JPH06192073A - 細胞分化誘導剤 - Google Patents

細胞分化誘導剤

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JPH06192073A
JPH06192073A JP35725692A JP35725692A JPH06192073A JP H06192073 A JPH06192073 A JP H06192073A JP 35725692 A JP35725692 A JP 35725692A JP 35725692 A JP35725692 A JP 35725692A JP H06192073 A JPH06192073 A JP H06192073A
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cancer
agent
compound
cell differentiation
cells
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JP35725692A
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English (en)
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Tatsu Sakai
達 酒井
Tomohide Tanaka
智英 田中
Kana Satou
加名 佐藤
Takashi Hibi
孝 日比
Yoshio Tanabe
義雄 田邊
Shigemitsu Osawa
重光 大沢
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Eisai Co Ltd
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Eisai Co Ltd
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  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来、臨床的有用性の高い医薬品のなかっ
た、細胞分化誘導作用に基づく造血器腫瘍・固形腫瘍な
どの疾患の治療・改善剤を提供する。 【構成】 従来の癌薬物治療法の基礎となる考え方は、
増殖能が異常に高い腫瘍細胞をすべて死滅させるという
ものであるが、正常細胞に対しても毒性を示すため重篤
な副作用が避けられず治療効果にも限界があった。しか
し安全性が極めて高い潰瘍・胃炎治療剤であるゲラニル
ゲラニルアセトン等の化合物は、意外にも細胞分化誘導
作用も有しており、造血器腫瘍・固形腫瘍等の各種癌・
悪性腫瘍の治療・改善剤となり得る。さらにレチノイン
酸等の制ガン剤と併用すると制癌剤の効果を増強する作
用もあり、併用療法を行えば制ガン剤の使用量を削減し
副作用を軽減することが可能となり、癌患者のクオリテ
ィー・オブ・ライフの改善に大きく貢献する臨床上有用
性の高い瘍癌・悪性腫の治療・改善剤となり得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、細胞分化誘導(以下、
分化誘導)作用に基づく造血器腫瘍・固形腫瘍などの疾
患の治療・改善剤に関する。
【0002】
【発明の背景】わが国における死亡原因の第一位を癌が
占めるようになって久しく、しかも患者数は年々増加し
てきており、有効性および安全性の高い薬剤や治療法の
開発が、今や国民・研究者・行政の最大関心事となって
いる。
【0003】癌(腫瘍)は発現部位・病理像・症状等に
より多岐に分類されるが、造血器腫瘍の代表的疾患であ
る白血病は血液細胞(白血球)の腫瘍であり、未分化の
各種幼若型白血球細胞の増殖が特徴である。またそれら
の中でも、増加している腫瘍細胞が未成熟な芽球である
ものを急性白血病、成熟細胞であるものを慢性白血病と
分類しており、多岐にわたる臨床症状を呈するが、その
多くは、正常造血の抑制に基づく症状と、他臓器への浸
潤・圧迫に基づく症状に大別することができる。具体的
には、正常血球細胞の現象は赤血球減少による貧血・顆
粒球減少による感染症や発熱・血小板の減少による出血
傾向として現れ、正常造血の抑制は骨髄不全を招く。癌
が予後不良な疾患であることは一般よく知られるところ
であり、これまでにも種々の薬剤や治療方法が検討され
てきた。
【0004】それらの中でも薬物治療法の基礎となる考
え方は、腫瘍細胞である白血病細胞をすべて死滅させる
ことにより治療効果を得るというものであり、したがっ
てよりよい治療成績を上げるために、増殖能が異常に高
い腫瘍に対し、細胞毒性による殺細胞作用をより強力に
有する薬剤の開発や、併用療法、高濃度・多量投与療法
などが試みられてきた。しかしこれらの薬剤や治療法
は、腫瘍細胞だけに特異的に作用するのではなく、正常
細胞に対しても毒性を示すため、心臓・心筋障害、骨髄
機能抑制、悪心・嘔吐、神経障害、脱毛等の重篤な副作
用が発現し、治療効果にも限界があった。
【0005】一方、従来の制癌剤と比較して安全性のよ
り高い各種分化誘導剤が、in vitroにおいて腫瘍細胞を
成熟細胞へ分化誘導する事実は知られており、分化誘導
療法への期待が集まっていたが、残念ながら従来の分化
誘導剤では臨床での有用性が認められなかった。しかし
1988年にヒュン(Huang) らが、オールトランス−レチノ
イン酸(以下、RA)が急性前骨髄性白血病(以下、APL)
患者に対し100%に近い完全寛解をもたらした臨床成績を
報告して以来[ブラッド(Blood), 72,567-572,1988.]、
世界各国においてその効果が再確認され、造血器腫瘍の
みならず固形腫瘍を含めた広い範囲の癌に対する分化誘
導療法に期待が高まりつつある。
【0006】
【従来技術】前述のように、RAが臨床において APLに有
効であることは、ヒュン(Huang) ら[ブラッド(Blood),
72,567-572,1988.]を始め、キャステン(Castaigne)ら
[ブラッド(Blood), 76,1704-1709,1990.]、ワーレル(W
arrell) ら[ニューイングランド・ジャーナル・オブ・
メディスン(New Engl.J.Med.),324,1385-1393,1991.]な
ど、多く研究者が報告している。
【0007】またオルソン(Olsson)らは、ビタミンD3
の生理活性型代謝物である 1α,25-ジヒドロキシコレカ
ルシフェロール(以下、活性V.D3)が、ヒト・リンパ腫
培養細胞系(U937) において分化誘導作用を有すること
を報告している[キャンサー・リサーチ(Cancer Res.),
43(12Pt1),5862-5867,1983.]。これより分化誘導作用を
有する活性V.D3誘導体の開発も盛んに行われるようにな
り、例えば特開昭61-33165号公報には24−アルキルーデ
ヒドロビタミンD3 誘導体が抗腫瘍作用を有すること
が、また特開昭 61-140560号公報には20−オキサ-21-ノ
ル−ビタミンD3誘導体が分化誘導作用を有すること
が、それぞれ開示されている。
【0008】ツァン(Zhang) らは、ブファリン(Bufali
n)がヒト白血病細胞の培養細胞系であるHL60、U937お
よび ML1において分化誘導作用を示したことを報告して
いる[バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リ
サーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.C
ommun.),178(2),686-693,1991.およびキャンサー・リサ
ーチ(Cancer Res.),52(17),4634-4641,1992.] 。
【0009】また上記以外にも分化誘導作用を有する化
合物として、バッカラーニ(Baccarani)らはシトシン・
アラビノシド(Ara-C)を[ブリティッシュ・ジャーナル
・オブ・ヘマトロジー(Br.J.Haematol.),42,485-487,19
79.]、モーリン(Morin) らはアクラシノマイシンAを
[キャンサー・リサーチ(Cancer Res.),44,2807-2812,1
984.] 、森屋らはインターフェロン−αを[臨床血液,3
2,170-172,1991.]に報告している。
【0010】石倉らは、マウス骨髄球性白血病の培養細
胞系を用いて、ゲラニル・ファルネソール(3,7,11,15,
19−ペンタメチル-2、6、10、14、18-エイコサペンタエン−
1-オール)が分化誘導作用を有することを報告している
[ロイケミア・リサーチ(Leukemia Res.),8(5),843-85
2,1984.] 。
【0011】
【本発明が解決しようとする問題点】RAおよびその誘導
体は、皮膚癌や難治性皮膚角化疾患である乾癬の治療に
利用されているが、脂溶性が極めて高いため、長期間投
与すると肝臓の肥大・神経異常・食欲不振・嘔吐・脱毛
・そう痒感等のビタミンA過剰症状を発現しやすいこと
が広く知られており、かつ投与を中止しても肝臓や組織
に長期間残留するため、副作用が一度発現すると長期間
消失しない重大な欠点がある。またRAが APLに有効であ
ることは前述の通りであるが、 APLが全白血病患者中に
占める割合は約5%と非常に少なく、他の多くのタイプの
急性白血病患者にはほとんど無効であった。さらに寛解
後も投与を中止すると再発しやすい問題もある。
【0012】ビタミンD3 誘導体は骨粗鬆症などの治療
に利用されているが、腸管でのカルシウム吸収および腎
臓におけるカルシウム再吸収を促進するので、投与量が
過剰になると高カルシウム血症を引き起こし、石灰沈着
に起因する腎臓障害や消化器障害をもたらすことが知ら
れている。このため投与期間中は定期的に血清カルシウ
ム値を検査しなければならず、臨床では非常に使いにく
い問題点がある。さらにビタミンD3 誘導体の分化誘導
作用は、ヒト前骨髄球性白血病の培養細胞系であるHL60
には有効であるが、他のタイプのモデルにおいては有効
性が認められていない。
【0013】ブファリンは臨床には応用されていないた
め、その安全性に関して全く不明であり、ヒトでの有用
性を予測することはできなかった。
【0014】さらにシトシン・アラビノシドやアクラシ
ノマイシンAも安全性上の問題から国内では薬剤として
許可されておらず、インターフェロン−αの抗腫瘍作用
も期待されたほどではなかった。
【0015】ゲラニル・ファルネソールの分化誘導作用
に関する評価結果はマウス白血病細胞培養細胞系におけ
るものである。その後ヒト白血病細胞培養細胞系での評
価結果は全く報告されていないので、種の異なる細胞間
での薬剤感受性の差を考慮すると、ヒトでの有効性は一
切不明であった。
【0016】このように、各種癌に対して優れた有効性
と安全性を兼ね備えた薬剤はないのが現状であり、臨床
で広範囲の癌に対し有用性の高い医薬品の開発が強く望
まれていた。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる、6,10,1
4,18−テトラメチル−5,9,13,17-ノナデカテトラエン−
2-オン(一般名;ゲラニル・ゲラニル・アセトン、以下
GGA)等の化合物は抗潰瘍作用および抗胃炎作用を有す
る化合物として特公昭63-44726号公報および特開昭62-1
0013号公報に開示されており、すでに臨床において胃炎
・胃潰瘍治療剤として広く用いられている。これらの化
合物は粘膜保護修復作用・細胞増殖賦活作用・リン脂質
合成促進作用など多彩な薬理作用を有することが知られ
ており、かつ毒性が極めて低く、臨床においても特筆さ
れる副作用も認められず、優れた医薬品として利用され
ている。本発明者らは、これらの化合物群の多彩な生理
活性と、臨床において長期間使用した際も安全性が高い
という要件を備えていることに着目し、永年他の疾患へ
の有効性も検討してきた。その結果、意外にも下記一般
式(I) で表される化合物が分化誘導作用も有しており、
造血器腫瘍・固形腫瘍などの各種癌に対する治療・改善
剤として所期の目的を達成できること、さらに他の制癌
剤との併用により制癌効果を一層増強することも見い出
し本発明を完成した。
【0018】
【化4】
【0019】[式中Rは低級アシルアルキル基または低
級ヒドロキシアルキル基を、n は2〜6の整数を意味す
る。]
【0020】したがって本発明の目的は、分化誘導作用
を有する臨床的有用性の高い、各種癌に対する治療・改
善剤を提供することにある。具体的には一般式(I) で表
される化合物を有効成分とする、造血器腫瘍・固形腫瘍
等の各種癌・悪性腫瘍の治療・改善剤、制癌剤の効果を
増強する分化誘導剤、および本化合物の分化誘導作用が
有効な疾患の治療・改善剤に関する。ここで造血器腫瘍
の具体的疾患名の一例としては、例えば急性白血病、慢
性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、マクログロブ
リン血症などを挙げることができ、また固形腫瘍として
は、例えば脳腫瘍、頭頸部癌、乳癌、肺癌、食道癌、胃
癌、大腸癌、肝癌、胆嚢・胆管癌、膵癌、膵島細胞癌、
腎細胞癌、副腎皮質癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、
卵巣癌、子宮癌、絨毛癌、甲状腺癌、悪性カルチノイド
腫瘍、皮膚癌、悪性黒色腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、神
経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、胎児性横紋筋肉腫、網膜
芽細胞種などを挙げることができるが、本発明の対象疾
患がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0021】また本発明においては上記治療・改善剤と
しての有効性に加え、長期間投与しても極めて高い安全
性が期待できる。さらに、RA、ビタミンD3 誘導体、ブ
ファリン、エトポシド、腫瘍壊死因子(以下、TNF)−
α、インターフェロン等の他の制癌剤との併用により制
癌効果を一層増強できることから、併用により、効果は
シャープであるが副作用も非常に強い従来の制癌剤の使
用量を削減することも可能となり、制癌効果は保ちつつ
副作用は軽減して長期間治療を続けることができ、癌患
者のクオリティー・オブ・ライフの改善に大きく貢献す
る発明であると言える。
【0022】本発明にかかる化合物(I) の一般式におい
て、Rは低級アシルアルキル基または低級ヒドロキシア
ルキル基を意味する。具体的には例えば低級アシルアル
キル基としてアセトキシメチル基、プロピオニルメチル
基、ブチリルメチル基、バレリルメチル基、アセトキシ
エチル基、プロピオニルエチル基、ブチリルエチル基、
バレリルエチル基、ベンゾイルメチル基、トルオイルメ
チル基等の炭素数2〜6の脂肪族アシル基または芳香族
アシル基で置換された炭素数2〜6の低級アルキル基
を、低級ヒドロキシアルキル基として1-ヒドロキシエチ
ル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシ−n-プロピ
ル基、2-ヒドロキシ−n-プロピル基、3-ヒドロキシ−n-
プロピル基、1-ヒドロキシ−n-ブチル基、2-ヒドロキシ
−n-ブチル基、3-ヒドロキシ−n-ブチル基、4-ヒドロキ
シ−n-ブチル基、ヒドロキシアミル基、ヒドロキシヘキ
シル基などの炭素数2〜6の基を挙げることができる。
さらにこれらの基の中でもアセトキシメチル基または2-
ヒドロキシ−n-プロピル基を有する化合物が、薬理活性
上の観点からはより好ましい。
【0023】またn は2〜6の整数を意味するが、同様
に薬理活性上の観点からは n=4の化合物が最も好まし
い。
【0024】さらに化合物(I) は分子内に二重結合を有
し、各種の幾何異性体(cis,transまたは Z、Eで示され
る立体異性体)が存在するが、本発明にはそれらすべて
が含まれることは言うまでもない。また本発明において
は、これらの幾何異性体のうち1種類のみを用いてもよ
いし、2種類以上の幾何異性体の混合物を用いてもよく
限定されない。また化合物(III) は分子内に不斉炭素原
子を1個有し、2種類の光学異性体が存在するが、本発
明においてはこれらの光学異性体のうち一方のみを用い
てもよいし、2種類の光学異性体の混合物を用いてもよ
く限定されない。
【0025】ここでこれらの化合物の中でも好ましい化
合物の1例としては、化合物(II)の幾何異性体の1つで
ある(5E,9E,13E)−6,10,14,18−テトラメチル−5,9,1
3,17-ノナデカテトラエン−2-オン(IV)および(5Z,9E,1
3E)−6,10,14,18−テトラメチル−5,9,13,17-ノナデカ
テトラエン−2-オン(V) を、また化合物(III) の幾何異
性体の1つである(5E,9E,13E)−6,10,14,18−テトラメ
チル−5,9,13,17-ノナデカテトラエン−2-オール(VI)お
よび(5Z,9E,13E)−6,10,14,18−テトラメチル−5,9,1
3,17-ノナデカテトラエン−2-オール(VII) 等を挙げる
ことができるが、本発明がこれらの化合物に限定されな
いことは言うまでもない。上記化合物の構造式を以下に
示す。
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】なお一般式(I) で表される化合物のうちR
が低級アシルアルキル基であるものの製造法は、すでに
特公昭63-44726号公報および特開昭62-10013号公報に開
示されており、記載された製造例にしたがって合成する
ことができるが、代表例を以下に製造例として示す。ま
たRが低級ヒドロキシアルキル基であるものについて
は、以下の製造例にしたがい、Rが低級アシルアルキル
基である化合物を水素化ホウ素ナトリウムで還元して得
ることができる。さらに一部の化合物(I) については天
然由来物あるいは合成品を、医薬・香料・化粧品・食品
・化成品・化学工業用等の原料として入手可能であり、
これらを利用することもできる。
【0031】以下に本発明にかかる代表的な化合物の製
造例を示すが、本発明がこれらに限定されないことは言
うまでもない。
【0032】
【製造例】製造例1 (5E,9E,13E)−6,10,14,18−テトラメチル−
5,9,13,17-ノナデカテトラエン−2-オン(IV)の合成
【0033】
【化9】
【0034】工程(1); 10%油性水素化ナトリウム 10.0g
(41.7mmol)を無水テトラヒドロフラン(200ml)に懸濁
し、氷冷・窒素気流下、アセト酢酸エチル 5.5g(42.3mm
ol) を滴下し30分間攪拌した。氷冷・窒素気流条件を保
ち、ここに(2E,6E)-1-ブロモ−3,7,11−トリメチル−2,
6,10−ドデカトリエン(VIII)(アルドリッチ社製、ファ
ルネシルブロミド)10.0g (35.1mmol)を滴下しその後1
時間攪拌を続け反応液を水中に加えた。n-へキサン(50m
l)で2回抽出し、有機層を水洗後無水硫酸ナトリウムで
乾燥し減圧濃縮した。残渣をエタノール(50ml)に溶解
し、水酸化カリウム6.0g を加えて2時間加熱還流し
た。反応液を冷却後水中に加え希塩酸で中和した後、n-
へキサン(50ml)で2回抽出し、有機層を水洗後無水硫酸
ナトリウムで乾燥し減圧濃縮した。残渣をシリカゲル・
カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:ベンゼン系)
で精製して(5E,9E)−6,10,14-トリメチル−5,9,13−ペ
ンタデカトリエン−2-オン(IX) 6.6g を得た。
【0035】工程(2); 10%油性水素化ナトリウム 5.2g
(21.7mmol) を無水テトラヒドロフラン(50ml)に懸濁
し、氷冷・窒素気流下、トリエチルホスホノアセテート
5.1g(22.8mmol)を滴下し30分間攪拌した。ここに化合
物(IX) 5.0g(19.1mmol)を滴下しその後1時間攪拌を続
け反応液を水中に加えた。n-へキサン(30ml)で2回抽出
し、有機層を水洗後無水硫酸ナトリウムで乾燥し減圧濃
縮した。残渣をシリカゲル・カラムクロマトグラフィー
(n-ヘキサン:ジエチルエーテル系)で精製して[(1E:
Z),5E,9E,13E]−2,6,10,14-テトラメチル−1,5,9,13−
ペンタデカテトラエンニル酢酸エチル(X) 5.6gを得た。
【0036】工程(3);化合物(X) 5.0g(15.1mmol)を無水
テトラヒドロフラン(50ml)に懸濁し、氷冷・窒素気流
下、3.4M−水素化(2-ビスメトキシエトキシ)アルミニ
ウムナトリウム・トルエン溶液(アルドリッチ社製、商
品名;Red-Al)7.0ml を滴下した。1時間攪拌を続けた
後希塩酸(5ml) を滴下し、反応液を水中に加えた。n-へ
キサン(30ml)で2回抽出し、有機層を希塩酸および水で
洗った後無水硫酸ナトリウムで乾燥し減圧濃縮した。残
渣をシリカゲル・カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサ
ン:ジエチルエーテル系)で精製して[(2E:Z),6E,10E,1
4E]-3,7,11,15-テトラメチル−2,6,10,14-ヘキサデカテ
トラエン−1-オール(XI) 3.3g を得た。
【0037】工程(4);室温にて化合物(XI) 3.0g(10.3mm
ol) を、47%-臭化水素酸(50ml)に懸濁し2時間攪拌し
た。反応液を水中に加え、n-へキサン(30ml)で2回抽出
し、有機層を水洗後無水硫酸ナトリウムで乾燥し減圧濃
縮して[(2E:Z),6E,10E,14E]-1-ブロモ−3,7,11,15 −テ
トラメチル−2,6,10,14-ヘキサデカトリエン(XII) を得
た。
【0038】工程(5); 10%油性水素化ナトリウム 2.8g
(11.7mmol) を無水テトラヒドロフラン(30ml)に懸濁
し、氷冷・窒素気流下、アセト酢酸エチル 1.6g(12.3mm
ol)を滴下し30分間攪拌した。氷冷・窒素気流条件を保
ち、ここに前記工程(4) で得られた化合物(XII) の全量
を滴下し、その後1時間攪拌を続け反応液を水中に加え
た。n-へキサン(30ml)で2回抽出し、有機層を水洗後無
水硫酸ナトリウムで乾燥し減圧濃縮した。残渣をエタノ
ール(30ml)に溶解し、水酸化ナトリウム 1.5g を加えて
2時間加熱還流した。反応液を冷却後水中に加え希塩酸
で中和した後、n-へキサン(30ml)で2回抽出し、有機層
を水洗後無水硫酸ナトリウムで乾燥し減圧濃縮した。残
渣を -40℃においてn-へキサンから結晶化し、さらにシ
リカゲル・カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:ベ
ンゼン系)で精製して標題化合物 1.1g を得た。
【0039】製造例2 (5Z,9E,13E)−6,10,14,18−テ
トラメチル−5,9,13,17-ノナデカテトラエン−2-オン
(V) の合成 前記、製造例1での化合物(IV)の結晶化母液をシリカゲ
ル・カラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:ベンゼン
系)で精製して標題化合物 0.5g を得た。
【0040】製造例3 (5E,9E,13E)−6,10,14,18−テ
トラメチル−5,9,13,17-ノナデカテトラエン−2-オール
(VI)の合成 化合物(IV) 2.0g(6.1mmol)をメタノール(20ml)に溶解
し、水素化ホウ素ナトリウム 0.4g(10.5mmol)を水(2m
l) に溶解して滴下した。2時間攪拌した後アセトン(5m
l) を滴下し、反応液を水中に加えてn-ヘキサン(30ml)
で2回抽出し、有機層を水洗後無水硫酸ナトリウムで乾
燥し減圧濃縮した。残渣をシリカゲル・カラムクロマト
グラフィー(n-ヘキサン:ジエチルエーテル系)で精製
して標題化合物 1.7g を得た。
【0041】製造例4 (5Z,9E,13E)−6,10,14,18−テ
トラメチル−5,9,13,17-ノナデカテトラエン−2-オール
(VII) の合成 製造例3と同様にして化合物(V) から、標題化合物を得
た。
【0042】次に本発明化合物の代表例として、6,10,1
4,18−テトラメチル−5,9,13,17-ノナデカテトラエン−
2-オン[(5E,9E,13E)異性体(IV)と(5Z,9E,13E)異性体
(V)の 3:2の混合物]の急性毒性試験結果を示す。
【0043】
【急性毒性試験】
(方法)7〜8 週齢のSD系ラットおよび ICR系マウスを
それぞれ雌雄各 5匹用い、経口・筋肉内・皮下・腹腔内
投与による単回投与毒性試験を実施した(媒体;5%アラ
ビアゴム)。
【0044】(結果)LD50 値(mg/Kg) を下表にまとめ
る。
【0045】
【表1】
【0046】表1から明らかなように、本発明化合物の
LD50 値は経口投与での臨床用量の約 1万倍以上であ
り、安全性が極めて高いことが明らかである。
【0047】投与剤型としては、例えば散剤、細粒剤、
顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤などの経口製剤お
よび注射製剤が挙げられる。製剤化の際には、通常の製
剤担体を用いて常法により製造することができる。
【0048】すなわち経口製剤を製造するには、化合物
(I) と賦形剤、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑
沢剤、着色剤、矯味矯臭剤などを加えた後、常法により
散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤等
とする。
【0049】賦形剤としては、例えば乳糖、コーンスタ
ーチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結
晶セルロース、二酸化ケイ素などが、結合剤としては、
例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メ
チルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、ト
ラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピル
メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポ
リビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリ
オキシエチレン・ブロックポリマー、メグルミンなど
が、崩壊剤としては、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、
結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウ
ム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カ
ルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤と
しては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポ
リエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が、着色
剤としては医薬品に添加することが許可されているもの
が、矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香
散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が用いられる。これらの
錠剤・顆粒剤には糖衣、その他必要により適宜コーティ
ングすることはもちろん差支えない。
【0050】また注射用製剤を製造する際には、化合物
(I) にpH調整剤、溶解剤、等張化剤などと、必要に応じ
て溶解補助剤、安定化剤などを加えて、常法により製剤
化する。
【0051】外用剤を製造する際の方法は限定されず、
常法により製造することができる。すなわち製剤化にあ
たり使用する基剤原料としては、医薬品、医薬部外品、
化粧品等に通常使用される各種原料を用いることが可能
である。
【0052】使用する基剤原料として具体的には、例え
ば動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス類、高級ア
ルコール類、脂肪酸類、シリコン油、界面活性剤、リン
脂質類、アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分
子類、粘土鉱物類、精製水などの原料が挙げられ、さら
に必要に応じ、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、防腐
防黴剤、着色料、香料などを添加することができるが、
本発明にかかる外用剤の基剤原料はこれらに限定されな
い。また必要に応じて他の分化誘導作用を有する成分、
血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン
類、アミノ酸、保湿剤、角質溶解剤等の成分を配合する
こともできる。なお上記基剤原料の添加量は、通常外用
剤の製造にあたり設定される濃度になる量である。
【0053】本発明における化合物(I) の臨床投与量
は、症状、重症度、年齢、合併症などによって異なり限
定されず、また化合物の種類・投与経路などによっても
異なるが、通常成人1日あたり 0.1mg〜10g であり、好
ましくは 1mg〜5gであり、さらに好ましくは 10mg 〜1g
であり、これを経口、静脈内または経皮投与する。
【0054】次に本発明を具体的に説明するため以下に
実施例を掲げるが、本発明がこれらのみに限定されない
ことは言うまでもない。
【0055】
【実施例】実施例1 顆粒剤
【0056】
【表2】
【0057】実施例2 錠剤
【0058】
【表3】
【0059】実施例3 注射剤
【0060】
【表4】
【0061】実施例4 外用剤
【0062】
【表5】
【0063】
【発明の効果】次に本発明化合物の分化誘導剤としての
有用性を示すため、各種ヒト白血病細胞培養系に対する
効果実験例を挙げる。なお実験に用いた細胞系は以下の
通りである。 (1) ML1 ;ヒト骨髄芽球様白血病細胞 (2) U937;ヒト単芽球様白血病細胞 (3) HL60;ヒト前骨髄性白血病細胞
【0064】(方法)本発明にかかる分化誘導作用の評
価は、文献に記載されている方法[中谷ら、キャンサー
・リサーチ(Cancer Res.),48,4201-4205,1988.] にした
がって行い、下記分化誘導マーカーについて測定・評価
した。 (1) 正常細胞への分化誘導マーカーであるニトロブルー
テトラゾリウム(以下、 NBT)還元能は、細胞を NBT試
薬と37℃で40分間インキュベートし、還元されて生じた
フォルマザンを顕微鏡で観察して評価した。 (2) 顆粒球への分化誘導マーカーであるAS-D−クロロア
セテートエステラーゼ活性と、単球への分化誘導マーカ
ーであるα−ナフチルアセテートエステラーゼ活性を、
シグマ社製のエステラーゼ活性測定キットを用いて評価
した。 (3) 正常細胞への分化を示すマーカーである貪食能は、
細胞とポリスチレンラテックスビーズを37℃で4時間イ
ンキュベートし、10個以上のビーズを取り込んだ細胞数
をカウントした。細胞の viability(生細胞の割合)は
トリパンブルー試薬で染色されない細胞を生細胞とし、
全体の細胞数に対する百分率を算出した。
【0065】(結果)実験1 ヒト骨髄芽球様白血病細胞 ML1に対する分化誘
導作用 ヒト骨髄芽球様白血病細胞 ML1に対する、 GGAの濃度と
分化誘導作用の関係を図1に示す。
【0066】
【図1】
【0067】図1から明らかなように、 GGAの濃度の増
加と共に分化誘導能は増加し、20μM の GGA処理では約
80%の細胞に分化が認められた。また細胞の増殖阻害も
GGA濃度の増加と共に認められ、20μM の GGAで約 56%
の増殖が阻害された。一方 NBT還元能を有する細胞は5
μM の GGA処理で約 30%の細胞に認められた。また GGA
の細胞毒性は低く、20μM の GGA処理でもトリパンブル
ーで染色される死細胞は5%と非常に少なかった。従っ
て、 GGAはμM オーダーの低濃度で ML1細胞の分化を誘
導することが明らかである。
【0068】実験2 ML1細胞に対する化合物(I) の分
化誘導能 ML1細胞に対する、化合物(I) の代表例の分化誘導能を
表6に示した。
【0069】
【表6】
【0070】ここで各化合物の試験濃度はすべて20μM
に設定した。表6から明らかなように、本発明化合物
(I) は強力な分化誘導能を有している。一方、化合物
(I) に類似したポリプレノイド骨格を有するゲラニオー
ル、ファルネソール等のテルペノール、ゲラン酸等のテ
ルペンカルボン酸、さらに GGAと同じく抗潰瘍作用を有
するポリプレノイド誘導体であるゲファルナートには、
統計学的に有意な分化誘導能は認められなかった。 ML1
の細胞増殖に対しては、評価したすべて化合物が20μM
の濃度で阻害を示しが、中でも GGAが最も強い増殖阻害
活性を示した。また前述の、マウス骨髄球性白血病の培
養細胞系において分化誘導作用が認められたゲラニル・
ファルネソール(3,7,11,15,19−ペンタメチル-2、6、10、
14、18-エイコサペンタエン−1-オール)は、本実験に用
いたヒト ML1細胞系においては分化誘導作用は認められ
なかった。これは細胞の種差に起因する薬剤感受性の差
に基づくものと考えられ、ヒトでの有効性を期待するこ
とは難しいと言える。
【0071】実験3 発生段階の異なるヒトの他の白血
病細胞に対する GGAの影響 次に発生段階の異なるヒトの他の白血病細胞に対する G
GAの影響を示す。図2は、単芽球様U937細胞に対する G
GAの濃度と分化誘導作用との関係を示すグラフである。
【0072】
【図2】
【0073】図2から明らかなように、 GGA濃度の増加
と共に分化した細胞が増加し、細胞増殖は抑制された。
生細胞の割合も30μM の GGA処理まで 95%以上であり、
細胞毒性は認められなかった。
【0074】図3には、前骨髄性白血病細胞HL60に対す
る GGAの濃度と分化誘導作用との関係を示す。
【0075】
【図3】
【0076】図3から明らかなように、 GGAの濃度の増
加と共に分化した細胞が増加し、細胞増殖は抑制され
た。生細胞の割合は5μM の GGA処理で減少し始め、35
μM 以上の濃度では急激に減少した。
【0077】実験4 各種分化誘導マーカーおよび貪食
能に与える GGAの影響 NBT還元能と細胞増殖抑制以外の、細胞が分化誘導され
た時に現れる性質を表7に示す。
【0078】
【表7】
【0079】ML1細胞では、白血病細胞が顆粒球に分化
した時に現れるAS-D−クロロアセテートエステラーゼ活
性が、 7.7% から 48.4%に増加した。これに対し単球
(マクロファージ)に分化したときに現れるα−ナフチ
ルアセテートエステラーゼ活性は、 5.4% から 7.8% へ
と、ほとんど変化しなかった。したがって ML1細胞は G
GA処理により顆粒球細胞へ分化したことが明らかであ
る。また貪食能も GGA処理により 0% から 61.9%へと増
加した。
【0080】一方U937細胞において、AS-D−クロロアセ
テートエステラーゼ活性は2.4%から3.8% へとほとんど
変化しなかったが、α−ナフチルアセテートエステラー
ゼ活性は 6.6% から 100% へと増加した。また貪食能も
7.3% から 49.6%へと増加した。したがって、U937細胞
は GGA処理により単球(マクロファージ)様細胞へ分化
したことが明らかである。
【0081】またHL60細胞において、 GGA処理によりAS
-D−クロロアセテートエステラーゼ活性は 3.1% から
8.1% へとほとんど変化せず、α−ナフチルアセテート
エステラーゼ活性が 5.1% から 32.3%へと顕著に増加し
た。また貪食能も 7.5% から 76.4%へと増加した。した
がってHL60細胞は、 GGA処理により単球(マクロファー
ジ)様細胞へ分化したことが明らかである。
【0082】さらにRAおよび活性V.D3の至適濃度におけ
るHL60細胞の貪食能の改善率は、文献的には、それぞれ
42.7%、57.0% であり GGAの 76.4%には及ばない。これ
は GGAがRAおよび活性V.D3に優る強力な分化誘導能を有
していることを示している。
【0083】実験5 他の制癌剤との併用効果 癌の治療には、数種類の薬剤を併用して投与する併用療
法が効果的である。白血病細胞に対する既知の分化誘導
剤と、 GGAとの併用効果を検討した結果を図4に示す。
なおこの実験においては、併用に基づく相乗効果を明確
に観察できるように、 GGAおよび各種制癌剤の試験濃度
はそれぞれの至適濃度よりも低く設定した。
【0084】
【図4】
【0085】図4から、 GGAは RA 、活性V.D3、rTNF−
α、ブファリン、エトポシドあるいはインターフェロン
γ(INF-γ)と併用すると、著しい分化誘導相乗効果を
示すことが明らかである。この結果は、 GGAを現在臨床
的に白血病治療に使用され始めている RA と併用する
と、治療(分化誘導)効果をさらに高められることを示
しており、同等の制癌効果を保ちながら、重篤な副作用
の多い RA の投与量を削減することが可能となり、癌患
者のクオリティ・オブ・ライフの向上を可能とするもの
であると言える。
【0086】上記実験例の結果から、 GGAは10-6M 台の
濃度で発生段階の異なる各種ヒト白血病細胞の分化を誘
導することが明らかである。この結果は、これまでに報
告されている分化誘導の至適濃度( RA ;10-6M、活性
V.D3;10-8M)と比較して同等であり、 GGAは強力な分
化誘導剤の部類に入ると言える。さらに GGAはこれまで
長年にわたり胃炎、胃潰瘍の治療薬として用いられてき
たが、副作用はほとんど報告されておらず、極めて高い
安全性が確認されている。これは上記効果例からも明ら
かなように、細胞毒性が非常に低いためである。
【0087】さらに本発明者らは、 GGAが造血器腫瘍の
みならず固形腫瘍にも有効であることを確認するため
に、化合物(I) の代表例として、 GGAのマウス由来 B16
メラノーマ細胞に対する分化誘導作用について検討し
た。
【0088】実験6 マウス由来 B16メラノーマ細胞に
対する GGAの分化誘導作用 マウス由来 B16メラノーマ細胞に対する GGAの分化誘導
作用を、メラニン生成能を指標として評価した。すなわ
ちB16メラノーマ細胞を継代培養後、 2×104 セル/ml になる
よう 10%FCS MEM*に加え培養用シャーレ(φ=10cm)に
て24時間培養した。培養後、各試料が毒性を示さなかっ
た濃度(7.5 ×10-6 M)に調製した 10%FCS MEM で培地
交換を行った後、同条件で 5日間培養した。培養後、等
張緩衝塩類溶液[日水製薬製、商品名;Dulbecco's PBS
(-) ]で洗浄し、0.25% トリプシン/エチレンジアミン
テトラ酢酸(EDTA)溶液を用いて細胞を集め、さらに上記
等張緩衝塩類溶液で再び洗浄した後、遠心分離(100G)し
て細胞を得た。( 10%FCS MEM*;標準培地に 10%ウシ胎
仔血清、ペニシリン、ストレプトマイシンおよび炭酸水
素ナトリウムを添加した培地)
【0089】得られた細胞に1mM-フェニルメチルスルホ
ニルフルオリド(PMSF) 1mlを添加したリン酸緩衝液を加
えた後、及川らの方法(エール・ジャーナル・オブ・バ
イオロジカル・メディスン[Yale J.Biol.Med.], 46、500
-507,1973.)にしたがって総メラニン量を吸光度(λ=
400nm )で測定し評価した。
【0090】表8に、マウス由来 B16メラノーマ細胞に
対する GGAの分化誘導作用を示す。
【0091】
【表8】
【0092】表8から明らかなように、 9×10-6M の G
GAにて5日間培養した処理した B16メラノーマ細胞の蛋
白量あたりの総メラニン量(ユーメラニンおよびフェオ
メラニン)は、コントロール培養細胞に比べ約 80%低下
しており、特にユーメラニン量は約 24%に低下した。こ
の時の細胞内チロシナーゼ量は、 GGA処理により明らか
に減少したことが SDS電気泳動法により確認された。ま
た5日間培養後の細胞数は、コントロールと比較して G
GA処理により約 89%に減少し、分化誘導に伴う生育阻害
を受けた。 B16メラノーマ細胞に対する GGAの IC50(細
胞の増殖を 50%阻害する濃度)は 1.1×10-4M であり、
メラニン生成を阻害する機構が細胞毒性によるものでは
ないことは明確である。
【0093】上記の結果は GGAの固形腫瘍に対する有効
性をも示すものであり、 GGAの増血器腫瘍の分化誘導の
みに止まらない幅広い適応性を示唆するものである。
【0094】
【図面の簡単な説明】
【図1】 ヒト骨髄芽球様白血病細胞 ML1に対する、 G
GAの濃度と分化誘導作用の関係を示した図である。(各
群とも n=3、平均±標準誤差で示す)
【図2】 単芽球様U937細胞に対する GGAの濃度と分化
誘導作用との関係を示した図である。(各群とも n=3、
平均±標準誤差で示す)
【図3】 前骨髄性白血病細胞HL60に対する GGAの濃度
と分化誘導作用との関係を示した図である。(各群とも
n=3、平均±標準誤差で示す)
【図4】 白血病細胞に対する既知の分化誘導剤と、 G
GAとの併用効果を示した図である。(各群とも n=3、平
均±標準誤差で示す)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田邊 義雄 埼玉県本庄市東台 2−3−9 メゾン小 暮201 (72)発明者 大沢 重光 埼玉県本庄市見福 1−10−12

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式で表される化合物(I) を有効
    成分とする細胞分化誘導剤。 【化1】 [式中Rは低級アシルアルキル基または低級ヒドロキシ
    アルキル基を、n は2〜6の整数を意味する。]
  2. 【請求項2】 造血器腫瘍治療剤である請求項1記載の
    細胞分化誘導剤。
  3. 【請求項3】 急性白血病、慢性白血病、悪性リンパ
    腫、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症からなる群よ
    り選ばれた疾患の治療・改善剤である請求項2記載の細
    胞分化誘導剤。
  4. 【請求項4】 固形腫瘍治療剤である請求項1記載の細
    胞分化誘導剤。
  5. 【請求項5】 脳腫瘍、頭頸部癌、乳癌、肺癌、食道
    癌、胃癌、大腸癌、肝癌、胆嚢・胆管癌、膵癌、膵島細
    胞癌、腎細胞癌、副腎皮質癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸
    腫瘍、卵巣癌、子宮癌、絨毛癌、甲状腺癌、悪性カルチ
    ノイド腫瘍、皮膚癌、悪性黒色腫、骨肉腫、軟部組織肉
    腫、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、胎児性横紋筋肉
    腫、網膜芽細胞種からなる群より選ばれた疾患の治療・
    改善剤である請求項4記載の細胞分化誘導剤。
  6. 【請求項6】 化合物(I) を有効成分とする制癌剤の効
    果を増強する細胞分化誘導剤。
  7. 【請求項7】 化合物(I) を有効成分とする細胞分化誘
    導作用が有効な疾患の治療・改善剤。
  8. 【請求項8】 化合物(I) が6,10,14,18−テトラメチル
    −5,9,13,17-ノナデカテトラエン−2-オン(II)である請
    求項1ないし7のいずれか1項に記載の細胞分化誘導
    剤。 【化2】
  9. 【請求項9】 化合物(I) が6,10,14,18−テトラメチル
    −5,9,13,17-ノナデカテトラエン−2-オール(III) であ
    る請求項1ないし7のいずれか1項に記載の細胞分化誘
    導剤。 【化3】
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