JPH0621469B2 - 多階建築物の躯体構築方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、張間方向にプレキャストコンクリートによる
耐力壁式構造を用い、桁行方向に場所打コンクリート及
びプレキャストコンクリート梁によるラーメン構造を用
いた多階建築物の躯体構築に関する。

（従来の技術） 従来の多階建築物、特に多階集合住宅建物の躯体構築工
法には、低層から高層に至るまで場所打コンクリートの
ラーメン構造、壁式構造、耐震壁構造、ＳＲＣと構造及
びプレキャストコンクリート（以下ＰＣと記す）部材を
用いた壁式構造、ＨＰＧ構造等による各種工法が実施さ
れているが、近年、工期の短縮化や高強度品質の維持や
現場施工の簡易化等の要望から、高強度コンクリートに
より工場生産された壁版を使用し、これを床面上に立設
し、その上に床用のＰＣ版を渡し、その上に床スラブ用
及び壁版連結用場所打ちコンクリートを打設するように
した工法が開発されている。

この工法では、壁版及び床用のＰＣ版を工場にて、厳重
な管理下において製造するため、安定した高品質のもの
が供給でき、このため簡易な現場作業にて靭性に富み、
耐震性の高い多階建築物が得られるという利点がある。

（発明が解決しようとする問題点） しかし、この従来の工法は、ＰＣ壁版を床面上に立設
し、これを各面から仮保持させた状態でＰＣスラブを桁
行方向に掛け渡し、その後場所打コンクリートを打設す
ることによって全体を一体化させるものであるため、Ｐ
Ｃスラブの掛け渡し及び場所打コンクリートの打設を不
安定な状態の壁版の上で行わなければならず、倒壊の危
険性を無くするために多くのサポートを必要とし、その
組付け、取り外しに多くの労力を要するという問題があ
った。

本発明は、このような従来の問題に鑑み、ＰＣ壁版及び
ＰＣスラブを使用し、耐震性が高く、かつ、梁形のない
室内空間の建築物が構築でき、しかも、多くのサポート
を要することなく安全に構築できる多階建築物の躯体構
築方法の提供を目的としたものである。

（問題点を解決するための手段） 上述のごとき問題点を解決し、所期の目的を達成するた
めの本発明の要旨とする構成は、先に形成した床スラブ
の該壁兼用柱と同じ厚さにしかつ上面に、ＰＣ壁版によ
る１階分の高さの耐力壁を直立させるとともに該耐力壁
の両端に交差させた配置に桁行方向の壁の一部を兼用さ
せた壁兼用柱を場所打コンクリートによって一体形成し
て複数の耐力壁を並列配置に複数立設し、次いで互いに
隣り合う前記壁兼用柱間に、上面に鉄筋を露出させたＰ
Ｃ半梁を掛け渡すとともに前記壁版の上端間にＰＣスラ
ブを掛け渡し、その後前記ＰＣ半梁及びプＰＣスラブ上
に場所打コンクリートを打設して床スラブを形成するこ
とを特徴としてなる多階建築物の躯体構築方法に存す
る。

（作用） この工法では、ＰＣ壁板の両端に場所打コンクリートに
よる壁兼用柱を一体に整成して耐力壁を床面上に立設す
ることにより、その耐力壁はサポートなしで自立し、そ
の後のＰＣ半梁及びＰＣスラブの掛け渡し、場所打コン
クリートの打設等の各種作業が、多くのサポートを要し
ないで安全にできる。

（実施例） 次に本発明の実施の一例を図面について説明する。

図において、１は先に施工した床スラブであり、この床
スラブ１の上面には、後述する壁兼用柱及びＰＣ壁版を
立設する位置に連結用の縦鉄筋２，２……を予め突設し
ておく。この床スラブ１上に、第１図に示すように張間
を２分割した長さのＰＣ壁版３，３をクレーンをもって
吊り降ろし、仮サポート４をもって倒れ止めし立設す
る。このＰＣ壁版３には第６図に示すようにその下端に
予めスプライススリーブ５が下端を開放して埋設され、
これに床スラブ１上に突出させた縦鉄筋２の先端を嵌合
させ固結剤を注入してＰＣ壁版３内の縦鉄筋２と連結さ
せる。またＰＣ壁版３，３相互間はそれぞれの対抗端面
に突出させた水平鉄筋６，６間を連結する。

このようにして立設させた耐力壁７の両端に、第２図に
示すように壁兼用柱８用の鉄筋篭８ａをクレーンによっ
て吊りさげて立設する。このとき鉄筋篭８ａとＰＣ壁版
３，３の水平鉄筋６及びＰＣスラブ１上面の縦鉄筋２と
をそれぞれ一体化させる。然る後、鉄筋篭８ａの外側に
型枠９を組み、第７図に示すように壁兼用柱８の場所打
コンクリートを打設する。尚、この壁兼用柱８の場所打
コンクリートは後述するＰＣ半梁１１の高さ分だけ耐力
壁７の高さより低く打設する。

このようにして耐力壁７に対してＴ字型配置に交差させ
て桁行方向の壁を兼用させた壁兼用柱８を一体化させて
１階分の高さの耐力壁７，７……を桁行方向に多数並列
配置に立設する。

次に、第３図、第８図に示すように、前記各壁兼用柱
８，８間にＰＣ半梁１１を掛け渡す。このＰＣ半梁１１
は、上記壁兼用柱８と同じ厚さにし（第３図参照）、か
つ上面にフープ筋１２が突出されているとともに、長手
方向の端面に水平鉄筋１３が突出されている。そして、
互いに隣合うＰＣ半梁１１，１１相互の水平鉄筋１３，
１３を壁兼用柱８の上端上にて一体に連結する。尚、こ
のＰＣ半梁１１，１１は互いに隣合うものを複数個づつ
水平鉄筋１３を介して予め連結したものを使用してもよ
いものである。

このようにしてＰＣ半梁１１を掛け渡した後、第４図に
示すように、互いに隣合う耐力壁７，７の上端間にＰＣ
スラブ１４，１４……を掛け渡す。このＰＣスラブ１４
は、第６図，第９図に示すように、２本の下端筋１５，
１５と１本のトップ筋１６とを三角形の各頂点に配置
し、両下端筋１５，１５とトップ筋１６との間に波形の
ラチス筋１７，１７を溶接した組鉄筋１８を有し、この
組鉄筋１８の両下端筋１５，１５部分をコンクリートの
肉厚内に埋め込み、トップ筋１６を上面に突出させてお
り、更に、上面の各組鉄筋１８，１８……間位置に発泡
スチロールからなる空隙形成材１９を貼設したものを使
用している。

このＰＣスラブ１４を設置した後、その上面及び前記Ｐ
Ｃ半梁１１の上面に場所打コンクリート用の配筋なし、
次いで、第５図に示すように、床スラブ用の場所打コン
クリート２０を全面に打設する。尚、その際に該場所打
コンクリートの表面に、耐力壁７及び壁兼用柱８の縦鉄
筋２を表面に突出させる。

このようにして形成された新たな床スラブ１の上面に前
述と同様にして順次上部の階を形成し、多階建築物を構
築する。

尚、上述の実施例では耐力壁７を複数のＰＣ壁版３によ
り構成しているが、一の耐力壁７を１枚のＰＣ壁版をも
って構成してもよく、また、耐力壁７及び壁兼用柱８の
配置は、上述したＴ字型配置の他、第１０図に示すよう
に壁兼用柱８を耐力壁７の一方側にのみ張り出させた配
置でもよく、更に耐力壁７は直線状の他、第１１図、第
１２図に示すように互いにずらせ、その間を柱兼用壁８
をもって連結した配置であってもよいものである。

また、上述の実施例ではＰＣスラブ１４として組鉄筋１
８のトップ筋１６を上面に露出させたものを使用してい
るがこの他、各種形状のものを使用できるものであるこ
とはいうまでもない。

（発明の効果） 上述の如く構成される本発明の多階建築物の躯体構築方
法には、次の如き効果がある。

(1) ＰＣ壁版による耐力壁の両端に一体形成した桁行
方向の壁兼用柱の互いに隣合うものの間に、該壁兼用柱
と同じ厚さにしたＰＣ半梁を掛け渡したことにより、室
内は梁形が突出しないすっきりした空間が得られる。

(2) 耐力壁はＰＣ壁版を使用するため、工場にて厳重
な品質管理ができ、従って、現場作業に高度の技術を要
しないで靭性の高い、耐震性に優れた多階建築物を構築
できる。

(3) ＰＣ壁版による耐力壁を立設した後、その耐力壁
の両端に交差させた配置に桁行方向の壁兼用柱を場所打
コンクリートによって一体形成するため、その耐力壁は
床スラブの上面に安定した状態で自立する。

従って、ＰＣ半梁やＰＣスラブの掛け渡し、場所打コン
クリートの打設等の作業を少ないサポートによって安全
に行うことができ、作業効率がよい。

(4) 耐力壁をＰＣ壁版をもって施工し、桁行方向の壁
の一部をなす壁兼用柱を場所打コンクリートもって施工
するため、主たる耐荷部分である耐力壁部分と壁兼用柱
部分とのコンクリート強度を、全体の必要な耐荷及び耐
震能力に応じて最も経済的になるように変更が可能であ
り、経済性に富む。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示すもので第１図はＰＣ壁版の
立設状態を示す斜視図、第２図は壁兼用柱の鉄筋篭設置
状態を示す斜視図、第３図はＰＣ半梁の設置状態を示す
斜視図、第４図はＰＣスラブの設置状態を示す斜視図、
第５図は床スラブ用場所打コンクリートの打設状態を示
す斜視図、第６図は床スラブとＰＣ壁版との結合部分の
断面図、第７図は壁兼用柱の場所打コンクリート打設状
態を示す拡大断面図、第８図はＰＣ半梁の掛け渡し状態
を示す拡大断面図、第９図はＰＣ半梁と床スラブ部分の
断面図、第１０図〜第１２図はそれぞれ他の実施例の耐
力壁と壁兼用柱との配置例を示す平面図である。 １……床スラブ、２……縦鉄筋、 ３……ＰＣ壁版、５……スプライススリーブ、６……水
平鉄筋、７……耐力壁、８……壁兼用柱、１０……Ｉ字
型壁、１１……ＰＣ半梁、 １３……水平鉄筋、１４……ＰＣスラブ、 ２０……場所打コンクリート。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】先に形成した床スラブの上面に、プレキャ
   ストコンクリート壁版による１階分の高さの耐力壁を立
   設するとともに、該耐力壁の両端に交差させた配置に桁
   行方向の壁の一部を兼用させた壁兼用柱を場所打コンク
   リートによって一体形成して複数の耐力壁を並列配置に
   複数立設し、次いで互いに隣合う前記壁兼用柱間に、該
   壁兼用柱と同じ厚さにしかつ上面に鉄筋を露出させたプ
   レキャストコンクリート半梁を掛け渡すとともに、前記
   壁版の上端間にプレキャストコンクリートスラブを掛け
   渡し、その後前記プレキャストコンクリート半梁及びプ
   レキャストコンクリートスラブ上に場所打コンクリート
   を打設して床スラブを形成することを特徴とする多階建
   築物の躯体構築方法。