JPH06206846A - 新規生理活性物質ベキノスタチンcおよびd、その製造法およびその用途 - Google Patents

新規生理活性物質ベキノスタチンcおよびd、その製造法およびその用途

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JPH06206846A
JPH06206846A JP34627392A JP34627392A JPH06206846A JP H06206846 A JPH06206846 A JP H06206846A JP 34627392 A JP34627392 A JP 34627392A JP 34627392 A JP34627392 A JP 34627392A JP H06206846 A JPH06206846 A JP H06206846A
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JP
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bequinostatin
culture
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physiologically active
glutathione transferase
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Application number
JP34627392A
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English (en)
Inventor
Tomio Takeuchi
富雄 竹内
Takaaki Aoyanagi
高明 青柳
Masa Hamada
雅 浜田
Yasuhiko Muraoka
靖彦 村岡
Fukiko Kojima
蕗子 小島
Takayuki Aoyama
貴之 青山
Tochirou Tatee
栃郎 舘江
Tadao Yamazaki
忠雄 山崎
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Microbial Chemistry Research Foundation
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Microbial Chemistry Research Foundation
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 グルタチオントランスフェラーゼ阻害剤とし
て有用な新規生理活性物質ベキノスタチンCおよびDが
提供される。 【構成】 ストレプトミセス属に属するベキノスタチン
生産菌の培養物から、下記式(I) 【化1】 で表わされる新規生理活性物質ベキノスタチンC(R=
COOH)およびD(R=H)を得ることができ、これ
ら化合物はグルタチオントランスフェラーゼ阻害剤とし
て、有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抗グルタチオントランス
フェラーゼ作用を有する新規な生理活性物質ベキノスタ
チン(Bequinostatin)CおよびD、その
製造法およびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】グルタチオントランスフェラーゼは細胞
膜及び細胞質に局在する酵素である。細胞膜酵素に対す
る阻害物質は、免疫調節作用を持つことが報告されてい
る(T.Aoyagi,“Protease inhi
bitor and biological cont
rol”,Bioactive Metabolite
s from Microorganisms,eds
by M.E.Bushell and U.Gra
efe,第403〜418頁、Elsevier Sc
ience Publishers B.V.,Ams
terdam,1989年)。したがって、グルタチオ
ントランスフェラーゼに対する阻害物質においても、免
疫調節作用が期待される。さらに、膜結合性グルタチオ
ントランスフェラーゼは、ロイコトリエンC4 合成酵素
としても働き、炎症・アレルギー反応に深く関わること
が報告されている〔蛋白質・核酸・酵素、第33巻、1
564〜1573頁(1988)〕。また、細胞質性グ
ルタチオントランスフェラーゼは、抗癌剤耐性腫瘍細胞
の耐性機構に深く関わることが報告されている〔癌と化
学療法、第16巻、592〜598頁(1989)〕。
グルタチオントランスフェラーゼ阻害物質としては、イ
ンドメタシン(Indomethacin)及びメクロ
フェナン酸(Meclofenamic acid)等
が報告されている〔Biochemical and
Biophysical Research Comm
unications、第112巻、980〜985頁
(1983)〕。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】インドメタシン及びメ
クロフェナン酸等のグルタチオントランスフェラーゼ阻
害物質は、グルタチオントランスフェラーゼに対する特
異性が低い。したがって、グルタチオントランスフェラ
ーゼに対する特異性の高い阻害物質が望まれている。本
発明の目的は、そのような特異性の高いグルタチオント
ランスフェラーゼ阻害活性を有する生理活性物質、その
製造法及びその用途を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明の第1の発明は新規生理活性物質ベキノスタチンC
およびDに関する発明であって、下記式(1) :
【化2】 (式中RはCOOH又はHを示す。)で表される化合物
であることを特徴とする生理活性物質ベキノスタチンC
およびD又はその薬学的に許容し得る塩を提供するもの
である。
【0005】式(1) で表される化合物のうち、ベキノス
タチンC(R=COOHの化合物)は下記式で表され
る。
【化3】 ベキノスタチンCの理化学的性質は下記の通りである。 ベキノスタチンCの理化学的性状 (1) 色及び形状:赤色粉末 (2) 分子式:C28228 (3) 分子量:486 FAB−MS(Negativ
e)m/z485(M−H)- (4) 融点:306〜308℃(dec.) (5) 紫外線吸収スペクトル:添付図面の図1に示す。 (6) 赤外線吸収スペクトル:添付図面の図2に示す。 (7) 溶解性:ジメチルスルホキシドに可溶であり、水に
不溶である。 (8) 薄層クロマトグラフィーのRf値:0.12 シリカゲル(メルク社製Art.5715)薄層を用
い、展開溶媒としてクロロホルム−メタノール(4:
1)を用いた。
【0006】式(I)で表される化合物のうち、ベキノ
スタチンD(R=Hの化合物)は下記式で表される。
【化4】 ベキノスタチンDの理化学的性質は下記の通りである。 ベキノスタチンDの理化学的性状 (1) 色及び形状:赤色粉末 (2) 分子式:C27226 (3) 分子量:442 FAB−MS(Negativ
e)m/z441(M−H)- (4) 融点:310〜312℃(dec.) (5) 紫外線吸収スペクトル:添付図面の図3に示す。 (6) 赤外線吸収スペクトル:添付図面の図4に示す。 (7) 水素核核磁気共鳴スペクトル:添付図面の図5に示
す。 (8) 炭素核核磁気共鳴スペクトル:添付図面の図6に示
す。 (9) 溶解性:ジメチルスルホキシド、メタノールに可溶
であり、水に不溶である。 (10)薄層クロマトグラフィーのRf値:0.84 シリカゲル(メルク社製Art.5715)薄層を用
い、展開溶媒としてクロロホルム−メタノール(4:
1)を用いた。
【0007】ベキノスタチンCおよびDはその薬学的に
許容し得る塩の形態にあってもよく、このような塩とし
ては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのア
ルカリ金属およびカルシウムなどのアルカリ土類金属等
との塩が挙げられる。
【0008】本発明の第2の発明は、新規生理活性物質
ベキノスタチンCおよびDの製造法に関する発明であっ
て、ストレプトミセス属に属するベキノスタチン生産菌
を栄養培地中で培養し、その培養物から上記式(I)で
表される生理活性物質ベキノスタチンCおよびDを分離
採取することを特徴とする。本発明に使用されるベキノ
スタチン生産菌の1例としては、本発明者らにより東京
都杉並区の土壌より分離された放線菌であって、MI3
84−DF12の菌株番号が付された菌株がある。MI
384−DF12株の菌学的性状は次の通りである。
【0009】1. 形態 MI384−DF12株は、顕微鏡下で分枝した基中菌
糸より気菌糸を伸長する。気菌糸は通常まっすぐである
が、らせん状の胞子鎖を有し、胞子の連鎖は20個以上
を数える。特徴的な形態として直径1.5〜6ミクロン
の偽似胞子のう(Pseudosporangium)
を形成する。輪生枝および胞子のうは認められない。胞
子の大きさは約0.5〜0.6×0.7×0.8ミクロ
ンであり、その表面は平滑である。
【0010】2. 各種培地における生育状態 色の記載について以下の〔 〕内に示す標準は、コンテ
ィナー・コーポレーション・オブ・アメリカのカラー・
ハーモニー・マニュアル(ContainerCorp
oration of Americaのcolor
harmony manual)を用いた。 (1) シュクロース・硝酸塩寒天培地(27℃培養) 発育は明るい茶〔4ng,Lt Brown〕〜暗い茶
〔3pn,Dk Brown〕、気菌糸の着生は、認め
られない。溶解性色素はかすかに茶色味を帯びる。 (2) グルコース・アスパラギン寒天培地(27℃培
養) 発育はうす茶〔3ie,Camel〕〜赤茶〔5ui,
Rosewood Brown〕、気菌糸の着生は認め
られない。溶解性色素はわずかにピンク色を帯びる。
【0011】(3) グリセリン・アスパラギン寒天培地
(ISP−培地5、27℃培養) 茶灰〔4ni,Spice Brown〕〜暗いオリー
ブ灰〔lpo,Ebony〕の発育上に、まばらに白い
気菌糸を着生する。溶解性色素はわずかにピンク色を帯
びる。発育の色調および溶解性色素は0.05N−Na
OHの添加により緑色を帯びるが、0.05N−HCl
の添加によって変化しなかった。 (4) スターチ・無機塩寒天培地(ISP−培地4、2
7℃培養) 茶灰〔4ni,Spice Brown〕〜暗い茶〔4
pn,Dk Brown〕の発育上に、綿状の白い気菌
糸を着生する。溶解性色素はかすかに茶色味を帯びる。
発育の色調および溶解性色素は0.05N−NaOHの
添加により緑色を帯びるが、0.05N−HClの添加
によって変化しなかった。
【0012】(5) チロシン寒天培地(ISP−培地
7、27℃培養) 発育は灰味茶〔3ni,Clove Brown〕〜暗
い茶〔4nl,DkBrown〕、気菌糸の着生は認め
られない。溶解性色素は茶色味を帯びる。 (6) 栄養寒天培地(27℃培養) 発育はうす茶〔3ng,Yellow Maple〕〜
灰味茶〔3ni,Clove Brown〕、気菌糸の
着生は認められない。溶解性色素は茶色味を帯びる。 (7) イースト・麦芽寒天培地(ISP−培地2、27
℃培養) うす黄茶〔2pg,Mustard Gold〕〜うす
茶〔2ni,Mustard Brown〕の発育上
に、白い綿状の気菌糸を着生する。溶解性色素は認めら
れない。
【0013】(8) オートミール寒天培地(ISP−培
地3、27℃培養) うすピンク〔5ba,Shell,Pink〕〜うす黄
茶〔21g,Mustard Tan〕の発育上に、明
るい灰色〔13cb,Pearl Gray〕の気菌糸
をうっすらとまばらに着生する。溶解性色素はうすピン
クを帯びる。 (9) グリセリン・硝酸塩寒天培地(27℃培養) 発育はピンク〔6ie,Redwood〕〜灰味赤〔6
1g,Dk Redwood〕、気菌糸の着生は認めら
れない。溶解性色素はわずかにうすピンクを帯びる。 (10) スターチ寒天培地(27℃培養) 発育はうす茶〔3ng,Yellow Maple〕〜
暗い茶〔4Pn,DkBrown〕、気菌糸の着生は認
められない。溶解性色素はわずかにうすピンクを帯び
る。 (11) リンゴ酸石灰寒天培地(27℃培養) 発育はうすいオリーブ〔1le,Olive Yell
ow〕、気菌糸は着生せず、溶解性色素も認められな
い。
【0014】 (12) セルロース(濾紙片添加合成液、27℃培養) 培養後3週間観察したが、生育を認めなかった。 (13) ゼラチン穿刺培養(15%単純ゼラチン培地、2
0℃培養;グルコース・ペプトン・ゼラチン培地、24
℃培養) 単純ゼラチン培地の場合は、発育はうす茶、気菌糸は着
生せず、溶解性色素は茶色味を帯びる。グルコース・ペ
プトン・ゼラチン培地では、発育はうす黄茶、気菌糸は
着生せず、溶解性色素は茶色味を帯びる。 (14)脱脂牛乳(37℃培養) 発育はうす茶、気菌糸は着生せず、溶解性色素は褐色を
呈する。
【0015】3. 生理的性質 (1) 生育温度範囲 イースト・スターチ寒天培地(可溶性デンプン1.0
%、イースト・エキス0.2%、ひも寒天3.0%、pH
7.0)を用い、20℃、24℃、27℃、30℃、3
7℃、50℃の各温度で試験した結果、20℃、24
℃、27℃、30℃、37℃で生育したが、20℃での
生育は極めて悪く、50℃では生育しない。生育至適温
度は27℃〜30℃付近と思われる。 (2) ゼラチンの液化(15%単純ゼラチン培地、20
℃培養;グルコース・ペプトン・ゼラチン培地、27℃
培養) 15%単純ゼラチン培地においては、液化を示さず、グ
ルコース・ペプトン・ゼラチン培地では培養後21日目
に弱い液化を示した。その作用は弱い方である。
【0016】(3) スターチの加水分解(スターチ・無
機塩寒天培地及びスターチ寒天培地、いずれも27℃培
養) いずれの培地でも、培養後3日目には水解性を認めその
作用は中等度である。 (4) 脱脂牛乳の凝固・ペプトン化(脱脂牛乳、37℃
培養) 培養後6日目頃よりペプトン化が始まり13日目頃には
完了する。その作用は中等度〜強い方である。凝固は、
認められない。
【0017】(5) メラニン様色素の生成(トリプトン
・イースト・ブロス、ISP−培地1;ペプトン・イー
スト・鉄寒天培地、ISP−培地6;チロシン寒天培
地、 ISP−培地7;いずれも27℃培養) トリプトン・イースト・ブロス(ISP−培地1)、ペ
プトン・イースト・鉄寒天培地(ISP−培地6)は陽
性、チロシン寒天培地(ISP−培地7)はわずかにメ
ラニン様色素を生成する。 (6) 炭素減の利用性(プリドハム:ゴトリーブ寒天培
地、ISP−培地9、27℃培養) L−アラビノース、D−グルコース、D−フルクトー
ス、シュクロース、イノシトール、D−マンニトールを
利用して発育する。D−キシロースもおそらく利用す
る。ラムノース、ラフィノース、ラクトースは利用しな
い。
【0018】(7) リンゴ酸石灰の溶解(リンゴ酸石灰
寒天培地、27℃培養) 陰性である。 (8) 硝酸塩の還元反応(0.1%硝酸カリウム含有ペ
プトン水、ISP−培地8、27℃培養) 陽性である。 (9) セルロースの分解(濾紙片添加合成液、27℃培
養) 生育しない。
【0019】以上の性状を要約すると、MI384−D
F12株はその形態上、らせん形成および特徴的な偽似
胞子のうを有する気菌糸を伸長する。胞子の連鎖は20
個以上を数え、その表面は平滑である。種々の培地で、
発育はうす茶〜暗い茶、特定な培地ではピンク色を呈す
る。気菌糸の着生は認めないことが多いが、ISP−培
地2、3、4、5では白い気菌糸を着生する。溶解性色
素は、培地によりピンク色を帯びる場合と褐色を帯びる
場合がある。メラニン様色素の生成は陽性、蛋白分解力
は中等度、スターチの水解性も中等度である。
【0020】なお、細胞壁に含まれる2,6−ジアミノ
ピメリン酸はLL−型であった。これらの性状より、M
I384−DF12株はストレプトミセス(Strep
tomyces)に属すると考えられる。近縁の既知菌
種を検索すると、MI384−DF12株の特徴である
偽似胞子のうを有するものとして次の2種があげられ
た。すなわち、ストレプトミセス・パラドクス(Str
eptomyces paradocus,Inter
national Journal of Syste
matic Bacteriology,36巻、57
3〜576頁、1986年;Systematic a
nd Applied Microbiology;8
巻、61〜64頁、1986年)およびストレプトミセ
ス・ヴィタミノフィルス(Streptomyces
vitaminophillus,Internati
onal Journal of Systemati
cBacteriology,36巻、573〜576
頁、1986年;Systematic and Ap
plied Microbiology,8巻、61〜
64頁、1986年;International J
ournal ofSystematic Bacte
riology,33巻、557〜564頁、1983
年)である。このうち、ストレプトミセス・ヴィタミノ
フィルスとは、ビタミン要求性において区別された。M
I384−DF12をストレプトミセス・エスピー(
treptomyces sp.)MI384−DF1
2と同定した。
【0021】MI384−DF12株を工業技術院微生
物工業技術研究所に寄託申請し、平成2年2月8日に微
工研菌寄第11270号として受託された。平成3年1
月18日にブタペスト条約に基づく国際寄託に移管さ
れ、微工研条寄第3228号(FERM BP−322
8)の受託番号が付与されている。
【0022】MI384−DF12株は他の放線菌の場
合に見られるように、その性状が変化しやすい。たとえ
ば、MI384−DF12株に由来する突然変異株(自
然発生または誘発性)、形質融合体または遺伝子組み換
え体であっても、ベキノスタチンの生産能を有するスト
レプトミセス属の菌はすべて本発明の方法に使用するこ
とができる。
【0023】本発明の方法では、前記の菌を通常の微生
物が利用しうる栄養物を含有する培地で培養する。炭素
源としては、グルコース、水飴、デキストリン、シュク
ロース、でんぷん、糖蜜、動・植物油等を使用できる。
また、窒素源としては、大豆粉、小麦、小麦胚芽、コー
ンスティープ・リカー、綿実かす、肉エキス、ペプト
ン、酵母エキス、硫酸アンモニウム、硝酸ソーダ、尿素
等を利用できる。その他、必要に応じ、ナトリウム、コ
バルト、塩素、硫酸、燐酸、及びその他のイオンを生成
することのできる無機塩類を添加することは有効であ
る。また、菌の生育を助け、生理活性物質ベキノスタチ
ンの生産を促進するような有機及び無機物を適当に添加
することができる。
【0024】培養法としては、好気的条件での培養法、
特に深部培養法が適している。培養に適当な温度は15
〜37℃であるが、多くの場合、26〜30℃付近で培
養する。生理活性物質ベキノスタチンの生産は培地や培
養条件により異なるが、振盪培養、タンク培養とも通常
1〜10日の間でその蓄積が最高に達する。培養物中の
生理活性物質ベキノスタチンの蓄積量が最高になった時
に、培養を停止し、培養液から目的物質を単離精製す
る。
【0025】本発明によって得られるベキノスタチンの
培養液からの採取にあたっては、その性状を利用した通
常の分離手段を適宜組み合わせて抽出して精製すること
ができる。ベキノスタチンCおよびDは培養濾液及び菌
体の両方に存在する。培養濾液よりは、酢酸エチル等の
水不混和性の有機溶媒で抽出できる。菌体よりは、メタ
ノール、アセトン等の有機溶剤で抽出後、抽出液を減圧
濃縮し、培養濾液と同様の方法で更に溶媒抽出すること
ができる。
【0026】上述の方法に加え、脂溶性物質の採取に用
いられる公知の方法、例えば吸着クロマトグラフィー、
ゲル濾過クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー
よりのかき取り、高速液体クロマトグラフィー等を適宜
組み合わせ、あるいは繰り返すことによってベキノスタ
チンC又はDを純粋に単離することができる。
【0027】ベキノスタチンC又はDの薬学的に許容し
得る塩は、公知の方法によって製造することができ、例
えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウ
ム、水酸化カルシウムなどを含む溶液で対応するベキノ
スタチンを処理することによって得ることができる。
【0028】本発明の第3の発明は、ベキノスタチンC
又はDまたはその薬学的に許容し得る塩及び医薬用添加
剤とからなるグルタチオントランスフェラーゼ阻害剤で
ある。医薬用添加剤は特に制限はなく、一般的に使用さ
れるものが使用できる。
【0029】組成物中の有効成分(ベキノスタチンC又
はD)の割合はその剤形などにより異なるので一概には
いえないが、0.05〜99%程度まで広範囲に使用す
ることができ、通常注射剤では0.1〜50%程度であ
り、それ以外の製剤では1%〜60%程度である。残部
は医薬用添加剤である。
【0030】ベキノスタチンC又はDは以下の試験例に
示すように細胞膜及び細胞質に局在する酵素であるグル
タチオントラスフェラーゼを強く阻害するが、毒性を示
さない。したがって、ベキノスタチンC又はDはグルタ
チオントランスフェラーゼ阻害剤として極めて有用であ
る。
【0031】ベキノスタチンC又はDを、通常、ヒトを
含む温血動物に経口投与あるいは静脈、皮内、筋肉内投
与等の非経口投与でその有効量を投与することにより生
体中のグルタチオントランスフェラーゼの阻害を行うこ
とができる。投与量は投与する対象、投与ルートなどに
よって変動するが通常、0.05〜150mg/kg/日、
0.5〜100mg/kg/日、好ましくは1〜50mg/kg
/日である。
【0032】投与する際の製剤としては慣用的に用いら
れている剤形が挙げられる。経口投与の場合には、医薬
用添加剤例えばデンプンなどの通常の賦形剤などととも
に成型された錠剤、顆粒剤、カプセル剤などが用いられ
る。非経口投与の場合には医薬用添加剤例えば生理食塩
水、溶解剤などを用いて製剤化された通常の注射剤など
が用いられる。
【0033】
【発明の効果】以上に詳細に説明したように、本発明で
は新規な生理活性物質ベキノスタチンC及びDが提供さ
れ、これらの化合物はグルタチオントランスフェラーゼ
を強く阻害する。したがって、グルタチオントランスフ
ェラーゼ阻害剤として極めて有用である。
【0034】
【実施例】次に実施例によって本発明のベキノスタチン
C及びDの製造例及び製剤例を示す。実施例1 種培地として、ガラクトース2.0%、デキストリン
2.0%、バクト−ソイトン(登録商標)(ディフコ社
製)1.0%、コーンスティープ・リカー(イワキ社
製)0.5%、硫酸アンモニウム0.2%、炭酸カルシ
ウム0.2%、消泡剤としてシリコンKM−70(信越
化学社製)及び大豆油(局法)の混液(混合割合1:
1)0.05%を含む培地を用いた。なお、殺菌前の培
地はpH7.4に調整して使用した。
【0035】500ml容三角フラスコに110mlを分注
した前記種培地を120℃で20分間滅菌し、これにス
トレプトミセス・エスピーMI384−DF12株(F
ERM P−11270)の斜面培養の1〜2白金耳を
接種し、30℃、180回転/分の回転式振盪機にて3
日間培養し種培養とした。ついで生産培地としてグリセ
リン2.0%、エスサンミート(味の素社製)1.5
%、燐酸水素二カリウム0.1%、塩化コバルト六水塩
0.0005%を含む培地(pH6.2、1M燐酸一カリ
ウムで調整)を500ml容三角フラスコに110mlずつ
分注し、120℃で20分間滅菌し、前記種培養液2ml
ずつを移植し、27℃で4日間振盪培養した。培養終了
後、培養液30リットルを6N塩酸を用いてpH4に調整
して濾過し培養濾液と菌体に分別した。
【0036】湿菌体に75%アセトン8リットルを加
え、よく攪拌して有効成分を抽出し、これを濃縮してア
セトンを除去したのち、6N塩酸でpHを2とし、等量の
酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出液を濃縮して赤
褐色の油状物質46.3gを得た。この粗物質をメタノ
ール200mlに溶解し、シリカゲル60(メルク社製、
Art.7734)200gを加えて減圧下に濃縮乾固
した。次に、これをクロロホルム:酢酸エチル(4:
1)で懸濁後、あらかじめ同混合溶媒で充填したシリカ
ゲル60、1300mlのカラムにかけ、同混合溶媒で洗
浄した。続いて、有効成分を酢酸エチルで溶出し、濃縮
乾固して赤褐色の粗物質10.9gを得た。
【0037】この粗物質をメタノール50mlに溶解し、
シリカゲル60(メルク社製、Art.7734)50
gを加えて減圧下に濃縮乾固した。次に、これをクロロ
ホルム:メタノール:28%アンモニア水(95:5:
1)で懸濁後、あらかじめ同混合溶媒で充填したシリカ
ゲル60、500mlのカラムにかけ、ベキノスタチンD
を含む画分を同混合溶媒で溶出し、ベキノスタチンCを
含む画分をメタノール;28%アンモニア水(100:
1)で溶出した。これらの溶出画分を濃縮乾固して、各
々、680mg、343.8mgの赤褐色粗物質を得た。こ
のうちベキノスタチンDを含む赤褐色粗物質680mgを
少量のメタノール:28%アンモニア水(100:1)
に溶解し、あらかじめ同混合溶媒で充填したYMC−G
EL(ODS−A60−200/60、山村化学研究所
社製)150mlのカラムにかけ、有効成分を同混合溶媒
で溶出し、濃縮乾固して赤色の粉末98.6mgを得た。
この粉末に酢酸エチル20ml、水20mlを加え、よく攪
拌して有効成分を抽出し、この酢酸エチル層を濃縮して
赤色の粉末48.2mgを得た。この粉末を0.5mlのジ
メチルホルムアミドに溶解して、4mlのメタノールを加
えることにより赤色の沈澱が析出し、これを乾燥して、
純粋なベキノスタチンDの赤色粉末を9.6mg得た。
【0038】また、ベキノスタチンCを含む赤褐色粗物
質343.8mgを2mlのメタノール:28%アンモニア
水(100:1)に溶解し、YMC−GEL、2gを加
えて濃縮乾固した。次に、これをメタノール:水:28
%アンモニア水(80:20:1)で懸濁後、あらかじ
め同混合溶媒で充填したYMC−GEL、100mlのカ
ラムにかけ、同混合溶媒で溶出し、これを濃縮してメタ
ノールおよびアンモニアを除去し、2N塩酸を用いてpH
2に調整した。析出した沈澱を水で洗浄し、乾燥して、
純粋なベキノスタチンCの赤色粉末を80.6mg得た。
【0039】純粋なベキノスタチンCを用いて、紫外線
吸収スペクトル、赤外線吸収スペクトルを測定し、これ
らのスペクトルを図1、図2に示した。また、純粋なベ
キノスタチンDを用いて、紫外線吸収スペクトル、赤外
線吸収スペクトル、水素核核磁気共鳴スペクトル及び炭
素核核磁気共鳴スペクトルを測定し、これらのスペクト
ルは図3、図4、図5及び図6に示した。ベキノスタチ
ンCおよびDの培養工程ならびに精製工程中での追跡
は、抗グルタチオントランスフェラーゼ活性の測定に基
づいて行った。その方法は、後述する試験例で示すグル
タチオントラスフェラーゼ阻害活性の測定法と同様の方
法を用いた。
【0040】実施例2 ベキノスタチン30重量部、結晶乳糖120部、結晶セ
ルロース147部及びステアリン酸マグネシウム3部を
V型混合機で打錠し、1錠300mgの錠剤を得た。
【0041】試験例 以下に、ベキノスタチンCおよびDがグルタチオントラ
ンスフェラーゼ阻害活性を有し、且つ毒性を示さないこ
とを試験例により示す。
【0042】試験例1 ベキノスタチンCおよびDのグルタチオントランスフェ
ラーゼ阻害活性 グルタチオントランスフェラーゼ阻害活性は、The
Journal ofBiological Chem
istry、第249巻、7130〜7139頁(19
74)に記載の方法の改良法で行った。即ち、試験管に
20mMグルタチオン(還元型)0.1ml、40mM 1−
クロロ−2,4−ジニトロベンゼン0.05ml、200
mMカリウム燐酸緩衝液(pH6.5)1.0ml、検体を含
む水溶液0.1ml、水0.7mlを加えた混合溶液に、C
ancer Research、第47巻、5626〜
5630頁(1987)に記載の方法を用いて、大腸菌
に発現させ、S−ヘキシルグルタチオン−セファロース
により精製した人胎盤型グルタチオントランスフェラー
ゼ(GSTπ)溶液0.05mlを加え、30℃、5分間
反応させた。反応後、340nmにおける吸光度(a) を測
定した。同時に検体を含まない緩衝液のみを用いた盲検
の吸光度(b) を測定し、グルタチオントランスフェラー
ゼ阻害率を〔(b−a)/b〕X100により計算し
た。50%阻害率を示す検体の濃度をIC50の値とし
た。この定量法で純粋なベキノスタチンCおよびDは、
おのおの40.0μg/ml、0.6μg/mlの濃度でグ
ルタチオントランスフェラーゼを50%阻害した。
【0043】試験例2 ベキノスタチンCおよびDの毒性 ベキノスタチンCおよびDを、それぞれ、マウスに腹腔
内投与してその毒性を調べたところ、それぞれの100
mg/kg投与でも毒性を示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベキノスタチンCの10μg/mlエタノール溶
液の紫外線吸収スペクトルを示す。
【図2】ベキノスタチンCの臭化カリウム錠内での赤外
線吸収スペクトルを示す。
【図3】ベキノスタチンDの10μg/mlエタノール溶
液の紫外線吸収スペクトルを示す。
【図4】ベキノスタチンDの臭化カリウム錠内での赤外
線吸収スペクトルを示す。
【図5】ベキノスタチンDの重ジメチルスルホキシド中
で測定した200MHz 水素核核磁気共鳴スペクトルを示
す。
【図6】ベキノスタチンDの重ジメチルスルホキシド中
で測定した50MHz 炭素核核磁気共鳴スペクトルを示
す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 9/99 (72)発明者 小島 蕗子 東京都文京区大塚3−42−13−601 (72)発明者 青山 貴之 東京都北区志茂3−17−2−302 (72)発明者 舘江 栃郎 東京都北区中十条1−18−8 (72)発明者 山崎 忠雄 埼玉県浦和市上大久保843−7

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(I) 【化1】 (式中RはCOOH又はHを示す。)で表される化合物
    であることを特徴とする生理活性物質ベキノスタチンC
    およびD又はその薬理学的に許容し得る塩。
  2. 【請求項2】 ストレプトミセス属に属するベキノスタ
    チン生産菌を栄養培地中で培養し、その培養物からベキ
    ノスタチンC又はDを採取することを特徴とする生理活
    性物質ベキノスタチンCおよびDの製造法。
  3. 【請求項3】 ベキノスタチンC又はDあるいはその薬
    学的に許容し得る塩および医薬用添加剤とからなるグル
    タチオントランスフェラーゼ阻害剤。
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