JPH06196173A - 燃料電池 - Google Patents

燃料電池

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JPH06196173A
JPH06196173A JP4344485A JP34448592A JPH06196173A JP H06196173 A JPH06196173 A JP H06196173A JP 4344485 A JP4344485 A JP 4344485A JP 34448592 A JP34448592 A JP 34448592A JP H06196173 A JPH06196173 A JP H06196173A
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JP
Japan
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fuel
electrode
specific surface
surface area
fuel cell
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JP4344485A
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English (en)
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Atsushi Arakane
淳 荒金
Hideaki Miyoshi
英明 三好
Tatsuo Mitsunaga
達雄 光永
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Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
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Publication date
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 燃料電池の電極材料であるアノードのカーボ
ンの耐食性を向上させ、かつ両極のカーボンの比表面積
を同等程度にして、電池特性の安定化を図る。 【構成】 アノード2に用いられているカーボン担体を
耐食性のある熱処理カーボンブラックにすることによ
り、アノード2の耐食性が高まり、腐食によるリン酸吸
収量の増大とその結果引き起こされるアノード特性の悪
化を防止する。また、アノード2とカソード1に比表面
積の類似した担体を用いることにより、両電極でのリン
酸吸収特性が均衡し、過度のリン酸移動を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、燃料電池に関し、特
に電池特性の安定化を向上させるために電極に用いられ
る触媒の担体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】燃料電池には、アルカリ型、リン酸型、
プロトン交換膜型、溶融炭酸塩型、固体電解質型などが
知られている。このうち、最も開発の段階が進んでいる
リン酸型燃料電池を用いて従来技術を説明する。
【0003】図8はリン酸型燃料電池の原理を説明する
図で、図において、1は酸素などの還元剤ガス等の還元
反応を司る酸素極、2は水素などの燃料ガス等の酸化反
応を司る燃料極、3はこれらの電極1,2間に介在する
電解質層を示し、これら主構成材料を積層して積層型燃
料電池を構成することができる。なお、上記各々の電極
1,2にガスを供給する流路をもったセパレータ4と5
が挟むような構成になっている。
【0004】そして、上記酸素極1と上記燃料極2に
は、白金などの貴金属微粒子をカーボンに担持した触媒
が、また、上記電解質層3には、電子絶縁性の粉末が、
さらに、上記セパレータ4,5には、ガス不透過性のカ
ーボン板が用いられており、上記燃料極2に燃料供給路
7から供給される水素H2は、燃料極1中で電子e-と水
素イオンH+になって、電子e-は外部回路を通り、水素
イオンH+は電解質層3のリン酸中を通り酸素極1に移
動し、そこへ空気供給路6から供給される酸素O2と反
応し電気と水H2Oを発生する。
【0005】上述した構造を有するリン酸型燃料電池に
おいて、酸素極(以下カソードと呼称する)1、燃料極
(以下アノードと呼称する)2には、ともに、高比表面
積を持つカーボンなどの担体に白金を担持した触媒を使
用している。カーボンの比表面積はその種類により大き
く異なり、数十から数千m2 /g以上にわたる。そのな
かでも、リン酸型燃料電池では、多くの場合、50〜4
00m2 /gのものを用いている。また、白金の担持量
はそれぞれの電極に要求される特性により異なるが、お
よそ5〜30重量%である。
【0006】上記カソード1、アノード2はそれぞれ電
極反応に必要なガスが供給されることにより一定の電位
を示す。すなわち、カソード1には空気供給路6から空
気を供給することにより、無負荷時で1.0V程度を示
し、アノード2には燃料供給路7から燃料ガス(例えば
水素80%、二酸化炭素19%、一酸化炭素1%)を供
給することにより、無負荷時で5〜10mV(いずれの
電位も水素電極に対して)を示す。このうち、カソード
1は、1.0Vという高電位と約200℃の熱リン酸と
いう二者からなる腐食性雰囲気における安定性を向上さ
せる目的で、触媒担体には耐食性に優れた熱処理カーボ
ンブラックが用いられている。
【0007】この熱処理工程はアセチレンブラック、フ
ァーネスブラックなどのカーボンブラックをおよそ18
00〜2800℃の温度で熱処理するものである。この
工程で、カーボンブラックの表面に存在する官能基は分
解され、比表面積が減少すると共に、カーボンの面間隔
(格子間隔)が減少し、グラファイトの値に近づく。こ
れらの表面及び構造面での改質が上記腐食性雰囲気での
安定性につながると考えられている。
【0008】ところが、このカーボンの熱処理工程は、
当然ながら製造コストアップにつながり、その適用は高
電位におかれるカソードに限定されていた。アノード2
は、後述するように、その環境から考えて耐食性は重要
でないと考えられていたためである。すなわち、アノー
ド2用の担体は熱処理を施していないカーボンブラック
が用いられていた。この触媒の使い分けについては、例
えば日本化学会誌NO.10、1988、P.1670
にその記載がある。
【0009】以上のことから、両電極に用いられるカー
ボンの特徴は以下のように定性的に説明される。すなわ
ち、カソード1に用いられるカーボンは熱処理を施して
おり、比表面積が比較的小さい(50〜200m2
g)、粒径が比較的大きい、表面官能基の数が少ない、
などの特徴を一般的に持つのに対し、アノード2に用い
られるカーボンは、熱処理が施されず、比表面積が比較
的大きい(200〜400m2/g)、粒径が小さい、
表面官能基の数が多い、等の一般的特徴を持つ。
【0010】これらの一般的特徴は、リン酸型燃料電池
の動作環境、条件等を反映させて考えると、以下のよう
な優劣が生じる。すなわち、比表面積及び表面官能基の
数は腐食量に影響し、比表面積が大きいほど或いは表面
官能基の数が多いほど腐食量は多くなる。また、比表面
積が大きく、粒径が小さいほど電解質であるリン酸の吸
収量が多くなる。当然ながら、これらの腐食量、リン酸
吸収量などの特性は、各電極が置かれる環境、電池の動
作条件などに影響される。
【0011】従って、腐食性の進行し易いアノード担体
であっても、動作環境(電位)が低く腐食が起こりにく
い条件であるため、実際にはアノード担体の腐食は問題
にならないとされていた。すなわち、上述のカソード1
及びアノード2のカーボン担体の状態では、アノード2
の腐食がカソード1と同程度に起こるとは考えられず、
余り注意は払われていなかった。
【0012】また、上述したカソード1及びアノード2
のカーボン担体の状態では、両極の担体の比表面積の差
異に起因して、また、アノード2の担体の腐食に起因し
て、リン酸吸収量の差異が両電極間で起こり、カソード
1側のリン酸がアノード2側に移動するという事態が生
じるが、従来、このような事態が発生することが認識さ
れていなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところで、実際の電池
を動作させてみて、その動作後の電極中のカーボンの状
態を観察すると共に、リン酸吸収量の分析を実施し、電
池特性の変化と対応させたところ、アノード2の担体の
腐食が実際に起こっていることが確認された。また、ア
ノード2中のリン酸量が増大していることも判明した。
このように、アノード2担体の腐食等に起因してアノー
ド2中のリン酸量が増加すると、アノード2中のガス
(水素)の拡散性が悪化し電池特性の悪化につながると
考えられる。
【0014】アノード2中の水素ガスの拡散性が低下す
るとカソード1の電位が上昇する。その結果、200
℃、100%という動作条件と相まって、カソード1の
腐食が進行する。このとき、カソード1ではカーボン担
体の腐食のみならず、担体上に担持されている白金も腐
食する。すなわち、白金は電解質であるリン酸中に溶解
する。この時、これらの腐食と同時にカソード1中の電
解質量が増加する。
【0015】このような事態が起こると、カソード1中
のガス(酸素)の拡散性が悪化し、反応活性点近傍での
酸素分圧が低下し、カソード特性の低下が起こる。そし
て、この変化は電池特性の低下となって現れる。この減
少が起こると、特性の回復を図ることは難しく、むし
ろ、ガスの拡散性は悪化の一途をたどるだけである。そ
して、電池として再生不能な状態に陥る。
【0016】以上述べたように、担体の腐食によって電
池特性が低下するだけでなく、各電極における電解質量
が過剰になると、同様にガス拡散性が悪化して電池特性
が低下する。その原因となるのがカソード1とアノード
2との間におけるリン酸吸収力の差異である。
【0017】そこで、この発明は、上述した点に鑑みな
されたもので、アノード担体の腐食を防止すると共に、
カソードとアノード間のリン酸量を均衡化してカソード
及びアノードへのリン酸移動を抑止することができる燃
料電池を得ることを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係
る燃料電池は、燃料ガス等の酸化反応を司る燃料極と、
還元剤ガス等の還元反応を司る酸素極と、これらの電極
間に介在する電解質層とを主構成材料とする燃料電池に
おいて、燃料極での酸化反応を促進する触媒の担体とし
て、1000〜2700℃の温度範囲でグラファイト化
した熱処理カーボンブラックを用いたことを特徴とする
ものである。
【0019】また、請求項2に係る燃料電池は、燃料ガ
ス等の酸化反応を司る燃料極と、還元剤ガス等の還元反
応を司る酸素極と、これらの電極間に介在する電解質層
とを主構成材料とする燃料電池において、上記燃料極で
の酸化反応を促進する触媒の担体の比表面積Saと上記
酸素極での触媒の担体の比表面積Scとの関係を、(S
a+Sc)≧175m2/g、Sa≦220m2/g、
0.5≦Sc/Sa≦1.8の範囲に設定したことを特徴
とするものである。
【0020】また、請求項3に係る燃料電池は、燃料ガ
ス等の酸化反応を司る燃料極と、還元剤ガス等の還元反
応を司る酸素極と、これらの電極間に介在する電解質層
とを主構成材料とする燃料電池において、上記酸素極で
の還元反応を促進する触媒の担体及び上記燃料極での酸
素反応を促進する触媒の担体として、カーボンブラック
の熱処理温度を変えて上記燃料極での酸化反応を促進す
る触媒の担体の比表面積Saと上記酸素極での触媒の担
体の比表面積Scを調整した熱処理カーボンブラックを
用いたことを特徴とするものである。
【0021】さらに、請求項4に係る燃料電池は、燃料
ガス等の酸化反応を司る燃料極と、還元剤ガス等の還元
反応を司る酸素極と、これらの電極間に介在する電解質
層とを主構成材料とする燃料電池において、上記燃料極
での酸化反応を促進する触媒の担体の比表面積Saと上
記酸素極での触媒の担体の比表面積Scとの関係を、
(Sa+Sc)≧175m2/g、Sa≦220m2
g、Sc≦150m2/g、0.5≦Sc/Sa≦1.8
の範囲に設定したことを特徴とするものである。
【0022】
【作用】この発明の請求項1による燃料電池において
は、燃料極での酸化反応を促進する触媒の担体として、
酸素極での還元反応を促進させる触媒の担体と同様に、
1000〜2700℃の温度範囲でグラファイト化した
熱処理カーボンブラックを用いることにより、カーボン
の耐食性を高めて腐食によるリン酸吸収量の増加を抑制
し、燃料極の特性悪化を防止する。
【0023】また、請求項2による燃料電池において
は、酸素極及び燃料極に用いられる担体の比表面積を同
程度にすることにより、両極間のリン酸吸収力を均衡化
させて両極間でのリン酸吸収量の増加を抑制する。
【0024】また、請求項3による燃料電池において
は、カーボンブラックの熱処理温度を変えることによっ
て燃料極と酸素極の比表面積を調整することにより、腐
食の原因となる表面官能基数を減少させると共に粒径の
増大により両極に用いられる担体の比表面積を比較的簡
単に同程度にすることができ、両極間のリン酸吸収力を
均衡化させる。
【0025】さらに、請求項4による燃料電池において
は、カーボン担体の安定性を重視して熱処理温度を高
め、比表面積を低く設定して電池特性の安定性を一層向
上させる。
【0026】
【実施例】以下、この発明を各実施例について詳細に説
明する。 実施例1.燃料電池の基本的構成は、図8と同様であ
る。先ず、この実施例1においては、アノード担体の腐
食を防止するために、カソード2に用いられている担体
と同様に、アノード担体にも熱処理したカーボンブラッ
クを用いた。熱処理したカーボンブラックを用いること
で熱リン酸に対する耐食性を高めることができる。
【0027】熱処理工程が腐食の観点で効果的となる理
由としては、熱処理によりカーボンの表面が改質される
ことが上げられる。また、熱処理温度によっては、カー
ボンの結晶構造自身が変化する。カーボンブラックの結
晶構造は、1000℃程度から変化し始める。そして、
グラファイトへとその構造は近づいて行く。
【0028】すなわち、表面官能基の多い、2次元的
で、小さな(例えば300〜500オングストローム程
度)アモルファス状であるカーボンブラックの状態か
ら、表面官能基が酸化若しくは脱離した、3次元的で比
較的結晶性の良い、数千オングストロームにも成長した
状態に変化する。
【0029】このグラファイトへとその結晶構造が変化
する過程は、グラファイト化(graphitization)と呼ば
れる。このグラファイト化は、熱処理温度が高いほど進
行する。グラファイト化の上限温度はおよそ2700℃
である。この温度を越えるとカーボンは蒸発し始めるた
めである。
【0030】この熱処理を通じてのグラファイト化によ
り、腐食の原因となる表面官能基数は減少すると同時
に、粒径の増大により比表面積(単位重量当たりの表面
積)も減少する。
【0031】また、アノード2への過度のリン酸移動を
防止するために、カソード1に用いられているカーボン
担体と類似した比表面積をもつカーボン担体をアノード
2に用いた。このときも、上述のように熱処理を施した
カーボンブラックを用いることができる。また、カーボ
ンブラック以外の材料、例えばTiCなどを用いること
ができる。
【0032】このように、アノード担体として熱処理し
たカーボンブラックを用いることにより、カーボンの耐
食性が高まり、リン酸吸収量の増加が抑制される。ま
た、カソード1及びアノード2に用いられる担体の比表
面積を同程度にすることにより、カソード1及びアノー
ド2間のリン酸吸収力が均衡化し、カソード1及びアノ
ード2でのリン酸吸収量の増加が抑制される。
【0033】実施例2.実施例2においては、具体的
に、カーボン担体として、熱処理したBlack Pearl
(Black Pearlは、米国、Cabot社製)を用いた。Bl
ack Pearlの熱処理温度は2500℃とした。比表面積
はBET法で測定し、およそ200m2/gが得られ
た。この熱処理したカーボンブラックをアノード2及び
カソード1の両方の担体に採用した。
【0034】そして、所定の製法に従って電極化し、得
られた電極とSiCマトリクスを用い所定の手順に従っ
て電池に組み立て、特性とその安定性評価を行った。そ
の結果を図1に示す。また、アノード触媒担体に熱処理
をしていないカーボンブラックを用いた従来例Bを、比
較のために合わせて図1に示す。運転開始後100時間
程度以内の初期状態では、本実施例による電池Aは従来
例Bと比較して若干低い特性を示した。しかし、長期安
定性では本発明の方が従来例と比較して良い特性を示し
た。
【0035】実施例3.実施例3においては、カーボン
担体として、熱処理したVulcan XC−72を用いた。
このカーボンブラックの比表面積はおよそ240m2
gである。このカーボンブラックを出発材料として、そ
の熱処理温度と比表面積の関係を調べた結果を図2に示
す。熱処理雰囲気は窒素中とした。
【0036】図2に示されるように、熱処理温度が高く
なるに従って比表面積は小さくなった。このように熱処
理温度を変えた試料を幾種かつくり、カソード1及びア
ノード2の担体の組み合わせを変えて電池を組み立て、
特性評価を行った。カソード1及びアノード2担体の組
み合わせ、およびその電池の呼称を表1に、そして、そ
れら電池の特性の経時変化の様子を図3に示す。図3に
おいて、運転1万時間後の電池電圧をVt、その動作期
間中の最大電圧をVmax とする。そのとき、1万時間に
おける電池の安定性はVt/Vmaxで表すこととする。
【0037】
【表1】
【0038】実施例4.実施例4において、カーボン担
体として、Vulcan XC−72を選定し、熱処理温度を
変えたサンプルを作成した。そして、上記実施例3と同
様にして、電極1,2、電解質層3としてのマトリクス
の構成のサンプルとした。各電極、マトリクスには所定
のリン酸量を含浸させた。そして、一定時間、120℃
で加熱した。そして、分解後、各電極に含浸されている
リン酸量を分析した。リン酸量分析は、温水抽出、IC
P分析によった。
【0039】その結果を図4に示す。図4において、S
aはアノード2での酸化反応を促進する触媒の担体の比
表面積、Scはカソード1での還元反応を促進する触媒
の担体の比表面積を示し、この図4からSc/Sa値が
大きくなるほどカソード1中のリン酸量はアノード2中
と比較して相対的に大きくなっていることが分かる。ま
た、別の実験で図4に示される縦軸の値が基準となる値
(1)から50%低下した場合、カソード中の触媒の電
解質による濡れの低下が生じ活性表面積が減少し電池特
性が低下することが分かっている。さらに、縦軸の値が
基準となる値(1)から100%増加したとき(倍増し
たとき)、カソード1中の電解質による過度の濡れが進
行し、電極中のガス拡散性が悪化し電池特性が低下する
ことが分かっている。
【0040】そこで、これらの許容される縦軸の値から
Sc/Sa値の範囲を求めると、0.5≦Sc/Sa≦
1.8が得られた。この範囲になるようにカソード1と
アノード2担体の比表面積を調整することで、カソード
1中のリン酸量は適切に保たれる。その結果、電池特性
は良好となる。
【0041】そこで、この電池特性について、図1、図
2、図3及び表1を再整理すると表2が得られた。
【0042】
【表2】
【0043】表2から、カソード1及びアノード2の比
表面積と、電池電圧の最大値Vmaxと電池動作1万時間
後の電池電圧と電池動作1万時間における電池電圧の低
下率Vt/Vmaxの関係を比較することができる。
【0044】さらに、表2の関係を図示したものが、図
5及び図6である。良好なる電池とは、最大電圧が高
く、低下率が小さいものを指し、図5及び図6から、期
待する最大電圧、低下率を規定すれば比表面積の範囲を
定めることができる。すなわち、最大電圧が640mV
以上、低下率が0.96以上とすると、図5からSa≦
220m2/g、図6から(Sa+Sc)≧175m2
gの範囲が得られる。
【0045】以上の結果をまとめると、電池性能上、好
ましい比表面積の範囲は図7の範囲に限定される。すな
わち、図7において斜線部で示される範囲の比表面積を
もつ担体を用いた電池の特性が優れている。さらに、カ
ソード担体の安定性を重視して熱処理温度を高め、比表
面積を低く設定すると電池特性の安定性は一層向上す
る。この時、カソード担体の比表面積の上限値を設定す
ることができ、図7ではSc≦150m2/gとなる。
【0046】上述したように、アノード2に用いられる
触媒担体カーボンを熱処理することにより、熱リン酸に
対する耐食性が向上し電池特性の安定性が向上した。ま
た、担体カーボンの比表面積をカソード1とアノード2
で調整し、リン酸の移動が両極で起こらないか、もしく
はその量を低下させることにより、電池特性の安定性を
向上させることができる。
【0047】なお、上記各実施例は、電解質層3にリン
酸を用いるリン酸型燃料電池について説明したが、その
他の電解質を用いる燃料電池、例えばアルカリ型、プロ
トン交換膜型の燃料電池についても、上記各実施例で示
されたように、カーボン等の担体に活物質を担持した触
媒を用いる系であれば適用可能であることは明らかであ
る。
【0048】また、上述した酸素極1、燃料極2及び電
解質層3の主構成材料を、積層してこれにセパレート
4,5と燃料供給路7及び空気供給路6を付加して積層
型燃料電池を構成できるのは勿論である。
【0049】
【発明の効果】以上のように、この発明の請求項1によ
れば、燃料極での酸化反応を促進する触媒の担体とし
て、1000〜2700℃の温度範囲でグラファイト化
した熱処理カーボンブラックを用いたので、酸素極での
還元反応を促進させる触媒の担体と同様に、カーボンの
耐食性を高めて腐食によるリン酸吸収量の増加を抑制
し、燃料極の特性悪化を防止することができるという効
果がある。
【0050】また、請求項2によれば、燃料極での酸化
反応を促進する触媒の担体の比表面積Saと酸素極での
触媒の担体の比表面積Scとの関係を、(Sa+Sc)
≧175m2/g、Sa≦220m2/g、0.5≦Sc
/Sa≦1.8の範囲に設定したので、酸素極及び燃料
極に用いられる担体の比表面積を同程度にすることによ
り、両極間のリン酸吸収力を均衡化させて両極間でのリ
ン酸吸収量の増加を抑制することができるという効果が
ある。
【0051】また、請求項3によれば、酸素極での還元
反応を促進する触媒の担体及び燃料極での酸素反応を促
進する触媒の担体として、カーボンブラックの熱処理温
度を変えて上記燃料極での酸化反応を促進する触媒の担
体の比表面積Saと上記酸素極での触媒の担体の比表面
積Scを調整した熱処理カーボンブラックを用いたの
で、腐食の原因となる表面官能基数を減少させると共に
粒径の増大により両極に用いられる担体の比表面積を比
較的簡単に同程度にすることができ、両極間のリン酸吸
収力を均衡化させることができるという効果がある。
【0052】さらに、請求項4によれば、酸素極での触
媒の担体の比表面積Scを熱処理することにより調整
し、上記燃料極での酸化反応を促進する触媒の担体の比
表面積Saと上記酸素極での触媒の担体の比表面積Sc
との関係を、(Sa+Sc)≧175m2/g、Sa≦
220m2/g、Sc≦150m2/g、0.5≦Sc/
Sa≦1.8の範囲に設定したので、カーボン担体の安
定性を重視して熱処理温度を高め、比表面積を低く設定
して電池特性の安定性を一層向上させることができると
いう効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例2に係る電池特性の経時変化
を示す特性図である。
【図2】この発明の実施例3に係る熱処理温度と比表面
積の関係を示す特性図である。
【図3】この発明の実施例3に係る電池特性の経時変化
を示す特性図である。
【図4】この発明の実施例4に係るカソード中のリン酸
量と比表面積の関係を示す特性図である。
【図5】この発明の実施例4に係る電池電圧の低下率と
Saとの関係を示す特性図である。
【図6】この発明の実施例4に係る最大電池電圧と(S
a+Sc)との関係を示す特性図である。
【図7】この発明の実施例4に係る電池性能上好ましい
ScとSaの範囲を示す特性図である。
【図8】燃料電池の原理を説明する構成図である。
【符号の説明】
1 酸素極(カソード) 2 燃料極(アノード) 3 電解質層
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年4月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正内容】
【0003】図8はリン酸型燃料電池の原理を説明する
図で、図において、1は酸素などの酸化剤ガス等の還元
反応を司る酸素極、2は水素などの燃料ガス等の酸化反
応を司る燃料極、3はこれらの電極1,2間に介在する
電解質層を示し、これら主構成材料を積層して積層型燃
料電池を構成することができる。なお、上記各々の電極
1,2にガスを供給する流路をもったセパレータ4と5
が挟むような構成になっている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1に係
る燃料電池は、燃料ガス等の酸化反応を司る燃料極と、
酸化剤ガス等の還元反応を司る酸素極と、これらの電極
間に介在する電解質層とを主構成材料とする燃料電池に
おいて、燃料極での酸化反応を促進する触媒の担体とし
て、1000〜2700℃の温度範囲でグラファイト化
した熱処理カーボンブラックを用いたことを特徴とする
ものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】また、請求項2に係る燃料電池は、燃料ガ
ス等の酸化反応を司る燃料極と、酸化剤ガス等の還元反
応を司る酸素極と、これらの電極間に介在する電解質層
とを主構成材料とする燃料電池において、上記燃料極で
の酸化反応を促進する触媒の担体の比表面積Saと上記
酸素極での触媒の担体の比表面積Scとの関係を、(S
a+Sc)≧175m2/g、Sa≦220m2/g、
0.5≦Sc/Sa≦1.8の範囲に設定したことを特徴
とするものである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】また、請求項3に係る燃料電池は、燃料ガ
ス等の酸化反応を司る燃料極と、酸化剤ガス等の還元反
応を司る酸素極と、これらの電極間に介在する電解質層
とを主構成材料とする燃料電池において、上記酸素極で
の還元反応を促進する触媒の担体及び上記燃料極での酸
素反応を促進する触媒の担体として、カーボンブラック
の熱処理温度を変えて上記燃料極での酸化反応を促進す
る触媒の担体の比表面積Saと上記酸素極での触媒の担
体の比表面積Scを調整した熱処理カーボンブラックを
用いたことを特徴とするものである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正内容】
【0021】さらに、請求項4に係る燃料電池は、燃料
ガス等の酸化反応を司る燃料極と、酸化剤ガス等の還元
反応を司る酸素極と、これらの電極間に介在する電解質
層とを主構成材料とする燃料電池において、上記燃料極
での酸化反応を促進する触媒の担体の比表面積Saと上
記酸素極での触媒の担体の比表面積Scとの関係を、
(Sa+Sc)≧175m2/g、Sa≦220m2
g、Sc≦150m2/g、0.5≦Sc/Sa≦1.8
の範囲に設定したことを特徴とするものである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃料ガス等の酸化反応を司る燃料極と、
    還元剤ガス等の還元反応を司る酸素極と、これらの電極
    間に介在する電解質層とを主構成材料とする燃料電池に
    おいて、燃料極での酸化反応を促進する触媒の担体とし
    て、1000〜2700℃の温度範囲でグラファイト化
    した熱処理カーボンブラックを用いたことを特徴とする
    燃料電池。
  2. 【請求項2】 燃料ガス等の酸化反応を司る燃料極と、
    還元剤ガス等の還元反応を司る酸素極と、これらの電極
    間に介在する電解質層とを主構成材料とする燃料電池に
    おいて、上記燃料極での酸化反応を促進する触媒の担体
    の比表面積Saと上記酸素極での触媒の担体の比表面積
    Scとの関係を、(Sa+Sc)≧175m2/g、S
    a≦220m2/g、0.5≦Sc/Sa≦1.8の範囲
    に設定したことを特徴とする燃料電池。
  3. 【請求項3】 燃料ガス等の酸化反応を司る燃料極と、
    還元剤ガス等の還元反応を司る酸素極と、これらの電極
    間に介在する電解質層とを主構成材料とする燃料電池に
    おいて、上記酸素極での還元反応を促進する触媒の担体
    及び上記燃料極での酸素反応を促進する触媒の担体とし
    て、カーボンブラックの熱処理温度を変えて上記燃料極
    での酸化反応を促進する触媒の担体の比表面積Saと上
    記酸素極での触媒の担体の比表面積Scを調整した熱処
    理カーボンブラックを用いたことを特徴とする燃料電
    池。
  4. 【請求項4】 燃料ガス等の酸化反応を司る燃料極と、
    還元剤ガス等の還元反応を司る酸素極と、これらの電極
    間に介在する電解質層とを主構成材料とする燃料電池に
    おいて、上記燃料極での酸化反応を促進する触媒の担体
    の比表面積Saと上記酸素極での触媒の担体の比表面積
    Scとの関係を、(Sa+Sc)≧175m2/g、S
    a≦220m2/g、Sc≦150m2/g、0.5≦S
    c/Sa≦1.8の範囲に設定したことを特徴とする燃
    料電池。
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