JP3855257B2 - 肉盛用Cr−Ni−Nb−Fe基合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れ母材の一部に肉盛される肉盛用Cr−Ni−Nb−Fe基合金粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
部品や部材(母材)はその使用環境に応じた性質の金属や合金から成る。高温環境で使用される母材は耐熱性に優れた材料から成り、相手部材と繰り返し接触する環境で使用される母材は耐摩耗性に優れた材料から成る。
【0003】
例えば、自動車のエンジンにおいて使用される排気バルブは高温になり、バルブシートに押圧されて摩耗し易く、ガソリン中の鉛や硫黄により腐食、酸化され易い。これを考慮して、耐熱性、耐摩耗性及び耐食性等に優れた材料(例えばオーステナイト系耐熱鋼)で排気バルブを形成することが多い。しかし、これら全ての要求を単一の耐熱鋼で充足することは困難である。また、排気バルブ全体が上記雰囲気に曝されるのではなく、曝されるのはその一部である。こうした事情から、排気バルブの該一部に、より耐熱性等に優れた他の合金を肉盛することが多い。
【0004】
排気バルブ等の部品、部材において耐熱性等を向上させるためにこれまでに種々の肉盛用合金が採用されており、その一種にCr−Ni−Nb−Fe基合金がある。この合金は基本的にCr、Ni、Nb及びFeの配合量がこの順序に多く配合され、耐熱性及び耐摩耗性等がある程度充足する特徴がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記Cr−Ni−Nb−Fe基合金を排気バルブのバルブ面に肉盛りした場合、使用期間中に肉盛部に割れが生ずることがあった。割れが発生すると、その大きさや本数によっては肉盛部が部分的に欠落することになりかねない。また、バルブ面がバルブシートに繰り返し接触するにつれて摩耗し、シール性が損なわれることがあった。シール性が損なわれると排気バルブの本来の機能が低下する。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れたCr−Ni−Nb−Fe基合金粉末、より詳しくは肉盛用合金に割れが生じ難く耐熱衝撃性に優れ、しかも硬度の変化が小さく(耐摩耗性の低下が少なく)熱安定性に優れたCr−Ni−Nb−Fe基合金粉末を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願の発明者は上記肉盛部の割れ及び摩耗の原因を検討した。その結果、割れは主に加熱時における肉盛用溶合金の膨張量及び収縮量と母材のそれとの差に起因し、摩耗は主に肉盛時及び使用時に加わる熱による合金の材質が変化(特にオーステナイト相の生成)に起因することが判った。そこで、Cr−Ni−Nb−Fe基合金の特徴を生かしつつ、割れ及び摩耗を抑制する方法につき研究した。そして、Cr−Ni−Nb−Fe基合金にCo又はMoを添加することが耐熱衝撃性及び熱安定性を向上させる上で有効であることを思い付いて、本発明を完成した。
【0008】
尚、本願の明細書では、肉盛用合金の母材への肉盛時及び肉盛後の母材の使用時に高熱が加わった場合に、肉盛用合金の膨張量及び収縮量が母材のそれと大差がなく肉盛用合金に亀裂が生じないとき、「耐熱衝撃性に優れる」と言う。具体的には、耐熱衝撃性は肉盛用合金の線膨張係数が母材のそれと大差がないとき向上する。
【0009】
また、肉盛後の高温環境下での母材の使用時に加熱及び放冷が繰り返えされた場合でも、肉盛用合金の材質が余り変化せず硬度の低下がない及び小さいとき、「熱安定性に優れる」と言う。具体的には、硬度の低下に起因する肉盛用合金の摩耗量の増加が小さい(耐摩耗性が大きい)ことを言う。
【0010】
即ち、本願の第1発明は、肉盛用Cr−Ni−Nb−Fe基合金粉末が、重量%で、Cr:10〜50%、Fe:5〜25%、Nb:5〜15%、Co:10〜40%、C:0.01〜0.5%、及びSi:0.5〜4%、残部Ni、及び不可避不純物からなることを特徴とする。第1発明では、Coが耐熱衝撃性及び熱安定性の向上に寄与する。
【0012】
さらに、第2発明は、肉盛用Cr−Ni−Nb−Fe基合金粉末が、重量%で、Cr:10〜30%、Co:10〜40%、Fe:5〜25%、Nb:2〜10%、Mo:5〜20%、C:0.01〜0.5%、及びSi:0.5〜4%、残部Ni、及び不可避不純物からなることを特徴とする。
【0013】
第2発明では、Co及びMoが耐熱衝撃性及び熱安定性の向上に寄与する。
【0014】
尚、例えば米国特許第3180012号公報(第1従来例)は、重量%で、Co:50〜70%、Mo:25〜48%、及びSi:2〜10%から成る耐熱性の合金を開示する。しかし、第1従来例はCr−Ni−Nb−Fe基合金に関するものでない。加えて、Co及びMoと耐熱性との関係に関し、上記本発明の特徴を開示していない。
【0015】
また、特開平10−156500号公報(第2従来例)は、重量%で、C:0.03〜0.3%、Si:0.03〜1.5%、Mn:0.1〜3.0%、Ni:0.5〜10.0%、Cr:10.0〜20.0%、N:0.05〜0.5%、残部Fe、及び不可避不純物から成る溶着金属層を開示する。そして、この溶着金属層に重量%で、Mo:3.0%以下及び/又はCo:3.0%以下を添加できる旨を開示する。しかし、第2従来例もCr−Ni−Nb−Fe基合金に関するものでない。加えて、Mo及びCoと耐熱性との関係に関し、上記本発明の特徴を開示していない。
【0016】
【発明の実施の形態】
<母材>
母材とは機械や装置で使用される部材や部品である。本発明では、高温環境で使用され、相手部材に繰り返し接触されるような部材や部品を対象とする。具体例としては、自動車のエンジンの排気弁装置において使用される排気バルブがある。
【0017】
母材の材質は特に制約されず、例えば炭素鋼やマルテンサイト系耐熱鋼SCH3等から成ることができる。アルミニウムの融点は660℃、線膨張径数は0.237×10-4/Kである。
【0018】
母材の形状は特に制約されず、棒状でも板状でも良い。肉盛用合金の母材への肉盛箇所は、棒状の母材の軸方向において全長でも良いし、一部でも良い。また、円板状の円周方向において全円周でも良いし、一部でも良い。
【0019】
母材の形状は特に制約されず、棒状でも板状でも良い。肉盛用合金の母材への肉盛箇所は、棒状の母材の軸方向において全長でも良いし、一部でも良い。また、円板状の円周方向において全円周でも良いし、一部でも良い。
肉盛用合金の母材への肉盛部の厚さは特に制約されず、0.3から3mmの範囲とすることができる。また、母材の重量を100としたときの肉盛用合金の重量は5〜15%の範囲とできる。
<肉盛用Cr−Ni−Nb−Fe基合金粉末>
<1>肉盛とは、母材の表面硬化法の一種であり、特定の性質に優れた肉盛用合金(「盛金」と言うこともある)を母材の表面に溶着又は溶射する方法である。肉盛用合金を母材に肉盛する際は、母材を位置決めし、熱源からプラズマアークやレーザビームを発し、その中に肉盛用合金の粉末をプラズマアーク等で溶融される量、速度で送り出す。
<2>以下、肉盛用合金粉末の各成分の役割及び範囲の限定理由について説明する。
【0020】
第1発明において、Crは、Nbと金属間化合物を形成し、肉盛用合金の硬度を向上させ、摩耗量を減少させる。但し、Crの配合量が10重量%よりも少ないとこの効果が得られず、50重量%よりも多すぎると割れが生じ易くなり耐熱衝撃性が低下する。よって、Crの配合量は10〜50重量%とした。
【0021】
NiはNbと金属間化合物を形成し肉盛用合金の硬度を向上させる。また、じん性の向上に寄与する。
【0022】
NbはNi、Cr及びFeと金属間化合物を生成する。これにより盛用合金の硬度を向上させ、摩耗量を減少させる。この効果(特性)を得るためには、少なくとも5重量%以上のNbが必要である。一方、Nbの配合量が15重量%よりも多すぎると肉盛用合金のじん性が低下し易くなる。(もろくなる)よって、Nbの配合量は5〜15重量%とした。
【0023】
FeはNbと金属間化合物を形成し、肉盛用合金の硬度を上昇させ、摩耗量を減少させる。この効果を得るためには少なくとも5重量%以上のFeが必要である。一方、Feの配合量が25重量%よりも多すぎると加熱の前後における硬度の変化が大きくなり、熱安定性が低下する。よって、Feの配合量は5〜25重量%とした。
【0024】
Cr−Ni−Nb−Fe基合金にCoを添加することにより、肉盛用合金の硬度の変化が少なくなり、熱安定性が向上し、膨張量及び収縮量が増大し、さらにじん性も向上する。これらの効果を得るためには10重量%以上のCoが必要である。一方、Coの配合量が40重量%を超えると肉盛時にガス欠陥が生じる。よって、Coの配合量は10〜40重量%とした。このうち特に効果があるのはCo:15〜30である。尚、Coの融点は1490℃、線膨張径数は0.126×10-4/Kである。
【0027】
第2発明において、Cr−Ni−Nb−Fe基合金にCo及びMoを添加することにより、Coのみ又はMoのみを添加した場合に比べて、更に肉盛用合金の硬度の変化が少なくなり、熱安定性が向上し、膨張量及び収縮量が増大し、さらにじん性も向上する。これらの効果を得るためには、10重量%以上のCo及び5重量%以上のMoが必要である。但し、Coの配合量が40重量%をこえ又はMoの配合量が20重量%をこえるとCoが肉盛り時にガス欠陥が生じさせ、Moが肉盛用合金のじん性を低下させる不具合が生ずる。よって、Coの配合量は10〜40重量%とし、Moの配合量は5〜20重量%とした。
【0028】
尚、Co及びMoを含む第2発明では、Cr及びNbの配合量が第1発明におけるこれらの配合量よりも少ない。
<その他の添加物>
肉盛用合金粉末はまた、Si:0.5〜4%を含む。Siも肉盛用合金の溶湯の粘性を低下させ溶接作業性を向上させるが、生成するけい化物が多すぎるとじん性が低下する。よって、Siの配合量は0.5〜4重量%とした。
【0029】
肉盛用合金粉末はさらに、C:0.01〜0.5%を含む。Cは溶湯の粘性を低下させ溶接作業性を向上させるが、Cの配合量が多すぎると炭化物を生成しじん性が低下する。よって、Cの配合量は0.01〜0.5重量%とした。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例をもとに詳述する。
【0031】
表1、表2、表3及び表4に示す成分が配合された肉盛用合金を溶解し、不活性ガスを用いてガスアトマイズし、肉盛用合金の粉末を製造した。この肉盛用合金の粉末を44〜180μmの範囲に分級した。
<実施例>
表1に示す成分を持つ試料1〜9及び表3に示す成分を持つ試料21〜35が本発明の実施例である。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
<比較例>
また、表4に示す成分を持つ試料36〜52が比較例である。これれは実施例の肉盛用合金と同一の成分より成るが、何れか一つの成分の配合量が実施例の配合量の範囲から外れた肉盛用合金である。具体的には、試料36及び38はNbの配合量が多く、試料37及び39はNbの配合量が少ない。試料40はCoの配合量が多く、試料41はCoの配合量が少ない。試料42はCの配合量が多く、試料43はCを含まない。
【0036】
試料44はSiの配合量が多く、試料45はSiの配合量が少ない。試料46及び47はCrの配合量が多く、試料48はCrの配合量が少ない。試料49はFeの配合量が多く、試料50はFeの配合量が少ない。試料51はMoの配合量が多く、試料52はMoの配合量が少ない。
【0037】
【表4】
【0038】
<従来例>
表5に示す試料53は従来から使用されているトリバロイ合金、試料54は従来から使用されているCr−Ni−Nb合金である。
【0039】
【表5】
【0040】
上記実施例の試料1から35と、比較例の試料36〜52と、従来例の試料53から54との肉盛用合金粉末を、図1に示す自動車の排気弁装置の排気バルブ11のバルブフェース面12に溶着して肉盛部13を形成した。詳述すると、排気弁装置は、吸気口20が形成されたハウジング部分21と、該ハウジング部分21から離れたハウジング部分22と、先端にバルブ11を後端にプレート14を備え、ハウジング部分21と22との間に軸方向に移動可能に配設された排気バルブ11と、プレート14に当接し回転により排気バルブ11を前進方向(図1において下方)駆動するカム23と、ハウジング部分21と22との間に配置され排気バルブ11を後退方向に付勢するスプリング24と、Fe系焼結材料から成るバルブシート26とを含む。
【0041】
排気バルブ11はオーステナイト系鋼の一種であるSUH35から成り、バルブフェース面12に、出力90A、処理速度5mm/sの条件でプラズマアークにより実施例の試料1〜35の成分を持つ肉盛用合金粉末、比較例の試料36から52の成分を持つ肉盛用合金粉末、及び従来例の試料53から54の肉盛用合金粉末を肉盛した。そして、肉盛部(溶接部)13の溶接作業性、割れの有無、硬度の変化及び摩耗量を評価した。評価方法は以下の通りである。
(溶接作業性)
この肉盛(溶接)工程における作業の容易性を、肉盛部13の割れの有無、ガス欠陥の発生状況、ビードの形状を目視で確認し、その結果を4段階で評価した。数値が大きくなる程、肉盛部13が滑らかでブローホールや欠肉がなく、肉盛部13を切断した際も十分に溶着しており、溶接作業性が良好であることを示す。つまり評価1より評価2、評価2より評価3、評価3より評価4が肉盛部13が滑らかでブローホールや欠肉がなく、肉盛部13を切断した際も十分に溶着しており、溶接作業性が良好であることを相対的に示している。
(割れの有無)
バルブフェース面12に肉盛部13を形成した排気バルブ11を800℃まで加熱し、その後室温まで炉冷した。この加熱及び炉冷を100サイクル繰り返した時点で、肉盛部13の割れの有無を目視で確認した。
(硬度の変化)
肉盛部13を形成した時点でその硬度を測定しておく。次に、排気バルブ10を温度800℃で100時間加熱し、加熱後の肉盛部10の硬度を測定する。こうして、加熱の前後における肉盛部13の硬度の変化を調べた。尚、硬度はビッカース式硬さにより評価した。
(摩耗量)
バルブ面12に肉盛部13が形成された排気バルブ11を使用して図2の試験装置により摩耗試験を行った。詳述すると、加熱源としてプロパンガスバーナ30を用い、排気バルブ11とバルブシート26との摺動部をプロパンガス燃焼雰囲気とした。バルブシート26を温度300℃に制御し、スプリング24によりバルブフェース面12とバルブシート26との間に18kgfの荷重を付与した。2000回/分の割合で排気バルブ11とバルブシート26とを繰り返し接触させ、この接触を8時間継続した。そして、バルブフェース面12の摩耗深さを測定した。
(じん性)
じん性は上記肉盛溶接、繰返加熱試験での割れの有無、及び引張試験での伸びにより評価した。
<実施例>
実施例における評価の結果を表1に対応する表6、表2に対応する表7及び表3に対応する表8に示す。
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
これらから明からかなように、本実施例の全ての試料1〜35において溶接作業性の評価が4又は3であり、肉盛用合金の肉盛作業が容易であることが分かる。
【0046】
全ての試料1から35において割れ無しであり、耐熱衝撃性に優れていることが分かる。
【0047】
また、硬度の変化については、硬度が大きくなった(+で表示)試料もあるし、硬度が小さくなった(−で表示)試料もある。その何れであっても、硬度の変化量が一定範囲内(±20)にあり、比較例、従来例に比べ、硬度が余り変化していないことが分かる。
【0048】
ここでは、硬度が変化しないのが最も熱安定性に優れ、硬度が増加するのが次に優れ、硬度が減少するのが次に優れていると評価する。その点、Coを添加した試料3及び5、Moを添加した試料10及び11、Co及びMoを添加した試料22及び25は何れも硬度の変化が零であり望ましい。
【0049】
また、全ての試料1から35の摩耗量が一定範囲内(9μm以下)にあり、耐摩耗性に優れていることが分かる。より詳しくは、Coを添加した試料2及び6、Moを添加した試料15及び17、Co及びMoを添加した試料24及び26は何れも摩耗量が3μmであり望ましい。尚、上記硬度の変化の評価と摩耗量の評価とが厳密には一致しないが、摩耗量が9μm以下であれば実用に十分で、その大小を議論しても実益はない。
【0050】
【表9】
【0051】
表9から明かなように、Nbの配合量が多すぎる試料36及び38は溶接作業性及び耐熱衝撃性が劣る。また、Nbの配合量が少なすぎる試料37及び39は耐摩耗性が劣る。Coの配合量が多すぎる試料40は溶接作業性が劣り、Coが少なすぎる試料41は熱安定性が劣る。
【0052】
Cの配合量が多すぎる試料42は溶接作業性及び耐熱衝撃性が劣り、Cを含まない試料43は溶接作業性が劣る。Siの配合量が多すぎる試料44は溶接作業性及び耐熱衝撃性が劣り、Siが少なすぎる試料45は溶接作業性が劣る。
【0053】
Crの配合量が多すぎる試料46及び47は熱衝撃性が劣り、Crが少ない試料48は耐摩耗性が劣る。Feの配合量が少ない試料50は耐摩耗性が劣る。
【0054】
Moの配合量が多すぎる試料51は溶接作業性及び耐熱衝撃性が劣り、Moが少なすぎる試料52は熱安定性が劣る。
<従来例>
尚、表10に示すように、従来例の試料53(トリバロイ合金)の肉盛部13は硬度の変化が小さく摩耗量も少ないが、溶接作業性に劣りび割れが発生している。また、試料54(Cr−Ni−Nb合金)は溶接作業性に劣り、割れが発生し、硬度も変化している。また、当初6μmであった摩耗量が肉盛用合金を800℃で100時間加熱すると20μmに増加している。
【0055】
【表10】
【0056】
次に、肉盛部13の割れと線膨張係数及び伸びとの関係を調べるべく、SUH35から成る板部材(不図示)に実施例の試料1、10及び21と、従来例の試料53及び54とをそれぞれ肉厚10mmで肉盛りし、肉盛部から試験片を採取した。そして、加熱の前後における肉盛部の線膨張係数の変化を、温度による試験片の全長の変化を測定することにより調べた。また、800℃で引っ張り試験を行い、試験片が破断したときの伸び率をオートグラフにより測定した。
【0057】
測定の結果を表11に示す。表11から明らかなように、Coを添加した試料1、Moを添加した試料10、及びCo及びMoを添加した試料21では、従来例の試料53及び54と比較して、線膨張係数が大きく、引張時の伸びが大きい。これにより肉盛部13の加熱時の膨張量及び収縮量が大きくなり、排気バルブ11の膨張量及び収縮量と大差がなくなり、上述したように割れの発生が防止されたと考えられる。
【0058】
また、肉盛部13の材質の変化と、硬度の変化と、摩耗量との関係を調べた。即ち、図2に示すようにSUH35からなる排気バルブ11のバルブフェース面12に実施例の試料1、10、21の肉盛用合金粉末を出力90A、処理速度5mm/sの条件でプラズマにより肉盛した。そして、これらの排気バルブ11を、3000ccのガソリンエンジンにおいて使用し、180時間の耐久試験を行った。比較のため従来例の試料53及び試料54についても同様に肉盛して試験を行った。そして、耐久試験の前後における肉盛部13の金属組織を顕微鏡で観察するとともに、バルブ突出量を測定した。
【0059】
肉盛部13の組織の変化と硬度の変化との関係に関し、図3(a)及び図4(a)に耐久試験前の試料21及び54の金属組織を示し、図3(b)及び図4(b)に耐久試験後の試料21及び54の金属組織を示す。
【0060】
図3(a)と(b)とから明らかなように、試料21では金属組織が殆ど変化していない。これに対して、図4(a)と(b)とから明らかなように、試料54では金属組織が変化しており、X線回折による分析の結果、オーステナイト相の生成が確認された。試料21の硬度の変化が+15であり、試料54の硬度の変化が−150であるのは、このオーステナイト相(FeNi固溶体))の有無が関連していると推測される。つまり、試料54ではオーステナイト相が生成されているが、試料21では加熱に伴うFeNi固溶体の析出が減少したためと考えられる。
【0061】
また、肉盛部13の硬度の変化と摩耗量及び相手攻撃性との関係を調べるために、バルブ突出量を測定した。ここでバルブ突出量とは、バルブフェース面12の摩耗量(耐摩耗性)と、バルブシート26の摩耗量(相手攻撃性)との合計である。ここで、バルブシート26の摩耗量についても調べるのは、肉盛部13の硬度の上昇はバルブフェース面12の摩耗量を低下させる上では望ましが、その反面余りに硬度が高いとバブルシート26を摩耗させ易くなるからである。
【0062】
測定の結果を表11に示す。表11から明らかなように、実施例の試料1、10及び21は、従来例の試料54と比べてバルブ突出量が少なく、耐摩耗性に優れていることが分かる。これは上述した試料21及び54の金属組織の変化の有無に関連していると考えられる。一方、試料53は耐摩耗性は良いが、肉盛部13に割れが発生した。これは、線膨張係数が小さく伸びが小さいためと考えられる。
【0063】
【表11】
【0064】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明によれば、肉盛用合金に割れが生じ難く耐熱衝撃性に優れ、しかも硬度の変化が小さく熱安定性に優れたCr−Ni−Nb−Fe基合金が得られる効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例(排気弁装置)を示す縦断面図である。
【図2】実施例、比較例及び従来例における摩耗試験を示す
【図3】(a)は試料21の耐久試験前の金属組織を示す写真であり、(b)は耐久試験後の金属組織を示す写真である。
【図4】(a)は試料54の耐久試験前の金属組織を示す写真であり、(b)は耐久試験後の金属組織を示す写真である。
【符号の説明】
11:排気バルブ 12:バルブフェース面
13:肉盛部 26:バルブシート
Claims (4)
- 重量%で、Cr:10〜50%、Co:10〜40%、Fe:5〜25%、Nb:5〜15%、C:0.01〜0.5%、及びSi:0.5〜4%、残部Ni、及び不可避不純物からなることを特徴とする肉盛用Cr−Ni−Nb−Fe基合金粉末。
- 重量%で、Cr:10〜30%、Co:10〜40%、Fe:5〜25%、Nb:2〜10%、Mo:5〜20%、C:0.01〜0.5%、及びSi:0.5〜4%、残部Ni、及び不可避不純物からなることを特徴とする肉盛用Cr−Ni−Nb−Fe基合金粉末。
- Co:15〜30%である請求項1記載の肉盛用Cr−Ni−Nb−Fe基合金粉末。
- Co:20〜35%、Mo:10〜18%である請求項2記載の肉盛用Cr−Ni−Nb−Fe基合金粉末。
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