JPH0622579U - 揺動板式圧縮機の脈動低減機構 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 吐出バルブ固定用のボルトの緩みによりバッ
フルプレートの孔が塞がれて吐出不能になるのを防ぐ。 【構成】 ５個のシリンダボア６をシリンダブロック１
に設け、それらのシリンダボア６内で圧縮された冷媒ガ
スを吐出室１２へ吐出する吐出バルブ１７を、シリンダ
ブロック１にボルト１９で固定し、吐出室１２をバッフ
ルプレート１４により、ボルト頭１９ａが収容される吐
出空間１２ａと吐出口へつながる吐出空間１２ｂとに分
離し、シリンダボア６の数と同数の５個の孔１４ａ〜１
４ｅを、バッフルプレート１４のボルト対向部２８を中
心とする所定半径の仮想円に沿って一定間隔おきに設け
て、両吐出空間１２ａ，１２ｂを連通させた。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、揺動板式圧縮機の脈動低減機構に関し、特に吐出バルブ固定用の ボルトの緩みによる吐出不能現象の発生を防ぐ揺動板式圧縮機の脈動低減機構に 関する。

【０００２】

【従来の技術】

揺動板式圧縮機の脈動低減機構として、図４に示すように、複数のシリンダボ ア６をシリンダブロック１に設け、それらのシリンダボア６内で圧縮された冷媒 ガスを吐出する吐出バルブ１７を、シリンダブロック１にボルト１９で固定し、 バッフルプレート１１４により吐出室１２を吐出バルブ１７側の吐出空間１２ａ と図示しない吐出口へつながる吐出空間１２ｂとに仕切り、両吐出空間１２ａ， １２ｂをバッフルプレート１１４に設けた単一の孔１１４ａで連通させたものが 提案されている（実願平３−４５９３７号）。

【０００３】 揺動板１０の揺動につれてピストン７がシリンダボア６内を摺動し、シリンダ ボア６内の冷媒ガスが圧縮され、その圧力が所定値以上に上昇したとき吐出バル ブ１７が開き、冷媒ガスは吐出ポート１６を通じて一旦吐出室１２の吐出空間１ ２ａに吐出され、吐出空間１２ａの冷媒ガスはバッフルプレート１１４の孔１１ ４ａで絞られながら吐出空間１２ｂへ流れ、吐出口から流出する。

【０００４】 前述のように吐出室１２をバッフルプレート１１４で２つの吐出空間１２ａ， １２ｂに仕切り、両吐出空間１２ａ，１２ｂをバッフルプレート１１４の単一の 孔１１４ａで連通させる構造を採用することにより、吐出ガスの脈動の発生を防 ぐようにしていた。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

ところが、前述の揺動板式圧縮機の脈動低減機構においては、冷媒ガスを吐出 空間１２ａから吐出空間１２ｂへ導く孔１１４ａが図４に示すようにボルト頭１ ９ａと対向するバッフルプレート１１４の中心に位置しているので、ボルト１９ が緩むと、そのボルト頭１９ａがバッフルプレート１１４の孔１１４ａを塞いで しまい、単に脈動低減機能の低下を招くにとどまらず、吐出不能により上昇した 吐出空間１２ａの内部圧力が、吐出室１２と吸入室１３とを仕切るリヤヘッド３ の隔壁３ａに加わり、その部分に歪みを生じさせ、異常変形をひき起こすおそれ があった。

【０００６】 この考案はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は緩んだ吐出バ ルブ固定ボルトによりバッフルプレートの孔が塞がれて吐出不能になるのを防ぐ ことができる揺動板式圧縮機の脈動低減機構を提供することである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

前述の課題を解決するためこの考案の揺動板式圧縮機の脈動低減機構は、複数 のシリンダボアをシリンダブロックに設け、前記シリンダボア内で圧縮された冷 媒ガスを吐出室へ吐出する吐出バルブを、前記シリンダブロックにボルトで固定 し、前記吐出室をバッフルプレートにより、前記ボルト頭が収容される吐出バル ブ側吐出空間と吐出口へつながる吐出口側吐出空間とに分離し、前記シリンダボ アの数と同数の孔を、前記バッフルプレートのボルト対向部を中心とする所定半 径の仮想円に沿って一定間隔おきに設けて、前記両吐出空間を連通させた。

【０００８】

【作用】

前述のようにシリンダボアの数と同数の孔を、バッフルプレートのボルト対向 部を中心とする所定半径の仮想円に沿って一定間隔おきに設けたので、ボルトが 緩み、そのボルト頭がバッフルプレートのボルト対向部に当接したとしても、バ ッフルプレートのいずれの孔も塞がれず、シリンダボアから吐出バルブ側吐出空 間へ送り込まれた冷媒ガスは、吐出口側吐出空間へ送り出される。

【０００９】

【実施例】 以下この考案の実施例を図面に基づいて説明する。

【００１０】 図１はこの考案の一実施例に係る脈動低減機構を備えた揺動板式圧縮機の縦断 面図である。この圧縮機のシリンダブロック１の一端面にはバルブプレート２を 介してリヤヘッド３が、他端面にはフロントヘッド４がそれぞれ固定されている 。

【００１１】 前記シリンダブロック１には、駆動軸５を中心にして周方向に所定間隔おきに ５個のシリンダボア６が配設されている。これらのシリンダボア６内にはそれぞ れピストン７が摺動自在に収容されている。

【００１２】 前記フロントヘッド４内にはクランク室８が形成され、このクランク室８内に は、駆動軸５の回転に連動してヒンジボール９を中心に揺動する揺動板１０が収 容されている。この揺動板１０はコネクチングロッド１１を介してピストン７に 連結され、揺動板１０の揺動によりピストン７がシリンダボア６内を往復運動す る。クランク室８の圧力が減少するにつれて揺動板１０の傾斜角度が大きくなり 、逆にクランク室８の圧力が増加するにつれて揺動板１０の傾斜角度が小さくな る。

【００１３】 前記リヤヘッド３内には、図示しない吐出口と通じる吐出室１２と、この吐出 室１２の周囲に位置する吸入室１３とが形成されている。吐出室１２と吸入室１ ３とはリヤヘッド３の一部を構成する隔壁３ａによって仕切られている。吐出室 １２内は、隔壁３ａに圧入された円板状のバッフルプレート１４によって、吐出 空間（吐出バルブ側吐出空間）１２ａと吐出空間（吐出口側吐出空間）１２ｂと に仕切られている。バッフルプレート１４は、図２及び図３に示すように、シリ ンダボア６と同数の５個の孔１４ａ〜１４ｅを有している。これらの孔１４ａ〜 １４ｅは、バッフルプレート１４のボルト頭対向部２８を中心とする所定半径の 仮想円２９に沿って一定間隔おきに設けられている。吐出空間１２ａと吐出空間 １２ｂとは５個の孔１４ａ〜１４ｅにより連通している。

【００１４】 前記バルブプレート２には、シリンダボア６と吐出空間１２ａとを連通させる 吐出ポート１６と、シリンダボア６と吸入室１３とを連通させる吸入ポート１５ とが、周方向に所定間隔おきに設けられている。吐出ポート１６は吐出弁１７に より開閉され、吐出弁１７はバルブプレート２のリヤヘッド側端面に弁押さえ１ ８とともにボルト１９により固定され、ボルト１９はバルブプレート２の中心孔 ２ａを介してシリンダブロック１のねじ孔２０に螺着されている。また、吸入ポ ート１５は吸入弁２１により開閉され、吸入弁２１はバルブプレート２とシリン ダブロック１との間に配設されている。

【００１５】 前記シリンダブロック１の中央部には、互いに連通するねじ孔２０、小径孔２ ２及び大径孔２３がシリンダブロック１の中心線に沿って設けられている。前記 ボルト１９には、吐出空間１２ａの高圧の冷媒ガスをシリンダブロック１の小径 孔２２へ導くガイド孔２７が設けられている。小径孔２２にはラジアル軸受２４ が、大径孔２３にはスラスト軸受２５がそれぞれ収容されている。ラジアル軸受 ２４及びスラスト軸受２５は駆動軸５のリヤ側端部を支持し、駆動軸５のフロン ト側端部はフロントヘッド４内のラジアル軸受２６によって支持されている。

【００１６】 更に、シリンダブロック１には吸入室１３とクランク室８とを連通する連通路 ３１が設けてあり、この連通路３１の途中には圧力調整弁３２が設けられ、この 圧力調整弁３２により吸入室１３内とクランク室８内との圧力調整を行う。

【００１７】 次に、この揺動板式圧縮機の作動を説明する。

【００１８】 図示しない車載エンジンの回転動力が駆動軸５に伝達されると、駆動軸５の回 転に連動して揺動板１０が揺動し、この揺動によりピストン７がシリンダボア６ 内を往復動してそのシリンダボア６内の容積が変化し、この容積変化によって冷 媒ガスの吸入、圧縮及び吐出が順次行なわれ、揺動板１０の傾斜角度に応じた容 量の高圧冷媒ガスが吐出される。

【００１９】 すなわち、熱負荷が小さくなり、圧力調整弁３２が連通路３１を閉じ、クラン ク室８内の圧力が増加すると揺動板１０の傾斜角度が小さくなり、これによって ピストン７のストローク量が少なくなって吐出容量が減少する。このとき、吐出 空間１２ａ内の高圧の冷媒ガスがボルト１９のガイド孔２７を通って小径孔２２ 内へ導かれ、大径孔２３を経由してクランク室８へ導かれるので、クランク室８ 内の圧力上昇が促進され、同時にラジアル軸受２４及びスラスト軸受２５の潤滑 が行なわれる。

【００２０】 熱負荷が大きくなり、圧力調整弁３２が連通路３１を開き、クランク室８内の 圧力が減少すると揺動板１０の傾斜角度が大きくなり、これによってピストン７ のストローク量が増えて吐出容量が多くなる。

【００２１】 ピストン７によりシリンダボア６内の冷媒ガスが圧縮され、その圧力が所定値 以上に上昇したとき吐出バルブ１７が開き、冷媒ガスは吐出ポート１６を通じて 次々と吐出空間１２ａへ吐出される。バッフルプレート１４にはシリンダボア６ の数に応じた孔１４ａ〜１４ｅが等間隔で穿設されているので、吐出ポート１６ から流入した冷媒ガスは最も近い孔１４ａ〜１４ｅから次々と吐出空間１２ｂへ 吐出され、脈動の重なりは生じない。

【００２２】 ボルト１９が緩み、そのボルト頭１９ａがバッフルプレート１４の中心に位置 するボルト対向部２８に接触した場合、バッフルプレート１４の孔１４ａ〜１４ ｅはバッフルプレート１４のボルト対向部２８を中心とする所定半径の仮想円２ ９に沿って配設されているので、いずれの孔１４ａ〜１４ｅもボルト頭１９ａに よって塞がれず、安定した脈動抑制機能が発揮されるとともに、吐出空間１２ａ の圧力が異常に上昇してリヤヘッド３の隔壁３ａを破損させることもない。

【００２３】 なお、この実施例では本願考案を可変容量型揺動板式圧縮機に適用した場合に ついて述べたが、固定容量型の揺動板式圧縮機などの他の圧縮機に適用するよう にしても前述の実施例と同様の作用効果を得ることができる。

【００２４】

【考案の効果】

以上説明したようにこの揺動板式圧縮機の脈動低減機構によれば、ボルトが緩 み、そのボルト頭がバッフルプレートのボルト対向部に当接したとしても、バッ フルプレートのいずれの孔も塞がれず、シリンダボアから吐出バルブ側吐出空間 へ送り込まれた冷媒ガスを吐出口側吐出空間へ送り出すことができ、安定した脈 動低減機能が発揮されるとともに、吐出バルブ側吐出空間の圧力が異常に上昇し ないので、圧力上昇による異常変形を防ぐことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１はこの考案の一実施例に係る脈動低減機構
を備えた揺動板式圧縮機の縦断面図である。

【図２】図２はバッフルプレートの平面図である。

【図３】図３は図２のＩＩＩ−ＩＩＩ線に沿う断面図で
ある。

【図４】図４は従来の脈動低減機構を備えた揺動板式圧
縮機の縦断面図である。

【符号の説明】

１ シリンダブロック ６ シリンダボア １２ 吐出室 １２ａ 吐出空間（吐出バルブ側吐出空間） １２ｂ 吐出空間（吐出口側吐出空間） １４ バッフルプレート １４ａ〜１４ｅ バッフルプレートの孔 １７ 吐出バルブ １９ ボルト １９ａ ボルト頭 ２８ バッフルプレートのボルト対向部 ２９ 仮想円

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数のシリンダボアをシリンダブロック
   に設け、前記シリンダボア内で圧縮された冷媒ガスを吐
   出室へ吐出する吐出バルブを、前記シリンダブロックに
   ボルトで固定し、前記吐出室をバッフルプレートによ
   り、前記ボルト頭が収容される吐出バルブ側吐出空間と
   吐出口へつながる吐出口側吐出空間とに分離し、前記シ
   リンダボアの数と同数の孔を、前記バッフルプレートの
   ボルト対向部を中心とする所定半径の仮想円に沿って一
   定間隔おきに設けて、前記両吐出空間を連通させたこと
   を特徴とする揺動板式圧縮機の脈動低減機構。