JPH06235113A - 糸条引取装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】ゴデットローラを配設してなる高速紡糸用糸条
引取装置において、該ゴデットローラに進入する糸条を
囲むように糸条保護部材を用いて随伴気流を除去するこ
とを特徴とする糸条引取装置。 【効果】随伴気流を除去することにより、ゴデットロー
ラ上の糸揺れを抑制し、走行糸条間の接触による糸切れ
を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はゴデットローラを配設し
てなる高速紡糸用糸条引取装置に関し、ゴデットローラ
に進入する糸条が気流の影響を受けることで発生するゴ
デットローラ上の糸揺れや走行糸条間の干渉を防止し
て、糸切れの誘発を阻止することができる糸条引取装置
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年合成繊維の生産に関して、紡糸速度
の高速化が進むに伴い、ゴデットローラ周辺の気流の影
響でローラ上の糸条の走行安定性が損なわれ、操業性に
悪影響を及ぼすという問題が生じている。特に、多糸条
を同時に引き取る装置においてゴデットローラ上での糸
揺れが大きくなると、糸条間の接触が生じ糸切れの原因
となる。

【０００３】一般に、ゴデットローラ上の走行糸条の安
定性は、この糸条の走行張力に依存することが知られて
いるが、糸条の走行安定化を狙って、高張力巻き取りを
実施すると、巻き取り直後の糸条の収縮によりパッケー
ジがボビンホルダから抜けなくなったり、パッケージ内
層部と外層部、および中央部と端面部の糸特性に差が生
じ、均一な巻き取り糸条が得られなくなってしまうとい
う問題が発生するため走行安定化の手段としては限界が
ある。

【０００４】特開昭５２−４６１１６号公報では、糸道
上のインターレースノズルから噴射される流体が、ゴデ
ットローラ上の糸条に干渉し、走行を不安定にしている
として、インターレースノズルとゴデットローラの間に
遮蔽板を設けた流体処理装置が提案されている。さらに
特開昭５８−２０３１０９では、インターレースノズル
とその直前のゴデットローラとの間に引き取りローラへ
の油剤付着を防止し、かつインターレースノズルからの
気流の流れ方向を引取ローラから糸条を引き離す方向に
変更せしめる反射板を設けるマルチフィラメントの製造
法が提案されている。しかし、これらの対策を講じてイ
ンターレースノズルから噴射される流体の影響を除去し
ても、他の要因による空気流が残存するため、糸条の安
定性を十分に高めることはできなかった。

【０００５】一方、特開昭６１−５１４６３号公報で
は、ゴデットローラの高速回転によって発生する随伴気
流が、ローラに進入してくる糸条に対して特に強く作用
する事実が明らかにされ、この作用を軽減するために、
ゴデットローラの周りにゴデットローラの随伴空気流を
緩和する部材を設置することで、ゴデットローラの随伴
気流を緩和する糸条引取装置が開示されている。しか
し、ゴデットローラの回転がさらに高速になり周速度が
５０００ｍ／分を越える場合には、該公報の方法によっ
てゴデットローラの随伴気流を緩和しても、ゴデットロ
ーラ上の糸揺れ抑制効果は十分ではなかった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、かかる
従来技術を踏まえ、ゴデットローラ進入直前の糸条に対
するあらゆる空気流の干渉を徹底的に防止することで、
ゴデットローラ上で糸条をより安定に走行させることの
できる装置について鋭意検討した結果、本発明に到達し
たものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、ゴデ
ットローラを配設してなる高速紡糸用糸条引取装置にお
いて、該ゴデットローラに進入する糸条に近接して糸条
保護部材を全糸条をカバーするように設けたことを特徴
とする糸条引取装置である。

【０００８】本発明者らは、高速紡糸工程におけるゴデ
ットローラ周辺の糸条走行状態について詳細に観察した
結果、ゴデットローラ上の糸条の走行安定性を決定する
のは、ローラ進入側の糸条の走行状態であることを確認
し、さらに、ローラ進入側の糸条にはたらく外乱要因と
しては、インターレースノズルから噴出される気体やゴ
デットローラの随伴気流のほかにも、高速で走行する糸
条自体の随伴気流を考慮する必要があることを見出し
た。特にゴデットローラ近傍の気流体が糸条の随伴気流
とゴデットローラが引起こす随伴気流等が激しく入り乱
れているため、ゴデットローラに進入する糸条が不安定
となる。

【０００９】かかる問題について、本発明者が検討した
結果、ゴデットローラに進入する糸条にはたらくあらゆ
る空気流の干渉を防止するために、ゴデットローラに進
入する直前の全糸条に糸条保護部材を設置したところ、
ゴデットローラの周速度を５０００ｍ／分以上に高速回
転させた場合であっても、安定に糸条を走行させること
ができることがわかった。

【００１０】本発明における糸条保護部材は、図１のよ
うに糸条３の広がり方向（Ｘ）に全糸条を少なくともそ
の内面をカバーするものであればよく、糸条保護部材の
カバーの形状は図２に示すコの字型や、図３に示すよう
に糸条を囲む筒状の形状などがあるが、糸掛け時の作業
性を考慮して、筒状の一部、例えば外側面を開閉式とす
ることもできる。また、図１のように糸条保護部材にお
ける該部材のゴデットローラ側端部をゴデットローラの
接線方向に沿って折り曲げたものであってもよい。該部
材が糸条走行時において完全な筒状でない場合には、該
部材の幅は糸条幅（Ｘ）よりもその両幅が１０ｍｍ以上
長いことが望ましい。また、該部材の糸条に沿った方向
の長さは、５０ｍｍ以上であることが望ましい。

【００１１】また糸条保護部材の設置位置はゴデットロ
ーラ進入側の糸条に接触しない範囲でできるだけ近接し
ていることが望ましい。また、ゴデットローラにもでき
るだけ近接していることが望ましい。糸条と糸条保護部
材の間の距離は３０ｍｍ以下とすることが好ましく、よ
り好ましくは１５ｍｍ以下である。ゴデットローラと該
部材の間の距離は３０ｍｍ以下とすることが好ましく、
より好ましくは１０ｍｍ以下である。

【００１２】

【作用】前記した本発明の糸条保護部材は具体的には次
のように適用できる。図４において、紡糸口金から吐出
され冷却風を受けて固化した糸条３は、紡糸筒１を出て
オイリングローラ２にて油分の付与を受けた後に第１ゴ
デットローラ４および第２ゴデットローラ５を経て、ト
ラバース機構６により綾振りされ、フリクションローラ
７により駆動されるボビン８上にパッケージ９として巻
き取られる。ここで第１ゴデットローラ４と第２ゴデッ
トローラ５の進入側に糸条保護部材１０をそれぞれ取り
付け、糸条の走行やゴデットローラの回転などによって
発生する気体流が糸条に干渉するのを防いでいる。

【００１３】

【実施例】以下本発明を実施例により、さらに詳細に説
明する。 実施例１ 極限粘度［η］＝０．６５の酸化チタンを含むポリエチ
レンテレフタレートのチップを紡糸温度２９３℃、吐出
量１６．２ｇ／分、紡糸口金孔１２ホール、紡糸速度
（引取ローラの速度）５１００ｍの条件で図４の装置を
用いて溶融紡糸を行った。ここで、糸条保護部材は図３
として示した断面が長方形の筒状で、内壁と糸条の隙間
が５ｍｍ、糸条に沿った長さが２００ｍｍのものを使用
し、ゴデットローラとの距離が最も近接した箇所で５ｍ
ｍとなるように設置した。第２ゴデットローラに進入す
る糸条の張力は０．１５ｇ／ｄであったが、ゴデットロ
ーラ上の糸揺れは小さく、安定した巻き取りができた。

【００１４】一方、糸条保護部材を用いずに紡糸した場
合（第２ゴデットローラ５に進入する糸条の張力は０．
１５ｇ／ｄ）、第２ゴデットローラ上の糸揺れが大き
く、糸条間の接触による糸切れが生じた。

【００１５】

【発明の効果】本発明の糸条引取装置により、随伴気流
を効率よく、カットできるのでゴデットローラ上の糸揺
れを抑制し、走行糸条間の接触による糸切れを防止する
ことができる。また、ゴデットローラ上の走行糸条を安
定化することができるので、油分付着量を抑えることが
可能となるので、高温熱板処理が必須の高次加工用原糸
に好適である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の構成要素となる糸条保護部材の一例で
ある。

【図２】本発明の構成要素となる他の糸条保護部材の一
例である。

【図３】本発明の構成要素となる他の糸条保護部材の一
例である。

【図４】本発明に係る高速紡糸引取装置の一例を示す正
面図である。

【符号の説明】

１：紡糸筒 ２：オイリングローラ ３：糸条 ４：第１ゴデットローラ ５：第２ゴデットローラ ６：トラバース機構 ７：フリクションローラ ８：ボビン ９：パッケージ １０：糸条保護部材

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ゴデットローラを配設してなる高速紡糸用
   糸条引取装置において、該ゴデットローラに進入する糸
   条に近接して、糸条保護部材を全糸条をカバーするよう
   に設けたことを特徴とする糸条引取装置。