JPH06190588A - 盛金用Ni基合金 - Google Patents
盛金用Ni基合金Info
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- JPH06190588A JPH06190588A JP4357216A JP35721692A JPH06190588A JP H06190588 A JPH06190588 A JP H06190588A JP 4357216 A JP4357216 A JP 4357216A JP 35721692 A JP35721692 A JP 35721692A JP H06190588 A JPH06190588 A JP H06190588A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 冷却速度が極めて早くなるレーザやプラズマ
などの高エネルギー密度熱源を利用する盛金において
も、耐摩耗性を確保する硬質粒子(初晶炭化物粒子を含
む)を晶出させ、かつ相手材と接触する初晶炭化物粒子
の表面にもモリブデン酸化物を生成させることのできる
盛金用Ni基合金を提供することである。 【構成】 下記組成(重量%): Mo: 12%を越え〜20% Si: 0.5〜2.0%未満 C: 2.6〜4.0% Cr: 25〜40% 残部: Niおよび不可避的不純物 からなる耐摩耗性・潤滑性に優れている高密度エネルギ
ー熱源盛金用Ni基合金である。
などの高エネルギー密度熱源を利用する盛金において
も、耐摩耗性を確保する硬質粒子(初晶炭化物粒子を含
む)を晶出させ、かつ相手材と接触する初晶炭化物粒子
の表面にもモリブデン酸化物を生成させることのできる
盛金用Ni基合金を提供することである。 【構成】 下記組成(重量%): Mo: 12%を越え〜20% Si: 0.5〜2.0%未満 C: 2.6〜4.0% Cr: 25〜40% 残部: Niおよび不可避的不純物 からなる耐摩耗性・潤滑性に優れている高密度エネルギ
ー熱源盛金用Ni基合金である。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、盛金用合金(肉盛合
金)、より詳しくは、高密度エネルギー熱源によって肉
盛される盛金用Ni基合金に関する。盛金(肉盛)と
は、金属機械部品などの表面に耐摩耗性、耐食性などの
良い金属を溶着することであり、各種分野にて耐摩耗性
や耐食性を要求される箇所に盛金が施されている。
金)、より詳しくは、高密度エネルギー熱源によって肉
盛される盛金用Ni基合金に関する。盛金(肉盛)と
は、金属機械部品などの表面に耐摩耗性、耐食性などの
良い金属を溶着することであり、各種分野にて耐摩耗性
や耐食性を要求される箇所に盛金が施されている。
【0002】近年、エンジンの高出力化、高性能化に伴
って、エンジンバルブのフェース部に耐摩耗性合金を盛
金することがますます増えている。その盛金方法として
は、、従来酸素−アセチレンガス法あるいはアーク法が
用いられてきた。しかし近年、それに代わる高速盛金法
として、レーザやプラズマなどの高密度エネルギー熱源
を利用する方法が開発され、実用化されつつある。この
盛金法によって設備の自動化と相俟って、盛金速度を約
2倍程度速くし、不良品の発生をかなり低減することが
可能である。このために、今後はこれら高密度エネルギ
ー熱源を利用した盛金(肉盛)法がますます広く採用さ
れると考えられる。
って、エンジンバルブのフェース部に耐摩耗性合金を盛
金することがますます増えている。その盛金方法として
は、、従来酸素−アセチレンガス法あるいはアーク法が
用いられてきた。しかし近年、それに代わる高速盛金法
として、レーザやプラズマなどの高密度エネルギー熱源
を利用する方法が開発され、実用化されつつある。この
盛金法によって設備の自動化と相俟って、盛金速度を約
2倍程度速くし、不良品の発生をかなり低減することが
可能である。このために、今後はこれら高密度エネルギ
ー熱源を利用した盛金(肉盛)法がますます広く採用さ
れると考えられる。
【0003】
【従来の技術】エンジンバルブのフェース部の盛金材料
として、ニッケル(Ni)基合金が提案されている(例
えば、特開昭55−100949号公報、特開昭59−
43836号公報参照)。さらに、溶接ないし盛金(サ
ーフェシング)用の耐摩耗性・耐食性Ni基硬質合金も
提案されている(例えば、特開昭55−122848号
公報参照)。これらのニッケル基合金は、盛金組織中に
存在する初晶炭化物により耐摩耗性を確保しており、酸
素−アセチレンガス法あるいはアーク法などの比較的冷
却速度の遅い加熱冷却法によってバルブフェース部に盛
金されている。
として、ニッケル(Ni)基合金が提案されている(例
えば、特開昭55−100949号公報、特開昭59−
43836号公報参照)。さらに、溶接ないし盛金(サ
ーフェシング)用の耐摩耗性・耐食性Ni基硬質合金も
提案されている(例えば、特開昭55−122848号
公報参照)。これらのニッケル基合金は、盛金組織中に
存在する初晶炭化物により耐摩耗性を確保しており、酸
素−アセチレンガス法あるいはアーク法などの比較的冷
却速度の遅い加熱冷却法によってバルブフェース部に盛
金されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そして、エンジンの高
出力化、低燃費化、信頼性の向上などの高性能化要求に
伴い、エンジンバルブの使用環境も従来よりも一層厳し
さを増し、従来用いてきたニッケル基合金の盛金ではフ
ェース部の耐摩耗性が不足することがある。特に、高排
気温化に伴う高温での耐摩耗性が重要になりつつある。
出力化、低燃費化、信頼性の向上などの高性能化要求に
伴い、エンジンバルブの使用環境も従来よりも一層厳し
さを増し、従来用いてきたニッケル基合金の盛金ではフ
ェース部の耐摩耗性が不足することがある。特に、高排
気温化に伴う高温での耐摩耗性が重要になりつつある。
【0005】一方、上述の高密度エネルギー熱源を用い
た高速盛金法では、冷却速度が速いため、耐摩耗性を確
保するための初晶炭化物が晶出しにくく、さらに、微細
になる傾向があり、初晶炭化物以外の硬質粒子が必要に
なる。例えば、特開昭55−100949号公報の場合
では、タングステン(W)が5〜20%含まれており、
タングステンカーバイトによる良好な耐摩耗性が期待で
きるが、このタングステンカーバイトは初晶炭化物(Cr
7C3)に比べて硬く、相手攻撃性が増加してしまう。
た高速盛金法では、冷却速度が速いため、耐摩耗性を確
保するための初晶炭化物が晶出しにくく、さらに、微細
になる傾向があり、初晶炭化物以外の硬質粒子が必要に
なる。例えば、特開昭55−100949号公報の場合
では、タングステン(W)が5〜20%含まれており、
タングステンカーバイトによる良好な耐摩耗性が期待で
きるが、このタングステンカーバイトは初晶炭化物(Cr
7C3)に比べて硬く、相手攻撃性が増加してしまう。
【0006】特開昭55−122848号公報では、炭
素(C)が0.55〜2.5%と少ないために、初晶炭化物
自体も少なく、高密度エネルギー熱源利用での急冷では
より少なくなり、十分な耐摩耗性が得られない。さら
に、特開昭59−43836号公報にて提案されたニッ
ケル基合金では、炭化物以外の硬質粒子の晶出が非常に
少なく、冷却速度が速くなると、初晶炭化物も少なくな
る。高密度エネルギー熱源を利用した場合、このままで
は盛金層の耐摩耗性が低下することになる。
素(C)が0.55〜2.5%と少ないために、初晶炭化物
自体も少なく、高密度エネルギー熱源利用での急冷では
より少なくなり、十分な耐摩耗性が得られない。さら
に、特開昭59−43836号公報にて提案されたニッ
ケル基合金では、炭化物以外の硬質粒子の晶出が非常に
少なく、冷却速度が速くなると、初晶炭化物も少なくな
る。高密度エネルギー熱源を利用した場合、このままで
は盛金層の耐摩耗性が低下することになる。
【0007】そこで、自己潤滑性が高く、耐摩耗性を向
上させる硬質粒子となるモリブデンシリサイドを析出さ
せるようにしたニッケル基合金を、本出願人は平成4年
11月18日に「エンジンバルブ盛金用Ni基合金」と
して特許出願した。高温での耐摩耗性を向上させるため
には、硬度を高める他に潤滑性を付与しかつ高めること
が考えられる。従来より潤滑性を向上させる元素とし
て、モリブデンが知られており、生成したモリブデン酸
化物による潤滑性効果が大きい。従来の場合にもモリブ
デン添加がなされているが、図1のように模式的に示す
と、生成するモリブデン酸化物1は初晶炭化物2を囲む
マトリックス3の表面部分に主に存在して、相手材4と
直接接触しないことが多く、十分に潤滑効果を発揮して
いない。
上させる硬質粒子となるモリブデンシリサイドを析出さ
せるようにしたニッケル基合金を、本出願人は平成4年
11月18日に「エンジンバルブ盛金用Ni基合金」と
して特許出願した。高温での耐摩耗性を向上させるため
には、硬度を高める他に潤滑性を付与しかつ高めること
が考えられる。従来より潤滑性を向上させる元素とし
て、モリブデンが知られており、生成したモリブデン酸
化物による潤滑性効果が大きい。従来の場合にもモリブ
デン添加がなされているが、図1のように模式的に示す
と、生成するモリブデン酸化物1は初晶炭化物2を囲む
マトリックス3の表面部分に主に存在して、相手材4と
直接接触しないことが多く、十分に潤滑効果を発揮して
いない。
【0008】本願発明の目的は、上述の問題点に鑑み、
冷却速度が極めて早くなるレーザやプラズマなどの高密
度エネルギー熱源を利用する盛金においても、耐摩耗性
を確保する硬質粒子(初晶炭化物粒子を含む)を晶出さ
せ、かつ相手材と接触する初晶炭化物粒子の表面にもモ
リブデン酸化物を生成させることのできる盛金用Ni基
合金を提供することである。
冷却速度が極めて早くなるレーザやプラズマなどの高密
度エネルギー熱源を利用する盛金においても、耐摩耗性
を確保する硬質粒子(初晶炭化物粒子を含む)を晶出さ
せ、かつ相手材と接触する初晶炭化物粒子の表面にもモ
リブデン酸化物を生成させることのできる盛金用Ni基
合金を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の目的が、下記組成
(重量%): Mo: 12%を越え〜20% Si: 0.5〜2.0%未満 C: 2.6〜4.0% Cr: 25〜40% 残部: Niおよび不可避的不純物 からなることを特徴とする耐摩耗性・潤滑性に優れてい
る高密度エネルギー熱源盛金用Ni基合金によって達成
される。
(重量%): Mo: 12%を越え〜20% Si: 0.5〜2.0%未満 C: 2.6〜4.0% Cr: 25〜40% 残部: Niおよび不可避的不純物 からなることを特徴とする耐摩耗性・潤滑性に優れてい
る高密度エネルギー熱源盛金用Ni基合金によって達成
される。
【0010】
【作用】本発明に係るニッケル基合金では、モリブデン
(Mo)量を多くして、初晶炭化物中に十分に固溶さ
せ、相手材と接触する高温条件下で固溶されているモリ
ブデンを酸化してモリブデン酸化物に変えることで、高
温での自己潤滑性を高める。これにより、高温で優れた
耐摩耗性を発揮する。
(Mo)量を多くして、初晶炭化物中に十分に固溶さ
せ、相手材と接触する高温条件下で固溶されているモリ
ブデンを酸化してモリブデン酸化物に変えることで、高
温での自己潤滑性を高める。これにより、高温で優れた
耐摩耗性を発揮する。
【0011】盛金時に冷却速度が遅い場合には、モリブ
デンは初晶炭化物中にはあまり固溶せず、共晶炭化物中
に多く固溶し、複合炭化物(Cr,Mo)7 C3 を形成
する(マトリックス中にも一部固溶し、固溶強化す
る)。しかしながら、冷却速度が速い場合には、モリブ
デンは初晶炭化物中にも一部固溶するようになる。した
がって、本発明では高密度エネルギー熱源を使用した盛
金の場合に特定される。なお、本発明に係るニッケル基
合金であっても、従来のガス盛金法やアーク法では、得
られる合金組織が粗大化することにより、相手攻撃性が
増し、かつ加工性が低下してしまう。
デンは初晶炭化物中にはあまり固溶せず、共晶炭化物中
に多く固溶し、複合炭化物(Cr,Mo)7 C3 を形成
する(マトリックス中にも一部固溶し、固溶強化す
る)。しかしながら、冷却速度が速い場合には、モリブ
デンは初晶炭化物中にも一部固溶するようになる。した
がって、本発明では高密度エネルギー熱源を使用した盛
金の場合に特定される。なお、本発明に係るニッケル基
合金であっても、従来のガス盛金法やアーク法では、得
られる合金組織が粗大化することにより、相手攻撃性が
増し、かつ加工性が低下してしまう。
【0012】本発明に係るニッケル基合金の盛金を模式
的に示すと、図2のようになり、初晶炭化物2がモリブ
デンを固溶し、それが酸化されてモリブデン酸化物5と
して初晶炭化物の表面部分に生成される。このモリブデ
ン酸化物5が相手材4と直接に接触して潤滑効果を発揮
する。本発明における組成成分の限定理由は次の通りで
ある。
的に示すと、図2のようになり、初晶炭化物2がモリブ
デンを固溶し、それが酸化されてモリブデン酸化物5と
して初晶炭化物の表面部分に生成される。このモリブデ
ン酸化物5が相手材4と直接に接触して潤滑効果を発揮
する。本発明における組成成分の限定理由は次の通りで
ある。
【0013】CrはNiを固溶強化する元素でかつ初晶
炭化物(Cr7 C3 )および共晶部で炭化物を形成して
耐摩耗性を強化する元素である。25wt%未満では初晶
炭化物生成量が少なく、盛金自体の耐摩耗性が不足し、
一方、40wt%を超えると、炭化物の生成量が多くなり
過ぎて靱性の低下が著しく、加工性が低下し、相手材を
摩耗させやすくなる。
炭化物(Cr7 C3 )および共晶部で炭化物を形成して
耐摩耗性を強化する元素である。25wt%未満では初晶
炭化物生成量が少なく、盛金自体の耐摩耗性が不足し、
一方、40wt%を超えると、炭化物の生成量が多くなり
過ぎて靱性の低下が著しく、加工性が低下し、相手材を
摩耗させやすくなる。
【0014】Moは、潤滑作用のあるモリブデン酸化物
を形成するための元素であり、高密度エネルギー熱源に
よる溶解の後の急冷凝固によって初晶炭化物中に固溶さ
れる。12wt%以下では初晶炭化物へのモリブデン固溶
量が少なくなって高温での十分な耐摩耗性が得られず、
15wt%以上が好ましく、一方、20wt%を越えると、
共晶炭化物が増加して靱性が低下し、盛金性が低下す
る。また、モリブデンの一部は珪素とでモリブデンシリ
サイドの硬質粒子を形成して耐摩耗性を高める。
を形成するための元素であり、高密度エネルギー熱源に
よる溶解の後の急冷凝固によって初晶炭化物中に固溶さ
れる。12wt%以下では初晶炭化物へのモリブデン固溶
量が少なくなって高温での十分な耐摩耗性が得られず、
15wt%以上が好ましく、一方、20wt%を越えると、
共晶炭化物が増加して靱性が低下し、盛金性が低下す
る。また、モリブデンの一部は珪素とでモリブデンシリ
サイドの硬質粒子を形成して耐摩耗性を高める。
【0015】Cは炭化物形成元素であり、所定の添加元
素を炭化物に変化させるのに十分な量としてある。2.
6wt%未満では十分な量の炭化物(初晶炭化物を含む)
を形成することができず盛金自体の耐摩耗性が不足し、
一方、4.0wt%を超えると、炭化物の生成量が多くな
り過ぎて靱性の低下が著しく、加工性が低下し、相手材
を摩耗させやすくなる。
素を炭化物に変化させるのに十分な量としてある。2.
6wt%未満では十分な量の炭化物(初晶炭化物を含む)
を形成することができず盛金自体の耐摩耗性が不足し、
一方、4.0wt%を超えると、炭化物の生成量が多くな
り過ぎて靱性の低下が著しく、加工性が低下し、相手材
を摩耗させやすくなる。
【0016】Siは珪化物(シリサイド)形成元素であ
り、0.5wt%以下では盛金時における湯流れ性が低下
し、一方、2.0wt%以上含まれると、モリブデンシリ
サイド生成量が多くなり、それにモリブデンが使用され
て初晶炭化物へのモリブデン固溶量が不足する。
り、0.5wt%以下では盛金時における湯流れ性が低下
し、一方、2.0wt%以上含まれると、モリブデンシリ
サイド生成量が多くなり、それにモリブデンが使用され
て初晶炭化物へのモリブデン固溶量が不足する。
【0017】
【実施例】以下、添付図面を参照して、本発明の実施態
様例および比較例(従来例)によって本発明を詳細に説
明する。表1に示した本発明に係る合金粉末の試料1、
2および3と、比較例の合金粉末(Mo量の少ない)の
試料4および5とを用意し、後述するようにレーザ光を
熱源として用いて、耐熱鋼(JIS・SUH1)基板上
に溶着させて盛金層を形成する。
様例および比較例(従来例)によって本発明を詳細に説
明する。表1に示した本発明に係る合金粉末の試料1、
2および3と、比較例の合金粉末(Mo量の少ない)の
試料4および5とを用意し、後述するようにレーザ光を
熱源として用いて、耐熱鋼(JIS・SUH1)基板上
に溶着させて盛金層を形成する。
【0018】
【表1】
【0019】ここでの溶着(盛金)では、耐熱鋼基体を
一定速度で移動させ、この上に試料1〜5の粉末を連続
的に供給し、この粉末にレーザを集光照射して該粉末を
溶融し、該溶融物が照射位置から外れて該基体への熱移
動によって急速冷却凝固され、ニッケル基合金の盛金層
(溶着層)が形成される(例えば、特開昭63−157
826号公報参照)。レーザ盛金条件としては、レーザ
出力を2.4kWとし、処理速度(盛金層幅8mmでの盛金
層形成速度)を8mm/秒とする。
一定速度で移動させ、この上に試料1〜5の粉末を連続
的に供給し、この粉末にレーザを集光照射して該粉末を
溶融し、該溶融物が照射位置から外れて該基体への熱移
動によって急速冷却凝固され、ニッケル基合金の盛金層
(溶着層)が形成される(例えば、特開昭63−157
826号公報参照)。レーザ盛金条件としては、レーザ
出力を2.4kWとし、処理速度(盛金層幅8mmでの盛金
層形成速度)を8mm/秒とする。
【0020】試料1および3の盛金層の表面研磨金属組
織の顕微鏡写真(×400)を図3および図4のそれぞ
れに示す。これらの金属組織写真において、本発明のニ
ッケル基合金の基本構成は初晶炭化物と、共晶炭化物
と、マトリックスとからなっている(図3参照)。そし
て、モリブデン量が多くなると、図4のように、共晶炭
化物が増加する。
織の顕微鏡写真(×400)を図3および図4のそれぞ
れに示す。これらの金属組織写真において、本発明のニ
ッケル基合金の基本構成は初晶炭化物と、共晶炭化物
と、マトリックスとからなっている(図3参照)。そし
て、モリブデン量が多くなると、図4のように、共晶炭
化物が増加する。
【0021】得られたニッケル基合金盛金層についての
摩耗特性を大越式の摩耗試験によって調べ、その試験結
果を図5に示す。この試験では、相手材にバルブシート
用鉄基合金(Fe−0.9C−9Mo−2.5Co−1
6Pb)の円板相手材を回転させながら耐熱鋼基体上の
盛金層に押しつける。試験条件としては、すべり速度
0.25m/秒、押しつけ荷重6.3kg、すべり距離
400mであり、摩耗体積(減少体積)を測定する。
摩耗特性を大越式の摩耗試験によって調べ、その試験結
果を図5に示す。この試験では、相手材にバルブシート
用鉄基合金(Fe−0.9C−9Mo−2.5Co−1
6Pb)の円板相手材を回転させながら耐熱鋼基体上の
盛金層に押しつける。試験条件としては、すべり速度
0.25m/秒、押しつけ荷重6.3kg、すべり距離
400mであり、摩耗体積(減少体積)を測定する。
【0022】図5より明らかなように、モリブデン(M
o)量が比較例4および5よりも多い本発明に係るニッ
ケル基合金盛金層は比較例よりも摩耗量が少なく、耐摩
耗性が向上している。これは、モリブデン酸化物の潤滑
作用に起因している。初晶炭化物とモリブデンと関連を
次のようにして調べた。上述したように合金試料2(本
発明)を肉盛したニッケル基合金肉盛層における初晶炭
化物をEPMA分析して、その分析結果を図6に示す。
図6から分かるように、クロム(Cr)の多い部分が初
晶炭化物であり、このところでモリブデン(Mo)も多
くなり、モリブデンが固溶されていることを示してい
る。この肉盛層を空気中で加熱処理(エンジンバルブ使
用温度に相当する350℃にて8時間)してから、再
度、初晶炭化物をEPMA分析して、モリブデンおよび
酸素(O)の分析結果を図7に示す。モリブデンの多く
存在するところで酸素量も増加しており、モリブデン酸
化物が生成されていることが分かる。このモリブデン酸
化物は潤滑効果が高く、高温での耐摩耗性が向上するこ
とになる。
o)量が比較例4および5よりも多い本発明に係るニッ
ケル基合金盛金層は比較例よりも摩耗量が少なく、耐摩
耗性が向上している。これは、モリブデン酸化物の潤滑
作用に起因している。初晶炭化物とモリブデンと関連を
次のようにして調べた。上述したように合金試料2(本
発明)を肉盛したニッケル基合金肉盛層における初晶炭
化物をEPMA分析して、その分析結果を図6に示す。
図6から分かるように、クロム(Cr)の多い部分が初
晶炭化物であり、このところでモリブデン(Mo)も多
くなり、モリブデンが固溶されていることを示してい
る。この肉盛層を空気中で加熱処理(エンジンバルブ使
用温度に相当する350℃にて8時間)してから、再
度、初晶炭化物をEPMA分析して、モリブデンおよび
酸素(O)の分析結果を図7に示す。モリブデンの多く
存在するところで酸素量も増加しており、モリブデン酸
化物が生成されていることが分かる。このモリブデン酸
化物は潤滑効果が高く、高温での耐摩耗性が向上するこ
とになる。
【0023】さらに、モリブデン量とニッケル基合金の
硬度および衝撃値との関係は、本発明者の実験結果を整
理して、図8に示すようになることが分かった。図8か
ら分かるように、モリブデン量が増加すると、モリブデ
ンシリサイドも増加して硬度が高くなり、一方、衝撃値
は低下する(すなわち、靱性が低下する)。20%を越
えると盛金としては良好な状態が得られない。なお、こ
の場合、ニッケル基合金の成分は1%Si、2.85%
C、30%Cr、Mo量を変化させ、残部Niであり、
衝撃値はJIS規格に準じたVノッチ試験片でシャルピ
ー衝撃試験にて求めた。
硬度および衝撃値との関係は、本発明者の実験結果を整
理して、図8に示すようになることが分かった。図8か
ら分かるように、モリブデン量が増加すると、モリブデ
ンシリサイドも増加して硬度が高くなり、一方、衝撃値
は低下する(すなわち、靱性が低下する)。20%を越
えると盛金としては良好な状態が得られない。なお、こ
の場合、ニッケル基合金の成分は1%Si、2.85%
C、30%Cr、Mo量を変化させ、残部Niであり、
衝撃値はJIS規格に準じたVノッチ試験片でシャルピ
ー衝撃試験にて求めた。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る急速
加熱冷却となる高密度エネルギー熱源によるニッケル
(Ni)基合金盛金層は、モリブデンを初晶炭化物中に
固溶させ、それを酸化したモリブデン酸化物を相手材と
の接触領域に存在せさることができ、耐摩耗性が向上
し、相手材への攻撃性が抑制される。そして、本発明の
ニッケル基合金を任意に金属基体上に盛金(溶着)形成
できるので、各種の機械部品(エンジンのバルブシート
を含め)での耐摩耗性が必要な部位のみに形成して特性
向上を図ることができる。
加熱冷却となる高密度エネルギー熱源によるニッケル
(Ni)基合金盛金層は、モリブデンを初晶炭化物中に
固溶させ、それを酸化したモリブデン酸化物を相手材と
の接触領域に存在せさることができ、耐摩耗性が向上
し、相手材への攻撃性が抑制される。そして、本発明の
ニッケル基合金を任意に金属基体上に盛金(溶着)形成
できるので、各種の機械部品(エンジンのバルブシート
を含め)での耐摩耗性が必要な部位のみに形成して特性
向上を図ることができる。
【図1】従来例のニッケル基合金盛金層と相手材との接
触を説明する模式図である。
触を説明する模式図である。
【図2】本発明に係るニッケル基合金盛金層と相手材と
の接触を説明する模式図である。
の接触を説明する模式図である。
【図3】本発明にかかる試料1(Mo:12.1%)の
ニッケル基合金肉盛層の金属組織写真(×400)であ
る。
ニッケル基合金肉盛層の金属組織写真(×400)であ
る。
【図4】本発明にかかる試料3(Mo:19.6%)の
ニッケル基合金肉盛層の金属組織写真(×400)であ
る。
ニッケル基合金肉盛層の金属組織写真(×400)であ
る。
【図5】耐熱鋼基板上に形成したニッケル基合金肉盛層
の大越式摩耗試験の結果(摩耗量)を示すグラフであ
る。
の大越式摩耗試験の結果(摩耗量)を示すグラフであ
る。
【図6】本発明にかかる試料2(Mo:15.0%)の
ニッケル基合金肉盛層をEPMA分析した結果のグラフ
である。
ニッケル基合金肉盛層をEPMA分析した結果のグラフ
である。
【図7】本発明にかかる試料2(Mo:15.0%)の
ニッケル基合金肉盛層を酸化熱処理した後でEPMA分
析した結果のグラフである。
ニッケル基合金肉盛層を酸化熱処理した後でEPMA分
析した結果のグラフである。
【図8】モリブデン量とニッケル基合金肉盛層の硬度お
よび衝撃値との関係を示すグラフである。
よび衝撃値との関係を示すグラフである。
1…モリブデン酸化物 2…初晶炭化物 3…マトリックス 4…相手材 5…モリブデン酸化物
フロントページの続き (72)発明者 中小原 武 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 森 和彦 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内
Claims (1)
- 【請求項1】 下記組成(重量%): Mo: 12%を越え〜20% Si: 0.5〜2.0%未満 C: 2.6〜4.0% Cr: 25〜40% 残部: Niおよび不可避的不純物 からなることを特徴とする耐摩耗性・潤滑性に優れてい
る高密度エネルギー熱源盛金用Ni基合金。
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---|---|---|---|
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Applications Claiming Priority (1)
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9340856B2 (en) | 2011-11-28 | 2016-05-17 | Fukuda Metal Foil & Powder Co., Ltd. | Ni—Fe—Cr alloy and engine valve welded with the same alloy |
JP2018149545A (ja) * | 2017-03-09 | 2018-09-27 | 株式会社三井E&Sホールディングス | 肉盛溶接用ニッケル系合金 |
JP2020089921A (ja) * | 2020-02-28 | 2020-06-11 | 株式会社三井E&Sマシナリー | 肉盛溶接用ニッケル系合金、及び、排気弁棒の肉盛溶接方法 |
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CN114178741A (zh) * | 2022-01-04 | 2022-03-15 | 郑州大学 | 一种700℃超超临界火电构件用gh4033高温合金冷轧板焊接用药芯焊丝 |
-
1992
- 1992-12-24 JP JP35721692A patent/JP3196389B2/ja not_active Expired - Fee Related
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