 0.1重量%以上 7.脱硫剤吹付条件:脱硫剤供給速度 100 kg/min キャリヤーArガス流量 5.0 Nm3/min ランス先端ノズル径 25 mm ランス−溶鋼湯面間距離 2.0m 8.脱硫剤:粒径約0.15mm、組成64%CaO −36%CaF2、使
用量約8kg/溶鋼トン表2にNo.4として溶鋼組成の変化
を示す。
【0039】
【実施例4】図2に示した 170t規模のRH真空脱ガス
装置を用い、転炉で溶製された粗溶鋼を酸素上吹き真空
脱炭し、金属Al 1.3kg/溶鋼トンで脱酸後、脱硫剤粉体
の吹きつけ前に、粒状の CaO (粒径 5〜20 mm)1ton を
真空槽内の溶鋼の表面に投入した。その他の溶製条件は
実施例3と同様である。溶鋼組成の変化を表2にNo.5と
して示す。
【0040】図3は、実施例および比較例の処理中にお
ける溶鋼温度の経時変化を示す。各試験 No.ごとのプロ
ットは左から順に処理前、酸化性ガス吹付け昇温後、Al
脱酸後、および脱硫後の溶鋼温度を示す。
【0041】図3に示すように、実施例および比較例は
いずれも減圧下の溶鋼表面に酸化性ガス(O2ガス)を上
吹きしたので溶鋼温度が上昇し、引き続く脱酸および脱
硫処理中に下降する。そして脱硫後と処理前の溶鋼温度
の差は、VOD精錬装置を用いた実施例1の No.1が−
3℃、 No.2が−8℃、比較例1の No.6が−9℃、N
o.7が−7℃、実施例2の No.3が−2℃であった。
【0042】RH真空脱ガス装置を用いた場合は、実施
例3の No.4が+3℃、実施例4のNo.5が−6℃であっ
た。この結果から、本発明方法における酸化性ガスの上
吹きにより、溶鋼温度を上げることができ、脱酸、脱硫
処理中の26℃から34℃の溶鋼温度降下を脱硫後と処理前
の溶鋼温度差で+3℃〜−8℃になるまで熱補償できる
ことが明らかである。
【0043】表1に示すように、VOD精錬装置を用い
た実施例1の No.1、 No.2は脱酸後の Al 濃度が 0.1
重量%以上に調整されており、到達 S が3ppm 以下
の極低硫鋼を溶製することができた。これに対し、比較
例1の No.6と No.7では酸化性ガスの上吹きにより溶
鋼温度を上昇させ、実施例1に近い熱補償を行うことが
できたが、脱酸後の Al 濃度が 0.1重量%未満であった
ために到達 S は10ppm を超える値となった。
【0044】実施例2の No.3では、酸化性ガスととも
鉄鉱石粉を上吹きして溶鋼を昇温させたが、脱硫後と処
理前の溶鋼温度が−2℃になるまで熱補償できた。しか
も鉄鉱石粉の冷却効果のため、火点温度の過熱が抑制さ
れ Mn の蒸発と酸化によるロスを0.03%程度に低く抑え
ることができた。脱酸後の Al 濃度も 0.1重量%以上に
調整されており、中炭素鋼でも到達 S が3ppm 以下
の極低硫鋼を溶製することができた。
【0045】表2に示すように、RH真空脱ガス装置を
用いた実施例3の No.4でも、脱硫後と処理前の溶鋼温
度差が+3℃になるまで十分熱補償され、脱酸後の Al
濃度も十分高い0.166 重量%に調整されており、到達
S は9ppm の極低硫鋼を溶製することができた。VO
D精錬装置を用いた実施例1、2より到達 S が高い
理由は、取鍋の溶鋼表面上の高酸素ポテンシャルスラグ
と浮上した脱硫剤とが接触して復硫を生じたことによる
と考えられる。この復硫を防止するために、粒状 CaOを
投入した実施例4の No.5では、熱補償脱酸後の Al 濃
度が良好に調整されており、かつ取鍋スラグと浮上脱硫
剤との接触が粒状CaO で遮断されて復硫が防止されるた
め、到達 S が実施例3より低い3ppm の極低硫鋼を
溶製することができた。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】本発明方法によれば、減圧下における脱
硫処理中の溶鋼温度低下を熱補償して高温を維持しなが
ら脱硫が行える。さらに、脱硫処理時の溶鋼およびスラ
グの酸素ポテンシャルを低減することができるので、脱
硫反応速度を高め、復硫を防止することができる。従っ
て、比較的簡単に極低硫鋼を製造できるという大きな効
果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】VOD真空精錬装置を用いて本発明方法を実施
する例を説明する概略縦断図である。
【図2】RH真空脱ガス装置を使用して本発明方法を実
施する例を説明する概略縦断図である。
【図3】実施例および比較例の処理中における溶鋼温度
の経時変化を示す図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年1月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】明細書
【発明の名称】溶鋼の脱硫方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、減圧下での精錬によっ
て溶鋼を高純度化する際、特に溶鋼の脱硫処理の際に、
溶鋼の温度降下を防ぎ、高い反応効率で極低硫鋼を製造
する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、溶鉄の脱硫は溶銑段階で行う溶
銑脱硫と、製鋼精錬後の溶鋼段階で行われる溶鋼脱硫と
に分けられる。近年、溶鋼の高純度化に対する要求が強
くなり、溶銑脱硫だけでは目標とする低硫化が困難とな
り、溶鋼脱硫が必須のプロセスになってきた。特に
〔S〕≦ 0.001重量%(以下、〔 〕は溶鋼中成分を示
す)の極低硫鋼を溶製するには、高効率の溶鋼脱硫法の
開発が必要とされる。
【0003】従来の溶鋼脱硫法としては、取鍋内の溶鋼
中に脱硫剤をインジェクションする方法や脱硫剤を添加
した後溶鋼を攪拌する方法などが採用されてきたが、溶
鋼の温度降下や大気からの〔N〕ピックアップが大きい
などの問題があった。この脱硫処理中の〔N〕ピックア
ップを防止するため、真空精錬装置を用いる溶鋼脱硫法
が開発された。例えば、VOD真空精錬装置を用いて、
上吹きランスから減圧下の溶鋼表面に脱硫剤粉体を吹き
つけ、溶鋼中に脱硫剤を浸入させて脱硫する方法が特公
昭61− 59376号公報に開示されている。
【0004】他方、RH真空脱ガス装置を用いる方法と
して、真空処理中に真空槽の側壁中間部に設けられた合
金鉄添加口から脱硫剤を投入して脱硫する方法がある
が、排気系へ吸引されるのを防ぐために脱硫剤の粒径を
大きくする必要があり脱硫反応効率が低いという問題点
があった。そこで真空槽内で溶鋼中に浸漬したノズルか
らキャリアガスとともに脱硫剤粉体をインジェクション
する方法や、取鍋内に粉体吹込みランスを浸漬してキャ
リアガスとともに脱硫剤粉体を浸漬管(上昇管)に向け
てインジェクションする方法などが開発されている。し
かし、これらの方法では、脱硫剤をインジェクションし
ない時でも、粉体吹込み口から溶鋼が浸入しないように
ガスを流しておく必要があり、操業コストおよび真空度
維持の点から不利であるという問題があった。
【0005】さらに、上述の脱硫方法は、いずれも脱硫
剤やガスなどの冷材添加、および伝導と輻射による脱硫
処理中の溶鋼の熱損失のため、溶鋼温度の降下量が大き
くなり、脱硫効率が低下するという問題がある。溶鋼の
温度降下補償法としては、電磁誘導加熱やアーク加熱な
どが溶鋼成分に影響を与えないので理想的であるが、未
だ量産プロセスに一般的に適用できる段階には至ってい
ない。
【0006】量産プロセスにおいては酸素ガスを溶鋼に
吹きつけまたは吹き込んで、発生する酸化反応熱を利用
する方法が一般的である。この場合、脱硫後に酸素ガス
を溶鋼に吹き込んで昇温させると、溶鋼およびスラグの
酸素ポテンシャルが増大し、脱硫されてスラグ中に移行
した硫黄が溶鋼中に戻るいわゆる復硫を生じるので、脱
硫処理の効果が失われる。また脱硫前に酸素ガスで昇温
する場合も、溶鋼およびスラグの酸素ポテンシャルが増
大するため、脱硫剤による溶鋼の脱硫反応が阻害される
という問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、減圧
下における溶鋼の脱硫処理に際して、脱硫反応速度の増
大と溶鋼温度降下の低減を同時に達成できる効果的な方
法は、未だ確立されていない。本発明の目的は、減圧処
理中の溶鋼温度降下を抑制して、しかも脱硫反応の促進
を可能にする脱流方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、『減圧
下の溶鋼表面に酸素ガスもしくは酸素を含むガス、また
はこれらのガスとともに金属酸化物粉を吹きつけて溶鋼
を昇温させた後、Alを含む脱酸剤を添加して、酸化生成
スラグを還元するとともに溶鋼を脱酸し、脱酸後の溶鋼
中のAl濃度を 0.1重量%以上に調整し、その後脱硫剤粉
体をキャリアガスとともに減圧下の溶鋼表面に吹きつけ
ることを特徴とする溶鋼の脱硫方法』にある。
【0009】上記の本発明方法は、VOD法やRH法の
ような真空(減圧)精錬プロセスで実施できる。特に、
RH真空脱ガス装置を使用して実施する場合には、溶鋼
の脱酸後、かつ脱硫剤粉体の吹きつけ前に、CaO を主成
分とする粒状体を減圧下の溶鋼表面に投入することが望
ましい。
【0010】本発明方法において、溶鋼の昇温に用いる
ガスとしては、O2またはO2とAr、N2などの不活性ガスと
の混合ガスが用いられる。以下、これらを「酸化性ガ
ス」と言う。ただし、低窒素鋼を溶製する場合は、N2
外の不活性ガスを用いる必要がある。また、これらの酸
化性ガスとともに吹きつける金属酸化物粉としては、鉄
鉱石やMn鉱石、Ni鉱石などの粉体を用いることができ
る。
【0011】本発明方法において、溶鋼の脱酸にはAlを
含む脱酸剤を使用する。金属Al、Fe−Al合金、Ca−Al合
金などの単独脱酸剤を使用してもよいが、これらと金属
SiやFe−Si合金などとの混合物、あるいはFe−Si−Al合
金のような複合脱酸剤を用いてもよい。
【0012】本発明方法において、溶鋼の脱硫に用いる
脱硫剤としては、粉状のCaO (CaOの融点降下のためCaF2
を混合するのが望ましい)が好適である。これらの脱硫
剤を溶鋼表面に上吹きするキャリアガスは、Ar、N2など
の不活性ガスが用いられる。
【0013】ただし、低窒素鋼溶製の場合は、N2以外の
不活性ガスを用いる必要がある。
【0014】
【作用】以下、本発明方法を図面を用いて説明する。
【0015】図1は、VOD真空精錬装置を用いて行う
本発明方法の実施の一例を示す概略縦断面図である。
【0016】図示の装置を用いて、本発明の脱硫方法を
実施するには、脱硫処理前にまず真空容器11内で減圧下
にある精錬取鍋12内の溶鋼Mの表面に、真空容器11の上
部から降ろした上吹きランス15の先端に設けたノズルか
ら前記の酸化性ガスまたは酸化性ガスとともに金属酸化
物粉を吹きつける。同時に精錬取鍋12の底部に設けたポ
ーラスプラグ13からArなどの不活性ガスを底吹きして溶
鋼を攪拌する。
【0017】このとき溶鋼表面に吹きつけられた酸化性
ガスと溶鋼成分との酸化反応により酸化熱が発生し、さ
らに脱炭反応が生じている場合は生成したCOガスの二次
燃焼により燃焼熱が発生して溶鋼に熱が付与される。そ
して、Ar底吹きにより溶鋼内部が強攪拌されているの
で、溶鋼全体を均一に昇温することができる。
【0018】MnやCrなどを多く含む鋼種の場合には、Mn
の蒸発ロスやCrの酸化ロスを抑制しながら溶鋼を昇温す
るために、酸化性ガスをArなどの不活性ガスとO2ガスと
の混合ガスとし、酸素濃度を低下させること、および酸
化性ガスとともに冷却材としての金属酸化物粉を吹きつ
けることにより、酸化性ガスのジェットが溶鋼表面と衝
突する火点での、急激な温度上昇を抑制することができ
る。
【0019】溶鋼の昇温処理中は定期的に溶鋼温度を測
定し、目標昇温量の達成を確認した時点で酸化性ガスの
吹きつけを終了する。その後、減圧下で底吹きガスによ
り攪拌されている溶鋼Mの表面に副原料添加装置16から
Alを含む脱酸剤を添加して、昇温時の酸化生成スラグ中
の FeO、MnO などを還元するとともに溶鋼を脱酸し、脱
酸後の〔Al〕濃度を 0.1重量%以上に調整する。このと
き、溶鋼内部は底吹きガス攪拌で強く攪拌されているた
め、溶鋼中にAlまたはAlとSiなどの脱酸元素が速やかに
拡散し、溶鋼表面上の昇温時の酸化生成スラグとの接触
が良好になる。
【0020】したがって、酸化生成スラグ中の FeO、Mn
O などの還元および溶鋼の脱酸が効率良く進行し、溶鋼
およびスラグの酸素ポテンシャルを低下させて脱硫反応
を促すことができる。
【0021】脱酸後の〔Al〕濃度を 0.1重量%以上にす
る理由は、後述する実施例1および比較例1に示すよう
に、通常の〔Al〕が0.04〜0.06重量%のキルド鋼よりさ
らに脱硫速度を増大させることができ、極低硫鋼を製造
できるからである。このような脱硫の促進要因として
は、以下のことが考えられる。
【0022】〔Al〕濃度の増加にともない溶鋼の酸素
ポテンシャルが低減し、〔S〕の活量係数が増大するの
で脱硫反応が促進される。
【0023】 脱硫反応でSを固定した脱硫剤は、酸
素ポテンシャルが高いスラグと接触すると、スラグの酸
素が結合されて固定Sを分離する復硫反応を生じ、総合
的な脱硫効率の低下を招く。しかし〔Al〕濃度を 0.1重
量%以上にすることにより、スラグの酸素ポテンシャル
が高い場合でも、〔Al〕とスラグの酸素が結合するた
め、スラグと溶鋼の界面近傍のスラグの酸素ポテンシャ
ルは低いレベルに維持される。したがって復硫は生じ
ず、高い脱硫効率が得られる。
【0024】上述の脱酸後、減圧下で底吹きガスにより
攪拌されている溶鋼Mの表面に、粉体上吹きランス14の
先端に設けたノズルからArなどの不活性ガスをキャリア
ガスとして、 CaOまたは CaOとCaF2の混合物などの脱硫
剤粉体を吹きつける。溶鋼中に吹き込まれた脱硫剤は、
脱硫反応をしながら浮上して溶鋼を脱硫するとともに溶
鋼表面で昇温時の酸化生成スラグ中の FeO、MnO などを
還元して生成したSiO2、Al2O3 等とともに滓化されて C
aOを主体とする低酸素ポテンシャルの高塩基度スラグを
形成する。一方、溶鋼は底吹きガスにより攪拌されてい
るため、スラグ−溶鋼界面は常に更新され、スラグ脱硫
も促進される。また前述のごとく〔Al〕濃度を 0.1重量
%以上に調整しているので〔S〕の活量係数が増大し、
スラグから溶鋼への復硫も生じない。したがって、高い
脱硫反応効率で、極低硫鋼を溶製することができる。
【0025】図2は、RH真空脱ガス装置を使用して本
願方法を実施する例を示す概略縦断図である。この場合
は、まず取鍋22内の溶鋼Mに浸漬管27a、27bを浸漬
し、真空槽21内を減圧して溶鋼Mを真空槽21内へ吸い上
げる。その後、上昇管27aの環流ガス吹込み羽口23から
Arガスを吹込み、ガスリフト原理に基づいて浸漬管27a
内の溶鋼を上昇させ浸漬管27b内の溶鋼を下降させて、
取鍋22と真空槽21との間で溶鋼Mを環流させる。
【0026】溶鋼の環流が安定したのち、真空槽21の上
部から垂直に降ろしたガス上吹きランス25の先端に設け
たノズルから酸化性ガス、または酸化性ガスとともに金
属酸化物粉を吹きつけて前記のように溶鋼を昇温する。
昇温処理中は定期的に溶鋼温度を測定し、目標の昇温量
の達成を確認した時点で酸化性ガスの吹きつけを終了す
る。
【0027】その後、減圧下で溶鋼の環流により攪拌さ
れている真空槽21内の溶鋼Mの表面に、副原料添加装置
26からAlを含む脱酸剤を添加して、真空槽21内に残留し
た昇温時の酸化生成スラグ中の FeO、MnO などを還元す
るとともに、溶鋼を脱酸し、脱酸後の〔Al〕濃度を 0.1
重量%以上に調整する。
【0028】さらに、必要に応じて浸漬管(下降管)27
bの直上の溶鋼Mの表面に副原料添加装置26から CaOを
主成分とする粒状体を投入する。この粒状体は、浸漬管
27bの下降渦流に乗せて取鍋22の溶鋼中へ移行させ、酸
素上吹き時に生成した高酸素ポテンシャルの取鍋スラグ
L と溶鋼との界面に浮上させるようにする。引き続い
て減圧下で溶鋼の環流により攪拌されている溶鋼Mの表
面に粉体上吹きランス24の先端に設けたノズルからArな
どの不活性ガスをキャリアガスとして脱硫剤粉体を吹き
つけて脱硫を行う。溶鋼の昇温および脱酸の原理は、先
に述べた図1の装置における場合と同じである。
【0029】RH装置を用いて本発明方法を実施するの
に際して、脱硫処理時に真空槽内でCaO を主成分とする
粒状体を投入するのは、次のような作用効果を期待する
場合である。即ち、この粒状体を真空槽内の溶鋼表面
(下降管27bの直上が望ましい)に投入すれば、下降渦
流に巻き込まれて取鍋22の溶鋼Mの内部に移行し、その
後、高酸素ポテンシャルの取鍋スラグSL と溶鋼Mとの
界面に未溶融状態で浮上する。したがって、脱硫された
Sを固定した脱硫剤が真空槽21から取鍋22内へ環流さ
れ、取鍋22内の溶鋼Mの内部から浮上してきた際に、酸
素ポテンシャルの高い取鍋スラグSL と浮上してきた脱
硫剤との接触が遮断され復硫を防止することができる。
その結果として総合的に脱硫反応が促進されたことにな
り、RH真空脱ガス装置を用いる脱硫処理でも効率良く
極低硫鋼を製造することができる。
【0030】なお、RH真空脱ガス装置では、溶鋼環流
による攪拌力が小さく、取鍋スラグと溶鋼とのスラグ−
メタル間脱硫反応が期待できないので、吹込まれた脱硫
剤が溶鋼表面に浮上するまでの脱硫反応(トランジトリ
ー反応)が脱硫特性を決定する。したがって融点が低く
脱硫反応速度の大きい脱硫剤を使用するのが望ましく、
CaO にCaF2を20〜40重量%混合した脱硫剤の使用が効果
的である。
【0031】本発明方法において、上吹きに使用するラ
ンスは冷却水などを用いて冷却できることが望ましい。
非冷却型のランスを用いた場合、ランスの溶損、地金付
着によるランスの昇降不能などのトラブルが発生し、ラ
ンスと溶鋼湯面との距離を正確に保持することが不可能
になる。またランス本体が健全であってもランス先端の
ノズル部が溶損すると、ガス流速が変化するとともに粉
体の吹込み方向も変化し所定の吹込み条件を維持できな
くなる。
【0032】以下、実施例により本発明の脱硫方法につ
いて詳しく説明する。
【0033】
【実施例1】図1に示した50t規模のVOD真空精錬装
置を用い、電気炉で溶製された粗溶鋼を下記の条件で酸
素上吹き真空脱炭し、Al脱酸した後、前述した本発明の
方法にしたがって表1にNo.1およびNo.2として示す極低
炭素の極低硫鋼を溶製した。
【0034】溶製条件は下記の通りである。
【0035】1.真空度:1〜2Torr 2.溶鋼底吹き攪拌用Ar吹込み速度:50Nl/min 3.溶鋼昇温用酸化性ガス吹付条件:純O2を供給速度5Nm
3/min で先端ノズル径25mm の水冷ランスからランス−
溶鋼湯面間距離 1.0mで吹きつけ 4.昇温後目標溶鋼温度:1620℃以上 5.脱酸剤添加量:金属 Al 0.30〜0.45kg/溶鋼トン 6.脱酸後目標〔Al〕濃度: 0.1重量%以上 7.脱硫剤吹付条件:脱硫剤供給速度40kg/min キャリヤーArガス流量 50 Nm3/min ランス先端ノズル径 25 mm ランス−溶鋼湯面間距離 1.0m 8.脱硫剤:粒径約0.15mm、組成80%CaO-20%CaF2、使用
量は約11kg/溶鋼トン表1に溶鋼組成の変化を示す。
【0036】
【比較例1】脱酸剤添加量を金属 Al 0.10〜0.20kg/溶
鋼トンとして、脱酸後の〔Al〕濃度が 0.1重量%に満た
ないようにしたこと以外は、実施例1と同様の溶製条件
で極低炭素低硫鋼を溶製した。結果を表1にNo.6、No.7
として示す。
【0037】
【実施例2】溶鋼の昇温時に火点温度の過熱を抑制して
〔Mn〕の蒸発ロスを少なくするため、供給速度5Nm3/mi
n のO2とともに、供給速度 4 kg/min の鉄鉱石粉(組
成:63%T.Fe−0.2 %FeO −4.5 %SiO2−2.6 %Al2O3)
を溶鋼表面に上吹きした。また、脱酸剤として金属 Al
1.3 kg/溶鋼トンを併用した。それ以外は実施例1と同
じ溶製条件で中炭素の極低硫鋼を溶製した。結果を表1
にNo.3として示す。
【0038】
【実施例3】図2に示した 170t規模のRH真空脱ガス
装置を用い、転炉で溶製された粗溶鋼を酸素上吹き真空
脱炭し、Fe−Si (75%) 合金および金属Alで脱酸した
後、本発明の方法にしたがって極低炭素の極低硫鋼を溶
製した。溶製条件は下記の通りである。
【0039】1.真空度:1〜2Torr 2.溶鋼環流用Ar吹込み速度:1.5 Nm3/min 3.溶鋼昇温用酸化性ガス吹付条件:純O2を供給速度 10
Nm3/min で先端ノズル径25mmの水冷ランスからランス−
溶鋼湯面間距離 2.0mで吹きつけ 4.昇温後目標溶鋼温度:1640℃以上 5.脱酸剤添加量:金属Al 1.4kg/溶鋼トン 6.脱酸後目標〔Al〕濃度: 0.1重量%以上 7.脱硫剤吹付条件:脱硫剤供給速度 100 kg/min キャリヤーArガス流量 5.0 Nm3/min ランス先端ノズル径 25 mm ランス−溶鋼湯面間距離 2.0m 8.脱硫剤:粒径約0.15mm、組成64%CaO −36%CaF2、使
用量約8kg/溶鋼トン表2にNo.4として溶鋼組成の変化
を示す。
【0040】
【実施例4】図2に示した 170t規模のRH真空脱ガス
装置を用い、転炉で溶製された粗溶鋼を酸素上吹き真空
脱炭し、金属Al 1.3kg/溶鋼トンで脱酸後、脱硫剤粉体
の吹きつけ前に、粒状の CaO (粒径 5〜20 mm)1ton を
真空槽内の溶鋼の表面に投入した。その他の溶製条件は
実施例3と同様である。溶鋼組成の変化を表2にNo.5と
して示す。
【0041】図3は、実施例および比較例の処理中にお
ける溶鋼温度の経時変化を示す。各試験 No.ごとのプロ
ットは左から順に処理前、酸化性ガス吹付け昇温後、Al
脱酸後、および脱硫後の溶鋼温度を示す。
【0042】図3に示すように、実施例および比較例は
いずれも減圧下の溶鋼表面に酸化性ガス(O2ガス)を上
吹きしたので溶鋼温度が上昇し、引き続く脱酸および脱
硫処理中に下降する。そして脱硫後と処理前の溶鋼温度
の差は、VOD精錬装置を用いた実施例1の No.1が−
3℃、 No.2が−8℃、比較例1の No.6が−9℃、N
o.7が−7℃、実施例2の No.3が−2℃であった。
【0043】RH真空脱ガス装置を用いた場合は、実施
例3の No.4が+3℃、実施例4のNo.5が−6℃であっ
た。この結果から、本発明方法における酸化性ガスの上
吹きにより、溶鋼温度を上げることができ、脱酸、脱硫
処理中の26℃から34℃の溶鋼温度降下を脱硫後と処理前
の溶鋼温度差で+3℃〜−8℃になるまで熱補償できる
ことが明らかである。
【0044】表1に示すように、VOD精錬装置を用い
た実施例1の No.1、 No.2は脱酸後の〔Al〕濃度が
0.1重量%以上に調整されており、到達〔S〕が3ppm
以下の極低硫鋼を溶製することができた。これに対し、
比較例1の No.6と No.7では酸化性ガスの上吹きによ
り溶鋼温度を上昇させ、実施例1に近い熱補償を行うこ
とができたが、脱酸後の〔Al〕濃度が 0.1重量%未満で
あったために到達〔S〕は 10ppmを超える値となった。
【0045】実施例2の No.3では、酸化性ガスととも
鉄鉱石粉を上吹きして溶鋼を昇温させたが、脱硫後と処
理前の溶鋼温度が−2℃になるまで熱補償できた。しか
も鉄鉱石粉の冷却効果のため、火点温度の過熱が抑制さ
〔Mn〕の蒸発と酸化によるロスを0.03%程度に低く抑
えることができた。脱酸後の〔Al〕濃度も 0.1重量%以
上に調整されており、中炭素鋼でも到達〔S〕が3ppm
以下の極低硫鋼を溶製することができた。
【0046】表2に示すように、RH真空脱ガス装置を
用いた実施例3の No.4でも、脱硫後と処理前の溶鋼温
度差が+3℃になるまで十分熱補償され、脱酸後の〔A
l〕濃度も十分高い0.166 重量%に調整されており、到
〔S〕は9ppm の極低硫鋼を溶製することができた。
VOD精錬装置を用いた実施例1、2より到達〔S〕
高い理由は、取鍋の溶鋼表面上の高酸素ポテンシャルス
ラグと浮上した脱硫剤とが接触して復硫を生じたことに
よると考えられる。この復硫を防止するために、粒状 C
aOを投入した実施例4の No.5では、熱補償脱酸後の
〔Al〕濃度が良好に調整されており、かつ取鍋スラグと
浮上脱硫剤との接触が粒状CaO で遮断されて復硫が防止
されるため、到達〔S〕が実施例3より低い3ppm の極
低硫鋼を溶製することができた。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】本発明方法によれば、減圧下における脱
硫処理中の溶鋼温度低下を熱補償して高温を維持しなが
ら脱硫が行える。さらに、脱硫処理時の溶鋼およびスラ
グの酸素ポテンシャルを低減することができるので、脱
硫反応速度を高め、復硫を防止することができる。従っ
て、比較的簡単に極低硫鋼を製造できるという大きな効
果が得られる。
【0050】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池宮 洋行 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号住 友金属工業株式会社内 (72)発明者 真目 薫 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号住 友金属工業株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】減圧下の溶鋼表面に酸素ガスもしくは酸素
    を含むガス、またはこれらのガスとともに金属酸化物粉
    を吹きつけて溶鋼を昇温させた後、Alを含む脱酸剤を添
    加して、酸化生成スラグを還元するとともに溶鋼を脱酸
    し、脱酸後の溶鋼中のAl濃度を 0.1重量%以上に調整
    し、その後脱硫剤粉体をキャリアガスとともに減圧下の
    溶鋼表面に吹きつけることを特徴とする溶鋼の脱硫方
    法。
  2. 【請求項2】RH真空脱ガス装置を使用し、溶鋼の脱酸
    後、かつ脱硫剤粉体の吹きつけ前にCaO を主成分とする
    粒状体を減圧下の溶鋼表面に投入することを特徴とする
    請求項1記載の溶鋼の脱硫方法。
JP2836393A 1993-02-18 1993-02-18 溶鋼の脱硫方法 Pending JPH06240338A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2836393A JPH06240338A (ja) 1993-02-18 1993-02-18 溶鋼の脱硫方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2836393A JPH06240338A (ja) 1993-02-18 1993-02-18 溶鋼の脱硫方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH06240338A true JPH06240338A (ja) 1994-08-30

Family

ID=12246545

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2836393A Pending JPH06240338A (ja) 1993-02-18 1993-02-18 溶鋼の脱硫方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH06240338A (ja)

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2363635B (en) * 1999-09-16 2002-11-27 Qual Chem Ltd Method of introducing additives in steelmaking
JP2006328546A (ja) * 2006-08-09 2006-12-07 Sumitomo Metal Ind Ltd 清浄鋼の製造方法
KR100782708B1 (ko) * 2001-12-21 2007-12-05 주식회사 포스코 진공 탈탄 설비의 용강비산 방지장치
JP2008285709A (ja) * 2007-05-16 2008-11-27 Kobe Steel Ltd 真空脱ガス工程における復硫現象を抑制する低硫鋼の二次精錬方法
JP2012172213A (ja) * 2011-02-23 2012-09-10 Jfe Steel Corp 溶鋼の精錬方法
KR101356937B1 (ko) * 2012-09-10 2014-01-28 주식회사 포스코 스테인리스강의 정련방법
KR101363927B1 (ko) * 2012-08-10 2014-02-20 주식회사 포스코 용강의 정련 방법
KR101477268B1 (ko) * 2013-07-26 2014-12-31 현대제철 주식회사 진공 탈가스 장치
CN114250340A (zh) * 2022-01-26 2022-03-29 北京首钢股份有限公司 一种rh脱硫方法

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2363635B (en) * 1999-09-16 2002-11-27 Qual Chem Ltd Method of introducing additives in steelmaking
KR100782708B1 (ko) * 2001-12-21 2007-12-05 주식회사 포스코 진공 탈탄 설비의 용강비산 방지장치
JP2006328546A (ja) * 2006-08-09 2006-12-07 Sumitomo Metal Ind Ltd 清浄鋼の製造方法
JP2008285709A (ja) * 2007-05-16 2008-11-27 Kobe Steel Ltd 真空脱ガス工程における復硫現象を抑制する低硫鋼の二次精錬方法
JP2012172213A (ja) * 2011-02-23 2012-09-10 Jfe Steel Corp 溶鋼の精錬方法
KR101363927B1 (ko) * 2012-08-10 2014-02-20 주식회사 포스코 용강의 정련 방법
KR101356937B1 (ko) * 2012-09-10 2014-01-28 주식회사 포스코 스테인리스강의 정련방법
KR101477268B1 (ko) * 2013-07-26 2014-12-31 현대제철 주식회사 진공 탈가스 장치
CN114250340A (zh) * 2022-01-26 2022-03-29 北京首钢股份有限公司 一种rh脱硫方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0548868B1 (en) Method of refining of high purity steel
JP6343844B2 (ja) 真空脱ガス設備における溶鋼の精錬方法
JPH06240338A (ja) 溶鋼の脱硫方法
CN111270041B (zh) 一种降低脱磷炉生产低磷钢出钢过程回磷量的方法
JP6551626B2 (ja) 高マンガン鋼の溶製方法
JP5614306B2 (ja) マンガン含有低炭素鋼の溶製方法
JP6323688B2 (ja) 溶鋼の脱硫方法
JP2008169407A (ja) 溶鋼の脱硫方法
JP2007270178A (ja) 極低硫鋼の製造方法
JP4534734B2 (ja) 低炭素高マンガン鋼の溶製方法
WO2020152945A1 (ja) 低炭素フェロマンガンの製造方法
JP3241910B2 (ja) 極低硫鋼の製造方法
JP2005344129A (ja) 溶鋼の精錬方法
JP2003147430A (ja) 製鋼用還元剤及び製鋼方法
JPH06228626A (ja) 脱硫前処理としてのスラグ改質方法
JP3370349B2 (ja) 高清浄度極低炭素鋼の溶製方法
JP5621618B2 (ja) マンガン含有低炭素鋼の溶製方法
JPH0488114A (ja) 高マンガン鋼の溶製方法
JPH11140530A (ja) 極低窒素ステンレス鋼の製造方法
JPH0959708A (ja) ステンレス鋼の効率的な脱炭吹錬方法
JPH10102135A (ja) 溶鋼の脱硫方法
JPH11217623A (ja) 環流式真空脱ガス装置での溶鋼の精錬方法
JP3327062B2 (ja) 極低炭・極低硫鋼の溶製方法
JP6028750B2 (ja) マンガン含有低炭素鋼の溶製方法
JPH10102134A (ja) 溶鋼の脱硫方法