JPH0621121B2 - 新規高分子多糖F―Ab及びその製造法 - Google Patents

新規高分子多糖F―Ab及びその製造法

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JPH0621121B2
JPH0621121B2 JP63003122A JP312288A JPH0621121B2 JP H0621121 B2 JPH0621121 B2 JP H0621121B2 JP 63003122 A JP63003122 A JP 63003122A JP 312288 A JP312288 A JP 312288A JP H0621121 B2 JPH0621121 B2 JP H0621121B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はツリガネタケ属(Fomes)に属する担子菌
によって生産され、抗植物ウイルス作用を有する新規な
酸性高分子多糖F−Abに関する。高分子多糖F−Ab
は農業あるいは園芸の分野においてウイルス病の防除を
目的として広く利用することができる。
[従来技術] 畑、水田あるいは各種施設で栽培されるタバコ、ピーマ
ン、トマト、キュウリ、スイカなどはタバコモザイクウ
イルス(以下TMVという)、キュウリモザイクウイル
ス、キュウリ緑班モザイクウイルス、ジャガイモYウイ
ルス等に羅病し、著しい被害を受けることが多い。これ
らの病原ウイルスは他作物、雑草、樹木、種苗、土壌中
などに存在し、作業中の接触、昆虫の吸汁等によって伝
染する。作物におけるこれらウイルス病の防除対策とし
て、従来はウイルスの発生源の除去または低減、土壌消
毒あるいは殺虫剤によるウイルス媒介者の殺減など、間
接的防除技術が主として用いられてきた。
植物ウイルスの直節防除剤としてはアルギン酸ナトリウ
ム剤(特許第717594、農林水産省登録第1344
0)及びシイタケ菌糸体培養抽出物(特許第10120
14、農林水産省登録第15584)があるが、いずれ
も浸透移行性の効果を示さないため、植物体の全面に漏
れなく一様に散布する必要があり、また畑での効果はあ
まり高くない。一方、最近、浸透移行性を有する抗植物
ウイルス性の物質として、オシロイバナに含まれる蛋白
質(特開昭60−243100)が知られている。しか
し、本物質の生産は農業的手段又は植物組織培養(特開
昭61−5790)によらねばならないことから、その
生産性に関しては自ずと限界を有する。
[発明が解決しようとする問題点] 本発明は、従来の市販の植物ウイルス病防除剤に見られ
ない、浸透移行性の効果を示し、安全で有効な化学物質
を微生物を用いる醗酵工業的手段によって安価に大量に
提供する事を目的とする。
[問題点を解決するための手段] 本発明者らは、上記の目的を達成するために、多種の微
生物の代謝産物についてスクリーニングを行った結果、
ツリガネタケ属(Fomes)に属する菌が培養物中に
生産する酸性の高分子多糖F−Abが顕著な抗ウイルス
活性を示すことを発見した。
本発明に使用するツリガネタケ属に属する菌株として
は、天然のツリガネタケより分離した菌株、あるいは公
知の保存菌株、例えばフォメス・フォメンタリウス(F
omes fomentarius)IFO 824
6、IFO 30371、IFO 30777(IFO
は財団法人・醗酵研究所の略)、あるいはフォメス・フ
ォメンタリウス(Fomes fomentariu
s)ATCC 26708、ATCC 34687、A
TCC 46213(ATCCはアメリカン・タイプ・
カルチャー・コレクションの略)等があるが、酸性高分
子多糖F−Ab生産量が高いフォメス・フォメンタリウ
ス(Fomes fomentarius)JTS 3
046(微工研菌寄第9704号)が最も望ましい菌株
である。なお、JTS 3046菌株は、IFO 82
46菌株を親株として継代培養し、選抜により得られた
高生産株である。
これら菌株の培養物の培養液をそのまま、あるいはそ
の有効成分である多糖F−Abを水に溶解し、タバコ、
トマト、ピーマンなどの茎葉に散布あるいは地下部から
吸収させることなどによって、TMV等の感染発病を効
果的に防除することができる。
特にツリガネタケ属に属する菌体の生産する抗ウイルス
活性物質は従来知られている多糖と異なり、処理植物体
においてシステミック(見掛上、浸透移行的)に発現す
ることから著効を示す。
本発明において使用する菌株は一般の担子菌培養用培地
に用いて、静置又は攪拌培養でき、その効果は主として
有効成分である酸性高分子多糖F−Abの量に依存す
る。
本発明者らはこれらのことを実験的に確認し本発明を行
った。
以下に、順をおって詳細に説明する。
高分子多糖F−Abは、高分子多糖F−Ab生産菌を培
養した後、培養物の液体区分(培養液)および菌体区
分から分離採取することによって得る事ができるが、特
に、培養液から多く得られる。
培養培置としては菌体がよく育つものであればいかなる
組成の培地でもよいが、一般の糸状菌用培地に酵母エキ
スなどを加えたものが好ましい。
培養条件としては、例えば20−30℃の静置培養で十
分であり、また高分子多糖F−Ab生産菌の生育が可能
で高分子多糖F−Abを生産する条件であればいかなる
条件でも良いが、振盪培養又は通気攪拌培養が好まし
い。
高分子多糖F−Ab生産菌の培養物から遠心分離又は
過により液体区分(培養液)及び菌体区分(菌体)を
得、次いで、これらから抗ウイルス活性を有する高分子
多糖F−Abを採取する。培養液から高分子多糖F−
Abを採取するには常法によればよく、例として、透
析、限外過、分別沈澱、塩析、溶媒分画、イオン交換
クロマトグラフィー、ゲル過クロマトグラフィー、吸
着クロマトグラフィーなどの操作を単独あるいは適宜併
用すればよい。菌体から高分子多糖F−Abを採取する
には、例えば熱水抽出を行い、固形分を除き、その後は
液体区分からの採取法に準ずればよい。
本発明において、一般的には、グルコース、エビオス
(エビオス製薬商品名;以下同じ)、リン酸−カリウ
ム、硫酸マグネシウム及び水道水からなる培地で高分子
多糖F−Ab生産菌を振盪培養し、培養終了後、過に
より培養液を得る。
次いで、培養液と菌体熱水抽出液を合せて、これへ2
倍容量のエタノールを加え、生じる沈澱を採取する。こ
の沈澱を水に溶かし、トリクロロ酢酸を加えてタンパク
質等の沈澱を生じさせて遠心分離により除いた後、リン
酸緩衝液に対して透析する。透析膜内液の成分をジエチ
ルアミノエチル基を有するイオン交換体に吸着させ、次
いでNaClの濃度を直線的に高めながら溶離する。溶
離液を一定量ずつ分取し、その糖含量をフェノール・硫
酸法により定量する。
各分取液の内容成分を各種クロマトグラフィーにより分
析し、糖として高分子多糖F−Abのみを含む分取液を
合せる。これへ、再度、エタノールを加えて完全にタン
パク質等を沈澱させて除き、イオン交換水に対して透析
後、凍結乾燥し、高分子多糖F−Ab凍結乾燥品を得
る。
高分子多糖F−Ab凍結乾燥品をゲル過クロマトグラ
フィーにより精製し、高分子多糖F−Ab標品塩を得
る。
さらに、高分子多糖F−Ab標品塩からイオン交換樹脂
により陽イオンをできるだけ除き、高分子多糖F−Ab
標品を得る。
高分子多糖F−Abは、次の理化学的性質を示す。
(1)元素分析 [高分子多糖F−Ab標品塩] C:36.0% H: 6.0% N: 0.5% 灰分:9.0% [高分子多糖F−Ab標品] C:37.9% H: 5.9% N: 0.4% 灰分:3.9% (2)分子量 ゲル過クロマトグラフィーを行った結果は第1図及び
第2図に示す通りである。
ゲル過法による範囲:10000−20000。
ゲル過法による平均分子量:15500−1650
0。
(3)施光度 [α▲]25 D▼=−34゜(c=0.52%、水溶液) (4)紫外吸収スペクトル 第3図に示す通りである。
(5)赤外吸収スペクトル 第4図及び第5図に示す通りである。
高分子多糖F−Ab標品塩は1612cm-1に−COO
の強い吸収があった。イオン交換樹脂により陽イオン
を減少させた高分子多糖F−Ab標品では、1612c
-1の吸収が減少して、代わりに1725cm-1の−C
OOHの吸収が認められた。
(6)溶媒に対する溶解性 水、ジメチルスルホキシドに可溶。
メタノール、エタノール、アセトン、エーテルに不溶。
(7)呈色反応 フェノール・硫酸反応 陽性 カルバゾール・硫酸反応 陽性 ニンヒドリン反応 陰性 (8)塩基性、酸性、中性の別 高分子多糖F−Ab標品の0.1%水溶液のpHは酸性
である。
(9)物質の色 高分子多糖F−Abは白色である。
(10)構成糖とその組成 高分子多糖F−Abを2N−トリフルオロ酢酸中、12
1℃1時間、加水分解後、アゼセルプレートを用いた薄
層クロマトグラフィーによりグルコースとグルクロン酸
が検出された。
高分子多糖F−Ab中のグルクロン酸をカルバゾール硫
酸法(例えば、T.Bitter,H.Muir,An
al.Biochem.,4,330,1962)によ
り定量した。また、本多糖を加水分解後、常法(例え
ば、原田篤也、小泉岳夫編:総合多糖科学上、68頁、
講談社、昭和48年)により還元してアルジトールアセ
テートに導き、ガスクロマトグラフィーにより分析し
た。これらの結果から、その構成比はグルコース:グル
クロン酸=9:2.0〜1.8であった。
ニンヒドリン試薬に対する反応は陰性であり、アミノ糖
やアミノ酸の存在は認められかった。
(11)タンパク質の存在 高分子多糖F−Ab20mgを1mlの水に溶かし、そ
の0.1ml中のタンパク質をローリイ法により定量し
た。発色は認められず、タンパク質は検出されなかっ
た。
(12)ピルビン酸の存在 高分子多糖F−Abの加水分解物をベーリンガー・マン
ハイム社製乳酸測定キットにより測定したが、ピルピン
酸は存在しなかった。
(13)メチル化分析 a)高分子多糖F−Abをメチル化した後、加水分解
し、アルジトールアセテートに導き、ガスクロマトグラ
フィーにより分析して、次の結果を得た。
1、5−ジ−0−アセチル−2、3、4、6−テトラ−
0−メチルグルシトール:1、3、5−トリ−0−アセ
チル−2、4、6−トリ−0−メチルグルシトール:
1,5,6−トリ−0−アセチル−2、3、4−トリ−
0−メチルグルシトール1,3,5,6−テトラ−0−
アセチル−2、4−ジ−0−メチルグルシトール=1:
2:4:2。
b)高分子多糖F−Ab中のグルクロン酸殘基を常法
(例えば、H.Minakami etal.,Agr
ic.Biol.Chem.,48,2405−241
4,1984)により還元してグルコース殘基にした
後、メチル化して加水分解し、アルジトールアセテート
に導き、ガスクロマトグラフィーにより分析して、次の
結果を得た。
1、5−ジ−0−アセチル−2、3、4、6−テトラ−
0−メチルグルシトール:1,3,5−トリ−0−アセ
チル−2、4、6−トリ−0−メチルグルシトール:
1,5,6−トリ−0−アセチル−2、3、4−トリ−
0−メチルグルシトール:1、3、5、6−テトラ−0
−アセチル−2、4−ジ−0−メチルグルシトール=
2:3:4:2 以下に実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
実施例1 [菌の培養] フォメス・フォメンタリウス(Fomes fomen
tarius)JTS 3046菌株(微工研菌寄第9
704号)を、試験管内のバレイショ・ブドウ糖・寒天
培地(斜面、10ml)に接種し、28℃で10日間培
養し、保存菌株とした。この保存菌株を,下記の培地A
を100ml入れた500ml容三角フラスコに接種
し、28℃、200rpmで10日間、回転振盪培養
し、種母とした。種母培養物100mlをミキサーによ
りホモジナイズし、その60mlを、1000mlの培
地Bを入れた3リットル容三角フラスコに接種し、28
℃、200rpmで10日間回転振盪培養し、菌糸培養
物を得た。
ほかの菌株、フォメス・フォメンタリウス IFO 3
0371、IFO 8246、ATCC 26708な
ども同様に培養し、菌糸培養物を得た。
培地A:グルコース 50g ペプトン 2g 酵母エキス 2g 麦芽エキス 10g KHPO 5g MgSO・7HO 2.5g 水道水 1000ml 培地B:グルコース 50g エビオス 6g KHPO 2g MgSO・7HO 1g 水道水 1000ml 実施例2 [高分子多糖F−Abの精製] 実施例1において得られたフォメス・フォメンタリウス
(Fomes fomentarius)JTS 30
46菌株の菌糸培養物8リットル(3リットル容三角フ
ラスコ8本分)を、東洋紙No5Cを用いて過し、
菌体と培養液をえた。菌体に5倍重量の水を加えて6
0℃で10分間加熱し、抽出液を得た。
培養液と抽出液を合せた8000mlにその2倍容量
のエタノールを加え、10℃で二日間静置すると沈澱が
生じた。遠心分離により沈澱を回収した。
この沈澱に、800mlの水を加えて溶液とした。この
溶液に、40%(w/v)トリクロロ酢酸溶液を240
ml加え、攪拌後、10℃で一夜静置した。生じたタン
パク質などの沈澱を除去するため12000rpmで1
5分間遠心分離し、上澄液を回収した。上澄液を搭析膜
(スペクトロポア3)に入れ、10mMリン酸緩衝液
(pH6.0)に対し、繰返し平衡化した。透析膜内液
を、ジエチルアミノエチル基を有する、カートリッジタ
イプのZeta−Prep 100 DEAE(LKB
社製)に負荷し管内に吸着させてから、10mMリン酸
緩衝液3000mlで管内を洗浄した。中性高分子多糖
F−Nの大部分は管内に吸着されずに溶出した。
次いで、NaCl濃度を0から400mMに直線的に上
げつつ、1500mlの溶離液を、毎分25mlの流速
で長した。溶離液はフラクションコレクターを用いて試
験管に各々10mlずつ分取し、各分取液の糖含量をフ
ェノール・硫酸法により定量した。また、各分取液を東
ソー製TSKgel G3000PWカラムを用いる高
速液体クロマトグラフィーにかけ、各受の純度を検定し
た。同一成分のみを含む液を合せ、Asahipak
GS−510をもちいてゲル過クロマトグラフィーに
かけ、その分子量分布を測定した。同時に、アビセルプ
レートを用いる薄層クロマトグラフィーにより各成分の
純度を検定した。
各取液のフェノール・硫酸法による定量値をプロットし
て第6図を得た。試験官8〜11本目の分取液は中性高
分子多糖F−Nを含んでいた。試験官12〜19本目の
分取液は中性高分子多糖F−N及び酸性高分子多糖F−
Abを含んでいた。試験官20〜27本目の分取液は酸
性高分子多糖F−Apを含んでいた。試験官28〜42
本目の分取液は酸性高分子多糖F−Abと酸性高分子多
糖F−Bを含んでいた。試験官43〜56本目の分取液
は酸性高分子多糖F−Bを含んでいた。試験官57〜6
2本目の分取液は酸性高分子多糖F−B及び酸性高分子
多糖F−Cを含んでいた。試験官63〜76本目の分取
液は酸性高分子多糖F−Cを含んでいた。
試験官20〜27本目の分取液を集めて、その0.8倍
容量のエタノールを加え、10℃で一夜放置し、遠心分
離により上澄液を回収した。この上澄液に,もとの分取
液の0.7倍容量のエタノールを加え、沈澱する多糖を
回収した。この操作により、極微量含まれるタンパク質
等は完全に除かれた。
回収多糖を透析チューブに入れ、イオン交換水に対して
2日間透析した。透析終了後、透析内液を凍結乾燥し、
高分子多糖F−Ab凍結乾燥品600mgを得た。
高分子多糖F−Ab凍結乾燥品を、Asahipak
GS−510にGS320を直列につないだカラムを装
備した日本分析工業製LC−09型分取液体クロマトグ
ラフにかけ、高分子多糖F−Ab標品塩500mgを得
た。本標品塩の赤外吸収スペクトルは第4図に示すよう
に、1612cm-1に−COOの強い吸収があり、ナ
トリウム等の陽イオンを含んでいた。
高分子多糖F−Ab標品塩を、イオン交換樹脂カラムに
通し通イオンを除くと1612cm-1の吸収は弱まり、
代わりに1725cm-1の−COOHの吸収が現れた。
しかし、赤外吸収スペクトルからみて、完全に陽イオン
を除去することは困難であり、第5図に示す精製品をも
って高分子多糖F−Ab標品とした。
ここに得られた標品は、上記の各種クロマトグラフィー
の結果、単一物質であることが明らかになった。標品は
白色であり、水に溶かした場合は無色透明であった。
その他の菌株の培養物からも、同様にして精製を行い、
高分子多糖F−Ab標品塩及び標品を得た。
実施例3 [元素分析] 実施例2において、フォメス・フォメンタリウスJTS
3046菌株培養物から得られた高分子多糖F−Ab
標品塩の分析結果は、C:36.0%、H:6.0%、
N:0.5%、灰分:9.0%を示した。
(しかし、同一試料から出発しても、N及び灰分の値は
しばしば変動し、その影響を受けてC及びHも細かく変
動した。これは、高分子多糖F−Abが酸性物質である
ために、塩の形で抱込むアンモニウムイオン及びナトリ
ウムイオン等の灰分の量が精製の都度、異なってくるた
めと考えられる) 高分子多等F−Ab標品の分析結果は、C:37.9
%,H:5.9%,N:0.4%,灰分:3.9%を示
した。
(イオン交換樹脂による陽イオン除去割合は、実験の都
度異なり、完全にNと灰分を除去することは出来なかっ
た) 実施例4 [分子量の測定] 東ソー製TSKgel G3000PWXLカラム又は
旭化成工業製Asahipak GS−510カラムを
装着した高速液体クロマトグラフ装置(RI検出器付
き)を用いて、プルラン(昭和電工製、Pullula
n Shodex STANDARD P−82)を分
子量標準物質とし、フォメス・フォメンタリウスJTS
3046菌株培養物から得た高分子多糖F−Ab標品
の分子量ををゲル過クロマトグラフィーにより測定し
た結果を、第1図及び第2図に示す。
ゲル過法による分子量の分布範囲は10000−20
000で、平均分子量は前者のカラムによる場合は15
500、後者のカラムによる場合は16500であっ
た。
他の菌株、フォメス・フォメンタリウス IFO 30
371、IFO 8246、ATCC 26708など
の培養物から得た高分子多糖F−Ab標品も、分子量の
分布範囲は10000−2000であった。
以下、本発明の効果について植物ウイルス防除試験の実
施例を挙げて説明する。
実施例5 実施例1において得られたフォメス・フォメンタリウス
JTS 3046菌株の菌糸培養物を過し培養液と
菌体を得た。この培養液の抗ウイルス活性をTMVに
ついて検定した。
同時に、実施例2において得られた各種高分子多糖類と
高分子多糖F−Abを検定した。
検定にはウイルスを接種することによって局部病班を生
ずるタバコ品種(キサンチ・エヌシー)を用いた。検定
用のタバコ植物は直径12cmの鉢で育成し、展開した
葉の表又は裏側の主脈を境とする班葉に被験液を絵筆で
塗布し、片側の半葉には対照として水を塗布した。試料
処理1日後、葉の表面全面にウイルスを塗抹接種した。
接種ウイルス濃度は、TMVが0.05μg/mlとし
た。ウイルス接種3−7日後、接種葉に 現われた病班の数を数え、次式によって防除率を算出し
た。
防除率(%)={1−(処理半葉の斑点数;対照半葉の斑点数)}x100 表1〜3に示す結果が得られた。
葉表処理した場合は全ての試料が100%近い防除値を
示した(表1及び2)。
一方、酸性高分子多糖F−Ab及び培養液で処理した
場合は、いずれも葉裏処理でも効果が防除率に現われる
のみならず、主脈を境にして処理しなかった半葉側にも
その効果が及ぶことが認められた。即ち、葉に全く試料
を塗抹せずにウイルスを接種した場合に比べて、試料を
塗抹した対照半葉の斑点の絶対数が減少する効果が認め
られた。この結果は、酸性高分子多糖F−Abがシステ
ミックに効くことを示している(表3)。
実施例6 播種後60日、草丈約45cmのタバコ(キサンチ・エ
ヌシー)の下葉5枚に培養液及び培養液から得られ
る高分子多糖画分を散布し、散布1日後、その直上位の
3枚の葉に0.05μg/mlのTMVを塗抹接種し
た。無処理対照区には蒸溜水散布を行った。TMV接種
三日後に、接種葉に現れた斑点を数え、実施例5に準じ
て防除率を算出した。表−4で明らかなように、タバコ
の一部の葉を本活性成分で処理すると、同一個体の無処
理の葉においても斑点数が減少することから、本活性成
分の効果はシステミックであると結論できる。
[発明の効果] 以上の実施例によって示されたように、高分子多糖F−
Abは、高いウイルス防除効果を示し、その効果はシス
テミックであることが明らかとなった。また、高分子多
糖F−Abはフォメス・フォメンタリウスを培養するこ
とにより醗酵工業的に容易に生産できることが示され
た。これにより従来にない、新しい抗植物ウイルス剤の
供給が可能となった。
【図面の簡単な説明】
第1図及び第2図は高分子多糖F−Abのゲル過クロ
マトグラムである。点線は高分子多糖F−Ab、実線は
分子量標準物質プルランを示す。 第1図:TSKgel G3000PWXLカラムを用
いた場合。 第2図:Asahipak GS−510カラムを用い
た場合。 第3図は高分子多糖F−Abの紫外吸収スペクトルを示
す。 第4図は高分子多糖F−Ab標品塩の、第5図は高分子
多糖F−Ab標品の赤外吸収スペクトルを示す。 第6図はフォメス・フォメンタリウスJTS 3046
菌株の培養物から得られる高分子多糖類を、Zeta−
Prep 100 DEAEカラムに吸着させ、NaC
l濃度を0から400mMまで直線的に上げつつ溶離液
を分取し、分取液の糖含量を定量してプロットした溶離
曲線である。
フロントページの続き (72)発明者 福嶋 淳 神奈川県横浜市緑区梅が丘6番地2 日本 たばこ産業株式会社生命科学研究所内 審査官 谷口 博

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の理化学的性質を有する高分子多糖F−
    Ab。 (1)元素分析 [高分子多糖F−Ab標品塩] C: 36.0% H: 6.0% N: 0.5% 灰分: 9.0% [高分子多糖F−Ab標品] C: 37.9% H: 5.9% N: 0.4% 灰分: 3.9% (2)分子量 ゲルろ過クロマトグラフィーを行った結果は第1図及び
    第2図に示す通りである。 ゲルろ過法による範囲:10000〜20000。 ゲルろ過法による平均分子量:15500〜1650
    0。 (3)施光度 [α]25 =−34゜(c=0.52%、水溶液) (4)紫外吸収スペクトル 第3図に示す通りである。 (5)赤外吸収スペクトル 第4図及び第5図に示す通りである。 (6)溶媒に対する溶解性 水、ジメチルスルホキシドに可溶。メタノール、エタノ
    ール、アセトン、エーテルに不溶。 (7)呈色反応 フェノール・硫酸反応 陽性 カルバゾール・硫酸反応 陽性 ニンヒドリン反応 陰性 (8)塩基性、酸性、中性の別 高分子多糖F−Abの0.1%水溶液のpHは酸性であ
    る。 (9)物質の色 白色 (10)構成糖とその組成 グルコース:グルクロン酸の構成比は9:2.0〜1.
    8である。
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