JPH06238138A - ポリアニリンからなる気体分離用異方性膜及びその製造方法 - Google Patents

ポリアニリンからなる気体分離用異方性膜及びその製造方法

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JPH06238138A
JPH06238138A JP2829593A JP2829593A JPH06238138A JP H06238138 A JPH06238138 A JP H06238138A JP 2829593 A JP2829593 A JP 2829593A JP 2829593 A JP2829593 A JP 2829593A JP H06238138 A JPH06238138 A JP H06238138A
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polyaniline
film
membrane
solvent
organic solvent
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JP2829593A
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English (en)
Inventor
Hisao Hachisuga
久雄 蜂須賀
Kenji Matsumoto
憲嗣 松本
Tomoumi Obara
知海 小原
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Nitto Denko Corp
Original Assignee
Nitto Denko Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】ポリアニリンからなり、表面に種々の気体に対
する効果的且つ選択的な分離性を有する気体分離膜及び
その製造方法を提供する。 【構成】本発明による気体分離膜は、アニリンの酸化重
合体である線状ポリアニリンからなり、表面の緻密層が
これに連続する多孔質層に一体に支持されている異方性
膜であつて、炭酸ガス/メタン分離係数が1.5以上であ
る。このような気体分離膜は、アニリンの酸化重合体で
ある線状ポリアニリンを第1の有機溶剤に溶解させて製
膜溶液とし、これを適宜の支持基材上に塗布した後、上
記有機溶媒の一部を蒸発させ、次いで、上記第1の有機
溶剤と混和性を有するが、上記ポリアニリンを溶解させ
ない第2の有機溶剤に浸漬し、その後、水中に浸漬し、
脱溶剤することによつて得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アニリンの酸化重合体
である線状ポリアニリンからなり、表面層に気体分子に
対する選択的分離性を有する緻密層を備え、この緻密層
がこれに連続する多孔質層に一体に支持されている異方
性構造を有する気体分離膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アニリンの酸化によつて得られる線状重
合体であって、種々の有機溶剤に可溶性であるポリアニ
リンや、そのようなポリアニリンからなり、表面に緻密
層を有し、その緻密層がこれに連続する多孔質層に一体
に支持されている異方性構造を有する水処理用の分離
膜、特に、限外濾過用に好適な分離膜は、例えば、特開
平2−211230号公報に記載されているように、既
に知られている。
【0003】しかし、そのようなポリアニリンからな
り、種々の気体に対して効果的且つ選択的な分離性を有
する異方性膜は、従来、知られていない。本発明者ら
は、このようなポリアニリンを従来の湿式製膜法にて製
膜するに際して、表面層に特別な不溶化処理を行なうこ
とによつて、種々の気体に対して効果的且つ選択的な分
離性を有する緻密層を膜表面に形成することができるこ
とを見出して、本発明に至つたものである。
【0004】従つて、本発明は、アニリンの酸化によつ
て得られる線状重合体であつて、種々の有機溶剤に可溶
性であるポリアニリンからなり、表面層に種々の気体に
対する効果的且つ選択的な分離性を有する緻密層を備
え、この緻密層がこれに連続する多孔質層に一体に支持
されている異方性構造を有する気体分離膜及びその製造
方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明による気体分離用
異方性膜は、アニリンの酸化重合体である線状ポリアニ
リンからなり、表面の緻密層がこれに連続する多孔質層
に一体に支持されている異方性膜であつて、炭酸ガス/
メタン分離係数が1.5以上であることを特徴とする。
【0006】かかるポリアニリンからなる気体分離用異
方性膜は、本発明による第1の方法によれば、アニリン
の酸化重合体である線状ポリアニリンを第1の有機溶剤
に溶解させて製膜溶液とし、これを適宜の支持基材上に
塗布した後、上記有機溶剤の一部を蒸発させ、次いで、
上記第1の有機溶剤と混和性を有するが、上記ポリアニ
リンを溶解させない第2の有機溶媒に浸漬し、その後、
水中に浸漬し、脱溶剤して、表面に緻密層を有し、この
緻密層がこれに連続する多孔質層に一体に支持されてい
る異方性構造を有する多孔質膜に形成することによつて
得ることができる。
【0007】また、かかるポリアニリンからなる気体分
離用異方性膜は、本発明による第2の方法によれば、ア
ニリンの酸化重合体である線状ポリアニリンを第1の有
機溶剤に溶解させて製膜溶液とし、これを適宜の支持基
材上に塗布した後、表面を加熱処理して、表面層のポリ
アニリンのみを不溶化させ、その後、上記第1の有機溶
剤と混和性を有するが、上記ポリアニリンを溶解させな
い凝固溶剤に浸漬し、脱溶剤して、表面に緻密層を有
し、この緻密層がこれに連続する多孔質層に一体に支持
されている異方性構造を有する多孔質膜に形成すること
によつて得ることができる。
【0008】本発明において、気体分離用膜の素材であ
るポリアニリンは、アニリンの酸化重合によつて得られ
る線状重合体であつて、種々の有機溶剤に可溶性であ
る。このようなポリアニリンは、既に知られており、例
えば、前述した特開平2−211230号公報に記載さ
れているように、
【0009】
【化1】
【0010】(式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中
のキノンジイミン構造単位及びフエニレンジアミン構造
単位のモル分率を示し、0<m<1、0<n<1、m+
n=1である。)で表わされる繰り返し単位を主たる繰
り返し単位として有する。かかるポリアニリンは、好ま
しくは、酸解離定数 pKa値が3.0以下であるプロトン酸
の存在下に溶剤中にてアニリンに、温度を5℃以下に保
持しつつ、標準水素電極を基準とする還元半電池反応に
おける起電力として定められる標準電極電位が0.6V以
上である酸化剤の水溶液を、アニリン1モル当りに、酸
化剤の1モルを酸化剤1分子を還元するのに必要な電子
数で割つた量として定義される当量で、2当量以上加え
て、上記プロトン酸にてドーピングされたポリアニリン
を調製し、次いで、このポリアニリンを塩基性物質によ
つて脱ドーピングすることによつて、有機溶剤に可溶性
であり、好ましくは、N−メチルピロリドン中、30℃
で測定した極限粘度〔η〕が0.40dl/g以上であるポリ
アニリンを得ることができる。
【0011】上記酸化剤としては、例えば、二酸化マン
ガン、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、第
二鉄塩、ヨウ素酸塩等が特に好ましく用いられる。これ
らの中で、例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウムや二
酸化マンガンは、その酸化反応において、共に1分子当
りに2個の電子が関与するので、通常、アニリン1モル
に対して1〜1.25モルの範囲の量が用いられる。
【0012】また、上記プロトン酸は、酸解離定数 pKa
値が3.0以下であれば、特に、限定されるものではな
く、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、ホウフツ化
水素酸、リンフツ化水素酸、フツ化水素酸、ヨウ化水素
酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスル
ホン酸等の芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸、エタ
ンスルホン酸等のアルカンスルホン酸、ピクリン酸等の
フエノール類、m−ニトロ安息香酸等の芳香族カルボン
酸、ジクロロ酢酸等の脂肪族カルボン酸等を挙げること
ができる。また、ポリマー酸も用いることができる。か
かるポリマー酸としては、例えば、ポリスチレンスルホ
ン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、
ポリビニル硫酸等を挙げることができる。
【0013】アニリンの酸化重合における溶剤として
は、アニリン、プロトン酸及び酸化剤を溶解し、且つ、
酸化剤によつて酸化されないものが用いられる。水が最
も好ましく用いられるが、しかし、必要に応じて、メタ
ノール、エタノール等のアルコール類、アセトニトリル
等のニトリル類、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチ
ルスルホキシド等の極性溶剤、テトラヒドロフラン等の
エーテル類、酢酸等の有機酸類も用いることができる。
また、これら有機溶剤と水との混合溶剤も用いることが
できる。
【0014】このようにして、用いたプロトン酸によつ
てドーピングされたポリアニリンを得ることができる。
ドープ状態では、このポリアニリンは、プロトン酸と塩
を形成しているために、後述するような有機溶剤に溶解
しない。高分子量アミンの塩が一般に有機溶剤に難溶性
であることはよく知られている。しかしながら、本発明
によれば、この有機溶剤不溶性のポリアニリンを脱ドー
ピングすることによつて、有機溶剤に可溶性のポリアニ
リンとすることができる。
【0015】かかるプロトン酸にてドーピングされてい
るポリアニリンの脱ドーピングは、一種の中和反応であ
るから、ドーパントとしてのプロトン酸を中和し得る塩
基性物質であれば、特に、限定されるものではないが、
好ましくは、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化
カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸
化カルシウム等の金属水酸化物が用いられる。脱ドーピ
ングは、上記アニリンの酸化重合の後、反応混合物中に
直接に塩基性物質を加えてもよく、或いは重合体を一旦
単離した後、塩基性物質を作用させてもよい。
【0016】アニリンの酸化重合によつて得られたドー
プ状態のポリアニリンは、通常、10-6S/cm以上の電
導度を有して、黒緑色を呈するが、脱ドーピング後は、
紫色或いは紫がかつた銅色である。この変色は、重合体
中の塩構造のアミン窒素が遊離アミンに変化したためで
ある。電導度は、通常、10-10 S/cm台である。この
ようにして得られる脱ドープ状態のポリアニリンは、高
分子量を有し、しかも、種々の有機溶剤に溶解する。か
かる有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、
N,N−ジメチルアセトアミド、 N,N−ジメチルホルムア
ミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イ
ミダゾリジノン、スルホラン等の非プロトン性極性有機
溶剤を挙げることができる。
【0017】かかる有機溶剤に対する脱ドープ状態のポ
リアニリンの溶解性は、ポリアニリンの平均分子量や溶
剤にもよるが、その1〜100%が溶け、1〜30重量
%の溶液を得ることができる。特に、脱ドーピング状態
のポリアニリンは、N−メチル−2−ピロリドンに高い
溶解性を示し、通常、その20〜100%が溶解し、3
〜30重量%溶液を得ることができる。しかし、テトラ
ヒドロフラン、80%酢酸水溶液、60%ギ酸水溶液、
アセトニトリル等には溶解しない。
【0018】本発明による気体分離用異方性膜は、この
ようなポリアニリンからなり、表面の緻密層がこれに連
続する多孔質層に一体に支持されている異方性膜であつ
て、炭酸ガス/メタン分離係数が1.5以上である。かか
る気体分離用異方性膜は、本発明の第1の方法によれ
ば、アニリンの酸化重合体である線状ポリアニリンを第
1の有機溶剤に溶解させて製膜溶液とし、これを適宜の
支持基材上に塗布した後、上記有機溶剤の一部を蒸発さ
せ、次いで、上記第1の有機溶剤と混和性を有するが、
上記ポリアニリンを溶解させない第2の有機溶媒に浸漬
し、その後、水中に浸漬し、脱溶剤することによつて得
ることができる。
【0019】製膜溶液におけるポリアニリンの濃度は、
通常、1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の範
囲である。製膜溶液におけるポリアニリン濃度が小さす
ぎるときは、得られる異方性膜が気体に対する選択分離
性に劣るようになり、他方、ポリアニリン濃度が大きす
ぎるときは、得られる異方性膜の気体の透過速度が小さ
くなるので、実用上、好ましくない。ポリアニリン濃度
とも関連するが、製膜溶液は、支持基材への塗布時、一
般的には、10〜1000ポイズの粘度を有するのが好
ましい。
【0020】上記製膜溶液を形成するための上記第1の
有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N
−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミ
ド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミ
ダゾリジノン、スルホラン等の非プロトン性極性有機溶
剤を挙げることができる。製膜溶液を塗布する上記支持
基材は、特に限定されない。ガラス、ステンレス、アル
ミニウム、ポリエチレン、ポリプロピレン等で例示され
る材料からなる平滑な表面を有する板部材や管部材を用
いたときは、ポリアニリンが凝固した後、これら基材か
ら容易に剥離するので、それぞれシート状及び管状膜を
得ることができる。
【0021】また、支持基材として、ポリエステル繊
維、アクリル繊維等の有機質繊維や、ガラス繊維、炭素
繊維等の無機質繊維からなる織布や不織布のシート部材
や管部材も用いることができる。このような支持基材上
に製膜溶液を塗布して、製膜することによつて、これら
基材に一体化された複合膜を得ることができる。支持基
材への製膜溶液の塗布厚さは、得られる異方性膜の用途
や基材の種類によつても異なるが、通常は、得られる緻
密層と多孔質膜の厚さの合計が10〜700μm、好ま
しくは50〜200μmとなるように塗布される。膜厚
が薄すぎるときは、得られる膜が機械的強度に劣るよう
になり、他方、厚すぎるときは、選択分離性を増すが、
気体の透過速度が小さくなり、共に、実用性に劣ること
となる。
【0022】かかる第1の方法において、ポリアニリン
を含む製膜溶液を適宜の支持基材上に塗布した後、適宜
時間、そのまま放置することによつて、上記第1の有機
溶剤の一部を蒸発させることができる。そのための時間
条件は、特に限定されるものではないが、通常、1秒か
ら1時間の範囲である。また、温度は常温でもよいが、
必要に応じて、加熱雰囲気下に有機溶剤を蒸発させても
よい。
【0023】本発明による第1の方法において、前記第
2の有機溶剤は、前記第1の有機溶剤及び水のいずれと
も混和性を有するが、用いるポリアニリンを溶解しない
有機溶剤であつて、例えば、メタノール、エタノール、
プロパノール(特に、イソプロパノール)、ブタノール
(特に、t−ブタノール)等の炭素数1〜5の脂肪族低
級アルコール(特に、炭素数3以上の場合は、第2級又
は第3級アルコール)や、エチレングリコール、プロピ
レングリコール等のアルキレングリコール等が好ましく
用いられる。これら以外にも、例えば、アセトン、グリ
セリン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノ
メチルエーテル等も用いられる。
【0024】かかる第2の有機溶剤への浸漬条件は、用
いる有機溶剤にもよるが、通常、常温でよいが、必要に
応じて、加温してもよい。また、時間条件は、通常、1
時間以内、好ましくは、5分以内である。本発明による
第1の方法にによれば上述したようにして、ポリアニリ
ンを第1の有機溶剤に溶解させて製膜溶液とし、これを
適宜の支持基材上に塗布した後、上記第1の有機溶剤と
混和性を有するが、上記ポリアニリンを溶解させない第
2の有機溶媒に浸漬し、次いで、水中に浸漬し、脱溶剤
することによつて、表面に緻密層を有し、この緻密層が
これに連続する多孔質層に一体に支持されている異方性
構造を有する多孔質膜を得ることができる。
【0025】最終の脱溶剤乃至凝固段階である水への浸
漬は、温度条件が0〜50℃、好ましくは0〜30℃で
あり、時間条件は、通常、1時間以内、好ましくは、5
分以内である。このようにして得られる膜は、水を含有
している膜、即ち、含水膜であるので、かかる含水膜を
水及び上記第2の有機溶剤のいずれにも混和性を有する
溶剤、例えば、アルコール類に浸漬した後、水と混和し
ない有機溶剤、例えば、ヘキサン等のような炭化水素に
浸漬し、その後、室温にて、又は必要に応じて加熱下に
乾燥させることによつて、乾燥膜を得ることができる。
また、含水膜や乾燥膜を熱処理する、例えば、100〜
200℃の温度に5分間乃至3時間程度加熱することに
よつて、膜の安定性を高めることができる。
【0026】次に、本発明によれば、第2の方法とし
て、前記溶剤可溶性のポリアニリンを前述したと同様の
第1の有機溶剤に溶解させて製膜溶液とし、これを適宜
の支持基材上に塗布した後、表面を加熱処理して、表面
層のポリアニリンのみを不溶化させ、その後、上記第1
の有機溶剤と混和性を有するが、上記ポリアニリンを溶
解させない凝固溶剤に浸漬し、脱溶剤することによつて
得ることができる。
【0027】かかる第2の方法において、支持基材に塗
布された製膜溶液の表面層のみを加熱処理して、表面層
のポリアニリンを不溶化させるには、通常、表面層を5
0〜200℃、好ましくは100〜200℃の範囲の温
度に加熱すればよい。このような表面層の加熱処理は、
製膜溶液の表面に熱風を吹き付ければよいが、或いは予
め加熱した熱板やローラを表面層に接触させてもよい。
【0028】このように、支持基材上に塗布し、表面層
のポリアニリンを不溶化させた後、凝固溶剤に浸漬し
て、ポリアニリンを脱溶剤、凝固させることによつて、
異方性膜を得る。上記凝固溶剤は、用いるポリアニリン
を溶解させないが、製膜溶液の溶剤と良好な相溶性を有
し、好ましくは、任意の割合にて相溶することが必要で
あり、代表的には、水が用いられる。凝固溶剤の他の例
としては、水に相溶し得る有機溶剤と水との混合溶剤を
挙げることができ、かかる有機溶剤の具体例として、例
えば、アセトン、グリセリン、メタノール等を挙げるこ
とができる。凝固溶剤におけるこれら有機溶剤の量は、
通常、50重量%以下であるが、必要ならば、かかる有
機溶剤を単独で凝固溶剤として用いることもできる。
【0029】ポリアニリンを凝固溶剤に接触させて、ポ
リアニリンを多孔質膜化する際の温度は、一般的には、
用いる凝固溶剤の沸点未満の温度である。水を凝固溶剤
として用いる場合、通常、0〜80℃、好ましくは0〜
50℃の範囲である。凝固に要する時間は、特に限定さ
れるものではないが、10秒から20時間にわたつてよ
い。
【0030】更に、本発明によれば、上述したようにし
て得られた異方性を有するポリアニリン膜をプロトン酸
にてドーピングすることによつて、ポリアニリンを導電
性とすることができる。ここに、上記プロトン酸は、 p
Ka値が4.0以上の無機酸又は有機酸であることが好まし
い。従つて、このようなプロトン酸として、例えば、塩
酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、ホウフツ化水素酸、リンフ
ツ化水素酸、フツ化水素酸、ヨウ化水素酸等の無機酸、
ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香
族スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等
の脂肪族スルホン酸、ピクリン酸等のフエノール類、m
−ニトロ安息香酸等の芳香族カルボン酸、ジクロロ酢酸
等の脂肪族カルボン酸等の有機酸を挙げることができ
る。
【0031】上記有機酸はポリマー酸であつてもよい。
このようなポリマー酸としては、例えば、ポリビニルス
ルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、
スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリル
スルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ−2−ア
クリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリハ
ロゲン化アクリル酸等を挙げることができる。更に、ナ
フイオン(米国デユポン社登録商標)として知られてい
るフツ素重合体も、ポリマー酸として好適に用いること
ができる。
【0032】ポリアニリン膜をドーピングする方法は、
特に限定されるものではないが、例えば、上記プロトン
酸の水溶液にポリアニリン膜を浸漬すればよい。また、
ポリアニリン膜をプロトン酸にてドーピングする際に、
酸化剤を併用してもよい。このような酸化剤としては、
例えば、二酸化マンガン、ペルオキソ二硫酸アンモニウ
ム、過酸化水素、第二鉄塩、ヨウ素酸塩等を挙げること
ができる。
【0033】更に、本発明によれば、上述したようにし
て、膜をドーピングした後、ドーパントの少なくとも一
部を脱ドーピングしてもよい。ドーピングした膜のドー
パントのすべてを脱ドーピングする必要はなく、一部の
ドーパントが膜に残存していても、何ら支障はない。し
かし、脱ドーピング量は、ドーパントの全量の10〜1
00%、好ましくは、30〜90%である。
【0034】このような脱ドーピングは、一種の中和反
応であるから、脱ドーピング剤は、ドーパントとしての
プロトン酸を中和し得る塩基性物質であれば、特に、限
定されることなく、種々の塩基性物質を用いることがで
きる。このような塩基性物質として、例えば、アンモニ
ア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチ
ウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が好ま
しく用いられる。この脱ドーピング方法も、特に限定さ
れるものではないが、例えば、上記塩基性物質の水溶液
にポリアニリン膜を浸漬すればよい。
【0035】本発明によれば、異方性構造を有する多孔
質膜を形成した後、ポリアニリンをプロトン酸にて、必
要に応じて酸化剤を併用して、ドーピングすることによ
つて、拡散による気体の分離性を高めることができる。
このような分離性の向上は、ドーパントがポリアニリン
の分子鎖間隙を狭くするためであるとみられる。更に、
本発明によれば、上記のようにして、ポリアニリンをド
ーピングした後、ドーパントの少なくとも一部を脱ドー
ピングすることによつて、膜の局所的な拡散性が促進さ
れるので、分離性を低下させることなく、透過速度を向
上させることができる。
【0036】
【発明の効果】以上のように、本発明による気体分離膜
は、線状構造を有するポリアニリンからなり、表面に気
体の選択的分離性を有する緻密層を備え、この緻密層が
これに連続する多孔質層に一体に支持されている異方性
構造を有する多孔質膜であつて、特に、有機蒸気、気
体、イオン等の分離に好適に用いることができる。
【0037】
【実施例】以下に本発明において用いる溶剤可溶性のポ
リアニリンの製造を示す参考例と共に、実施例を挙げて
本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら
限定されるものではない。
【0038】参考例 (アニリンの酸化重合によるドープ状態の導電性ポリア
ニリンの製造)攪拌装置、温度計及び滴下ろうとを備え
た1リットル容量セパラブル・フラスコに蒸留水450
g、36%塩酸30ml及びアニリン30g(0.322モ
ル)をこの順序にて仕込み、アニリンを溶解させた。別
に、氷水にて冷却しながら、ビーカー中の蒸留水112
gに97%濃硫酸32g(0.32モル)を加え、混合し
て、硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液を上記セパ
ラブル・フラスコに加え、フラスコ全体を氷水で5℃以
下の温度まで冷却した。
【0039】次に、ビーカー中にて蒸留水172gにペ
ルオキソ二硫酸アンモニウム73.5g(0.322モル)
を加え、溶解させて、酸化剤水溶液を調製した。フラス
コ全体を冷却恒温槽で冷却して、反応混合物の温度を−
3℃以下に保持しつつ、攪拌下にアニリン塩の水溶液に
上記ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液を徐々に10
5分を要して滴下した。最初、無色透明の溶液は、重合
の進行に伴つて緑青色から黒緑色となり、次いで、黒緑
色の粉末が析出した。ペルオキソ二硫酸アンモニウム水
溶液の滴下終了後、更に45分間、−3℃の温度にて攪
拌を続けた。
【0040】得られた重合体粉末の一部を採取し、水
洗、アセトン洗浄し、室温で真空乾燥して、黒緑色の重
合体粉末を得た。これを直径13mm、厚さ700μmの
デイスクに加圧成形し、フアン・デル・ポー法によつ
て、その電導度を測定したところ、18S/cmであつ
た。 (導電性ポリアニリンのアンモニアによる脱ドーピン
グ)上記ドープされている導電性ポリアニリン粉末を含
むフラスコ中の反応混合物に25%アンモニア水150
mlを加え、3℃に冷却下、1.5時間攪拌した。反応混合
物は、黒緑色から青紫色に変化した。
【0041】ブフナーろうとにて粉末を濾別し、ビーカ
ー中にて攪拌しながら、蒸留水にて濾液が無色になるま
で繰り返して洗浄し、続いて、濾液が無色になるまでア
セトンにて洗浄した。この後、粉末を室温にて10時間
真空乾燥して、紫色の脱ドーピングした重合体粉末22.
5gを得た。この重合体はN−メチル−2−ピロリドン
に可溶性であつて、溶解度は同溶剤100gに対して8
g(7.4%)であつた。また、これを溶剤として30℃
で測定した極限粘度〔η〕は1.20であつた。この重合
体は、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミド
には1%以下の溶解度であつた。テトラヒドロフラン、
ピリジン、80%酢酸水溶液、60%ギ酸水溶液及びア
セトニトリルには実質的に溶解しなかつた。
【0042】比較例1 参考例にて得た脱ドープしたポリアニリンをN−メチル
−2−ピロリドンに溶解させて、濃度15重量%の製膜
溶液を調製した。この製膜溶液を室温にてアプリケータ
ーを用いて不織布上に塗布した後、直ちに温度4℃の水
中に浸漬し、脱溶剤させて、異方性膜を得た。この異方
性膜を乾燥させた後、炭酸ガスとメタンガスの透過測定
を行なつた。炭酸ガスの透過速度P(CO2)は5.8(m
3 (STP)/m2 ・h・atm)、メタンの透過速度
P(CH4)は8.8(m3 (STP)/m2 ・h・at
m)であつた。従って、分離係数α(P(CO2)/P
(CH4))は0.7であつて、満足すべき気体分離能を得
ることができなかつた。
【0043】実施例1 参考例にて得た脱ドープしたポリアニリンをN−メチル
−2−ピロリドンに溶解させて、濃度15重量%の製膜
溶液を調製した。この製膜溶液を室温にてアプリケータ
ーを用いて不織布上に塗布した後、100℃の乾燥機中
に5分間放置して、製膜溶液から溶剤を一部蒸発させた
後、イソプロピルアルコール/水(容量比1/1)混合
溶液に10秒間浸漬し、その後、直ちに、4℃の水中に
1時間浸漬し、脱溶剤させて、表面に緻密層を有する多
孔質構造の異方性膜を得た。この異方性膜を乾燥させ
て、本発明による気体分離膜(乾燥膜)を得た。
【0044】この気体分離膜は、二酸化炭素透過速度
(P(CO2))1.0×10-2(m3 (STP)/m2
h・atm)、メタン透過速度(P(CH4)は(C
2))1.3×10-4(m3 (STP)/m2 ・h・at
m)を有し、従つて、分離係数α(P(CO2)/P(C
4))は77であつた。このように、本発明による膜
は、上記比較例1による膜と比べて、気体に対して高度
の分離性を有するので、比較例1による膜の緻密層が多
孔性であるところ、本発明による膜の緻密層は、実質的
に無孔であることが理解される。
【0045】実施例2 参考例にて得た脱ドープしたポリアニリンをN−メチル
−2−ピロリドンに溶解させて、濃度15重量%の製膜
溶液を調製した。この製膜溶液を室温にてアプリケータ
ーを用いて不織布上に塗布した後、100℃の乾燥機中
に5分間放置して、製膜溶液から溶剤を一部蒸発させた
後、表面を120℃の熱風にて処理した。その後、4℃
の水中に1時間浸漬し、脱溶剤させて、表面に緻密層を
有する多孔質構造の異方性膜を得た。この異方性膜を乾
燥させて、本発明による気体分離膜を得た。
【0046】この気体分離膜は、二酸化炭素透過速度
(P(CO2))7.1×10-3(m3 (STP)/m2
h・atm)、メタン透過速度(P(CH4)は(C
2))8.5×10-5(m3 (STP)/m2 ・h・at
m)を有し、従つて、分離係数α(P(CO2)/P(C
4))は89であつた。
【0047】実施例3 実施例1にて得られた乾燥膜を室温にて1Nの塩酸水溶
液に17時間浸漬し、ドーピングした後、乾燥させた。
この気体分離膜は、二酸化炭素透過速度(P(CO2))
7.0×10-5(m3 (STP)/m2 ・h・atm)、
メタン透過速度(P(CH4)は(CO2))2.7×10-7
(m3 (STP)/m2 ・h・atm)を有し、従つ
て、分離係数α(P(CO2)/P(CH4))は260で
あつた。この結果から、ドーパントは、ポリアニリンの
分子鎖間隙を狭くし、拡散による気体の分離性を向上さ
せると理解される。
【0048】実施例4 実施例3において、ドーピングし、乾燥させた後の膜を
室温にて0.1Nのアンモニア水溶液に10分間浸漬し、
脱ドーピングした後、乾燥させた。この気体分離膜は、
二酸化炭素透過速度(P(CO2))8.1×10-5(m3
(STP)/m2 ・h・atm)、メタン透過速度(P
(CH4)は(CO2))3.1×10-7(m3 (STP)/
2 ・h・atm)を有し、従つて、分離係数α(P
(CO2)/P(CH4))は261であつた。この結果か
ら、脱ドーピングによれば、分離係数を低下させること
なく、炭酸ガスの透過速度を向上させることができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アニリンの酸化重合体である線状ポリアニ
    リンからなり、表面の緻密層がこれに連続する多孔質層
    に一体に支持されている異方性膜であつて、炭酸ガス/
    メタン分離係数が1.5以上であることを特徴とする気体
    分離用異方性膜。
  2. 【請求項2】アニリンの酸化重合体である線状ポリアニ
    リンを第1の有機溶剤に溶解させて製膜溶液とし、これ
    を適宜の支持基材上に塗布した後、上記有機溶剤の一部
    を蒸発させ、次いで、上記第1の有機溶剤と混和性を有
    するが、上記ポリアニリンを溶解させない第2の有機溶
    媒に浸漬し、次いで、水中に浸漬し、脱溶剤して、表面
    に緻密層を有し、この緻密層がこれに連続する多孔質層
    に一体に支持されている異方性構造を有する多孔質膜に
    形成することを特徴とするポリアニリンからなる気体分
    離用異方性膜の製造方法。
  3. 【請求項3】アニリンの酸化重合体である線状ポリアニ
    リンを第1の有機溶剤に溶解させて製膜溶液とし、これ
    を適宜の支持基材上に塗布した後、表面を加熱処理し
    て、表面層のポリアニリンのみを不溶化させ、その後、
    上記第1の有機溶剤と混和性を有するが、上記ポリアニ
    リンを溶解させない凝固溶剤に浸漬し、脱溶剤して、表
    面に緻密層を有し、この緻密層がこれに連続する多孔質
    層に一体に支持されている異方性構造を有する多孔質膜
    に形成することを特徴とするポリアニリンからなる気体
    分離膜の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項2又は3に従つて、異方性構造を有
    する多孔質膜を形成した後、ポリアニリンをプロトン酸
    にて、必要に応じて酸化剤を併用して、ドーピングする
    ことを特徴とするポリアニリンからなる気体分離膜の製
    造方法。
  5. 【請求項5】請求項4に従つて、ポリアニリンをドーピ
    ングした後、ドーパントの少なくとも一部を脱ドーピン
    グすることを特徴とするポリアニリンからなる気体分離
    膜の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004022295A (ja) * 2002-06-14 2004-01-22 Toyota Motor Corp セパレータおよびその製造方法ならびに蓄電素子
JP2010539726A (ja) * 2007-09-18 2010-12-16 クワンジュ インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー 酸化還元反応を用いる有機−無機ハイブリッド型接合素子およびこれを用いる有機太陽電池
CN116550156A (zh) * 2023-04-23 2023-08-08 福建德尔科技股份有限公司 空气分离膜的改性方法

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CN116550156B (zh) * 2023-04-23 2024-02-27 福建德尔科技股份有限公司 空气分离膜的改性方法

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